説明

電子体温計および感温部キャップ

【課題】電子体温計を機械的に組み立てる際にハウジングに対して効率的に組み付けられる感温部キャップを得る。
【解決手段】電子体温計100は、感温部11を有するサーミスタ10と、中空空間を有しサーミスタ10を上記中空空間内に配置するハウジング50と、ハウジング50の先端側に設けられ感温部11を収容する感温部キャップ15とを備える。ハウジング50は、ハウジング51と、ハウジング51との接合により上記中空空間を形成するハウジング52とを含む。感温部キャップ15は、ハウジング52に設けられるベース部15Mおよびハウジング51に設けられる蓋部15Nを含む。ベース部15Mは、ハウジング51側に向かって開放する開放部15Hと、ハウジング50の先端側に向かって球面状に膨出するように形成される先端部15Sとを有する。蓋部15Nは、開放部15Hを閉塞するように開放部15Hと対向配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の体温を測定する電子体温計および電子体温計に用いられる感温部キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
電子体温計は、腋下または舌下等に挟み込まれた状態で、被測定者の体温を測定する。実開昭62−96522号公報(特許文献1)および登録実用新案第3003583号公報(特許文献2)に開示されるように、一般的な電子体温計には、感温部キャップが設けられる。感温部キャップは、ステンレス製などの熱伝導性の高い金属製材料から構成される。
【0003】
電子体温計が組み立てられる際には、筒形状のハウジングの内部に、制御基板およびサーミスタ等の内蔵機器が挿入される。サーミスタの一部(感温部)は、ハウジングの先端に設けられた開口部から外部に取り出される。開口部から取り出された感温部を覆うように、当該開口部に感温部キャップが取り付けられる。感温部キャップ内に、サーミスタの感温部が配置される。
【0004】
電子体温計を使用して被測定者の体温を測定する際には、感温部キャップが、被測定者の腋下または舌下等に挟み込まれる。感温部キャップを通して、被測定者の体温が感温部に伝わる。感温部に接続された制御基板によって、被測定者の体温が算出される。被測定者の体温は、ハウジングに設けられた表示部に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−96522号公報
【特許文献2】登録実用新案第3003583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実開昭62−96522号公報(特許文献1)には、自動制御で作動する自動機を使用して、機械的に組み立てられることが可能な電子体温計が開示される。特許文献1における電子体温計に内蔵される電子機器の多くは、いわゆる積み上げ式によって組み立てられる。しかしながら、感温部キャップは、ハウジングおよび電子機器などの積み上げ方向に対して垂直な方向からハウジングに対して組み付けられる。感温部キャップをハウジングに対して組み付ける際には、自動機は、ハウジングの積み上げ方向とは異なる方向に駆動される必要があり、効率があまり良くない。
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであって、電子体温計を機械的に組み立てる際に、ハウジングに対してより効率的に組み付けられることが可能な感温部キャップおよび電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく感温部キャップは、電子体温計に用いられる感温部キャップであって、上記電子体温計は、被測定者の体温を測定する感温部を有するサーミスタと、内部に中空空間を有し、上記サーミスタを上記中空空間内に配置するハウジングと、上記ハウジングの長手方向の先端側に設けられ、上記感温部を収容する当該感温部キャップと、を備え、上記ハウジングは、第1ハウジングと、上記第1ハウジングに接合されることによって上記中空空間を形成する第2ハウジングと、を含み、当該感温部キャップは、上記第1ハウジング側に向かって開放する開放部、および、上記ハウジングの上記長手方向の上記先端側に向かって球面状に膨出するように形成された先端部をそれぞれ有し、上記第2ハウジングに設けられたベース部と、上記第1ハウジングに設けられ、上記開放部を閉塞するように上記開放部と対向配置される蓋部と、を含む。
【0009】
好ましくは、上記ベース部は、半球体状に形成された上記先端部と、上記先端部に連設されるとともに、上記先端部から遠ざかる方向に延在する半割の円筒形状に形成された底部と、を有し、上記蓋部は、半割の円筒形状に形成され、上記底部と上記蓋部とが相互に重ね合わせられることによって、上記底部および上記蓋部は円筒形状を呈する。
【0010】
好ましくは、上記ベース部は、球面状に形成された上記先端部と、上記第1ハウジングから遠ざかる方向に膨出する凹部形状の底部と、を有し、上記蓋部は、シート状に形成される。
【0011】
