説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】本発明は、電子写真方式による画像形成装置に用いる電子写真感光体において、顔料分散系を経ることなく形成した電荷発生材料を用いた感光層を有し、これにより得られる高い画像品質と長寿命を有する電子写真感光体を提供することを目的とする。また本発明は、該電子写真感光体を用いることにより、高い画像品質と長寿命を有するプロセスカートリッジ並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも導電性支持体10上に、該導電性支持体に近い側から、少なくとも、下引き層11、電荷発生材料を含む電荷発生層120、電荷移動材料を含む電荷移動層121を、この順に形成してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含むことを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、これを用いたプロセスカートリッジならびに電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子写真方式によると、光導電性物質等の電子写真感光体(以下像担持体とも称す)上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して帯電したトナーを付着させて可視像を形成し、形成されたトナー可視像を最終的に紙等の記録媒体に転写後、熱、圧力や溶剤気体等によって転写媒体に定着して出力画像を形成している。
【0003】
このような画像形成では、可視像化のためのトナーを帯電させる方法により、トナーとキャリアの攪拌及び混合による摩擦帯電を用いる二成分現像方式と、キャリアを用いずトナーへの電荷付与を行う一成分現像方式とに大別される。この一成分現像方式では、更に、現像ローラへのトナーの保持に磁気力を使用するか否かにより、磁性一成分現像方式、非磁性一成分現像方式に分類される。
【0004】
これまで、高速性及び画像再現性を要求される複写機、又は複写機をベースとした複合機等では、トナーの帯電安定性、立ち上がり性、画像品質の長期的安定性等の要求から、二成分現像方式が多く採用されている。一方、省スペース性、低コスト化等の要求が大きい、小型のプリンタ、ファクシミリ等には、一成分現像方式が多く採用されている。
昨今、いずれの現像方式においても、出力画像のカラー化が進み、画像の高画質化や画像品質の安定化に対する要求は、これまでにも増して強くなっている。このような高画質化を図るため、トナーの平均粒径は小さくなり、その粒子形状は角張った部分がなくなり、トナーはより丸い形状になってきている。
【0005】
また、電子写真方式の画像形成装置は、現像方式の違いによらず、一般的に、ドラム形状やベルト形状をした電子写真感光体を回転させつつ一様に帯電し、レーザー光等により電子写真感光体上に潜像パターンを形成し、該潜像パターンをトナーで可視像(トナー像)化して、記録媒体上に転写を行っている。そして、記録媒体へトナー像を転写した後の電子写真感光体上には、転写されなかったトナー成分が残存する。これらの残存物が、そのまま帯電工程に搬送されると、電子写真感光体の均等な帯電を阻害するため、必要に応じて、転写工程を経た後に、電子写真感光体上に残存するトナー等を、クリーニングブレード等のクリーニング手段にて除去し、電子写真感光体表面を十分に清浄な状態とした上で、帯電が行われる。
【0006】
これら電子写真装置において用いられる電子写真感光体としては、一般的に、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光層と、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光層に大別される。
市場では、物質自体の安全性や、製造の容易さ、コストの面から、有機感光層を用いた像担持体が多く使用されている。
この有機感光層を用いた像担持体は、通常、それぞれ機能の異なる複数の層を、導電性円筒等の基体表面に、塗布・乾燥を必要な層の数だけ繰り返して、順次、層を形成して作成する。
中でも、露光により電荷を発生する電荷発生層と電荷を輸送する電荷輸送層を積層する機能分離型積層有機感光体は、感度・帯電性及びその繰り返し安定性等、電子写真特性の点で優れており、種々の提案が成され、実用化されている。
【0007】
従来の一般的な電子写真感光体の電荷発生層は、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液に電荷発生物質を分散させた分散液を塗布乾燥する事で形成している。
そして、この分散液中での電荷発生物質の分散状態が電子写真感光体としたときの電気特性や画像特性に大きな影響を与えることがわかっている。
一般に、電荷発生物質が分散液中において凝集し易い性質を有しているので、良好な電荷発生物質の分散状態を長期にわたり安定化させて保持することが、電子写真感光体としたときに良好な電気特性や画像特性を得る上で重要とされている。
特に、電荷発生物質等の凝集により分散液中に分散不良な粗大粒子が存在する場合には、これにより形成した感光層を有する電子写真感光体を繰り返し使用するときに、電気特性が不安定になりやすく、コピー画像上の地肌部分に黒点等のかぶりが発生する等の問題が生じることがあった。
また、このように、分散液中での電荷発生物質の分散状態が保存中に不安定となり易いと、分散液の保存期間(寿命)が短くなるので、良好な印字画像を得ることのできる電子写真感光体を製造する上でコストアップにつながり問題となっていた。
【0008】
そこで、特許文献1や特許文献2、特許文献3、及び、特許文献4には、分散液中での電荷発生物質の良好な分散状態を長期にわたり安定化させるために、界面活性剤等の分散助剤を添加する方法が提案されている。
