説明

電子写真感光体、それを含むプロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】十分な電子輸送性と、ブロッキング性とを有する中間層を有し、カブリやポチ等の画像欠陥が抑制された電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体と、導電性支持体上に配置された感光層と、導電性支持体と感光層との間に配置された中間層と、を有する電子写真感光体であって、中間層が、金属酸化物粒子と、バインダ樹脂とを含み、金属酸化物粒子が、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーによって表面処理されている、電子写真感光体。一般式(1)


(一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;複数のRおよびRは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく;nは、2〜20の整数を表し;mおよびlは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、かつm+l=2n+2を満たす)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、それを含むプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等に用いられる電子写真感光体としては、有機系光導電性材料を主成分として含む感光層を有する有機系感光体が一般的である。このような有機系感光体には、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む単層型の感光層を有するものと;電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層した積層型の感光層を有するものとがある。これらの中でも、積層型の感光層を有する有機系感光体、なかでも感光体表面を負に帯電させる負帯電積層型の電子写真感光体は、電子写真特性や耐久性に優れ、設計の自由度が高いことなどから、広く実用化されている。
【0003】
負帯電積層型の電子写真感光体は、通常、導電性支持体と、中間層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、がこの順に積層されている。負帯電積層型の電子写真感光体が露光されると、電荷発生層で電荷が発生する。このうち、負電荷(電子)は中間層を導電性支持体に向かって移動し、ホールは電荷輸送層を感光体表面に向かって移動し、感光体表面の負電荷を打ち消して静電潜像を形成する。そのため、中間層は、1)電荷発生層で発生した電子を速やかに導電性支持体側に移動させること(電子輸送性を有すること)、および2)導電性支持体から感光層へのホールの注入を抑制すること(ブロッキング性を有すること)、が必要とされる。
【0004】
中間層は、通常、金属酸化物粒子と、それを分散させるバインダ樹脂とを含む。そして、中間層のブロッキング性などを高めるために、金属酸化物粒子を表面処理して、金属酸化物粒子の分散性を高めることが検討されている。例えば、中間層に含まれる金属酸化物粒子を、無水二酸化ケイ素によって表面処理することが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−244000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の表面処理された金属酸化物粒子は、中間層用塗布液における分散性が十分ではないことから、得られる中間層のブロッキング性も十分高いものではなかった。そのため、特に高感度の感光層を有する電子写真感光体において、導電性支持体から感光層へのホールの注入や、熱的励起により生じたキャリアのリークをブロックしきれず、それにより感光体の表面電位が部分的に低下し、カブリやポチなどの画像欠陥が生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、十分な電子輸送性と、ブロッキング性とを有する中間層を有し、カブリやポチ等の画像欠陥が抑制された電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置された感光層と、前記導電性支持体と前記感光層との間に配置された中間層と、を有する電子写真感光体であって、前記中間層が、金属酸化物粒子と、バインダ樹脂とを含み、前記金属酸化物粒子が、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーによって表面処理されている、電子写真感光体。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)において、
およびRは、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;複数のRおよびRは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく;
nは、2〜20の整数を表し;
mおよびlは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、かつm+l=2n+2を満たす)
[2] 前記金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子である、[1]に記載の電子写真感光体。
[3] 前記金属酸化物粒子が、前記一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーにより表面処理された後、反応性シリコーンオイルまたはアルコキシシランにより表面処理されている、[1]または[2]に記載の電子写真感光体。
[4] 前記金属酸化物粒子の数平均一次粒子径は、10〜50nmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の電子写真感光体。
[5] 前記感光層が、チタニルフタロシアニン顔料と2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料との混合物を含み、かつ
前記感光層の反射スペクトルから換算して得られる780nmにおける吸光度(Abs780)と700nmにおける吸光度(Abs700)との比(Abs780/Abs700)が0.8〜1.1である、[1]〜[4]のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0009】
[6] 画像形成装置に着脱可能に装着されるプロセスカートリッジであって、[1]〜[5]のいずれかに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付与する現像手段、前記電子写真感光体の表面に付与されたトナーを記録媒体上に転写させる転写手段、転写後の前記電子写真感光体の表面を除電する除電手段、および前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段と、を有し、前記電子写真感光体と、前記少なくとも1つの手段とが一体的に構成されている、プロセスカートリッジ。
[7] [1]〜[5]のいずれかに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、前記電子写真感光体の表面に露光する露光手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付与する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナーを記録媒体上に転写させる転写手段と、転写後の前記電子写真感光体の表面を除電する除電手段と、前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、を有する、画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真感光体は、十分な電子輸送性と、ブロッキング性とを有する中間層を含む。そのため、本発明の電子写真感光体による画像形成では、カブリやポチなどの画像欠陥が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.電子写真感光体
本発明の電子写真感光体は、負帯電積層型の電子写真感光体であり、導電性支持体上に、少なくとも中間層と、感光層とを積層したものであり、必要に応じて保護層をさらに積層したものである。電子写真感光体の具体的な層構成として、以下を例示することができる。
1)導電性支持体上に、中間層、感光層として電荷発生層と電荷輸送層、および必要に応じて保護層を順次積層した層構成。
2)導電性支持体上に、中間層、感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層、および必要に応じて保護層を順次積層した層構成。
以下、上記1)の層構成を中心に、本発明の電子写真感光体を構成する各層について説明する。
【0013】
導電性支持体について
導電性支持体は、円筒状またはシート状の導電性支持体である。円筒状の導電性支持体は、回転することによって、連続的に画像を形成するように構成されている。高精度に画像形成するためには、円筒状の導電性支持体の真直度は0.1mm以下であることが好ましく、振れは0.1mm以下であることが好ましい。
【0014】
導電性支持体の材質は、アルミニウム、ニッケル等の金属ドラム;アルミニウム、酸化錫、酸化インジウム等の金属を蒸着したプラスチックドラム;導電性化合物を塗布した紙またはプラスチックドラム等でありうる。導電性支持体の表面の、常温下における比抵抗は10mΩ以下であることが好ましい。
