説明

電子デバイス

【課題】電極の曲がった部分における信号損失を低減する。
【解決手段】信号電極3bは、曲がり部4aを有している。接地電極3cは、信号電極3bを挟むように形成されている。また、信号電極3bと接地電極3cは、曲がり部4aにおける信号電極3bと接地電極3cとのギャップの幅S1が、曲がり部4aの両端における信号電極3bと接地電極3cとのギャップの幅S2より狭くなるように形成されている。これにより、曲がり部4aにおける電界分布が抑制され、信号電極3bの曲がり部4aでの信号損失を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は曲がった部分を有する電極を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信装置には、電気光学効果を利用して光を変調する光変調器が搭載されている。光変調器は、例えば、光導波路デバイスによって構成され、レーザから出力されるCW(Continuous Wave)光を電気信号によって変調し、出力する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図22は、光導波路デバイスの平面図である。図22に示す光導波路デバイスは、電気光学効果を有する誘電体の基板101上に光導波路102が形成され、その上に電極103が形成されている。光導波路デバイスは、デュアルドライブ型の光変調器であり、2本の平行導波路102a,102bに対して、2つの信号電極103a,103bで電界を与え、レーザから出力される入力光INを変調し、出力光OUTを得る。
【0004】
図22に示す光導波路デバイスでは、2つの信号電極103a、103bに、正のデータDataと負のデータData(図中ではDataバー)の相補電気信号を与え、プッシュプル駆動させる。このとき、光導波路デバイスは、2つの平行導波路102a,102bを伝播する光に対して、同じタイミングで変調をかける必要がある。具体的には、信号電極103a,103bに入力されるデータDataは、図22に示すライン104において、同じタイミングで平行導波路102a,102bに到達する必要がある。
【0005】
そこで、光導波路デバイスでは、信号電極103a,103bのデータDataの入力部から、平行導波路102a,102bに至るまでのフィード部の距離を調整し、平行導波路102a,102bに到達する相補のデータDataのタイミングを調整する。例えば、図22の枠105に示すように信号電極103bを曲げ、データDataのタイミングを調整する。
【0006】
基板101の内ではマイクロ波の伝播を可能とする固有モードが複数存在し、その電界分布と伝播速度はチップの断面形状に依存する。電極を伝播するコプレーナモードが周波数でコプレーナモードから固有モード(不要モード)への結合が生じ、損失となる。この結合は、コプレーナモードの伝播方向が変化する曲がり部において生じやすいので、電極を曲げた部分では損失が発生しやすくなる。また、結合の大きさはコプレーナモードの電界と不要モードとの重なりが大きいほど大きくなり、一般にはコプレーナモードの電界が広がるほど大きくなる。したがって、信号電極と接地電極のギャップが広いほど、損失が大きくなる。なお、光を使用しない電子デバイスには、光が透過しない誘電体基板を用いてもよい。
【特許文献1】特開2008−58436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電極を曲げた部分では、電界分布が直線部分と異なり信号損失が発生するという問題点があった。
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、電極の曲がった部分での信号損失を低減する電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、電子デバイスが提供される。この電子デバイスは、曲がった部分を有する信号電極と、前記信号電極を挟むように形成される接地電極と、を備え、前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップが、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
開示の電子デバイスでは、電極の曲がった部分における信号損失を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る光導波路デバイスの平面図である。図1に示す光導波路デバイスは、誘電体の基板1上(基板1内の表面付近)に光導波路2が形成されている。基板1は、LiNbO3やLiTaO2などの電気光学結晶によって構成される。
【0011】
光導波路2は、入射導波路2a、平行導波路2b,2c、および出射導波路2dから構成されている。光導波路2は、基板1上の一部にTiなどの金属膜を形成して熱拡散させるか、あるいは、パターニング後に安息香酸中でプロトン交換するなどして形成される。
【0012】
斜線で示す電極3は、電気信号(データ)が伝播する信号電極3a,3bおよび接地電極3cから構成される。電極3は、コプレーナ電極を構成している。基板1にZカット基板を用いる場合、Z方向の電界による屈折率変化を利用するため、電極3は、光導波路2の上に形成される。電極3は、光導波路2の上にパターニングするが、平行導波路2b,2cを伝播する光が電極3によって吸収されるのを防ぐため、基板1と電極3との間にバッファ層を形成する。バッファ層は、例えば、厚さ0.2〜2μm程度のSiO2などを用いる。
【0013】
図1の光導波路デバイスは、デュアルドライブ型の光変調器であり、2本の平行導波路2b,2cに対して、2つの信号電極3a,3bで電界を与え、レーザから出力される入力光INを変調し、出力光OUTを得る。
【0014】