また、特許文献5には、金属フタロシアニンのフタロシアニン配位子を構成する4つの芳香環(6員環)上の水素を特定の置換基(アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基)で置換し、有機溶媒に対する溶解性を向上させた可溶性フタロシアニンを分散助剤として用いた感光層形成用の分散液が提案されている。
【0009】
また、特許文献6には、加水分解性の官能基を有する有機金属化合物を用いてフタロシアニン系化合物を処理することにより得られる可溶性フタロシアニン系化合物を分散助剤として用いた感光層形成用の分散液が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び、特許文献6に記載の分散助剤を添加した分散液であっても、分散液中での電荷発生物質の良好な分散状態を長期にわたり安定化させて保持すること十分にできず、このような分散液から形成される電子写真感光体も未だ十分ではなかった。
【0011】
一方、光エネルギーを電気エネルギーに変換するという観点では、以前から太陽電池の研究が行われ、単結晶シリコンやアモルファスシリコンを用いた太陽電池は、広く実用化されている。また、これら無機系の太陽電池とは異なり、製造の容易さやコスト面での優位性を生かすべく、有機物を用いた有機太陽電池の研究も活発に行われ、特に近年、有機薄膜太陽電池用の材料開発が進んでいる。これら太陽電池用の材料は、電子写真感光体の電荷発生材料として使用できる可能性はあるものの、どのような材料が電子写真感光体に適しているのかについては、これまでに検討されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、電子写真方式による画像形成装置に用いる電子写真感光体において、顔料分散系を経ることなく形成した電荷発生材料を用いた感光層を有し、これにより得られる高い画像品質と長寿命を有する電子写真感光体を提供することを目的とする。また本発明は、該電子写真感光体を用いることにより、高い画像品質と長寿命を有するプロセスカートリッジ並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、溶剤に可溶な前駆体を熱変換したテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を電荷発生材料として用い、好ましくは、更に特定のフラーレン誘導体を併用することにより、特許文献1から特許文献6に見られるフタロシアニン系化合物微粒子分散状態の不安定さに伴う電荷発生層の不具合を根本的に回避し、高性能の電子写真感光体が得られることを見出した。
【0014】
即ち、上記課題を解決するために本発明に係る電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置は、具体的には下記(1)〜(10)に記載の技術的特徴を有する。
(1)少なくとも導電性支持体上に、該導電性支持体に近い側から、少なくとも、下引き層、電荷発生材料を含む電荷発生層、電荷移動材料を含む電荷移動層を、この順に形成してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含むことを特徴とする電子写真感光体。
(2)前記電荷発生層がシリルメチルフラーレン系の化合物を含むことを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記電荷発生層が、該導電性支持体に近い側から、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層と、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層とを、この順に形成してなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記下引き層に少なくとも電子受容材料及びN型半導性粒子を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(5)前記電子受容材料がフラーレン誘導体である事を特徴とする前記(4)に記載の電子写真感光体。
(6)前記フラーレン誘導体がシリルメチルフラーレン系化合物であることを特徴とする前記(5)に記載の電子写真感光体。
(7)前記シリルメチルフラーレン系の化合物が下記化学式(I)で表される化合物であることを特徴とする前記(2)〜(6)のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化1】

(8)少なくとも電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、該電子写真感光体上の残存トナーをクリーニングするクリーニング手段を有するプロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(9)少なくとも電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、電子写真感光体上に静電潜像を形成するための書き込み手段と、トナーにより静電潜像を可視像化する現像手段と、電子写真感光体上のトナー可視像を、中間転写媒体を介してまたは介さずに、記録媒体上へ転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着固定化する定着手段とを有する画像形成装置において、上記電子写真感光体が、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(10)少なくともプロセスカートリッジと、電子写真感光体上に静電潜像を形成するための書き込み手段と、トナーにより静電潜像を可視像化する現像手段と、電子写真感光体上のトナー可視像を、中間転写媒体を介してまたは介さずに、記録媒体上へ転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着固定化する定着手段とを有する画像形成装置において、上記プロセスカートリッジが、前記(8)に記載のプロセスカートリッジであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置によれば、電子写真感光体上に画像乱れのない静電潜像を形成することができ、且つ、その画像品質を安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置の一構成例の断面図である。
