説明

電子メールを送信するシステム

【課題】電子メールを複数の受信者に送信する場合に、ある受信者の電子メールアドレスを、送信者が選択した特定の他の受信者にのみ知らせるようにする。
【解決手段】電子メールを送信するシステムであって、送信されるべき電子メールを、少なくとも何れか1つが複数の宛先を含む複数の宛先アドレスグループの指定に対応付けて取得する取得部と、指定されたそれぞれの宛先アドレスグループに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、前記電子メールを送信する送信部とを備えるシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子メールを送信するシステムに関する。特に、本発明は、複数の受信者に対し同一の電子メールを効率的に送信するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシステムにおいて、電子メールの宛先として複数の電子メールアドレスを指定すると、それぞれの宛先に対し同一の電子メールが送信される。そして、受信された電子メールの宛先フィールドには、受信者全員の電子メールアドレスが表示される。図1にその具体例を示す。
図1は、電子メールの第1の送信例を示す。送信者が、電子メールアドレスA1、A2およびB1を指定すると、受信者A1、A2およびB1のそれぞれは、同一の電子メールを受け取る。そしてその電子メールのTOフィールドには、電子メールアドレスA1、A2およびB1が表示される。
【0003】
しかしながら、受信者全員の電子メールアドレスが各受信者に対し明らかになると、プライバシー保護の観点から好ましくない場合がある。これに対し、グループ名などの宛先リストを用いる方法が用いられている。この方法によれば、受信者の電子メールの宛先フィールドに、受信者の電子メールアドレスに代えてグループ名を表示させることができる。図2にその一例を示す。
【0004】
図2は、電子メールの第2の送信例を示す。送信者は、グループXというグループ名に、電子メールアドレスA1、A2およびB1を予め対応付けておく。この対応付けの情報は、例えば、送信者の端末にインストールされたメール送信用のソフトウェアによって管理される。そして、送信者がこのグループXを宛先に指定すると、そのグループXに対応する電子メールアドレスA1、A2およびB1のそれぞれに対し電子メールが送信される。その電子メールには、グループXという名称のみが表示され、それに対応する個々の電子メールアドレスは表示されない。
【0005】
また、同様の目的で、BCCフィールドを用いる方法も用いられている。この方法によれば、受信者の電子メールの宛先フィールドには何ら表示されない。図3にその一例を示す。
図3は、電子メールの第3の送信例を示す。送信者がBCCフィールドに電子メールアドレスA1、B1およびA2を指定すると、電子メールアドレスA1、B1およびA2には、それぞれ別の電子メールが送信される。電子メールアドレスA1に送信される電子メールには、BCCフィールドに電子メールアドレスA1が表示され、電子メールアドレスB1に送信される電子メールには、BCCフィールドに電子メールアドレスB1が表示される。そして、電子メールアドレスA2に送信される電子メールには、BCCフィールドに電子メールアドレスA2が表示される。
【0006】
参考文献として特許文献1から4を挙げる。特許文献1に記載の技術は、送信メールの作成画面上の宛先欄において、予め定義した演算記号を用いて、予め登録されたグループに他の電子メールアドレスを加えたり、グループから電子メールアドレスを除外して送信先を設定できるようにしたものである。特許文献2に記載の技術は、同一の電子メールを複数の受信者に送信する場合に、受信者に応じて異なるファイルを添付できるようにするというものである。特許文献3に記載の技術は、同一の電子メールを複数の受信者に送信する場合に、受信者に応じてファイルを添付したり、または、ファイルを添付しない制御を可能とするものである。特許文献4の記載の技術は、送信先の宛名に応じて内容の異なる多様なメッセージからなる電子メールを一括して送信するというものである。
【特許文献1】特開2002−244972号公報
【特許文献2】特開2005−018182号公報
【特許文献3】特開2003−6123号公報
【特許文献4】特開2004−86285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1から図3を参照して説明した方法を用いると、受信者が他の受信者を知りえないので、プライバシーの保護が厚い。しかしながら、これらの方法を用いた場合には、受信者が他の受信者に対し、当該他の受信者が既に同一の電子メールを受信していたにも拘らず、受信した電子メールを転送してしまう場合がある。例えば、外部から同一組織のメンバーにそれぞれ電子メールが送信された場合に、ある受信者は、情報を組織内で共有するために、それが組織内全員に既に送信されたものとは知らずに電子メールを転送してしまう場合がある。このような場合には、各受信者に不要な手間をかけさせるばかりでなく、ネットワークトラフィックの増大やメールサーバの負荷の増大を招くおそれがある。