【0015】
導電性支持体の表面は、露光により発生する干渉縞(モアレ)を抑制するために、封孔されたアルマイト処理(陽極酸化処理)が施されていてもよい。アルマイト処理は、通常、クロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行うことができるが、硫酸浴中で行うことが好ましい。硫酸浴中でのアルマイト処理は、硫酸濃度100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度1〜10g/l、液温20℃、印加電圧約20Vの条件で行うことが好ましい。アルマイト処理被膜の平均膜厚は、通常、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0016】
中間層について
中間層は、感光層で生成した電子を導電性支持体側へ輸送する機能(電子輸送機能)と、導電性支持体から感光層への正孔の注入を防止する機能(ブロッキング機能)と、を有する。このような中間層は、一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子と、それを分散させるバインダ樹脂と、を含む。
【0017】
原料となる金属酸化物粒子は、N型半導性を有する金属酸化物;具体的には、電子輸送性を有するが、正孔輸送性を有しない金属酸化物で構成される。そのような金属酸化物の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび酸化スズ等が含まれる。なかでも、導電性や分散性を高めるためには、酸化チタンおよび酸化亜鉛が好ましく、酸化チタンがより好ましい。
【0018】
金属酸化物粒子を構成する酸化チタンの結晶型は、アナタース型、ルチル型などのいずれであってもよい。分散性を高めるためにはルチル型であることが好ましく、電子輸送性を高めるためにはアナタース型であることが好ましい。酸化チタンの結晶型は、二種以上の結晶型の混合物であってもよい。
【0019】
原料となる金属酸化物粒子の形状は、樹枝状、針状、および粒状のいずれであってもよいが、中間層における金属酸化物粒子の分散性を高めるためには、粒状であることが好ましい。
【0020】
原料となる金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、好ましくは10〜400nmであり、より好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは10〜50nmであり、さらに好ましくは10〜40nmである。金属酸化物粒子の数平均一次粒径が10nm未満であると、中間層によるモアレの抑制効果が小さい。一方、金属酸化物粒子の数平均一次粒径が400nm超であると、中間層用塗布液において金属酸化物粒子が沈降しやすく、分散性が低いため、ポチ等の画像欠陥を生じやすい。
【0021】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、以下のようにして求めることができる。即ち、原料となる金属酸化物粒子のSEM(透過型電子顕微鏡)画像を倍率10000倍で観察し、100個の粒子を一次粒子としてランダムに選択する。これらの一次粒子のフェレ方向平均径を画像解析により測定し、それらの平均値を「平均一次粒子径」として求めることができる。
【0022】
金属酸化物粒子は、前述の通り、一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理されている。
一般式(1)
【化2】

【0023】
式(1)のRおよびRは、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。炭素原子数1〜4のアルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などが含まれる。RおよびRは、好ましくはメチル基またはエチル基である。RとRは、互いに同一であっても異なってもよい。複数のRは、互いに同一であっても異なってもよく;複数のRは、互いに同一であっても異なってもよい。
【0024】
式(1)のnは平均重合度であり、2〜20の整数であり、好ましくは4〜15であり、より好ましくは4〜7である。式(1)のmおよびlは、それぞれ独立に0以上の整数を示し、かつm+l=2n+2を満たす。
【0025】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーは、二種類以上のアルコキシシランオリゴマーの混合物であってもよい。また、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーは、平均重合度が前述のnの範囲にあれば、nが1であるアルコキシシランモノマーを含んでもよい。
【0026】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの好ましい例には、シリケート40(平均重合度5のエトキシシランオリゴマー、多摩化学工業社製)、Mシリケート51(平均重合度4のメトキシシランオリゴマー、多摩化学工業社製)、エチルシリケート48(平均重合度10のエトキシシランオリゴマー、コルコート社製)、メトキシエトキシシランオリゴマー(平均重合度4.5)等が含まれる。
【0027】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子が良好な特性を示す理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推定される。即ち、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーは、アルコキシシランモノマー(単量体)と比べて反応性が高すぎないことから、金属酸化物粒子と穏やかに反応しうる。そのため、金属酸化物粒子の表面を薄くて均一な被膜で覆うことができ、電子輸送性を低下させることなく、不要なホールの注入や熱励起キャリアのリークを抑制できると推定される。
【0028】
原料の金属酸化物粒子に対する式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの付着量は、金属酸化物粒子の電子輸送性を損なわないためには、原料の金属酸化物粒子に対して20質量%以下であることが好ましく、19質量%以下であることがさらに好ましい。ポチやカブリを抑制するためには、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの付着量は、原料の金属酸化物粒子に対して2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
中間層に含まれる金属酸化物粒子の式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの付着量は、例えば以下の方法によって測定することができる。
1)バインダ樹脂と表面処理された金属酸化物粒子とを含む試料を準備する。そして、試料からバインダ樹脂を、例えば燃やして除去する。
2)前記1)で残留する表面処理された金属酸化物粒子を、密閉式マイクロ波分解装置などを用いてふっ酸水溶液で分解し、溶液化する。
3)得られた水溶液中のSi量およびTi量をICP−AESにより測定する。そして、得られたSi/Tiの比率から、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの付着量を算出する。
【0030】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーによる表面処理は、例えば式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーと、金属酸化物粒子とを有機溶媒(例えばエチルアルコール等)に分散させ、さらに加水分解させるための水と、酸触媒(HCl、HSOおよびHNO等の無機酸y酢酸、蓚酸等の有機酸溶液)とを添加して分散処理した後;得られた分散溶液から溶媒を除去することによって行うことができる。
【0031】
金属酸化物粒子の電子輸送性と、ポチやカブリの抑制とを好ましく両立するためには、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの仕込み量や、混合・攪拌時の温度および時間などを調整することが好ましい。
【0032】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの仕込み量は、原料の金属酸化物粒子に対して2〜20質量%とすることが好ましく、4〜19質量%とすることがより好ましい。式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの仕込み量が2質量%未満であると、金属酸化物粒子によるカブリを十分に抑制できず、ブロッキング性が十分でないことがある。式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーの仕込み量が20質量%超であると、金属酸化物粒子の電子輸送性が低下したり、アルコキシシランオリゴマー同士が反応して凝集物が生じ、電位上昇やポチが生じたりしやすい。
【0033】
分散処理時の溶液の温度は、好ましくは5〜70℃、より好ましくは20〜50℃程度であることが好ましく、分散処理時間は、分散処理装置内に投入された金属酸化物粒子の表面処理を十分に行うためなどから0.5〜3時間であることが好ましい。分散手段は、特に制限されないが、金属酸化物粒子の凝集を抑制するためなどから、湿式ビーズミル処理が好ましい。
【0034】
