説明

電子レンジ用カップ状容器

【課題】 電子レンジでの加熱による内容物の加熱むらを改善し、ホットスポットの発生
を抑えて突沸や容器の転倒現象を防ぎ得て、しかも構造も単純な電子レンジ用カップ状容
器を提供する。
【解決手段】 内容物2が粘稠物あるいは固形物入り食品で、容器3に収容した状態の内
容物2の高さHが20mm以下であり、容器3の胴部4に、少なくとも内容物2の高さを
有するマイクロ波遮断部材5を設けることで、波長15mm前後のマイクロ波を照射して
も、垂直方向にホットスポットが生じ難く、胴部4のマイクロ波遮断部材5により水平方
向のマイクロ波を遮断し、水平方向のホットスポットが生じ難くなり、通常は加熱されに
くい内容物の中心部を効率よく加熱することができる電子レンジ用カップ状容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘稠物あるいは固形物入り食品を収容する電子レンジ用カップ状容器に関す
るもので、より詳しくは、該カップ状容器を電子レンジで加熱または調理する際に、加熱
むらによる突沸を惹起しないようにした電子レンジ用カップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ用の容器は、電子レンジの普及およびその電子レンジによる再加熱や調理を
前提とした食品の普及により、多量に且つ種々の形状・構造のものが提供されている。電
子レンジを使用して上記容器内の内容物である飲食物を加熱すると、その飲食物が粘稠物
であることや固形物が混入することに起因して、マイクロ波を均一に照射することが困難
であり、どうしても加熱むらを生じてしまうという問題がある。
【0003】
その問題を回避するために電子レンジ用の容器の形状や構造を種々工夫されているが、
なかなか根本的な解決には至っていない。特に、容器内に100g程度入った内容物を電
子レンジで加熱すると、マイクロ波の波長と内容物の形状との関係からホットスポットが
生じ易く、短時間で突沸や容器の転倒現象が起こり、内容物の減損並びに電子レンジ内の
汚損という重大な事態に至ることがある。
かかる問題を認識して、電子レンジによる加熱時に加熱むらは勿論突沸や容器の転倒現
象という防止するための技術として、下記に示すような先行技術が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−72068号公報
【特許文献2】特開昭61−165526号公報
【特許文献3】実開平2−131976号公報
【特許文献4】実公平6−50389号公報
【特許文献5】特開平5−124686号公報
【特許文献6】実開平2−15487号公報
【特許文献7】実開平2−129083号公報
【特許文献8】特開平2−124066号公報
【0005】
特許文献1の電子レンジ用の容器は、その側面部と底面部との境界部にマイクロ波反射
フィルムを設けてなるものである。この容器の側面部では内容物の高さの50ないし85
%、底面部では全面積の35ないし50%を占める境界部にマイクロ波反射フィルムを施
すと、内容物、すなわちグラタン、ラザニア、カレーライスなどの加熱むらの改善につな
がるとしている。
【0006】
特許文献2の電子レンジ用の容器は、容器内の内容物を電子レンジテーブルの上方に保
持する部材を有し、内容物の上方および容器の側方の上半部にマイクロ波遮断層を設けて
なるものである。この電子レンジ用の容器によれば、パンやケーキなどの食品を熟練を要
すること無く、極めて容易且つ短時間に焼くことができるとしている。
【0007】
特許文献3の電子レンジ用の容器は、食品を収容する容器と、該容器を収納し所定部分
にマイクロ波反射体を有し残部にマイクロ波透過性材を有している外箱とからなり、容器
はマイクロ波不透過性材で構成またはマイクロ波透過性材で構成してなるものである。
【0008】
特許文献4の電子レンジ用の容器は、金属のみまたは金属を含む材料でカップ状に形成
され、容器の周壁の高さが4cm以下であり縦断面において周壁の上端と下端とを結ぶ直
線が垂直線に対してなす角度が10ないし15度に設定されている。この電子レンジ用の
容器によれば、マイクロ波が金属を含む容器により反射することが少なく内部に照射され
、加熱むらが生じづらく、加熱むらが生じたとしても容器を構成する金属は熱伝達が良く
、これを通じて高温部から低温部に熱が移動し易くなって、加熱むらが生じづらいとして
いる。
【0009】