本発明に基づく電子体温計は、被測定者の体温を測定する感温部を有するサーミスタと、内部に中空空間を有し、上記サーミスタを上記中空空間内に配置するハウジングと、上記ハウジングの長手方向の先端側に設けられ、上記感温部を収容する感温部キャップと、を備え、上記ハウジングは、第1ハウジングと、上記第1ハウジングに接合されることによって上記中空空間を形成する第2ハウジングと、を含み、上記感温部キャップは、上記第1ハウジング側に向かって開放する開放部、および、上記ハウジングの上記長手方向の上記先端側に向かって球面状に膨出するように形成された先端部をそれぞれ有し、上記第2ハウジングに設けられたベース部と、上記第1ハウジングに設けられ、上記開放部を閉塞するように上記開放部と対向配置される蓋部と、を含む。
【0012】
好ましくは、上記ベース部は、金属製であり、上記第1ハウジング、上記第2ハウジング、および上記蓋部は、ABS樹脂製であり、上記蓋部は、上記第1ハウジングに一体成型されている。
【0013】
好ましくは、上記ベース部は、金属製であり、上記第1ハウジングおよび上記蓋部は、シート状部材から構成され、上記第2ハウジングは、PET樹脂製であり、上記蓋部は、上記第1ハウジングに一体的に形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子体温計を機械的に組み立てる際に、ハウジングに対してより効率的に組み付けられることが可能な感温部キャップおよび電子体温計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における電子体温計の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における電子体温計の組み立てられた後の状態を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1における電子体温計に備えられる感温部キャップの分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1における電子体温計の機能ブロックを示す図である。
【図5】実施の形態2における電子体温計の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。
【図6】図5中におけるVI−VI線に関する矢視断面図である(電子体温計としては組み立てられた状態が図示される)。
【図7】実施の形態2における電子体温計に備えられる感温部キャップのベース部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0017】
[実施の形態1]
図1〜図4を参照して、本実施の形態における電子体温計100および感温部キャップ15について説明する。図1は、電子体温計100の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。図2は、電子体温計100の組み立てられた後の状態を示す斜視図である。図3は、電子体温計100に備えられる感温部キャップ15の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。図4は、電子体温計100の機能ブロックを示す図である。
【0018】
(電子体温計100)
図1に示すように、電子体温計100は、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、電源部40、ハウジング50、および感温部キャップ15を備える。図2に示すように、電子体温計100が組み立てられた状態においては、電子体温計100の一端側(先端側)にプローブ部82が形成される。
【0019】
図1を再び参照して、制御基板20、表示部30、操作部36、および電源部40は、平面視矩形状の基板29上にそれぞれ実装される。サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、電源部40、および基板29によって、被測定者の体温を測定する内蔵機器18が構成される。
【0020】
サーミスタ10は、いわゆるラジアルリード型であり、被測定者の体温を計測する感温部11と、一端が感温部11に接続されたリード線12とを含む。リード線12の他端は、制御基板20に接続される。
【0021】
制御基板20は、所定の位置に、制御部(図4における制御部22)、メモリ部(図4におけるメモリ部23)、および報知部(図4における報知部24)を有する。
【0022】
表示部30は、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネル31を有する。表示パネル31に、サーミスタ10によって測定された被験者の体温などが表示される。
【0023】
表示部30と並んで基板29上に配置される操作部36も、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。操作部36は、外部から押圧可能に配置された押しボタン38を含む。図1に示すように、押しボタン38はいわゆるフラットスイッチ型に構成されるとよい。
