説明

電子デバイス及び出力方法

【課題】高精度なタイムスタンプを得ること。
【解決手段】実施形態の電子デバイスは、閾値決定部、複数のコンパレータ回路、時間デジタル変換回路、ローパスフィルタ部、アナログデジタル変換回路及びエネルギー算出部を備える。閾値決定部は、複数の閾値を動的に決定する。各コンパレータ回路は、対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する。時間デジタル変換回路は、アナログ入力信号が複数の閾値の中の閾値と合致した時、又は、アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力する。ローパスフィルタ部は、可調節であり、アナログ入力信号をフィルタリングする。アナログデジタル変換回路は、フィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成する。エネルギー算出部は、トリガ信号の受信に応答してデジタル信号のエネルギーを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子デバイス及び出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET(Positron Emission Tomography)イメージング、すなわち、ポジトロン断層法では、注射や、吸入、摂取によって、患者に放射性医薬品が投与される。投与後、かかる薬品は、当該薬品の物理的性質及び生体分子的性質により、人体内の特定の部位に集積する。薬品の実際の空間分布、蓄積点若しくは蓄積領域の強度、及び、投与から捕獲、そして最終的な排出に至るプロセスの動態は、全て、臨床的に重要な意味を持つ。このプロセスの間に、放射性医薬品に付着させた1つのポジトロン放出体は、半減期、分岐比等といった同位体の物理的性質に従って複数のポジトロン(positron、陽電子)を放出する。各ポジトロンは、被検体の電子と相互に作用して対消滅し、511keVにおいて、略180度離れて進行する2つのガンマ線を生成する。そして、それら2つのガンマ線は、PET検出器のシンチレーション結晶(scintillation crystal)においてシンチレーションイベント(scintillation event)を誘発し、これにより、PET検出器は、ガンマ線を検出する。これら2つのガンマ線を検出し、これら2つのガンマ線を検出した位置を結ぶ線、すなわち、「同時計数線(Line Of Response:LOR)」を引くことよって、対消滅が起こった元々の位置として可能性の高い位置が判定される。このプロセスは、相互作用が起こっている可能性のある線を1本識別するだけのことであるが、それらの線を数多く蓄積することで、断層を再構成するプロセスを用いることにより、実用的な精度で、対消滅が起こった元々の位置の分布が推定される。数百ピコ秒以内の正確なタイミングが利用可能であれば、2つのシンチレーションイベントの位置検出の他に、上記の線(同時計数線)に沿って存在する可能性の高い対消滅イベント(annihilation event)の位置に関してより多くの情報を加えるために、飛行時間(Time Of Flight:TOF)の算出が行なわれる。スキャナに内在するタイミング分解能の限界によって、この線に沿った位置判定の精度が決まる。シンチレーションイベントの元々の位置を判定する際の限界によって、スキャナの最終的空間分解能が決まる。同位体の特定の特性(例えば、ポジトロンのエネルギー)が要因となって、(ポジトロンの飛程及び2つのガンマ線の共直線性を介して)、特定の放射性医薬品に対する空間分解能が決まる。
【0003】
上記のプロセスは、多数の対消滅イベントに対して反復される。所望のイメージング作業を行うための裏づけとなるのに対消滅イベントがどれだけ必要になるのかを判定するには、あらゆる事例を解析しなければならないが、全身検査としての「典型的な長さ100cmのFDG(フルオロデオキシグルコース:fluoro-deoxyglucose)の研究」では、従来から、約1億の計数、又は、イベントを蓄積する必要があるとされている。これだけの計数を蓄積するのに要する時間は、薬品の注入量、並びにスキャナの感度及び計数能力によって決まる。
【0004】
PETイメージングは、高速かつ高輝度のシンチレーション結晶によってガンマ線が光に変換されて、前述のシンチレーションイベントが発生することに依存している。TOF−PETは、更に、サブナノ秒のタイミング分解能を必要としており、数百ピコ秒の分解能も想定されている。シンチレーションを発する結晶、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)、及び電子装置から成る2つのチャネルを同調し調節することはかなり複雑であり、結晶のアレイ及びセンサのアレイが大規模化すると、この複雑性は着実に増大する。
【0005】
近年のPETシステムは、500〜600psのタイミング分解能に対応している。このレベルでは、コンポーネントの小さなタイミングの変動ですら重要であり、これの計算式では、走行時間(transit time)は、最も重要な変数である。走行時間は、フォトン(photon)がPMTの光電陰極に当たる瞬間から、対応する電流パルスがPMTの陽極で測定される瞬間までの時間の平均時間である。この量がPMTによってまちまちであるため、各信号は、異なる時間に解析回路機構に到達する。
【0006】
多くの場合、検出系統の正確な走行時間の必要性は、センサへの最短光路及び最長光路に対する結晶位置相互間の、内因性又は固有の軌道差によって相殺(offset)される。これは、理論的に見積もるには複雑であるが、測定が示唆するところでは、25〜40psが、光路に関連する本来的なタイミング変動である。したがって、検出器の全チャネルの走行時間を均衡させるには、25〜40psの精度が適度な目標である。更に、精度が高まれば有用ではあるが、システム性能には、無視できるほどではないにしろ、僅かな影響しかない。
【0007】
個別のエレメントに制約があるため、PMT出力信号の到達時間を高精度で判定することは、従来から困難なことである。更に、現在のADC(analog-to-digital converter)サンプルレート技術では少数のサンプルしかPMT出力信号の立ち上がり(leading edge)に存在しない。PMT出力信号の到達時間は、ガンマ線の検出時間(検出時刻)に対応する。従って、ガンマ線の検出時刻等のタイムスタンプの決定精度は、低くなってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−42029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高精度なタイムスタンプを得ることができる電子デバイス及び出力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の電子デバイスは、閾値決定部と、複数のコンパレータ回路と、少なくとも1つの時間デジタル変換回路と、ローパスフィルタ部と、アナログデジタル変換回路と、エネルギー算出部とを備える。閾値決定部は、複数の閾値を動的に決定する。複数のコンパレータ回路は、各コンパレータ回路が前記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する。