説明

電子マイクロメータ

【課題】複数のワークを測定する場合の測定時間を短縮することができる電子マイクロメータを提供する。
【解決手段】電子マイクロメータ装置600が、寸法測定対象であるワーク100とワーク200の寸法に応じた信号を出力する各検出器と、前記寸法に応じた信号を各検出器から取得し、検出器信号として出力する検出器処理部604と、ワーク100とワーク200から選択したワーク100を測定し、ワーク100が測定されていない期間に、ワーク200を測定し、前記検出器信号に基づいて、ワーク100とワーク200の寸法を算出する制御部603と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを寸法測定する電子マイクロメータに関する。
【背景技術】
【0002】
電子マイクロメータは、寸法(形状)の精密測定や位置測定に最適な測定装置であり、今日の機械製造産業において、部品形状の検査、選別等に無くてはならない重要な装置となっている。また近年の機械製造産業におけるコスト競争の激化のため、部品形状の検査、選別をより高速に行えることが電子マイクロメータに求められている。
【0003】
図5に、従来の電子マイクロメータの構成を示す。従来の電子マイクロメータは、電子マイクロメータ装置1と、電子マイクロメータ装置1に各ケーブルで接続された検出器2と検出器3と、取り付け部4と、取り付け部5と、を備える。ここで例として、電子マイクロメータ装置1が検出器2と検出器3とを用いて、取り付け部4と取り付け部5にユーザによって予め備えられた円柱形状のワーク(被測定物)表面の測定点6から測定点8の各点における直径を測定する場合について説明する。
【0004】
図6に、従来の電子マイクロメータの動作タイミングチャートを示す。まずユーザによってワーク9が取り付けられる(段取り作業)。この段取り作業は、取り付け位置精度が要求されるため相当の時間を要する。電子マイクロメータ装置1は、この段取り作業完了を待ち、操作部(図5に不図示)から測定点位置データ等を含む測定条件データを取得後、最初の測定点である測定点6に接触した検出器2と、測定点6に対向する位置の測定点に接触した検出器3と、によりワーク9を挟むことで、測定点6におけるワーク9の直径をマイクロメートル精度で測定する。
【0005】
電子マイクロメータ装置1は、測定点6での測定が完了すると、検出器2と検出器3とを次の測定点である測定点7に移動させ、同様に直径を測定する。このようにして電子マイクロメータ装置1は、ワーク9の取り付けを待ち、最初の測定点(測定点6)から最後の測定点(測定点8)まで測定し、検出器2と検出器3とを最初の測定点に戻すまでに必要な時間(以下、サイクルタイムと称する)を1サイクルタイムとして、ワーク9が交換されることによりこの測定手順を繰り返す(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−38550号公報
【特許文献2】特開平08−261710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の電子マイクロメータは、仮に複数のワーク9が並列に配置されたとしても、図6に示すようにワーク9の寸法測定を開始してその測定が完了するまで次のワーク9の測定を開始せず、測定を行っていたため、測定にはそのワーク9の個数に比例した時間が必要であった。例えば、並列に配置された2本のワーク9を寸法測定する場合、1本のワーク9に必要な測定時間の2倍の測定時間が必要であり、複数のワーク9を並列に配置したとしても測定時間の短縮効果を得ることができなかった。
【0008】
本発明は、前記の諸点に鑑みてなされたものであり、複数のワークを測定する場合の測定時間を短縮することができる電子マイクロメータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、寸法測定対象である被測定物の寸法に応じた信号を出力する検出器と、前記寸法に応じた信号を前記検出器から取得し、検出器信号として出力する検出器処理部と、複数の前記被測定物から選択した前記被測定物を測定し、前記選択された被測定物が測定されていない期間に、他の前記被測定物を測定し、前記検出器信号に基づいて、それぞれの前記被測定物の寸法を算出する制御部と、を備えることを特徴とする電子マイクロメータである。
【0010】
また本発明は、優先順位データに応じて、前記優先順位が低い前記被測定物の測定を中断して、前記優先順位が高い前記被測定物の寸法測定を開始することを特徴とする電子マイクロメータである。
【0011】
また本発明は、ユーザの操作入力を受け付け、前記操作入力によって前記優先順位データを取得する操作部、を備えることを特徴とする電子マイクロメータである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子マイクロメータが1サイクルタイムに複数のワークを並行して寸法測定するため、複数のワークを短時間に寸法測定することができる。
【0013】