【0024】
電源部40は、ボタン電池42および対向配置された電極端子41を有する。対向配置された電極端子41同士は、樹脂43によって相互に位置決めされる。電極端子41も、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。ボタン電池42は、電極端子41間に配置される。ボタン電池42は、電極端子41および基板29を通して、制御基板20および制御基板20に接続された表示部30に電力を供給する。
【0025】
電子体温計100においては、電子体温計100(ハウジング50)の長手方向に沿って、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36および電源部40がこの順に並んで配置される。制御基板20、表示部30、操作部36および電源部40の順序は、適宜変更されてもよい。
【0026】
ハウジング50は、ハウジング51(第1ハウジング)およびハウジング52(第2ハウジング)を有する。ハウジング51およびハウジング52は、たとえばABS樹脂(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene共重合合成樹脂)製である。ハウジング51およびハウジング52は、たとえば樹脂成型によって製造されることができる。
【0027】
ハウジング51は、サーミスタ10が配置される側(プローブ部82側)に向かって徐々に幅が狭くなるように略テーパー状に構成される。ハウジング51の表面の所定の位置には、電源スイッチ37が設けられる。電源スイッチ37は、電子体温計100が組み立てられた状態において、たとえば押しボタン38への押圧手段として機能する。
【0028】
ハウジング51には、表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hが設けられる。開口部51H内には、樹脂などから構成される透明保護部材56が配置される。表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hは、次述するハウジング52に設けられてもよい。この場合、表示部30の表示パネル31は、ハウジング52側に向かって配置される(図1とは表裏反対に示すように配置される)。
【0029】
ハウジング51は、ハウジング52に設けられる上端部52K(詳細は後述する)の形状に対応する下端部51Kを有する。下端部51Kと上端部52Kとは、熱溶着または接着剤などによって相互に接合される。当該接合によって、ハウジング51とハウジング52とからなるハウジング50が形成される。当該接合によって、ハウジング50の内部に、内蔵機器18(サーミスタ10等)を配置する中空空間が形成される。
【0030】
ハウジング52は、電子体温計100の長手方向に沿って延在する底面部52S,52R、底面部52S,52Rの周縁から起立する側壁部52U、および、側壁部52Uの起立方向の先端に設けられた上端部52Kを有する。
【0031】
底面部52Sは、電子体温計100の一端側(先端側)に位置する。底面部52Rは、底面部52Sに連続し、電子体温計100の他端側(後端側)に位置する。図1に示すように、電子体温計100が被測定者の腋下または舌下等に向かって挿入され易いように、底面部52Sは底面部52Rに比べて底浅に形成されている(底上げされている)とよい。
【0032】
底面部52Sは、略溝状に形成される。電子体温計100が組み立てられた状態においては、底面部52S内に、サーミスタ10(リード線12)が配置される。
【0033】
ハウジング52における側壁部52Uおよび上端部52Kは、ハウジング52に対して内蔵機器18が一方向に収容可能なように、内蔵機器18が収容される側に向かって開口を形成している。同様に、ハウジング51においても、下端部51Kは、ハウジング51に対して内蔵機器18が一方向に収容可能なように、内蔵機器18が収容される側に向かって開口を形成している。
【0034】
(感温部キャップ15)
感温部キャップ15は、ハウジング50の長手方向の先端側に設けられる(図2参照)。具体的には、感温部キャップ15は、ハウジング52の先端に設けられるベース部15Mと、ハウジング51の先端に設けられる蓋部15Nとを有する。
【0035】
電子体温計100が組み立てられた状態(図2参照)においては、ベース部15Mと蓋部15Nとが一体化される。当該一体化によって感温部キャップ15が構成され、感温部キャップ15の内部に感温部11(図1参照)が収容される。
【0036】
図1および図3を参照して、感温部キャップ15(ベース部15Mおよび蓋部15N)についてより詳細に説明する。本実施の形態におけるベース部15Mは、たとえばステンレスまたはアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属製の部材から構成される。ベース部15Mは、ハウジング52の先端面52Vに、接着剤、熱溶着、または超音波溶着などによって接合される。ベース部15Mは、インサート成型などによってハウジング52に接合されてもよい。