【0008】
なお、参考文献として挙げた特許文献1〜4の何れの技術によっても、受信者の利便性は向上できるものの、受信者のプライバシーの保護と労力の削減とを両立させることはできない。
【0009】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできるシステム、方法およびプログラムを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一形態においては、電子メールを送信するシステムであって、送信されるべき電子メールを、少なくとも何れか1つが複数の宛先を含む複数の宛先アドレスグループの指定に対応付けて取得する取得部と、指定されたそれぞれの宛先アドレスグループに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、電子メールを送信する送信部とを備えるシステムを提供する。また、当該システムとして情報処理装置を機能させるプログラム、および、当該システムによって電子メールを送信する方法を提供する。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0011】
電子メールを複数の受信者に送信する場合に、ある受信者の電子メールアドレスを、送信者が選択した特定の他の受信者にのみ知らせるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図4は、通信システム10と端末装置40〜90とが接続された通信ネットワークの構成を示す。通信システム10は、例えば企業内のローカル・エリア・ネットワークであり、端末装置20と、送信サーバ30とを備える。端末装置20は、表示部200を有し、宛先の入力欄や本文の入力欄を表示部200に表示することにより電子メールの入力を利用者から受け付ける。そして、端末装置20は、受け付けた電子メールを送信サーバ30に対し送信する。送信サーバ30は、例えばSMTPプロトコルの通信に対応したサーバ装置であり、端末装置20から受信した電子メールを、通信ネットワーク中の適切な通信経路を経由して、他のメールサーバ、例えばPOPプロトコルの通信に対応した受信サーバに対し転送する。端末装置40〜90のそれぞれは、互いに異なる利用者に対応付けて設けられており、送信サーバ30によって送信された電子メールを、受信サーバを介して取得し、表示部400〜900のそれぞれに表示する。
本実施形態に係る通信システム10は、送信サーバ30に設けた機能により、電子メールを複数の受信者に対し送信する場合に、ある受信者の電子メールアドレスを、送信者が選択した特定の他の受信者にのみ知らせるようにすることを目的とする。これにより、受信者のプライバシーを保護しつつ、電子メールの転送による不要なネットワークトラフィックを低減できる。
【0014】
図5は、端末装置20の機能構成を示す。端末装置20は、表示部200と、入力受付部210と、グループ管理部220とを有する。表示部200は、複数の宛先アドレスグループを指定するために予め定められた複数の宛先入力欄を表示する。入力受付部210は、宛先アドレスグループを示すテキストデータを、宛先入力欄を介して利用者から受け付ける。また、入力受付部210は、電子メールの本文・サブジェクトおよび添付ファイルなどの入力を利用者から受け付ける。そして、入力受付部210は、受け付けた電子メールを宛先アドレスグループの指定に対応付けて送信サーバ30に送信する。
【0015】
宛先アドレスグループは、グループ管理部220によって管理された登録アドレスグループの識別子を用いて指定されてもよい。即ちたとえば、グループ管理部220は、少なくとも1つの電子メールアドレスを、予め登録された登録アドレスグループの識別子に対応付けて管理している。そして、利用者が、登録アドレスグループの識別子を含むテキストデータを入力すると、入力受付部210は、その識別子に対応してグループ管理部220により管理された電子メールアドレスを宛先とした電子メールを作成し、送信サーバ30に送信してもよい。
【0016】
図6は、送信サーバ30の機能構成を示す。送信サーバ30は、取得部310と、送信部320とを有する。取得部310は、送信されるべき電子メールを、複数の宛先アドレスグループの指定に対応付けて端末装置20から取得する。送信部320は、指定されたそれぞれの宛先アドレスグループに対し、他のメールサーバ等を介して、取得したその電子メールを送信する。この場合、それぞれの宛先アドレスグループに送信される電子メールの宛先フィールドには、当該宛先アドレスグループに含まれる宛先のみが設定され、他の宛先アドレスグループに含まれる宛先は設定されない。宛先フィールドに対する宛先の設定は、電子メールのヘッダー部分を変更することによって実現されてもよい。
【0017】