光導波路デバイスを高速駆動する場合、信号電極3a,3bと接地電極3cの終端を抵抗で接続して進行波電極とし、入力側からマイクロ波の信号を印加する。このとき、平行導波路2b,2cの屈折率は、電界によって+Δna,−Δnbのように変化する。これにより、入力光INは、平行導波路2b,2c間で位相差が変化し、マッハツェンダ干渉によって出射導波路2dから、強度変調された出力光OUTが出力される。信号電極3a,3bの断面形状を変化させることでマイクロ波の実効屈折率を制御し、光とマイクロ波の速度を整合させることによって高速の光応答特性を得ることができる。
【0015】
光導波路デバイスは、図1の枠4に示すように信号電極3bを曲げ、データDataの平行導波路2b,2cに到達するタイミングを調整する遅延部を有している。遅延部は、マイクロ波信号の損失が抑制されるように、曲げた部分において、信号電極3bと接地電極3cとのギャップが他の部分のギャップよりも狭くなっている。
【0016】
図2は、遅延部を拡大した図である。図2に示す遅延部は、図1の枠4に示した遅延部を拡大したものであり、図1と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
信号電極3bは、データDataのタイミングを調整するため、曲がった部分(曲がり部)4aを有している。信号電極3bは、図2に示すように曲がり部4aにおいて、その方向が90度曲げられている。
【0017】
曲がり部4aでの信号電極3bと接地電極3cとのギャップの幅S1は、その他の部分(フィード部の直線部分)における信号電極3bと接地電極3cとのギャップの幅S2より狭くなっている。すなわち、信号電極3bと接地電極3cは、曲がり部4aにおいてギャップの幅がS1<S2となるように形成されている。曲がり部4aでの信号電極3bと接地電極3cとのギャップを、その他の部分のギャップより狭くすることにより、曲がり部4aでの電界分布(電界の広がり)を抑制することができ、信号損失を低減することができる。
【0018】
図3は、曲がり部のギャップを狭くした場合の信号損失を示した図である。図4は、曲がり部のギャップを狭くしなかった場合の信号損失を示した図である。図3、図4のグラフの横軸は、周波数を示し、縦軸は、SパラメータのS21(電気信号の損失、S21=出力パワー/入力パワー)を示す。
【0019】
図3の波形W1に示すように、遅延部の曲がり部4aのギャップを他の部分より狭くすると、狭くしない場合の図4の波形W2に比べ、信号電極3bに入力される電気信号の信号損失の部分的な落ち込みが抑制される。また、高周波帯域での電力損失が低減される。
【0020】
このように、信号電極3bと接地電極3cの曲がり部4aにおけるギャップを、他の部分のギャップよりも狭くなるように形成した。これにより、曲がり部4aにおける電界分布を抑制することができ、曲がり部4aでの信号損失を低減することができる。
【0021】
また、電界分布を抑制することにより、他の信号へのクロストークや光への干渉を抑制することができる。例えば、基板1上に複数の光導波路2が形成され、複数の信号電極が形成される場合にも有効である。
【0022】
また、基板1を、LiNbO3やLiTaO2などの強誘電体で構成する場合、信号電極3a,3bの特性インピーダンスが小さくなり、特性インピーダンスを大きくするため信号電極3a,3bと接地電極3cとの間のギャップを広く設計することになる。このため、基板1が強誘電体の場合、信号電極3bの曲がり部4aの信号損失が大きくなるが、この部分のギャップを狭くするように形成することにより、曲がり部4aでの信号損失を有効に低減することができる。
【0023】
また、曲がり部4aでのギャップを狭くしたことによる信号損失の低減効果を高めるために、曲がり部4aにおけるギャップは、基板1の厚さより薄くするように形成する。曲がり部4aでのギャップが基板1の厚さより大きいと、電界分布が基板1の裏面に形成されたグランドに到達し、曲がり部4aでのギャップを狭くした効果が低下するからである。また、基板1内にグランド層を形成する場合は、曲がり部4aにおけるギャップは、信号電極3a,3bと基板1内に形成されるグランド層との距離より短くなるように形成する。
【0024】
なお、曲がり部4aのギャップを狭くすると、その狭くした部分においてインピーダンスが小さくなり、信号の反射が問題となる場合がある。この場合、曲がり部4aでの信号電極3bの幅を、その他の部分(曲がり部4a以外の信号電極3bの部分)の幅より狭くすることによりインピーダンス低下を抑制し、信号の反射を抑制することができる。
【0025】
また、上記では、図1の枠4での、信号電極3bの曲がり部4aのギャップを狭くするとしたが、その他の信号電極3a,3bの曲がり部にも適用することができる。ただし、電気信号と光が干渉する相互作用部(平行導波路2b,2cの部分)の終端(電気信号と光の干渉を終えた後段部分)では、電気信号の損失を考慮する必要がないので、相互作用部の手前側の曲がり部のみ適用すればよい。
【0026】
また、上記では、光導波路デバイスの電極について説明したが、その他の電子デバイスに形成される電極にも適用することができる。すなわち、電子デバイスの基板上または基板内に形成される電極が曲がった部分を有する場合、その部分の信号電極と接地電極のギャップをその他の部分のギャップより狭くすることにより、電界分布による信号損失を低減することができる。
【0027】
次に、第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、曲がり部のギャップが階段状に変化するように信号電極および接地電極を形成した。第2の実施の形態では、曲がり部のギャップが徐々に狭くなるように、信号電極および接地電極を形成する。
【0028】
図5は、第2の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図5において、図2と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図2に示すように、接地電極3cは、曲がり部4aの両端において、テーパー11a,11bを有するように形成されている。曲がり部4aでの信号電極3a,3bと接地電極3cとのギャップは、テーパー11a,11bによって徐々に狭くなり、ギャップが幅S2から幅S1になると、幅S1で一定となるように形成されている。