【図2】本発明のプロセスカートリッジ一例を示した図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の層構成の一例を拡大して示した部分図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の層構成の他の例を拡大して示した部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の電子写真感光体について説明する。
本発明の電子写真感光体は、少なくとも導電性支持体上に、該導電性支持体に近い側から、少なくとも、下引き層、電荷発生材料を含む電荷発生層、電荷移動材料を含む電荷移動層を、この順に形成してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含む。
電荷発生層が、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を電荷発生材料として含むことにより、電荷発生部分を均一かつ容易に形成することが可能となり、電子写真感光体の静電潜像形成性を向上させることができ、同時に電子写真感光体のコストをも抑制することが可能となる。
【0018】
なお、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ材料の代表的な構造としては、無置換の化学式(1)の分子が挙げられるが、化学式(1)のテトラベンゾポルフィリンは、溶剤に対して不溶である。
【0019】
【化2】

【0020】
しかしながら、例えば、化学式(2)〜化学式(5)のテトラベンゾポルフィリン前駆体は、一般的な溶剤に可溶であり、他の組成物と溶剤中で均一に混ざり合い、電荷発生材料の分散状態を調整する必要なく電荷発生層用の塗液とすることができる。
【化3】

【0021】
また、本発明におけるテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物としては、中心金属として銅、銀、金、白金、ニッケル、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウム等を導入した錯体、特性基としてアルキル基、フェニル基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基等を導入した化合物等が挙げられ、必要により適宜選択して使用することができる。中心金属を導入した錯体における中心金属としてはチタン、ガリウム等が好ましく挙げられる。
その場合は、例えば以下ようなテトラベンゾポルフィリン前駆体を用い、電荷発生層の塗液とすることができる。
【化4】

【0022】
上記の前駆体を用いることにより、一般的な塗液のコーティングにより、基材上に均一な塗膜を形成することができる。更に、これらのテトラベンゾポルフィリン前駆体は、溶剤が存在しない状態でも、熱エネルギーを加えることにより、逆Diels−Alder反応により、低分子量の二原子分子(化学式(2)ではエチレン、化学式(3)ではヒドロキシアセトアルデヒド)が脱離して、化学式(1)のテトラベンゾポルフィリンを生成して、溶剤に不溶となる。よって、電子写真感光体中で、均一な電荷発生部分を形成でき、電荷発生材料の偏析や分散不良による不具合を生じさせることはない。
これらのテトラベンゾポルフィリン前駆体を化学式(1)等のテトラベンゾポルフィリンに変換する際の温度としては、用いるテトラベンゾポルフィリン前駆体の種類によって変換温度が異なるので、変換温度に基づく好ましい温度条件は特定できるものではないが、揮発成分の除去を考慮すると100℃以上程度が好ましく、下引き層に使用されている材料の耐熱性などを考慮すると200℃以下程度が好ましい。
【0023】
これら、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ材料の合成については、宇野秀満、小野昇、有機合成化学協会誌、2002,60,581.に詳しく記載され、また、均一な塗膜を用いた事例として、FETデバイス作成に関して、P.B.Shea,J.Kanicki,and N.Ono,Appl.Phys.Lett.,2005,87,173506、P.B.Shea,J.Kanicki,and N.Ono,J.Appl.Phys.,2005,98,014503、S.Aramaki,Y.Sakai,and N.Ono,Appl.Phys.Lett.,2004,84,2085に記載されている。
【0024】
また、前記電荷発生層がシリルメチルフラーレン系の化合物を含むことが好ましい。
少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物及びシリルメチルフラーレン系の化合物を併用して電荷発生材料として使用することにより、エネルギー変換効率が高い電荷発生部分を容易に形成することが可能となり、電子写真感光体の静電潜像形成性を向上させることができ、同時に電子写真感光体のコストをも抑制することが可能となる。
【0025】
このように、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を電荷発生材料に使用することは、均一な電荷発生に対して大きく寄与する物であるが、シリルメチルフラーレン系の化合物と併用することにより、光電荷の発生効率を著しく向上させることができる。その光電荷発生効率のメカニズムについては必ずしも十分に明らかではないが、概ね次のように推察できる。まず、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物は、電子を供与し易く、一方シリルメチルフラーレン系の化合物は、電子を受容し易い。これらの化合物の併用により、その界面でPN接合が形成され、光電荷の授受が速やかに行われる。このPN接合部を電荷発生層中に高密度で形成することができるため、光電荷の発生効率が向上するとも考えられる。
