説明

電子体温計

【課題】電子体温計を機械的に組み立てる際における効率を一層向上させる。
【解決手段】被測定者の体温を測定する電子体温計100は、上記体温を測定する感温部11および感温部11に一端が接続されたリード線12を含むサーミスタ10と、内部に中空空間を有し、サーミスタ10を上記中空空間内に配置するハウジング50と、備え、ハウジング50は、第1ハウジング51と、第1ハウジング51に接合されることによって上記中空空間を形成する第2ハウジング52と、を含み、第2ハウジング52には、感温部11を収容し、第1ハウジング51から遠ざかる方向に膨出するように形成された皿状収容領域60が設けられ、皿状収容領域60内に収容された感温部11と皿状収容領域60の内周面とは、一部が相互に接触し、残部は間隔を空けて相互に離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子体温計は、腋下または舌下等に挟み込まれた状態で、被測定者の体温を測定する。下記の特許文献1〜5に開示されるように、種々の電子体温計が知られている。
【0003】
実開昭59−087639号公報(特許文献1)および特開昭61−047527号公報(特許文献2)には、防水性の向上を図った電子体温計が開示される。
【0004】
実開昭62−096522号公報(特許文献3)および特開平10−048060号公報(特許文献4)には、自動制御で作動する自動機を使用して機械的に組み立てられることを図った電子体温計が開示される。
【0005】
登録実用新案第3003583号公報(特許文献5)には、短時間で、皮膚上における任意の部分で体温を測定することを図った電子体温計が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59−087639号公報
【特許文献2】特開昭61−047527号公報
【特許文献3】実開昭62−096522号公報
【特許文献4】特開平10−048060号公報
【特許文献5】登録実用新案第3003583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3,4に開示される電子体温計は、ハウジングおよびハウジングに内蔵される電子機器の多くが、いわゆる積み上げ式によって一方向に組み立てられる。特許文献3,4は、自動制御で作動する自動機を使用して、電子体温計を効率良く組み立てることができると述べている。
【0008】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであって、電子体温計を機械的に組み立てる際における効率を、従来に比べてさらに向上させることが可能な電子体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく電子体温計は、被測定者の体温を測定する電子体温計であって、上記体温を測定する感温部、および、上記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、上記リード線の他端が接続された制御基板と、内部に中空空間を有し、上記サーミスタおよび上記制御基板を上記中空空間内に配置するハウジングと、備え、上記ハウジングは、第1ハウジングと、上記第1ハウジングに接合されることによって上記中空空間を形成する第2ハウジングと、を含み、上記第2ハウジングには、上記感温部を収容し、上記第1ハウジングから遠ざかる方向に膨出するように形成された皿状収容領域が設けられ、上記皿状収容領域内に収容された上記感温部と上記皿状収容領域の内周面とは、一部が相互に接触し、残部は間隔を空けて相互に離間している。
【0010】
好ましくは、上記皿状収容領域には、上記第1ハウジングに向かって延在する第1補強リブが設けられる。
【0011】
好ましくは、上記皿状収容領域に対向する上記第1ハウジングの内表面には、上記皿状収容領域内に向かって延在する第2補強リブが設けられる。
【0012】
好ましくは、上記第1ハウジングには、上記中空空間内における上記リード線の配置位置を案内するガイドリブが設けられる。
【0013】
好ましくは、上記リード線は、所定の弾性を有する部材から構成され、上記リード線は、上記制御基板に対して起立するように接続され、上記感温部は、上記リード線の弾性力によって上記皿状収容領域に対して押し付けられる。
【0014】
好ましくは、上記第2ハウジングは樹脂成型品であり、上記皿状収容領域は、上記第2ハウジングに一体成型されている。
【0015】
