説明

電圧オンリセット回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電圧オンリセット信号を発生する回路に係り、特にCMOS集積回路に使うための電圧オンリセット回路に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、電圧オンリセット回路は、電圧が回路に印加される時、回路の各構成部分であるフリップフロップ、ラッチ、カウンタ、レジスタなどを初期化するためのリセット信号を提供する。そのリセット信号は、回路の前記各構成部分を安定化させるに十分な時間の間第1定電圧を保持し、所定時間経過後は、電圧が回路に印加される限り、第2定電圧(通常は、第1定電圧の反転電圧である動作状態電圧)を保持する。
【0003】電圧オンリセット回路は、常態の電力消耗、チップのレイアウト、製造費用上の問題及びリセット信号の安定性を鑑みて設計されるべきである。即ち、電圧オンリセット回路の設計においては、常態の電力消耗を最小限に抑えるべきである。またチップのレイアウトを経済性を考慮した場合には、コンデンサや抵抗のように比較的大面積を占める受動素子、及び製造工程が追加される空乏トランジスタなどの使用を排除すべきである。
【0004】また、安定したリセット信号を提供するためには、リセット信号は、十分な期間の間第1定電圧を保持するように、遅延される必要がある。さらに、連続する供給電圧の高速スイッチング(オン/オフ)時に発生しうるリセット回路の誤動作によるリセット信号の歪みを防ぐために、放電回路が用いられる。
【0005】一般に、電圧オンリセット回路においては、抵抗器または空乏トランジスタを用いて、回路の内部ノ−ドに安定的に放電させるようにしている。しかし、抵抗器を用いて回路の放電経路を構成する場合には、数MΩの大きい抵抗器が必要となり、かかる抵抗器はチップのレイアウト時大面積を占めることになる。他方、空乏トランジスタを用いる場合には、チップの製造時に別の製造工程が追加されるという問題点を有している。
【0006】これに対して、電圧オンリセット回路において、放電経路を単純にダイオ−ドを用いて構成した場合、電圧がオフされるても、電圧は瞬間的には接地電圧まで放電されず、ダイオ−ドの接合漏れ電流のために、数m秒の遅延が生じる。従って、例えば供給電圧が高速にオン/オフされる時には、リセット回路の誤動作を引き起こす。
【0007】上記のような回路については、例えばジョーン・マホニー(Jone Mahoney)らによる1988年5月24日付けの米国特許第4746822号に開示されている。
【0008】図1には、コンデンサ及び寄生ダイオ−ドを用いて電圧オンリセット信号を発生する従来の電圧オンリセット回路が示されている。図示のように、回路は、遅延手段1と、放電手段2と、初期化バッファ手段5とから主に構成されている。遅延手段1においては、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1が直列に接続されており、さらにコンデンサが接続されて、初期電源供給時に電圧オンリセット信号を遅延させることができる。また放電手段2は、放電経路として寄生ダイオ−ドD1を備えるものである。また初期化バッファ手段5は、電圧オンリセット信号(POR)を発生するものである。
【0009】図1の従来の回路の動作を説明すれば、供給電圧VDDが印加される初期状態では、VDD電圧が0Vなので、ノ−ドAの電圧は0V(ロ−論理値)であり、トランジスタN2はオフ状態となる。供給電圧VDDが増加するに従って、ノ−ドBの電圧は供給電圧VDDによって増加する。供給電圧がトランジスタN3のしきい値電圧より大きくなると、トランジスタN3がオンとなり、ノ−ドCのリセット信号がロ−論理値(0V)となる。そして、このリセット信号に応じて集積回路の他の回路を初期化させる。
【0010】供給電圧が遅延手段1のトランジスタN1とトランジスタP1のしきい値電圧の和より大きくなれば、トランジスタN1とトランジスタP1がオンされる。トランジスタN1、P1がオンされた時点で、P1トランジスタのオン抵抗(電圧降下)とコンデンサC1によりRC時定数が生じ、ノードAとノードCのリセット信号がハイ論理値に転じる前に十分な時間を確保できるので、残りの回路を正常動作させる。供給電圧がオフされると、ノードAの電圧は放電手段2の寄生ダイオ−ドD1とトランジスタN4を介して放電される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の電圧オンリセット回路では、放電時に、ノ−ドAの電圧はトランジスタN4のしきい値に応じて、寄生ダイオ−ドD2の接合漏れ電流により接地電圧まで放電される。しかし、供給電圧のオン/オフ、即ちスイッチング時間が高速である場合(数十μs)、寄生ダイオ−ドD2の接合漏れ電流によってはノ−ドAの電圧を接地電圧まで十分に放電させることができないことがある。その場合には、電圧オンリセット回路は誤動作して所望のリセット信号が得られない。