シリルメチルフラーレン系の化合物としては、後述するように化学式(I)で表される化合物が好ましい。
【0026】
本発明の電子写真感光体の構成としては、導電性支持体上に、該導電性支持体に近い側から、少なくとも、下引き層、電荷発生層、電荷移動材料を含む電荷移動層を、この順に形成してなる電子写真感光体である。
このような構成とすることにより、電荷発生機能を主として担う層を独立して形成することにより、電荷移動機能や電荷注入防止機能等を担う部位と別個に、機能及び構成の設計を行うことができるため、より高機能な電子写真感光体を得る事ができる。
【0027】
そして、該電荷発生層は、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含む層のみ、又は、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層のみでも良いが、該導電性支持体に近い側から、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層と、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層とを、この順に形成してなる構成とすることがさらに好ましい。
【0028】
電荷発生層を上記のような2層構造とすることにより、電子供与材料と電子受容材料との併用によりPN接合が形成されるため、光エネルギーの印加(すなわち露光)による電荷発生層の下層側で電荷発生の効率を向上させることができ、更に、電荷発生層の上層側では電子供与性のテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物により構成されているため、電荷移動層へホールの供給を速やかに行うことができ、電荷の蓄積等の不具合を引き起こすことなく、少ない露光エネルギーで効率的な静電潜像の形成が行える電子写真感光体を得る事ができる。
【0029】
「少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層」におけるテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物の好ましい含有量は、この層全量の内の50質量%以上であることが好ましく、55〜75質量%であることがより好ましい。
また、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物との比は、この順の質量比で50対50から75対25程度が好ましく用いられる。
「少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層」におけるテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物の好ましい含有量は、この層全量の内の80質量%以上であることが好ましく、85〜99質量%であることがより好ましい。
また、電荷発生層の膜厚としては、0.05〜0.5μm程度が好ましく用いられる。電荷発生層を上記のような2層構造とする場合は、「少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層」の膜厚としては0.03μm〜0.45μmが好ましく、「少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層」の膜厚は、0.02μm〜0.4μmが好ましい。
【0030】
また前記下引き層は少なくとも電子受容材料及びN型半導性粒子を含有する事が好ましい。
下引き槽に電子受容材料及びN型半導性粒子を含有させることにより下引き層と電荷発生層の下層側で発生した電荷のマイナス成分が蓄積することなく、速やかに下引き層側へ速やかに移行し、高コントラストな静電潜像を形成することができる。
前記電子受容材料としては、フラーレン誘導体が好ましい。
電子受容材料としては、フラーレン誘導体を用いることにより、下引き層と電荷発生層下層部との間のエネルギーギャップを小さくすることができるため、露光で発生した電荷のマイナス成分の界面部分での蓄積を長期間にわたって生じさせることがないため、静電潜像の品質を維持することができる。
【0031】
フラーレン誘導体としては、例えば以下に示される化合物が挙げられるが、シリルメチルフラーレン系の化合物であることが好ましく、特に下記化学式(I)で表される化合物が好ましい。
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
化学式(I)で表される化合物の充填構造は、その隙間にテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物が入り込み易いサイズとなるため、電荷発生層の下層がカラム構造を形成しやすく、PN接合面がより効率的に形成されるため、より潜像形成に必要な光エネルギーが小さい、高感度な電子写真用感光体を得る事ができる。
【0034】
[用語の説明]
実施例の説明の前に、用語の説明を行う。
画像形成装置とは例えば、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などである。
【0035】
また、記録媒体は、例えば、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどの媒体である。以下では、記録媒体を用紙として説明する。
【0036】
画像形成とは、文字や図形、パターンなどの画像を記録媒体に付与すること、着色または非着色の粉体(例えば、トナー)により静電潜像を可視像化し、必要により中間転写媒体を介して、これを記録媒体に転写して定着することを意味する。
【0037】
