説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、電子写真感光体の製造方法

【課題】リークが発生しにくい電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、該電子写真感光体を製造する方法を提供する。
【解決手段】電子写真感光体の導電層が金属酸化物粒子として異元素がドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子を含有し、直流電圧のみの電圧−1.0kVを導電層に連続印加する試験を行った場合の導電層を流れる最大電流量の絶対値をIa[μA]とし、導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が初めて1%以下になったときの導電層を流れる電流量の絶対値をIb[μA]としたとき、Ia≦6000および10≦Ibを満足し、試験を行う前の導電層の体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体(有機電子写真感光体)の研究開発が盛んに行われている。
電子写真感光体は、基本的には、支持体と、該支持体上に形成された感光層とから構成される。しかしながら、現状は、支持体の表面の欠陥の隠蔽、感光層の電気的破壊に対する保護、帯電性の向上、支持体から感光層への電荷注入阻止性の改良などのために、支持体と感光層との間には、各種の層が設けられることが多い。
【0003】
支持体と感光層との間に設けられる層の中でも、支持体の表面の欠陥の隠蔽を目的として設けられる層としては、金属酸化物粒子を含有する層が知られている。金属酸化物粒子を含有する層は、一般的に、金属酸化物粒子を含有しない層に比べて導電性が高く(例えば、体積抵抗率で1.0×10〜5.0×1012Ω・cm)、層の膜厚を厚くしても、画像形成時の残留電位の上昇が生じにくい。そのため、支持体の表面の欠陥を隠蔽することが容易である。このような導電性の高い層(以下「導電層」という。)を支持体と感光層との間に設けて支持体の表面の欠陥を隠蔽することにより、支持体の表面の欠陥の許容範囲は大きくなる。その結果、支持体の使用許容範囲が大幅に広がるため、電子写真感光体の生産性の向上が図れるという利点がある。
【0004】
特許文献1には、支持体と光導電層との間の中間層にリンがドープされている酸化スズ粒子を用いる技術が開示されている。また、特許文献2には、感光層上の保護層にタングステンがドープされている酸化スズ粒子を用いる技術が開示されている。また、特許文献3には、支持体と感光層との間の導電層に酸素欠損型の酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子を用いる技術が開示されている。また、特許文献4には、支持体と感光層との間の中間層に酸化スズで被覆されている硫酸バリウム粒子を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−222600号公報
【特許文献2】特開2003−316059号公報
【特許文献3】特開2007−47736号公報
【特許文献4】特開平06−208238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、上記のような金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した電子写真感光体を用いて低温低湿環境下で繰り返して画像形成を行うと、電子写真感光体にリークが発生しやすくなることが判明した。リークとは、電子写真感光体の局所部分で絶縁破壊が発生し、その部分に過剰な電流が流れる現象のことである。リークが発生すると、電子写真感光体を十分に帯電することができず、黒点、横白筋、横黒筋などの画像不良につながる。
【0007】
本発明の目的は、金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した電子写真感光体であっても、リークが発生しにくい電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、該電子写真感光体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、円筒状支持体と、
該円筒状支持体上に形成された、結着材料および金属酸化物粒子を含有する導電層と、該導電層上に形成された感光層と
を有する電子写真感光体において、
該金属酸化物粒子が、異元素がドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子であり、
直流電圧のみの電圧−1.0kVを該導電層に連続印加する試験を行った場合の該導電層を流れる最大電流量の絶対値をIa[μA]とし、該導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が初めて1%以下になったときの該導電層を流れる電流量の絶対値をIb[μA]としたとき、該Iaおよび該Ibが、下記関係式(i)および(ii)を満足し、
Ia≦6000 ・・・(i)
10≦Ib ・・・(ii)
該試験を行う前の該導電層の体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0009】
また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0010】
また、本発明は、上記電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置である。
【0011】
また、本発明は、円筒状支持体上に体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下の導電層を形成する工程、および、該導電層上に感光層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法であって、該導電層を形成する工程が、溶剤、結着材料および粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下の金属酸化物粒子を用いて導電層用塗布液を調製し、該導電層用塗布液を用いて該導電層を形成する工程であり、該導電層用塗布液における金属酸化物粒子(P)と結着材料(B)の質量比(P/B)が、1.5/1.0以上3.5/1.0以下であり、該金属酸化物粒子が、リンがドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子であることを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属酸化物粒子を含有する層を導電層として採用した電子写真感光体であっても、リークが発生しにくい電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置、ならびに、該電子写真感光体を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための図(上面図)である。
【図3】導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための図(断面図)である。
【図4】針耐圧試験装置の一例を示す図である。
【図5】直流成分のみの電圧−1.0kVを導電層に連続印加する試験を説明するための図である。
【図6】導電性ローラーの概略構成を示す図である。
【図7】導電性ローラーの抵抗の測定方法を説明するための図である。