またワークに測定優先順位を設けることで、優先順位の高いワークを優先的に短時間で寸法測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電子マイクロメータの構成を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における電子マイクロメータの動作タイミングチャートを示した図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態における電子マイクロメータにおいて、ワーク200の測定が待たされた場合の動作タイミングチャートを示した図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態における電子マイクロメータおいて、ワーク200の測定が中断される場合の動作タイミングチャートを示した図である。
【図5】従来の電子マイクロメータを示した図である。
【図6】従来の電子マイクロメータの動作タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
本発明を実施するための第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における電子マイクロメータの構成を示した図である。当該電子マイクロメータは、取り付け部500と、取り付け部501と、取り付け部502と、取り付け部503と、電子マイクロメータ装置600と、電子マイクロメータ装置600に、ケーブル305で接続された検出器300と、ケーブル306で接続された検出器302と、ケーブル304で接続された検出器301と、ケーブル307で接続された検出器303と、を備える。
【0016】
取り付け部500と取り付け部501は、ユーザが配置した円柱形状のワーク100を固定する。取り付け部502と取り付け部503は、ユーザが配置した円柱形状のワーク200を固定する。ここで、ワーク100とワーク200は被測定物であって、ワーク100とワーク200の形状は円柱に限られず、また同寸法に限られなくてもよい。なお、各取り付け部に駆動部(不図示)を備え、各ワークの長手方向を回転軸としてワーク100とワーク200を回転させることにより、各ワークの外周にわたって直径を測定するとしてもよい。
【0017】
電子マイクロメータ装置600は、検出器処理部604と、制御部603と、表示部602と、出力部606と、操作部601と、記憶部605と、を備える。操作部601は、ユーザの操作入力を受け付け、複数の測定点位置データを取得し、制御部603に出力する。
【0018】
検出器300から検出器303は、検出器処理部604の制御に応じて各測定点間をそれぞれ移動する。例えば、検出器300はワーク100表面の測定点101に接触する。同様に、検出器302は測定点101に対向する位置の測定点(不図示)でワーク100に接触し、検出器300とワーク100を挟む。検出器301と検出器303も同様である。
【0019】
検出器300と検出器302は、ワーク100表面の各測定点における直径を測定し(寸法測定)、各ケーブルを介して直径に応じた信号を検出器処理部604に出力する。 検出器301と検出器303は、ワーク200表面の各測定点における直径を測定し(寸法測定)、直径に応じた信号を同様に出力する。なお、これらの直径に応じた信号は、基準位置(不図示)からの変位を示す差動信号であってもよい。
【0020】
制御部603は、複数の測定点位置データを操作部601から取得し、記憶部605に記憶させる。制御部603は、操作部601から取得した測定点位置データを並び順に選択し、選択した測定点の位置を後述する検出器処理部604に1測定点ずつ指定する。
【0021】
測定点を指定した制御部603は、指定した測定点に検出器が接触したことを示す割り込み信号(以下、移動完了信号)を検出器処理部604から受信する。また制御部603は、後述する検出器処理部604から測定完了を示す測定完了信号を受信する。移動完了信号を受信し、かつ測定が実行中でない場合、制御部603は、後述する検出器処理部604に測定開始信号を出力する。それ以外の場合、制御部603は測定開始信号を出力しない。ここで制御部603は、測定開始信号を出力した以降で測定完了を示す測定完了信号を受信していない場合は、測定が実行中であると判断する。それ以外の場合、制御部603は測定が実行中でないと判断する。測定完了信号を受信した場合、制御部603は次の測定点の位置を検出器処理部604に指定する。
【0022】
制御部603は、後述する検出器処理部604が各検出器から取得しAD変換した信号(以下、検出器信号と称する)と、その検出器信号に対応する検出器を示す識別子(以下、検出器識別子と称する)と、を検出器処理部604から取得する。
【0023】
制御部603は、測定中または測定が完了した測定点における直径を、検出器信号に基づいて算出する。制御部603は、算出した直径を示す寸法データと、検出器識別子に基づいて、どのワークの寸法データかを示す識別子(以下、ワーク識別子と称する)と、を表示部602と、出力部606と、記憶部605と、に出力する。測定完了信号を受信した場合、制御部603は検出器信号と検出器識別子の取得を停止する。
【0024】
