説明

電子ペーパーへの画像記録装置、及び、電子ペーパーへの画像記録方法

【課題】電子ペーパーに記録される画像の画質を向上させることにある。
【解決手段】電子ペーパーが二つの部材の間に位置する際に、電子ペーパーに画像及び背景像が表示される。この際に、二つの部材のうちの一方には、画像に対応する画像対応領域及び背景像に対応する背景像対応領域が備えられ、他方には、前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧が印加される。
上記処理を複数回行い(第一処理及び第二処理)、第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差を、前記第一処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーへの画像記録装置、及び、電子ペーパーへの画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着色帯電粒子を有し該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像及び背景像を表示する電子ペーパーは既によく知られている。そして、当該電子ペーパーへの画像の記録が、画像に対応する画像対応領域及び背景像に対応する背景像対応領域を備えて潜像を担持する像担持体と、像担持体と対向する対向部材と、電子ペーパーを搬送する搬送部材と、電子ペーパーが像担持体と対向部材との間に位置する際に、画像対応領域における電位及び背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧を対向部材に印加することにより、前記間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、着色帯電粒子を厚み方向に移動させることにより潜像に対応する画像及び背景像を電子ペーパーに表示させる電圧印加部と、を備える画像記録装置により行なわれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−251048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記画像記録装置により電子ペーパーに画像が記録される際に、画像の形状によっては、該画像がつぶれて記録される場合があった。例えば、当該画像として、「田」という文字を小さい字で記録する際に、「田」の内部の白い部分が黒くなってしまい(すなわち、「田」の内部の本来背景像であるべき部分が誤って画像となってしまう)、当該文字がつぶれて黒四角に近い画像となってしまう場合があった。そして、かかる場合には、電子ペーパーに記録される画像の画質が悪化することとなっていた。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子ペーパーに記録される画像の画質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
主たる本発明は、画像に対応する画像対応領域及び背景像に対応する背景像対応領域を備えて潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し前記着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより前記画像及び前記背景像を表示する電子ペーパーを、搬送する搬送部材と、
前記電子ペーパーが前記像担持体と前記対向部材との間に位置する際に、前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧を前記対向部材に印加することにより、前記間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を前記電子ペーパーに表示させる電圧印加部と、
前記電子ペーパーを前記搬送部材に搬送させて、前記電子ペーパーの互いに異なる部位を前記間に順次送り込み、前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を順次表示させる第一処理を前記電圧印加部に実行させ、
前記電子ペーパーを前記搬送部材にさらに搬送させて、前記間を一旦抜けた前記部位を前記間に再度順次送り込み、前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を再度順次表示させる第二処理を前記電圧印加部に実行させるコントローラーであって、
前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差を、前記第一処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差よりも大きくするコントローラーと、
を有することを特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電子ペーパー100の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】黒像部及び白像部における着色帯電粒子の様子を示した模式図である。
【図3】画像記録装置1の概略断面図である。
【図4】画像記録装置1のブロック図である。
【図5】第一対向ローラー52aに印加される印加電圧を示した図である。
【図6】黒字つぶれを表した模式図である。
【図7】黒字つぶれ問題が生ずるメカニズムを説明するための説明図である。
【図8】白字つぶれを表した模式図である。
【図9】白字つぶれ問題が生ずるメカニズムを説明するための説明図である。
【図10】通常ケースにおいて第二対向ローラー52bに印加される印加電圧を示した図である。
【図11】反転ケースにおいて第二対向ローラー52bに印加される印加電圧を示した図である。
【図12】黒字つぶれ問題が軽減されるメカニズムを説明するための説明図である。
【図13】白字つぶれ問題が軽減されるメカニズムを説明するための説明図である。
【図14】他の実施形態に係る画像記録装置1の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
画像に対応する画像対応領域及び背景像に対応する背景像対応領域を備えて潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し前記着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより前記画像及び前記背景像を表示する電子ペーパーを、搬送する搬送部材と、
前記電子ペーパーが前記像担持体と前記対向部材との間に位置する際に、前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧を前記対向部材に印加することにより、前記間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を前記電子ペーパーに表示させる電圧印加部と、
前記電子ペーパーを前記搬送部材に搬送させて、前記電子ペーパーの互いに異なる部位を前記間に順次送り込み、前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を順次表示させる第一処理を前記電圧印加部に実行させ、
前記電子ペーパーを前記搬送部材にさらに搬送させて、前記間を一旦抜けた前記部位を前記間に再度順次送り込み、前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を再度順次表示させる第二処理を前記電圧印加部に実行させるコントローラーであって、
前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差を、前記第一処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差よりも大きくするコントローラーと、
を有することを特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
かかる電子ペーパーへの画像記録装置によれば、電子ペーパーに記録される画像の画質を向上させることが可能となる。
【0009】
また、前記コントローラーは、
前記画像対応領域における電位を、該電位が前記第一処理と前記第二処理とで同じになるように設定し、かつ、前記背景像対応領域における電位を、該電位が前記第一処理と前記第二処理とで同じになるように設定し、
前記第二処理における前記印加電圧の値を前記第一処理における該値よりも前記背景像対応領域における電位の値から遠ざけることとしてもよい。
かかる場合には、簡易に、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差が第一処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差よりも大きくなることを実現できる。
【0010】
また、前記電子ペーパーは、前記着色帯電粒子として互いに異なる極性及び色を有する第一色の負帯電粒子及び第二色の正帯電粒子を有し、
前記画像及び前記背景像の一方が前記第一色、他方が前記第二色であり、かつ、
前記画像対応領域及び前記背景像対応領域の一方が、前記第一色を前記電子ペーパーに表示させるための第一色対応領域に、他方が、前記第二色を前記電子ペーパーに表示させるための第二色対応領域になっており、
前記コントローラーは、
前記背景像が前記第一色及び前記第二色のいずれであるかが画像データにより判別された判別結果に基づいて、