少なくとも1つの時間デジタル変換回路は、前記複数のコンパレータ回路それぞれに接続され、前記アナログ入力信号が前記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、前記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力する。ローパスフィルタ部は、可調節であり、前記アナログ入力信号をフィルタリングする。アナログデジタル変換回路は、前記ローパスフィルタ部に接続され、前記ローパスフィルタ部によりフィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成する。エネルギー算出部は、トリガ信号の受信に応答して、前記デジタル信号のエネルギーを算出する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態に係るシステムの一例を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態とは別の実施形態に係るシステムの一例を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態のコンパレータの部分に焦点を合わせた図である。
【図4】図4は、均一に離間された信号上の閾値を示す図である。
【図5】図5は、不均一に離間された信号上の閾値を示す図である。
【図6】図6は、本実施形態の時間デジタル変換の部分に焦点を合わせた図である。
【図7】図7は、本実施形態のアナログデジタル変換の部分に焦点を合わせた図である。
【図8】図8は、本実施形態のトリガ検出部の部分に焦点を合わせた図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る出力方法の諸ステップを例示するフローチャートである。
【図10】図10は、本実施形態に係るコンピュータシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態の一態様では、半導体デバイス等の電子デバイスについて説明される。その半導体デバイスは、複数の閾値を動的に決定する閾値決定部と、複数のコンパレータ回路は、各コンパレータ回路が上記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する複数のコンパレータ回路と、上記複数のコンパレータ回路それぞれに接続され、上記アナログ入力信号が上記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、上記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力する少なくとも1つの時間デジタル変換回路とが含まれる。更に、その半導体デバイスは、可調節であり、上記アナログ入力信号をフィルタリングする可調節なローパスフィルタ部と、上記ローパスフィルタ部によりフィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成するアナログデジタル変換回路と、トリガ信号の受信に応答して、上記デジタル信号のエネルギーを算出するエネルギー算出部と、を備える。
【0013】
実施形態の他の一態様では、上記複数の時間値を受信し、当該受信した複数の時間値に対する出力用の処理を行なう精密なタイムスタンプ部について説明される。上記の処理は、重み付け処理により前記複数の時間値を組み合わせる処理、及び、各時間値が独立的に再構成可能となるように上記複数の時間値をグループ化する処理のいずれかを含む。
【0014】
実施形態の他の一態様では、上記少なくとも1つの時間デジタル変換回路により出力される上記複数の時間値を解析することで、イベントを検出するトリガ検出部について説明される。
【0015】
実施形態の他の一態様では、上記トリガ検出部が、更に、上記イベントが検出された時に外部装置にトリガ信号を出力することが説明される。
【0016】
実施形態の他の一態様では、上記トリガ検出部が、更に、外部装置により上記イベントが検出された時に、当該外部装置から送信されるトリガ信号を受信することが説明される。
【0017】
実施形態の他の一態様では、上記閾値決定部が、更に、上記複数の閾値を動的に決定することが説明される。
【0018】
実施形態の他の一態様では、上記閾値決定部が、更に、均一に離間されるように上記複数の閾値を動的に決定することが説明される。
【0019】
実施形態の他の一態様では、上記閾値決定部が、更に、不均一に離間されるように前記複数の閾値を動的に決定することが説明される。
【0020】
実施形態の他の一態様では、上記閾値決定部が、更に、パルスの立ち上がり付近で相互に接近するように上記複数の閾値を動的に決定することが説明される。
【0021】
更に、実施形態の他の一態様では、アナログ入力信号の時間値及びエネルギーを出力するための出力方法について説明される。かかる出力方法は、複数の閾値を動的に決定するステップと、複数のコンパレータ回路を用いて、前記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較するステップと、上記複数のコンパレータ回路それぞれに接続された少なくとも1つの時間デジタル変換回路を用いて、上記アナログ入力信号が上記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、上記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力するステップとを含む。更に、かかる出力方法は、上記アナログ入力信号をフィルタリングするステップと、アナログデジタル変換回路を用いて、上記フィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成するステップと、トリガ信号の受信に応答して、上記デジタル信号のエネルギーを算出するステップとを含む。
【0022】
更に、実施形態の他の一態様の電子デバイスについて説明される。かかる電子デバイスは、複数の閾値を動的に決定する閾値決定部と、各コンパレータ回路が上記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する複数のコンパレータ回路と、上記複数のコンパレータ回路の中で対応するコンパレータ回路に接続される複数の回路であって、各回路が、上記アナログ入力信号が前記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、上記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力する複数の時間デジタル変換回路とを備える。更に、かかる電子デバイスは、上記アナログ入力信号をフィルタリングする可調節なローパスフィルタ部と、上記ローパスフィルタ部に接続され、上記ローパスフィルタ部によりフィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成するアナログデジタル変換回路と、トリガ信号の受信に応答して、上記デジタル信号のエネルギーを算出するエネルギー算出部とを備える。
【0023】
以下、添付図面を参照して、電子デバイス及び出力方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、出力方法を行なう電子デバイスのシステムがPET装置に搭載される場合を実施形態として説明する。