検出器処理部604は、制御部603から各測定点の位置を1点ずつ指定され、指定された測定点に、その測定点に対応する検出器を移動させる。検出器処理部604は、移動完了信号を制御部603に出力する。この移動完了信号には測定点を示す識別子が含まれ、制御部603は、どの測定点に検出器が接触しているのかを識別することができる。
【0025】
検出器処理部604には、測定開始を示す測定開始信号が制御部603から入力される。この測定開始信号には測定点を示す識別子が含まれるので、検出器処理部604は、測定対象の測定点を識別することができる。検出器処理部604は、各検出器から取得した直径に応じた信号をアンプ(不図示)で増幅し、AD変換部(不図示)によってAD変換する。検出器処理部604は、検出器信号と、検出器識別子と、を制御部603に出力する。
【0026】
検出器処理部604は、測定完了を示す測定完了信号を制御部603に出力する。この測定完了信号には測定点を示す識別子が含まれるので、制御部603は、どの測定点について測定が完了したのかを識別することができる。
【0027】
表示部602は、例えば液晶パネル(不図示)と画像処理部(不図示)であって、制御部603から寸法データとワーク識別子を取得する。表示部602は、取得した寸法データとワーク識別子を液晶パネル(不図示)に表示する。
【0028】
出力部606は、例えば外部インタフェースであって、制御部603から入力された寸法データとワーク識別子を所定のフォーマットに変換し、外部の周辺機器(不図示)に出力する。
【0029】
記憶部605はメモリであって、制御部603から入力されたデータを記憶する。また記憶部605に記憶されたデータは、制御部603と検出器処理部604から読み出すことができる。なお記憶部605は、電子マイクロメータ装置600に着脱可能ないわゆるリムーバブルメディアであってもよい。
【0030】
図2は、本発明の第1の実施の形態における電子マイクロメータの動作タイミングチャートを示した図である。期間S1において、制御部603は、取り付け部500と取り付け部501にワーク100が取り付けられ、操作部601から測定点位置データが入力されるのをポーリング処理で待つ(期間S1)。
【0031】
期間S2において、操作部601はユーザの操作入力を受け付け、ワーク100の複数の測定点位置データを取得し、制御部603に出力する。制御部603は、ワーク100の複数の測定点位置データを操作部601から取得し、記憶部605に記憶させる。
【0032】
ここで複数の測定点位置データとして、測定点101から測定点103が入力されたものとする。制御部603は、取り付け部502と取り付け部503にワーク200が取り付けられるのを待つ。
【0033】
制御部603は、操作部601から取得した測定点位置データを並び順に1点ずつ選択し、最初の測定点である測定点101の位置を検出器処理部604に指定する。検出器処理部604は、制御部603から指定された測定点101に検出器300を移動させる。また検出器処理部604は、測定点101に対向する位置に検出器302を移動させる。
【0034】
検出器処理部604は、指定された測定点101に検出器300が接触し、測定点101に対向する位置に検出器302が接触すると、移動完了信号を制御部603に出力する。移動完了信号を受信した制御部603は、測定開始信号を検出器処理部604に出力する。(期間S2)
【0035】
期間S3において、検出器300と検出器302は、ワーク100を挟むことで測定点101におけるワーク100の直径に応じた信号を検出器処理部604に出力する。測定開始信号を入力された検出器処理部604は、各検出器から取得した直径に応じた信号を増幅し、AD変換する。
【0036】
制御部603は、検出器処理部604からの検出器信号に基づいて測定点101における直径を算出し、算出した直径データを寸法データとして、表示部602と出力部606に出力する。また制御部603は、検出器300と検出器302とを示す検出器識別子に基づいて、ワーク100の寸法データであること示すワーク識別子を、表示部602と出力部606に出力する。
【0037】
表示部602は、測定点101における直径を示す寸法データと、ワーク100の寸法データであること示すワーク識別子と、を表示する。出力部606は、制御部603から入力された寸法データとワーク識別子を外部の周辺機器(不図示)に出力する。
【0038】
検出器処理部604は直径の測定を完了すると、制御部603に測定完了信号を出力する。測定完了信号を受信した制御部603は、検出器信号と検出器識別子の取得を停止する。
【0039】
一方、ワーク200について、操作部601はユーザの操作入力を受け付け、ワーク200の複数の測定点位置データを取得し、制御部603に出力する。制御部603は、ワーク200の複数の測定点位置データを操作部601から取得し、記憶部605に記憶させる。
【0040】
ここで複数の測定点位置データとして、測定点201から測定点203が操作部601に入力されたものとする(期間S3)。なお、各ワークの取り付け(段取り作業)待ちと、各ワークの測定条件の取得と、は同期間に行われてもよい。
【0041】