前記背景像が前記第一色であることを前記判別結果が示している場合には、前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域としての前記第一色対応領域の電位との差を、前記第一処理における該差よりも大きくし、
前記背景像が前記第二色であることを前記判別結果が示している場合には、前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域としての前記第二色対応領域の電位との差を、前記第一処理における該差よりも大きくすることとしてもよい。
かかる場合には、背景像の色に関わらず画像の画質を向上させることができる。
【0011】
また、前記電子ペーパーは、前記着色帯電粒子として互いに異なる極性を有する黒色の帯電粒子及び白色の帯電粒子を有し、
前記画像及び前記背景像の一方が前記黒色、他方が前記白色であり、かつ、
前記画像対応領域及び前記背景像対応領域の一方が、前記黒色を前記電子ペーパーに表示させるための黒色対応領域に、他方が、前記白色を前記電子ペーパーに表示させるための白色対応領域になっており、
前記コントローラーは、前記背景像が前記黒色及び前記白色のいずれであるかを判別することなく、前記第二処理における前記印加電圧と前記白色対応領域の電位との差を、前記第一処理における該差よりも大きくすることとしてもよい。
かかる場合には、簡易な方法で画像の画質を向上させることができる。
【0012】
次に、着色帯電粒子を有し前記着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像及び背景像を表示する電子ペーパーを搬送部材に搬送させて、前記電子ペーパーの互いに異なる部位を、前記画像に対応する画像対応領域及び前記背景像に対応する背景像対応領域を備えて潜像を担持する像担持体と前記像担持体と対向する対向部材との間に順次送り込み、
前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧を前記対向部材に印加することにより、前記間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を、前記間に送りこまれた前記部位に順次表示させる第一処理を前記電圧印加部に実行させることと、
前記電子ペーパーを前記搬送部材にさらに搬送させて、前記間を一旦抜けた前記部位を前記間に再度順次送り込み、
前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を再度順次表示させる第二処理を、該第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差を、前記第一処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差よりも大きくして、前記電圧印加部に実行させることと、
を有することを特徴とする電子ペーパーへの画像記録方法。
かかる電子ペーパーへの画像記録方法によれば、電子ペーパーに記録される画像の画質を向上させることが可能となる。
【0013】
===画像記録装置1の構成例について===
次に、電子ペーパー100への画像記録装置、すなわち、電子ペーパー100に画像を記録する画像記録装置1の構成例について、説明する。
以下では、画像記録装置1の説明に先立って、先ず、電子ペーパー100の構成について説明する。そして、これに引き続いて、画像記録装置1の構成について説明する。
【0014】
<<<電子ペーパー100の構成例について>>>
ここでは、電子ペーパー100の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、電子ペーパー100の構成を模式的に示す断面図である。図2は、黒像部及び白像部における着色帯電粒子の様子を示した模式図である。
【0015】
電子ペーパー100は、着色帯電粒子を有し、該着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像及び背景像を表示するものである。換言すれば、電子ペーパー100は、着色された電気泳動粒子の電気泳動を利用して画像及び背景像の表示を行う。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る電子ペーパー100は、表示層103と、表示層103の上面に設けられた上側絶縁層141と、表示層103の下面に設けられた下側絶縁層142と、封止部107と、を備えている。
【0017】
電子ペーパー100では、上側絶縁層141が表示面121を構成しており、上側絶縁層141を介して表示層103が視認されることにより、画像及び背景像を認識することができるようになっている。また、電子ペーパー100は、可撓性を有するもの、有さないもののいずれであってもよいが、本実施の形態に係る電子ペーパー100は、可撓性を有している。
【0018】
表示層103は、着色帯電粒子の一例としての負帯電黒色粒子及び正帯電白色粒子 (互いに異なる極性及び色を有する第一色の負帯電粒子及び第二色の正帯電粒子に、また、互いに異なる極性及び色を有する黒色の帯電粒子及び白色の帯電粒子に相当)の収容部であるマイクロカプセル131とバインダ132とを有しており、複数のマイクロカプセル131がバインダ132で固定(保持)されることにより構成されている。また、複数のマイクロカプセル131は、上側絶縁層141と下側絶縁層142との間に、縦横に並列するように単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)配設されている。
【0019】
各マイクロカプセル131は、殻体であるカプセル本体133を有しており、その内部(内部空間)には、電気泳動分散液が充填(封入)されている。カプセル本体133内に充填された電気泳動分散液は、正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子とを液相分散媒に分散(懸濁)してなるものである。正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の液相分散媒への分散については、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、攪拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行なうことができる。
【0020】
正帯電白色粒子は、正に帯電する白色の電気泳動粒子であり、負帯電黒色粒子は、負に帯電する黒色の電気泳動粒子である。このように、正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子とを用いることにより、電子ペーパー100における白黒表示が可能となる。なお、本実施の形態においては、負帯電黒色粒子の帯電量と比べて、正帯電白色粒子の帯電量が小さくなっている(正帯電白色粒子は微帯電している)。
【0021】
正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子には、それぞれ、電荷を有するものであれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。
【0022】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、チタンブラックが負帯電黒色粒子として、酸化チタンが正帯電白色粒子として、好適に用いられる(本実施の形態においても、これらが用いられている)。
【0023】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができる。
【0025】
正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子については、液相分散媒中での分散性を考慮した場合、より小さいものが好適に用いられる。具体的には、その平均粒径が、10〜500nm程度であるのが好ましく、20〜300nm程度であるのがより好ましい。正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の平均粒径を前記範囲とすることにより、正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子の凝集や、正帯電白色粒子や負帯電黒色粒子の沈降を防止することができ、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子を液相分散媒中に分散させた状態を維持することができる。
【0026】
そして、このような正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子がマイクロカプセル131内で電子ペーパー100の厚み方向に移動することにより、画像及び背景像が表示されることとなる。
【0027】
すなわち、詳細については後述するが、当該電子ペーパー100における画像を表示させる部位(つまり、黒画像部)においては、負帯電黒色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動し(図2の左図参照)、画像を表示させない部位(つまり、白背景像部)においては、正帯電白色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するように(図2の右図参照)、粒子の移動が制御されることにより、電子ペーパー100における白黒表示が成される。そして、この粒子の移動制御は、前記画像記録装置1が、前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前者の部位においては電界の向きが下向き(上側絶縁層141から下側絶縁層142へ向かう向き)となり(図2の左図参照)、後者の部位においては電界の向きが上向き(下側絶縁層142から上側絶縁層141へ向かう向き)となるように(図2の右図参照)、電界の向きを制御することによって実現されることとなる。