図7は、表示部200の表示例を示す。表示部200は、複数の宛先入力欄のそれぞれを表示することにより、複数の宛先アドレスグループのそれぞれの入力を受け付ける。具体的には、表示部200は、宛先アドレスグループ1の宛先入力欄としてTO:欄とCC:欄とを表示する。また、表示部200は、宛先アドレスグループ2の宛先入力欄としてTO:欄とCC:欄とを表示する。なお、図7で宛先アドレスグループは2つであるが、表示部200は、利用者からの指示に応じて、3以上の宛先アドレスグループについての宛先入力欄を表示してもよい。
【0018】
入力受付部210は、宛先アドレスグループ1の宛先入力欄、例えばTO:欄に対し電子メールアドレスAAA@△△△.comの入力を受け付け、宛先アドレスグループ1の宛先入力欄、例えばCC:欄に対し電子メールアドレスBBB@△△△.comの入力を受け付ける。同様に、入力受付部210は、宛先アドレスグループ2の宛先入力欄、例えば、TO:欄に対し電子メールアドレスCCC@□□□.comの入力を受け付け、宛先アドレスグループ2の宛先入力欄、例えば、CC:欄に対し電子メールアドレスDDD@□□□.comの入力を受け付ける。
【0019】
入力完了を示す操作やメール送信の操作を受けると、入力受付部210は、電子メールアドレスAAA@△△△.com、および、電子メールアドレスBBB@△△△.comの組を、宛先アドレスグループ1の指定と判断する。また、入力受付部210は、電子メールアドレスCCC@□□□.com、および、電子メールアドレスDDD@□□□.comの組を、宛先アドレスグループ2の指定と判断する。そして、入力受付部210は、宛先アドレスグループ1の指定、および、宛先アドレスグループ2の指定を、電子メールのサブジェクトや本文等に対応付けて送信サーバ30の取得部310に送信する。これにより、取得部310は、それぞれの宛先アドレスグループの指定として、当該宛先アドレスグループに対応する宛先入力欄に入力された1または複数の電子メールアドレスを取得することができる。
【0020】
更に、表示部200は、表通表示アドレスグループの指定を入力させるために、表通表示アドレスグループの入力欄を表示してもよい。表通表示アドレスグループとは、それぞれの宛先アドレスグループに対し送信するそれぞれの電子メールの宛先フィールドに共通して表示すべき宛先のグループである。図7では、入力受付部210は、表通表示アドレスグループの入力欄に対し、電子メールアドレスEEE@○○○.comの入力を受け付ける。この場合、入力受付部210は、電子メールアドレスEEE@○○○.comを、表通表示アドレスグループの指定と判断する。入力完了等の指示に応じ、入力受付部210は、共通グループの指定に更に対応付けて、電子メールの本文等を送信サーバ30に対し送信する。これにより、取得部310は、電子メールを、さらに、表通表示アドレスグループの指定に対応付けて取得することができる。
【0021】
また、表示部200は、通常の電子メールと同様、BCC:欄を表示してもよい。図7では、入力受付部210は、BCC:欄に対し電子メールアドレスFFF@○○○.comの入力を受け付ける。入力完了等の指示に応じ、入力受付部210は、BCC:欄に入力された電子メールアドレスFFF@○○○.comに更に対応付けて、電子メールの本文等を送信サーバ30に対し送信する。
【0022】
以下、図8から図11を参照して、この電子メールが受信者に対しどのように表示されるかを説明する。以降の説明において、電子メールアドレスAAA@△△△.comへの電子メールは端末装置40において受信され、電子メールアドレスBBB@△△△.comへの電子メールは端末装置50において受信されるものとする。また、電子メールアドレスCCC@□□□.comへの電子メールは端末装置60において受信され、電子メールアドレスDDD@□□□.comへの電子メールは端末装置70において受信されるものとする。また、電子メールアドレスEEE@○○○.comへの電子メールは端末装置80において受信され、電子メールアドレスFFF@○○○.comへの電子メールは端末装置90において受信されるものとする。
【0023】
図8は、表示部400または表示部500の表示例を示す。このうち表示部400の表示例について説明する。表示部400は、受信した電子メールの宛先フィールドであるTO:欄に、電子メールアドレスAAA@△△△.comを表示する。また、表示部400は、受信した電子メールの宛先フィールドであるCC:欄に、電子メールアドレスBBB@△△△.comを表示する。これらの宛先フィールドには、これらの電子メールアドレスとは別の宛先アドレスグループに含まれるCCC@□□□.comおよびDDD@□□□.comは表示されない。さらに、表示部400は、表通表示アドレスグループに含まれる電子メールアドレスEEE@○○○.comを表示する。また、表示部400は、電子メールのサブジェクトと本文も表示する。また、表示部500の表示例は表示部400の表示例と略同一であるから説明を省略する。
【0024】