【0037】
図3に示すように、ベース部15Mは、先端部15Sと、先端部15Sの後端面15Qに連設された底部15Uとを有する。先端部15Sと底部15Uとは、一体的に製造されてもよく、別体として製造された後に相互に接合されてもよい。先端部15Sは、ハウジング50(図1参照)の長手方向の先端側に向かって球面状に膨出するように、中空の半球体状に形成される。
【0038】
底部15Uは、略U字形状を呈する半割の円筒形状に形成され、ハウジング51(蓋部15N)側に向かって開放する開放部15Hを有する。ハウジング50(図1参照)が組み立てられる際には、開放部15H内に向かって感温部11(図1参照)が収容される。底部15Uは、先端部15Sに連設された部分(後端面15Q)から遠ざかるように、ハウジング52に対する接合部(ハウジング52の先端面52V)に向かって延在する。底部15Uの後端面15Vが、ハウジング52の先端面52Vと接合される。
【0039】
蓋部15Nは、上述のとおりハウジング51の先端に設けられる。本実施の形態における蓋部15Nは、ハウジング51と同質の材料から構成され、ハウジング51の一部としてハウジング51と一体的に成型される。
【0040】
ベース部15Mとハウジング52とが別体として構成されているのと同様に、蓋部15Nとハウジング51とは別体として構成されていてもよい。この場合、蓋部15Nは、たとえばステンレスまたはアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属製の部材から構成されるとよい。また、蓋部15Nは、ハウジング51の先端に、接着剤、熱溶着、または超音波溶着などによって接合されてもよいし、インサート成型などによって接合されてもよい。
【0041】
本実施の形態における蓋部15Nは、ハウジング51の先端において略U字形状を呈する半割の円筒形状に形成される。蓋部15Nは、ハウジング52(ベース部15Mの底部15U)側に向かって開放している。
【0042】
電子体温計100(図1参照)が組み立てられる際には、内蔵機器18(サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29)がハウジング51とハウジング52との間に配置される。ベース部15Mが、ハウジング52に接合される。ベース部15Mがハウジング52に接合された後に、内蔵機器18がハウジング51とハウジング52との間に配置されてもよい。
【0043】
次に、ハウジング51(下端部51K)とハウジング52(上端部52K)とが、接着剤、熱溶着、または超音波溶着などによって相互に接合される。ハウジング51およびハウジング52によって内蔵機器18が挟み込まれ、当該接合によってハウジング50が形成される。
【0044】
ハウジング51とハウジング52との相互の接合によって、蓋部15Nの下端面15Wと、ベース部15Mの底部15Uにおける上端面15Tとが相互に重ね合わせられる。蓋部15Nは、開放部15Hを閉塞するように開放部15Hと対向配置される。底部15Uおよび蓋部15Nは、全体として円筒形状を呈する。当該円筒形状を呈する部分の内部に、感温部11が配置される。
【0045】
図4を参照して、上述したように、電子体温計100は、感温部11、制御部22、メモリ部23、報知部24、表示部30、操作部36、および電源部40を、機能ブロックとして含む。制御部22、メモリ部23、および報知部24は、制御基板20に設けられる。操作部36は、制御基板20に設けられてもよい(制御基板20の一部として制御基板20に取り付けられていてもよい)。
【0046】
感温部11は、腋下や舌下などの被測定部位に挟み込まれることで被測定者の体温を検出する。操作部36は、たとえば押しボタン38(図1参照)から構成され、被測定者(または電子体温計100の使用者)による操作を受け付けて、この外部からの命令を制御部22または電源部40に入力する。制御部22は、たとえばCPU(Central Processing Unit)から構成され、電子体温計100の全体を制御する。
【0047】
メモリ部23は、たとえばROM(Read-Only Memory)またはRAM(Random-Access Memory)から構成され、体温測定のための処理手順を制御部22などに実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果などを記憶したりする。報知部24は、たとえばブザーから構成され、測定が終了したことや被測定者の操作を受け付けたことなどを被測定者に知らせる。報知部24は、必要に応じて設けられるとよい。
【0048】
表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネル31(図1参照)を含み、測定結果などを表示する。電源部40は、たとえばボタン電池42(図1参照)を含み、制御部22に電源としての電力を供給する。
【0049】