【0028】
なお、上記においては、画像を表示させる部位を黒画像部とし、画像を表示させない部位を白背景像部として説明を行なったが(以下、便宜上、通常ケースと呼ぶ)、画像を表示させる部位が白画像部で画像を表示させない部位が黒背景像部となる場合(以下、便宜上、反転ケースと呼ぶ)も稀にあり得る(画像及び背景像の一方が黒色、他方が白色である)。例えば、画像が文字情報を表すものである場合に、通常は、画像部(つまり、文字)が黒色となり、背景像部(つまり、電子ペーパー100の文字以外の部分)が白色となる(図6参照)。しかしながら、画像部(つまり、文字)を白色とし、背景像部(つまり、電子ペーパー100の文字以外の部分)を黒色として、白色の文字を表示するような場合も(稀かもしれないが)あり得る(図8参照。どちらになるかは、ホストコンピューター等で生成された画像データによる)。
【0029】
そして、画像部が白色であり、背景部が黒色の場合には、上述した事項は以下のようになる(変わる)。すなわち、電子ペーパー100における画像を表示させる部位(つまり、白画像部)においては、正帯電白色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動し(図2の右図参照)、画像を表示させない部位(つまり、黒背景像部)においては、負帯電黒色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するように(図2の左図参照)、粒子の移動が制御されることにより、電子ペーパー100における白黒表示が成される。
【0030】
つまり、上記事項から理解されるように、画像部か背景像部かにかかわらず、黒像部(便宜上、黒画像部と黒背景像部とを包含したものをこのように表現する)においては、負帯電黒色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するように、粒子の移動が制御されることとなる。また、画像部か背景像部かにかかわらず、白像部(便宜上、白画像部と白背景像部とを包含したものをこのように表現する)においては、正帯電白色粒子が前記厚み方向における上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するように、粒子の移動が制御されることとなる。
【0031】
また、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の比重は、それぞれ、液相分散媒の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子は、電界の作用を受けた後においても、液相分散媒中において一定の位置に長時間滞留することができる。
【0032】
バインダ132は、例えば、上側絶縁層141と下側絶縁層142とを接合する目的、上側絶縁層141と下側絶縁層142との間に各マイクロカプセル131を固定する目的等により供給される。このバインダ132には、上側絶縁層141、下側絶縁層142およびカプセル本体133との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料が好適に使用される。
【0033】
表示層103を間に挟むように対向配置された上側絶縁層141及び下側絶縁層142は、それぞれ、絶縁性を有するシート状(平板状)の部材で構成されている。このような上側絶縁層141及び下側絶縁層142は、表示層103(マイクロカプセル131)を保護する機能を有している。
【0034】
上側絶縁層141は、表示面121を構成するために光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、表示面121側から、表示層103の状態(各マイクロカプセル131中の正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子の状態)、すなわち電子ペーパー100に表示された画像(情報)を目視により認識することができる。一方、下側絶縁層142については、上側絶縁層141のような光透過性の有無は問わない(本実施の形態においては、下側絶縁層142は実質的に不透明となっている)。
【0035】
封止部107は、電子ペーパー100内への水分の浸入を防止して、電子ペーパー100の表示性能の劣化を抑えるためのものである。封止部107は、上側絶縁層141と下側絶縁層142との間に、それらの縁部に沿うようにして設けられている。そして、この封止部107により、表示層103が気密的に封止されている。
【0036】
<<<画像記録装置1の構成例について>>>
次に、画像記録装置1の構成例について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、画像記録装置1の概略断面図である。図4は、画像記録装置1のブロック図である。
【0037】
本実施の形態に係る画像記録装置1は、図3に示すように、2つの記録部10(以下、第一記録部10a及び第二記録部10bと呼ぶ)、搬送部材の一例としての搬送ユニット60、及び、これらを制御し画像記録装置1としての動作を司るコントローラー80(図4参照)を有している。
【0038】
2つの記録部10は、それぞれ、像担持体の一例としての感光体20、帯電ローラー32を有する帯電ユニット30、露光ユニット40、及び、対向部材の一例としての対向ローラー52と電圧印加部54とを有する電界生成ユニット50を備えている。
【0039】
具体的には、第一記録部10aは、図3に示すように、第一感光体20aの回転方向に沿って、第一帯電ローラー32aを有する第一帯電ユニット30a、第一露光ユニット40a、第一対向ローラー52aと第一電圧印加部54a(図4参照)とを有する第一電界生成ユニット50aを備えている。また、第二記録部10bは、図3に示すように、第二感光体20bの回転方向に沿って、第二帯電ローラー32bを有する第二帯電ユニット30b、第二露光ユニット40b、第二対向ローラー52bと第二電圧印加部54b(図4参照)とを有する第二電界生成ユニット50bを備えている。
【0040】
なお、第一記録部10aと第二記録部10bの構成は同様であるので、以下、第一記録部10aについて説明する。
【0041】
第一感光体20aは、金属製の円筒状の導電性基材と、その外周面に形成され静電気を保持するための樹脂製の感光層と、を有している。この第一感光体20aは、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図3中の矢印で示すように時計回りに回転する。
【0042】
第一帯電ユニット30aは、第一感光体20aを帯電させるためのものである。この第一帯電ユニット30aは、第一帯電ローラー32aを有しており、本実施の形態においては、当該第一帯電ローラー32aが、第一感光体20aを、V1=500ボルトに帯電させるようになっている。
【0043】
第一露光ユニット40aは、レーザーを照射することによって、帯電された第一感光体20a上に、画像に対応する画像対応領域及び背景像に対応する背景像対応領域を有する潜像(本項においては、潜像を、画像のみならず背景像にも対応するものとする)を形成するものである。この第一露光ユニット40aは、半導体レーザー、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピューターから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザーを帯電された第一感光体20a上に照射する。本実施の形態においては、前記白像部に相当する部分にレーザーが照射され、当該部分の電位がV1=500ボルトからV2=50ボルトとなる。すなわち、V2=50ボルトの白像部に相当する部分(第二色(白色)を電子ペーパー100に表示させるための第二色対応領域(白色対応領域)に相当)とV1=500ボルトの黒像部に相当する部分(第一色(黒色)を電子ペーパー100に表示させるための第一色対応領域(黒色対応領域)に相当)とを有する潜像が得られることとなる。なお、前記画像対応領域及び前記背景像対応領域の一方が黒像部に相当する部分に、他方が、白像部に相当する部分になっている。つまり、前記通常ケースの場合には、画像対応領域が黒像部に相当する部分、背景像対応領域が白像部に相当する部分であり、前記反転ケースの場合には、画像対応領域が白像部に相当する部分、背景像対応領域が黒像部に相当する部分である。
【0044】
第一電界生成ユニット50aは、電子ペーパー100の厚み方向に電界を発生させて、当該電子ペーパー100の正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子を厚み方向に移動させるためのものである。この第一電界生成ユニット50aは、第一対向ローラー52aと第一電圧印加部54a(図4参照)とを備えている。
【0045】
第一対向ローラー52aは、第一感光体20aと対向する回転可能なローラーである。この第一対向ローラー52aは、電子ペーパー100が第一感光体20aと当該第一対向ローラー52aとの間に位置する際に、第一感光体20aと協働して電子ペーパー100を挟んで圧接させつつ(換言すれば、第一感光体20aと第一対向ローラー52aとはニップ部にて電子ペーパー100を挟んで圧接している)、第一感光体20aの回転に伴ってその回転方向とは反対方向に回転する。第一対向ローラー52aの、電子ペーパー100を介して第一感光体20aと接触する接触部分は、ゴム製である。