期間S4におけるワーク200の測定について、制御部603と、検出器301と、検出器303と、検出器処理部604と、表示部602と、出力部606と、は期間S3におけるワーク100についての測定手順と同様に動作する。また制御部603は、次の測定に備えるために、ワーク100の測定点102に検出器300と検出器302とを前述のように移動させ、ワーク200の測定が完了するまで同様に待機する(期間S4)。
【0042】
以降の期間において、制御部603は、直径の測定と、各検出器の測定点への移動と待機と、をワーク100とワーク200に対して交互に実行し、ワーク100の最初の測定点101に検出器300と検出器302を戻すことで、ワーク100の測定について1サイクルを完了する(期間S5から期間S9)。
【0043】
制御部603は、同様にワーク200の最初の測定点201に検出器301と検出器303を戻している間に、ワーク100の交換取り付け(段取り作業)の完了を待つことができる(期間S10)。
【0044】
以上、本発明の実施の形態により、電子マイクロメータが1サイクルタイムに複数のワークを並行して寸法測定するため、複数のワークを短時間に寸法測定することができる。また、どちらのワークも同じ優先順位で測定を進めることができるので、電子マイクロメータは、同じ優先順位のワークを同等の時間で寸法測定することができる。
【0045】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態における電子マイクロメータは、第1の実施の形態における電子マイクロメータと同構成を備える。操作部601は、ユーザの操作入力を受け付け、複数の測定点位置データと、優先順位データと、を取得し、制御部603に出力する。また制御部603は、複数の測定点位置データと、優先順位データと、を操作部601から取得し、記憶部605に記憶させる。
【0046】
ここで優先順位データとは、ワーク100とワーク200とで測定タイミング等が競合した場合に、どちらのワークの測定を優先させるかを示すデータであり、値が大きいほど優先順位が高いものとする。優先順位の高いワークを測定する条件が整った場合に、制御部603は、この優先順位データを用いることで優先順位の低いワークの測定を中断し、代わりに優先順位の高いワークの測定を実行する。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施の形態における電子マイクロメータにおいて、ワーク200の測定が待たされた場合の動作タイミングチャートを示した図である。ここで、ワーク100の優先順位データとして値「2」、ワーク200の優先順位データとして値「1」、が操作部601に入力されたものとする。このためワーク100が優先的に寸法測定される場合について説明する。
【0048】
期間Sa1から期間Sa3までは、図2の期間S1から期間S3までと同様である。検出器300と検出器302は、測定点101における直径の測定を期間Sa3から続けており、期間Sa4において、測定は完了していないものとする。このため制御部603は、ワーク100の測定点101における測定完了信号が入力されるのを待ち、ワーク200の測定点201における直径の測定を保留する(期間Sa4)。
【0049】
測定点101における直径の測定が完了したことで、制御部603に測定完了信号が入力されると、制御部603はワーク200の測定点201における直径の測定を、前述のように実行する。また制御部603は、ワーク100の次の測定点である測定点102の位置を検出器処理部604に指定する。検出器処理部604は、制御部603から指定された測定点102に検出器300を移動させ、その測定点102に対向する位置の測定点に検出器302を移動させる(期間Sa5)。以降の期間は、図2と同様である。
【0050】
以上、本発明の実施の形態により、電子マイクロメータが1サイクルタイムに複数のワークを並行して寸法測定するため、複数のワークを短時間に寸法測定することができる。また電子マイクロメータは、優先順位が高いワークの測定が完了するまで他のワークの寸法測定を保留するので、優先順位が高いワークを優先的に短時間で寸法測定することができる。
【0051】
図4は、本発明の第2の実施の形態における電子マイクロメータにおいて、ワーク200の測定が中断される場合の動作タイミングチャートを示した図である。ここで、ワーク100の優先順位データとして値「2」、ワーク200の優先順位データとして値「1」、が操作部601に入力されたものとする。このためワーク100が優先的に寸法測定される場合について説明する。
【0052】
期間Sb1から期間Sb4までは、図2の期間S1から期間S4までと同様である。期間Sb4において、ワーク200の測定点201における直径の測定が完了したものとする。このため制御部603は、検出器301を次の測定点である測定点202へ移動させ、その対向する位置の測定点に検出器303と、を移動させる。ここで検出器300と検出器302は、期間Sb5では各測定点に移動が完了しないものとする(期間Sb5)。
【0053】
検出器301と検出器303が、ワーク200の次の測定点である測定点202に移動完了すると、検出器処理部604は検出器301と検出器303の移動完了信号を制御部603に出力する。制御部603は、優先順位が高いワーク100を測定する検出器300と検出器302の移動完了信号を未だに受信していないので、優先順位が低いワーク200の寸法測定を先に実行する(期間Sb6)。