【図8】Ia[μA]およびIb[μA]を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電子写真感光体は、円筒状支持体(以下単に「支持体」ともいう。)、該円筒状支持体上に形成された導電層、および、該導電層上に形成された感光層を有する電子写真感光体である。感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質を単一の層に含有させた単層型感光層であってもよいし、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光層であってもよい。また、必要に応じて、円筒状支持体上に形成される導電層と感光層との間に下引き層を設けてもよい。
【0015】
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属で形成されている金属製支持体を用いることができる。アルミニウムやアルミニウム合金を用いる場合は、押し出し工程および引き抜き工程を含む製造方法により製造されるアルミニウム管や、押し出し工程およびしごき工程を含む製造方法により製造されるアルミニウム管を用いることができる。このようなアルミニウム管は、表面を切削することなく良好な寸法精度や表面平滑性が得られるうえ、コスト的にも有利である。しかしながら、無切削のアルミニウム管の表面にはササクレ状の凸状欠陥が生じやすいため、導電層を設けることが特に有効である。
【0016】
本発明においては、支持体の表面の欠陥の隠蔽を目的として、支持体上には、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下の導電層が設けられる。なお、この導電層の体積抵抗率は、後述の直流電圧連続印加試験を行う場合、直流電圧連続印加試験の前に測定された体積抵抗率を意味する。支持体の表面の欠陥を隠蔽するための層として、体積抵抗率が5.0×1012Ω・cmを超える層を支持体上に設けると、画像形成時に電荷の流れが滞りやすくなり、残留電位が上昇しやすくなる。一方、導電層の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm未満であると、導電層中を流れる電荷の量が多くなりすぎて、リークが発生しやすくなる。
【0017】
図2および図3を用いて、電子写真感光体の導電層の体積抵抗率を測定する方法を説明する。図2は、導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための上面図であり、図3は、導電層の体積抵抗率の測定方法を説明するための断面図である。
導電層の体積抵抗率は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において測定する。導電層202の表面に銅製テープ203(住友スリーエム(株)製、型番No.1181)を貼り、これを導電層202の表面側の電極とする。また、支持体201を導電層202の裏面側の電極とする。銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加するための電源206、および、銅製テープ203と支持体201との間を流れる電流を測定するための電流測定機器207をそれぞれ設置する。また、銅製テープ203に電圧を印加するため、銅製テープ203の上に銅線204を載せ、銅線204が銅製テープ203からはみ出さないように銅線204の上から銅製テープ203と同様の銅製テープ205を貼り、銅製テープ203に銅線204を固定する。銅製テープ203には、銅線204を用いて電圧を印加する。
【0018】
銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加しないときのバックグラウンド電流値をI[A]とし、直流電圧(直流成分)のみの電圧を−1V印加したときの電流値をI[A]とし、導電層202の膜厚d[cm]、導電層202の表面側の電極(銅製テープ203)の面積をS[cm]とするとき、下記数式(1)で表される値を導電層202の体積抵抗率ρ[Ω・cm]とする。
ρ=1/(I−I)×S/d[Ω・cm] ・・・(1)
【0019】
この測定では、絶対値で1×10−6A以下という微小な電流量を測定するため、電流測定機器207としては、微小電流の測定が可能な機器を用いて行うことが好ましい。そのような機器としては、例えば、横河ヒューレットパッカード社製のpAメーター(商品名:4140B)などが挙げられる。
【0020】
なお、導電層の体積抵抗率は、支持体上に導電層のみを形成した状態で測定しても、電子写真感光体から導電層上の各層(感光層など)を剥離して支持体上に導電層のみを残した状態で測定しても、同様の値を示す。
【0021】
導電層は、溶剤、結着材料および金属酸化物粒子を用いて調製された導電層用塗布液を用いて形成することができる。また、本発明においては、金属酸化物粒子として、異元素がドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子(以下「酸化スズ被覆酸化チタン粒子」ともいう。)が用いられる。異元素がドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子の中でも、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子が好適に用いられる。
【0022】
導電層用塗布液は、金属酸化物粒子(酸化スズ被覆酸化チタン粒子)を結着材料とともに溶剤に分散させることによって調製することができる。分散方法としては、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。導電層は、上記のように調製された導電層用塗布液を支持体上に塗布し、これを乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0023】
また、耐リーク性の向上および残留電位上昇の抑制の観点から、導電層に直流電圧(直流成分)のみの電圧−1.0kVを連続印加する試験(「直流電圧連続印加試験」ともいう。)を行った場合の導電層を流れる最大電流量の絶対値をIa[μA]とし、導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が初めて1%以下になったときの導電層を流れる電流量の絶対値をIb[μA]としたとき、IaおよびIbが、下記関係式(i)および(ii)を満足することが好ましい。直流電圧連続印加試験の詳細については、後述する。 Ia≦6000 ・・・(i)
10≦Ib ・・・(ii)
【0024】
以下、上記最大電流量の絶対値であるIaを「最大電流量Ia」ともいい、上記電流量の絶対値であるIbを「電流量Ib」ともいう。
【0025】
導電層を流れる最大電流量Iaが6000μAを超えると、電子写真感光体の耐リーク性が低下しやすくなる。最大電流量Iaが6000μAを超える導電層は、局所的に過剰に電流が流れやすく、リークを引き起こす絶縁破壊が生じやすいと考えられる。耐リーク性をより向上させるには、最大電流量Iaは5000μA以下(Ia≦5000 ・・・(iii))であることが好ましい。
【0026】
一方、導電層を流れる電流量Ibが10μA未満であると、画像形成時の電子写真感光体の残留電位が上昇しやすくなる。電流量Ibが10μA未満の導電層は、残留電位の上昇を引き起こす電荷の流れの滞りが生じやすいと考えられる。残留電位の上昇をより抑えるには、電流量Ibは20μA以上(20≦Ib ・・・(iv))であることが好ましい。
【0027】
また、耐リーク性の向上の観点から、あるいは、最大電流量Iaを6000μA以下にする観点から、導電層の金属酸化物粒子として用いられる酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。
【0028】
酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm未満であると、電子写真感光体の耐リーク性が低下しやすくなる。これは、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率に応じて、酸化スズ被覆酸化チタン粒子によって形成される導電層中の導電パスの状態が異なるためであると考えられる。酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm未満である場合、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の個々を流れる電荷の量は多くなりやすい。一方、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上である場合、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の個々を流れる電荷の量は少なくなりやすい。具体的にいえば、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm未満の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて形成された導電層であっても、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて形成された導電層であっても、両者(導電層)の体積抵抗率が同じである場合は、両者を流れるトータルの電荷の量は同じであると考えられる。導電層を流れるトータルの電荷の量が同じであれば、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm未満の酸化スズ被覆酸化チタン粒子と、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上の酸化スズ被覆酸化チタン粒子とでは、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の個々に流れる電荷の量が異なることになる。
【0029】
このことは、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm未満の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて形成された導電層と、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて形成された導電層とでは、導電層中の導電パスの数が異なることを意味する。具体的には、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて形成された導電層の方が、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm未満の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて形成された導電層に比べて、導電層中の導電パスの数が多いと推測される。
【0030】
したがって、粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上の酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いて導電層を形成した場合、導電層中の導電パス1本あたりを流れる電荷の量が比較的少なくなり、各導電パスにおいて局所的に過剰な電流が流れることが抑制されることになり、電子写真感光体の耐リーク性の向上につながっていると考えられる。耐リーク性をより向上させるには、導電層の金属酸化物粒子として用いられる酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率は、3.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。
【0031】
また、残留電位上昇の抑制の観点から、あるいは、電流量Ibを10μA以上にする観点から、導電層の金属酸化物粒子として用いられる酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率は、1.0×10Ω・cm以下であることが好ましい。
【0032】
酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率が1.0×10Ω・cmを超えると、画像形成時に電子写真感光体の残留電位が上昇しやすくなる。また、導電層の体積抵抗率を5.0×1012Ω・cm以下に調整しにくくなる。残留電位上昇をより抑制するには、導電層の金属酸化物粒子として用いられる酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率は、5.0×10Ω・cm以下であることが好ましい。
【0033】
以上の理由より、導電層の金属酸化物粒子として用いられる酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下であることが好ましく、3.0×10Ω・cm以上5.0×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
【0034】
酸化スズ被覆酸化チタン粒子は、酸素欠損型の酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(以下「酸素欠損型酸化スズ被覆酸化チタン粒子」ともいう。)よりも、電子写真感光体の耐リーク性を向上させる効果が大きく、また、画像形成時の残留電位の上昇を抑える効果も大きい。耐リーク性を向上させる効果が大きい理由については、金属酸化物粒子として酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いた導電層は、酸素欠損型酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いた導電層に比べて、最大電流量Iaが小さく、耐圧性が高いためと考えられる。また、画像形成時の残留電位の上昇を抑える効果が大きい理由については、酸素欠損型酸化スズ被覆酸化チタン粒子は、酸素存在下で酸化して酸化スズ(SnO)中の酸素欠損部位が消失し、粒子の抵抗が高くなり、導電層における電荷の流れが滞りやすくなるのに対して、酸化スズ被覆酸化チタン粒子では、そのようなことが生じにくいためと考えられる。
【0035】
酸化スズ被覆酸化チタン粒子における酸化スズ(SnO)の割合(被覆率)は、10〜60質量%であることが好ましい。酸化スズ(SnO)の被覆率を制御するためには、酸化スズ被覆酸化チタン粒子を製造するときに、酸化スズ(SnO)を生成するのに必要なスズ原材料を配合する必要がある。例えば、スズ原材料として塩化スズ(SnCl)を用いる場合、塩化スズ(SnCl)から生成される酸化スズ(SnO)の量を考慮した仕込みである必要がある。なお、この場合の被覆率は、酸化スズ(SnO)にドープされている異元素(リン(P)など)の質量を考慮に入れず、酸化スズ(SnO)と酸化チタン(TiO)の合計質量に対する酸化スズ(SnO)の質量により計算した値とする。酸化スズ(SnO)の被覆率が10質量%より小さい場合、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率を1.0×10Ω・cm以下に調整しにくくなる。被覆率が60質量%より大きい場合、酸化スズ(SnO)による酸化チタン(TiO)粒子の被覆が不均一になりやすく、また、高コストになりやすく、また、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率を1.0×10Ω・cm以上に調整しにくい。
【0036】