【0046】
第一電圧印加部54aは、電子ペーパー100が前記間に位置する際に、前記第一対向ローラー52aに印加電圧を印加する(すなわち、第一対向ローラー52aは、被電圧印加部としての機能を有する)。そして、このことにより、第一感光体20aと第一対向ローラー52aとの間に電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界を発生させて、電子ペーパー100の正帯電白色粒子及び負帯電黒色粒子を厚み方向に移動させることにより、前記潜像に対する画像及び背景像を電子ペーパー100に表示させる。なお、第一電圧印加部54aが(また、第二電圧印加部54bが)具体的にどのような印加電圧を印加するかについては、後に詳述する。
【0047】
搬送ユニット60は、電子ペーパー100を搬送するためのものである。この搬送ユニット60は、ペーパーカセット62と、ペーパーカセット62の上部に位置する給紙ローラー64と、給紙ローラー64から見て、感光体20側に位置する搬送ローラー66と、不図示の排紙ローラーと、を有している。給紙ローラー64は、ペーパーカセット62に収容されている電子ペーパー100を給紙するローラーである。搬送ローラー66は、給紙ローラー64によって給紙された電子ペーパー100を感光体20と対向ローラー52との間に搬送するローラーである。排紙ローラーは、画像が表示された電子ペーパー100を画像記録装置1から排出するローラーである。これらのローラーは、不図示のモーターにより駆動される。
【0048】
コントローラー80は、画像記録装置1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー80は、インターフェイス部81と、CPU82と、メモリー83と、ユニット制御回路84と、を有する。
【0049】
インターフェイス部81は、外部装置である前記ホストコンピューターと画像記録装置1との間でデータの送受信を行う。CPU82は、画像記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー83は、CPU82のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU82は、メモリー83に格納されるプログラムに従って、ユニット制御回路84を介して各ユニットを制御する。
【0050】
===画像記録装置1の動作例について===
次に、画像記録装置1の動作例、すなわち、画像記録装置1が電子ペーパー100に画像を記録する際の動作例について、図2、図5乃至図13を用いて説明する。図5は、第一対向ローラー52aに印加される印加電圧を示した図である。図6は、黒字つぶれを表した模式図である。図7は、黒字つぶれ問題が生ずるメカニズムを説明するための説明図である。図8は、白字つぶれを表した模式図である。図9は、白字つぶれ問題が生ずるメカニズムを説明するための説明図である。図10乃至図13については、後述する。
【0051】
なお、画像記録装置1の各種動作は、主としてコントローラー80により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリー83に格納されたプログラムをCPU82が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明する各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0052】
ホストコンピューターからの画像信号及び制御信号がインターフェイス部81を介してコントローラー80に入力されると、ユニット制御回路84の制御により、感光体20が回転する。なお、ペーパーカセット62には、画像が未表示の電子ペーパー100が収容されている。
【0053】
第一感光体20aは、回転しながら、帯電位置において第一帯電ユニット30aにより、順次V1=500ボルトに帯電される。
【0054】
第一感光体20aの帯電された領域は、第一感光体20aの回転に伴って露光位置に至り、第一露光ユニット40aによって、潜像が該領域に形成される。すなわち、該領域が前記白像部に相当する部分であれば当該領域にレーザーが照射される。この結果、V2=50ボルトの白像部に相当する部分(つまり、前記白画像部に対応した画像対応領域、又は、前記白背景像部に対応した背景像対応領域)と、V1=500ボルトの黒像部に相当する部分(つまり、前記黒画像部に対応した画像対応領域、又は、前記黒背景像部に対応した背景像対応領域)と、を有する潜像が第一感光体20a上に形成される。
【0055】
第一感光体20a上に形成された潜像は、第一感光体20aの回転に伴って、第一対向ローラー52aと対向する対向位置に至る。一方で、電子ペーパー100が、搬送ユニット60により、第一感光体20a(換言すれば、潜像)と第一対向ローラー52aとの間に搬送され、該間に位置することとなる。そして、電子ペーパー100が該間に位置する状態で、第一電圧印加部54aによって第一対向ローラー52aに印加電圧が印加され、該間に電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界が発生する。そして、このことにより、潜像に対応する画像及び背景像が電子ペーパー100に表示される。
【0056】
具体的には、第一電圧印加部54aは、図5に示すように、第一対向ローラー52aに、前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうち(換言すれば、前記白像部に相当する部分における電位及び前記黒画像に相当する部分における電位のうち)小さい方(本実施の形態においてはV2ボルト)よりも大きくて、大きい方(本実施の形態においてはV1ボルト)よりも小さいV3ボルトの直流印加電圧(本実施の形態においては、V1ボルトとV2ボルトの平均値であるV3=275ボルト)を印加する。
【0057】
前記黒像部に相当する部分(すなわち、前記黒画像部に対応した領域、又は、前記黒背景像部に対応した領域)が前記対向位置に位置する際に、当該印加が成されると、第一感光体20a側(上側)がV1=500ボルト、第一対向ローラー52a側(下側)がV3=275ボルトとなるため、図2の左図に示したように、下向き(電子ペーパー100の上側絶縁層141から下側絶縁層142へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の負帯電黒色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、正帯電白色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するため、電子ペーパー100の前記間に位置する部位には、黒像(すなわち、黒画像又は黒背景像)が表示されることとなる(当該部位が、黒像部となる)。一方、前記白像部に相当する部分(すなわち、前記白画像部に対応した領域、又は、前記白背景像部に対応した領域)が前記対向位置に位置する際に、当該印加が成されると、第一感光体20a側(上側)がV2=50ボルト、対向ローラー52側(下側)がV3=275ボルトとなるため、図2の右図に示したように、上向き(電子ペーパー100の下側絶縁層142から上側絶縁層141へ向かう向き)の電界が発生する。そして、当該電界の作用により、電子ペーパー100内の正帯電白色粒子が上側絶縁層141(表示面121)側に、負帯電黒色粒子が下側絶縁層142側に、それぞれ移動するため、電子ペーパー100の前記間に位置する部位には、白像(すなわち、白画像又は白背景像)が表示されることとなる(当該部位が、白像部となる)。つまり、潜像の前記黒像部に相当する部分が前記対向位置に位置する際には電子ペーパー100は黒像を表示し、潜像の前記白像部に相当する部分が前記対向位置に位置する際には電子ペーパー100は白像を表示することとなるため、黒像部及び白像部を有する潜像が電子ペーパー100に転写(コピー)されることとなる。
【0058】
このように、本実施の形態においては、第一電圧印加部54aが、第一対向ローラー52aに印加電圧を印加することにより、第一感光体20aと第一対向ローラー52aとの間に厚み方向に沿う電界を発生させ、着色帯電粒子を厚み方向に移動させることにより電子ペーパー100に潜像に対応する画像及び背景像を表示させる。すなわち、コントローラー80は、直流印加電圧の大きさを、黒画像に相当する部分における電位(V1ボルト)よりも小さくて白像部に相当する部分における電位(V2ボルト)よりも大きい値であるV3ボルトに制御して、第一電圧印加部54aが、V3ボルトの印加電圧を印加する。そして、このことにより、第一電圧印加部54aは、第一感光体20aの黒画像に相当する部分と第一対向ローラー52aとの間に発生する電界の方向及び当該電界による負帯電黒色粒子(正帯電白色粒子)の移動方向と、第一感光体20aの白像部に相当する部分と第一対向ローラー52aとの間に発生する電界の方向及び当該電界による負帯電黒色粒子(正帯電白色粒子)の移動方向と、を逆転させることにより、電子ペーパー100に潜像に対応する白黒の画像及び背景像を表示させる。
【0059】