【0012】図2は、供給電圧の高速スイッチング時、従来の電圧オンリセット回路のリセット信号の波形図を示している。初期の電圧オン/オフ時は、リセット回路が正常動作を行って所望のリセット信号を出力する。しかし、その後、放電経路は、寄生ダイオードD2の不確実な放電機構のために正常に動作せず、リセット信号は、供給電圧と同様のパターン波形で揺れてしまう。
【0013】上述のように、従来の電圧オンリセット回路においては、ノ−ドAの電圧を放電するために抵抗器を用いることもあるが、待機電流を小さくするためには数MΩの抵抗が必要である。かかる抵抗器はチップのレイアウト面積のうちのかなり部分を占めることになり、レイアウトの効用性を低下させる。
【0014】本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであり、受動素子や空乏トランジスタの代わりに通常のCMOS−IC技術により製造可能であり、供給電圧の高速スイッチング(オン/オフ)時にもリセット回路の誤動作が生じない電圧オンリセット回路を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために,第1供給電圧(VDD)の電圧レベルに応じて出力される電圧オンリセット信号(POR)のオン/オフの切り替えタイミングを制御するための第1の中間信号を出力する放電手段(10)を備えた電圧オンリセット回路が提供される。そして,この電圧オンリセット回路における前記放電手段(10)は,前記第1の中間信号が出力されるノード(A)に接続されたソースと,接地されたドレーンと,前記第1供給電圧(VDD)がオフするタイミングで前記接地電圧よりも低い半導体基板のバルク電圧が印加電圧(VBB)として印加されるゲートとを有するPチャネル形トランジスタ(P2)を備えたことを特徴としている。そして,電圧オンリセット回路は,前記第1の中間信号が所定の選択電圧以上のときに,前記第1の中間信号に応じた第2の中間信号を出力する遅延手段(40)を備えることが好ましく,さらに,前記第2の中間信号に基づいて前記電圧オンリセット信号(POR)を出力するバッファ手段(80)を備えることが好ましい。
【0016】
【作用】本発明によれば、第1供給電圧がオフの時に第1中間信号が短時間で基準電圧まで放電されるので、供給電圧が高速でオン/オフスイッチングされる場合であっても、誤動作の生じない安定した電圧オンリセット信号を発生することができる。また遅延手段、バッファ手段により、電圧オンリセット信号が第1定電圧に保持される時間を調整し、チップ内の他の回路を初期化するに十分な時間を確保できる。
【0017】
【実施例】以下、添付した図面に基づき本発明をさらに詳しく説明する。図3は本発明の具体的な実施例の図面であって、電圧オンリセット回路100は、供給電圧VDDの高速のオン/オフスイッチングにも安定したリセット信号を発生する回路であって、放電手段10、第1インバ−タ手段20と初期化手段30とから構成された遅延手段40、第2インバ−タ手段50、第3インバ−タ手段60と第4インバ−タ手段70とから構成されたバッファ手段80とから構成されている。
【0018】放電手段10は、三つのP型トランジスタP1、P2、P3と一つのN型トランジスタN1とから構成されている。トランジスタP1のソ−ス及びトランジスタP3のソ−スとゲ−トは供給電圧VDD、トランジスタP2のドレ−ン及びトランジスタN1のソ−スとゲ−トは接地電圧VSSに接続されている。放電手段10の出力であるノ−ドAはトランジスタP1のゲ−トとドレ−ン、トランジスタP2のソ−ス、トランジスタP3のド−レン、トランジスタN1のドレ−ンと第1インバ−タ20の入力端に共通に接続されている。トランジスタP2のゲ−トは、接地電圧VSSより低い第1印加電圧VBBに接続されている。
【0019】第1インバ−タ20は、P型トランジスタP4、N型トランジスタンN2とから構成されている。トランジスタP4のソ−スは供給電圧VDD、トランジスタN2のソ−スは接地電圧VSSに接続されている。トランジスタP4、N2のゲ−トは、放電手段10の出力であるノ−ドAに接続されている。トランジスタP4、N2のドレ−ンは、第2インバ−タ50の入力端と共通に接続されるノ−ドBに接続されている。