また、酸化スズ(SnO)にドープされる異元素(リン(P)など)の量は、酸化スズ(SnO)(異元素(リン(P)など)を含まない質量)に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。酸化スズ(SnO)にドープされる異元素(リン(P)など)の量が0.1質量%より少ない場合、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率を1.0×10Ω・cm以下に調整しにくくなる。酸化スズ(SnO)にドープされる異元素(リン(P)など)の量が10質量%より多い場合、酸化スズ(SnO)の結晶性が低下し、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の粉体抵抗率を1.0×10Ω・cm以上(1.0×10Ω・cm以下)に調整しにくくなる。一般的には、酸化スズ(SnO)に異元素(リン(P)など)をドープすることにより、ドープしていないものに比べて、粒子の粉体抵抗率を低くすることができる。
【0037】
なお、リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン粒子の製造方法は、特開平06−207118号公報や特開2004−349167号公報にも開示されている。
【0038】
酸化スズ被覆酸化チタン粒子などの金属酸化物粒子の粉体抵抗率の測定方法は以下のとおりである。
金属酸化物粒子の粉体抵抗率は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において測定する。本発明においては、測定装置として、三菱化学(株)製の抵抗率計(商品名:ロレスタGP)を用いた。測定対象の金属酸化物粒子は、500kg/cmの圧力で固めて、ペレット状の測定用サンプルにする。印加電圧は100Vとする。
【0039】
本発明において、導電層の金属酸化物粒子として、芯材粒子(酸化チタン粒子(TiO))を有する酸化スズ被覆酸化チタン粒子を用いるのは、導電層用塗布液における金属酸化物粒子の分散性の向上を図るためである。異元素(リン(P)など)がドープされている酸化スズ(SnO)のみからなる粒子を用いた場合、導電層用塗布液における金属酸化物粒子の粒径が大きくなりやすく、導電層の表面に凸状のブツ欠陥が発生し、耐リーク性が低下したり、導電層用塗布液の安定性が低下したりする場合がある。
【0040】
また、芯材粒子として酸化チタン(TiO)粒子を用いるのは、耐リーク性を向上させやすいからである。さらに、金属酸化物粒子としての透明性が低く、支持体の表面の欠陥を隠蔽しやすいからである。これに対して、例えば、芯材粒子として硫酸バリウム粒子を用いた場合、導電層中を流れる電荷の量が多くなりやすく、耐リーク性を向上させにくい。また、金属酸化物粒子としての透明性が高いために、支持体の表面の欠陥を隠蔽するための材料が別途必要になる場合がある。
【0041】
また、金属酸化物粒子として、非被覆の酸化チタン(TiO)粒子ではなく、異元素(リン(P)など)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子を用いるのは、非被覆の酸化チタン(TiO)粒子では、画像形成時に電荷の流れが滞りやすくなり、残留電位が上昇しやすくなるからである。
【0042】
導電層用塗布液の調製に用いられる結着材料としては、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステルなどの樹脂が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。また、これらの樹脂の中でも、他層へのマイグレーション(溶け込み)の抑制、支持体への密着性、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の分散性・分散安定性、層形成後の耐溶剤性などの観点から、硬化性樹脂が好ましく、さらに、熱硬化性樹脂がより好ましい。また、熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性のフェノール樹脂、熱硬化性のポリウレタンが好ましい。導電層の結着材料として硬化性樹脂を用いる場合、導電層用塗布液に含有させる結着材料は、該硬化性樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとなる。
【0043】
導電層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールや、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノンなどのケトンや、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルや、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルや、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0044】
また、本発明において、導電層用塗布液における金属酸化物粒子(酸化スズ被覆酸化チタン粒子)(P)と結着材料(B)の質量比(P/B)は、1.5/1.0以上3.5/1.0以下であることが好ましい。質量比(P/B)が1.5/1.0未満である場合、画像形成時に電荷の流れが滞りやすくなり、残留電位が上昇しやすくなる。また、導電層の体積抵抗率を5.0×1012Ω・cm以下に調整しにくくなる。質量比(P/B)が3.5/1.0を超える場合、導電層の体積抵抗率を1.0×10Ω・cm以上に調整しにくくなり、また、金属酸化物粒子(酸化スズ被覆酸化チタン粒子)の結着が難しくなり、導電層にクラックが発生しやすくなり、耐リーク性を向上させにくい。
【0045】
導電層の膜厚は、支持体の表面の欠陥を隠蔽するという観点から、10μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上35μm以下であることがより好ましい。 なお、本発明においては、導電層を含む電子写真感光体の各層の膜厚の測定装置として、(株)フィッシャーインストルメンツ製のFISCHERSCOPE MMSを用いた。
【0046】
また、導電層用塗布液における酸化スズ被覆酸化チタン粒子の平均粒径は、0.10μm以上0.45μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.40μm以下であることがより好ましい。平均粒径が0.10μmより小さい場合、導電層用塗布液の調製後に酸化スズ被覆酸化チタン粒子の再凝集が起こり、導電層用塗布液の安定性が低下したり、導電層の表面にクラックが発生したりすることがある。平均粒径が0.45μmより大きい場合は、導電層の表面が荒れて、感光層への局所的な電荷注入が起こりやすくなり、出力画像の白地における黒ポチが目立つようになることがある。
【0047】
導電層用塗布液における酸化スズ被覆酸化チタン粒子などの金属酸化物粒子の平均粒径の測定は、以下のとおり、液相沈降法によって行うことができる。
まず、導電層用塗布液を、その調製に用いた溶剤で透過率が0.8〜1.0の間になるように希釈する。次に、超遠心式自動粒度分布測定装置を用いて、金属酸化物粒子の平均粒径(体積標準D50)および粒度分布のヒストグラムを作成する。本発明においては、超遠心式自動粒度分布測定装置として、(株)堀場製作所製の超遠心式自動粒度分布測定装置(商品名:CAPA700)を用い、回転数3000rpmの条件で測定を行った。
【0048】
また、導電層の表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するため、導電層用塗布液には、導電層の表面を粗面化するための表面粗し付与材を含有させてもよい。表面粗し付与材としては、平均粒径が1μm以上5μm以下の樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子としては、例えば、硬化性ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂などの硬化性樹脂の粒子が挙げられる。これらの中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。樹脂粒子の比重(0.5〜2)は、酸化スズ被覆酸化チタン粒子の比重(4〜7)に比べて小さいため、導電層形成時に効率的に導電層の表面を粗面化することができる。ただし、導電層中の表面粗し付与材の含有量が多いほど、導電層の体積抵抗率が上昇する傾向にあるため、導電層の体積抵抗率を5.0×1012Ω・cm以下に調整するためには、導電層用塗布液における表面粗し付与材の含有量は、導電層用塗布液中の結着材料に対して1〜80質量%であることが好ましい。