【0024】
なお、添付図面では、同様の参照番号(符号)が同一、又は、対応するパーツを示している。特に、図1では、複数の時間デジタル(Time-to-Digital:TDC)回路が、半導体デバイス1(例えばシリコンデバイス)上に集積化された装置が例示されている。
【0025】
そのシリコンデバイスは、放射線検出器(例えば、PMT及びシンチレータアレイを備えたPET検出器)と連係して動作するものであり、到達時間(タイミング)及び相互作用の強度(エネルギー)を提供するように設計されている。これらの値は、フォトセンサから出力される電気的パルスを処理することによって導出される。フォトセンサから出力される電気的パルスは、通常は、高速に立ち上がるエッジ(edge)と、シンチレータ光の減衰特性により、遅く立ち下がるテール(tail)とを有する。到達時間(相互作用の時間)の情報は、主に、高速に立ち上がるエッジに含まれている。照射強度(エネルギー)の情報は、パルス全体に含まれている。
【0026】
到達時間を正確に推定するためには、パルスのリーディングエッジ(leading edge)を高速でサンプリングしなければならない。すなわち、本実施形態では、電気的パルスの重要な情報(タイミング及びエネルギー)は、限られた数ではあるが高い時間精度でパルスのリーディングエッジをサンプリングすることで取得し、パルスの残り部分をパルスの静止まで遥かに低いサンプリングレートでサンプリングすることで取得する。この方法によってパルスの重要情報(タイミング及びエネルギー)が確保されており、パルス全体を一律のレートで高速に標本化することは不要である。
【0027】
図1は、本実施形態に係るシステムの一例を示す図である。図1は、本実施形態に係る電子デバイスとしての半導体デバイス1のシステム構成例であり、放射線検出器からのアナログ入力信号である電気的パルスPMT―INを取り込むようになされた半導体デバイス1を示している。放射線検出器(PMT)から出力される各電気的パルスPMT―INは、複数のコンパレータ回路(comparator circuit)である複数のコンパレータ2a〜2hにより受信される。各コンパレータ2は、閾値信号(Threshold1〜8)にも接続されている。各閾値信号(Threshold1〜8)は、PMT―INで取り込む電気的パルスの振幅範囲のうちの特定の部分を狙えるような形で、個別に決定されている。各コンパレータ2の出力は、時間デジタル変換器であるTDC回路3a〜3hに接続されている。時間デジタル変換器であるTDC回路3a〜3hは、システムクロック6を基準とする時間であって、電気的パルスが該当の閾値と交差した時間をエンコードしたデジタル出力を生成する。飛行時間PET(TOF−PET)システムに対し、TDCは、典型的には、15〜25psの精度のタイムスタンプを生成する。従って、TDC回路3a〜3hは、ADC回路(analog-to-digital conversion circuit)に内在する内部閾値コンパレータ信号(例えば、フラッシュADCのコンパレータ出力部又はサブレンジングADCの初段)に接続される。それらのコンパレータ信号に対してTDC回路3a〜3hを複数付設することによって、信号のリーディングエッジのサンプルを遥かに多く入手することができる。加えて、使用する閾値は、不均一に離間させることができ、それによって、信号振幅範囲の特定の領域を狙うことが可能になり、高時間分解能を達成することができる。信号のサンプルレートは、高速で固定的である必要はないため、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)半導体プロセスを使って実現することができ、その結果、デジタル化されたデータを解析するデジタル性能は、大幅に高まる。換言すると、本実施形態は、一律的な高速サンプリングレートを有するADCコアは不要であるため、高コストの半導体デバイス(BiCMOS:Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)のみならず、低コストのCMOS半導体デバイスを使うことでも実現することができる。エッジデコード回路(edge decode circuit)4a〜4hは、エッジデコーディングの機能を果たすデコーダである。図1では、エッジデコード回路4a〜4hを、デコーダ4a〜4hとして示しており、以下では、エッジデコード回路4a〜4hを、デコーダ4a〜4hと記載する場合もある。特に、デコーダ4a〜4hは、TDCからのエッジパターンを、よりコンパクトな形にまとめる(デコードする)。更に、デコーダ4a〜4hは、信号振幅が該当の閾値をローからハイに交差したのか、それともハイからローに交差したのかも判定する。
【0028】
コンパレータの部分(コンパレータ2a〜2hを含む)、時間デジタル変換の部分(TDC回路3a〜3h、エッジデコード回路4a〜4h、及び精密タイムスタンプ部7を含む)、アナログデジタル変換の部分(ローパスフィルタ11、中間速度ADC10及びエネルギー算出部9を含む)、及びトリガ検出の部分(トリガ検出部8を含む)の詳細な説明は、後述する。
【0029】
図2は、本実施形態とは別の実施形態に係るシステムの一例を示す図である。図2は、図1に例示したTDC回路3a〜3h及びエッジデコード回路4a〜4hの代わりに、TDC回路5a〜5hが配置された半導体デバイス1の一実施形態を例示している。TDC回路5a〜5hは、複数の異なる種類の時間デジタル変換回路の中のいずれかとすることができる。TDC回路5a〜5hは、デュアルスロープ/ランプTDC(Dual slope/ramp TDC)、マルチスロープ/ランプTDC(Multi slope/ramp TDC)、タップ付き遅延線TDC(Tapped delay line TDC)、又は、確率TDC(Stochastic TDC)、等とすることができる。しかし、TDC回路5a〜5hは、タップ付き遅延線で設計したものが、最も好適であろう。加えて、TDC回路5a〜5hは、精密タイムスタンプ部7によって使用されることになるデジタル信号を出力するコーダ又はデコーダを中に含んでいる。
【0030】
図3は、本実施形態のコンパレータの部分に焦点を合わせた図である。図3は、本実施形態におけるコンパレータの部分を例示している。コンパレータの部分は、コンパレータ2a〜2hと、複数の閾値(Threshold1〜8)を各コンパレータに入力する閾値決定部12とを備えている。複数の閾値(Threshold1〜8)は、調節できるように、又は、設定できるように構成することができる。複数の閾値は、閾値決定部12によって調節することができる。加えて、複数の閾値は、閾値決定部12への外部からの入力に基づいて調節することができる。この閾値決定部12は、信号の一定部分に焦点を合わせることができるような形、又は、閾値をいかに設定すべきかを決定する所定のアルゴリズムに基づいて調節できるような形で、閾値をプログラムする。例えば、デバイスに予めプログラムされたモデル及び相互関係に基づいて、閾値を設定することができる。加えて、信号の計数レート、信号の立ち上がり時間、又は信号の最大振幅に基づいて、閾値を動的に調節することができる。すなわち、閾値決定部12は、複数の閾値を動的に決定する。また、複数のコンパレータ回路であるコンパレータ2a〜2hそれぞれは、複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する。例えば、コンパレータ2aは、Threshold1とアナログ入力信号とを比較する。また、例えば、コンパレータ2bは、Threshold2とアナログ入力信号とを比較する。
