電子体温計
【課題】体温の測定中に被測定者等が電子体温計に触れることを抑制することによって、測定精度の低下を抑制することが可能な電子体温計を得る。
【解決手段】被測定者の体温を測定する電子体温計100は、上記体温を測定する感温部11および感温部11に一端が接続されたリード線12を含むサーミスタ10と、リード線12の他端が接続された制御基板20と、制御基板20に接続され、サーミスタ10によって測定された上記体温を表示する表示部30と、制御基板20に電力を供給する電源部40と、長手方向に沿って可撓性を有し、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40を内部に配置するシート状部材50と、を備え、上記電子体温計100は、上記長手方向に沿って曲げ変形された状態およびねじれ変形された状態が保持される。
【解決手段】被測定者の体温を測定する電子体温計100は、上記体温を測定する感温部11および感温部11に一端が接続されたリード線12を含むサーミスタ10と、リード線12の他端が接続された制御基板20と、制御基板20に接続され、サーミスタ10によって測定された上記体温を表示する表示部30と、制御基板20に電力を供給する電源部40と、長手方向に沿って可撓性を有し、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40を内部に配置するシート状部材50と、を備え、上記電子体温計100は、上記長手方向に沿って曲げ変形された状態およびねじれ変形された状態が保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
体温計は、被測定者の体温を測定する。体温の測定時には、体温計の感温部が被測定部付近に配置された状態で、体温計が腋下または舌下等に挟持固定される。
【0003】
一般的な水銀式の体温計は、体温の測定が完了したことを被測定者等(被測定者および医療従事者等)に知らせるための報知手段を備えていない。従来の水銀式の体温計を使用して体温を測定する場合、被測定者等は目盛りをたびたび凝視して、測定が完了したか否かを判別する必要があった。
【0004】
一方、電子体温計の多くは、体温の測定が完了したことを被測定者等に知らせるための報知手段を備えている(特許文献1〜3参照)。電子体温計を使用して体温を測定する場合、被測定者等は、体温の測定が完了することを安静な状態で待機することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−76334号公報
【特許文献2】特開昭61−241631号公報
【特許文献3】特開平2−132333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な電子体温計を使用して体温を測定する場合、被測定者等は、体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計に触れることがある。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認するためにも、たびたび電子体温計に触れることがある。被測定者等が電子体温計に触れると、電子体温計の感温部と被測定部との接触状態に変化が生じ、当該変化によって測定結果に影響が生じてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、体温の測定中に被測定者等が電子体温計に触れることを抑制することによって、測定精度の低下を抑制することが可能な電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく電子体温計は、被測定者の体温を測定する電子体温計であって、上記体温を測定する感温部、および、上記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、上記リード線の他端が接続された制御基板と、上記制御基板に接続され、上記サーミスタによって測定された上記体温を表示する表示部と、上記制御基板に電力を供給する電源部と、長手方向に沿って可撓性を有し、上記サーミスタ、上記制御基板、上記表示部、および上記電源部を内部に配置するシート状部材と、を備え、上記電子体温計は、上記長手方向に沿って曲げ変形された状態およびねじれ変形された状態が保持される。
【0009】
好ましくは、上記シート状部材によって、上記電子体温計の上記曲げ変形された状態および上記ねじれ変形された状態が保持される。
【0010】
好ましくは、上記長手方向において上記サーミスタと上記表示部との間に形状保持部材が設けられ、上記形状保持部材によって、上記電子体温計の上記曲げ変形された状態および上記ねじれ変形された状態が保持される。
【0011】
好ましくは、上記形状保持部材の一部は、上記感温部の周囲を部分的に覆うように設けられる。
【0012】
好ましくは、上記形状保持部材によって、上記電子体温計の上記曲げ変形された状態が保持され、上記形状保持部材は、上記表示部の上記体温が表示される面側にのみ曲げ変形する。
【0013】
好ましくは、上記シート状部材は、内部に中空空間を形成し、上記リード線は、上記中空空間内において上記シート状部材の内表面に対して摺動自在に配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、体温の測定中に被測定者等が電子体温計に触れることを抑制することによって、測定精度の低下を抑制することが可能な電子体温計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における電子体温計の組み立てられた状態を示す平面図である。
【図3】実施の形態1における電子体温計の機能ブロックを示す図である。
【図4】実施の形態1における電子体温計の使用態様の一例を示す斜視図である。
【図5】実施の形態1における電子体温計の使用態様の他の一例を示す斜視図である。
【図6】実施の形態1の第1変形例における電子体温計を示す平面図である。
【図7】実施の形態1の第2変形例における電子体温計の形状保持部材を示す断面図(側面図)である。
【図8】実施の形態1の第3変形例における電子体温計を示す平面図である。
【図9】実施の形態1の第3変形例における電子体温計の他の形態を示す平面図である。
【図10】実施の形態1の第4変形例における電子体温計を示す平面図である。
【図11】図10中のXI−XI線に関する矢視断面図である。
【図12】実施の形態1の第5変形例における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図13】実施の形態1の第5変形例における電子体温計の組み立てられた状態を示す断面図である。
【図14】実施の形態2における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図15】実施の形態2における電子体温計の使用態様の一例を示す斜視図である。
【図16】実施の形態2における電子体温計の他の形態の分解した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。特に制限が無い限り、各実施の形態に示す構成に示す構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
【0017】
[実施の形態1]
図1〜図3を参照して、本実施の形態における電子体温計100の構成について説明する。図1は、電子体温計100の分解した状態を示す斜視図である。図2は、電子体温計100の組み立てられた状態を示す平面図である。図3は、電子体温計100の機能ブロックを示す図である。
【0018】
図1に示すように、電子体温計100は、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、シート状部材50、および形状保持部材73,74を備える。図2に示すように、電子体温計100が組み立てられた状態においては、電子体温計100の一端側(先端側)にプローブ部82が形成される。
【0019】
図1を再び参照して、サーミスタ10は、いわゆるラジアルリード型であり、被測定者の体温を計測する感温部11と、一端が感温部11に接続されたリード線12とを含む。リード線12の他端は、制御基板20に接続される。
【0020】
制御基板20は、所定の位置に、操作部(図3における操作部21)、制御部(図3における制御部22)、メモリ部(図3におけるメモリ部23)、および報知部(図3における報知部24)を有する。操作部は、制御基板20の表面の所定の位置(制御基板20の側面または裏面など、たとえば後述する実施の形態1の第4変形例における図11参照)に、外部から押圧可能に配置される。
【0021】
表示部30は、配線61によって制御基板20に接続される。表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)またはフレキシブル表示素子などの表示パネル31を有する。表示パネル31に、サーミスタ10によって測定された被験者の体温などが表示される。
【0022】
電源部40は、ボタン電池42および対向配置された電極端子41を有する。対向配置された電極端子41同士は、樹脂43によって相互に位置決めされる。電極端子41は、配線62によって制御基板20に接続される。ボタン電池42は、電極端子41間に配置され、電極端子41および配線62を通して、制御基板20(および制御基板20に接続された表示部30)に電力を供給する。
【0023】
電子体温計100においては、電子体温計100(シート状部材50)の長手方向に沿って、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40がこの順に並んで配置される。この順序は適宜変更されてもよい。
【0024】
シート状部材50は、それぞれ同一形状に形成された第1シート状部材51および第2シート状部材52を有する。第1シート状部材51および第2シート状部材52は、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによってそれぞれ構成される。
【0025】