【0049】
また、導電層用塗布液には、導電層の表面性を高めるためのレベリング剤を含有させてもよい。また、導電層用塗布液には、導電層の隠蔽性を向上させるための顔料粒子を含有させてもよい。
【0050】
導電層と感光層との間には、導電層から感光層への電荷注入を阻止するために、電気的バリア性を有する下引き層(バリア層)を設けてもよい。
【0051】
下引き層は、樹脂(結着樹脂)を含有する下引き層用塗布液を導電層上に塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0052】
下引き層に用いられる樹脂(結着樹脂)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリグルタミン酸、カゼイン、でんぷんなどの水溶性樹脂や、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリグルタミン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、下引き層の電気的バリア性を効果的に発現させるためには、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中でも、熱可塑性のポリアミドが好ましい。ポリアミドとしては、共重合ナイロンが好ましい。
【0053】
下引き層の膜厚は、0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。
【0054】
また、下引き層において電荷の流れが滞らないようにするために、下引き層には、電子輸送物質(アクセプターなどの電子受容性物質)を含有させてもよい。電子輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質や、これらの電子吸引性物質を高分子化したものなども挙げられる。
【0055】
導電層(下引き層)上には、感光層が設けられる。
【0056】
感光層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノンなどの多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩およびチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、シアニン染料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素などが挙げられる。これらの中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンが好ましい。
【0057】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂とともに溶剤に分散させることによって得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いた方法が挙げられる。
【0058】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ブチラール樹脂、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは、単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0059】
電荷発生物質と結着樹脂との割合(電荷発生物質:結着樹脂)は、10:1〜1:10(質量比)の範囲が好ましく、5:1〜1:1(質量比)の範囲がより好ましい。
【0060】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などが挙げられる。
【0061】
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0062】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質(アクセプターなどの電子受容性物質)を含有させてもよい。電子輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンなどの電子吸引性物質や、これらの電子吸引性物質を高分子化したものなども挙げられる。
【0063】
感光層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられる。
【0064】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
【0065】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンオキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、不飽和樹脂などが挙げられる。これらは、単独、混合物または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
【0066】
電荷輸送物質と結着樹脂との割合(電荷輸送物質:結着樹脂)は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。
【0067】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンや、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステルや、ジメトキシメタン、ジメトキシエタンなどのエーテルや、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素や、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換された炭化水素などが挙げられる。
【0068】
電荷輸送層の膜厚は、帯電均一性や画像再現性の観点から、3μm以上40μm以下であることが好ましく、4μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0069】
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
【0070】
感光層が単層型の感光層である場合、単層型の感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂および溶剤を含有する単層型の感光層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂および溶剤は、例えば、上記の各種のものを用いることができる。
【0071】
また、感光層上には、感光層を保護することを目的として、保護層を設けてもよい。
保護層は、樹脂(結着樹脂)を含有する保護層用塗布液を塗布し、これを乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
保護層の膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上8μm以下であることがより好ましい。
【0072】
上記各層用の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0073】
図1に、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0074】