図9は、表示部600または表示部700の表示例を示す。このうち表示部600の表示例について説明する。表示部600は、受信した電子メールの宛先フィールドであるTO:欄に、電子メールアドレスCCC@□□□.comを表示する。また、表示部600は、受信した電子メールの宛先フィールドであるCC:欄に、電子メールアドレスDDD@□□□.comを表示する。これらの宛先フィールドには、これらの電子メールアドレスとは別の宛先アドレスグループに含まれるAAA@△△△.comおよびBBB@△△△.comは表示されない。さらに、表示部600は、表通表示アドレスグループに含まれる電子メールアドレスEEE@○○○.comを表示する。また、表示部600は、電子メールのサブジェクトと本文も表示する。また、表示部700の表示例は表示部600の表示例と略同一であるから説明を省略する。
【0025】
なお、本実施形態の宛先フィールドは、電子メールアドレスのヘッダ部分に含まれるTOフィールドやCCフィールドに限られるものではない。例えば、電子メールの本文中に宛先を示唆する文字列と共に宛先が示される場合には、その文字列が表示される領域も宛先フィールドとなる。即ち、送信部320は、それぞれの宛先アドレスグループに対し、電子メール本文中で宛先を示唆する文字列に対応付けて表示させる領域に、当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定し、他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定せずに、電子メールを送信してもよい。そのような機能を設けても、電子メールの宛先を一切表示させない既存の機能と組み合わせることで、送信者の利便性を維持しつつ受信者のプライバシーを保護することができる。
【0026】
図10は、表示部800の表示例を示す。表通表示アドレスグループに含まれる受信者(電子メールアドレスはEEE@○○○.com)に送信された電子メールにおいて、送信者によって指定された宛先アドレスグループは、BCC:フィールドに指定された宛先を除き全て表示される。それぞれの宛先フィールドに表示される内容は、図7に示す送信電子メールの入力欄に入力された内容と同一であるから説明を省略する。
【0027】
図11は、表示部900の表示例を示す。表示部900は、BCC:入力欄において指定された受信者(電子メールアドレスはFFF@○○○.com)に送信された電子メールにおいて、宛先フィールドには、宛先フィールドに表示するものとして指定された全ての宛先を表示する。それぞれの宛先フィールドに表示される内容は、図7に示す送信電子メールの入力欄に入力された内容と同一であるから説明を省略する。さらに、表示部900は、BCC:フィールドには、受信者の電子メールアドレスFFF@○○○.comを表示し、電子メールのサブジェクトと本文とを表示する。
【0028】
図12は、通信システム10によって電子メールが送信される処理のフローチャートを示す。表示部200は、複数の宛先入力欄のそれぞれを表示することにより、複数の宛先アドレスグループのそれぞれの入力を受け付ける(S1200)。表示部200は、更に、表通表示アドレスグループとBCC:の宛先との入力を受け付けてもよい。取得部310は、送信されるべき電子メールを、少なくとも何れか1つが複数の宛先を含む複数の宛先アドレスグループの指定と、表通表示アドレスグループの指定とに対応付けて取得する(S1210)。
【0029】
なお、他の例として、取得部310は、単に複数の電子メールアドレスを取得して、それらを自動的に複数の宛先アドレスグループに分類してもよい。即ち例えば、取得部310は、宛先アドレスグループの指定として取得した複数の電子メールアドレスを、電子メールアドレスのドメイン名毎に複数のグループに分類し、分類したそれぞれのグループを宛先アドレスグループと判断してもよい。
【0030】
取得部310は、電子メールの本文やサブジェクト、添付ファイルその他も併せて取得する(S1220)。送信部320は、電子メールを送信するべく以下の処理を行う(S1230)。まず、送信部320は、指定されたそれぞれの宛先アドレスグループについて、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定し、かつ、他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しない電子メールを生成する。次に、送信部320は、それぞれの宛先アドレスグループに送信するそれぞれの電子メールの宛先フィールドに、表通表示アドレスグループに含まれる宛先を追加する。そして、送信部320は、それぞれの宛先アドレスグループに対し対応する電子メールを送信するべく、これらの電子メールを他のメールサーバに転送する。
【0031】
以上、本実施形態に係る通信システム10によれば、電子メールを複数の受信者に対し送信する場合に、ある宛先アドレスグループに含まれる受信者の電子メールアドレスを、その宛先アドレスグループに含まれる他の受信者にのみ知らせるようにし、他の宛先アドレスグループに含まれる受信者には知らせないようにすることができる。これにより、受信者のプライバシーを保護しつつ、受信者による電子メールの不要な転送を回避し、ネットワークトラフィックやサーバの処理負荷を軽減できる。さらに、表通表示アドレスグループの指定を可能とすることで、何れの受信者に対しても知らせてよい電子メールアドレスを指定することもでき、宛先フィールドの表示について柔軟な制御を簡単な操作で可能とすることができる。