【0031】
本実施形態では、コンパレータ2a〜2hは、フラッシュADCのコンパレータ出力部、又は、サブレンジングADCの初段である。LVDS(Low Voltage Differential Signaling)レシーバ、又は、より一般的な差動信号用レシーバ等のコンパレータも、コンパレータ2a〜2hとして使用することが可能であろう。図4は、均一に離間された信号上の閾値を示す図である。また、図5は、不均一に離間された信号上の閾値を示す図である。
【0032】
図4に示すように、複数の閾値(Threshold1〜8)は、閾値決定部12により、例えば、均一に離間した方式で動的に決定され、PMT―INで受信した信号(アナログ入力信号)に適用される。又は、図5に示すように、複数の閾値(Threshold1〜8)は、閾値決定部12により、例えば、不均一に離間した方式で動的に決定され、PMT―INで受信した信号に適用される。複数の閾値を配置することで、特定の態様で信号から情報を入手することが可能になる。例えば、信号の立ち上がりのまさに頂部の情報が重要である場合、図5に示す複数の閾値(Threshold1〜8)のように、この頂部の点の付近に密集するような形で、複数の閾値を設定することができる。
【0033】
正であれ、負であれ、コンパレータ(コンパレータ2a〜2h)によってなされた判定は、図6に例示する時間デジタル変換の部分で検出される。図6は、本実施形態の時間デジタル変換の部分に焦点を合わせた図である。なお、図6では、図2に例示したTDC回路5a〜5hを、複数のコンパレータそれぞれに接続されるTDC回路として示している。具体的には、TDC回路5a〜5hは、コンパレータ2a〜2hが出力する信号と、システムクロック6が出力するクロック信号とを利用して、精密タイムスタンプ部7にタイミング値を出力する。例えば、TDC回路5a〜5hの各々は、コンパレータ2a〜2hが出力するパルスを検出する。信号が該当の閾値と交差すると、この交差に対応するタイミング値(timing value)が、精密タイムスタンプ部7に伝送される。すなわち、複数のTDC回路(5a〜5h)それぞれは、アナログ入力信号が複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、アナログ入力信号が該閾値を超えた時に、タイミング値を精密タイムスタンプ部7に出力する。これにより、精密タイムスタンプ部7は、複数のタイミング値を受信する。次いで、精密タイムスタンプ部7は、TDC(TDC回路5a〜5h)から受信した複数の実測タイミング値に重み付け処理を行なうことによって、複数の実測タイミング値を組み合わせて、精密タイムスタンプを計算する(図1、図2及び図6に示す「hti[K]」を参照)。上記の重み付け処理は、例えば、FIR(Finite Impulse Response)タイプのデジタル処理である。或いは、精密タイムスタンプ部7は、次段への送出に備えて、TDCからのそれらタイミング値をまとめる処理、すなわち、各タイミング値が独立的に再構成可能となるように複数のタイミング値をグループ化する処理を行なうことができる。
【0034】
なお、上記では、コンパレータの回路数と同数のTDC回路が設置される場合について説明した。しかし、本実施形態は、コンパレータの回路数より少ない数のTDC回路が設置される場合であっても良い。例えば、本実施形態は、TDC回路5a〜5hに代えて、コンパレータ2a〜2hを結合できる単一のマルチヒット型TDCを配置することが可能である。更に、複数のTDC回路5a〜5hが使用されるのか、それとも単一のマルチヒット型TDCが使用されるのかにかかわらず、TDCの精度は、種々の検出器速度(例えば、異なるシンチレータを使った検出器は、信号の立ち上がり時間が異なっている)に適応するように調節することができる。例えば、デュアルスロープTDCの容量値を変えることによって、又は、タップ付き遅延線TDCにおいて遅延部を組み合わせることによって、TDCの精度を調節することができる。
【0035】
また、本実施形態は、TDC回路5a〜5hの出力をトリガ検出部8に伝送して、有効トリガ条件が満足されたかどうかを、トリガ検出部8が検出することができる。トリガ検出部8は、更に、有効トリガ条件が満足されると信号(トリガ信号)を伝送して、精密タイムスタンプ部7が精密タイムスタンプを出力できるようにすることもできる。加えて、トリガ検出部8の結果(トリガ信号)は、エネルギー算出部9に伝送される。トリガ信号の伝送によってエネルギー算出部9が始動する。すなわち、トリガ検出部8は、上述した1つ又は複数のTDC回路により出力される複数のタイミング値を解析して、有効トリガ条件が満足される場合、イベント(例えば、対消滅イベントにより生じるガンマ線検出イベントとしてのシンチレーションイベント)が起こったことを検出する。そして、トリガ検出部8は、イベントが検出された時に外部装置(精密タイムスタンプ部7やエネルギー算出部9)にトリガ信号を出力する。なお、トリガ信号により始動する処理の詳細は、後述する。エネルギー算出部9は、アナログデジタル変換の部分に含まれる。
【0036】
図7は、本実施形態のアナログデジタル変換の部分に焦点を合わせた図である。図7は、アナログデジタル変換の部分を例示しており、本実施形態に係るアナログデジタル変換を行なう部分は、ローパスフィルタ11と、中間速度ADC10と、エネルギー算出部9とを備えている。
【0037】
トリガ検出部8からのメッセージ(トリガ信号)に応答してエネルギー算出が実施されるが、そのメッセージは、トリガ検出部8での局所的なトリガ検出によって開始させてもよい。或いは、近傍のチップ又はデバイスからの要求によって、そのトリガを開始させてもよい。かかる場合、トリガ検出部8は、外部装置によりイベントが検出された時に、当該外部装置から送信されるトリガ信号を受信して、トリガ信号を出力する。
【0038】
複数のコンパレータと複数のTDCとを組み合わせることで、リーディングエッジに対する高速サンプリングレートが効果的に実現できる。本実施形態において、コンパレータ2a〜2hに与えられる閾値それぞれは、リーディングエッジの中で、最も重要なタイミング情報を含んでいる部分を捕捉するようにプログラムされている。従って、本実施形態では、十分な数のコンパレータに接続されたTDC回路を用い、更に、各コンパレータに与える各閾値の間隔を、例えば不均等にすることで、リーディングエッジを精度良く検出できる。その結果、本実施形態では、高精度なタイムスタンプを得ることができる。また、相互作用のエネルギーを取得するために、中間速度ADC10等の中程度のサンプリングレートのADCを使って波形全体を捕獲することができる。或いは、そのADCに代えて、高速ADCを使用することができる。但し、本実施形態のシステムの1つの利点は、高速ADCに代えて中間的な部類のADCを使用できることである。低速の検出器が使用される時は、エネルギーを節約するようにADCコアの速度を調節することができる。例えば、BGOシンチレータ系検出器等の低速検出器は、LYSOシンチレータ系検出器よりも遥かに低い速度でサンプリングすればよい。従って、エネルギー情報は、デジタル式にサンプルを処理することによって算出される。
【0039】