【0029】
このように、曲がり部4aのギャップを徐々に狭くすることにより、電界分布の急激な変化に伴う信号の損失を低減することができる。
次に、第3の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、曲がり部の電極を、カーブを描くように形成した。第3の実施の形態では、曲がり部の電極を、矩形状に折り曲がるように形成する。
【0030】
図6は、第3の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図6において、図5と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、曲がり部4aでの信号電極3a,3bと接地電極3cは、直角に曲がるように形成されている。
【0031】
このように、曲がり部4aでの信号電極3a,3bと接地電極3cとを矩形状に折り曲がるように形成することにより、電極3のパターン作成が容易となる。また、曲がり部4aの面積を小さくすることができる。
【0032】
次に、第4の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、曲がり部で形成される外側のギャップと内側のギャップの両方を狭くなるように形成した。第4の実施の形態では、曲がり部で形成される2つのギャップの一方のみを狭くなるように形成する。
【0033】
図7は、第4の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図7において、図5と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、曲がり部4aで形成される外側のギャップ21aは、その他の部分のギャップに対し、狭く形成されている。
【0034】
曲がり部4aで形成される内側のギャップ21bは、その他の部分のギャップと同じ幅で形成されている。
すなわち、外側のギャップ21aの幅S1は、その他の部分のギャップの幅S2に対し、S1<S2となるように形成されている。内側のギャップ21bの幅S2は、その他の部分のギャップの幅S2に対し、S1=S2となるように形成されている。
【0035】
信号電極3a,3bと接地電極3cのギャップを一部狭くすると、その狭くした部分においてインピーダンスが小さくなり、信号の反射が問題となる場合がある。このような信号の反射が問題となる場合、曲がり部4aの外側のギャップ21aのみ、狭くすることにより、信号損失を低減するとともに、インピーダンスの低下を抑制して、信号の反射を抑制することができる。
【0036】
このように、曲がり部4aの外側のギャップ21aのみを狭く形成することにより、信号損失を低減するとともに、信号の反射を抑制することができる。
また、第1の実施の形態で述べたように、信号電極3bの幅を狭くしてインピーダンスの低下を抑制することも可能であるが、信号電極3bの幅をあまりにも狭くすると、信号電極3bが断線する可能性がある。これに対し、上記の曲がり部4aのギャップ21a,21bの一方のみを狭くする方法では、信号電極3bの幅を狭くする必要がなく、断線する可能性が低くなる。
【0037】
なお、上記では、外側のギャップ21aを狭くするとしたが、内側のギャップ21bのみを狭く形成するようにしてもよい。ただし、外側のギャップを狭くした方が、内側のギャップを狭くした場合に比べ、信号損失の低減の効果が高い。
【0038】
次に、第5の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、外側のギャップを狭く形成する際、曲がり部の両端にテーパーを形成して、曲がり部でのギャップを狭くなるように形成した。第5の実施の形態では、曲がり部全体において両端からギャップを徐々に狭くなるように形成する。
【0039】
図8は、第5の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図8において、図7と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、曲がり部4aで形成される外側のギャップ31aは、その他の部分のギャップに対し、狭く形成されている。外側のギャップ31aは、曲がり部4aの両端から、曲がり部4aの全体において徐々に狭くなるように形成されている。外側のギャップ31aの最も狭い部分の幅は幅S1となっている。
【0040】
曲がり部4aで形成される内側のギャップ31bは、その他の部分のギャップと同じ幅で形成されている。すなわち、外側のギャップ31aの幅S1は、その他の部分のギャップの幅S2に対し、S1<S2となるように形成されている。内側のギャップ31bの幅S2は、その他の部分のギャップの幅S2に対し、S1=S2となるように形成されている。
【0041】
このように、曲がり部4aの全体においてギャップを徐々に狭くなるように形成することもできる。
次に、第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態では、曲がり部での信号電極と接地電極の厚さを薄くして、インピーダンス低下による信号の反射を抑制する。
【0042】
図9は、第6の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図10は、図9のA−A断面図である。図11は、図9のB−B断面図である。図9〜図10において、図5と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図10に示すように、曲がり部4aにおける信号電極3bと接地電極3cは、厚さがt1となるように形成する。例えば、信号電極3bの曲がっている部分と、その曲がっている部分に沿う接地電極3cの所定幅の部分とを、厚さがt1となるように形成する。
【0044】
図11に示すように、曲がり部4a以外の部分における信号電極3bと接地電極3cは、厚さがt2となるように形成する。t1,t2には、t1<t2の関係がある。