図1において、1はドラム状(円筒状)の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0075】
回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段(一次帯電手段、帯電ローラーなど)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電手段3に印加する電圧は、直流電圧のみであってもよいし、交流電圧を重畳した直流電圧であってもよい。
【0076】
電子写真感光体1の周面に形成された静電潜像は、現像手段5のトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成されたトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに転写される。転写材Pは、電子写真感光体1の回転と同期して転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送されてくる。
【0077】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0078】
トナー像転写後の電子写真感光体1の周面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りのトナーの除去を受ける。さらに、電子写真感光体1の周面は、前露光手段(不図示)からの前露光光11により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が帯電ローラーなどの接触帯電手段である場合には、前露光は必ずしも必要ではない。
【0079】
上述の電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などから選択される少なくとも1つの構成要素とを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。また、電子写真装置は、上述の電子写真感光体1、ならびに、帯電手段3、露光手段、現像手段5および転写手段6を有する構成としてもよい。
【0080】
次に、図5および6を用いて、上述の直流電圧連続印加試験について説明する。
直流電圧連続印加試験は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において行う。
【0081】
図5は、直流電圧連続印加試験を説明するための図である。
まず、支持体201上に導電層202のみを形成した状態、もしくは、電子写真感光体から導電層202上の各層を剥離して支持体201上に導電層202のみを残した状態のもの(以下「試験用サンプル」ともいう。)200と、芯金301、弾性層302および表面層303を有する導電性ローラー300とを、両者の軸が平行になるように当接させる。その際、導電性ローラー300の芯金301の両端には、バネ403にて500gの荷重を与える。導電性ローラー300の芯金301を直流電源401につなぎ、試験用サンプル200の支持体201をアース402につなぐ。直流電圧(直流成分)のみの電圧−1.0kVの定電圧を、導電性ローラー300に、導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が初めて1%以下になるまで連続して印加する。このようにして、直流電圧のみの電圧−1.0kVが導電層202に連続印加される。図5中、404は抵抗(100kΩ)であり、405は電流計である。通常、電流量の絶対値は電圧印加直後に最大電流量Iaに達する。その後、電流量の絶対値は減少し、その減少の程度は次第に緩やかになっていき、やがて飽和域(導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が1%以下)に達する。電圧印加後のある時間をt[分]とし、その1分後をt+1[分]とし、t[分]のときの電流量の絶対値をI[μA]とし、t+1[分]のときの電流量の絶対値をIt+1[μA]とした場合、{(I−It+1)/I}×100が初めて1以下になったとき、t+1が「導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が初めて1%以下になったとき」にあたる。これを図示したものが図8である。
【0082】
図6は、上記試験に用いられる導電性ローラー300の概略構成を示す図である。
導電性ローラー300は、導電性ローラー300の抵抗を制御する中抵抗の表面層303と、試験用サンプル200の表面と均一なニップを形成するために必要な弾性を有する導電性の弾性層302と、芯金301とで構成される。
【0083】
直流成分のみの電圧−1.0kVを試験用サンプル200の導電層202に安定的に連続印加するためには、試験用サンプル200と導電性ローラー300とのニップを一定に保つことが必要である。ニップを一定に保つためには、導電性ローラー300の弾性層302の硬度とバネ403の強度を適宜調整すればよい。その他、ニップ調整用の機構を設けてもよい。
【0084】
導電性ローラー300としては、以下のようにして作製したものを用いた。以下の「部」は「質量部」を意味する。
【0085】
芯金301としては、直径6mmのステンレス製の芯金を用いた。
次に、弾性層302を以下の方法で芯金301上に形成した。
以下の材料を50℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練することによって、原料コンパウンドを調製した。
【0086】
エピクロルヒドリンゴム三元共重合体(エピクロルヒドリン:エチレンオキサイド:アリルグリシジルエーテル=40mol%:56mol%:4mol%);100部
炭酸カルシウム(軽質);30部
脂肪族ポリエステル(可塑剤);5部
ステアリン酸亜鉛;1部
2−メルカプトベンズイミダゾール(老化防止剤);0.5部
酸化亜鉛;5部
下記式で示される四級アンモニウム塩;2部
【化1】

カーボンブラック(表面未処理品、平均粒径:0.2μm、粉体抵抗率:0.1Ω・cm);5部
【0087】
このコンパウンドに、原料のゴムとしての上記エピクロルヒドリンゴム三元共重合体100部に対して、加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのジベンゾチアジルスルフィド1部およびテトラメチルチウラムモノスルフィド0.5部を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。
【0088】
この混練にて得られたコンパウンドを、芯金301上に、外径15mmのローラー状になるように押し出し成型機にて成型し、加熱蒸気加硫した後、外径が10mmになるように研磨加工を行うことによって、芯金301上に弾性層302が形成されてなる弾性ローラーを得た。この際、研磨加工においては、幅広研磨方式を採用した。弾性ローラーの長さは232mmとした。
【0089】
次に、弾性層302上に表面層303を以下の方法で被覆形成した。
以下の材料を用いて、ガラス瓶を容器として混合溶液を調製した。
【0090】
カプローラクトン変性アクリルポリオール溶液;100部
メチルイソブチルケトン;250部
導電性の酸化スズ(SnO)(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン処理品、平均粒径:0.05μm、粉体抵抗率:1×10Ω・cm);250部
疎水性シリカ(ジメチルポリシロキサン処理品、平均粒径:0.02μm、粉体抵抗率:1×1016Ω・cm);3部
変性ジメチルシリコーンオイル;0.08部
架橋PMMA粒子(平均粒径:4.98μm);80部
【0091】
この混合溶液をペイントシェーカー分散機に入れ、分散メディアとしての平均粒径0.8mmのガラスビーズを充填率80%になるように充填し、18時間分散処理することによって、分散溶液を調製した。