好ましくは、上記制御基板は、上記サーミスタを上記制御基板の表面に直接搭載する面実装タイプの基板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子体温計を機械的に組み立てる際における効率を、従来に比べてさらに向上させることが可能な電子体温計を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態における電子体温計の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。
【図2】図1中におけるII−II線に関する矢視断面図である(電子体温計としては組み立てられた状態が図示される)。
【図3】実施の形態における電子体温計の機能ブロックを示す図である。
【図4】実施の形態の第1変形例における電子体温計を示す断面図である。
【図5】実施の形態の第2変形例における電子体温計を示す断面図である。
【図6】実施の形態の第3変形例における電子体温計を示す断面図である。
【図7】実施の形態の第3変形例における電子体温計に備えられるガイドリブを示す斜視図である。
【図8】実施の形態の第4変形例における電子体温計を示す断面図である。
【図9】実施の形態の第5変形例における電子体温計を示す側面図(その一部は断面図)である。
【図10】図9中におけるX−X線に関する矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に基づいた実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0019】
図1〜図3を参照して、実施の形態における電子体温計100について説明する。図1は、電子体温計100の分解された状態(組み立てられる前の状態)を示す斜視図である。図2は、図1中におけるII−II線に関する矢視断面図である(電子体温計100としては組み立てられた状態が図示される)。図3は、電子体温計100の機能ブロックを示す図である。
【0020】
図1に示すように、電子体温計100は、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、電源部40、およびハウジング50を備える。電子体温計100が組み立てられた状態においては、電子体温計100の先端側(図1紙面左側)にプローブ部が形成される。詳細は後述されるが、ハウジング50は、シート状部材51(第1ハウジング)およびケース体52(第2ハウジング)を含む。ケース体52の先端近傍には、皿状収容領域60(詳細は後述する)が設けられる。
【0021】
制御基板20、表示部30、操作部36、および電源部40は、平面視矩形状の基板29上にそれぞれ実装される。サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36、電源部40、および基板29によって、被測定者の体温を測定する内蔵機器18が構成される。
【0022】
サーミスタ10は、いわゆるラジアルリード型であり、被測定者の体温を計測する感温部11と、一端が感温部11に接続されたリード線12とを含む。リード線12の他端は、制御基板20に接続される。
【0023】
制御基板20は、所定の位置に、制御部(図3における制御部22)、メモリ部(図3におけるメモリ部23)、および報知部(図3における報知部24)を有する。
【0024】
表示部30は、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネル31を有する。表示パネル31に、サーミスタ10によって測定された被験者の体温などが表示される。
【0025】
表示部30と並んで基板29上に配置される操作部36も、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。操作部36は、外部から押圧可能に配置された押しボタン38を含む。図1に示すように、押しボタン38はいわゆるフラットスイッチ型に構成されるとよい。
【0026】
電源部40は、ボタン電池42および対向配置された電極端子41を有する。対向配置された電極端子41同士は、樹脂43によって相互に位置決めされる。電極端子41も、基板29によって制御基板20に電気的に接続される。ボタン電池42は、電極端子41間に配置される。ボタン電池42は、電極端子41および基板29を通して、制御基板20および制御基板20に接続された表示部30に電力を供給する。
【0027】
