説明

電子体温計

【課題】表面を構成する部材を容易に交換することが可能な電子体温計を得る。
【解決手段】被測定者の体温を測定する電子体温計100は、上記体温を測定する感温部11、および、感温部12に一端が接続されたリード線12を含むサーミスタ10と、リード線12の他端が接続された制御基板20と、制御基板20に接続され、サーミスタ10によって測定された上記体温を表示する表示部30と、制御基板20に電力を供給する電源部40と、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40を、内部に形成された空間に収容する袋状部材92と、袋状部材92を内部に配置するハウジング50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子体温計は、腋下または舌下等に挟み込まれた状態で被測定者の体温を測定する。下記の特許文献1〜5に開示されるように、さまざまな種類の電子体温計が知られている。
【0003】
特許文献1は、測定部位になじむ程度の柔軟性を有する電子体温計を開示している。特許文献2は、信号処理部を含む本体とプローブとが分離可能な測温用プローブを開示している。特許文献3は、感温部と表示本体部とが分離自在に構成された電子体温計を開示している。
【0004】
特許文献4は、被測定物に貼り付けられる測定装置と、磁場を測定装置に提供する受信装置と、を備えるシート式電子温度計を開示している。特許文献5は、サブケースの幅広面に対して各部品の組付方向が垂直一方向であり、内部構成部材が自動組立によりサブケースユニットとして組み付けられる電子体温計を開示している。
【0005】
一般的に、電子体温計には、サーミスタ、制御基板、表示器、および電源部等が内蔵される。サーミスタは、被測定者の体温を検知する。電源部は、電池および端子等を含む。電源部は、制御基板および表示器等を駆動するために、制御基板および表示器等に電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−133030号公報
【特許文献2】特開平2−132333号公報
【特許文献3】特開昭61−296228号公報
【特許文献4】特開2003−329517号公報
【特許文献5】特開平10−48060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子体温計を使用して被測定者の体温を測定する際、電子体温計の表面は被測定者に接触する。電子体温計が繰り返し使用されることによって、電子体温計の表面は劣化する。また、電子体温計を使用して感染症患者などの体温を測定する際には、電子体温計の表面に病原菌などが付着することがある。電子体温計の表面が劣化したり、電子体温計の表面に病原菌などが付着したりした場合には、電子体温計の表面を構成する部材の交換が望まれる。
【0008】
本発明は、電子体温計の表面を構成する部材を容易に交換することが可能な電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく電子体温計は、被測定者の体温を測定する電子体温計であって、上記体温を測定する感温部、および、上記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、上記リード線の他端が接続された制御基板と、上記制御基板に接続され、上記サーミスタによって測定された上記体温を表示する表示部と、上記制御基板に電力を供給する電源部と、上記サーミスタ、上記制御基板、上記表示部、および上記電源部を、内部に形成された空間に収容する袋状部材と、上記袋状部材を内部に配置するハウジングと、を備える。
【0010】
好ましくは、上記感温部は、上記空間を形成する上記袋状部材の内表面と接触しているか、若しくは、所定の熱伝導性を有する充填部材を介して上記袋状部材の上記内表面と接触しており、上記内表面に対応する上記袋状部材の外表面は、上記ハウジングの内周面と接触している。好ましくは、上記袋状部材の内部は、略真空状に封止されている。好ましくは、上記袋状部材の内部には、当該内部が膨らむように気体が充填されている。
【0011】
好ましくは、上記袋状部材を内部に配置する上記ハウジングは、当該電子体温計の長手方向に沿って延在する底面部、および、上記底面部の周縁から起立する環状壁部を有するケース体と、外周部が上記環状壁部の起立方向の先端に接合されるシート状部材と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子体温計の表面を構成する部材を容易に交換することが可能な電子体温計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1における電子体温計の分解された状態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1における電子体温計の組み立てられた状態を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1における電子体温計に内蔵される内蔵パッケージを示す斜視図である。
【図4】図2中のIV−IV線に関する矢視断面図である。
【図5】実施の形態1における電子体温計の機能ブロックを示す図である。
【図6】実施の形態1の第1変形例における電子体温計を示す断面図である。
【図7】実施の形態1の第2変形例における電子体温計を示す断面図である。
【図8】実施の形態2における電子体温計の分解された状態を示す斜視図である。
【図9】実施の形態2における電子体温計の組み立てられた状態を示す平面図である。
【図10】実施の形態2の変形例における電子体温計の分解した状態を示す斜視図である。
【図11】実施の形態3における電子体温計に内蔵される内蔵パッケージの分解した状態を示す斜視図である。