第1シート状部材51および第2シート状部材52の厚さは、それぞれたとえば0.1mm〜0.3mmであり、長手方向に沿って可撓性を有している。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。第1シート状部材51および第2シート状部材52は、裁断などによって製造されることができる。第1シート状部材51および第2シート状部材52は、サーミスタ10が配置される側(プローブ部82を構成する側)に向かって徐々に幅が狭くなるように、平面視略U字形状に構成される。
【0026】
第1シート状部材51は、透明性を有する部材から構成されるとよい。第1シート状部材51が透明性を有する部材から構成されない場合、第1シート状部材51の一部には、表示部30の表示パネル31を外部から視認可能なように、透明性を有する保護部材が設けられるとよい。
【0027】
形状保持部材73,74は、たとえば厚さが1mm〜5mmの金属板または樹脂板などから構成される。形状保持部材73,74は、シート状部材50の外縁の内側に沿うように略J字形状に形成される。形状保持部材73,74は線対称に構成され、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40の幅方向における両側にそれぞれ配置される。
【0028】
形状保持部材73,74の湾曲する先端部には、形状保持部材73,74の一部として囲壁73T,74Tがそれぞれ立設される。なお、形状保持部材73,74と囲壁73T,74Tとは、それぞれ別体として設けられていてもよい。囲壁73T,74Tは、平面視において所定の径を有する仮想円に沿うように形成されるとよい。電子体温計100が組み立てられた状態においては、感温部11の周囲が、囲壁73T,74Tによって部分的に囲まれる(図2参照)。
【0029】
電子体温計100が組み立てられる際には、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が、第2シート状部材52上に配置される(図1参照)。
【0030】
本実施の形態においては、サーミスタ10が、第2シート状部材52の長手方向における一端側(図2紙面左側)に配置される。表示部30が、第2シート状部材52の長手方向における他端側(図2紙面右側)に配置される。形状保持部材73,74は、シート状部材50の長手方向において、サーミスタ10と表示部30との間に設けられる。図2に示すように、形状保持部材73,74は、シート状部材50の長手方向において、サーミスタ10と表示部30との間の領域を跨ぐように配置されてもよい。
【0031】
この状態で、第1シート状部材51の周縁と第2シート状部材52の周縁とが相互に接合される。当該接合によって、第1シート状部材51および第2シート状部材52の外縁に環状の接合領域54が形成され、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が略気密状に封止された中空空間53(図2参照)が形成される。
【0032】
リード線12は、中空空間53内に配置された状態においてシート状部材50(第1シート状部材51および第2シート状部材52)の内表面に対して摺動自在であるとよい。なお、形状保持部材73,74は、中空空間53内に設けられずに、シート状部材50の外表面に沿って外部に露出するように設けられてもよい。
【0033】
第1シート状部材51と第2シート状部材52とを相互に接合するためには、第1シート状部材51の周縁と第2シート状部材52の周縁とが一致するように対向配置される。この状態で、第1シート状部材51および第2シート状部材52の接触部(接合領域54に対応する部分)に超音波が付与される。付与された超音波により、第1シート状部材51および第2シート状部材52の周縁(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、第1シート状部材51および第2シート状部材52の周縁同士が、接合領域54において溶着(圧着)される。なお、第1シート状部材51および第2シート状部材52の周縁同士は、熱溶着または接着剤などによって接合されてもよい。
【0034】
図3を参照して、上述したように、電子体温計100は、感温部11、操作部21、制御部22、メモリ部23、報知部24、表示部30、および電源部40を、機能ブロックとして含む。操作部21、制御部22、メモリ部23、および報知部24は、制御基板20に設けられる。
【0035】
感温部11は、腋下や舌下などの被測定部位に挟み込まれることで被測定者の体温を検出する。操作部21は、たとえば押し釦から構成され、被測定者(または電子体温計100の使用者)による操作を受け付けて、この外部からの命令を制御部22または電源部40に入力する。制御部22は、たとえばCPU(Central Processing Unit)から構成され、電子体温計100の全体を制御する。
【0036】
メモリ部23は、たとえばROM(Read-Only Memory)またはRAM(Random-Access Memory)から構成され、体温測定のための処理手順を制御部22などに実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果などを記憶したりする。報知部24は、たとえばブザーから構成され、測定が終了したことや被測定者の操作を受け付けたことなどを被測定者に知らせる。報知部24は、必要に応じて設けられるとよい。
【0037】
表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)またはフレキシブル表示素子などの表示パネル31(図1参照)を含み、測定結果などを表示する。電源部40は、たとえばボタン電池42(図1参照)を含み、制御部22(制御基板20)および表示部30等に電源としての電力を供給する。
【0038】
制御部22は、体温測定を実行するための処理回路を含んでおり、メモリ部23から読み出されたプログラムに基づいて体温を測定する。その際、制御部22は、感温部11から入力された温度データを処理することで測定結果としての体温を算出する。制御部22は、算出した体温を表示部30に表示させたり、算出した体温をメモリ部23に記憶させたり、測定が終了したことを、報知部24を用いて被測定者に知らせたりするように、電子体温計100を制御する。
【0039】
(作用・効果)
電子体温計100のシート状部材50は、各シート状部材51,52から簡素に構成される。各シート状部材51,52は、PET等から構成される極めて薄い部材である。各シート状部材51,52は、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。電子体温計100によれば、筐体の全部が成形樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0040】
電子体温計100が安価に製造されるため、電子体温計100は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計100が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計100によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0041】
電子体温計100においては、第2シート状部材52に対してサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が一方向(図1中の矢印参照)に配置可能となっている。サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74は、第2シート状部材52に対して一方向に容易に組み付けられることができる。電子体温計100によれば、組み付け作業の自動化を図ることも可能となり、さらなる製造費用の低減が可能となる。
【0042】
電子体温計100においては、形状保持部材73,74の湾曲する先端に、囲壁73T,74Tが感温部11を囲うように設けられる。囲壁73T,74Tによって、プローブ部82がたとえば被測定者の口内に挿入された際に、感温部11と歯との接触が抑制される。感温部11が誤って破損されてしまうことが抑制されている。なお、囲壁73T,74Tは必要に応じて設けられるとよい。
【0043】
上述のとおり、リード線12は、中空空間53内に配置された状態において、シート状部材50の内表面に対して(接着などによって固定されずに)摺動自在であるとよい。この場合、電子体温計100が繰り返し曲げまたはねじれ変形されたとしても、リード線12の長寿命化が図れる。
【0044】
図4を参照して、上述のとおり、電子体温計100においては、シート状部材50が可撓性を有している。電子体温計100が体温測定に供される際に、電子体温計100は長手方向に沿って弧を描くように曲げ変形されることができる(矢印AR1参照)。形状保持部材73,74(図1または図2参照)によって、電子体温計100の曲げ変形された状態が保持される。
【0045】
なお、電子体温計100の曲げ変形された状態を保持可能であれば、形状保持部材73,74はいずれか一方のみが設けられていてもよい。さらに、シート状部材50が所定の剛性を有する材質からなり、電子体温計100の曲げ変形された状態をシート状部材50そのものが保持可能の場合には、形状保持部材73,74は設けられなくてもよい。
【0046】
電子体温計100がたとえば舌下に挿入された状態において、被測定者等は、表示パネル31が視界に入るように電子体温計100を曲げ変形させる。電子体温計100の曲げ変形した状態が形状保持部材73,74(またはシート状部材50)によって保持されるため、被測定者等は体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計100に触れる必要がない。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認する際にも、電子体温計100に触れる必要がない。
【0047】
また、図4に示すように、電子体温計100が舌下に挿入された状態において、被測定者の目線と表示パネル31内に表示される文字列(測定温度など)とが平行になるように構成されているとよい。被測定者は、表示パネル31内に表示される文字列を容易に読むことが可能となる。