アナログデジタル変換の部分では、入力信号(アナログ入力信号)は、図7に示すローパスフィルタ11によって取り込まれる。このローパスフィルタ11は、信号を出力する放射線/光検出器の性質に適応するために、かつ、異なる計数レート(対消滅イベント数)における性能を最適化するためにも、調節可能なコーナー周波数を有している。すなわち、ローパスフィルタ11は、アナログ入力信号を可調節にフィルタリングする。次いで、フィルタリング後の信号は、信号全体についてアナログデジタル変換を実施する中間速度ADC10により受信される。ローパスフィルタ11に接続される中間速度ADC10は、ローパスフィルタ11によりフィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成する。中間速度ADC10のデジタル出力は、エネルギー算出部9により受信される。エネルギー算出部9は、トリガ信号の受信に応答して、デジタル信号のエネルギーを算出する。エネルギー算出部9は、機能設定可能なデジタル処理部を利用して、光検出器(PMT)から出力される電気的パルスであって、上記のデジタル信号に含まれている電気的パルスのエネルギーを算出する(図1、図2及び図7に示す「h[K])を参照)。エネルギー算出部9は、エネルギーを推定するのに使用される計数レート依存性カーネル(count-rate-dependent kernel)を有する。例えば、計数レート依存性カーネルは、計数レートに基づいて、エネルギー算出で使用される特定の関数やパラメータを決定することができる。従って、エネルギーを算出するのに使用される重み付け関数やパラメータ(例えば、FIR系フィルタ等)は、計数レート依存性である。
【0040】
図8は、本実施形態のトリガ検出部の部分に焦点を合わせた図である。図8は、半導体デバイス1のトリガ検出の部分を例示している。本実施形態に係るトリガ検出を行なう部分は、トリガ検出部8が含まれている。トリガ検出部8は、外部トリガ検出デバイスからのトリガ入力を取り込む。或いは、トリガ検出部8で計算されたトリガ情報を外部トリガ検出デバイスに出力することができる。トリガ検出部8は、TDC回路5a〜5hから取り込んだ情報に基づいて、局所的にトリガを検出する。例えば、コンパレータ2a〜2hによって実施される比較において1つ又は複数の閾値との合致が起こると、トリガ検出部8は、信号レベルに基づいて、イベントが起こったという判断を下す。次いで、この情報は、トリガ信号として、エネルギー算出部9及びトリガ出力部に出力される(図1、図2及び図8に示す「htr[K]」を参照)。トリガ検出部8は更に、局所的に計算されたトリガ信号を、トリガ条件が満足されたときに、近傍のデバイス及びチップにも送出する。
【0041】
加えて、トリガ検出部8は、精密タイムスタンプ部7と交信して、TDC回路5a〜5hから取り込んだ信号がトリガ検出部8において実際にトリガを作動させていることを検証する。ノイズ及び他の要因に対処するために、トリガ検出部8は、精密タイムスタンプ部7の重み付け値を使って、トリガが実際に起こっていることを検証することができる。
【0042】
別の実施形態では、トリガ検出部は、トリガを検出したことに応答して、省電力モードにある精密タイムスタンプ部7及びエネルギー算出部9を復帰させることができる。
【0043】
図9は、本実施形態に係る出力方法の諸ステップを例示するフローチャートである。図9に示すステップS1において、PMTからPMT―INを介して入力信号(アナログ入力信号)が取り込まれる。
【0044】
ステップS2において、入力信号は分岐され、複数の閾値に対して比較される。すなわちステップS2では、複数のコンパレータを使って、入力信号を複数の閾値と比較する。それらの閾値は、同一値であってもよければ、同一値と不同値との組み合わせであってもよく、より典型的には、全て異なる値であってもよい。入力信号がコンパレータの閾値と交差することに応答して、そのコンパレータがパルスを出力し、対応するTDCがこのパルスを受信する。
【0045】
ステップS3において、閾値との合致が起こったことに応答して、TDCは、時間情報を求める。その時間情報は、ステップS4において、トリガ検出部8に出力される。このトリガ検出部8は、ステップS4において、その時間情報を使ってトリガ条件が満足されたかどうかを判定する。或いは、トリガ検出部8は、近傍のデバイスからトリガを開始させる情報を取り込む。
【0046】
この時間情報は、同時進行的に精密タイムスタンプ部7に出力される。この精密タイムスタンプ部7は、ステップS5において、重み付けアルゴリズムをそれらの値に適用して複合値を取り込むか、又はそれらの値が独立して維持されるように全ての値を一緒にまとめることによって、時間情報をフォーマットする。引き続いて、ステップS5において、そのフォーマット後の時間情報(精密タイムスタンプ)が出力される。
【0047】
ステップS6において、トリガ条件が満足されたことに応答して、トリガ情報(トリガ信号)が出力される。精密タイムスタンプ部7は、トリガ信号を受信した場合に、ガンマ線の検出時間(時刻)である精密タイムスタンプを出力する。
【0048】
ステップS7において、トリガ条件が満足されたことに応答して、ADCから入手された情報を使って、信号(アナログ入力信号)のエネルギーが計算される。ADCプロセスは、図9のステップS1A〜S3Aに例示されている。ステップS1Aにおいて、PMTから入力信号が取り込まれる。次いで、ステップS2Aにおいて、入力信号はフィルタリングされる。フィルタリング後の信号はADCに取り込まれ、ステップS3Aにおいて、そのフィルタリング後の信号をアナログデジタル変換する。次いで、そのADCデータ(デジタル信号)は、信号のエネルギーを計算するのに使用される。加えて、トリガ検出部8は、エネルギー計算を中止するように、エネルギー算出部9にメッセージを送出することができる。したがって、エネルギー算出部9は、トリガ検出部8から受け取った情報に基づいて、目標とするイベント(ガンマ線検出イベント)のエネルギーを計算することができる。
【0049】
従来、TOF−PETにおいて、ガンマ線検出に検出時刻(タイムスタンプ)を付与する方法は、次の2つが知られていた。第1の従来方法は、検出器が出力したパルスを、ディスクリミネータに入力し、ディスクリミネータの出力をTDCに入力する方法である。しかし、第1の従来方法では、例えば、ディスクリミネータやTDCの回路数が1つであるために、急峻な立ち上がりに含まれる検出時刻の情報(タイムスタンプ)を精度良く決定できなかった。また、第2の従来方法は、高速のADCを用いて、パルス波形をデジタル化し、解析する方法である。しかし、第2の従来方法では、高サンプルレートのために、例えば、高コストとなるBiCMOSが必要となる。
【0050】
これに対して、本実施形態に係る出力方法では、それぞれがTDC回路に接続された複数のコンパレータを用いて、動的に決定される複数の閾値を越えたタイミングを検出する。これにより、本実施形態では、ガンマ線検出に対する正確なタイムスタンプを取得することができる。すなわち、この方法では、複数の閾値を等間隔に設定する必要なく、タイムスタンプの精度向上を狙った最適な設定が可能である。また、この方法では、高速のADCを用いて等間隔でサンプルする従来の方法と異なり、急峻な立ち上がりにおいては高サンプルレートを、テールの部分に関しては低サンプルレートを自動的に実現することができる。すなわち、本実施形態に係る出力方法を実行する電子デバイスは、通常のCMOS技術により実現することができる。なお、上記では、8つの閾値それぞれに対応する8つのコンパレータを用いてリーディングエッジ部分のサンプリングが行なわれる場合を一例として説明した。しかし、本実施形態で決定される閾値の数やコンパレータの回路数は、例えば、100等、要求されるタイムスタンプの精度に応じて任意に変更可能である。