この分散溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)の各ブタノンオキシムブロック体1:1の混合物を、NCO/OH=1.0となるように添加することによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記弾性ローラーの弾性層302上に浸漬塗布法にて2回塗布し、これを風乾させた後、1時間160℃で乾燥させることによって、表面層303を形成した。
このようにして、芯金301、弾性層302および表面層303を有する導電性ローラー300を作製した。作製した導電性ローラーの抵抗を以下のようにして測定したところ、1.0×10Ωであった。
【0092】
図7は、導電性ローラーの抵抗の測定方法を説明するための図である。
導電性ローラーの抵抗は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において測定する。ステンレススチール製の円筒電極515と導電性ローラー300とを、両者の軸が平行になるように当接させる。その際、導電性ローラーの芯金(不図示)の両端には、500gの荷重を与える。円筒電極515としては、上記試験用サンプルと同じ外径のものを選択し、使用する。このような当接状態のまま、円筒電極515を200rpmの回転数で駆動回転させ、同じ速度で導電性ローラー300を従動回転させ、円筒電極515に外部電源53から−200Vを印加する。その際に導電性ローラー300に流れる電流値から算出される抵抗を、導電性ローラー300の抵抗とする。なお、図7中、516は抵抗であり、517はレコーダーである。
【実施例】
【0093】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。実施例および比較例中で使用した各種酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子中の酸化チタン(TiO)粒子(芯材粒子)は、すべて硫酸法により製造された純度97.7%、Bet値が7.7m/gの球状のものである。
【0094】
〈導電層用塗布液の調製例〉
(導電層用塗布液1の調製例)
金属酸化物粒子としてのリン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(粉体抵抗率:1.0×10Ω・cm、平均一次粒径:220nm)207部、結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)144部、および、溶剤としての1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:3時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。
【0095】
この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた後、分散液に表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(旧・GE東芝シリコーン(株))製、平均粒径:2μm)13.8部、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)(旧・東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))製)0.014部、メタノール6部、および、1−メトキシ−2−プロパノール6部を添加して攪拌することによって、導電層用塗布液1を調製した。
【0096】
導電層用塗布液1における金属酸化物粒子(リン(P)がドープされている酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子)の平均粒径は、0.28μmであった。
【0097】
(導電層用塗布液2〜17およびC1〜C24の調製例)
導電層用塗布液の調製の際に用いた金属酸化物粒子の種類、粉体抵抗率および量(部数)、結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)の量(部数)、ならびに、分散処理時間を、それぞれ表1および2に示すようにした以外は、導電層用塗布液1の調製例と同様の操作で、導電層用塗布液2〜17およびC1〜C24を調製した。導電層用塗布液2〜17およびC1〜C24における金属酸化物粒子の平均粒径を、それぞれ表1および2に示す。表1および2中、酸化スズは「SnO」であり、酸化チタンは「TiO」である。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
〈電子写真感光体の製造例〉
(電子写真感光体1の製造例)
押し出し工程および引き抜き工程を含む製造方法により製造された、長さ246mm、直径24mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体とした。
【0101】
常温常湿(23℃/50%RH)環境下で、導電層用塗布液1を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間140℃で乾燥および熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。導電層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、5.0×10Ω・cmであった。また、導電層の最大電流量Iaおよび電流量Ibを前述の方法で測定したところ、最大電流量Iaは5400μAであり、電流量Ibは34μAであった。
【0102】
次に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)(旧・帝国化学産業(株))製)4.5部および共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解させることによって、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを6分間70℃で乾燥させることによって、膜厚が0.85μmの下引き層を形成した。
【0103】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、分散処理時間:3時間の条件で分散処理を行い、次に、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.12μmの電荷発生層を形成した。
【0104】
次に、下記式(CT−1)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)4.8部および下記式(CT−2)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)3.2部、
【化2】

【化3】

ならびに、ポリカーボネート(商品名:Z200、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部を、ジメトキシメタン30部/クロロベンゼン70部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを30分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が7.5μmの電荷輸送層を形成した。
【0105】
このようにして、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体1を製造した。
【0106】
(電子写真感光体2〜17およびC1〜C24の製造例)