このように、曲がり部4aでの信号電極3bと接地電極3cの厚さを、その他の部分の信号電極3bと接地電極3cの厚さより薄くなるように形成する。これにより、曲がり部4aでのインピーダンス低下が抑制され、信号の反射を抑制することができる。
【0045】
また、信号電極3bの幅を狭くしなくて済み、信号電極3bの断線の可能性が低くなる。
なお、上記では、曲がり部4aにおける信号電極3bと接地電極3cの両方の厚さを、他の部分より薄くなるように形成するとしたが、接地電極3cのみの厚さを薄くなるように形成してもよい。この場合も曲がり部4aでのインピーダンス低下を抑制することができる。また、接地電極3cのみの厚さを薄くするので、信号電極3bの断線の可能性を低減することができる。
【0046】
次に、第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、曲がり部における電極と基板の間にバッファ層を形成する。
図12は、第7の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図13は、図12のA−A断面図である。図12、図13において、図5と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図13に示すように、曲がり部4aにおける基板1と、信号電極3bおよび接地電極3cとの間に、バッファ層41を形成する。バッファ層41は、例えば、SiO2などによって構成される。
【0048】
なお、曲がり部4a以外の部分では、バッファ層を形成しない。従って、図12のB−B断面図は、図11と同様になる。
このように、曲がり部4aにおける基板1と、信号電極3bおよび接地電極3cとの間に、バッファ層41を形成することにより、曲がり部4aでの電界分布による、光導波路2を伝播する光の損失を低減することができる。
【0049】
なお、曲がり部4a以外の全部にバッファ層を形成するようにしてもよい。また、光導波路2の上部など、光の損失が生じる部分にバッファ層を形成するようにしてもよい。
また、基板1と電極3の間の全体にバッファ層を形成し、曲がり部4aの信号電極3bと接地電極3cの部分のみ、その他の部分のバッファ層よりその厚さを厚く形成するようにしてもよい。
【0050】
次に、第8の実施の形態について説明する。第8の実施の形態では、曲がり部に溝を形成し、インピーダンスの低下を抑制して信号の反射を抑制するようにする。
図14は、第8の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部の断面図を示した図である。図14の断面図は、例えば、図12のA−A部分の断面に相当する。図14において、図10と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図14に示すように、曲がり部4aにおける信号電極3bと接地電極3cとの間の基板1に、溝51a,51bを形成する。溝51a,51bを形成することにより、空気の部分が増え、インピーダンスが増加する。
【0052】
なお、曲がり部4a以外のギャップ部分では、溝を形成しない。従って、曲がり部4a以外の断面図(例えば、図12のB−B部分に相当する断面)は、図11と同様になる。
このように、曲がり部4aにおいて、信号電極3bと接地電極3cとの間のギャップに溝51a,51bを形成する。これにより、曲がり部4aのインピーダンス低下を抑制することができ、信号の反射を抑制することができる。
【0053】
なお、信号電極3a,3bと接地電極3cとの間の全部において、基板1に溝を形成するようにしてもよい。この場合、曲がり部4aにおける信号電極3bと接地電極3cとの間の溝51a,51bは、他の部分の溝より深くなるように形成する。
【0054】
次に、第9の実施の形態について説明する。第9の実施の形態では、曲がり部における溝を、他の部分の溝の幅より広くなるように形成する。
図15は、第9の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部の断面図を示した図である。図15の断面図は、例えば、図12のA−A部分の断面に相当する。図15において、図10と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
信号電極3a,3bの両側に溝を形成する。ただし、曲がり部4aにおいては、図15に示すように、溝61a,61bの幅を他の部分の溝の幅より広くなるように形成する。他の部分より広く形成された溝61a,61bの上部には、図15に示すように、接地電極3cが一部形成される。
【0056】
このように、曲がり部4aのギャップが狭くなる部分の溝61a,61bの幅を、他の部分の溝より幅を広くなるように形成する。これにより、曲がり部4aのインピーダンス低下を抑制することでき、信号の反射を抑制することができる。
【0057】
次に、第10の実施の形態について説明する。第10の実施の形態では、曲がり部での信号電極と溝との距離が、他の部分の信号電極と溝との距離より近くなるように信号電極を形成する。
【0058】
図16は、第10の実施の形態に係る光導波路デバイスの曲がり部の断面図を示した図である。図17は、第10の実施の形態に係る光導波路デバイスの曲がり部以外の断面図を示した図である。図16の断面図は、例えば、図12のA−A部分の断面に相当する。図17の断面図は、例えば、図12のB−B部分の断面に相当する。
【0059】
図16、図17に示すように、信号電極3bの両側に溝71a,71bを形成する。ただし、曲がり部4aにおいては、溝71a,71bは、信号電極3bとの距離がその他の部分の信号電極3bとの距離より近くなるように形成する。
【0060】
例えば、図16に示すように、曲がり部4aでは、信号電極3a,3bの両側から距離0の所に溝71a,71bが形成されている。一方、曲がり部4a以外の所では、図17に示すように、信号電極3a,3bの両側から距離d離れた所に溝71a,71bが形成されている。
【0061】