【0054】
検出器300と検出器302が、次の測定点である測定点102に移動完了すると、検出器処理部604は、検出器300と検出器302の移動完了信号を、制御部603に出力する。制御部603は、測定点102を指定した測定開始信号を検出器処理部604に出力する。測定点102を指定した測定開始信号を受信した検出器処理部604は、優先順位が低いワーク200の測定点202における測定を中断し、優先順位が高いワーク100の測定点102における直径を、前述のように測定する(期間Sb7)。
【0055】
測定点102における直径の測定が完了したことで測定完了信号が入力されると、制御部603は、ワーク100の次の測定点である測定点103の位置を検出器処理部604に指定する。検出器処理部604は、制御部603から指定された測定点103に各検出器を移動させる。また制御部603は、期間Sb7で中断させていたワーク200の測定点202における直径の測定を再開する(期間Sb8)。以降の期間は、図2と同様である。
【0056】
以上、本発明の実施の形態により、電子マイクロメータが1サイクルタイムに複数のワークを並行して寸法測定するため、複数のワークを短時間に寸法測定することができる。また、優先順位が低いワークの測定を中断して、優先順位が高いワークの寸法測定を開始するので、電子マイクロメータは、優先順位が高いワークを優先的に短時間で寸法測定することができる。
【0057】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0058】
例えば、電子マイクロメータの取り付け部に、3個以上のワークが固定されてもよい。また、2つの検出器だけで複数のワークの寸法測定を行うとしてもよい。また操作部601は、測定モードデータを受け付け、制御部603はこの測定モードデータに基づいて測定手順を変えてもよい。
【0059】
例えば、検出器の数は、前述の実施形態に示された数に限られない。ユーザによって各ワークが取り付け部に取り付けられる段取り作業において、各検出器をワークの各測定点に予め接触させておくようにするなどすれば、検出器は検出器処理部604の制御に応じて各測定点間を移動する必要はない。
【0060】
また、本発明に記載の電子マイクロメータは、電子マイクロメータ装置600に対応し、操作部は、操作部601に対応し、被測定物は、ワーク100と、ワーク200と、に対応し、検出器は、検出器300と、検出器301と、検出器302と、検出器303と、に対応し、検出器処理部は、検出器処理部604に対応し、制御部は、制御部603に対応し、表示部は、表示部602と、出力部606と、に対応する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ワークを寸法測定する電子マイクロメータに好適である。
【符号の説明】
【0062】
1…電子マイクロメータ装置 2…検出器 3…検出器 4…取り付け部 5…取り付け部 6…測定点 7…測定点 8…測定点 9…ワーク 10…ケーブル 11…ケーブル 100…ワーク 101…測定点 102…測定点 103…測定点 200…ワーク 201…測定点 202…測定点 203…測定点 300…検出器 301…検出器 302…検出器 303…検出器 304…ケーブル 305…ケーブル 306…ケーブル 307…ケーブル 500…取り付け部 501…取り付け部 502…取り付け部 503…取り付け部 600…電子マイクロメータ装置 601…操作部 602…表示部 603…制御部 604…検出器処理部 605…記憶部 606…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寸法測定対象である被測定物の寸法に応じた信号を出力する検出器と、
前記寸法に応じた信号を前記検出器から取得し、検出器信号として出力する検出器処理部と、
複数の前記被測定物から選択した前記被測定物を測定し、前記選択された被測定物が測定されていない期間に、他の前記被測定物を測定し、前記検出器信号に基づいて、それぞれの前記被測定物の寸法を算出する制御部と、
を備えることを特徴とする電子マイクロメータ。
【請求項2】
優先順位データに応じて、前記優先順位が低い前記被測定物の測定を中断して、前記優先順位が高い前記被測定物の寸法測定を開始することを特徴とする請求項1に記載の電子マイクロメータ。
【請求項3】
ユーザの操作入力を受け付け、前記操作入力によって前記優先順位データを取得する操作部、を備えることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1つに記載の電子マイクロメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169439(P2010−169439A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10196(P2009−10196)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(502134292)ベクトル株式会社 (12)
【Fターム(参考)】