また、着色または非着色の粉体とは、単一の樹脂粉末、複合粉末、単一または複数の色材、樹脂と色材の複合物やこれにワックス成分や無機材料を加えた粉末、これらを高次に形態制御した機能粉末を始めとするトナーなど、画像形成を行うことができる全ての粉体の総称として用い、例えば、光沢抑制粉体、光沢付与粉体、焼付け粉体、発泡性粉体なども含まれる。以下では、粉体をトナーとして説明する。
【0038】
プロセスカートリッジとは、画像形成を行うために必要な構成要素の全部または一部を一体化したものであり、少なくとも、電子写真感光体を含む。また、電子写真感光体を所定の電位するための帯電、静電潜像を形成するための書き込み、電子写真感光体上の静電潜像をトナー像にするための現像、電子写真感光体上のトナー像を記録媒体または中間転写媒体上に移すための転写、電子写真感光体上のトナー像残分を除去するためのクリーニングを行うために、必要な構成部材の全部または一部を含んでもよい。また、これら各過程の内、必要な過程が実施できるように各部材を配設可能な形態で構成する。
【0039】
[画像形成装置]
図1に本発明の画像形成装置100の一構成例の断面図を示す。画像形成装置100の画像形成部10は、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kを含む。電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト5の搬送方向に沿って設けられている。以下では、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kをまとめていう場合は、電子写真感光体1という。電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kとは、各色のトナー(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による画像を担持可能なものであり、本発明の電子写真感光体である。該画像は、書き込み装置3により電子写真感光体1に対して、書き込まれる。
ドラム状の電子写真感光体1Y,1C,1M,1Kの周囲には、それぞれ帯電装置2、書き込み装置3、現像装置4、中間転写ベルト5、及びクリーニング装置6が配置される。
【0040】
中間転写ベルト5は、ローラ50、51に架け回されている。中間転写ベルト5の内側には各像担持体1に対応して1次転写手段としての1次転写ローラ52Y、52C、52M、52Kが配置されている。また、ローラ51に対向する位置には、中間転写ベルト5上の重ね合わせ画像を記録媒体上に一括転写するための2次転写手段としての2次転写ローラ53が配置されている。
【0041】
[静電潜像形成手段]
前記静電潜像形成手段は、帯電装置2を用いて前記電子写真感光体1を帯電したのち、前記電子写真感光体1上に静電潜像を形成させる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
帯電の方法としては、以下の帯電装置2を用いて前記電子写真感光体1の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電装置2としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電装置、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電装置、等が挙げられる。比較的低い印加電圧範囲で帯電電位を確保することができ消費電力を抑制することができるとともに、発生オゾン量を抑制できるため、導電性又は半導電性のロールを像担持体に対して、接触帯電及び近接帯電のいずれかを行う、帯電ローラを有する帯電装置が、好ましい。また、接触帯電及び近接帯電のいずれかの帯電ローラを有する帯電手段を用いる場合には、当接部分で大きな押圧力が加わらないように、軟質の接触帯電ローラの使用や、加圧部材を配設しない帯電手段構成をとる事がより好ましい。
また、前記帯電装置2としては、交流成分を有する電圧を印加する電圧印加手段を有するものが好ましい。
【0043】
前記書き込み装置3は、例えば、書き込み露光装置を用いて電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記書き込み露光装置としては、帯電装置2により帯電された電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、等の各種書き込み露光装置が挙げられる。
なお、電子写真感光体の裏面側から像様に書き込み露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0044】
[現像手段]
前記現像装置4は、前記電子写真感光体1に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像して可視像を形成する手段であり、現像スリーブと、現像剤攪拌搬送機構を有する。
前記現像スリーブは、現像剤を担持すると共に、前記像担持体との対向位置まで搬送する。
前記電子写真感光体と前記現像スリーブとの間には隙間として画成される現像ギャップが形成される。
前記現像ギャップは、現像剤の汲み上げ量や、現像剤を現像スリーブ上へ保持するための磁界の強さ、現像剤中のキャリアの磁化、現像スリーブ回転速度等を考慮の上、略均等の間隙に調整して形成されるため、必ずしも特定できるものではないが、概ね、平均値として0.2〜0.4mm程度であることが好ましい。
前記現像装置としては、これらの構成を有するものであれば、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好ましい。
【0045】
[現像剤]
前記現像剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、トナーとキャリアからなる二成分現像剤が好ましい。
【0046】
前記トナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記数式(1)で表される円形度SRの平均値である平均円形度が0.93〜1.00のものが好ましく、0.95〜0.99がより好ましい。