【0048】
また、図5に示すように、電子体温計100は、シート状部材50が可撓性を有していることによって、ねじれ変形(矢印AR2参照)されることもできる。形状保持部材73,74(図1または図2参照)によって、電子体温計100のねじれ変形された状態は保持される。
【0049】
電子体温計100がたとえば腋下に挿入された状態において、被測定者等は、表示パネル31が視界に入るように電子体温計100をねじれ変形させる。電子体温計100のねじれ変形した状態が形状保持部材73,74(またはシート状部材50)によって保持されるため、被測定者等は体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計100に触れる必要がない。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認する際にも、電子体温計100に触れる必要がない。
【0050】
したがって、電子体温計100によれば、被測定者等が体温の測定中に電子体温計100に触れる必要がないため、電子体温計100の感温部11と被測定部との接触状態(相対的な位置関係)に変化が生じることが抑制されている。電子体温計100によれば、測定精度の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
特に、シート状部材50が各シート状部材51,52から簡素に構成される。各シート状部材51,52は、PET等から構成される極めて薄い部材である。シート状部材50の簡素さが原因となって、被測定者は、表示パネル31を見るためにシート状部材50に頻繁に触れようとすることが考えられる。しかしながら、形状保持部材73,74の配設によって、電子体温計100の曲げ変形が確実に保持されるため、被測定者によってシート状部材50が触れられることは抑制されることができる。
【0052】
被測定者が表示パネル31を測定中に常時視認することが可能となるため、電子体温計100においては、ブザーなどの報知部24を設けないようにすることも可能である。この場合、電子体温計100はより一層安価に製造されることができる。
【0053】
なお、冒頭に説明した特許文献1(実開昭61−76334号公報)に開示された発明においては、電子体温計の一部(プローブ部)が、可撓性を有する柔軟な部材から構成される。特許文献1は、プローブ部を口中に入れた状態で、プローブ部を屈曲変形させることによって温度表示部を傾けて視認しやすい角度にすることができると述べている。
【0054】
しかしながら、特許文献1に開示された発明によれば、プローブ部が可撓性を有する柔軟な部材から構成されるため、プローブ部の屈曲変形した状態は保持されることができない。特許文献1に開示された発明では、体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認する際、または、体温の測定が完了したことを視覚的に確認する際には、たびたび電子体温計に触れる必要がある。
【0055】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
図6に示す電子体温計101においては、たとえば樹脂製の薄板平板状に形成された基台75上に、制御基板20、表示部30、および電源部40が固定配置される。基台75の先端側に、形状保持部材73,74が基台75と一体的に形成される。表示部30と感温部11との間の長手方向にわたって、形状保持部材73,74が設けられる。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
また、電子体温計101を曲げ変形させるために電子体温計101に外力が作用した際に、配線61,62が制御基板20、表示部30、または電源部40から外れてしまうことも抑制される。
【0057】
(第2変形例)
図7は、形状保持部材73,74を示す断面図(側面図)である。図7に示すように、形状保持部材73,74には、厚さ方向(紙面上下方向)に沿って複数の切り込み76が設けられていてもよい。当該構成によれば、形状保持部材73,74は、矢印AR3に示す方向(すなわち切り込み76が開く方向)に積極的に曲げ変形可能となり、矢印AR3とは反対の方向には曲がりにくくなる。
【0058】
図示上の便宜のため、切り込み76の開口を広く記載しているが、切り込み76の開口はできるだけ狭い方がよい。形状保持部材73,74を構成する部材の剛性を高め、切り込み76の開口を狭める(実質的にゼロにする)ことによって、形状保持部材73,74を矢印AR3方向にのみ曲げ変形可能にすることもできる。この場合において、形状保持部材73,74は、表示部30の体温が表示される面側(表示パネル31側)に曲げ変形可能に構成するとよい。
【0059】
当該構成によれば、体温測定の際において、形状保持部材73,74の曲げ変形の方向性が一方向に制限され、その反対方向への曲げ変形が抑制(または防止)される。形状保持部材73,74が繰り返し曲げ変形されることによる疲労(たとえば金属疲労)が軽減される。形状保持部材73,74における長寿命化を図ることが可能となる。
【0060】
(第3変形例)
図8に示す電子体温計102のように、シート状部材50は平面視略T字状に形成されてもよい。また、図9に示す電子体温計103のように、シート状部材50は平面視略L字状に形成されてもよい。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果を得ることができる。また、電子体温計102,103によれば、表示部30の配置可能な領域が拡大するため、表示パネル31の大きさを大きくすることもできる。
【0061】
(第4変形例)
図10は、実施の形態1の第4変形例における電子体温計104を示す平面図である。図11は、図10中のXI−XI線に関する矢視断面図である。
【0062】
図10および図11に示す電子体温計104のように、感温部11は、シート状部材50の外部に設けられていてもよい。この場合、感温部11は、ステンレスまたはアルミニウムなどからなる袋状部材55の内部に収容される。図11に示すように、袋状部材55は、接合領域54における超音波溶着によってシート状部材50と一体化され、シート状部材50の内部の中空空間53に連通している。当該構成によって、感温部11回りの熱伝導性が向上し、被測定者は体温を精度高く正確に測定することが可能となる。
【0063】
(第5変形例)
図12は、実施の形態1の第5変形例における電子体温計105の分解した状態を示す斜視図である。図13は、電子体温計105の組み立てられた状態を示す断面図である。
【0064】
図12および図13に示す電子体温計105においては、シート状部材50Aが袋状に形成される。シート状部材50Aは、開口部50Hを有する。電子体温計105が組み立てられる際には、開口部50Hから、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が挿入される。図12においては、形状保持部材73,74が便宜上実線で図示されているが、本変形例における形状保持部材73,74はシート状部材50Aの内部に配置される。なお、形状保持部材73,74はシート状部材50Aの外部に配置されてもよい。
【0065】
図13を参照して、電子体温計105が組み立てられた状態においては、開口部50Hは超音波溶着などによって閉塞され、接合領域54が形成される。電子体温計105(シート状部材50A)の表面が平滑に構成されるため、電子体温計105をエタノールなどを使用して洗浄消毒する際における衛生面が一層向上する。
【0066】
電源部40においては、超音波溶着用リブを有する電池ケースに、ボタン電池42が収容されるように構成されてもよい。この電池ケースは、たとえばABS樹脂から構成される。電池ケースに設けられた超音波溶着用リブを活用して開口部50Hが溶着されることによって、開口部50Hにおける封止性および接合強度が向上する。
【0067】
なお、袋状から構成されるシート状部材50Aについては、電子体温計105の曲げおよびねじれ変形状態が保持可能という技術的思想からは独立した発明としても成立し得るものである。袋状から構成されるシート状部材50Aが電子体温計に採用されることによって、洗浄消毒後における衛生面の向上といった課題が解決し得るものである。
【0068】
[実施の形態2]
図14を参照して、本実施の形態における電子体温計106について説明する。図14は、電子体温計106の分解した状態を示す斜視図である。
【0069】
電子体温計106においては、可撓性を有する第1シート状部材51Bおよび可撓性を有する第2シート状部材52Bからなるシート状部材50Bが用いられる。電子体温計106においては、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40がこの順に並んで配置される。
【0070】
第1シート状部材51Bは、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによって構成される。
【0071】
第1シート状部材51Bの厚さは、たとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。第1シート状部材51Bは、裁断などによって製造されることができる。第1シート状部材51Bは、サーミスタ10が配置される側に向かって徐々に幅が狭くなるように略テーパー状に構成される。
【0072】
第1シート状部材51Bには、表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hが設けられる。開口部51H内には、樹脂などから構成される透明保護部材56が配置される。なお、第1シート状部材51Bが透明性を有する場合、開口部51Hおよび透明保護部材56は不要である。表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hは、次述する第2シート状部材52Bに設けられてもよい。この場合、表示部30の表示パネル31は、第2シート状部材52B側に向かって配置される(図14とは表裏反対に示すように配置される)。