原料となる金属酸化物粒子は、必要に応じて、前記式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマー以外の、他の表面処理剤によってさらに表面処理されてもよい。つまり、金属酸化物粒子の表面は、複数の層によって覆われていてもよく、そのうちの少なくとも一層;好ましくは金属酸化物粒子と接する層が、前述のアルコキシシランオリゴマーからなる層であればよい。
【0035】
他の処理剤は、反応性有機ケイ素化合物であることが好ましい。反応性有機ケイ素化合物の例には、アルコキシシラン、反応性シリコーンオイル、またはシランカップリング剤などが含まれる。アルコキシシランの例には、メチルトリメトキシシラン、n‐ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが含まれる。反応性シリコーンオイルの例には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、カルボキシル変成シリコーンオイル,モノアミン変成シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイルなどが含まれる。シランカップリング剤の例には、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのエポキシシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのメタクリルシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシランなどが含まれる。
【0036】
金属酸化物粒子の分散性を高めるためには、金属酸化物粒子は前記アルコキシシランオリゴマーで表面処理された後、反応性有機ケイ素化合物でさらに表面処理されていることが好ましい。このような金属酸化物粒子は、最表面に反応性有機ケイ素化合物層を有するため、金属酸化物粒子の分散性が効果的に高められる。
【0037】
他の処理剤による金属酸化物粒子の表面処理は、公知の方法により行うことができる。例えば、反応性有機ケイ素化合物による表面処理は、1)反応性有機ケイ素化合物を水または有機溶媒に分散させた溶液に、金属酸化物粒子を添加して混合・攪拌し、2)得られた溶液をろ過および乾燥等すること、により行うことができる。
【0038】
中間層に含まれるバインダ樹脂は、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が含まれる。なかでも、感光層を塗布する際に、中間層が溶解するのを抑制する観点などから、アルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
【0039】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子(P)と、バインダ樹脂(B)との体積比(表面処理された金属酸化物粒子(P)/バインダ樹脂(B))は、0.4〜1.3であることが好ましく、0.6〜1.2であることがより好ましい。前記体積比が0.4未満であると、中間層の電子輸送性が低すぎるため、画像の濃度ムラが生じやすい。一方、前記体積比が1.3超であると、中間層の電子輸送性が高すぎるため、ブロッキング性が低下し、カブリなどの画像欠陥が生じやすい。
【0040】
式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子(P)と、バインダ樹脂(B)との体積比は、TGA(熱量計測定装置)により、以下の方法で測定することができる。
i)表面処理された金属酸化物粒子の比重を、エステック社製真比重計(マイクロピクノメータ)を用いて測定する。また、バインダ樹脂の比重は、成型片とした状態の重量を測定した後、該成型片を、体積既知の水中に入れて排除体積を測定することによって求められる。
ii)一方、測定試料として、表面処理された金属酸化物粒子とバインダ樹脂の混合物を準備する。次いで、アルミサンプルパンに測定試料5mgを秤量し、示差熱重量同時測定装置 TG/DTA6200 (セイコーインスツルメンツ株式会社製)を使用して、窒素ガス雰囲気下(導入量150〜200ml/min)、昇温温度20℃/minにて加熱重量減少曲線で減少量を測定する。1段目の加熱重量減少量からバインダ樹脂の重量が求められ、そのときの残留重量から、表面処理された金属酸化物粒子重量が求められる。
iii)そして、表面処理された金属酸化物粒子およびバインダ樹脂の、前記i)で得られた比重と、前記ii)で得られた重量とから、表面処理された金属酸化物粒子とバインダ樹脂の体積をそれぞれ算出する。それにより、体積比(P/B)を算出する。
【0041】
中間層の膜厚は、0.5〜15μmであることが好ましく、1〜7μmであることがより好ましい。中間層の膜厚が小さすぎると、導電性支持体表面全体を被覆することができず、導電性支持体からのホールの注入を十分にブロックできないことがある。一方、中間層の膜厚が大きすぎると、電気的抵抗が増大するため、十分な電子輸送性が得られないことがある。
【0042】
感光層について
感光層は、露光によって電荷を発生させる機能と、発生させた電荷を感光体表面に輸送する機能とを有する。そのような感光層は、電荷発生機能と、電荷輸送機能とを同一の層で行う単層構造を有していてもよく、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる層で行う積層構造を有していてもよいが;繰り返し使用による残留電位の増加を抑制するためには、電荷発生層と電荷輸送層との積層構造を有することが好ましい。負帯電用の電子写真感光体は、中間層上に設けられた電荷発生層(CGL)と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層(CTL)と、を有することが好ましい。
【0043】
電荷発生層(CGL)
電荷発生層は、露光により電荷を発生させる機能を有する。そのような電荷発生層は、通常、電荷発生物質(CGM)と、それを分散させるバインダ樹脂とを含む。
【0044】
電荷発生物質は、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、およびアズレニウム顔料等でありうる。電荷発生物質は、露光波長に対する感度に応じて選択されればよいが、デジタル機における露光波長に対する感度を高めるためには、フタロシアニン顔料が好ましい。
【0045】
フタロシアニン顔料は、感度を高めるためには、Y型フタロシアニン顔料、またはブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料であることが好ましい。
【0046】
Y型フタロシアニン顔料は、Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°において最大回折ピークを有する。
【0047】
ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料の例には、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料が含まれる。2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、下記式で表される。
【化3】

【0048】
2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、ブタンジオールの付加比率によって異なる結晶型をとりうる。良好な感度を得るためには、チタニルフタロシアニン1モルに対してブタンジオール化合物を1モル以下となるように反応させて得られる結晶型のものが好ましい。そのような結晶型を有する2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)8.3°において、特徴的なピークを有する。この2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、8.3°以外にも、24.7°、25.1°、26.5°にピークを有する。
【0049】
2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、IRスペクトルで970cm−1付近にTi=Oの吸収ピーク、630cm−1付近にO−Ti−Oの吸収ピークを有する。また、熱分析では、390〜410℃の範囲における質量減少が11%未満となる。
【0050】
ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料単独であってもよいし、非付加体のチタニルフタロシアニン顔料とブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料との混合物であってもよいが、好ましくは(非付加体の)チタニルフタロシアニン顔料とブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料(好ましくは2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料)との混合物である。
【0051】
チタニルフタロシアニン顔料と2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料との混合物を含有する感光層の、反射スペクトルから換算して得られる780nmにおける吸光度(Abs780)と700nmにおける吸光度(Abs700)との比(Abs780/Abs700)は、0.8〜1.1の範囲であることが好ましい。
【0052】