この平均円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
[式1]
円形度SR=トナー粒子の投影面積と等しい面積を持つ円の周長/トナー粒子の周長
・・・ 数式(1)
【0047】
前記トナーの質量平均粒径(D4)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜10μmが好ましく、4μm〜8μmがより好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。前記質量平均粒径(D4)が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすいことがあり、10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しいことがある。
【0048】
[クリーニング手段]
前記クリーニング装置6としては、前記電子写真感光体の表面をクリーニングする手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該手段を実現可能なクリーニング装置を挙げることができ、中でも、前記電子写真感光体表面をクリーニングするためのクリーニングブレードを有することが好ましい。
一般に、像担持体のクリーニング方法としては、前記クリーニングブレードを用いた方法のほかに、像担持体上に残存するトナーと逆極性となるように電圧を印加したブラシを用いた、静電クリーニング方式が挙げられる。
また、電子写真感光体上のトナー像を転写後、クリーニング装置に至るまでの間に、画像形成装置本体に配設した発光素子からの光を電子写真感光体の全幅方向に照射して全面露光(クリーニング前露光)させるための導光路を形成する光ガイド部材を有していてもよい。このような構成とすることにより、静電潜像の履歴を消去し、均一に電子写真感光体の帯電を行うことができるため、より画像品質が高い安定した画像を確実に提供することができる。
【0049】
[プロセスカートリッジ]
次に、各電子写真感光体1や現像装置4等を一体に構成し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとして構成することもできる。図2に本実施例のプロセスカートリッジ300の構成例を示す。但し、色別符号は省略する。
上述した電子写真感光体1、帯電装置2、現像装置4、及びクリーニング装置6はプロセスカートリッジ300内に一体に収容されている。
帯電装置2は、帯電部材としての帯電ローラ20を有している。
現像装置4は、現像スリーブ40と、現像ケーシング内の現像剤を攪拌・搬送して循環させる現像剤攪拌搬送部材41、42を有している。現像剤攪拌搬送部材42の上部には図示しないトナー補給部が設けられている。
クリーニング装置6は、電子写真感光体1の表面にリーディング方向で接触するクリーニングブレード60を有している。また、電子写真感光体上のトナー像を転写後、クリーニング装置に至るまでの間に、画像形成装置本体に配設した発光素子からの光を電子写真感光体の全幅方向に照射して全面露光(クリーニング前露光)させるための導光路を形成する光ガイド部材9を有する。
【0050】
本発明の画像形成装置、プロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体を用いているため、安定した画像を確実に提供することができる。
【0051】
[電子写真感光体]
図3及び4に電子写真感光体1の一例の部分拡大図(概略図)を示す。電子写真感光体1は、導電性支持体10と、下引き層11と、感光層12を含む。また、感光層12は、電荷発生層120と、電荷移動層121を含む。図3においては、電荷発生層120は、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有する層である。また、図4においては電荷発生層120は、導電性支持体10に近い側から、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層1200と、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層1201とを、この順に形成してなる。
【0052】
[導電性支持体]
電子写真感光体1に用いる導電性支持体10としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものが好ましく用いられ、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、プラスチック、強化ガラス等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、仕上げ、研摩などの表面処理した管などが挙げられる。画像形成時の位置合わせ精度や、寸法安定性等の面から、支持体10は、硬質の円管状または十分な引っ張り強度を持った薄い筒状であることが好ましい。
【0053】
支持体10の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20mm〜150mmが好ましく、24mm〜100mmがより好ましく、28mm〜70mmが特に好ましい。前記直径が20mm未満であると、電子写真感光体周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150mmを超えると、画像形成装置100が大きくなってしまうことがある。
【0054】
[下引き層]
前記下引き層11としては、特に制限はなく、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば(1)樹脂を主成分としたもの、(2)電子受容材料及びN型半導性粒子と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性支持体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、電子受容材料及びN型半導性粒子と樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0055】