【0073】
第2シート状部材52Bは、たとえばPET、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、またはPP(polypropylene)等の熱可塑性を有する部材から、たとえば真空成型によって容器状に構成される。第2シート状部材52Bの厚さは、たとえば0.5mm〜1.0mmである。
【0074】
第2シート状部材52Bは、電子体温計106の長手方向に沿って延在する底面部52S,52R、底面部52S,52Rの周縁から起立する環状壁部52U、および、環状壁部52Uの起立方向の先端に設けられた上端部52Kを有する。上端部52Kは、フランジ状に形成されてもよい。
【0075】
底面部52Sは、電子体温計106の一端側(先端側)に位置する。底面部52Rは、底面部52Sに連続し、電子体温計106の他端側(後端側)に位置する。電子体温計106が被測定者の腋下または舌下等に向かって挿入され易いように、底面部52Sは底面部52Rに比べて底浅に形成されている(底上げされている)。
【0076】
底面部52Sの略中央には、電子体温計106の長手方向に沿って長溝52Tが設けられる。電子体温計106が組み立てられた状態においては、長溝52Tに、サーミスタ10(感温部11およびリード線12)が収容される。この場合、リード線12は長溝52Tの内周面に対して摺動自在であるとよい。なお、長溝52Tは必要に応じて設けられるとよい。形状保持部材73,74は、長溝52Tの両側にそれぞれ配置される。
【0077】
底面部52Rには、区画壁52M,52Nが立設される。区画壁52Mと底面部52Sの後端との間に、制御基板20が配置される。区画壁52Mと区画壁52Nとの間に表示部30が配置され、区画壁52Nと環状壁部52Uとに囲まれる領域に電源部40が配置される。電子体温計106が組み立てられた状態において、制御基板20、表示部30および電源部40の位置ずれは抑制される。
【0078】
第2シート状部材52Bにおける環状壁部52Uおよび上端部52Kは、第2シート状部材52Bに対してサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が一方向(図14中の矢印参照)に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。
【0079】
電子体温計106が組み立てられる際には、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が第2シート状部材52B内に配置される。その状態で、第1シート状部材51が第2シート状部材52Bの上端部52Kに接合される。当該接合によって、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40が略気密状に封止された中空空間が形成される。
【0080】
第1シート状部材51Bと上端部52Kとを相互に接合するためには、第1シート状部材51Bと第2シート状部材52Bの上端部52Kとが対向するように配置される。この状態で、第1シート状部材51と上端部52Kとの接触部に超音波が付与される。付与された超音波により、第1シート状部材51B(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、第1シート状部材51Bが第2シート状部材52Bの上端部52Kに溶着(圧着)される。
【0081】
(作用・効果)
電子体温計106のシート状部材50Bは、第1シート状部材51Bおよび第2シート状部材52Bから簡素に構成される。第1シート状部材51Bは、PET等から構成される極めて薄い部材である。第1シート状部材51Bは、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。第2シート状部材52Bも、PET等から真空成形などによって構成される極めて薄い部材であるため、安価に準備されることができる。電子体温計106によれば、筐体の全部が成形樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0082】
電子体温計106が安価に製造されるため、電子体温計106は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計106が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計106によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0083】
電子体温計106においては、第2シート状部材52Bにおける環状壁部52Uおよび上端部52Kが、第2シート状部材52Bに対してサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が一方向(図14中の矢印参照)に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。当該開口に対して、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74は一方向に容易に組み付けられることができる。電子体温計106によれば、組み付け作業の自動化を図ることも可能となり、さらなる製造費用の低減が可能となる。
【0084】
図15に示すように、電子体温計106においては、シート状部材50Bが可撓性を有している。電子体温計106が体温測定に供される際に、電子体温計106は長手方向に沿って弧を描くように曲げ変形されることができる(矢印AR4参照)。また、電子体温計106が体温測定に供される際に、電子体温計106はねじれ変形されることもできる。形状保持部材73,74(図14参照)によって、電子体温計106の曲げおよびねじれ変形された状態が保持される。
【0085】
なお、電子体温計106の曲げおよびねじれ変形された状態を保持可能であれば、形状保持部材73,74はいずれか一方のみが設けられていてもよい。さらに、図16に示す電子体温計107ように、シート状部材50Bが所定の剛性を有する材質からなり、電子体温計107の曲げおよびねじれ変形された状態をシート状部材50Bそのものが保持可能の場合には、形状保持部材73,74は設けられなくてもよい。
【0086】
電子体温計106,107が被測定部に配置された状態において、被測定者等は、表示パネル31が視界に入るように電子体温計106,107を曲げ変形させる。電子体温計106,107の曲げ変形した状態が形状保持部材73,74によって保持されるため、被測定者等は体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計106,107に触れる必要がない。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認する際にも、電子体温計106,107に触れる必要がない。
【0087】
また、電子体温計106,107が舌下に挿入された状態において、被測定者の目線と表示パネル31内に表示される文字列(測定温度など)とが平行になるように構成されているとよい。被測定者は、表示パネル31内に表示される文字列を容易に読むことが可能となる。
【0088】
したがって、電子体温計106,107によれば、被測定者等が体温の測定中に電子体温計106,107に触れる必要がないため、電子体温計106,107の感温部11と被測定部との接触状態(相対的な位置関係)に変化が生じることが抑制されている。電子体温計106,107によれば、測定精度の低下を抑制することが可能となる。
【0089】
被測定者が表示パネル31を測定中に常時視認することが可能となるため、電子体温計106,107においては、ブザーなどの報知部24を設けないようにすることも可能である。この場合、電子体温計106,107はより一層安価に製造されることができる。
【0090】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
10 サーミスタ、11 感温部、12 リード線、20 制御基板、21 操作部、22 制御部、23 メモリ部、24 報知部、30 表示部、31 表示パネル、40 電源部、41 電極端子、42 ボタン電池、43 樹脂、50,50A,50B シート状部材、50H,51H 開口部、51,51B 第1シート状部材、52,52B 第2シート状部材、52K 上端面、52M,52N 区画壁、52R,52S 底面部、52T 長溝、52U 環状壁部、53 中空空間、54 接合領域、55 袋状部材、56 透明保護部材、61,62 配線、73,74 形状保持部材、73T,74T 囲壁、75 基台、82 プローブ部、100〜107 電子体温計、AR1〜AR4 矢印。
【技術分野】
【0001】
本発明は電子体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
体温計は、被測定者の体温を測定する。体温の測定時には、体温計の感温部が被測定部付近に配置された状態で、体温計が腋下または舌下等に挟持固定される。
【0003】
一般的な水銀式の体温計は、体温の測定が完了したことを被測定者等(被測定者および医療従事者等)に知らせるための報知手段を備えていない。従来の水銀式の体温計を使用して体温を測定する場合、被測定者等は目盛りをたびたび凝視して、測定が完了したか否かを判別する必要があった。
【0004】
一方、電子体温計の多くは、体温の測定が完了したことを被測定者等に知らせるための報知手段を備えている(特許文献1〜3参照)。電子体温計を使用して体温を測定する場合、被測定者等は、体温の測定が完了することを安静な状態で待機することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−76334号公報
【特許文献2】特開昭61−241631号公報