特許文献5の電子レンジ用の容器は、その側壁の大部分または全部にマイクロ波反射部
材を貼り付けてなるものである。この電子レンジ用の容器によれば、食品を均一な温度に
、または所望の温度分布に加熱できるとしている。
【0010】
特許文献6の電子レンジ用の容器は、その側壁に導電性物質層(マイクロ波遮断部材)
を有してなるものである。この電子レンジ用の容器によれば、特許文献5と同様に、食品
を均一な温度に、または所望の温度分布に加熱できるとしている。
【0011】
特許文献7の電子レンジ用の容器は、食品を収容する容器と、該容器を内方突出縁部で
支持して容器底部との間にスパーク発生防止間隔を設けてなる外装容器とならなり、この
外装容器の底面にマイクロ波反射層を設けてなるものである。
【0012】
特許文献8の電子レンジ用の容器は、マイクロ波の遮断材を使用しないタイプのもので
あり、収容部の上面投影面積が15ないし50cm2 でその面中の直線最長部が10cm
以下、収容深さが1.5ないし6cmである液体収容部と高さが2mm以上の脚部とを有
する容器にカードランを収容してなるものである。この電子レンジ用の容器によれば、加
熱凝固性のゲル化剤であるカードランをむらなく加熱できるので、ほとんど全てのカード
ランを凝固状態にでき、ホットゼリーとして食することができるとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1の電子レンジ用の容器は、その側面部と底面部との境界部にマイ
クロ波反射フィルムを設けることで、グラタン、ラザニア、カレーライスなどの内容物の
加熱むらの改善ができると記載されているものの、突沸の発生状態については記載がなく
、また、容器内に収容した内容物の高さや量にも言及していないため、内容物中に発生す
るホットスポットを原因とする突沸や容器の転倒現象、それによる内容物の減損並びに電
子レンジ内の汚損という事態に対してはその対応性が不明である。更に、容器の側面部と
底面部との境界部にマイクロ波反射フィルムを設けるため、構造が若干複雑となるきらい
がある。
【0014】
また、特許文献2の電子レンジ用の容器は、内容物の上方および容器の側方の上半部に
マイクロ波遮断層を設けることで、内容物であるパンやケーキなどを容易且つ短時間に焼
くことができる記載があるが、元々突沸が発生しづらい内容物であり、更に、内容物の高
さや量による突沸や容器の転倒現象に関しては記載がなくその対応性が不明である。
【0015】
また、特許文献3の電子レンジ用の容器は、容器とこれを収納しマイクロ波反射体をま
だらに有している外箱とからなるので、その構成が複雑となり、更に、内容物の高さや量
による突沸や容器の転倒現象に関しては記載がなくその対応性が不明である。
【0016】
また、特許文献4の電子レンジ用の容器は、マイクロ波が容器による反射が少なく上部
開口からのマイクロ波の照射がスムーズに行われ、内容物の加熱むらの改善ができ且つ加
熱効率が良い記載がある。しかし、内容物の高さや量による突沸や容器の転倒現象に関し
ては記載がなくその対応性が不明である。
【0017】
また、特許文献5の電子レンジ用の容器は、その側壁にマイクロ波反射部材を貼り付け
ることで、内容物の加熱むらの改善ができ且つ加熱効率が良い記載がある。しかしながら
、この特許文献5にも、内容物の高さや量による突沸や容器の転倒現象に関してはなにも
認識しておらずその対応性が不明である。
【0018】
また、特許文献6の電子レンジ用の容器も、その側壁にマイクロ波遮断部材を有してい
ることで、内容物の加熱むらの改善ができ且つ加熱効率が良くなることを示唆している。
しかし、内容物の高さや量による突沸や容器の転倒現象に関しては記載がなくその対応性
が不明である。
【0019】
また、特許文献7の電子レンジ用の容器は、マイクロ波反射層により反射しスパーク発
生防止間隔を通過したマイクロ波により、内容物の加熱むらの改善ができるとの記載があ
る。しかし、この文献にも内容物の高さや量による突沸や容器の転倒現象に関しては記載
がなくその対応性が不明である。
【0020】
そして、特許文献8の電子レンジ用の容器は、これにて開示した特定の形状であると、
内容物の加熱むらの改善ができる記載がある。しかし、内容物の高さや量による突沸や容
器の転倒現象に関しては記載がなくその対応性が不明である。
【0021】
そこで、本発明の目的は、電子レンジ加熱による内容物の加熱むらを改善することに加