電子体温計100においては、電子体温計100(ハウジング50)の長手方向に沿って、サーミスタ10、制御基板20、表示部30、操作部36および電源部40がこの順に並んで配置される。制御基板20、表示部30、操作部36および電源部40の順序は、適宜変更されてもよい。
【0028】
ハウジング50は、上述のとおり、シート状部材51(第1ハウジング)およびケース体52(第2ハウジング)を含む。シート状部材51は、たとえば、紙またはポリエチレンフィルムなどからなる基材層と、基材層の下面側に配置されたシーラント層と、基材層の上面側に配置されたPET層(Polyethylene Terephthalate層)とが積層されることによって構成される。
【0029】
シート状部材51の厚さは、たとえば0.1mm〜0.3mmである。PET層の基材層側の面に、所定の銘板37が貼付または印刷されることができる。銘板37は、電子体温計100が組み立てられた状態において、たとえば押しボタン38の押下位置を示す目印として機能することができる。
【0030】
シート状部材51は、裁断などによって製造されることができる。シート状部材51は、サーミスタ10が配置される側に向かって徐々に幅が狭くなるように略テーパー状に構成される。
【0031】
シート状部材51には、表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hが設けられる。開口部51H内には、樹脂などから構成される透明保護部材56が配置される。なお、シート状部材51が透明性を有する場合、開口部51Hおよび透明保護部材56は不要である。表示パネル31を外部から視認するための開口部51Hは、次述するケース体52に設けられてもよい。この場合、表示部30の表示パネル31は、ケース体52側に向かって配置される(図1とは表裏反対に示すように配置される)。
【0032】
ケース体52は、たとえばPET、PVC(polyvinyl chloride)、PE(polyethylene)、またはPP(polypropylene)等の熱可塑性を有する樹脂製の部材から、たとえば真空成型によって容器状に構成される。ケース体52の厚さは、たとえば0.5mm〜1.0mmである。
【0033】
ケース体52は、電子体温計100の長手方向に沿って延在する底面部52S,52R、底面部52S,52Rの周縁から起立する環状壁部52U、および、環状壁部52Uの起立方向の先端に設けられた上端部52Kを有する。本実施の形態における上端部52Kは、環状壁部52Uの起立方向の先端からケース体52の外側に向かってフランジ状に延設され、全体として環状を呈している。
【0034】
底面部52Sは、電子体温計100の一端側(先端側)に位置する。底面部52Rは、底面部52Sに連続し、電子体温計100の他端側(後端側)に位置する。電子体温計100が被測定者の腋下または舌下等に向かって挿入され易いように、底面部52Sは底面部52Rに比べて底浅に形成されている(底上げされている)。
【0035】
底面部52Sの略中央には、電子体温計100の長手方向に沿って凹部52Tが溝状に設けられる。電子体温計100が組み立てられた状態においては、凹部52T内に、サーミスタ10(リード線12)が収容される。
【0036】
ケース体52における環状壁部52Uおよび上端部52Kは、ケース体52に対して内蔵機器18が一方向に収容可能なように、内蔵機器18が収容される側に向かって開口を形成している。
【0037】
図1および図2を参照して、皿状収容領域60は、ケース体52の長手方向の先端側に設けられる。ケース体52の底面部52Sの先端近傍には、開口部52H(図2参照)が設けられる。皿状収容領域60は、この開口部52Hに嵌め込まれる。皿状収容領域60は、ケース体52の底面部52Sに対して、接着剤、熱溶着、または超音波溶着などによって接合されるとよい。皿状収容領域60は、インサート成型などによってケース体52に接合されてもよい。
【0038】
皿状収容領域60は、たとえばステンレスまたはアルミニウムなどの熱伝導性の高い金属性の部材から構成される。皿状収容領域60は、シート状部材51から遠ざかる方向に膨出するように形成される。皿状収容領域60は、皿状収容領域60に対して感温部11が一方向に収容可能なように、感温部11が収容される側に向かって開口を形成している。皿状収容領域60の底部60Tは、平坦に形成されていてもよく(図2に示す態様)、球面状に形成されていてもよく(図示せず)、また、先端に向かうにつれて細くなるような錐状(円錐状または三角錐状など)または錐台状に形成されていてもよい。