ここで、距離dが短いほど、インピーダンスは高くなるという関係がある。従って、曲がり部4aでの距離を、曲がり部4a以外の距離より短くすることにより、曲がり部4aでのインピーダンスの低下を抑制することができる。
【0062】
このように、曲がり部4aにおける信号電極3bと溝71a,71bとの距離を、他の部分の信号電極3bと溝71a,71bとの距離より近くなるように形成する。これにより、信号の反射を抑制することができる。
【0063】
次に、第11の実施の形態について説明する。第11の実施の形態では、曲がり部での信号電極を挟む接地電極を接続し、信号損失の低減を図る。
図18は、第11の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図18において、図5と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図18に示すように、曲がり部4aにおける信号電極3bの両側にある接地電極3cを、ワイヤ81で接続する。ワイヤ81は、信号電極3bを跨いで接地電極3cに接続される。
【0065】
このように、曲がり部4aでの信号電極3bを挟む接地電極3cをワイヤ81によって接続することにより、接地が強化され、さらなる信号損失の低減を図ることができる。
なお、ビアによって信号電極3bを挟む接地電極3cを接続するようにしてもよい。
【0066】
図19は、ビアによって接地電極を接続した光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図19において、図5と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図19に示すように、曲がり部4aにおける信号電極3bの両側にある接地電極3cを、ビア82で接続する。ビア82は、例えば、基板1の裏面、または基板1内に形成されるグランド層に接続する。
【0067】
このように、曲がり部4aでの信号電極3bを挟む接地電極3cをビア82によって接続することにより、接地が強化され、さらなる信号損失の抑制を図ることができる。
次に、第12の実施の形態について説明する。第12の実施の形態では、基板がXカットの異方性材料の場合について説明する。
【0068】
図20は、第12の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図20において、図2と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
基板1にXカット基板を用いた場合、図20の紙面上の縦方向と横方向とで誘電率が変わる。従って、信号電極3bの方向を曲がり部4aにて変えると、インピーダンスが変化する。このため、曲がり部4aの両端に続く信号電極3bと接地電極3cとの間のギャップは、図20に示すように、それぞれ、幅S3,S4と異なるように形成する。すなわち、フィード部の信号電極3a,3bの直線部分におけるギャップは、信号電極3a,3bの形成される方向によって変える。
【0069】
そして、曲がり部4aでの信号損失を低減するため、曲がり部4aの信号電極3bと接地電極3cとの間のギャップは、その他の部分のギャップより狭くなるように形成する。具体的には、図20に示すように、曲がり部4aでのギャップの幅S5,S6が、幅S3,S4より狭くなるように、信号電極3bおよび接地電極3cを形成する。
【0070】
さらに、曲がり部4aにおけるギャップは、信号電極3bの曲がりによるインピーダンス変化を抑制するため、その幅は同じではなく、信号電極3bの曲がっている部分で徐々に変化している。具体的には、図20に示すように、曲がり部4aの一端のギャップ幅は、幅S6から徐々に大きくなり、曲がり部4aの他端のギャップ幅は、幅S5(S6<S5)になっている。
【0071】
このように、基板1が異方性材料の場合においても、インピーダンスの変化を抑制するとともに信号損失を低減することができる。
なお、曲がり部4aの両端に続く信号電極3bの幅を変えることにより、インピーダンス変化を抑制することもできる。
【0072】
図21は、信号電極の幅を変化させた光導波路デバイスの遅延部を示した図である。図21において、図2と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図21に示すように、曲がり部4aの両端に続く信号電極3bは、それぞれその幅が幅W1,W2(W1<W2)と異なるように形成されている。また、曲がり部4aにおける信号電極3bは、幅W2から幅W1へと徐々に細くなっている。これにより、基板1がXカットの異方性材料の場合でも、インピーダンスの変化を抑制することができる。
【0073】
また、曲がり部4aの両端のギャップは、曲がり部4aのギャップより、その幅が狭く形成されている。これにより、曲がり部4aでの信号損失を低減することができる。
なお、上記で説明した第1の実施の形態から第12の実施の形態は、組み合わせて実施することもできる。例えば、ギャップに溝を形成するとともに、接地電極をワイヤによって接続し、曲がり部の両側のギャップ幅を変えるようにしてもよい。
【0074】
上述した実施例は光変調器に関するものであるが、光を使用しない電子回路にも適用することができる。この場合、基板には光が透過しない誘電体を用いることもできる。
(付記1) 電子デバイスにおいて、
曲がった部分を有する信号電極と、
前記信号電極を挟むように形成される接地電極と、を備え、
前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップが、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする電子デバイス。
【0075】
(付記2) 前記信号電極と前記接地電極は、強誘電体の基板上または基板内に形成されることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記3) 前記信号電極は、複数形成されることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0076】