えて、その過程で発生するホットスポットを解明し、それを原因とする突沸や容器の転倒
現象を内容物の高さや量との関係で把握して、上記ホットスポットの発生を抑え突沸や容
器の転倒現象を防止し、内容物の減損並びに電子レンジ内の汚損という最悪の事態を回避
出来、しかも構造も単純な電子レンジ用カップ状容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなるこ
とを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、内容物が粘稠物あるいは固形物入り食品で、容器に収容し
た状態の前記内容物の高さが20mm以下であり、前記容器の胴部に、少なくとも前記内
容物の高さを有するマイクロ波遮断部材を設けてなることを特徴とする電子レンジ用カッ
プ状容器が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、前記内容物の高さは15mm以下である電子レンジ用カップ状
容器が提供される。
【0024】
また、本発明によれば、前記マイクロ波遮断部材はラベルである電子レンジ用カップ状
容器が提供される。
【0025】
また、本発明によれば、前記マイクロ波遮断部材は前記容器の胴部および底部を囲む外
装容器からなり、該外装容器の内面が金属材(金属箔、金属蒸着等を含む)、外面が合成
樹脂からなる電子レンジ用カップ状容器が提供される。
【0026】
また、本発明によれば、前記外装容器の外面はオレフィン樹脂である電子レンジ用カッ
プ状容器が提供される。
【0027】
また、本発明によれば、前記外装容器の厚みは0.5mm以上である電子レンジ用カッ
プ状容器が提供される。
【0028】
また、本発明によれば、前記容器における前記内容物の充填量は40gないし100g
である電子レンジ用カップ状容器が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって提供される電子レンジ用カップ状容器は、カップ状容器内容物の高さを
20mm以下にすることにより、内容物である粘稠物あるいは固形物入り食品中における
マイクロ波の波長が15mm前後という関連から、垂直方向にホットスポットが生じ難く
なり、容器胴部に形成されたマイクロ波遮断部材によりマイクロ波が水平方向から照射せ
ず、水平方向のホットスポットが生じ難くなる。したがって、ホットスポットによる突沸
や容器の転倒現象を防止し、内容物の減損並びに電子レンジ内の汚損という最悪の事態を
回避出来る。また、通常は加熱されにくい内容物の中心部を効率よく加熱することができる。更に、容器に内容物を20mm以下の高さに入れ、容器の胴部に少なくとも内容物と同程度の高さのマイクロ波遮断部材を設けた構成であるため、構造も単純なものとなる。
【0030】
また、内容物の高さが15mm以下であれば、マイクロ波の波長とほぼ同じになり、よ
り一層垂直方向にホットスポットが生じなくなり、上記の効果を一層顕著にすることがで
きる。
【0031】
また、ラベルにマイクロ波遮断部材の機能を付与することにより、表示機能とマイクロ
波遮断機能の双方の機能を全うできるという効果が享受できる。
【0032】
また、マイクロ波遮断部材が容器の胴部および底部を囲う外装容器であることにより、
容器の上方からのマイクロ波の照射だけとなり、内容物を層状に加熱するためホットスポ
ットが生じなくなり、内容物の加熱も遅くなり、また、内面がマイクロ波を遮断する金属
材で電子レンジに接触する外面が合成樹脂製であるからスパーク現象が生じない。したが
って、かなり過剰に電子レンジ加熱をしても、ホットスポットによる突沸や容器の転倒現
象を防止出来、内容物の減損並びに電子レンジ内の汚損という最悪の事態を回避出来、ス
パーク現象も起きないという効果がある。
【0033】
また、外装容器の外面がオレフィン樹脂によって形成されていることにより耐熱性があり、電子レンジによる加熱程度では熱変形が起きることがない。したがって、上記効果に加えて、外装容器の変形による想定外の部位にマイクロ波が照射されることがなく、安全性が向上する。
【0034】
また、外装容器の外面のオレフィンなどの合成樹脂の厚みが0.5mm以上であること
により、電子レンジのテーブルが金属製のものであっても十分な距離を確保できスパーク
が生じることがない。したがって、上記効果に加えて、なお一層安全性が向上する。
【0035】
また、容器の内容物の充填量が40gないし100gであると、容器の平面積が狭くて