即ち、顔料粒子の二次凝集や顔料粒子の結晶の破砕が多いほど、顔料粒子を含む感光層の780nm近辺の吸光度が低下し、感光層の吸光度の比(Abs780/Abs700)が低下する。具体的には、感光層の吸光度の比(Abs780/Abs700)が0.8未満であると、感光層に、過度の分散シェアによって結晶が破砕された顔料粒子が含まれることが示唆される。そのような感光層では、顔料粒子の結晶の欠陥箇所における2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンの分解が起こりやすいため、感度や繰り返し画像形成時の画質が低下しやすい。一方、感光層の吸光度の比(Abs780/Abs700)が1.1超であると、感光層に、分散不良により二次凝集した顔料粒子や粗大な顔料粒子が含まれることが示唆される。そのため、画像濃度低下などの画像欠陥を生じることがある。
【0053】
感光層の吸光度の比は、以下の手順で求めることができる。
1)感光体の反射スペクトルは、アルミニウム支持体上に形成した感光体試料で測定する。感光体の反射スペクトルは、ベースラインとして測定したアルミニウム支持体の反射強度を100%としたときの相対反射率として測定される。即ち、相対反射率は、感光体試料の各波長での反射強度を、ベースラインとして測定したアルミニウム支持体の各波長での反射強度で割って得られる。
2)得られた感光体の反射スペクトルを、下記式により吸光度スペクトルに換算する。
Absλ=−log(Rλ
(Rλは、波長λの感光体試料の反射率を、波長λでのアルミニウム支持体の反射率で割って得られる相対反射率を示す)
3)次いで、干渉縞による凹凸を除去するために、換算して得られた吸光度スペクトルを、765〜795nmの範囲と、685〜715nmの範囲のそれぞれにおいて二次の多項式で近似する。そして、780nmにおける吸光度Abs780と、700nmにおける吸光度Abs700との比(Abs780/Abs700)を算出する。
【0054】
感光体の反射スペクトルは、光学式膜厚測定装置Solid Lambda Thickness(スペクトラコープ社製)を用いて測定することができる。
【0055】
これらのフタロシアニン顔料のBET比表面積は、20m/g以上であることが好ましい。
【0056】
バインダ樹脂は、特に制限されないが、例えばホルマール樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等でありうる。これらのバインダ樹脂は、繰り返し使用に伴う残留電位を低減することができる。
【0057】
電荷発生物質の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して20〜600質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。電荷発生物質の含有量が20質量部未満であると、露光により十分な電荷を発生させることができず、感光層の感度が低くなる。電荷発生物質の含有量が600質量部超であると、感光層の感度が高すぎて、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が生じやすい。
【0058】
電荷発生層の膜厚は、特に制限されないが、感度を高めるためには薄いことが好ましく、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0059】
電荷輸送層(CTL)
電荷輸送層は、電荷発生層で発生した電荷を、感光体表面に輸送する機能を有する。電荷輸送層は、一層であっても二層以上であってもよい。電荷輸送層は、通常、電荷輸送物質(CTM)と、それを分散させるバインダ樹脂と、を含む。
【0060】
電荷輸送物質(CTM)は、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等でありうる。
【0061】
バインダ樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。バインダ樹脂の例には、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等が含まれる。なかでも、吸水率が低く、電荷輸送物質を良好に分散させることができることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0062】
電荷輸送層は、必要に応じて他の添加剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤の例には、酸化防止剤が含まれる。
【0063】
電荷輸送物質の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。電荷輸送物質の含有量が10質量部未満であると、電荷輸送性が十分ではないため、電荷発生層で発生した電荷を感光体表面まで十分に輸送できないことがある。一方、電荷輸送物質の含有量が200質量部超であると、繰り返し使用に伴う残留電位の増加が顕著となりやすい。
【0064】
電荷輸送層の膜厚は、特に制限されないが、10〜40μm程度とすることができる。
【0065】
保護層(OCL)
本発明の電子写真感光体は、必要に応じて保護層を有していてもよい。保護層は、バインダ樹脂と、無機微粒子とを含み、必要に応じて酸化防止剤や滑剤等をさらに含んでもよい。保護層は、バインダ樹脂と無機微粒子とを含む塗布液を電荷輸送層の上に塗布して形成されたものであってよい。
【0066】
保護層に含まれる無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を好ましく用いることができる。特に表面を疎水化した疎水性シリカや疎水性アルミナ、疎水性ジルコニア、微粉末焼結シリカ等が好ましい。
【0067】
無機微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmのものが好ましく、5〜100nmが特に好ましい。無機微粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出して得られた値である。
【0068】
保護層に含まれるバインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0069】
保護層に含まれる滑剤としては、樹脂微粉末(例えば、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等)、金属酸化物微粉末(例えば、酸化チタン、酸化アルミ、酸化スズ等)、固体潤滑剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等)、シリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等)、フッ素系樹脂粉体(例えば、四フッ化エチレン樹脂粉体、三フッ化塩化エチレン樹脂粉体、六フッ化エチレンプロピレン樹脂粉体、フッ化ビニル樹脂粉体、フッ化ビニリデン樹脂粉体、フッ化二塩化エチレン樹脂粉体及びそれらの共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂粉体(例えば、ポリエチレン樹脂粉体、ポリプロピレン樹脂粉体、ポリブテン樹脂粉体、ポリヘキセン樹脂粉体などのホモポリマー樹脂粉体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などのコポリマー樹脂粉体、これらとヘキセンなどの三元共重合体、更にこれらの熱変成物のようなポリオレフィン系樹脂粉体等)などが挙げられる。
【0070】
上記の潤滑剤として用いられる樹脂の分子量や粉体の粒径は、適宜選択されうる。樹脂の粒径は、特に0.1μm〜10μmであることが好ましい。これらの潤滑剤を均一に分散するため、分散剤をバインダ樹脂にさらに添加してもよい。
【0071】
図1は、負帯電積層型の電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図1に示されるように、負帯電積層型の電子写真感光体10は、導電性支持体12と、中間層14と、電荷発生層16と、電荷輸送層18と、がこの順に積層されている。
【0072】
そして、負帯電積層型の電子写真感光体10に光が照射されると、電荷発生層16で電荷が発生する。電荷発生層16で発生した電荷のうち、電子は中間層14を経て導電性支持体12に移動し;ホール(正孔)は電荷輸送層18を経て感光体表面に移動し、感光体表面の負電荷を打ち消すことにより、感光体表面に静電潜像を形成する。
【0073】
本発明においては、中間層14に含まれる金属酸化物粒子の表面が、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理されている。それにより、導電性支持体12からのホールの注入や、電荷発生層16で熱励起された電子の輸送を効果的に抑制でき、感光体の表面電位の変動によるポチやカブリ等の画像欠陥を抑制できる。また、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子は、十分な電子輸送性を有する。そのため、露光後電位の上昇による画像の濃度ムラも抑制できる。
【0074】
2.電子写真感光体の製造方法
本発明の電子写真感光体は、例えば導電性支持体上に、中間層用塗布液を塗布および乾燥して中間層を形成するステップと;中間層上に、感光層用塗布液を塗布および乾燥して感光層を形成するステップ;を経て製造することができる。
【0075】
中間層用塗布液は、前述の式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子と、バインダ樹脂と、それらの分散溶媒と、を含む。
【0076】