【0039】
電子体温計100が組み立てられた状態(図2参照)においては、皿状収容領域60とシート状部材51とは、間隔を空けて対向配置される。皿状収容領域60の内部に、感温部11が収容される。感温部11の外周面の一部は、接触部P1において、皿状収容領域60の内周面60Sと接触する。感温部11の外周面の残部は、皿状収容領域60の内周面60Sとは間隔S1を空けて相互に離間する。
【0040】
皿状収容領域60の内周面60Sに対して感温部11をより確実に接触させるためには、皿状収容領域60の内部に接着剤または発泡スチロール(図示せず)などが充填されていてもよい。接着剤または発泡スチロールの充填によって、感温部11は皿状収容領域60の内周面60Sに対して押し付けられる。また、感温部11は内周面60Sに対して半田付けなどによって接合されていてもよい。
【0041】
図1を再び参照して、電子体温計100が組み立てられる際には、内蔵機器18(サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29)が、シート状部材51とケース体52との間に配置される。
【0042】
内蔵機器18は、ケース体52内に収容される。内蔵機器18がシート状部材51に対して接着などの手段によって固定された状態で、内蔵機器18がケース体52内に収容されてもよい。この場合、開口部51Hに設けられた透明保護部材56と表示パネル31とが対向するように、内蔵機器18がシート状部材51に対して取り付けられる。
【0043】
また、操作部36における押しボタン38とシート状部材51(シート状部材51の銘板37が形成された領域)とが対向するように、内蔵機器18がシート状部材51に対して取り付けられる。シート状部材51に内蔵機器18が取り付けられた(貼り付けられた)状態で、シート状部材51の周縁がケース体52の上端部52Kに接合される。
【0044】
当該接合によって、内蔵機器18(サーミスタ10、制御基板20、表示部30、電源部40、および基板29)が略気密状に封止された中空空間53(図2参照)が形成される。内蔵機器18は、中空空間53内において、シート状部材51およびケース体52によって挟み込まれる。シート状部材51およびケース体52の相互の接合によって、ハウジング50が形成される。
【0045】
シート状部材51は、皿状収容領域60の上記開口をシート状部材51側から閉塞する(覆う)ように、皿状収容領域60と間隔を空けて対向配置される。上述のとおり、皿状収容領域60の内部には、皿状収容領域60の内周面60Sに感温部11を押し付けるように接着剤または発泡スチロール(図示せず)などが充填されているとよい。
【0046】
シート状部材51とケース体52の上端部52Kとを相互に接合するためには、シート状部材51とケース体52の上端部52Kとが対向するように配置される。この状態で、シート状部材51と上端部52Kとの接触部に超音波が付与される。付与された超音波により、シート状部材51(シーラント層など)が一時的に溶解する。当該溶解によって、シート状部材51がケース体52の上端部52Kに溶着(圧着)される。シート状部材51とケース体52の上端部52Kとは、熱溶着または接着剤などによって接合されてもよい。
【0047】
図3を参照して、上述したように、電子体温計100は、感温部11、制御部22、メモリ部23、報知部24、表示部30、操作部36、および電源部40を、機能ブロックとして含む。制御部22、メモリ部23、および報知部24は、制御基板20に設けられる。操作部36は、制御基板20に設けられてもよい(制御基板20の一部として制御基板20に取り付けられていてもよい)。
【0048】
感温部11は、腋下や舌下などの被測定部位に挟み込まれることで被測定者の体温を検出する。操作部36は、たとえば押しボタン38(図1参照)から構成され、被測定者(または電子体温計100の使用者)による操作を受け付けて、この外部からの命令を制御部22または電源部40に入力する。制御部22は、たとえばCPU(Central Processing Unit)から構成され、電子体温計100の全体を制御する。
【0049】
メモリ部23は、たとえばROM(Read-Only Memory)またはRAM(Random-Access Memory)から構成され、体温測定のための処理手順を制御部22などに実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果などを記憶したりする。報知部24は、たとえばブザーから構成され、測定が終了したことや被測定者の操作を受け付けたことなどを被測定者に知らせる。報知部24は、必要に応じて設けられるとよい。