も、内容物の高さが少なくとも20mm以下にし易くなり、垂直および水平方向にホット
スポットが生じ難くなり、突沸や容器の転倒現象が生じにくくなり、内容物の減損並びに
電子レンジ内の汚損という最悪の事態を回避出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
<形態1>
【0037】
図1は本発明の電子レンジ用カップ状容器の形態1を示す縦断面図である。図1におい
て、電子レンジ用カップ状容器1は、内容物2が粘稠物あるいは固形物入り食品で、容器
3に収容した状態の内容物2の高さHが20mm以下であり、容器3の胴部4に、少なく
とも内容物2の高さを有するマイクロ波遮断部材5を設けてなるものである。
【0038】
前記内容物2は、ベビーフード、お粥、グラタン、カレーライスなどの粘稠物あるいは
固形物入り食品であり、粘度で規定すれば100ないし50,000mPa・s程度の範
囲に入るものが対象となる。更に、対象となる内容物2を具体的に言えば、側面にマイク
ロ波遮断部材を設けない通常のプラスチック製容器に内容物2を入れ電子レンジ加熱を施
すと、短時間のうちに、例えば30秒未満で突沸をおこすものである。
【0039】
前記容器3は、前記胴部4の上端には鍔部10が、下端には底部11が連なり構成され
ているが、電子レンジ加熱が可能であること以外、形状、材質とも特に限定がない。しか
し、ベビーフード、グラタン、カレーライスなどの内容物2を想定すれば、底の浅い形状
の容器が対象となる。更に、容器3に収容した状態の内容物2の高さHが20mm以下で
あるから、必要以上に底の深い容器は意味がない。なお、容器3の材質を例示すれば、ポ
リプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの
ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0040】
前記マイクロ波遮断部材5は、前記容器3の胴部4に少なくとも内容物2の高さに応じ
て設けられる。このマイクロ波遮断部材5は容器3の胴部4の内側でも、図2に示すよう
に、外側でも良い。但し、胴部4の外側にマイクロ波遮断部材5を設けた場合は、スパー
クする虞があるから、電子レンジのテーブルに触れたり、近づき過ぎないような構造にす
る必要がある。このマイクロ波遮断部材5は容器の胴部に内容物2の高さ以上に設けられることが必須であり、前記条件を満たすならば、さらに胴部以外に底部、上面などに存在していても構わない。
マイクロ波遮断部材5の材質は、マイクロ波を遮断できるものであれば限定がないが、重量、価格、耐食性などの点から、主にアルミニウム関連物が使われる。また、胴部4に対するマイクロ波遮断部材5の設け方は、貼り付け、蒸着、積層、印刷などいずれでも良い。要は胴部4に設けた状態のマイクロ波遮断部材5が離脱したり、変質したり、その他マイクロ波遮断機能を失うようなことがないような設け方であれば良い。なおマイクロ波遮断部材5の代わりに、図2に示すように、紙、プラスチックフィルム、あるいはアルミ箔等に印刷したラベルを容器3の胴部4の外側に貼り付けてもマイクロ波遮断機能を全うでき、その上見る者に商品に関するメッセージ等を伝達できる。
【0041】
この容器3内に内容物2を高さHが20mm以下となるように収容する。この内容物2
の高さHを20mm以下とする根拠は、電子レンジに使用されるマイクロ波は2540M
Hzであり、このマイクロ波が内容物2を通過する際の波長は14mmないし15mm程
度であることと関連する。容器3内の内容物2の高さが20mm以下であると、上方から
内容物2に照射されるマイクロ波では、内容物2内にホットスポットが発生しづらい。し
かしながら、横方向から内容物2に照射されるマイクロ波では、容器3の胴部4に近い左
右の内容物2内にホットスポットが発生する。この実施例1では、容器3内の内容物2に
横方向からマイクロ波が照射されないように、容器3の胴部4に少なくとも内容物2の高
さ分、20mm程度のマイクロ波遮断部材5が設けられている。したがって、横方向から
のマイクロ波はこのマイクロ波遮断部材5によって遮断され、容器3の胴部4に近い左右
の内容物2にもホットスポットが発生しない。
【0042】
また、容器3における内容物2の充填量は40gないし100gの範囲であることが望
ましい。この内容物2の充填量を限定した理由は、ベビーフードなどでは一回分の量に相