制御部22は、体温測定を実行するための処理回路を含んでおり、メモリ部23から読み出されたプログラムに基づいて体温を測定する。その際、制御部22は、感温部11から入力された温度データを処理することで測定結果としての体温を算出する。制御部22は、算出した体温を表示部30に表示させたり、算出した体温をメモリ部23に記憶させたり、測定が終了したことを、報知部24を用いて被測定者に知らせたりするように、電子体温計100を制御する。
【0050】
(作用・効果)
図1を再び参照して、電子体温計100においては、ハウジング52における側壁部52Uおよび上端部52Kが、ハウジング52に対して内蔵機器18を一方向に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。当該開口を形成するハウジング52に対して、内蔵機器18は一方向に容易に組み付けられることができる。
【0051】
感温部キャップ15においても、ベース部15Mの底部15Uが、半割の円筒形状に形成される。底部15Uは、ハウジング51(蓋部15N)側に向かって略U字形状を呈するように開放する開放部15Hを有する。開放部15Hに対して、感温部11および蓋部15Nは、一方向に容易に組みつけられることができる。
【0052】
したがって、電子体温計100を機械的に組み立てる際には、感温部キャップ15は、ハウジング50(ハウジング51およびハウジング52)に対して、(従来の電子体温計に比べて)より効率的に組み付けられることができる。感温部キャップ15を備えた電子体温計100によれば、さらなる製造費用の低減が可能となる。
【0053】
また、感温部キャップ15のベース部15Mにおける先端部15Sは、ハウジング50(図1参照)の長手方向の先端側に向かって球面状に膨出するように形成される。当該構成によれば、感温部キャップ15が被測定者の腋下(腋奥)などに対して接触され易くなり、測定精度の向上が図れる。
【0054】
図1に示すように、本実施の形態においては、蓋部15Nがハウジング51に設けられ、ベース部15Mがハウジング52に設けられる。当該構成とは反対に、蓋部15Nがハウジング52に設けられ、ベース部15Mがハウジング51に設けられてもよい。
【0055】
この場合、ハウジング52が本発明における第1ハウジングを構成し、ハウジング51が本発明における第2ハウジングを構成する。当該構成であっても、本実施の形態における電子体温計100および感温部キャップ15と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
[実施の形態2]
図5〜図7を参照して、本実施の形態における電子体温計101および感温部キャップ15Aについて説明する。図5は、電子体温計101の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。図6は、図5中のVI−VI線に関する矢視断面図である(電子体温計101としては組み立てられた状態が図示される)。図7は、感温部キャップ15Aを示す斜視図である。
【0057】
(電子体温計101)
図5に示すように、電子体温計101は、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、電源部40、およびハウジング50Aを備える。サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、および電源部40は、上述の実施の形態1における電子体温計100と同様に、内蔵機器18を構成する。サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、電源部40、および内蔵機器18は、上述の実施の形態1における電子体温計100のそれらと同様に構成される。
【0058】
ハウジング50Aは、シート状部材51A(第1ハウジング)およびケース体52A(第2ハウジング)を有する。シート状部材51Aは、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによって構成される。
【0059】
シート状部材51Aの厚さは、たとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板37Aが貼付または印刷されることができる。銘板37Aは、電子体温計101が組み立てられた状態において、たとえば押しボタン38の押下位置を示す目印として機能することができる。
【0060】
シート状部材51Aは、裁断などによって製造されることができる。シート状部材51Aは、サーミスタ10が配置される側に向かって徐々に幅が狭くなるように略テーパー状に構成される。
【0061】
シート状部材51Aには、表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hが設けられる。開口部51H内には、樹脂などから構成される透明保護部材56が配置される。なお、シート状部材51Aが透明性を有する場合、開口部51Hおよび透明保護部材56は不要である。表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hは、次述するケース体52Aに設けられてもよい。この場合、表示部30の表示パネル31は、ケース体52A側に向かって配置される(図5とは表裏反対に示すように配置される)。