【特許文献3】特開平2−132333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な電子体温計を使用して体温を測定する場合、被測定者等は、体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計に触れることがある。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認するためにも、たびたび電子体温計に触れることがある。被測定者等が電子体温計に触れると、電子体温計の感温部と被測定部との接触状態に変化が生じ、当該変化によって測定結果に影響が生じてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、体温の測定中に被測定者等が電子体温計に触れることを抑制することによって、測定精度の低下を抑制することが可能な電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく電子体温計は、被測定者の体温を測定する電子体温計であって、上記体温を測定する感温部、および、上記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、上記リード線の他端が接続された制御基板と、上記制御基板に接続され、上記サーミスタによって測定された上記体温を表示する表示部と、上記制御基板に電力を供給する電源部と、長手方向に沿って可撓性を有し、上記サーミスタ、上記制御基板、上記表示部、および上記電源部を内部に配置するシート状部材と、を備え、上記電子体温計は、上記長手方向に沿って曲げ変形された状態およびねじれ変形された状態が保持される。
【0009】
好ましくは、上記シート状部材によって、上記電子体温計の上記曲げ変形された状態および上記ねじれ変形された状態が保持される。
【0010】
好ましくは、上記長手方向において上記サーミスタと上記表示部との間に形状保持部材が設けられ、上記形状保持部材によって、上記電子体温計の上記曲げ変形された状態および上記ねじれ変形された状態が保持される。
【0011】
好ましくは、上記形状保持部材の一部は、上記感温部の周囲を部分的に覆うように設けられる。
【0012】
好ましくは、上記形状保持部材によって、上記電子体温計の上記曲げ変形された状態が保持され、上記形状保持部材は、上記表示部の上記体温が表示される面側にのみ曲げ変形する。
【0013】
好ましくは、上記シート状部材は、内部に中空空間を形成し、上記リード線は、上記中空空間内において上記シート状部材の内表面に対して摺動自在に配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、体温の測定中に被測定者等が電子体温計に触れることを抑制することによって、測定精度の低下を抑制することが可能な電子体温計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における電子体温計の組み立てられた状態を示す平面図である。
【図3】実施の形態1における電子体温計の機能ブロックを示す図である。
【図4】実施の形態1における電子体温計の使用態様の一例を示す斜視図である。
【図5】実施の形態1における電子体温計の使用態様の他の一例を示す斜視図である。
【図6】実施の形態1の第1変形例における電子体温計を示す平面図である。
【図7】実施の形態1の第2変形例における電子体温計の形状保持部材を示す断面図(側面図)である。
【図8】実施の形態1の第3変形例における電子体温計を示す平面図である。
【図9】実施の形態1の第3変形例における電子体温計の他の形態を示す平面図である。
【図10】実施の形態1の第4変形例における電子体温計を示す平面図である。
【図11】図10中のXI−XI線に関する矢視断面図である。
【図12】実施の形態1の第5変形例における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図13】実施の形態1の第5変形例における電子体温計の組み立てられた状態を示す断面図である。
【図14】実施の形態2における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図15】実施の形態2における電子体温計の使用態様の一例を示す斜視図である。
【図16】実施の形態2における電子体温計の他の形態の分解した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。特に制限が無い限り、各実施の形態に示す構成に示す構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
【0017】
[実施の形態1]
図1〜図3を参照して、本実施の形態における電子体温計100の構成について説明する。図1は、電子体温計100の分解した状態を示す斜視図である。図2は、電子体温計100の組み立てられた状態を示す平面図である。図3は、電子体温計100の機能ブロックを示す図である。
【0018】
図1に示すように、電子体温計100は、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、シート状部材50、および形状保持部材73,74を備える。図2に示すように、電子体温計100が組み立てられた状態においては、電子体温計100の一端側(先端側)にプローブ部82が形成される。
【0019】
図1を再び参照して、サーミスタ10は、いわゆるラジアルリード型であり、被測定者の体温を計測する感温部11と、一端が感温部11に接続されたリード線12とを含む。リード線12の他端は、制御基板20に接続される。
【0020】
制御基板20は、所定の位置に、操作部(図3における操作部21)、制御部(図3における制御部22)、メモリ部(図3におけるメモリ部23)、および報知部(図3における報知部24)を有する。操作部は、制御基板20の表面の所定の位置(制御基板20の側面または裏面など、たとえば後述する実施の形態1の第4変形例における図11参照)に、外部から押圧可能に配置される。
【0021】
表示部30は、配線61によって制御基板20に接続される。表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)またはフレキシブル表示素子などの表示パネル31を有する。表示パネル31に、サーミスタ10によって測定された被験者の体温などが表示される。
【0022】
電源部40は、ボタン電池42および対向配置された電極端子41を有する。対向配置された電極端子41同士は、樹脂43によって相互に位置決めされる。電極端子41は、配線62によって制御基板20に接続される。ボタン電池42は、電極端子41間に配置され、電極端子41および配線62を通して、制御基板20(および制御基板20に接続された表示部30)に電力を供給する。
【0023】
電子体温計100においては、電子体温計100(シート状部材50)の長手方向に沿って、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40がこの順に並んで配置される。この順序は適宜変更されてもよい。
【0024】
シート状部材50は、それぞれ同一形状に形成された第1シート状部材51および第2シート状部材52を有する。第1シート状部材51および第2シート状部材52は、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによってそれぞれ構成される。
【0025】
第1シート状部材51および第2シート状部材52の厚さは、それぞれたとえば0.1mm〜0.3mmであり、長手方向に沿って可撓性を有している。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。第1シート状部材51および第2シート状部材52は、裁断などによって製造されることができる。第1シート状部材51および第2シート状部材52は、サーミスタ10が配置される側(プローブ部82を構成する側)に向かって徐々に幅が狭くなるように、平面視略U字形状に構成される。
【0026】
第1シート状部材51は、透明性を有する部材から構成されるとよい。第1シート状部材51が透明性を有する部材から構成されない場合、第1シート状部材51の一部には、表示部30の表示パネル31を外部から視認可能なように、透明性を有する保護部材が設けられるとよい。
【0027】
形状保持部材73,74は、たとえば厚さが1mm〜5mmの金属板または樹脂板などから構成される。形状保持部材73,74は、シート状部材50の外縁の内側に沿うように略J字形状に形成される。形状保持部材73,74は線対称に構成され、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40の幅方向における両側にそれぞれ配置される。
【0028】
形状保持部材73,74の湾曲する先端部には、形状保持部材73,74の一部として囲壁73T,74Tがそれぞれ立設される。なお、形状保持部材73,74と囲壁73T,74Tとは、それぞれ別体として設けられていてもよい。囲壁73T,74Tは、平面視において所定の径を有する仮想円に沿うように形成されるとよい。電子体温計100が組み立てられた状態においては、感温部11の周囲が、囲壁73T,74Tによって部分的に囲まれる(図2参照)。
【0029】
電子体温計100が組み立てられる際には、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が、第2シート状部材52上に配置される(図1参照)。
【0030】
本実施の形態においては、サーミスタ10が、第2シート状部材52の長手方向における一端側(図2紙面左側)に配置される。表示部30が、第2シート状部材52の長手方向における他端側(図2紙面右側)に配置される。形状保持部材73,74は、シート状部材50の長手方向において、サーミスタ10と表示部30との間に設けられる。図2に示すように、形状保持部材73,74は、シート状部材50の長手方向において、サーミスタ10と表示部30との間の領域を跨ぐように配置されてもよい。
【0031】
この状態で、第1シート状部材51の周縁と第2シート状部材52の周縁とが相互に接合される。当該接合によって、第1シート状部材51および第2シート状部材52の外縁に環状の接合領域54が形成され、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が略気密状に封止された中空空間53(図2参照)が形成される。