【図12】実施の形態3における電子体温計に内蔵される内蔵パッケージの組み立てられた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。特に制限が無い限り、各実施の形態に示す構成に示す構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
【0015】
[実施の形態1]
図1〜図5を参照して、本実施の形態における電子体温計100について説明する。図1は、電子体温計100の分解された状態を示す斜視図である。図2は、電子体温計100の組み立てられた状態を示す斜視図である。図3は、電子体温計100に内蔵される内蔵パッケージ95(詳細は後述する)を示す斜視図である。図4は、図2中のIV−IV線に関する矢視断面図である。図5は、電子体温計100の機能ブロックを示す図である。
【0016】
図1に示すように、電子体温計100は、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、袋状部材92、およびハウジング50を備える。図2に示すように、電子体温計100が組み立てられた状態においては、電子体温計100の一端側(先端側)にプローブ部82が形成される。
【0017】
図1を再び参照して、制御基板20、表示部30、および電源部40は、平面視矩形状の基板29上にそれぞれ実装される。サーミスタ10は、いわゆるラジアルリード型であり、被測定者の体温を計測する感温部11と、一端が感温部11に接続されたリード線12とを含む。リード線12の他端は、制御基板20に接続される。
【0018】
制御基板20は、所定の位置に、操作部(図5における操作部21)、制御部(図5における制御部22)、メモリ部(図5におけるメモリ部23)、および報知部(図5における報知部24)を有する。操作部は、制御基板20の表面の所定の位置(制御基板20の表面または側面など)に、外部から押圧可能に配置される。
【0019】
表示部30は、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネル31を有する。表示パネル31に、サーミスタ10によって測定された被験者の体温などが表示される。
【0020】
電源部40は、ボタン電池42および対向配置された電極端子41を有する。対向配置された電極端子41同士は、樹脂43によって相互に位置決めされる。電極端子41も、基板29によって制御基板20に接続される。ボタン電池42は、電極端子41間に配置され、電極端子41および基板29を通して、制御基板20および制御基板20に接続された表示部30に電力を供給する。
【0021】
電子体温計100においては、電子体温計100(ハウジング50)の長手方向に沿って、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、および電源部40がこの順に並んで配置される。この順序は適宜変更されてもよい。
【0022】
袋状部材92は、たとえば厚さが0.01mm〜0.05mmのナイロン製(またはポリエチレン製、ポリウレタン製)の部材である。本実施の形態における袋状部材92は、全体として略楕円筒状に構成され、先端92U側が閉塞され、後端に開口部92Hを有する。
【0023】
図3に示すように、袋状部材92の先端92U側は、袋状部材92の後端(開口部92H)側に比べて細径に構成される。袋状部材92の先端92U側には、サーミスタ10が挿入(収容)される。袋状部材92の後端(開口部92H)側には、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29が挿入(収容)される。
【0024】
サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29が袋状部材92の内部に配置された状態で、開口部92H(図1参照)は超音波溶着などによって閉塞される。開口部92Hは、熱溶着または接着剤などによって閉塞されてもよい。当該閉塞によって、袋状部材92の後端に接合部92Vが形成され、袋状部材92の内部に空間93が形成される。さらに、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29を内部の空間93に収容する内蔵パッケージ95が構成される。なお、図1においては、内蔵パッケージ95の分解された状態が図示されている。
【0025】
図1を再び参照して、ハウジング50は、シート状部材51およびケース体52を有する。シート状部材51は、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによって構成される。
【0026】
シート状部材51の厚さは、たとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。シート状部材51は、裁断などによって製造されることができる。シート状部材51は、サーミスタ10が配置される側(プローブ部82側)に向かって徐々に幅が狭くなるように略テーパー状に構成される。
【0027】
シート状部材51には、表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hが設けられる。開口部51H内には、樹脂などから構成される透明保護部材56が配置される。なお、シート状部材51が透明性を有する場合、開口部51Hおよび透明保護部材56は不要である。表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hは、次述するケース体52に設けられてもよい。この場合、表示部30は基板29の裏面側に露出するように設けられ、表示パネル31はケース体52側に向かって配置される。
【0028】