【0050】
表示部30は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示パネル31(図1参照)を含み、測定結果などを表示する。電源部40は、たとえばボタン電池42(図1参照)を含み、制御部22に電源としての電力を供給する。
【0051】
制御部22は、体温測定を実行するための処理回路を含んでおり、メモリ部23から読み出されたプログラムに基づいて体温を測定する。その際、制御部22は、感温部11から入力された温度データを処理することで測定結果としての体温を算出する。制御部22は、算出した体温を表示部30に表示させたり、算出した体温をメモリ部23に記憶させたり、測定が終了したことを、報知部24を用いて被測定者に知らせたりするように、電子体温計100を制御する。
【0052】
(作用・効果)
図1を再び参照して、電子体温計100のハウジング50は、シート状部材51およびケース体52から簡素に構成される。シート状部材51は、PET等から構成される極めて薄い部材である。シート状部材51は、その厚さが薄く且つ裁断などによって製造されるため、安価に準備されることができる。ケース体52も、PET等から真空成型などによって構成される極めて薄い部材であるため、安価に準備されることができる。電子体温計100によれば、筐体の全部が成型樹脂から構成される一般的ないわゆるペンシル型の電子体温計に比べて、製造費用を低減することができる。
【0053】
電子体温計100が安価に製造されるため、電子体温計100は、いわゆるディスポーザブルタイプとして使用されるのに適している。ディスポーザブルタイプであれば、たとえば医療現場などにおいて、電子体温計100が使用される毎(若しくは所定の使用回数毎に)に廃棄される。電子体温計100によれば、廃棄毎に発生する使用者側または被測定者側の費用負担も軽減することが可能である。
【0054】
電子体温計100においては、ケース体52における環状壁部52Uおよび上端部52Kが、ケース体52に対して内蔵機器18を一方向に収容可能なように、これらが収容される側に向かって開口を形成している。当該開口を形成するケース体52に対して、内蔵機器18(またはシート状部材51に取り付けられた内蔵機器18)は、一方向に容易に組み付けられることができる。
【0055】
皿状収容領域60においても、皿状収容領域60に対して感温部11が一方向に収容可能なように、感温部11が収容される側に向かって開口を形成している。皿状収容領域60に対して、感温部11は一方向に容易に組み付けられることができる。感温部11が組みつけられた皿状収容領域60に対して、シート状部材51も容易に対向配置されることができる。
【0056】
したがって、電子体温計100を機械的に組み立てる際には、電子体温計100を組み立てるために使用される自動機などの動作方向が簡素化される。電子体温計100によれば、(従来の電子体温計に比べて)より効率的に組み付けられることができ、製造費用のより一層の低減を図ることが可能となる。
【0057】
なお、当該効率的な組み付けという観点からは、第1ハウジングとしてのシート状部材51およびまたは第2ハウジングとしてのケース体52は、たとえばABS樹脂(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene共重合合成樹脂)製の樹脂成形品として構成されてもよい。この場合、皿状収容領域60はケース体52に対して一体的に成型されているとよい。
【0058】
図1に示すように、本実施の形態においては、皿状収容領域60がケース体52に設けられる。皿状収容領域60は、シート状部材51に設けられてもよい。この場合、ケース体52が本発明における第1ハウジングを構成し、シート状部材51が本発明における第2ハウジングを構成する。当該構成であっても、本実施の形態における電子体温計100と同様の作用および効果を得ることができる。
【0059】
図2を参照して上述したように、皿状収容領域60の内部に感温部11が収容される。感温部11の外周面の一部は、接触部P1において、皿状収容領域60の内周面60Sと接触している。被測定者の体温は、皿状収容領域60を通して感温部11に伝わり易い。電子体温計100によれば、体温測定時における感温部11の応答速度の向上および測定精度の向上が図れる。