【0032】
リード線12は、中空空間53内に配置された状態においてシート状部材50(第1シート状部材51および第2シート状部材52)の内表面に対して摺動自在であるとよい。なお、形状保持部材73,74は、中空空間53内に設けられずに、シート状部材50の外表面に沿って外部に露出するように設けられてもよい。
【0033】
第1シート状部材51と第2シート状部材52とを相互に接合するためには、第1シート状部材51の周縁と第2シート状部材52の周縁とが一致するように対向配置される。この状態で、第1シート状部材51および第2シート状部材52の接触部(接合領域54に対応する部分)に超音波が付与される。付与された超音波により、第1シート状部材51および第2シート状部材52の周縁(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、第1シート状部材51および第2シート状部材52の周縁同士が、接合領域54において溶着(圧着)される。なお、第1シート状部材51および第2シート状部材52の周縁同士は、熱溶着または接着剤などによって接合されてもよい。
【0034】
図3を参照して、上述したように、電子体温計100は、感温部11、操作部21、制御部22、メモリ部23、報知部24、表示部30、および電源部40を、機能ブロックとして含む。操作部21、制御部22、メモリ部23、および報知部24は、制御基板20に設けられる。
【0035】
感温部11は、腋下や舌下などの被測定部位に挟み込まれることで被測定者の体温を検出する。操作部21は、たとえば押し釦から構成され、被測定者(または電子体温計100の使用者)による操作を受け付けて、この外部からの命令を制御部22または電源部40に入力する。制御部22は、たとえばCPU(Central Processing Unit)から構成され、電子体温計100の全体を制御する。
【0036】
メモリ部23は、たとえばROM(Read-Only Memory)またはRAM(Random-Access Memory)から構成され、体温測定のための処理手順を制御部22などに実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果などを記憶したりする。報知部24は、たとえばブザーから構成され、測定が終了したことや被測定者の操作を受け付けたことなどを被測定者に知らせる。報知部24は、必要に応じて設けられるとよい。
【0037】
表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)またはフレキシブル表示素子などの表示パネル31(図1参照)を含み、測定結果などを表示する。電源部40は、たとえばボタン電池42(図1参照)を含み、制御部22(制御基板20)および表示部30等に電源としての電力を供給する。
【0038】
制御部22は、体温測定を実行するための処理回路を含んでおり、メモリ部23から読み出されたプログラムに基づいて体温を測定する。その際、制御部22は、感温部11から入力された温度データを処理することで測定結果としての体温を算出する。制御部22は、算出した体温を表示部30に表示させたり、算出した体温をメモリ部23に記憶させたり、測定が終了したことを、報知部24を用いて被測定者に知らせたりするように、電子体温計100を制御する。
【0039】
(作用・効果)
電子体温計100のシート状部材50は、各シート状部材51,52から簡素に構成される。各シート状部材51,52は、PET等から構成される極めて薄い部材である。各シート状部材51,52は、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。電子体温計100によれば、筐体の全部が成形樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0040】
電子体温計100が安価に製造されるため、電子体温計100は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計100が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計100によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0041】
電子体温計100においては、第2シート状部材52に対してサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が一方向(図1中の矢印参照)に配置可能となっている。サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74は、第2シート状部材52に対して一方向に容易に組み付けられることができる。電子体温計100によれば、組み付け作業の自動化を図ることも可能となり、さらなる製造費用の低減が可能となる。
【0042】
電子体温計100においては、形状保持部材73,74の湾曲する先端に、囲壁73T,74Tが感温部11を囲うように設けられる。囲壁73T,74Tによって、プローブ部82がたとえば被測定者の口内に挿入された際に、感温部11と歯との接触が抑制される。感温部11が誤って破損されてしまうことが抑制されている。なお、囲壁73T,74Tは必要に応じて設けられるとよい。
【0043】
上述のとおり、リード線12は、中空空間53内に配置された状態において、シート状部材50の内表面に対して(接着などによって固定されずに)摺動自在であるとよい。この場合、電子体温計100が繰り返し曲げまたはねじれ変形されたとしても、リード線12の長寿命化が図れる。
【0044】
図4を参照して、上述のとおり、電子体温計100においては、シート状部材50が可撓性を有している。電子体温計100が体温測定に供される際に、電子体温計100は長手方向に沿って弧を描くように曲げ変形されることができる(矢印AR1参照)。形状保持部材73,74(図1または図2参照)によって、電子体温計100の曲げ変形された状態が保持される。
【0045】
なお、電子体温計100の曲げ変形された状態を保持可能であれば、形状保持部材73,74はいずれか一方のみが設けられていてもよい。さらに、シート状部材50が所定の剛性を有する材質からなり、電子体温計100の曲げ変形された状態をシート状部材50そのものが保持可能の場合には、形状保持部材73,74は設けられなくてもよい。
【0046】
電子体温計100がたとえば舌下に挿入された状態において、被測定者等は、表示パネル31が視界に入るように電子体温計100を曲げ変形させる。電子体温計100の曲げ変形した状態が形状保持部材73,74(またはシート状部材50)によって保持されるため、被測定者等は体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計100に触れる必要がない。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認する際にも、電子体温計100に触れる必要がない。
【0047】
また、図4に示すように、電子体温計100が舌下に挿入された状態において、被測定者の目線と表示パネル31内に表示される文字列(測定温度など)とが平行になるように構成されているとよい。被測定者は、表示パネル31内に表示される文字列を容易に読むことが可能となる。
【0048】
また、図5に示すように、電子体温計100は、シート状部材50が可撓性を有していることによって、ねじれ変形(矢印AR2参照)されることもできる。形状保持部材73,74(図1または図2参照)によって、電子体温計100のねじれ変形された状態は保持される。
【0049】
電子体温計100がたとえば腋下に挿入された状態において、被測定者等は、表示パネル31が視界に入るように電子体温計100をねじれ変形させる。電子体温計100のねじれ変形した状態が形状保持部材73,74(またはシート状部材50)によって保持されるため、被測定者等は体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計100に触れる必要がない。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認する際にも、電子体温計100に触れる必要がない。
【0050】
したがって、電子体温計100によれば、被測定者等が体温の測定中に電子体温計100に触れる必要がないため、電子体温計100の感温部11と被測定部との接触状態(相対的な位置関係)に変化が生じることが抑制されている。電子体温計100によれば、測定精度の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
特に、シート状部材50が各シート状部材51,52から簡素に構成される。各シート状部材51,52は、PET等から構成される極めて薄い部材である。シート状部材50の簡素さが原因となって、被測定者は、表示パネル31を見るためにシート状部材50に頻繁に触れようとすることが考えられる。しかしながら、形状保持部材73,74の配設によって、電子体温計100の曲げ変形が確実に保持されるため、被測定者によってシート状部材50が触れられることは抑制されることができる。
【0052】
被測定者が表示パネル31を測定中に常時視認することが可能となるため、電子体温計100においては、ブザーなどの報知部24を設けないようにすることも可能である。この場合、電子体温計100はより一層安価に製造されることができる。
【0053】
なお、冒頭に説明した特許文献1(実開昭61−76334号公報)に開示された発明においては、電子体温計の一部(プローブ部)が、可撓性を有する柔軟な部材から構成される。特許文献1は、プローブ部を口中に入れた状態で、プローブ部を屈曲変形させることによって温度表示部を傾けて視認しやすい角度にすることができると述べている。
【0054】
しかしながら、特許文献1に開示された発明によれば、プローブ部が可撓性を有する柔軟な部材から構成されるため、プローブ部の屈曲変形した状態は保持されることができない。特許文献1に開示された発明では、体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認する際、または、体温の測定が完了したことを視覚的に確認する際には、たびたび電子体温計に触れる必要がある。