当し暖めることが多いこと、この範囲内の充填量であると容器3の平面積が狭くても、内
容物2の高さが少なくとも20mm以下にし易くなり、その結果、垂直および水平方向に
ホットスポットが生じ難くなるからである。したがって、通常、内容物の充填量が少ない
と、つい過剰な電子レンジ加熱となり易く、突沸や容器の転倒現象が生じ易いのに、これ
らの現象を防止出来、内容物の減損は無論、電子レンジ内の汚損という最悪の事態を回避
出来る。
<形態2>
【0043】
図3は、本発明の電子レンジ用カップ状容器の形態2を示す縦断面図である。図3にお
いては、電子レンジ用カップ状容器1のマイクロ波遮断部材5が、容器3の胴部4および
底部11を囲う外装容器12であり、この外装容器12は、その内面が金属材13で構成
され、外面が合成樹脂14で構成されている。本発明における金属材としては、金属箔や
金属蒸着層を含むものであり、なかでもアルミニウムなどの金属材が好ましく用いられる

【0044】
すなわち、形態2による電子レンジ用カップ状容器1aは、容器3の胴部4および底部
11をマイクロ波遮断性を有する外装容器12にて囲う形式のものである。金属材13は
、マイクロ波遮断部材5と同様にアルミニウム関連物が使われ、合成樹脂14は耐熱性に
優れているポリプロピレンやポリエチレンなどのオレフィン樹脂が使われる。また、図4
に示すように、電子レンジ用カップ状容器1aは、外装容器12aが容器3に対して充分
大きく、容器3入りの内容物2を電子レンジ加熱の際の使い回し用としても良い。
【0045】
この電子レンジ用カップ状容器1aによれば、マイクロ波遮断性を有する外装容器12
により、横方向及び下方からのマイクロ波が遮断され、容器3の上方から内容物2にマイ
クロ波が照射されるだけとなり、内容物2が層状に加熱されるためホットスポットが生じ
なくなり、内容物2の加熱も徐々に行われるため加熱むらが生じにくい。したがって、内
容物2をかなり過剰に電子レンジ加熱しても、ホットスポットが生じず、これによる突沸
や容器の転倒現象を防止出来内容物2の減損並びに電子レンジ内の汚損という最悪の事態
を回避出来る。
【0046】
また、外装容器12は、内面が金属材13で外面が合成樹脂製14であるから、スパー
ク現象が起きにくく、さらにこの合成樹脂14がオレフィン樹脂であると熱変形が起こり
づらく、マイクロ波による予定外の照射も起こりづらい。更に、外装容器12の厚みは0
.5mm以上あり、内面の金属材13としてアルミ箔を使用した場合は厚みが5μmない
し20μmであるから、外面の合成樹脂14は0.5mm−(0.005〜0.02)m
m=0.495mm〜0.480mm以上となる。したがって、電子レンジのテーブルに
外装容器12を介して容器3を載せてマイクロ波を照射しても、金属材13と電子レンジ
のテーブルとは、確実に0.495mm〜0.480mm以上離れているから、スパーク
現象を起こすことがなく、安全性を充分に確保できる。
【0047】
また、図4に示したように外装容器12は、マイクロ波遮断部材を積層体中に挟まれた構造でも良く、マイクロ波遮断部材を含めた積層体の厚みが0.5mm以上であればスパーク現象を起こすことがなく、安全性を充分に確保出来る。
【0048】
次に、本発明の電子レンジ用カップ状容器1、1aの有利性を実施例にて実証する。
<実施例>
実施例および比較例において用いた加熱手段、加熱対象および測定方法は次のとおりで
ある。
1.電子レンジ:出力1000W(三洋電機製EMO−FR100、フルフラットタイ
プ)
2.加熱対象:白身魚のチーズドリア(キューピー社製)
3.後述する実施例および比較例で用いた各種の容器に内容物の白身魚のチーズドリアを
入れ、電子レンジのテーブル上に陶器製の小皿を置き、その上に容器を置いて、電子レ
ンジ加熱時間を1分30秒にセットしオンして、突沸が起きた時間とその時の内容物の
温度(中央、側面)を測定した。
【0049】
[実施例1]
内層側より順次、ポリプロピレン樹脂層(250μm)/鉄系酸素吸収剤含有ポリプロ
ピレン酸素吸収層(160μm)/接着層(16μm)/エチレン−ビニルアルコール共
重合体層(80μm)/接着層(16μm)/ポリプロピレン樹脂層(278μm)から
なる総厚み800μmの積層材を用い、底部径:55mm、胴部上部径:62mmおよび
高さ:30mmの容器本体を作成した。
また、容器の胴部に、接着剤を介して厚み12μm、高さ20mmのアルミ箔からなる