ケース体52は、たとえばPET、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、またはPP(polypropylene)等の熱可塑性を有する部材から真空成型等によって容器状に構成される。ケース体52の厚さは、たとえば0.5mm〜1.0mmである。
【0029】
図1および図4を参照して、ケース体52は、電子体温計100の長手方向に沿って延在する底面部52S,52R、底面部52S,52Rの周縁から起立する環状壁部52U、および、環状壁部52Uの起立方向の先端に設けられた上端部52Kを有する。本実施の形態における上端部52Kは、環状壁部52Uの起立方向の先端からケース体52の外側に向かってフランジ状に延設され、全体として環状を呈している。
【0030】
底面部52Sは、電子体温計100の一端側(先端側)に位置し、断面視(図4参照)略凹状を呈する。底面部52Rは、底面部52Sに連続し、電子体温計100の他端側(後端側)に位置する。電子体温計100が被測定者の腋下または舌下等に向かって挿入され易いように、底面部52Sは底面部52Rに比べて底浅に形成されている(底上げされている)。
【0031】
電子体温計100が組み立てられる際には、内蔵パッケージ95が、ケース体52の底面部52S,52R上に配置される。具体的には、サーミスタ10(感温部11およびリード線12)を収容する袋状部材92の先端92Uが、底面部52S上に配置される。制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29を収容する袋状部材92の後端(接合部92V)側が、底面部52R上に配置される。この状態で、シート状部材51がケース体52の上端部52Kに接合される。当該接合によって、内蔵パッケージ95が略気密状に封止された空間53(図4参照)が形成される。
【0032】
シート状部材51と上端部52Kとを相互に接合するためには、シート状部材51とケース体52の上端部52Kとが対向するように配置される。この状態で、シート状部材51と上端部52Kとの接触部に超音波が付与される。付与された超音波により、シート状部材51(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、シート状部材51がケース体52の上端部52Kに溶着(圧着)される。なお、シート状部材51とケース体52の上端部52Kとは、熱溶着または接着剤などによって接合されてもよい。
【0033】
図4に示すように、感温部11と、袋状部材92の内表面92Sの少なくとも一部とは相互に接触しているとよい(本実施の形態においては符号92S,92Sが指し示す2箇所において、感温部11と内表面92Sとが相互に接触している)。さらに、感温部11が接触している内表面92Sに対応する袋状部材92の外表面92Tが、シート状部材51の内周面51Sまたはケース体52の底面部52S(内周面)に接触しているとよい。当該構成によれば、ハウジング50(シート状部材51またはケース体52)および袋状部材92(先端92U)から感温部11への熱伝達性が高まり、感温部11における熱応答性を向上させることができる。
【0034】
図5を参照して、上述したように、電子体温計100は、感温部11、操作部21、制御部22、メモリ部23、報知部24、表示部30、および電源部40を、機能ブロックとして含む。操作部21、制御部22、メモリ部23、および報知部24は、制御基板20に設けられる。
【0035】
感温部11は、腋下や舌下などの被測定部位に挟み込まれることで被測定者の体温を検出する。操作部21は、たとえば押し釦から構成され、被測定者(または電子体温計100の使用者)による操作を受け付けて、この外部からの命令を制御部22または電源部40に入力する。制御部22は、たとえばCPU(Central Processing Unit)から構成され、電子体温計100の全体を制御する。
【0036】
メモリ部23は、たとえばROM(Read-Only Memory)またはRAM(Random-Access Memory)から構成され、体温測定のための処理手順を制御部22などに実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果などを記憶したりする。報知部24は、たとえばブザーから構成され、測定が終了したことや被測定者の操作を受け付けたことなどを被測定者に知らせる。報知部24は、必要に応じて設けられるとよい。
【0037】
表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネル31(図1参照)を含み、測定結果などを表示する。電源部40は、たとえばボタン電池42(図1参照)を含み、制御部22に電源としての電力を供給する。
【0038】
制御部22は、体温測定を実行するための処理回路を含んでおり、メモリ部23から読み出されたプログラムに基づいて体温を測定する。その際、制御部22は、感温部11から入力された温度データを処理することで測定結果としての体温を算出する。制御部22は、算出した体温を表示部30に表示させたり、算出した体温をメモリ部23に記憶させたり、測定が終了したことを、報知部24を用いて被測定者に知らせたりするように、電子体温計100を制御する。
【0039】
(作用・効果)
電子体温計100のハウジング50は、シート状部材51およびケース体52から簡素に構成される。シート状部材51は、PET等から構成される極めて薄い部材である。シート状部材51は、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。ケース体52も、PET等から真空成型などによって構成される極めて薄い部材であるため、安価に準備されることができる。電子体温計100によれば、筐体の全部が成形樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0040】