【0060】
また、感温部11の外周面の残部は、皿状収容領域60の内周面60Sとは間隔S1を空けて相互に離間している。電子体温計100が機械的に組み立てられる際、感温部11は皿状収容領域60内に容易かつ確実に収容配置されることが可能となる。
【0061】
本実施の形態においては、皿状収容領域60の底部60Tが平坦状に形成される。感温部11の皿状収容領域60(底部60T上)に対する接触位置(接触部P1の位置)が、製造上の原因によって誤差が生じたとしても、電子体温計100の測定性能への影響を少なくすることができる。また、底部60Tが平坦状に形成されることによって、体温測定時における被測定者への違和感も緩和されることができる。
【0062】
[第1変形例]
図4を参照して、上述の実施の形態の第1変形例における電子体温計101について説明する。図4は、電子体温計101を示す断面図である。図4は、上述の実施の形態における図2に略対応している。図4においては、第1ハウジングとしてのシート状部材51および第2ハウジングとしてのケース体52が、それぞれ断面視において略U字状に形成される。上述のとおり、第1ハウジングとしてのシート状部材51および第2ハウジングとしてのケース体52は、樹脂成形品であってもよい。
【0063】
電子体温計101においては、皿状収容領域60に、シート状部材51に向かって延在する補強リブ61(第1補強リブ)が設けられる。補強リブ61は、皿状収容領域60の底部60Tに対して垂直な方向に延在しているとよい。補強リブ61は、皿状収容領域60と一体的に成型されてもよく、別体として成型された後に皿状収容領域60に接合されてもよい。
【0064】
補強リブ61は、棒状に形成されてもよく、図4紙面垂直方向に所定の幅を有する平板状に形成さてもよい。補強リブ61は、リード線12の配線経路を阻害しないように、リード線12を挟んで対向するように、左右対称に配置されるとよい。
【0065】
体温測定時または電子体温計101の搬送時などには、皿状収容領域60または皿状収容領域60内に収容された感温部11に向かって意に反する外力が作用することがある(矢印AR101参照)。外力としては、たとえば電子体温計101が口内に挿入された際、電子体温計101の先端が歯で噛まれる際に発生する。特に、ハウジング50(シート状部材51およびケース体52)が簡素に構成される場合、当該外力によって感温部11が破損したり、皿状収容領域60の形状が変形したりする。
【0066】
当該外力が皿状収容領域60または皿状収容領域60内に収容された感温部11に向かって作用したとしても、皿状収容領域60に設けられた補強リブ61は、当該外力に対して対抗する。感温部11の破損、または皿状収容領域60の形状変形は、抑制または防止されることができる。補強リブ61が平板状に構成される場合、電子体温計101が口内に挿入された際において、歯(前歯)の向きと垂直となるように配設されているとよい。感温部11の破損、または皿状収容領域60の形状変形は、より一層抑制または防止されることが可能となる。
【0067】
[第2変形例]
図5を参照して、上述の実施の形態の第2変形例における電子体温計102について説明する。図5は、電子体温計102を示す断面図である。図5は、上述の実施の形態における図2に略対応している。
【0068】
電子体温計102においては、皿状収容領域60に対向するシート状部材51の内表面51Sに、皿状収容領域60に向かって延在する補強リブ62(第2補強リブ)が設けられる。補強リブ62は、シート状部材51の内表面51Sに対して垂直な方向に延在しているとよい。補強リブ62は、シート状部材51と一体的に成型されてもよく、別体として成型された後にシート状部材51に接合されてもよい。
【0069】
補強リブ62は、棒状に形成されてもよく、図5紙面垂直方向に所定の幅を有する平板状に形成さてもよい。補強リブ62は、リード線12の配線経路を阻害しないように、リード線12を挟んで対向するように、左右対称に配置されるとよい。
【0070】
上述の第1変形例における補強リブ61と同様に、意に反する外力が皿状収容領域60または皿状収容領域60内に収容された感温部11に向かって作用したとしても、シート状部材51に設けられた補強リブ62は、当該外力に対して対抗する。感温部11の破損、または皿状収容領域60の形状変形は、抑制または防止されることができる。
【0071】
[第3変形例]