マイクロ波遮断部材を、その下端が容器底部と実質的に同部位になるように接着して電子
レンジ用容器とし、内容物の高さ:20mm、充填量:60gとなるように充填した。
この電子レンジ用カップ状容器を用い、前述した条件で加熱、測定を行った。
【0050】
[実施例2]
実施例1の電子レンジ用カップ状容器において、マイクロ波遮断部材を外層が700μ
mのポリプロピレン樹脂層、内層が12μmのアルミ箔からなる高さ25mmの外装体と
した以外は、実施例1と同様に加熱、測定を行った。
【0051】
[実施例3]
ポリプロピレン層(800μm)の単層から成り、底部径:67mm、胴部上部径:7
8mmおよび高さ:30mmの容器本体とし、内容物の高さが12mm、充填量を60g
とした以外は、実施例1と同様に加熱、測定を行った。
【0052】
[比較例1]
内容物の高さを25mm、充填量を75g、およびマイクロ波遮断部材の高さを30m
mとした以外は実施例1と同様に加熱、測定を行った。
【0053】
[比較例2]
マイクロ波遮断部材の高さを15mmとした以外は、実施例1と同様に加熱、測定を行った。
【0054】
[比較例3]
マイクロ波遮断部材を用いなかった以外は、実施例1と同様に加熱、測定を行った。
【0055】
前述した実施例および比較例の測定結果を表1に示す。

















【0056】
【表1】

【0057】
表1の結果からも明らかなように、内容物の高さが20mm以下であって、容器の胴部
のマイクロ波遮断部材の高さが前記内容物の高さを有する容器は、突沸に至るまでの時間が長い傾向を示す。また、通常は加熱されにくい内容物の中心部を効率よく加熱することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の電子レンジ用カップ状容器は、内容物が突沸や容器の転倒現象が生じやすい粘
稠物あるいは固形物入り食品で、容器ごと電子レンジ加熱するような場合に利用可能性が
高く、特にベビーフードのような少量で幼児に与える際加熱することの多い場合に利用可
能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明における電子レンジ用カップ状容器の形態1の縦断面図である。
【図2】本発明における電子レンジ用カップ状容器の形態1の変形例の縦断面図である。
【図3】本発明における電子レンジ用カップ状容器の形態2の縦断面図である。
【図4】本発明における電子レンジ用カップ状容器の形態2の変形例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1,1a 電子レンジ用カップ状容器
2 内容物
3 容器
4 胴部
5 マイクロ波遮断部材
10 鍔部
11 底部
12 外装容器
13 金属材
14 合成樹脂
H 内容物の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が粘稠物あるいは固形物入り食品で、容器に収容した状態の前記内容物の高さが
20mm以下であり、前記容器の胴部に、少なくとも前記内容物の高さを有するマイクロ
波遮断部材を設けてなることを特徴とする電子レンジ用カップ状容器。
【請求項2】
前記内容物の高さは15mm以下である請求項1記載の電子レンジ用カップ状容器。
【請求項3】
前記マイクロ波遮断部材はラベルである請求項1または2記載の電子レンジ用カップ状
容器。
【請求項4】
前記マイクロ波遮断部材は前記容器の胴部および底部を囲む外装容器からなり、該外装
容器の内面が金属材、外面が合成樹脂からなる請求項1または2記載の電子レンジ用カッ
プ状容器。
【請求項5】
前記外装容器の外面はオレフィン樹脂である請求項4記載の電子レンジ用カップ状容器

【請求項6】
前記外装容器の厚みは0.5mm以上である請求項4または5記載の電子レンジ用カッ
プ状容器。
【請求項7】
前記容器における前記内容物の充填量は40gないし100gである請求項1ないし6
のいずれか1項に記載の電子レンジ用カップ状容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−27649(P2006−27649A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207716(P2004−207716)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)