【0032】
続いて、本実施形態の第1および第2の変形例について説明する。
図13は、本実施形態の第1の変形例における表示部200の表示例を示す。図7等の例と同様、表示部200は、宛先アドレスグループを指定させるために宛先入力欄を表示する。しかしながら、図7等の例とは異なり、入力受付部210は、宛先アドレスグループの指定として取得したテキストデータにおいて、電子メールアドレス同士の区切りとなるアドレスセパレータ「;」のみならず、アドレスセパレータとは異なる予め定められたグループセパレータ「#」の入力を受け付ける。これらのセパレータを含むテキストデータを取得すると、取得部310は、列記された電子メールアドレスがグループセパレータによって区切られていることを条件に、グループセパレータによって区切られた電子メールの複数の組のそれぞれを宛先アドレスグループと判断する。即ち、取得部310は、電子メールアドレスAAA@△△△.comおよび電子メールアドレスBBB@△△△.comの組を1つの宛先アドレスグループと判断し、電子メールアドレスCCC@□□□.comおよび電子メールアドレスDDD@□□□.comの組を他の宛先アドレスグループと判断する。そして、送信部320は、これらの宛先アドレスグループのそれぞれに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定し、かつ、他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、電子メールを送信する。
【0033】
図14は、本実施形態の第1の変形例における表示部400または表示部500の表示例を示す。図13に示す電子メールが送信されると、表示部400は、受信した電子メールの宛先フィールドに、受信者と同一の宛先アドレスグループ内のそれぞれの電子メールアドレスを表示し、他の宛先アドレスグループ内の受信者の電子メールアドレスを表示しない。即ち、表示部400は、電子メールアドレスAAA@△△△.comおよび電子メールアドレスBBB@△△△.comの組を表示し、電子メールアドレスCCC@□□□.comおよび電子メールアドレスDDD@□□□.comの組を表示しない。なお、表示部500についても表示部400と略同一の表示をするので説明を省略する。
【0034】
図15は、本実施形態の第1の変形例における表示部600または表示部700の表示例を示す。図13に示す電子メールが送信されると、表示部600は、電子メールアドレスCCC@□□□.comおよび電子メールアドレスDDD@□□□.comの組を表示し、電子メールアドレスAAA@△△△.comおよび電子メールアドレスBBB@△△△.comの組を表示しない。なお、表示部700についても表示部600と略同一の表示をするので説明を省略する。
【0035】
以上、第1の変形例によれば、宛先アドレスグループの指定をアドレスセパレータによって可能とすることができる。これにより、利用者によっては宛先アドレスグループの指定が簡単になるし、表示部200の画面上に表示する宛先入力欄の数を減らして画面構成を簡略化し、画面に必要な表示域を小さくすることができる。
【0036】
図16(a)は、本実施形態の第2の変形例におけるグループ管理部220のデータ構造の一例を示す。本変形例において、グループ管理部220は、電子メールアドレスAAA@△△△.comおよび電子メールアドレスBBB@△△△.comを、予め登録された登録アドレスグループの識別子である△△△(株)に対応付けて管理する。また、グループ管理部220は、電子メールアドレスCCC@□□□.comおよび電子メールアドレスDDD@□□□.comを、予め登録された登録アドレスグループの識別子である(株)□□□に対応付けて管理する。
【0037】
図16(b)は、本実施形態の第2の変形例における表示部200の表示例を示す。表示部200は、宛先アドレスグループを指定させるために表示する宛先入力欄において、登録アドレスグループの識別子を入力可能とする。宛先入力欄に入力されたテキストデータを取得すると、取得部310は、このテキストデータに登録アドレスグループの識別子が含まれているかを判断する。
【0038】
取得部310は、テキストデータに登録アドレスグループの識別子が含まれていることを条件に、その登録アドレスグループの識別子に対応してグループ管理部220によって管理される電子メールアドレスの組を、同一の宛先アドレスグループと判断する。したがって、取得部310は、△△△(株)に対応する電子メールアドレスAAA@△△△.comおよび電子メールアドレスBBB@△△△.comを1つの宛先アドレスグループと判断し、(株)□□□に対応する電子メールアドレスCCC@□□□.comおよび電子メールアドレスDDD@□□□.comを、他の宛先アドレスグループと判断する。このため、送信部320は、これらの宛先アドレスグループのそれぞれに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定し、かつ、他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、電子メールを送信する。その結果表示部400、表示部500、表示部600、および表示部700に表示される画面は第1の変形例と同一であるから説明を省略する。