【0051】
本実施形態に係る出力方法により出力された精密タイムスタンプとエネルギーとを用いて、例えば、TOF−PET装置は、同時計数線とともに飛行時間差を求めて、高精度なPET画像データを再構成することができる。また、例えば、非TOF−PET装置においても、本実施形態に係る出力方法により出力された精密タイムスタンプとエネルギーとを用いて、高精度なPET画像データを再構成することができる。なお、本実施形態に係る出力方法を実行する電子デバイスは、放射線検出器からの出力信号を対象とする場合に限定されるものではない。本実施形態に係る出力方法を実行する電子デバイスは、一般的なアナログのパルスを測定する際のタイムスタンプ(及びパルスのエネルギー)を出力する装置に適用される場合であっても良い。
【0052】
ここで、少なくともローパスフィルタ、トリガ検出部、エネルギー算出部、及び精密タイムスタンプ部は、何らかの形態のデジタル論理回路を使って構築することができる。当業者であれば気付くように、デジタル論理回路は、個別論理ゲート、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、又は、他のコンプレックスプログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として構築することができる。FPGA又はCPLDの実施態様は、VHDL(VHSIC Hardware Description Language)、Verilog、又は、他の任意のハードウェア記述言語でコード化することができる。そして、そのコードは、そのFPGA若しくはCPLD内部に直接搭載されている電子メモリ又は独立した電子メモリとしての電子メモリに格納することができる。更に、その電子メモリは、ROM、EPROM(electrically programmable read only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)、又はフラッシュメモリ(flash memory)といった不揮発性とすることができる。電子メモリは更に、スタティックRAM又はダイナミックRAMといった揮発性とすることも可能であり、FPGA又はCPLDと電子メモリとの間の対話のみならず電子メモリを管理するのに、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサ等のプロセッサを設けることができる。
【0053】
或いは、デジタル論理回路は、前述の非一時的電子メモリ及び/又はハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ、若しくは他の任意の公知の記憶媒体のうちのいずれかに格納されているプログラムであって、本実施形態に記載の機能を実施する一組のコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを実行できるデジタル回路機構及びコンピュータ/デジタル信号プロセッサの組み合わせを使って、実現してもかまわない。更に、そのコンピュータ可読命令は、米国インテル社によるXeonプロセッサ(登録商標)、又は、米国AMD社によるOpteronプロセッサ(登録商標)等のプロセッサ、並びにMicrosoftVISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple MAC−OSX(登録商標)、及び当業者に公知の他のオペレーティングシステム等のオペレーティングシステムと一緒に動作する、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、又はオペレーティングシステムの構成要素として提供することができ、それらの組み合わせとして提供することもできる。
【0054】
加えて、実施形態の一定の特徴は、図10に例示するコンピュータ1000を核とするシステムを使って実施することができる。図10は、本実施形態に係るコンピュータシステムを示す図である。図10に例示するコンピュータ1000は、バスB、又は、情報を交信する他の通信機構と、そのバスBに結合された情報処理用のプロセッサであるCPU1004とを備えている。コンピュータ1000は、更に、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)又は他のダイナミック記憶装置(例えば、ダイナミックRAM(dynamic RAM:DRAM)、スタティックRAM(Static RAM:SRAM)、及びシンクロナスDRAM(Synchronous DRAM:SDRAM))といった、情報及びCPU1004が実行する命令を格納するように、バスBに結合された主記憶装置であるメモリ部1003も備えている。加えて、CPU1004が命令を実行する際に、メモリ部1003を使って、一時的変数又は他の中間的情報を格納することができる。コンピュータ1000は、更に、静的な情報及びCPU1004用の命令を格納するように、バスBに結合された読出専用メモリ(Read Only Memory:ROM)又は他のスタティック記憶装置(例えば、プログラマブルROM(Programmable ROM:PROM)、消去可能PROM(Erasable PROM:EPROM)、及び電気的消去可能PROM(Electrically erasable PROM:EEPROM))も備えることができる。
【0055】
コンピュータ1000は、更に、バスBに結合されて、大容量記憶装置1002等の情報及び命令を格納するための1つ又は複数の記憶装置を制御するディスク制御部、及び駆動装置1006(例えば、フロッピディスクドライブ、読出専用コンパクトディスクドライブ、読出/書込コンパクトディスクドライブ、コンパクトディスクジュークボックス、テープドライブ、及びリムーバブル磁気光学ドライブ)も備えることができる。それらの記憶装置は、適切なデバイスインターフェース(スモールコンピュータシステムインターフェース(Small Computer System Interface:SCSI)、インテグレーテッドデバイスエレクトロニクス(Integrated Device Electronics:IDE)、エンハンストIDE(Enhanced-IDE:E−IDE)、ダイレクトメモリアクセス(Direct Memory Access:DMA)、又はウルトラDMA)を使って、コンピュータ1000に加えることができる。
【0056】
コンピュータ1000は、更に、専用論理デバイス(例えば、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuits:ASIC)又は構成可能論理デバイス(例えば、シンプルプログラマブルロジックデバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))も備えることができる。
【0057】