【0020】初期化手段30は、P型トランジスタP5、N型トランジスタN3より構成されている。トランジスタP5のソ−スは供給電圧VDDに接続されている。トランジスタP5のゲ−ト及びトランジスタN3のゲ−トとソ−スは接地電圧VSSに接続されている。トランジスタP5、N3のドレ−ンはそれぞれノ−ドBに接続されている。
【0021】第2インバ−タ50は、P型トランジスタP6及びN型トランジスタN4より構成されている。トランジスタP6のソ−スは供給電圧VDD、トランジスタN4のソ−スは接地電圧VSSに接続されている。トランジスタP6、N4のゲ−トはそれぞれノ−ドBに、ドレ−ンはそれぞれ第3インバ−タ60の入力端であるノ−ドCに接続されている。
【0022】第3インバ−タ60は、P型トランジスタP7及びN型トランジスタN5より構成されている。トランジスタP7のソ−スは供給電圧VDD、トランジスタN5のソ−スは接地電圧VSSに接続されている。トランジスタP7、N5のゲ−トはそれぞれノ−ドCに、ドレ−ンは第4インバ−タ70の入力端であるノ−ドDにそれぞれ接続されている。
【0023】第4インバータ70はP型トランジスタP8及びN型トランジスタN6より構成されている。トランジスタP8のソースは供給電圧VDD,トランジスタN6のソースは接地電圧VSSに接続されている。トランジスタP8,N6のゲートはそれぞれノードDに,ドレーンはそれぞれ電圧オンリセット信号を出力する出力端子PORに接続されている。
【0024】次に、図3に示すように構成された本発明の一実施例の電圧オンリセット回路の動作を説明する。まず、初期条件として、VDDは接地電圧とされ、ノ−ドAの第1中間信号、ノ−ドBの第2中間信号、出力PORは、全て0Vとされ、全てのトランジスタはオフとされる。
【0025】次いで、供給電圧であるVDDがP型トランジスタのしきい値電圧VTP以上に上昇するが、P型とN型トランジスタのしきい値電圧を合算した電圧VTP+VTN以下である場合に、トランジスタP1、P5はオンとなる。その結果、ノ−ドAの第1中間信号はVDD−VTPとなり、第1インバ−タ20のトランジスタN2がオフとなる。そして、遅延手段40プルアップトランジスタP5のオンにより、ノ−ドBの第2中間信号は供給電圧VDDとなる。ノ−ドBは第2インバ−タ50のゲ−トに接続されているので、第2インバ−タ50のトランジスタN4がオンとなり、ノ−ドCがロ−論理値を有することになる。ノ−ドCはバッファ回路80の入力端に接続されているので、ノードCのロー論理値により、バッファ回路80の出力信号であるPORはロ−論理値を有することになり、その結果、安定した電圧オンリセット信号を発生する。
【0026】その後、供給電圧がP型とN型トランジスタのしきい値電圧を合算した電圧VTP+VTN以上に上昇すると、ノ−ドAの第1中間信号の電圧はVDD−VTPとなり、トランジスタN2のしきい値電圧以上となるので、トランジスタN2はオンとなる。さらに、遅延手段40は、トランジスタP5とN2の「オン」抵抗比により、ノードBの第2中間信号の電圧及び出力PORの論理値を調整し、所望の時点でPORをハイ論理値にする。この結果、出力PORは十分な時間の間ロー論理値に保持されるので、チップ内の不図示の他の回路は正常動作できるよう初期化される。なお、第2インバ−タ50及びバッファ回路80を構成するトランジスタのゲ−トの寸法を調整して、出力PORの信号をさらに遅延させるように調整することも可能である。
【0027】供給電圧がオフとなると、電圧オンリセット回路の各構成要素は初期状態に戻される。特に、ノ−ドAの電圧VDD−VTPは、放電手段10により、トランジスタP2、P3、N1を介して、放電される。この際、ノードAの電圧は、トランジスタP3を介して、トランジスタP3のしきい値電圧であるVTPまで放電される。その後、ノードAの電圧は、トランジスタP2を介して接地電圧VSSまで放電される。トランジスタP2のゲ−トには接地電圧より低い第1印加電圧VBBが印加されるので、トランジスタP2は常時オンとなる。なお、トランジスタのゲ−トの長さを長くして、待機電流を減じるように構成することもできる。
【0028】メモリ回路の場合、トランジスタP2のゲ−トに印加する第1印加電圧VBBの一実施例として基板電圧であるバルク電圧を使うことができる。前記バルク電圧は約−1.5Vであって、電圧オフの間にバルクとウェルとの間に発生する大きい寄生容量により、数msの間、その電位を保持するので、ノードAの電圧はトランジスタP2を介して放電される。