【0039】
なお、宛先を示すテキストデータには、登録アドレスグループの識別子と通常の電子メールアドレスとが混在していてもよい。この場合、取得部310は、グループ管理部220においてその識別子に対応付けて管理された電子メールアドレスの組を、同一の宛先アドレスグループと判断し、テキストデータに含まれる通常の電子メールアドレスを他の宛先アドレスグループに含まれると判断する。これにより、利用者は、宛先アドレスグループをより柔軟に指定することができる。
【0040】
以上、第2の変形例によれば、宛先アドレスグループの指定を更に他の方法で可能とすることができ、利用者の利便性を向上させることができる。
続いて、第3の変形例について説明する。第3の変形例は、図5および図6に示す構成とは異なり、送信サーバ30ではなく端末装置20が電子メールの宛先設定の機能を有する。これにより、端末装置20のみに新たな機能を設けるのみで、送信サーバ30については既存のメールサーバをそのまま流用させ、本実施形態の実施化に要する費用や期間を削減することを目的とする。
【0041】
図17は、本実施形態の第3の変形例における端末装置20の機能構成を示す。端末装置20は、表示部200と、入力受付部210と、グループ管理部220と、取得部230と、送信部240とを有する。表示部200は、既に説明した表示部200と同様であるが、宛先アドレスグループを指定させるために宛先入力欄を表示する。入力受付部210は、宛先アドレスグループの指定の入力を受け付ける。取得部230は、宛先アドレスグループの指定に対応付けて電子メールを取得する。グループ管理部220は、宛先アドレスグループの指定として登録アドレスグループが入力された場合には、それに対応する電子メールアドレスを取得部230に出力する。送信部240は、それぞれの宛先アドレスグループに対し、当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を宛先フィールドに設定し、他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を宛先フィールドに設定しないで、電子メールを送信する。
以上、第3の変形例によれば、端末装置20によって宛先フィールドが設定されるので、送信サーバ30として既存のメールサーバをそのまま用いても、本実施形態の機能を実現することができる。
【0042】
図18は、端末装置20または送信サーバ30として機能する情報処理装置15のハードウェア構成の一例を示す。情報処理装置15は、ホストコントローラ1082により相互に接続されるCPU1000、RAM1020、及びグラフィックコントローラ1075を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ1084によりホストコントローラ1082に接続される通信インターフェイス1030、ハードディスクドライブ1040、及びCD−ROMドライブ1060を有する入出力部と、入出力コントローラ1084に接続されるROM1010、フレキシブルディスクドライブ1050、及び入出力チップ1070を有するレガシー入出力部とを備える。
【0043】
ホストコントローラ1082は、RAM1020と、高い転送レートでRAM1020をアクセスするCPU1000及びグラフィックコントローラ1075とを接続する。CPU1000は、ROM1010及びRAM1020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィックコントローラ1075は、CPU1000等がRAM1020内に設けたフレームバッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置1080上に表示させる。これに代えて、グラフィックコントローラ1075は、CPU1000等が生成する画像データを格納するフレームバッファを、内部に含んでもよい。
【0044】
入出力コントローラ1084は、ホストコントローラ1082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス1030、ハードディスクドライブ1040、及びCD−ROMドライブ1060を接続する。通信インターフェイス1030は、ネットワークを介して外部の装置と通信する。ハードディスクドライブ1040は、情報処理装置15が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ1060は、CD−ROM1095からプログラム又はデータを読み取り、RAM1020又はハードディスクドライブ1040に提供する。