中間層用塗布液に含まれる分散溶媒は、ポリアミド樹脂等の溶解性に優れることから、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素原子数2〜4のアルコール類であることが好ましい。これらの分散溶媒は、単独で用いられてもよいし、助触媒と組み合わせて用いられてもよい。これらの分散溶媒の含有量は、全溶媒に対して30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%であることが好ましい。助溶媒の例には、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノンおよびテトラヒドロフラン等が含まれる。
【0077】
感光層用塗布液は、電荷発生物質または電荷輸送物質と、バインダ樹脂と、それらの分散溶媒または溶解溶媒とを含む。
【0078】
感光層用塗布液に含まれる分散溶媒または溶解溶媒の例には、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシドおよびメチルセロソルブ等が含まれる。なかでも、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0079】
電荷発生物質を含む感光層用塗布液は、電荷発生物質を溶媒に低シェア(低剪断力)で分散させることによって調製されることが好ましい。電荷発生物質の溶媒への分散は、前述の感光層の相対反射率スペクトルの比Abs780/Abs700が0.8〜1.1の範囲となるように行うことが好ましい。分散時のシェアは、分散方法、分散に用いるメディアの径や量、分散時間などによって調整されうる。分散手段は、特に制限されないが、低シェアで分散できるものが好ましく、超音波分散、比重の小さいメディア(ガラスビーズ(比重2.5)など)を用いたメディア分散などが好ましい。
【0080】
本発明の電子写真感光体を製造するための各種塗布液(例えば中間層用塗布液や感光層用塗布液)の塗布方法は、浸漬塗布のほかにも、スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法、スプレー塗布等の塗布方法を用いることができる。スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法については、例えば特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている。
【0081】
3.画像形成装置
本発明の画像形成装置は、少なくとも前述の電子写真感光体を有する。図2は、本実施形態に係るタンデム型のカラー画像形成装置の構成を示す断面図である。図2に示されるように、画像形成装置100は、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット130と、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0082】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並べて配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、第1の像担持体である感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkと、その周囲にドラムの回転方向に順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkと、を有する。そして、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)のトナー画像をそれぞれ形成できるようになっている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー画像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0083】
帯電手段113Yは、感光体ドラム111Yに対して一様な電位を与える手段である。本実施の形態においては、帯電手段113Yとしてコロナ放電型の帯電器が好ましく用いられる。
【0084】
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム111Y上に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する機能を有する。露光手段115Yは、感光体ドラム111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいはレーザー光学系などでありうる。
【0085】
露光光源は、発振波長が350〜500nmの半導体レーザーまたは発光ダイオードであることが好ましい。これらの露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、感光体上にデジタル露光を行うことで、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)〜2400dpiあるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像を形成しうる。
【0086】
露光ドット径とは、露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の、主走査方向の露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を示す。
【0087】
現像手段117Yは、感光体ドラム111Yにトナーを供給し、感光体ドラム111Yの表面に形成された静電潜像を現像可能に構成されている。クリーニング手段119Yは、感光体ドラム111Yの表面に圧接するローラや、ブレードを有しうる。
【0088】
無端ベルト状中間転写体ユニット130は、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkと当接可能に設けられている。無端ベルト状中間転写体ユニット130は、第2の像担持体である無端ベルト状中間転写体131と、当該無端ベルト状中間転写体131と当接して配置された一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと、当該無端ベルト状中間転写体131のクリーニング手段135と、を有する。
【0089】
無端ベルト状中間転写体131は、複数のローラ137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0090】
本実施の形態の画像形成装置100において、帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、一次転写ローラ133Y、除電手段(不図示)およびクリーニング手段119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、感光体ドラム111Yとを一体的に構成したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)としてもよい。なかでも、現像手段117Yおよびクリーニング手段119Yと、前述の感光体ドラム111Yとを一体的に構成し、装置本体に着脱自在に構成してもよい。
【0091】
図2におけるプロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された感光体ドラム111Y、帯電手段113Y、現像手段117Y、クリーニング手段119Y、および無端ベルト状中間転写体ユニット130を有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
【0092】
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213Dおよびレジストローラ215を経て、二次転写ローラ217に搬送可能に設けられている。
【0093】
定着手段170は、二次転写ローラ217により転写されたカラー画像を定着処理する。排紙ローラ219は、定着処理された転写材Pを挟持して、画像形成装置外部に設けられた排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
【0094】
このように構成された画像形成装置100では、画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkにより画像を形成する。具体的には、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの表面にコロナ放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与し、現像する。
【0095】
次いで、一次転写ローラ(第一の転写手段)133Y、133M、133C、133Bkを、回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させる。それにより、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色の画像を、回動する無端ベルト状中間転写体131上に逐次転写させて、カラー画像を転写する(一次転写する)。画像形成処理中、一次転写ローラ133Bkは、常時、感光体ドラム111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラ133Y、133M、133Cは、カラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体ドラム111Y、111M、111Cに当接する。
【0096】