【0055】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
図6に示す電子体温計101においては、たとえば樹脂製の薄板平板状に形成された基台75上に、制御基板20、表示部30、および電源部40が固定配置される。基台75の先端側に、形状保持部材73,74が基台75と一体的に形成される。表示部30と感温部11との間の長手方向にわたって、形状保持部材73,74が設けられる。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
また、電子体温計101を曲げ変形させるために電子体温計101に外力が作用した際に、配線61,62が制御基板20、表示部30、または電源部40から外れてしまうことも抑制される。
【0057】
(第2変形例)
図7は、形状保持部材73,74を示す断面図(側面図)である。図7に示すように、形状保持部材73,74には、厚さ方向(紙面上下方向)に沿って複数の切り込み76が設けられていてもよい。当該構成によれば、形状保持部材73,74は、矢印AR3に示す方向(すなわち切り込み76が開く方向)に積極的に曲げ変形可能となり、矢印AR3とは反対の方向には曲がりにくくなる。
【0058】
図示上の便宜のため、切り込み76の開口を広く記載しているが、切り込み76の開口はできるだけ狭い方がよい。形状保持部材73,74を構成する部材の剛性を高め、切り込み76の開口を狭める(実質的にゼロにする)ことによって、形状保持部材73,74を矢印AR3方向にのみ曲げ変形可能にすることもできる。この場合において、形状保持部材73,74は、表示部30の体温が表示される面側(表示パネル31側)に曲げ変形可能に構成するとよい。
【0059】
当該構成によれば、体温測定の際において、形状保持部材73,74の曲げ変形の方向性が一方向に制限され、その反対方向への曲げ変形が抑制(または防止)される。形状保持部材73,74が繰り返し曲げ変形されることによる疲労(たとえば金属疲労)が軽減される。形状保持部材73,74における長寿命化を図ることが可能となる。
【0060】
(第3変形例)
図8に示す電子体温計102のように、シート状部材50は平面視略T字状に形成されてもよい。また、図9に示す電子体温計103のように、シート状部材50は平面視略L字状に形成されてもよい。当該構成によっても、上述の実施の形態1と同様の作用および効果を得ることができる。また、電子体温計102,103によれば、表示部30の配置可能な領域が拡大するため、表示パネル31の大きさを大きくすることもできる。
【0061】
(第4変形例)
図10は、実施の形態1の第4変形例における電子体温計104を示す平面図である。図11は、図10中のXI−XI線に関する矢視断面図である。
【0062】
図10および図11に示す電子体温計104のように、感温部11は、シート状部材50の外部に設けられていてもよい。この場合、感温部11は、ステンレスまたはアルミニウムなどからなる袋状部材55の内部に収容される。図11に示すように、袋状部材55は、接合領域54における超音波溶着によってシート状部材50と一体化され、シート状部材50の内部の中空空間53に連通している。当該構成によって、感温部11回りの熱伝導性が向上し、被測定者は体温を精度高く正確に測定することが可能となる。
【0063】
(第5変形例)
図12は、実施の形態1の第5変形例における電子体温計105の分解した状態を示す斜視図である。図13は、電子体温計105の組み立てられた状態を示す断面図である。
【0064】
図12および図13に示す電子体温計105においては、シート状部材50Aが袋状に形成される。シート状部材50Aは、開口部50Hを有する。電子体温計105が組み立てられる際には、開口部50Hから、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が挿入される。図12においては、形状保持部材73,74が便宜上実線で図示されているが、本変形例における形状保持部材73,74はシート状部材50Aの内部に配置される。なお、形状保持部材73,74はシート状部材50Aの外部に配置されてもよい。
【0065】
図13を参照して、電子体温計105が組み立てられた状態においては、開口部50Hは超音波溶着などによって閉塞され、接合領域54が形成される。電子体温計105(シート状部材50A)の表面が平滑に構成されるため、電子体温計105をエタノールなどを使用して洗浄消毒する際における衛生面が一層向上する。
【0066】
電源部40においては、超音波溶着用リブを有する電池ケースに、ボタン電池42が収容されるように構成されてもよい。この電池ケースは、たとえばABS樹脂から構成される。電池ケースに設けられた超音波溶着用リブを活用して開口部50Hが溶着されることによって、開口部50Hにおける封止性および接合強度が向上する。
【0067】
なお、袋状から構成されるシート状部材50Aについては、電子体温計105の曲げおよびねじれ変形状態が保持可能という技術的思想からは独立した発明としても成立し得るものである。袋状から構成されるシート状部材50Aが電子体温計に採用されることによって、洗浄消毒後における衛生面の向上といった課題が解決し得るものである。
【0068】
[実施の形態2]
図14を参照して、本実施の形態における電子体温計106について説明する。図14は、電子体温計106の分解した状態を示す斜視図である。
【0069】
電子体温計106においては、可撓性を有する第1シート状部材51Bおよび可撓性を有する第2シート状部材52Bからなるシート状部材50Bが用いられる。電子体温計106においては、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40がこの順に並んで配置される。
【0070】
第1シート状部材51Bは、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによって構成される。
【0071】
第1シート状部材51Bの厚さは、たとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。第1シート状部材51Bは、裁断などによって製造されることができる。第1シート状部材51Bは、サーミスタ10が配置される側に向かって徐々に幅が狭くなるように略テーパー状に構成される。
【0072】
第1シート状部材51Bには、表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hが設けられる。開口部51H内には、樹脂などから構成される透明保護部材56が配置される。なお、第1シート状部材51Bが透明性を有する場合、開口部51Hおよび透明保護部材56は不要である。表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hは、次述する第2シート状部材52Bに設けられてもよい。この場合、表示部30の表示パネル31は、第2シート状部材52B側に向かって配置される(図14とは表裏反対に示すように配置される)。
【0073】
第2シート状部材52Bは、たとえばPET、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、またはPP(polypropylene)等の熱可塑性を有する部材から、たとえば真空成型によって容器状に構成される。第2シート状部材52Bの厚さは、たとえば0.5mm〜1.0mmである。
【0074】
第2シート状部材52Bは、電子体温計106の長手方向に沿って延在する底面部52S,52R、底面部52S,52Rの周縁から起立する環状壁部52U、および、環状壁部52Uの起立方向の先端に設けられた上端部52Kを有する。上端部52Kは、フランジ状に形成されてもよい。
【0075】
底面部52Sは、電子体温計106の一端側(先端側)に位置する。底面部52Rは、底面部52Sに連続し、電子体温計106の他端側(後端側)に位置する。電子体温計106が被測定者の腋下または舌下等に向かって挿入され易いように、底面部52Sは底面部52Rに比べて底浅に形成されている(底上げされている)。
【0076】
底面部52Sの略中央には、電子体温計106の長手方向に沿って長溝52Tが設けられる。電子体温計106が組み立てられた状態においては、長溝52Tに、サーミスタ10(感温部11およびリード線12)が収容される。この場合、リード線12は長溝52Tの内周面に対して摺動自在であるとよい。なお、長溝52Tは必要に応じて設けられるとよい。形状保持部材73,74は、長溝52Tの両側にそれぞれ配置される。
【0077】
底面部52Rには、区画壁52M,52Nが立設される。区画壁52Mと底面部52Sの後端との間に、制御基板20が配置される。区画壁52Mと区画壁52Nとの間に表示部30が配置され、区画壁52Nと環状壁部52Uとに囲まれる領域に電源部40が配置される。電子体温計106が組み立てられた状態において、制御基板20、表示部30および電源部40の位置ずれは抑制される。
【0078】
第2シート状部材52Bにおける環状壁部52Uおよび上端部52Kは、第2シート状部材52Bに対してサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が一方向(図14中の矢印参照)に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。
【0079】
電子体温計106が組み立てられる際には、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が第2シート状部材52B内に配置される。その状態で、第1シート状部材51が第2シート状部材52Bの上端部52Kに接合される。当該接合によって、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40が略気密状に封止された中空空間が形成される。
【0080】