【0062】
ケース体52Aは、たとえばPET、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、またはPP(polypropylene)等の熱可塑性を有する樹脂製の部材から、たとえば真空成型によって容器状に構成される。ケース体52Aの厚さは、たとえば0.5mm〜1.0mmである。
【0063】
ケース体52Aは、電子体温計101の長手方向に沿って延在する底面部52S,52R、底面部52S,52Rの周縁から起立する側壁部52U、および、側壁部52Uの起立方向の先端に設けられた上端部52Kを有する。本実施の形態における上端部52Kは、側壁部52Uの起立方向の先端からケース体52Aの外側に向かってフランジ状に延設され、全体として環状を呈している。
【0064】
底面部52Sは、電子体温計101の一端側(先端側)に位置する。底面部52Rは、底面部52Sに連続し、電子体温計101の他端側(後端側)に位置する。電子体温計101が被測定者の腋下または舌下等に向かって挿入され易いように、底面部52Sは底面部52Rに比べて底浅に形成されている(底上げされている)。
【0065】
底面部52Sの略中央には、電子体温計101の長手方向に沿って凹部52Tが溝状に設けられる。電子体温計101が組み立てられた状態においては、凹部52T内に、サーミスタ10(リード線12)が収容される。この場合、リード線12は凹部52Tの内周面に対して摺動自在であるとよい。
【0066】
ケース体52Aにおける側壁部52Uおよび上端部52Kは、ケース体52Aに対して内蔵機器18が一方向に収容可能なように、内蔵機器18が収容される側に向かって開口を形成している。
【0067】
(感温部キャップ15A)
図6を参照して、感温部キャップ15Aは、ハウジング50Aの長手方向の先端側に設けられる。具体的には、感温部キャップ15Aは、ケース体52Aの先端側に設けられるベース部15MAと、シート状部材51Aの先端側に設けられる蓋部15NAとを有する。
【0068】
電子体温計101が組み立てられた状態においては、ベース部15MAと蓋部15NAとは間隔を空けて対向配置される。ベース部15MAと蓋部15NAとの間に、感温部11が配置される。感温部11は、ベース部15MAの底部15U(詳細は次述する)の内表面と接触しているとよい。感温部11と底部15Uの内表面とを相互に接触させるために、底部15Uの内部に、感温部11を底部15Uの内表面に押し付けるように発泡スチロール(図示せず)などが充填されているとよい。
【0069】
ベース部15MAは、たとえばステンレスまたはアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属性の部材から構成される。ケース体52Aの底面部52Sの先端近傍には、開口部52Hが設けられる。ベース部15MAは、この開口部52Hに嵌め込まれる。ベース部15MAは、ケース体52Aの底面部52Sに対して、接着剤、熱溶着、または超音波溶着などによって接合されるとよい。
【0070】
図7を参照して、ベース部15MAは、略長円形のフランジ状に形成された上端面15Tと、上端面15Tに連設され、シート状部材51A(図6参照)から遠ざかる方向に膨出する凹部形状(略キャップ形状)に形成された底部15Uとを含む。底部15Uは、シート状部材51A(蓋部15NA)側に向かって開放する開放部15Hを有する。底部15Uの先端部15Sは、ハウジング50A(図6参照)の長手方向の先端側に向かって膨出するように、球面状に形成される。
【0071】
蓋部15NAは、上述のとおりシート状部材51Aの先端に設けられる。本実施の形態における蓋部15NAは、シート状部材51Aと同質の材料から構成され、シート状部材51Aの一部としてシート状部材51Aと一体的に形成されている。
【0072】
ベース部15MAとケース体52Aとが別体として構成されているのと同様に、蓋部15NAとシート状部材51Aとは別体として構成されていてもよい。この場合、蓋部15NAは、たとえばステンレスまたはアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属性の部材から構成されるとよい。また、蓋部15NAは、シート状部材51Aの先端に、接着剤、熱溶着、または超音波溶着などによって接合されるとよい。
【0073】
本実施の形態における蓋部15NAは、シート状部材51Aの先端において平面状に形成される。電子体温計101が組み立てられた状態においては、蓋部15NAは、ケース体52A(ベース部15MAの底部15U)に対向する。
【0074】
図5を参照して、電子体温計101が組み立てられる際には、内蔵機器18(サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29)が、シート状部材51Aとケース体52Aとの間に配置される。