そして、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと無端ベルト状中間転写体131とを分離させた後、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの表面に残留するトナーを、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkで除去する。そして、次回の画像形成に備えて、必要に応じて感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより負に帯電させる。
【0097】
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シート等の最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213D、レジストローラ215を経て二次転写ローラ(第二の転写手段)217に搬送する。そして、二次転写ローラ217を回動する無端ベルト状中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラー画像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラ217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、無端ベルト状中間転写体131と当接する。その後、カラー画像が一括転写された転写材Pを、無端ベルト状中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
【0098】
このようにしてカラー画像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラ219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラー画像が一括転写された転写材Pを無端ベルト状中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で無端ベルト状中間転写体131上の残留トナーを除去する。
【0099】
本実施の形態において、無端ベルト状中間転写体131や転写材Pなどの、感光体ドラム111Y上に形成されたトナー画像を転写する転写媒体を、総称して「記録媒体」という。
【0100】
前述したように、本実施の形態の画像形成装置100に含まれる感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、十分な電子輸送性を有する。そのため、感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの表面の残存電位の増加を抑制でき、画像の濃度ムラを少なくすることができる。さらに、画像形成装置100に含まれる感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkの中間層は、高いブロッキング性を有する。そのため、特に高感度の電荷発生層を有する感光体ドラム111Y、111M、111C、111Bkにおいても、導電性支持体からの不要なホールの注入や電荷発生層からの不要な熱励起キャリアの移動を少なくすることができ、ポチやカブリ等の画像欠陥を抑制することができる。
【0101】
本発明の画像形成装置は、電子写真複写機や、レーザプリンタ、LEDプリンタおよび液晶シャッター式プリンタ等の電子写真装置などとして用いられる。さらに、本発明の画像形成装置は、電子写真技術を応用したディスプレイ装置、記録装置、軽印刷装置、製版装置およびファクシミリ装置などにも幅広く用いることができる。
【実施例】
【0102】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0103】
1.表面処理された金属酸化物粒子の作製
(合成例1)
平均一次粒子径35nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、MT−500B)100質量部を、エタノール500質量部に分散させ、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーとしてシリケート40(多摩化学工業株式会社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度5)を20質量部添加した後、触媒として酢酸を5質量部、加水分解を100%進行させるための水を4質量部(1.1当量相当)、それぞれ添加し、酸化チタン粒子が合一しないように強力に分散処理させた。得られた分散液を乾燥させた後、得られた固形分を解砕して、表面処理された金属酸化物粒子1を得た。
【0104】
(合成例2)
合成例1で得られた表面処理された金属酸化物粒子1を100質量部、トルエン300質量部に分散させ、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)4質量部を添加し、金属酸化物粒子が合一しないように強力に分散処理させた。得られた分散液を乾燥させた後、得られた固形分を解砕して、表面処理された金属酸化物粒子2を得た。
【0105】
(合成例3)
平均一次粒子径35nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、MT−500B)100質量部を、エタノール500質量部に分散させ、Mシリケート51(多摩化学工業株式会社製、メトキシシランオリゴマー、平均重合度4)を16質量部添加した後、2%塩酸溶液を0.3質量部、水を3.4質量部それぞれ添加し、酸化チタン粒子が合一しないように強力に分散処理させた。得られた分散液を乾燥させた後、得られた固形分を解砕して、表面処理された金属酸化物粒子3Aを得た。
【0106】
得られた表面処理された金属酸化物粒子3Aを、合成例2と同様にして、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901、略称:共重合メチコン)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子3を得た。
【0107】
(合成例4)
平均一次粒子径35nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、MT−500B)100質量部を、エタノール500質量部に分散させ、エチルシリケート48(コルコート社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度10)を19質量部添加した後、2%塩酸溶液を0.3質量部、水を3質量部、それぞれ添加し、酸化チタン粒子が合一しないように強力に分散処理させた。得られた分散液を乾燥させた後、得られた固形分を解砕して、表面処理された金属酸化物粒子4Aを得た。
【0108】
得られた表面処理された金属酸化物粒子4Aを、合成例2と同様にして、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901、略称:共重合メチコン)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子4を得た。
【0109】
(合成例5)
合成例2において、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)4質量部を、ヘキシルトリメトキシシラン6質量部に変更した以外は同様にして、表面処理された金属酸化物粒子5を得た。
【0110】
(合成例6)
合成例1において、平均一次粒子径35nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、MT−500B)を、平均一次粒子径10nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、AMT−100)に変更した以外は同様にして、表面処理された金属酸化物粒子6Aを得た。
【0111】
次いで、表面処理された金属酸化物粒子6Aを、合成例2と同様にしてジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子6を得た。
【0112】
(合成例7)
平均一次粒子径30nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、AMT−600)100質量部を、エタノール500質量部に分散させ、エチルシリケート48(コルコート社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度10)を20質量部添加した後、2%塩酸溶液を0.3質量部、水を3質量部、それぞれ添加し、酸化チタン粒子が合一しないように強力に分散処理させた。得られた分散液を乾燥させた後、得られた固形分を解砕して、表面処理された金属酸化物粒子7Aを得た。
【0113】
次いで、表面処理された金属酸化物粒子7Aを合成例2と同様にジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子7を得た。
【0114】
(合成例8)
テトラメトキシシラン30質量部、テトラエトキシシラン40質量部に、溶媒としてエタノール8質量部、触媒として0.01%の硫酸溶液を1質量部加えた。得られた溶液に、当該溶液のアルコキシ基と同じ当量のイオン交換水を3.5時間かけて滴下し、30分間攪拌した。得られた反応液から副生したアルコールおよび添加エタノールを溜去した後、イオン交換樹脂膜に通して脱酸させて、メトキシエトキシ混合シランオリゴマーを得た。メトキシエトキシ混合シランオリゴマーの平均重合度を、強熱減量法で測定したところ、4.5であった。
【0115】