【0029】もし、前述したように接地電圧まで放電させ得るトランジスタP2がなければ、ノ−ドAの電圧は、図1に示すトランジスタN1または寄生ダイオ−ドD2の接合漏れ電流により、数百ms後に接地電圧まで放電される。しかし、電圧オン/オフのスイッチング時間が高速である場合、ノ−ドAの電圧を接地電圧まで放電させるための寄生ダイオ−ドD2の放電時間が十分でないので、放電は不完全となる(すなわち、接地電圧VSSまで放電されない)。さらに、初期に電圧がオンされた場合に、トランジスタP3にはしきい値電圧VTPが存在するので、トランジスタN2がオンとなり、出力信号POR供給電圧VDDと同様の波形を有することとなる。その結果、従来の電圧オンリセット回路と同様に、他の回路を適正に初期化させる電圧オンリセット信号を発生できない。
【0030】図4は本発明の電圧オンリセット回路による電圧オンリセット信号の出力波形図である。図示のように、供給電圧が高速でオフスイッチングされる場合も、トランジスタP2によりノ−ドAの電圧が短時間で接地電圧VSSにまで放電されるので、次の電圧オンの際に、安定したリセット信号PROが発生される。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、第1供給電圧がオフの時に第1中間信号が短時間で基準電圧まで放電されるので、供給電圧が高速でオン/オフスイッチングされる場合であっても、誤動作の生じない安定した電圧オンリセット信号を発生することができる。また遅延手段、バッファ手段により、電圧オンリセット信号が第1定電圧に保持される時間を調整できるので、チップ内の他の回路を初期化するに十分な時間を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンデンサを用いた電圧オンリセット信号を発生する従来の回路図である。
【図2】供給電圧の高速スイッチング時の従来の電圧オンリセット信号を波形図である。
【図3】本発明により電圧オンリセット信号を発生する実施例の構成図である。
【図4】供給電圧の高速スイッチング時の本発明の電圧オンリセット信号の波形図である。
【符号の説明】
10 放電手段
20 第1インバータ手段
30 初期化手段
40 遅延手段
50 第2インバータ手段
60 第3インバータ手段
70 第4インバータ手段
80 バッファ手段
100 電圧オンリセット回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1供給電圧(VDD)の電圧レベルに応じて出力される電圧オンリセット信号(POR)のオン/オフの切り替えタイミングを制御するための第1の中間信号を出力する放電手段(10)を備えた電圧オンリセット回路において:前記放電手段(10)は,前記第1の中間信号が出力されるノード(A)に接続されたソースと,接地されたドレーンと,前記第1供給電圧(VDD)がオフするタイミングで前記接地電圧よりも低い半導体基板のバルク電圧が印加電圧(VBB)として印加されるゲートとを有するPチャネル形トランジスタ(P2)を備えたことを特徴とする電圧オンリセット回路。
【請求項2】 さらに,前記第1の中間信号が所定の選択電圧以上のときに,前記第1の中間信号に応じた第2の中間信号を出力する遅延手段(40)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電圧オンリセット回路。
【請求項3】 さらに,前記第2の中間信号に基づいて前記電圧オンリセット信号(POR)を出力するバッファ手段(80)を備えたことを特徴とする請求項2に記載の電圧オンリセット回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3053062号(P3053062)
【登録日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【発行日】平成12年6月19日(2000.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−331912
【出願日】平成6年12月9日(1994.12.9)
【公開番号】特開平7−303035
【公開日】平成7年11月14日(1995.11.14)
【審査請求日】平成6年12月9日(1994.12.9)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−20624(JP,A)
【文献】特開 平3−218064(JP,A)
【文献】特開 平5−14158(JP,A)
【文献】実開 平2−118329(JP,U)