【0075】
内蔵機器18は、ケース体52A内に収容される。内蔵機器18がシート状部材51Aに対して接着などの手段によって固定された状態で、内蔵機器18がケース体52A内に収容されてもよい。この場合、開口部51Hに設けられた透明保護部材56と表示パネル31とが対向するように、内蔵機器18がシート状部材51Aに対して取り付けられる。
【0076】
また、操作部36における押しボタン38とシート状部材51A(シート状部材51Aの銘板37Aが形成された領域)とが対向するように、内蔵機器18がシート状部材51Aに対して取り付けられる。シート状部材51Aに内蔵機器18が取り付けられた(貼り付けられた)状態で、シート状部材51Aの周縁がケース体52Aの上端部52Kに接合される。
【0077】
当該接合によって、内蔵機器18(サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29)が略気密状に封止された中空空間53(図6参照)が形成される。内蔵機器18は、中空空間53内において、シート状部材51Aおよびケース体52Aによって挟み込まれる。シート状部材51Aおよびケース体52Aの相互の接合によって、ハウジング50Aが形成される。
【0078】
蓋部15NAは、ベース部15MAの開放部15Hをシート状部材51A側から閉塞する(覆う)ように、開放部15Hと間隔を空けて対向配置される。ベース部15MAと蓋部15NAとの間に、感温部11が配置される。上述のとおり、底部15Uの内部には、感温部11を底部15Uの内表面に押し付けるように発泡スチロール(図示せず)などが充填されているとよい。
【0079】
シート状部材51Aとケース体52Aの上端部52Kとを相互に接合するためには、シート状部材51Aとケース体52Aの上端部52Kとが対向するように配置される。この状態で、シート状部材51Aと上端部52Kとの接触部に超音波が付与される。付与された超音波により、シート状部材51A(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、シート状部材51Aがケース体52Aの上端部52Kに溶着(圧着)される。シート状部材51Aとケース体52Aの上端部52Kとは、熱溶着または接着剤などによって接合されてもよい。
【0080】
(作用・効果)
電子体温計101のハウジング50Aは、シート状部材51Aおよびケース体52Aから簡素に構成される。シート状部材51Aは、PET等から構成される極めて薄い部材である。シート状部材51Aは、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。ケース体52Aも、PET等から真空成型などによって構成される極めて薄い部材であるため、安価に準備されることができる。電子体温計101によれば、筐体の全部が成型樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0081】
電子体温計101が安価に製造されるため、電子体温計101は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計101が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計101によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0082】
上述のとおり、リード線12は、中空空間53(図6参照)内に配置された状態において、凹部52Tの内表面に対して(接着などによって固定されずに)摺動自在であるとよい。この場合、電子体温計101が繰り返し曲げまたはねじれ変形されたとしても、リード線12の長寿命化が図れる。なお、リード線12を収容する凹部52Tとしては、シート状部材51A側に設けられてもよい。
【0083】
電子体温計101においては、ケース体52Aにおける側壁部52Uおよび上端部52Kが、ケース体52Aに対して内蔵機器18を一方向に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。当該開口を形成するケース体52Aに対して、内蔵機器18(またはシート状部材51Aに取り付けられた内蔵機器18)は、一方向に容易に組み付けられることができる。
【0084】
感温部キャップ15Aにおいても、ベース部15MAの底部15Uが、シート状部材51A(蓋部15NA)側に向かって開放する開放部15Hを有する。開放部15Hに対して、感温部11は一方向に容易に組み付けられることができる。感温部11が組みつけられた開放部15H(ベース部15MA)に対して、蓋部15Nも容易に組み付けられることができる。
【0085】
したがって、電子体温計101を機械的に組み立てる際には、感温部キャップ15Aは、ハウジング50A(シート状部材51Aおよびケース体52A)に対して、(従来の電子体温計に比べて)より効率的に組み付けられることができる。感温部キャップ15Aを備えた電子体温計101によれば、さらなる製造費用の低減が可能となる。