次いで、合成例3において、シリケート40(多摩化学工業株式会社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度5)20質量部を前述のメトキシエトキシ混合シランオリゴマー(平均重合度4.5)22質量部に、水4質量部を水3.2質量部に、それぞれ変更した以外は同様にして表面処理された金属酸化物粒子8Aを得た。
【0116】
次いで、表面処理された金属酸化物粒子8Aを、合成例2と同様にしてジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子8を得た。
【0117】
(合成例9)
合成例1において、金属酸化物粒子の原料である平均一次粒子径35nmの酸化チタン粒子(テイカ社製、MT−500B)を、平均一次粒子径30nmの酸化亜鉛粒子(テイカ社製、MZ300)に変更した以外は同様にして、表面処理された金属酸化物粒子9を得た。
【0118】
(合成例10)
合成例9で得られた、表面処理された金属酸化物粒子9を、合成例2と同様にしてジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子10を得た。
【0119】
(合成例11)
合成例1において、シリケート40(多摩化学工業株式会社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度5)20質量部をテトラエトキシシラン28質量部に、水4質量部を5.3質量部に、それぞれ変更した以外は同様にして、表面処理された金属酸化物粒子11を得た。
【0120】
(合成例12)
表面処理された金属酸化物粒子11を、合成例2と同様にしてジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子12を得た。
【0121】
(合成例13)
合成例1において、エチルシリケート40(コルコート社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度10)20質量部をテトラエトキシシラン28質量部に、水3質量部を5.3質量部にそれぞれ添加し、酸化チタン粒子が合一しないように強力に分散処理させた。得られた分散液を乾燥させた後、得られた固形分を解砕して、表面処理された金属酸化物粒子13Aを得た。
【0122】
次いで、表面処理された金属酸化物粒子13Aを、合成例2と同様にしてジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子13を得た。
【0123】
(合成例14)
平均一次粒子径35nmの酸化チタン粒子(テイカ社製MT―500B)70質量部を、水1000質量部に分散させ、攪拌および懸濁させた。得られた酸化チタン粒子の水性懸濁液5Lに、苛性ソーダを添加してpH9.0以上とした。次いで、200g/lのケイ酸ソーダ水溶液を175ml(SiOが酸化チタン粒子に対して10質量%となる量)添加して、80℃まで昇温した後、硫酸を3時間かけて滴下し、pH6.5となるように中和した。得られた溶液をろ過した後、洗浄した。しかしながら、酸化チタン粒子の溶液安定性が高いため、表面処理された酸化チタン粒子を十分な収量で得ることができなかった。
【0124】
(合成例15)
合成例9において、シリケート40(多摩化学工業株式会社製、エトキシシランオリゴマー、平均重合度5)20質量部をテトラエトキシシラン28質量部に、水4質量部を5.3質量部に、それぞれ変更した以外は同様にして、表面処理された金属酸化物粒子15を得た。
【0125】
(合成例16)
表面処理された金属酸化物粒子15を、合成例2と同様にしてジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製、KF9901)で処理して、表面処理された金属酸化物粒子16を得た。
【0126】
合成例1〜16で得られた、表面処理された金属酸化物粒子1〜16の構成を表1に示す。
【表1】

【0127】
2.電子写真感光体の作製
(実施例1)
1)導電性支持体の作製
長さ362mm、外径59.95mm、表面粗さRz0.75μmのアルミニウム合金製円筒状基体を準備した。
【0128】
2)中間層の形成
バインダ樹脂としての下記ポリアミド樹脂(N−1)1質量部を、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比45/20/35)の混合溶媒20質量部に加えて、20℃で攪拌混合した。この溶液に、上記表面処理された酸化チタン粒子1を4.2質量部添加し、ビーズミルで分散させた。ビーズミルによる分散は、ビーズの充填率80%、周速4m/s、ミル滞留時間3時間の条件で行った。得られた溶液を、5μmフィルタで濾過して中間層用塗布液を得た。
ポリアミド樹脂(N−1)
【化4】

【0129】
アルミニウム合金製円筒状基体を洗浄した後、得られた中間層用塗布液を浸漬塗布法によって塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層を形成した。得られた中間層に含まれる、表面処理された酸化チタン粒子(P)とバインダ樹脂(B)の体積比P/Bは1.0であった。
【0130】
3)電荷発生層の形成
電荷発生物質CG−1の合成
1,3−ジイミノイソインドリン29.2gをオルトジクロロベンゼン200mlに分散させ、チタニウムテトラ−n−ブトキシド20.4gを加えて、窒素雰囲気下、150〜160℃で5時間加熱した。得られた溶液を放冷した後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムによる洗浄、2%塩酸水溶液による洗浄、水洗、およびメタノールによる洗浄を順次実施した。洗浄後、得られた結晶を乾燥させて、26.2gの粗チタニルフタロシアニンを得た。
【0131】
得られた粗チタニルフタロシアニンを、5℃以下で、濃硫酸250ml中で1時間攪拌して溶解させ、20℃の水5Lに注入して結晶を析出させた。この溶液を濾過した後、得られた結晶を水で十分に洗浄して、ウエットペースト品225gを得た。次いで、ウエットペースト品を冷凍庫にて凍結させ、解凍した後、濾過および乾燥して、無定型チタニルフタロシアニン24.8g(収率86%)を得た。
【0132】
得られた無定型チタニルフタロシアニン10.0gと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール0.94g(無定型チタニルフタロシアニンに対する(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの当量比が0.6)とを、オルトジクロロベンゼン(ODB)200ml中にて混合し、60〜70℃で6時間加熱撹拌した。得られた溶液を一夜静置した後、メタノールをさらに添加して結晶を析出させた。この溶液を濾過した後、得られた結晶をメタノールで洗浄して、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含む電荷発生物質CG−1を10.3g得た。
【0133】
電荷発生物質CG−1のX線回折スペクトルを測定した結果、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°にピークが確認された。また、マススペクトルでは、576と648にピークが確認された。また、IRスペクトルでは、970cm−1付近のTi=Oの吸収ピークと、630cm−1付近のO−Ti−Oの吸収ピークとが確認された。また、熱分析(TG)では、390〜410℃において、約7%の質量減少が確認された。これらの結果から、得られた電荷発生物質CG−1は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と、チタニルフタロシアニン(非付加体)との混晶であると推定した。得られた電荷発生物質CG−1のBET比表面積を、流動式比表面積自動測定装置(マイクロメトリックス・フローソープ型:島津製作所)で測定した結果、31.2m/gであった。
【0134】
電荷発生層用塗布液の調製および電荷発生層の形成
下記成分を混合し、循環式超音波ホモジナイザーRUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz、600W)にて、循環流量40L/hrの条件で0.5時間分散させて、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、前述と同様の浸漬塗布法によって、中間層上に塗布した後、乾燥させて、厚さ0.5μmの電荷発生層を形成した。
(電荷発生層用塗布液)
電荷発生物質:CG−1 24質量部
バインダ樹脂:ポリビニルブチラール(積水化学社製、エスレックBL−1) 12質量部
分散溶媒:3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン(体積比4/1) 400質量部
【0135】
4)電荷輸送層の形成
下記成分を混合して電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、前述と同様の浸漬塗布法によって電荷発生層上に塗布した後、110℃、60分間乾燥させて、厚さ20μmの電荷輸送層を形成した。これにより電子写真感光体を得た。
(電荷輸送層用塗布液)
電荷輸送物質:下記化合物 200質量部
バインダ樹脂:ポリカーボネート「ユーピロンZ300」(三菱瓦斯化学社製)
300質量部
酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−4−フェニルフェノール 5質量部
分散溶媒:トルエン/テトラヒドロフラン=1/9(v/v) 2000質量部
【化5】

【0136】