電子体温計100が安価に製造されるため、電子体温計100は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計100が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計100によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0041】
また、電子体温計100が繰り返し使用されることによって、電子体温計100のハウジング50は劣化する。電子体温計100を使用して感染症患者などの体温を測定する際には、電子体温計100のハウジング50(プローブ部82)に病原菌などが付着することがある。ハウジング50が劣化したり、ハウジング50に病原菌などが付着したりした場合、電子体温計100においてはハウジング50のみを交換し、内蔵パッケージ95を再利用することができる。
【0042】
内蔵パッケージ95においては、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29が、袋状部材92によって一体化されている。電子体温計100においては、ハウジング50を交換して内蔵パッケージ95を再利用する際の利便性が高い。袋状部材92の表面をエタノールなどで洗浄した後に、内蔵パッケージ95を再利用してもよい。
【0043】
また、仮にハウジング50内部に水などが浸入しても、内蔵パッケージ95においては、袋状部材92よってサーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29が覆われている。電子体温計100によれば、これらの内蔵機器(内蔵機器18)が水の浸入によって故障することも抑制可能となる。なお、必要に応じて内蔵パッケージ95のみを使用して、(ハウジング50を用いないで)被測定者の体温を測定することも可能である。
【0044】
上述のとおり、感温部11は、袋状部材92の内表面92Sの少なくとも一部に接触し、さらに、感温部11が接触している内表面92Sに対応する袋状部材92の外表面92Tが、シート状部材51の内周面51Sまたはケース体52の底面部52S(内周面)に接触しているとよい(図4参照)。当該構成によれば、ハウジング50(シート状部材51またはケース体52)および袋状部材92(先端92U)から感温部11への熱伝達性が高まり、感温部11における熱応答性を向上させることができる。
【0045】
袋状部材92の内部には、当該内部が膨らむように気体(空気など)が充填されているとよい。換言すると、袋状部材92の内気圧が袋状部材92の外気圧よりも高くなるように、袋状部材92の内部には気体が充填されているとよい。当該構成によれば、たとえば電子体温計100が落下した際に、袋状部材92に充填された気体の圧力により生じる弾性によって、内蔵パッケージ95内部の機器(制御基板20、表示部30、または電源部40など)への衝撃が緩和される。
【0046】
また、内蔵パッケージ95内部の機器(制御基板20、表示部30、または電源部40)の破損によって所定の突起物が形成される場合がある。この場合、突起物が、袋状部材92内部から袋状部材92に穴を開け、内部に充填されていた空気が外部に漏れ出る。電子体温計100の使用者等が袋状部材92内の空気が漏れ出て袋状部材92がしぼんだ状態となっていることに気付くことによって、内蔵パッケージ95内部の機器の破損を早期に発見することもできる。電子体温計100の使用者等は、袋状部材92内の空気の漏出状況から、電子体温計100(または内蔵パッケージ95)の使用状態(未使用か否か、または使用された期間など)を推測することも可能となる。
【0047】
袋状部材92の内部は、略真空状に封止されていてもよい。袋状部材92の内部に気体が充填されている上記の場合と同様に、内蔵パッケージ95内部の機器(制御基板20、表示部30、または電源部40)の破損によって所定の突起物が形成される場合がある。この場合も、突起物が、袋状部材92内部から袋状部材92に穴を開け、内部の真空が破壊される。
【0048】
電子体温計100の使用者等が袋状部材92内の真空が破壊されている状態となっていることに気付くことによって、内蔵パッケージ95内部の機器の破損を早期に発見することもできる。電子体温計100の使用者等は、袋状部材92内部への空気の侵入状況から、電子体温計100(または内蔵パッケージ95)の使用状態(未使用か否か、または使用された期間など)を推測することも可能となる。
【0049】
[実施の形態1の変形例]
(第1変形例)
図6を参照して、感温部11の周囲と袋状部材92(先端92U)との間には、シリコンゲルなどの充填部材16が充填されていてもよい。感温部11への熱伝導性が向上し、袋状部材92(先端92U)の内部において感温部11の位置ずれなどが防止される。また、この場合、感温部11は、袋状部材92の内表面92Sの少なくとも一部に充填部材16を介して接触し、さらに、感温部11が充填部材16を介して接触している内表面92Sに対応する袋状部材92の外表面92Tが、シート状部材51の内周面51Sまたはケース体52の底面部52S(内周面)に接触しているとよい。
【0050】
当該構成によれば、ハウジング50(シート状部材51またはケース体52)および袋状部材92(先端92U)から感温部11への熱伝達性が高まり、感温部11における熱応答性を向上させることができる。
【0051】
(第2変形例)
図7を参照して、感温部11の周囲のみが略真空状に封止されていてもよい。この場合、感温部11の周囲は袋状部材92(先端92U)によって気密状に覆われる。この場合も、感温部11への熱伝導性が向上する。
【0052】
[実施の形態2]
図8は、本実施の形態における電子体温計101の分解された状態を示す斜視図である。図9は、電子体温計101の組み立てられた状態を示す平面図である。