【0086】
また、感温部キャップ15Aのベース部15MAにおける先端部15Sは、ハウジング50A(図6参照)の長手方向の先端側に向かって球面状に膨出するように形成される。当該構成によれば、感温部キャップ15Aが被測定者の腋下(腋奥)などに対して接触され易くなり、測定精度の向上が図れる。
【0087】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
10 サーミスタ、11 感温部、12 リード線、15,15A 感温部キャップ、15H 開放部、15M,15MA ベース部、15N,15NA 蓋部、15Q,15V 後端面、15S 先端部、15T 上端面、15U 底部、15W 下端面、18 内蔵機器、20 制御基板、22 制御部、23 メモリ部、24 報知部、29 基板、30 表示部、31 表示パネル、36 操作部、37 電源スイッチ、37A 銘板、38 押しボタン、40 電源部、41 電極端子、42 ボタン電池、43 樹脂、50,50A ハウジング、51 ハウジング(第1ハウジングまたは第2ハウジングのうちの一方)、52 ハウジング(第1ハウジングまたは第2ハウジングのうちの他方)、51A シート状部材(第1ハウジング)、51H,52H 開口部、51K 下端部、52A ケース体(第2ハウジング)、52K 上端部、52R,52S 底面部、52T 凹部、52U 側壁部、52V 先端面、53 中空空間、56 透明保護部材、82 プローブ部、100,101 電子体温計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子体温計に用いられる感温部キャップであって、
前記電子体温計は、
被測定者の体温を測定する感温部を有するサーミスタと、
内部に中空空間を有し、前記サーミスタを前記中空空間内に配置するハウジングと、
前記ハウジングの長手方向の先端側に設けられ、前記感温部を収容する当該感温部キャップと、を備え、
前記ハウジングは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに接合されることによって前記中空空間を形成する第2ハウジングと、を含み、
当該感温部キャップは、
前記第1ハウジング側に向かって開放する開放部、および、前記ハウジングの前記長手方向の前記先端側に向かって球面状に膨出するように形成された先端部をそれぞれ有し、前記第2ハウジングに設けられたベース部と、
前記第1ハウジングに設けられ、前記開放部を閉塞するように前記開放部と対向配置される蓋部と、を含む、
感温部キャップ。
【請求項2】
前記ベース部は、
半球体状に形成された前記先端部と、
前記先端部に連設されるとともに、前記先端部から遠ざかる方向に延在する半割の円筒形状に形成された底部と、を有し、
前記蓋部は、半割の円筒形状に形成され、
前記底部と前記蓋部とが相互に重ね合わせられることによって、前記底部および前記蓋部は円筒形状を呈する、
請求項1に記載の感温部キャップ。
【請求項3】
前記ベース部は、
球面状に形成された前記先端部と、
前記第1ハウジングから遠ざかる方向に膨出する凹部形状の底部と、を有し、
前記蓋部は、シート状に形成される、
請求項1に記載の感温部キャップ。
【請求項4】
被測定者の体温を測定する感温部を有するサーミスタと、
内部に中空空間を有し、前記サーミスタを前記中空空間内に配置するハウジングと、
前記ハウジングの長手方向の先端側に設けられ、前記感温部を収容する感温部キャップと、を備え、
前記ハウジングは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに接合されることによって前記中空空間を形成する第2ハウジングと、を含み、
前記感温部キャップは、
前記第1ハウジング側に向かって開放する開放部、および、前記ハウジングの前記長手方向の前記先端側に向かって球面状に膨出するように形成された先端部をそれぞれ有し、前記第2ハウジングに設けられたベース部と、
前記第1ハウジングに設けられ、前記開放部を閉塞するように前記開放部と対向配置される蓋部と、を含む、
電子体温計。
【請求項5】
前記ベース部は、金属製であり、
前記第1ハウジング、前記第2ハウジング、および前記蓋部は、ABS樹脂製であり、
前記蓋部は、前記第1ハウジングに一体成型されている、
請求項4に記載の電子体温計。
【請求項6】
前記ベース部は、金属製であり、
前記第1ハウジングおよび前記蓋部は、シート状部材から構成され、
前記第2ハウジングは、PET樹脂製であり、
前記蓋部は、前記第1ハウジングに一体的に形成されている、
請求項4に記載の電子体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163353(P2012−163353A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21749(P2011−21749)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)