第1シート状部材51Bと上端部52Kとを相互に接合するためには、第1シート状部材51Bと第2シート状部材52Bの上端部52Kとが対向するように配置される。この状態で、第1シート状部材51と上端部52Kとの接触部に超音波が付与される。付与された超音波により、第1シート状部材51B(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、第1シート状部材51Bが第2シート状部材52Bの上端部52Kに溶着(圧着)される。
【0081】
(作用・効果)
電子体温計106のシート状部材50Bは、第1シート状部材51Bおよび第2シート状部材52Bから簡素に構成される。第1シート状部材51Bは、PET等から構成される極めて薄い部材である。第1シート状部材51Bは、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。第2シート状部材52Bも、PET等から真空成形などによって構成される極めて薄い部材であるため、安価に準備されることができる。電子体温計106によれば、筐体の全部が成形樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0082】
電子体温計106が安価に製造されるため、電子体温計106は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計106が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計106によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0083】
電子体温計106においては、第2シート状部材52Bにおける環状壁部52Uおよび上端部52Kが、第2シート状部材52Bに対してサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74が一方向(図14中の矢印参照)に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。当該開口に対して、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および形状保持部材73,74は一方向に容易に組み付けられることができる。電子体温計106によれば、組み付け作業の自動化を図ることも可能となり、さらなる製造費用の低減が可能となる。
【0084】
図15に示すように、電子体温計106においては、シート状部材50Bが可撓性を有している。電子体温計106が体温測定に供される際に、電子体温計106は長手方向に沿って弧を描くように曲げ変形されることができる(矢印AR4参照)。また、電子体温計106が体温測定に供される際に、電子体温計106はねじれ変形されることもできる。形状保持部材73,74(図14参照)によって、電子体温計106の曲げおよびねじれ変形された状態が保持される。
【0085】
なお、電子体温計106の曲げおよびねじれ変形された状態を保持可能であれば、形状保持部材73,74はいずれか一方のみが設けられていてもよい。さらに、図16に示す電子体温計107ように、シート状部材50Bが所定の剛性を有する材質からなり、電子体温計107の曲げおよびねじれ変形された状態をシート状部材50Bそのものが保持可能の場合には、形状保持部材73,74は設けられなくてもよい。
【0086】
電子体温計106,107が被測定部に配置された状態において、被測定者等は、表示パネル31が視界に入るように電子体温計106,107を曲げ変形させる。電子体温計106,107の曲げ変形した状態が形状保持部材73,74によって保持されるため、被測定者等は体温の測定中に上昇しつつある測定値を確認するために、たびたび電子体温計106,107に触れる必要がない。被測定者等は、体温の測定が完了したか否かを視覚的に確認する際にも、電子体温計106,107に触れる必要がない。
【0087】
また、電子体温計106,107が舌下に挿入された状態において、被測定者の目線と表示パネル31内に表示される文字列(測定温度など)とが平行になるように構成されているとよい。被測定者は、表示パネル31内に表示される文字列を容易に読むことが可能となる。
【0088】
したがって、電子体温計106,107によれば、被測定者等が体温の測定中に電子体温計106,107に触れる必要がないため、電子体温計106,107の感温部11と被測定部との接触状態(相対的な位置関係)に変化が生じることが抑制されている。電子体温計106,107によれば、測定精度の低下を抑制することが可能となる。
【0089】
被測定者が表示パネル31を測定中に常時視認することが可能となるため、電子体温計106,107においては、ブザーなどの報知部24を設けないようにすることも可能である。この場合、電子体温計106,107はより一層安価に製造されることができる。
【0090】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
10 サーミスタ、11 感温部、12 リード線、20 制御基板、21 操作部、22 制御部、23 メモリ部、24 報知部、30 表示部、31 表示パネル、40 電源部、41 電極端子、42 ボタン電池、43 樹脂、50,50A,50B シート状部材、50H,51H 開口部、51,51B 第1シート状部材、52,52B 第2シート状部材、52K 上端面、52M,52N 区画壁、52R,52S 底面部、52T 長溝、52U 環状壁部、53 中空空間、54 接合領域、55 袋状部材、56 透明保護部材、61,62 配線、73,74 形状保持部材、73T,74T 囲壁、75 基台、82 プローブ部、100〜107 電子体温計、AR1〜AR4 矢印。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の体温を測定する電子体温計であって、
前記体温を測定する感温部、および、前記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、
前記リード線の他端が接続された制御基板と、
前記制御基板に接続され、前記サーミスタによって測定された前記体温を表示する表示部と、
前記制御基板に電力を供給する電源部と、
長手方向に沿って可撓性を有し、前記サーミスタ、前記制御基板、前記表示部、および前記電源部を内部に配置するシート状部材と、を備え、
前記電子体温計は、前記長手方向に沿って曲げ変形された状態およびねじれ変形された状態が保持される、
電子体温計。
【請求項2】
前記シート状部材によって、前記電子体温計の前記曲げ変形された状態および前記ねじれ変形された状態が保持される、
請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記長手方向において前記サーミスタと前記表示部との間に形状保持部材が設けられ、
前記形状保持部材によって、前記電子体温計の前記曲げ変形された状態および前記ねじれ変形された状態が保持される、
請求項1または2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記形状保持部材の一部は、前記感温部の周囲を部分的に覆うように設けられる、
請求項3に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記形状保持部材によって、前記電子体温計の前記曲げ変形された状態が保持され、
前記形状保持部材は、前記表示部の前記体温が表示される面側にのみ曲げ変形する、
請求項3または4に記載の電子体温計。
【請求項6】
前記シート状部材は、内部に中空空間を形成し、
前記リード線は、前記中空空間内において前記シート状部材の内表面に対して摺動自在に配置される、
請求項1から5のいずれかに記載の電子体温計。
【請求項1】
被測定者の体温を測定する電子体温計であって、
前記体温を測定する感温部、および、前記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、
前記リード線の他端が接続された制御基板と、
前記制御基板に接続され、前記サーミスタによって測定された前記体温を表示する表示部と、
前記制御基板に電力を供給する電源部と、
長手方向に沿って可撓性を有し、前記サーミスタ、前記制御基板、前記表示部、および前記電源部を内部に配置するシート状部材と、を備え、
前記電子体温計は、前記長手方向に沿って曲げ変形された状態およびねじれ変形された状態が保持される、
電子体温計。
【請求項2】
前記シート状部材によって、前記電子体温計の前記曲げ変形された状態および前記ねじれ変形された状態が保持される、
請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記長手方向において前記サーミスタと前記表示部との間に形状保持部材が設けられ、
前記形状保持部材によって、前記電子体温計の前記曲げ変形された状態および前記ねじれ変形された状態が保持される、
請求項1または2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記形状保持部材の一部は、前記感温部の周囲を部分的に覆うように設けられる、
請求項3に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記形状保持部材によって、前記電子体温計の前記曲げ変形された状態が保持され、
前記形状保持部材は、前記表示部の前記体温が表示される面側にのみ曲げ変形する、
請求項3または4に記載の電子体温計。
【請求項6】
前記シート状部材は、内部に中空空間を形成し、
前記リード線は、前記中空空間内において前記シート状部材の内表面に対して摺動自在に配置される、
請求項1から5のいずれかに記載の電子体温計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−150040(P2012−150040A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9752(P2011−9752)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]