そして、上述した画像及び背景像を表示させるための動作は継続して実行される。すなわち、コントローラー80は、電子ペーパー100を搬送ユニット60に搬送させて、電子ペーパー100の互いに異なる部位を前記間(ニップ部)に順次送り込み、当該間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する画像及び背景像を順次表示させる処理(以下、第一処理と呼ぶ)を第一電圧印加部54aに実行させる。このことにより、当該間において、電子ペーパー100の前記部位に、潜像に対応する画像及び背景像が順次表示される(電子ペーパー100に潜像が順次転写される)。
【0060】
ところで、本実施の形態(本件例)においては、第一記録部10aによる前記第一処理を行なった後に、第二記録部10bによる第二処理(後に詳述する)が行なわれるが、比較例(例えば、従来例)においては、記録部は一つしか設けられておらず、前記第一処理により電子ペーパーに画像及び背景像が表示されると、電子ペーパーへの画像記録処理は終了し、電子ペーパーは排紙ローラーにより画像記録装置から排出されていた。
【0061】
そして、かかる比較例においては、画像がつぶれて記録される問題が生ずる場合があった。例えば、当該画像として、「田」という文字を小さい字で記録する際に、「田」の内部の白い部分が黒くなってしまい(すなわち、「田」の内部の本来白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまう)、当該文字がつぶれて黒四角に近い画像となってしまう場合があった(図6の右図参照。なお、図6の左図には、比較のために、文字がつぶれていないときの画像を表している)。
【0062】
以下では、本実施の形態に係る画像記録装置1の動作例の説明を中断して、先ず、比較例における当該問題について詳説する。そして、当該問題の説明後に、動作例の説明(主に、第二記録部10bによる第二処理の説明)に戻る。
【0063】
ここで、比較例における当該問題(以下、便宜上、字つぶれ問題と呼ぶ)が生ずるメカニズムについて、図7を用いて説明する。図7の左図は、字つぶれ問題が生じないときの説明図であり、図7の右図は、字つぶれ問題が生ずるときの説明図である。
【0064】
先ず、図7の左図に着目する。当該左図には、「田」の黒画像であるべき部分と「田」の内部の白背景像であるべき部分との境界付近において、黒画像であるべき部分及び白背景像であるべき部分に対応する潜像の電位がどのようになっているかが表されている。ここで、潜像は前述したとおり露光ユニットにより形成されるが、露光ユニットの性能が理想的である場合には、境界の左右においてはっきりと電位がV1=500VとV2=50Vとに分かれることとなる(境界において、V1からV2へと急峻に変化する)。
【0065】
しかしながら、実際の露光ユニットの性能は理想的ではなく、図7の右図に示すように、電位がV1=500VとV2=50Vとの間の値となる部分が境界より右側において存在する場合があり得る(境界を過ぎてからV1からV2へなだらかに変化する場合があり得る)。
【0066】
そして、このことが、「田」の内部の白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまう要因となる。すなわち、潜像の電位がV3=275Vより大きい部分が黒画像となり、小さい部分が白背景像となるべきところ、左図においては、境界の左右においてはっきりと電位がV1=500VとV2=50Vとに分かれるため、黒画像(白背景像)であるべき部分と黒画像(白背景像)となる部分が完全に一致し得る。これに対し、右図においては、白背景像であるべき部分に、潜像の電位がV3=275Vより大きい部分が存在してしまうことにより、白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまうこととなる(記号Aで示された箇所参照)。すなわち、「田」の内部の本来白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまうことにより、「田」がつぶれてしまう。
【0067】
このように、露光ユニットが理想的でないこと(以下、第一要因とも言う)に起因して、白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまうことにより、字つぶれ問題が発生し得ることとなる。しかしながら、字つぶれ問題は他の要因でも発生し得る(すなわち、図7の左図の場合(つまり、露光ユニットが理想的である場合)であっても、発生する場合がある)。
【0068】
当該他の要因(以下、第二要因とも言う)について図2と図7の左図を参照しながら説明する。左図の境界の左右においてはっきりと電位がV1=500VとV2=50Vとに分かれることを既に述べたが、このことから、境界の左右において電界の向きが(左側における)下向きと(右側における)上向きとに分かれることとなる(図2参照)。そして、白背景像であるべき部分側にある着色帯電粒子は本来なら上向きの電界の影響を受けて移動すべきであるが、当該着色帯電粒子の中で境界に近い位置に位置する着色帯電粒子は、黒画像であるべき部分側に近すぎるために、当該黒画像であるべき部分側の下向きの電界の影響を受けてしまう可能性がある。そして、当該影響を受けた場合には、境界付近において、白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまうこととなる。すなわち、「田」の内部の本来白背景像であるべき部分が誤って黒画像となってしまうことにより、「田」がつぶれてしまう。
【0069】
このように、第一要因や第二要因により、字つぶれ問題が起こる可能性がある。なお、上記においては、「田」が黒画像と白背景像とで表されている例(つまり、前記通常ケース)について説明したが、前述したとおり、「田」が白画像と黒背景像とで表されている例(つまり、前記反転ケース)もあり得る。そして、このような場合にも、字つぶれ問題が起こる可能性がある(以下では、通常ケースにおける字つぶれを黒字つぶれ、反転ケースにおける字つぶれを白字つぶれとそれぞれ呼ぶ)。以下では、当該白字つぶれ問題について説明する。
【0070】
例えば、当該画像として、「田」という文字を小さい字で記録する際に、「田」の内部の黒い部分が白くなってしまい(すなわち、「田」の内部の本来黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまう)、当該文字がつぶれて白四角に近い画像となってしまう場合があった(図8の右図参照。なお、図8の左図には、比較のために、文字がつぶれていないときの画像を表している)。
【0071】
ここで、かかる白字つぶれ問題が生ずるメカニズムについて、図9を用いて説明する。図9の左図は、字つぶれ問題が生じないときの説明図であり、図9の右図は、字つぶれ問題が生ずるときの説明図である。
【0072】
先ず、図9の左図に着目する。当該左図には、「田」の白画像であるべき部分と「田」の内部の黒背景像であるべき部分との境界付近において、白画像であるべき部分及び黒背景像であるべき部分に対応する潜像の電位がどのようになっているかが表されている。露光ユニットの性能が理想的である場合には、境界の左右においてはっきりと電位がV2=50VとV1=500Vとに分かれることとなる(境界において、V2からV1へと急峻に変化する)。
【0073】
しかしながら、実際の露光ユニットの性能は理想的ではなく、図9の右図に示すように、電位がV2=50VとV1=500Vとの間の値となる部分が境界より右側において存在する場合があり得る(境界を過ぎてからV2からV1へなだらかに変化する場合があり得る)。
【0074】
そして、このことが、「田」の内部の黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまう要因となる。すなわち、潜像の電位がV3=275Vより大きい部分が黒背景像となり、小さい部分が白画像となるべきところ、左図においては、境界の左右においてはっきりと電位がV2=50VとV1=500Vとに分かれるため、白画像(黒背景像)であるべき部分と白画像(黒背景像)となる部分が完全に一致し得る。これに対し、右図においては、黒背景像であるべき部分に、潜像の電位がV3=275Vより小さい部分が存在してしまうことにより、黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまうこととなる(記号Aで示された箇所参照)。すなわち、「田」の内部の本来黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまうことにより、「田」がつぶれてしまう。
【0075】
このように、露光ユニットが理想的でないこと(第一要因)に起因して、黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまうことにより、白字つぶれ問題が発生し得ることとなる。しかしながら、白字つぶれ問題は、黒字つぶれ問題と同様、他の要因でも発生し得る(すなわち、図9の左図の場合(つまり、露光ユニットが理想的である場合)であっても、発生する場合がある)。
【0076】
当該他の要因(第二要因)について図2と図9の左図を参照しながら説明する。左図の境界の左右においてはっきりと電位がV2=50VとV1=500Vとに分かれることを既に述べたが、このことから、境界の左右において電界の向きが(左側における)上向きと(右側における)下向きとに分かれることとなる(図2参照)。そして、黒背景像であるべき部分側にある着色帯電粒子は本来なら下向きの電界の影響を受けて移動すべきであるが、当該着色帯電粒子の中で境界に近い位置に位置する着色帯電粒子は、白画像であるべき部分側に近すぎるために、当該白画像であるべき部分側の上向きの電界の影響を受けてしまう可能性がある。そして、当該影響を受けた場合には、境界付近において、黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまうこととなる。すなわち、「田」の内部の本来黒背景像であるべき部分が誤って白画像となってしまうことにより、「田」がつぶれてしまう。