【0045】
また、入出力コントローラ1084には、ROM1010と、フレキシブルディスクドライブ1050や入出力チップ1070等の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM1010は、情報処理装置15の起動時にCPU1000が実行するブートプログラムや、情報処理装置15のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスクドライブ1050は、フレキシブルディスク1090からプログラム又はデータを読み取り、入出力チップ1070を介してRAM1020またはハードディスクドライブ1040に提供する。入出力チップ1070は、フレキシブルディスク1090や、例えばパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0046】
情報処理装置15に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク1090、CD−ROM1095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、入出力チップ1070及び/又は入出力コントローラ1084を介して、記録媒体から読み出され情報処理装置15にインストールされて実行される。プログラムが情報処理装置15等に働きかけて行わせる動作は、図1から図17において説明した端末装置20または送信サーバ30における動作と同一であるから、説明を省略する。
【0047】
以上に示したプログラムは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク1090、CD−ROM1095の他に、DVDやPD等の光学記録媒体、MD等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークやインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムを情報処理装置15に提供してもよい。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、電子メールの第1の送信例を示す。
【図2】図2は、電子メールの第2の送信例を示す。
【図3】図3は、電子メールの第3の送信例を示す。
【図4】図4は、通信システム10と端末装置40〜90とが接続された通信ネットワークの構成を示す。
【図5】図5は、端末装置20の機能構成を示す。
【図6】図6は、送信サーバ30の機能構成を示す。
【図7】図7は、表示部200の表示例を示す。
【図8】図8は、表示部400または表示部500の表示例を示す。
【図9】図9は、表示部600または表示部700の表示例を示す。
【図10】図10は、表示部800の表示例を示す。
【図11】図11は、表示部900の表示例を示す。
【図12】図12は、通信システム10によって電子メールが送信される処理のフローチャートを示す。
【図13】図13は、本実施形態の第1の変形例における表示部200の表示例を示す。
【図14】図14は、本実施形態の第1の変形例における表示部400または表示部500の表示例を示す。
【図15】図15は、本実施形態の第1の変形例における表示部600または表示部700の表示例を示す。
【図16】図16(a)は、本実施形態の第2の変形例におけるグループ管理部220のデータ構造の一例を示す。 図16(b)は、本実施形態の第2の変形例における表示部200の表示例を示す。
【図17】図17は、本実施形態の第3の変形例における端末装置20の機能構成を示す。
【図18】図18は、端末装置20または送信サーバ30として機能する情報処理装置15のハードウェア構成の一例を示す。
【符号の説明】
【0050】
10 通信システム
15 情報処理装置
20 端末装置
30 送信サーバ
40 端末装置
50 端末装置
60 端末装置
70 端末装置
80 端末装置
90 端末装置
200 表示部
210 入力受付部
220 グループ管理部
230 取得部
240 送信部
310 取得部
320 送信部
330 グループ管理部
400 表示部
500 表示部
600 表示部
700 表示部
800 表示部
900 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子メールを送信するシステムであって、
送信されるべき電子メールを、少なくとも何れか1つが複数の宛先を含む複数の宛先アドレスグループの指定に対応付けて取得する取得部と、
指定されたそれぞれの宛先アドレスグループに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、前記電子メールを送信する送信部と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記取得部は、前記電子メールを、さらに、それぞれの宛先アドレスグループに対し送信するそれぞれの電子メールの宛先フィールドに共通して表示すべき宛先を含む表通表示アドレスグループの指定に対応付けて取得し、