図6および図7を参照して、上述の実施の形態の第3変形例における電子体温計103について説明する。図6は、電子体温計103を示す断面図(電子体温計103の長手方向に沿った断面図)である。図7は、電子体温計103に用いられるガイドリブ63(詳細は次述する)を示す斜視図である。
【0072】
図6に示すように、電子体温計103においては、皿状収容領域60に対向するシート状部材51の内表面51Sに、皿状収容領域60に向かって延在するガイドリブ63が設けられる。
【0073】
図7に示すように、ガイドリブ63は、シート状部材51の内表面51S(図示せず)から内表面51Sに対して垂直な方向に垂れ下がるように設けられる。ガイドリブ63は、略平板状に構成され、中空空間53内におけるリード線12の配線方向に対して直交する方向(図6紙面垂直方向)に延在している。
【0074】
電子体温計103には、ガイドリブ63に加えて、上述の第2変形例における補強リブ62も設けられている。電子体温計103には、ガイドリブ63のみが単独で設けられていてもよい。
【0075】
電子体温計103が組み立てられる際には、ガイドリブ63はリード線12の上方からリード線12に向かって(一方向に)接近する。ガイドリブ63が所定の位置に配置されることによって、ガイドリブ63の下端63Tは、リード線12に当接する。下端63Tとリード線12との当接によって、下端63Tとリード線12との間には摩擦抵抗が生じ、リード線12の配置位置がガイドリブ63の下端63Tによって案内される。下端63Tは、リード線12の配置位置を案内し易いように凹状に形成されていてもよい。
【0076】
ガイドリブ63の下端63Tは、リード線12を皿状収容領域60の内周面60Sに対して所定の押圧力で押し付けるように構成されてもよい。リード線12が位置決めされることによって、感温部11の位置ずれが抑制され、測定精度が向上する。
【0077】
また、電子体温計103においては、2つの補強リブ62がリード線12を両側から挟み込むように設けられる。各補強リブ62は、リード線12の幅方向(図6紙面垂直方向)の移動を規制する。リード線12の配置位置は、補強リブ62によっても案内されることができる。
【0078】
[第4変形例]
図8を参照して、上述の実施の形態の第4変形例における電子体温計104について説明する。図8は、電子体温計104を示す断面図である。図8は、上述の実施の形態における図2に略対応している。
【0079】
電子体温計104においては、リード線12が所定の弾性(剛性)を有するように構成される。リード線12は、片持ち梁状に配設される。リード線12の弾性(剛性)は、リード線12の材質選択によって実現されてもよく、リード線12がたとえば螺旋状にねじられることによって実現されてもよい。図8に示すように、制御基板20は、基板29に対して基板29の下面側(図1に示す態様とは反対側)に設けられるとよい。リード線12は、皿状収容領域60に向かって制御基板20から起立するように、制御基板20に接続される。
【0080】
リード線12が皿状収容領域60に向かって制御基板20から起立するように片持ち梁状に配設されることによって、感温部11は皿状収容領域60に対して所定の押圧力(弾性力)で押圧される。感温部11の皿状収容領域60に対する接触圧が高くなり、体温測定時における感温部11の応答速度の向上および測定精度の向上が図れる。また、リード線12の弾性(剛性)によって、リード線12は位置決めされやすくなる。感温部11の位置ずれが抑制され、電子体温計104としての測定精度が向上する。
【0081】
[第5変形例]
図9および図10を参照して、上述の実施の形態の第5変形例における電子体温計105について説明する。図9は、電子体温計105を示す側面図(その一部は断面図)である。図10は、図9中におけるX−X線に関する矢視断面図である。
【0082】
図9に示すように、電子体温計105においては、制御基板20が面実装タイプの基板から構成される。基板29が皿状収容領域60の上方にまで延在しており、基板29の延在方向の先端下方(皿状収容領域60側)に、制御基板20が設けられる。サーミスタ10における感温部11は、制御基板20の表面に直接実装される。リード線12は、ここでは微細な金属端子から構成される。当該構成によれば、皿状収容領域60付近におけるハウジング50の薄型化が図れる。
【0083】