コンピュータ1000は、更に、バスBに結合されて、陰極線管(Cathode Ray Tube:CRT)等のコンピュータ使用者に情報を表示するためのディスプレイを制御するディスプレイコントローラも備えることができる。コンピュータシステムは、キーボード及びポインティングデバイス等の、コンピュータ使用者と対話するとともにプロセッサに情報を提供するための入力デバイスを備えている。そのポインティングデバイスは、プロセッサへの指示情報及びコマンド選択を交信すること、及び、ディスプレイ上のカーソルの動きを制御することを目的とする、例えば、マウス、トラックボール、又はポインティングスティックとすることができる。加えて、プリンタは、コンピュータシステムによって格納され且つ/又は生成されたデータ一覧の印刷物を提供することができる。
【0058】
コンピュータ1000は、メモリ部1003等のメモリに収容された1つ又は複数の命令から成る1つ又は複数のシーケンスをCPU1004が実行することに応答して、本実施形態に係る出力方法の諸処理ステップのうちの少なくとも一部分を実施する。かかる命令は、大容量記憶装置1002又はリムーバブルな記憶媒体1001等の別のコンピュータ可読媒体からメモリ部1003に読み込むことができる。メモリ部1003に収容されている命令のシーケンスを実行するのに、1つ又は複数のマルチプロセッシング構成のプロセッサも活用することができる。別の実施形態において、ソフトウェアによる命令に代えて、又は、ソフトウェアによる命令との組み合わせで、ハードワイヤ回路も使用することができる。従って、実施形態は、ハードウェア回路機構及びソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0059】
上述したように、コンピュータ1000は、コンピュータ可読な記憶媒体1001、又は、「本実施形態の教示に従ってプログラムされた命令を保持すること、及びデータ構造、テーブル、レコード、若しくは本実施形態に記載の他のデータを収容することを目的とするメモリ」を少なくとも1つ備えている。コンピュータ可読媒体の例には、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピディスク、テープ、磁気光学ディスク、PROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM、又はコンピュータが読める他の任意の磁気媒体、コンパクトディスク(例えばCD−ROM)、若しくは他の任意の媒体がある。
【0060】
コンピュータ可読媒体のいずれか又はその組み合わせに格納されるものとして、本発明は、CPU1004を制御すること、本発明を実施するように1つ又は複数のデバイスを駆動すること、及びCPU1004がユーザたる人間と対話できるようにすることを目的とするソフトウェアを含む。かかるソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、及びアプリケーションソフトウェアを例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。かかるコンピュータ可読媒体は更に、本発明を実施する際に実行される処理の全部又は一部(処理が分散されている場合)を実行するための、本発明のコンピュータプログラム製品を含んでいる。
【0061】
本実施形態の媒体上のコンピュータ用コードエレメントは、任意の解釈可能な又は実行可能なコード構造とすることができる。スクリプト、解釈可能プログラム、ダイナミックリンクライブラリ(Dynamic Link Library:DLL)、Java(登録商標)クラス、及び完全実行可能プログラムが例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に、本実施形態の処理の一部を分散させて、性能、信頼性、及び/又はコストを良化することができる。
【0062】
本実施形態では、「コンピュータ可読媒体」なる用語は、CPU1004に命令を提供して実行させることに関与する任意の媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、多くの形態を成すことができる。不揮発性媒体及び揮発性媒体が例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。不揮発性媒体の例として、例えば、大容量記憶装置1002、又は、リムーバブルな記憶媒体1001等としての光ディスク、磁気ディスク、及び磁気光学ディスクが挙げられる。揮発性媒体の例として、メモリ部1003等のダイナミックメモリが挙げられる。
【0063】
CPU1004に実行させる1つ又は複数の命令から成る1つ又は複数のシーケンスを実施するのに、種々の形態のコンピュータ可読媒体が必要になるであろう。例えば、命令は、最初は遠隔コンピュータの磁気ディスク上に保持しておくことができる。バスBに結合された入力部は、バスBを介して、データを出し入れすることができる。バスBは、データをメモリ部1003まで搬送する。CPU1004は、そこから命令を取り出して実行する。メモリ部1003によって取り込まれた命令は、必要に応じて、CPU1004による実行の前又は後に、大容量記憶装置1002上に格納することができる。
【0064】
コンピュータ1000は、更に、バスBに結合された通信インターフェース1005も備えている。通信インターフェース1005は、双方向通信を可能にするものであり、例えばローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)又はインターネット等の別の通信ネットワークに接続されたネットワークと結合する。例えば、通信インターフェース1005は、任意のパケット交換式LANに装着できるネットワークインターフェースカードとすることができる。別の例として、通信インターフェース1005は、非対称デジタル加入者線(Asymmetrical Digital Subscriber line:ADSL)カード、総合サービスデジタル網(Integrated Services Digital Network:ISDN)カード、又は、対応する様式の通信回線へのデータ通信接続を提供するモデムとすることができる。ワイヤレスリンクを構築することも可能である。かかる実施態様のいずれにおいても、通信インターフェース1005は、様々な種類の情報に相当するデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、又は光信号を送受信する。
【0065】
ネットワークは、典型的には、1つ又は複数のネットワークを介した他のデータデバイスへのデータ通信を可能にする。例えば、ネットワークは、ローカルなネットワーク(例えばLAN)を経由して、又は通信ネットワークを介して通信サービスを提供するサービスプロバイダが運用する機器を経由して、他のコンピュータへの接続を提供することができる。ローカルなネットワーク及び通信ネットワークは、例えば、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、又は光信号及び関連の物理層(例えば、CAT5ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバ、等)を使用する。更に、ネットワークは、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)、ノートパソコン、又は携帯電話といった移動デバイスへの接続を提供することができる。
【0066】