電子写真感光体の製造の際に用いた導電層用塗布液を、導電層用塗布液1から、それぞれ導電層用塗布液2〜17、C1〜C24に変更した以外は、電子写真感光体1の製造例と同様の操作で、電荷輸送層が表面層である電子写真感光体2〜17およびC1〜C24を製造した。なお、電子写真感光体2〜17およびC1〜C24の導電層の体積抵抗率ならびに最大電流量Iaおよび電流量Ibに関しても、電子写真感光体1の導電層と同様、前述の方法で測定した。その結果を表3および4に示す。なお、電子写真感光体1〜17およびC1〜C24について、導電層の体積抵抗率の測定の際に、それらの導電層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、電子写真感光体C8、C10の導電層に関しては、クラックの発生が確認された。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
(実施例1〜17および比較例1〜24)
電子写真感光体1〜17およびC1〜C24を、それぞれヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンター(商品名:HP Laserjet P1505)に装着して、低温低湿(15℃/10%RH)環境下にて通紙耐久試験を行い、画像の評価を行った。通紙耐久試験では、印字率2%の文字画像をレター紙に1枚ずつ出力する間欠モードでプリント操作を行い、3000枚の画像出力を行った。
【0110】
そして、通紙耐久試験開始時、ならびに、1500枚画像出力終了後および3000枚画像出力終了後に各1枚の画像評価用のサンプル(1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像)を出力した。
【0111】
画像の評価の基準は以下のとおりである。結果を表5および6に示す。
A:リークの発生は全くなし。
B:リークが小さな黒点としてわずかに観測される。
C:リークが大きな黒点としてはっきり観測される。
D:リークが大きな黒点と短い横黒筋として観測される。
E:リークが長い横黒筋として観測される。
【0112】
また、通紙耐久試験開始時ならびに3000枚画像出力終了後の画像評価用のサンプルを出力した後に、帯電電位(暗部電位)と露光時の電位(明部電位)を測定した。電位測定は、白ベタ画像と黒ベタ画像を各1枚ずつ用いて行った。初期(通紙耐久試験開始時)の暗部電位をVd、初期(通紙耐久試験開始時)の明部電位をVlとした。3000枚画像出力終了後の暗部電位をVd’、3000枚画像出力終了後の明部電位をVl’とした。3000枚画像出力終了後の暗部電位Vd’と初期の暗部電位Vdとの差である暗部電位変動量△Vd(=|Vd’|−|Vd|)と、3000枚画像出力終了後の明部電位Vl’と初期の明部電位Vlとの差である明部電位変動量△Vl(=|Vl’|−|Vl|)とをそれぞれ求めた。結果を表5および6に示す。
【0113】
【表5】

【0114】
【表6】

【0115】
(実施例18〜34および比較例25〜48)
上記の通紙耐久試験を行った電子写真感光体1〜17およびC1〜C24とは別に、もう1つずつ電子写真感光体1〜17およびC1〜C24を用意し、これらの針耐圧試験を以下のようにして行った。結果を表7に示す。
【0116】
図4に針耐圧試験装置を示す。針耐圧試験は、常温常湿(23℃/50%RH)環境下において行う。電子写真感光体1401の両端を固定台1402に載せ動かないように固定させる。電子写真感光体1401の表面に針電極1403の先端を接触させる。この針電極1403に、電圧を印加するための電源1404と、電流を測定するための電流計1405を、それぞれ接続する。電子写真感光体1401の支持体に接触する部分1406をアースに接続する。針電極1403から2秒間印加する電圧を0Vから10Vずつ上昇させ、針電極1403の先端が接触している電子写真感光体1401の内部でリークが発生し、電流計1405の値が10倍以上大きくなり始めた電圧を針耐圧値とする。この測定を、電子写真感光体1401の表面の5箇所について実施し、その平均値を測定した電子写真感光体1401の針耐圧値とする。
【0117】
【表7】

【符号の説明】
【0118】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
6 転写手段(転写ローラーなど)
7 クリーニング手段(クリーニングブレードなど)
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
11 前露光光
P 転写材(紙など)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状支持体と、
該円筒状支持体上に形成された、結着材料および金属酸化物粒子を含有する導電層と、該導電層上に形成された感光層と
を有する電子写真感光体において、
該金属酸化物粒子が、異元素がドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子であり、
直流電圧のみの電圧−1.0kVを該導電層に連続印加する試験を行った場合の該導電層を流れる最大電流量の絶対値をIa[μA]とし、該導電層を流れる1分あたりの電流量の減少率が初めて1%以下になったときの該導電層を流れる電流量の絶対値をIb[μA]としたとき、該Iaおよび該Ibが、下記関係式(i)および(ii)を満足し、
Ia≦6000 ・・・(i)
10≦Ib ・・・(ii)
該試験を行う前の該導電層の体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下である
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記異元素がドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子が、リンがドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記IaおよびIbが、下記関係式(iii)および(iv)を満足する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
Ia≦5000 ・・・(iii)
20≦Ib ・・・(iv)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項6】
円筒状支持体上に体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上5.0×1012Ω・cm以下の導電層を形成する工程、および、該導電層上に感光層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法であって、
該導電層を形成する工程が、溶剤、結着材料および粉体抵抗率が1.0×10Ω・cm以上1.0×10Ω・cm以下の金属酸化物粒子を用いて導電層用塗布液を調製し、該導電層用塗布液を用いて該導電層を形成する工程であり、
該導電層用塗布液における金属酸化物粒子(P)と結着材料(B)の質量比(P/B)が、1.5/1.0以上3.5/1.0以下であり、
該金属酸化物粒子が、リンがドープされている酸化スズで被覆されている酸化チタン粒子である
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子の粉体抵抗率が、3.0×10Ω・cm以上5.0×10Ω・cm以下である請求項6に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83909(P2013−83909A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39023(P2012−39023)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【特許番号】特許第5079153号(P5079153)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】