【0053】
電子体温計101においては、ハウジング50Aが、それぞれ同一形状に形成された第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aを有する。第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aは、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによってそれぞれ構成される。
【0054】
第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aの厚さは、それぞれたとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aは、裁断などによって製造されることができる。第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aは、サーミスタ10が配置される側に向かって徐々に幅が狭くなるように、平面視略U字形状に構成される。
【0055】
第1シート状部材51Aは、透明性を有する部材から構成されるとよい。第1シート状部材51Aが透明性を有する部材から構成されない場合、第1シート状部材51Aの一部は、表示部30の表示パネル31を外部から視認可能なように、透明性を有する保護部材が設けられるとよい。
【0056】
電子体温計101が組み立てられる際には、内蔵パッケージ95が、第2シート状部材52A上に配置される(図8中の矢印参照)。本実施の形態においては、サーミスタ10を含む袋状部材92の先端92U側が、第2シート状部材52Aの長手方向に沿って、第2シート状部材52Aの一端側に配置される。制御基板20、表示部30、および電源部40などを含む袋状部材92の後端側が、第2シート状部材52Aの長手方向に沿って、第2シート状部材52Aの他端側に配置される。
【0057】
その状態で、第1シート状部材51Aの周縁と第2シート状部材52Aの周縁とが相互に接合される。当該接合によって、第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aの外縁に環状の接合領域54(図9参照)が形成され、内蔵パッケージ95が略気密状に封止された空間53(図9参照)が形成される。
【0058】
第1シート状部材51Aと第2シート状部材52Aとを相互に接合するためには、第1シート状部材51Aの周縁と第2シート状部材52Aの周縁とが一致するように対向配置される。この状態で、第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aの接触部(接合領域54に対応する部分)に超音波が付与される。付与された超音波により、第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aの周縁(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aの周縁同士が、接合領域54において溶着(圧着)される。なお、第1シート状部材51Aおよび第2シート状部材52Aの周縁同士は、熱溶着または接着剤などによって接合されてもよい。
【0059】
(作用・効果)
電子体温計101のハウジング50Aは、各シート状部材51A,52Aから簡素に構成される。各シート状部材51A,52Aは、PET等から構成される極めて薄い部材である。各シート状部材51A,52Aは、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。電子体温計101によれば、筐体の全部が成形樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0060】
上述の実施の形態1における電子体温計100と同様に、電子体温計101が安価に製造されるため、電子体温計101は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。また、ハウジング50Aが劣化したり、ハウジング50Aに病原菌などが付着したりした場合、電子体温計101においてはハウジング50Aのみを交換し、内蔵パッケージ95を再利用することができる。
【0061】
[実施の形態2の変形例]
図10は、実施の形態2の変形例における電子体温計102の分解した状態を示す斜視図である。電子体温計102においては、ハウジング50Bが袋状に形成される。ハウジング50Bは、開口部50Hを有する。電子体温計102が組み立てられる際には、開口部50Hから、内蔵パッケージ95が挿入される。
【0062】
電子体温計102が組み立てられた状態においては、開口部50Hは超音波溶着などによって閉塞される。電子体温計102(ハウジング50B)の表面が平滑に構成されるため、電子体温計102をエタノールなどを使用して洗浄消毒する際における衛生面が一層向上する。
【0063】
なお、袋状から構成されるハウジング50Bについては、ハウジング50B内に内蔵パッケージ95が設けられているという技術的思想からは独立した発明としても成立し得るものである。袋状から構成されるハウジング50Bが電子体温計に採用されることによって、洗浄消毒後における衛生面の向上といった課題が解決し得るものである。
【0064】
[実施の形態3]
図11は、本実施の形態における電子体温計の内蔵パッケージ95Aの分解した状態を示す斜視図である。図12は、内蔵パッケージ95Aの組み立てた状態を示す平面図である。
【0065】
本実施の形態における電子体温計においては、内蔵パッケージ95Aの袋状部材92Aが、それぞれ同一形状に形成された第1シート状部材97および第2シート状部材98を有する。第1シート状部材97および第2シート状部材98は、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによってそれぞれ構成される。