(付記4) 基板に光導波路を有し、
前記信号電極が前記光導波路と干渉する相互作用部の前段において、前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップが、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0077】
(付記5) 前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、前記信号電極と基板の裏面または基板内に形成されるグランド層との距離より短いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0078】
(付記6) 前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、基板の厚さより薄いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記7) 前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、前記曲がった部分の両端から徐々に狭くなることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0079】
(付記8) 前記曲がった部分は、矩形状に曲がっていることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記9) 前記曲がった部分における内側と外側の2つのギャップのうち、外側のギャップのみが前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0080】
(付記10) 前記曲がった部分における前記信号電極の幅は、前記曲がった部分の両端における前記信号電極の幅より狭いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記11) 前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極の厚さは、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極の厚さより薄いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0081】
(付記12) 前記曲がった部分における前記接地電極の厚さは、前記曲がった部分の両端における前記接地電極の厚さより薄いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記13) 前記曲がった部分における前記信号電極および前記接地電極と基板との間にバッファ層が形成されることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0082】
(付記14) 前記曲がった部分を除く前記信号電極および前記接地電極と基板との間にバッファ層が形成されることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記15) 前記光導波路の上部にバッファ層が形成されることを特徴とする付記4記載の電子デバイス。
【0083】
(付記16) 前記信号電極および前記接地電極と基板との間にバッファ層が形成され、前記曲がった部分における前記バッファ層の厚さは、他の部分の前記バッファ層より厚いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0084】
(付記17) 前記曲がった部分の前記信号電極の両側の基板に溝が形成されることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記18) 前記信号電極の両側の基板に溝が形成され、前記曲がった部分の前記溝は、他の部分の前記溝より深いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0085】
(付記19) 前記信号電極の両側の基板に溝が形成され、前記曲がった部分の前記溝は、他の部分の前記溝より幅が広いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記20) 前記信号電極の両側の基板に溝が形成され、前記曲がった部分の前記信号電極と前記溝との距離は、他の部分の前記信号電極と前記溝との距離より短いことを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0086】
(付記21) 前記曲がった部分の前記信号電極を挟む前記接地電極は、ワイヤまたはビアによって接続されていることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記22) 前記曲がった部分の両端に続く前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、幅が異なっていることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
【0087】
(付記23) 前記曲がった部分の両端の一方から他方に向かって、前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、徐々に狭くなっていくことを特徴とする付記22記載の電子デバイス。
【0088】
(付記24) 前記曲がった部分の両端に続く前記信号電極は、幅が異なっていることを特徴とする付記1記載の電子デバイス。
(付記25) 前記曲がった部分の両端の一方から他方に向かって、前記信号電極の幅は、徐々に狭くなっていくことを特徴とする付記24記載の電子デバイス。
【0089】
(付記26) 電子デバイスにおいて、
曲がった部分を有する第1の電極と、
前記第1の電極を挟むように形成される第2の電極と、を備え、