作製した感光体の反射スペクトルを、光学式膜厚測定装置Solid Lambda Thickness(スペクトラコープ社製)を用いて測定した。感光体の反射スペクトルは、ベースラインとして測定したアルミニウム支持体の反射率を100%(基準)とした場合の、感光体の反射率の各波長における相対反射率として測定した。得られた吸収スペクトルの、干渉縞による凹凸を除去するために、765〜795nmの範囲と、685〜715nmの範囲の吸収スペクトルを二次の多項式で近似した。そして、780nmにおける吸光度(Abs780)と700nmにおける吸光度(Abs700)との比(Abs780/Abs700)を算出したところ、0.99であった。
【0137】
(実施例2〜10)
中間層用塗布液に含まれる表面処理された金属酸化物粒子1を、表1の表面処理された金属酸化物粒子2〜10にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0138】
(比較例1〜6)
中間層用塗布液に含まれる表面処理された金属酸化物粒子1を、表1の表面処理された金属酸化物粒子11〜16にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0139】
得られた感光体を用いて画像を形成したときの、1)階調性、2)黒ポチおよび3)カブリを、以下の方法で評価した。
【0140】
画像の形成
コニカミノルタビジネステクノジーズ社製bizhub PRO C6501(レーザー露光、反転現像、中間転写体のタンデムカラー複合機)において、得られた感光体をブラック(Bk)の位置に配置した。そして、下記条件で画像を形成した。
【0141】
1)階調性
低温低湿条件下(5℃、10%RH)で、王子製紙社製PODグロスコート(100g/m)上に、白画像から黒ベタ画像まで60の階調段差を有するオリジナル画像を形成した。得られたオリジナル画像の階調性を、十分な昼光条件下にて目視観察した。そして、識別可能な階調段差の合計数(合計段差数)を求めて、以下の基準で評価した。
◎:階調性が21段差以上(良好)
○:階調性が12〜20段差(実用上問題なし)
△:階調性が8〜11段差(階調性が重視されない画質では実用性あり)
×:階調性が7段差以下(実用上問題あり)
【0142】
2)黒ポチ
20℃、50%RH条件下で、中性紙上に、YMCBkの各色の印字率が2.5%であるA4サイズの画像を20万枚形成した。その後、スコロトロン帯電器のグリッド帯電電圧を−1000V、反転現像の現像バイアスを−800Vに設定して、高温高湿条件下(35℃、85RH%)で、A4紙10000枚に連続的にA4サイズの白ベタ画像を形成した。そして、画像形成開始時と終了時のそれぞれにおいて、白ベタ画像上の黒ポチの有無を目視観察した。
◎:開始時、終了時ともに黒ポチなし
○:開始時には黒ポチはないが、終了時には少量の黒ポチ(A4紙で6個以下)が認められる(実用上問題ないレベル)
×:初期から黒ポチが認められ、終了時には多量の黒ポチ(A4紙で6個超)が認められる
【0143】
3)カブリ
画像が形成されていない記録紙(王子製紙(株)製、PODグロスコート、100g/m、A3サイズ)を準備した。そして、前記記録紙をブラック(Bk)の位置まで搬送し、グリッド電圧−800V、現像バイアス−650Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成した。そして、得られた記録紙上のカブリの有無を評価した。
【0144】
同様にして、画像が形成されていない記録紙の代わりに、黄色ベタ画像が形成された記録紙(王子製紙(株)製、PODグロスコート、100g/m、A3サイズ)を準備した。そして、当該記録紙を、ブラック(BK)の位置まで搬送し、前述と同様にして無地画像(黄色ベタ画像)を形成した。そして、得られた記録紙上のカブリの有無を評価した。カブリの有無の評価は、以下の基準に基づいて行った。
◎:カブリなし
○:拡大すると僅かにカブリがみられるが、実用上問題ないレベル
×:目視で僅かにカブリがみられ、実用上問題となるレベル(NG)
【0145】
実施例1〜10および比較例1〜6の評価結果を表2に示す。
【表2】

【0146】
表2に示されるように、式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーで表面処理された金属酸化物粒子を用いた実施例1〜10の感光体は、良好な階調性を示し、かつ黒ポチやカブリなどの画像欠陥を抑制できることがわかる。一方、テトラアルコキシシラン(モノマー)で表面処理された金属酸化物粒子を用いた比較例1〜6の感光体は、良好な階調性を示すものの、黒ポチやカブリを抑制できないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の電子写真感光体は、電子輸送性を維持しつつ、ブロッキング性に優れた中間層を有する。それにより、カブリやポチなどの画像欠陥を抑制することができる。
【符号の説明】
【0148】
10 電子写真感光体
12 導電性支持体
14 中間層
16 電荷発生層
18 電荷輸送層
100 画像形成装置
110Y、110M、110C、110Bk 画像形成ユニット
111Y、111M、111C、111Bk 感光体ドラム
113Y、113M、113C、113Bk 帯電手段
115Y、115M、115C、115Bk 露光手段
117Y、117M、117C、117Bk 現像手段
119Y、119M、119C、119Bk クリーニング手段
130 無端ベルト状中間転写体ユニット
131 無端ベルト状中間転写体(記録媒体)
133Y、133M、133C、133Bk 一次転写ローラ(転写手段)
135 クリーニング手段
137A、137B、137C、137D ローラ
150 給紙搬送手段
170 定着手段
200 プロセスカートリッジ
201 筐体
203R、203L 支持レール
211 給紙カセット
213A、213B、213C、213D 中間ローラ
215 レジストローラ
217 二次転写ローラ(転写手段)
219 排紙ローラ
221 排紙トレイ
P 転写材(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、前記導電性支持体上に配置された感光層と、前記導電性支持体と前記感光層との間に配置された中間層と、を有する電子写真感光体であって、
前記中間層が、金属酸化物粒子と、バインダ樹脂とを含み、
前記金属酸化物粒子が、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーによって表面処理されている、電子写真感光体。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)において、
およびRは、それぞれ独立に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し;複数のRおよびRは、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく;
nは、2〜20の整数を表し;
mおよびlは、それぞれ独立に0以上の整数を表し、かつm+l=2n+2を満たす)
【請求項2】
前記金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子が、前記一般式(1)で表されるアルコキシシランオリゴマーにより表面処理された後、反応性シリコーンオイルまたはアルコキシシランにより表面処理されている、請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子の数平均一次粒子径は、10〜50nmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記感光層が、チタニルフタロシアニン顔料と2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料との混合物を含み、かつ
前記感光層の反射スペクトルから換算して得られる780nmにおける吸光度(Abs780)と700nmにおける吸光度(Abs700)との比(Abs780/Abs700)が0.8〜1.1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
画像形成装置に着脱可能に装着されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付与する現像手段、前記電子写真感光体の表面に付与されたトナーを記録媒体上に転写させる転写手段、転写後の前記電子写真感光体の表面を除電する除電手段、および前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段と、を有し、
前記電子写真感光体と、前記少なくとも1つの手段とが一体的に構成されている、プロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記電子写真感光体の表面に露光する露光手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付与する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナーを記録媒体上に転写させる転写手段と、
転写後の前記電子写真感光体の表面を除電する除電手段と、
前記電子写真感光体の表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、を有する、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−50603(P2013−50603A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188849(P2011−188849)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】