【0066】
第1シート状部材97および第2シート状部材98の厚さは、それぞれたとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板が貼付または印刷されることができる。第1シート状部材97および第2シート状部材98は、裁断などによって製造されることができる。第1シート状部材97および第2シート状部材98は、サーミスタ10が配置される側に向かって徐々に幅が狭くなるように、平面視略U字形状に構成される。
【0067】
第1シート状部材97は、透明性を有する部材から構成されるとよい。第1シート状部材97が透明性を有する部材から構成されない場合、第1シート状部材97の一部は、表示部30の表示パネル31を外部から視認可能なように、透明性を有する保護部材が設けられるとよい。
【0068】
内蔵パッケージ95Aが組み立てられる際には、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29が、第2シート状部材52A上に配置される(図11中の矢印参照)。その状態で、第1シート状部材97の周縁と第2シート状部材98の周縁とが相互に接合される。当該接合によって、第1シート状部材97および第2シート状部材98の相互の接合によって、袋状部材92Aが形成される。第1シート状部材97および第2シート状部材98の外縁に環状の接合領域99(図12参照)が形成され、内部が略気密状に封止された空間93(図12参照)が形成される。
【0069】
第1シート状部材97と第2シート状部材98とを相互に接合するためには、第1シート状部材97の周縁と第2シート状部材98の周縁とが一致するように対向配置される。この状態で、第1シート状部材97および第2シート状部材98の接触部(接合領域99に対応する部分)に超音波が付与される。付与された超音波により、第1シート状部材97および第2シート状部材98の周縁(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、第1シート状部材97および第2シート状部材98の周縁同士が、接合領域99において溶着(圧着)される。
【0070】
このようにして得られた内蔵パッケージ95Aによっても、上述の実施の形態1〜2における電子体温計と同様に用いられることによって、上述の実施の形態1〜2と同様の作用および効果を得ることが可能となる。
【0071】
以上、本発明に基づいた各実施の形態について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
10 サーミスタ、11 感温部、12 リード線、16 充填部材、18 内蔵機器、20 制御基板、21 操作部、22 制御部、23 メモリ部、24 報知部、29 基板、30 表示部、31 表示パネル、40 電源部、41 電極端子、42 ボタン電池、43 樹脂、50,50A,50B ハウジング、50H,51H,92H 開口部、51 シート状部材、51A,97 第1シート状部材、51S 内周面、52 ケース体、52A,98 第2シート状部材、52K 上端部、52R 底面部、52S 底面部(内周面)、52U 環状壁部、53,93 空間、54,99 接合領域、56 透明保護部材、82 プローブ部、92,92A 袋状部材、92S 内表面、92T 外表面、92U 先端、92V 接合部、95,95A 内蔵パッケージ、100,101,102 電子体温計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の体温を測定する電子体温計であって、
前記体温を測定する感温部、および、前記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、
前記リード線の他端が接続された制御基板と、
前記制御基板に接続され、前記サーミスタによって測定された前記体温を表示する表示部と、
前記制御基板に電力を供給する電源部と、
前記サーミスタ、前記制御基板、前記表示部、および前記電源部を、内部に形成された空間に収容する袋状部材と、
前記袋状部材を内部に配置するハウジングと、を備える、
電子体温計。
【請求項2】
前記感温部は、前記空間を形成する前記袋状部材の内表面と直接接触しているか、若しくは、所定の熱伝導性を有する充填部材を介して前記袋状部材の前記内表面と接触しており、
前記内表面に対応する前記袋状部材の外表面は、前記ハウジングの内周面と接触している、
請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記袋状部材の内部は、略真空状に封止されている、
請求項1または2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記袋状部材の内部には、当該内部が膨らむように気体が充填されている、
請求項1または2に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記袋状部材を内部に配置する前記ハウジングは、
当該電子体温計の長手方向に沿って延在する底面部、および、前記底面部の周縁から起立する環状壁部を有するケース体と、
外周部が前記環状壁部の起立方向の先端に接合されるシート状部材と、を含む、
請求項1から4のいずれかに記載の電子体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−150041(P2012−150041A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9753(P2011−9753)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】