【0077】
このように、一つの記録部による一つの処理(第一処理)により電子ペーパーに画像及び背景像が表示されると電子ペーパーへの画像記録処理が終了する比較例においては、黒字つぶれ問題や白字つぶれ問題が生ずる可能性がある。そこで、本実施の形態に係る画像記録装置1においては、第一記録部10aによる第一処理を行なって電子ペーパー100に画像及び背景像を一旦表示させた後に、第二記録部10bにおける第二処理を行なって電子ペーパー100に画像及び背景像を再度表示させる。そして、このようにすることによって、第一処理が行なわれた結果、字つぶれが生じたとしても、第二処理により当該字つぶれが軽減さされることとなる(つまり、第二記録部10bは字つぶれを修復させる機能を有する)。以下では、動作例の説明に戻って、第二記録部10bによる第二処理について説明する。そして、その後、どうして第二処理により、字つぶれが軽減されるかについて説明する。
【0078】
コントローラー80は、前述したとおり、電子ペーパー100を搬送ユニット60に搬送させて、電子ペーパー100の互いに異なる部位を第一感光体20aと第一対向ローラー52aとの間に順次送り込み、第一処理を第一電圧印加部54aに実行させるが、その後、電子ペーパー100を搬送ユニット60にさらに搬送させて、前記間を一旦抜けた前記部位を第二感光体20bと第二対向ローラー52bとの間に順次送り込み、該間に送り込まれた前記部位に潜像に対応する画像及び背景像を再度順次表示させる第二処理を第二電圧印加部54bに実行させる。
【0079】
具体的に説明する。第二感光体20bは、回転しながら、帯電位置において第二帯電ユニット30bにより、順次V1=500ボルトに帯電される。
【0080】
第二感光体20bの帯電された領域は、第二感光体20bの回転に伴って露光位置に至り、第二露光ユニット40bによって、潜像(第一露光ユニット40aによって形成された潜像と同じもの)が該領域に形成される。すなわち、該領域が前記白像部に相当する部分であれば当該領域にレーザーが照射される。この結果、V2=50ボルトの白像部に相当する部分と、V1=500ボルトの黒像部に相当する部分と、を有する潜像が第二感光体20b上に形成される。
【0081】
第二感光体20b上に形成された潜像は、第二感光体20bの回転に伴って、第二対向ローラー52bと対向する対向位置に至る。一方で、電子ペーパー100が、搬送ユニット60により、第二感光体20b(換言すれば、潜像)と第二対向ローラー52bとの間に搬送され、該間に位置することとなる。そして、電子ペーパー100が該間に位置する状態で、第二電圧印加部54bによって第二対向ローラー52bに印加電圧が印加され、該間に電子ペーパー100の厚み方向に沿う電界が発生する。そして、このことにより、潜像に対応する画像及び背景像が電子ペーパー100に再度表示される。
【0082】
具体的には、第二電圧印加部54bは、第二対向ローラー52bに、第一処理(第一電圧印加部54a)と同様、前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうち(換言すれば、前記白像部に相当する部分における電位及び前記黒画像に相当する部分における電位のうち)小さい方(本実施の形態においてはV2ボルト)よりも大きくて、大きい方(本実施の形態においてはV1ボルト)よりも小さい直流印加電圧を印加する。このようにして、第二電圧印加部54bは、第二感光体20bと第二対向ローラー52bとの間に厚み方向に沿う電界を発生させ、着色帯電粒子を厚み方向に移動させることにより電子ペーパー100に潜像に対応する画像及び背景像を表示させる。そして、第一処理と同様、潜像の前記黒像部に相当する部分が前記対向位置に位置する際には電子ペーパー100は黒像を表示し、潜像の前記白像部に相当する部分が前記対向位置に位置する際には電子ペーパー100は白像を表示することとなるため、黒像部及び白像部を有する潜像が電子ペーパー100に転写(コピー)されることとなる。
【0083】
しかしながら、以下の点で、第二処理は、第一処理と異なっている。すなわち、コントローラー80は、第二処理における直流印加電圧の値を、第一処理おける直流印加電圧の値であるV3=275ボルトとは異ならせる。さらに、コントローラー80は、前述した通常ケース及び反転ケースのいずれであるか(換言すれば、背景像が黒色及び白色のいずれであるか)に基づいて、第二処理における直流印加電圧の値を変える。
【0084】
具体的に、図10及び図11を用いて説明する。図10は、通常ケースにおいて第二対向ローラー52bに印加される印加電圧を示した図である。図11は、反転ケースにおいて第二対向ローラー52bに印加される印加電圧を示した図である。
【0085】
コントローラー80は、通常ケースの場合には、図10に示すように、直流印加電圧の値を、第一処理のときのV3=275ボルトではなく、V31=450ボルトに制御する。また、反転ケースの場合には、図11に示すように、直流印加電圧の値を、第一処理のときのV3=275ボルトではなく、V32=100ボルトに制御する。通常ケース及び反転ケースのいずれであるか(背景像が黒色及び白色のいずれであるか)は画像データにより判別されるが、その判別方法はどのようなものでもよく、公知の方法を用いることができる。例えば、最も簡易な方法として、黒色を示す画素データの数と白色を示す画素データの数を比較して、多い方の色を背景像とする判別方法としてもよい。また、所定の隅に位置する画素データの色を背景像とする判別方法としてもよい。また、黒色と白色を示す画素データを厳密に解析して、文字部分を特定することにより判別する判別方法としてもよい。また、アプリケーション等から出力されるキャラクターコードに基づいて判別する判別方法としてもよい。また、当該判別方法は、画像記録装置1のコントローラー80により実行されることとしてもよいし、前記ホストコンピューターの方で実行されることとしてもよい。
【0086】
そして、第二処理による画像再表示が完了した電子ペーパー100は、排紙ローラーによって、画像記録装置1から排出される。
【0087】
<<<第二処理により字つぶれが軽減される理由について>>>
上述したとおり、本実施の形態においては、通常ケースの場合に、直流印加電圧の値をV31=450ボルトに、反転ケースの場合には、直流印加電圧の値をV32=100ボルトにそれぞれ制御するため、いずれの場合においても、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差が、第一処理における当該印加電圧と当該背景像対応領域の電位との差よりも大きくなる。すなわち、通常ケースの場合には、第二処理における印加電圧が450ボルト、第一処理における印加電圧が275ボルト、背景像対応領域(白像部に相当する部分)の電位が50ボルトなので、第二処理における前記差(450−50=400)が、第一処理における前記差(275−50=225)よりも大きくなる。また、反転ケースの場合には、第二処理における印加電圧が100ボルト、第一処理における印加電圧が275ボルト、背景像対応領域(黒像部に相当する部分)の電位が500ボルトなので、第二処理における前記差(500−100=400)が、第一処理における前記差(500−275=225)よりも大きくなる。
【0088】
そして、このように、コントローラー80が、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差を、第一処理における当該差よりも大きくすると、前記第一要因に起因した字つぶれ問題が、第二処理においては、より軽減されることとなる。
【0089】
黒字つぶれ問題について説明すると、第一処理においては、露光ユニットの性能が理想的でないことに起因して潜像の電位がV3=275Vより大きい部分が白背景像であるべき部分に存在してしまうこと(図7の右図参照)により、白背景像であるべき部分が誤って黒画像になって黒字つぶれが発生してしまっていた。しかしながら、第二処理においては、V31=450ボルトとし前記差を大きくしたため、図12に示すように、露光ユニットの性能が理想的でないとしても潜像の電位がV31=450ボルトより大きい部分が白背景像であるべき部分に略存在しなくなる。そのため、白背景像であるべき部分が誤って黒画像になることによる黒字つぶれの発生は軽減されることとなる。なお、図12は、黒字つぶれ問題が軽減されるメカニズムを説明するための説明図である。
【0090】
また、白字つぶれ問題についても同様のことが言える。すなわち、第一処理においては、露光ユニットの性能が理想的でないことに起因して潜像の電位がV3=275Vより小さい部分が黒背景像であるべき部分に存在してしまうこと(図9の右図参照)により、黒背景像であるべき部分が誤って白画像になって白字つぶれが発生してしまっていた。しかしながら、第二処理においては、V32=100ボルトとし前記差を大きくしたため、図13に示すように、露光ユニットの性能が理想的でないとしても潜像の電位がV32=100ボルトより小さい部分が黒背景像であるべき部分に略存在しなくなる。そのため、黒背景像であるべき部分が誤って白画像になることによる白字つぶれの発生は軽減されることとなる。なお、図13は、白字つぶれ問題が軽減されるメカニズムを説明するための説明図である。