前記送信部は、それぞれの宛先アドレスグループに対し、さらに、前記表通表示アドレスグループに含まれる宛先を宛先フィールドに追加して、前記電子メールを送信する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の宛先アドレスグループを指定するために予め定められた複数の宛先入力欄を表示する表示部を更に備え、
前記取得部は、それぞれの宛先アドレスグループの指定として、それぞれの宛先入力欄に入力された1または複数の電子メールアドレスを取得する
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記取得部は、宛先アドレスグループの指定として取得したテキストデータにおいて、列記された複数の電子メールアドレスが、電子メールアドレス同士の区切りとなるアドレスセパレータとは異なる予め定められたグループセパレータによって区切られていることを条件に、グループセパレータによって区切られた電子メールアドレスの複数の組のそれぞれを宛先アドレスグループと判断する
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの電子メールアドレスを、予め登録された登録アドレスグループの識別子に対応付けて管理するグループ管理部を更に備え、
前記取得部は、宛先アドレスグループの指定として取得したテキストデータに、登録アドレスグループの識別子が含まれていることを条件に、前記登録アドレスグループの識別子に対応して管理される電子メールアドレスの組を、同一の宛先アドレスグループと判断する
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記取得部は、宛先アドレスグループの指定として取得した複数の電子メールアドレスを、電子メールアドレスのドメイン名毎に複数のグループに分類し、分類したそれぞれのグループを宛先アドレスグループとして取得する
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
当該システムは、端末装置と、前記端末装置から受けた電子メールを他のメールサーバに転送する送信サーバとを備え、
前記端末装置において、
前記取得部は、利用者により作成された前記電子メールを宛先アドレスグループの指定に対応付けて取得し、
前記送信部は、指定されたそれぞれの宛先アドレスグループについて、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しない電子メールを生成し、前記送信サーバに送信する
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
当該システムは、端末装置と、前記端末装置から受けた電子メールを他のメールサーバに転送する送信サーバとを備え、
前記送信サーバにおいて、
前記取得部は、前記電子メールを宛先アドレスグループの指定に対応付けて前記端末装置から取得し、
前記送信部は、指定されたそれぞれの宛先アドレスグループについて、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しない電子メールを生成し、他のメールサーバに転送する
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
電子メールを送信する方法であって、
送信されるべき電子メールを、少なくとも何れか1つが複数の宛先を含む複数の宛先アドレスグループの指定に対応付けて取得するステップと、
指定されたそれぞれの宛先アドレスグループに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、前記電子メールを送信するステップと
を備える方法。
【請求項10】
電子メールを送信するシステムとして、情報処理装置を機能させるプログラムであって、
前記情報処理装置を、
送信されるべき電子メールを、少なくとも何れか1つが複数の宛先を含む複数の宛先アドレスグループの指定に対応付けて取得する取得部と、
指定されたそれぞれの宛先アドレスグループに対し、受信者に対し宛先として表示される宛先フィールドに当該宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しかつ他の宛先アドレスグループに含まれる宛先を設定しないで、前記電子メールを送信する送信部と
して機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−27266(P2008−27266A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200256(P2006−200256)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(592073101)日本アイ・ビー・エム株式会社 (42)
【復代理人】
【識別番号】100104156
【弁理士】
【氏名又は名称】龍華 明裕