前記曲がった部分における前記第1の電極と前記第2の電極とのギャップが、前記曲がった部分の両端における前記第1の電極と前記第2の電極とのギャップより狭いことを特徴とする電子デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】第1の実施の形態に係る光導波路デバイスの平面図である。
【図2】遅延部を拡大した図である。
【図3】曲がり部のギャップを狭くした場合の信号損失を示した図である。
【図4】曲がり部のギャップを狭くしなかった場合の信号損失を示した図である。
【図5】第2の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図6】第3の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図7】第4の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図8】第5の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図9】第6の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図10】図9のA−A断面図である。
【図11】図9のB−B断面図である。
【図12】第7の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図13】図12のA−A断面図である。
【図14】第8の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部の断面図を示した図である。
【図15】第9の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部の断面図を示した図である。
【図16】第10の実施の形態に係る光導波路デバイスの曲がり部の断面図を示した図である。
【図17】第10の実施の形態に係る光導波路デバイスの曲がり部以外の断面図を示した図である。
【図18】第11の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図19】ビアによって接地電極を接続した光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図20】第12の実施の形態に係る光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図21】信号電極の幅を変化させた光導波路デバイスの遅延部を示した図である。
【図22】光導波路デバイスの平面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
2 光導波路
3 電極
3a,3b 信号電極
3c 接地電極
4a 曲がり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスにおいて、
曲がった部分を有する信号電極と、
前記信号電極を挟むように形成される接地電極と、を備え、
前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップが、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
基板に光導波路を有し、
前記信号電極が前記光導波路と干渉する相互作用部の前段において、前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップが、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、前記信号電極と基板の裏面または基板内に形成されるグランド層との距離より狭いことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記曲がった部分における内側と外側の2つのギャップのうち、外側のギャップのみが前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極とのギャップより狭いことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記曲がった部分における前記信号電極と前記接地電極の厚さは、前記曲がった部分の両端における前記信号電極と前記接地電極の厚さより薄いことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記曲がった部分における前記信号電極および前記接地電極と基板との間にバッファ層が形成されることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記曲がった部分の前記信号電極の両側の基板に溝が形成されることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記曲がった部分の前記信号電極を挟む前記接地電極は、ワイヤまたはビアによって接続されていることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記曲がった部分の両端に続く前記信号電極と前記接地電極とのギャップは、幅が異なっていることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記曲がった部分の両端に続く前記信号電極は、幅が異なっていることを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−72129(P2010−72129A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237314(P2008−237314)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人情報通信研究機構、「λユーティリティ技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】