【0091】
また、コントローラー80が、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差を、第一処理における当該差よりも大きくすると、前記第二要因に起因した字つぶれ問題も、より軽減されることとなる。
【0092】
黒字つぶれ問題について説明すると、第一処理においては、白背景像であるべき部分側にある着色帯電粒子は本来なら上向きの電界の影響を受けて移動すべきであるが、当該着色帯電粒子の中で境界に近い位置に位置する着色帯電粒子は、黒画像であるべき部分側に近すぎるために、当該黒画像であるべき部分側の下向きの電界の影響を受けてしまう。そして、このことにより、境界付近において、白背景像であるべき部分が誤って黒画像となって黒字つぶれが発生してしまっていた。しかしながら、第二処理においては、前記差を大きくしたため、白背景像であるべき部分側の上向きの電界の大きさがより大きくなる。そのため、白背景像であるべき部分側にある着色帯電粒子の中で境界に近い位置に位置する着色帯電粒子は、黒画像であるべき部分側の下向きの電界の影響を受けにくくなる。したがって、白背景像であるべき部分が誤って黒画像になることによる黒字つぶれの発生は軽減されることとなる。
【0093】
また、白字つぶれ問題についても同様のことが言える。すなわち、第一処理においては、黒背景像であるべき部分側にある着色帯電粒子は本来なら下向きの電界の影響を受けて移動すべきであるが、当該着色帯電粒子の中で境界に近い位置に位置する着色帯電粒子は、白画像であるべき部分側に近すぎるために、当該白画像であるべき部分側の上向きの電界の影響を受けてしまう。そして、このことにより、境界付近において、黒背景像であるべき部分が誤って白画像となって白字つぶれが発生してしまっていた。しかしながら、第二処理においては、前記差を大きくしたため、黒背景像であるべき部分側の下向きの電界の大きさがより大きくなる。そのため、黒背景像であるべき部分側にある着色帯電粒子の中で境界に近い位置に位置する着色帯電粒子は、白画像であるべき部分側の上向きの電界の影響を受けにくくなる。したがって、黒背景像であるべき部分が誤って白画像になることによる白字つぶれの発生は軽減されることとなる。
【0094】
以上の通り、本実施の形態に係る画像記録装置1においては、コントローラー80が、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差を、第一処理における当該差よりも大きくすることにより、潜像に対応する画像及び背景像を再度表示させる第二処理において字つぶれが軽減され、電子ペーパーに記録される画像の画質が向上することとなる。
【0095】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主として電子ペーパーへの画像記録装置について記載されているが、電子ペーパーへの画像記録方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0096】
また、上記実施の形態においては、着色帯電粒子として正帯電白色粒子と負帯電黒色粒子を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0097】
例えば、白色粒子が負帯電であり、黒色粒子が正帯電であってもよい。また、色については、白色、黒色に限定されるものではなく、双方の色が異なっていればどのような色であってもよい。例えば、赤色、青色、緑色などの有彩色や、金色、銀色等の金属光沢色から目的に合わせて適宜選択することができる。また、二色の粒子のうちの片方のみが帯電していて他方が帯電していない(無帯電である)場合(例えば、白色粒子が無帯電であるため、着色帯電粒子としては負帯電黒色粒子のみが存在する場合)であってもよく、このような場合にも本発明を適用できる。
【0098】
また、上記実施の形態においては、電子ペーパー100の上側絶縁層141が光透過性を有する(実質的に透明である)一方で、下側絶縁層142は光透過性を有さない(実質的に不透明である)こととしたが、これに限定されるものではない。例えば、上側絶縁層141と下側絶縁層142の双方が光透過性を有する(実質的に透明である)こととしてもよく、この場合には、上側絶縁層141と下側絶縁層142のいずれをも表示面121とすることが可能となる。
【0099】
また、上記実施の形態においては、印加電圧が直流印加電圧であることとしたが、これに限定されるものではなく、印加電圧は、交流印加電圧であることとしてもよい。なお、本明細書において、印加電圧の値とは、当該印加電圧が交流印加電圧である場合には、交流印加電圧の平均値を意味するものとする。
【0100】
また、上記実施の形態においては、前記第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差が、前記第一処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差よりも大きくなることを実現するために、コントローラー80が、画像対応領域における電位を、該電位が前記第一処理と前記第二処理とで同じになるように設定し(つまり、第一処理、第二処理のいずれにおいても、黒画像対応領域である場合には500ボルト、白画像対応領域である場合には50ボルト)、かつ、前記背景像対応領域における電位を、該電位が前記第一処理と前記第二処理とで同じになるように設定し(つまり、第一処理、第二処理のいずれにおいても、黒背景像対応領域である場合には500ボルト、白背景像対応領域である場合には50ボルト)、前記第二処理における前記印加電圧の値を前記第一処理における該値よりも前記背景像対応領域における電位の値から遠ざけることとしたが(前記通常ケースにおいては、印加電圧の値を第一処理の275ボルトから第二処理の450ボルトとし背景像対応領域における電位の値50ボルトから遠ざけた。また、前記反転ケースにおいては、印加電圧の値を第一処理の275ボルトから第二処理の100ボルトとし背景像対応領域における電位の値500ボルトから遠ざけた)、これに限定されるものではない。例えば、画像対応領域における電位を、該電位が第一処理と第二処理とで異なるように設定したり、背景像対応領域における電位を、該電位が第一処理と第二処理とで異なるように設定したりすることにより、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差が第一処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差よりも大きくなることを実現してもよい。
【0101】
ただし、簡易に(印加電圧の方を制御するだけで)、第二処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差が第一処理における印加電圧と背景像対応領域の電位との差よりも大きくなることを実現できる点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
【0102】
また、上記実施の形態においては、コントローラー80が、通常ケース及び反転ケースのいずれであるか(背景像が黒色及び白色のいずれであるか)が画像データにより判別された判別結果に基づいて、反転ケースを(背景像が黒色であることを)判別結果が示している場合には、第二処理における印加電圧(本実施の形態においては、V32=100ボルト。図11参照)と前記背景像対応領域としての前記黒像部に相当する部分の電位(つまり、V1=500ボルト)との差(500−100=400ボルト)を、前記第一処理における該差(500−275=225ボルト)よりも大きくし、通常ケースを(背景像が白色であることを)判別結果が示している場合には、第二処理における印加電圧(本実施の形態においては、V31=450ボルト。図10参照)と前記背景像対応領域としての前記白像部に相当する部分の電位(つまり、V2=50ボルト)との差(450−50=400ボルト)を、前記第一処理における該差(275−50=225ボルト)よりも大きくすることとした(以下、判別有りケースと呼ぶ)が、これに限定されるものではない。
【0103】
例えば、コントローラー80が、通常ケース及び反転ケースのいずれであるか(背景像が黒色及び白色のいずれであるか)を判別しない実施形態も考えられる。すなわち、前述したとおり、反転ケースは通常ケースと比べて稀であることを考慮して、通常ケース及び反転ケースのいずれであるかの判別を行なわずに、通常ケースのときの黒字つぶれを軽減することを目的として第二処理における印加電圧と白色対応領域の電位との差を第一処理における該差よりも大きくする例(以下、判別無しケースと呼ぶ)であってもよい。
【0104】
そして、双方のケースを比較したときに、判別有りケースは、背景像の色に関わらず画像の画質を向上させる(字つぶれを軽減する)ことができる点で優位性を有し、判別無しケースは、簡易な方法で画像の画質を向上させる(字つぶれを軽減する)ことができる点で優位性を有する。
【0105】
また、上記実施の形態に係る画像記録装置1は、感光体20、帯電ユニット30、露光ユニット40、電界生成ユニット50をそれぞれ2つずつ備える構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、上記各ユニットをそれぞれ1つずつ備える画像記録装置1としてもよい。
【0106】
すなわち、上記実施の形態に係る画像記録装置1では、感光体20と電界生成ユニット50とを2組備え、それぞれに1回ずつ送り込むことで繰り返し画像及び背景像を記録したが、他の実施形態に係る画像記録装置1では、感光体20と対向ローラー52とを1組備え、同じ箇所に2回送り込むことにより繰り返し画像及び背景像を記録する。