当該薄型化のためには、制御基板20を他の位置に配置し、感温部11を基板29の表面に直接実装してもよい。この場合、感温部11と他の位置に配置された制御基板20とは、基板29を通して電気的に接続される。ハウジング50の先端部付近に段差65を設けてもよい。段差65によって、電子体温計105がたとえば舌下等に挿入される場合に、過度な挿入を抑制することが可能となる。
【0084】
図10を参照して、感温部11は、基板29または制御基板20の弾性によって、皿状収容領域60に対して所定の押圧力(弾性力)で押圧されるように構成されてもよい。電子体温計105によれば、サーミスタ10が制御基板20に対して直接実装されるため、感温部11の皿状収容領域60に対する位置ずれが発生しにくい。体温測定時における感温部11の応答速度の向上および測定精度の向上が図れる。
【0085】
以上、本発明に基づいた実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10 サーミスタ、11 感温部、12 リード線、18 内蔵機器、20 制御基板、22 制御部、23 メモリ部、24 報知部、29 基板、30 表示部、31 表示パネル、36 操作部、37 銘板、38 押しボタン、40 電源部、41 電極端子、42 ボタン電池、43 樹脂、50 ハウジング、51 シート状部材(第1ハウジングおよび第2ハウジングのうちの一方)、51H,52H 開口部、51S 内表面、52 ケース体(第1ハウジングおよび第2ハウジングのうちの他方)、52K 上端部、52R,52S 底面部、52T 凹部、52U 環状壁部、53 中空空間、56 透明保護部材、60 皿状収容領域、60S 内周面、60T 底部、61 補強リブ(第1補強リブ)、62 補強リブ(第2補強リブ)、63 ガイドリブ、63T 下端、65 段差、100〜105 電子体温計、AR101 矢印、P1 接触部、S1 間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の体温を測定する電子体温計であって、
前記体温を測定する感温部、および、前記感温部に一端が接続されたリード線を含むサーミスタと、
前記リード線の他端が接続された制御基板と、
内部に中空空間を有し、前記サーミスタおよび前記制御基板を前記中空空間内に配置するハウジングと、備え、
前記ハウジングは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに接合されることによって前記中空空間を形成する第2ハウジングと、を含み、
前記第2ハウジングには、前記感温部を収容し、前記第1ハウジングから遠ざかる方向に膨出するように形成された皿状収容領域が設けられ、
前記皿状収容領域内に収容された前記感温部と前記皿状収容領域の内周面とは、一部が相互に接触し、残部は間隔を空けて相互に離間している、
電子体温計。
【請求項2】
前記皿状収容領域には、前記第1ハウジングに向かって延在する第1補強リブが設けられる、
請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記皿状収容領域に対向する前記第1ハウジングの内表面には、前記皿状収容領域内に向かって延在する第2補強リブが設けられる、
請求項1または2に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記第1ハウジングには、前記中空空間内における前記リード線の配置位置を案内するガイドリブが設けられる、
請求項1から3のいずれかに記載の電子体温計。
【請求項5】
前記リード線は、所定の弾性を有する部材から構成され、
前記リード線は、前記制御基板に対して起立するように接続され、
前記感温部は、前記リード線の弾性力によって前記皿状収容領域に対して押し付けられる、
請求項1から4のいずれかに記載の電子体温計。
【請求項6】
前記第2ハウジングは樹脂成型品であり、
前記皿状収容領域は、前記第2ハウジングに一体成型されている、
請求項1から5のいずれかに記載の電子体温計。
【請求項7】
前記制御基板は、前記サーミスタを前記制御基板の表面に直接搭載する面実装タイプの基板である、
請求項1から6のいずれかに記載の電子体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−163354(P2012−163354A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21750(P2011−21750)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】