以上、説明したとおり本実施形態によれば、高精度なタイムスタンプを得ることができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 半導体デバイス
2a〜2h コンパレータ
3a〜3h、5a〜5h TDC回路
4a〜4h エッジデコード回路(デコーダ)
6 システムクロック
7 精密タイムスタンプ部
8 トリガ検出部
9 エネルギー算出部
10 中間速度ADC
11 ローパスフィルタ
12 閾値決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の閾値を動的に決定する閾値決定部と、
各コンパレータ回路が前記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する複数のコンパレータ回路と、
前記複数のコンパレータ回路それぞれに接続され、前記アナログ入力信号が前記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、前記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力する少なくとも1つの時間デジタル変換回路と、
前記アナログ入力信号をフィルタリングする可調節なローパスフィルタ部と、
前記ローパスフィルタ部に接続され、前記ローパスフィルタ部によりフィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成するアナログデジタル変換回路と、
トリガ信号の受信に応答して、前記デジタル信号のエネルギーを算出するエネルギー算出部と、
を備える、電子デバイス。
【請求項2】
前記複数の時間値を受信し、当該受信した複数の時間値に対する出力用の処理として、重み付け処理により前記複数の時間値を組み合わせる処理、及び、各時間値が独立的に再構成可能となるように前記複数の時間値をグループ化する処理の1つを含む処理を行なう精密なタイムスタンプ部、
を更に備える、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの時間デジタル変換回路により出力される前記複数の時間値を解析することで、イベントを検出するトリガ検出部、
を更に備える、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記トリガ検出部は、前記イベントが検出された時に外部装置にトリガ信号を出力する、請求項3に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記トリガ検出部は、外部装置により前記イベントが検出された時に、当該外部装置から送信されるトリガ信号を受信する、請求項3に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記閾値決定部は、更に、前記複数の閾値を動的に決定する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記閾値決定部は、更に、均一に離間されるように前記複数の閾値を動的に決定する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記閾値決定部は、更に、不均一に離間されるように前記複数の閾値を動的に決定する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記閾値決定部は、更に、パルスの立ち上がり付近で相互に接近するように前記複数の閾値を動的に決定する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項10】
アナログ入力信号の時間値及びエネルギーを出力するための出力方法であって、
複数の閾値を動的に決定し、
複数のコンパレータ回路を用いて、前記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較し、
前記複数のコンパレータ回路それぞれに接続された少なくとも1つの時間デジタル変換回路を用いて、前記アナログ入力信号が前記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、前記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力し、
前記アナログ入力信号をフィルタリングし、
アナログデジタル変換回路を用いて、前記フィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成し、
トリガ信号の受信に応答して、前記デジタル信号のエネルギーを算出する、
ことを含む出力方法。
【請求項11】
前記複数の時間値を受信し、当該受信した複数の時間値に対する出力用の処理として、重み付け処理により前記複数の時間値を組み合わせる処理、及び、各時間値が独立的に再構成可能となるように前記複数の時間値をグループ化する処理の1つを含む処理を行なう、
ことを更に含む、請求項10に記載の出力方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの時間デジタル変換回路により出力される前記複数の時間値を解析することで、イベントを検出する、
ことを更に含む、請求項10に記載の出力方法。
【請求項13】
前記イベントが検出された時に外部装置にトリガ信号を出力する、
ことを更に含む、請求項12に記載の出力方法。
【請求項14】
外部装置により前記イベントが検出された時に、当該外部装置から送信されるトリガ信号を受信する、
ことを更に含む、請求項12に記載の出力方法。
【請求項15】
前記複数の閾値を動的に決定する、
ことを更に含む、請求項14に記載の出力方法。
【請求項16】
均一に離間されるように前記複数の閾値を動的に決定する、
ことを更に含む、請求項10に記載の出力方法。
【請求項17】
不均一に離間されるように前記複数の閾値を動的に決定する、
ことを更に含む、請求項10に記載の出力方法。
【請求項18】
パルスの立ち上がり付近で相互に接近するように前記複数の閾値を動的に決定する、
ことを更に含む、請求項10に記載の出力方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの時間デジタル変換回路は、複数の時間デジタル変換回路を含む、請求項10に記載の出力方法。
【請求項20】
複数の閾値を動的に決定する閾値決定部と、
各コンパレータ回路が前記複数の閾値の中で対応する閾値とアナログ入力信号とを比較する複数のコンパレータ回路と、
前記複数のコンパレータ回路の中で対応するコンパレータ回路に接続される複数の回路であって、各回路が、前記アナログ入力信号が前記複数の閾値の中の1つの閾値と合致した時、又は、前記アナログ入力信号が該閾値を超えた時に時間値を出力することで複数の時間値を出力する複数の時間デジタル変換回路と、
前記アナログ入力信号をフィルタリングする可調節なローパスフィルタ部と、
前記ローパスフィルタ部に接続され、前記ローパスフィルタ部によりフィルタリングされたアナログ入力信号をアナログデジタル変換して、デジタル信号を生成するアナログデジタル変換回路と、
トリガ信号の受信に応答して、前記デジタル信号のエネルギーを算出するエネルギー算出部と、
を備える、電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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