【0107】
他の実施形態に係る画像記録装置1で用いる電子ペーパー100は、上記実施の形態に係る画像記録装置1で用いる電子ペーパー100と同様の構成及び機能を有する。
【0108】
他の実施形態に係る感光体20は、上記実施の形態に係る画像記録装置1の感光体20と同様の構成及び機能を有し、他の実施形態に係る帯電ユニット30は、上記実施の形態に係る画像記録装置1の帯電ユニット30と同様のものである。
【0109】
他の実施形態に係る露光ユニット40は、上記実施の形態に係る画像記録装置1の露光ユニット40と同様の構成及び機能を有する。
【0110】
他の実施形態に係る電界生成ユニット50は、対向ローラー52と電圧印加部54とを備え、上記実施の形態に係る画像記録装置1の電界生成ユニット50と同様の構成及び機能を有する。
【0111】
また、他の実施形態に係る搬送ユニット60は、電子ペーパー100を搬送するためのものである。この搬送ユニット60は、図14に示すように、ペーパーカセット62と、ペーパーカセット62の上部に位置する給紙ローラー64と、給紙ローラー64から見て、感光体20側に位置する搬送ローラー66と、不図示の誘導部と、不図示の排紙ローラーとを有する。給紙ローラー64は、ペーパーカセット62に収容されている電子ペーパー100を給紙する。搬送ローラー66は、給紙ローラー64によって給紙された電子ペーパー100を感光体20と対向ローラー52との間に搬送する。そして、一回目の送り込みが実行された電子ペーパー100を、誘導部は矢印Qに示す搬送方向に誘導し、搬送ローラー66は再び感光体20と対向ローラー52との間に搬送する。さらに、再度の送り込みが実行された電子ペーパー100を、誘導部は矢印Pに示す搬送方向に誘導し、排紙ローラーは画像記録装置1から排出する。
【符号の説明】
【0112】
1 画像記録装置、10 記録部、10a 第一記録部、10b 第二記録部、20 感光体、20a 第一感光体、20b 第二感光体、30 帯電ユニット、30a 第一帯電ユニット、30b 第二帯電ユニット、32 帯電ローラー、32a 第一帯電ローラー、32b 第二帯電ローラー、40 露光ユニット、40a 第一露光ユニット、40b 第二露光ユニット、50 電界生成ユニット、50a 第一電界生成ユニット、50b 第二電界生成ユニット、52 対向ローラー、52a 第一対向ローラー、52b 第二対向ローラー、54 電圧印加部、54a 第一電圧印加部、54b 第二電圧印加部、60 搬送ユニット、62 ペーパーカセット、64 給紙ローラー、66 搬送ローラー、80 コントローラー、81 インターフェイス部、82 CPU、83 メモリー、84 ユニット制御回路、100 電子ペーパー、103 表示層、107 封止部、121 表示面、131 マイクロカプセル、132 バインダ、133 カプセル本体、141 上側絶縁層、142 下側絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に対応する画像対応領域及び背景像に対応する背景像対応領域を備えて潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向する対向部材と、
着色帯電粒子を有し前記着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより前記画像及び前記背景像を表示する電子ペーパーを、搬送する搬送部材と、
前記電子ペーパーが前記像担持体と前記対向部材との間に位置する際に、前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧を前記対向部材に印加することにより、前記間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を前記電子ペーパーに表示させる電圧印加部と、
前記電子ペーパーを前記搬送部材に搬送させて、前記電子ペーパーの互いに異なる部位を前記間に順次送り込み、前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を順次表示させる第一処理を前記電圧印加部に実行させ、
前記電子ペーパーを前記搬送部材にさらに搬送させて、前記間を一旦抜けた前記部位を前記間に再度順次送り込み、前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を再度順次表示させる第二処理を前記電圧印加部に実行させるコントローラーであって、
前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差を、前記第一処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差よりも大きくするコントローラーと、
を有することを特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペーパーへの画像記録装置において、
前記コントローラーは、
前記画像対応領域における電位を、該電位が前記第一処理と前記第二処理とで同じになるように設定し、かつ、前記背景像対応領域における電位を、該電位が前記第一処理と前記第二処理とで同じになるように設定し、
前記第二処理における前記印加電圧の値を前記第一処理における該値よりも前記背景像対応領域における電位の値から遠ざけることを特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子ペーパーへの画像記録装置において、
前記電子ペーパーは、前記着色帯電粒子として互いに異なる極性及び色を有する第一色の負帯電粒子及び第二色の正帯電粒子を有し、
前記画像及び前記背景像の一方が前記第一色、他方が前記第二色であり、かつ、
前記画像対応領域及び前記背景像対応領域の一方が、前記第一色を前記電子ペーパーに表示させるための第一色対応領域に、他方が、前記第二色を前記電子ペーパーに表示させるための第二色対応領域になっており、
前記コントローラーは、
前記背景像が前記第一色及び前記第二色のいずれであるかが画像データにより判別された判別結果に基づいて、
前記背景像が前記第一色であることを前記判別結果が示している場合には、前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域としての前記第一色対応領域の電位との差を、前記第一処理における該差よりも大きくし、
前記背景像が前記第二色であることを前記判別結果が示している場合には、前記第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域としての前記第二色対応領域の電位との差を、前記第一処理における該差よりも大きくすることを特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電子ペーパーへの画像記録装置において、
前記電子ペーパーは、前記着色帯電粒子として互いに異なる極性を有する黒色の帯電粒子及び白色の帯電粒子を有し、
前記画像及び前記背景像の一方が前記黒色、他方が前記白色であり、かつ、
前記画像対応領域及び前記背景像対応領域の一方が、前記黒色を前記電子ペーパーに表示させるための黒色対応領域に、他方が、前記白色を前記電子ペーパーに表示させるための白色対応領域になっており、
前記コントローラーは、前記背景像が前記黒色及び前記白色のいずれであるかを判別することなく、前記第二処理における前記印加電圧と前記白色対応領域の電位との差を、前記第一処理における該差よりも大きくすることを特徴とする電子ペーパーへの画像記録装置。
【請求項5】
着色帯電粒子を有し前記着色帯電粒子が厚み方向に移動することにより画像及び背景像を表示する電子ペーパーを搬送部材に搬送させて、前記電子ペーパーの互いに異なる部位を、前記画像に対応する画像対応領域及び前記背景像に対応する背景像対応領域を備えて潜像を担持する像担持体と前記像担持体と対向する対向部材との間に順次送り込み、
前記画像対応領域における電位及び前記背景像対応領域における電位のうちの小さい方よりも大きく大きい方よりも小さい印加電圧を前記対向部材に印加することにより、前記間に前記厚み方向に沿う電界を発生させ、前記着色帯電粒子を前記厚み方向に移動させることにより前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を、前記間に送りこまれた前記部位に順次表示させる第一処理を前記電圧印加部に実行させることと、
前記電子ペーパーを前記搬送部材にさらに搬送させて、前記間を一旦抜けた前記部位を前記間に再度順次送り込み、
前記間に送り込まれた前記部位に前記潜像に対応する前記画像及び前記背景像を再度順次表示させる第二処理を、該第二処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差を、前記第一処理における前記印加電圧と前記背景像対応領域の電位との差よりも大きくして、前記電圧印加部に実行させることと、
を有することを特徴とする電子ペーパーへの画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−215468(P2011−215468A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85049(P2010−85049)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】