前記電子受容材料としては、所望の特性が得られるものであればいかなるものでも使用可能であるが、N型半導体粒子との親和性が高いものが好ましく用いられる。
水酸基を有するアントラキノン構造を基本骨格とする化合物が好ましく、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが、いずれも好ましく用いることができる。
具体的には、1,2−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1,4−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1,5−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1,2,4−トリヒドロキシ−9,10−アントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
また、フラーレンの誘導体も電子受容材料として用いることができ、フェニルC61酪酸メチルエステル、フェニルC61酪酸ブチルエステル、フェニルC61酪酸イソブチルエステル等、いずれも好ましく用いることができる。
更に、フラーレン誘導体の内、シリルメチルフラーレン系の化合物が本発明の電荷発生層との組み合わせによる電荷発生機能が良好であり、中でも、化学式(I)の構造をもつ電子受容材料の使用が好ましい。
【0056】
【化7】

【0057】
また、前記N型半導体粒子としては、特に制限はなく、例えば、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化インジウム、ITO(例えばIn23:SnO2=90:10[質量%])等の金属酸化物や、無機酸化物の基材粒子表面をこれらの材料で処理した粒子が挙げられる。
【0058】
前記樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
下引き層におけるN型半導体粒子は、下引き層全量に対して40〜80質量%程度であることが好ましい。
また、電子受容材料はN型半導体粒子の質量の1〜5質量%程度が好ましい。
前記下引き層11の厚みは、使用する材料の種類や組み合わせにより変更することが好ましいため、一概にその範囲を決められるものではないが、概ね0.5μm〜30μm程度が好ましく、支持体からの電荷注入をより確実に防止しつつ、電荷発生層で発生した電荷を速やかに減衰するためには、2μm〜20μm程度がより好ましい。
【0059】
[感光層]
前記感光層12としては、本発明で規定している範囲であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、電荷発生物質を含有する電荷発生層の上に電荷移動物質を含有する電荷移動層を有する順層型、又は電荷移動層の上に電荷発生層を有する逆層型が挙げられる。
また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
前記感光層12の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10〜50μmが好ましい。
また、前記下引き層11、感光層12の合計厚みとしては、20から60μmの範囲を満たすことが好ましい。
これらの関係を満たすと、長期間に渡り均等な可視像の形成を実現できるため、経時変動の小さい安定した画像形成装置を提供することができる。厚みが20μm未満の場合には、電子写真感光体としての電気的な均一性を確保することが困難となる事があり、60μmを超える場合であると、静電潜像解像度の低下を引き起こすことがあるため好ましくない。
【0060】
前記電荷発生層における電荷発生材料としては、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含む事を必須とする。
テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物としては、無置換のテトラベンゾポルフィリンや、中心金属として銅、銀、金、白金、ニッケル、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウム等を導入した錯体、特性基としてアルキル基、フェニル基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基等を導入した化合物等が挙げられ、必要により適宜選択して使用することができる。
【0061】
また、電荷発生層はシリルメチルフラーレン系の化合物を含むことが好ましい。
シリルメチルフラーレン系の化合物としては、フラーレン表面の一部を、ジメチルフェニルシリルメチル基、9−アントラセニルジメチルシリルメチル基などのシリル基置換アルキル基で修飾した化合物等が挙げられ、中でも、化学式(I)の構造をもつシリルメチルフラーレン系の化合物が好ましく用いられる。
【0062】
【化8】

【0063】
シリルメチルフラーレン系の化合物は、前述のように、加熱によって自己組織化し、その間隙にテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物が取り込まれることによって、非常に多くのPN接合面を形成するため、光エネルギーの入力に対する電荷の発生が極めて高効率で行われ、より小さな書込みエネルギーに対しても鮮明な静電潜像のコントラストを得る事ができる。特に化学式(I)の化合物は、自己組織化した際の間隙のサイズとテトラベンゾポルフィリン骨格のサイズが近いため、高密度でPN接合面を形成することができるため、非常に好ましく用いることができる。
【0064】
また、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機材料などの電荷発生材料を併用してもよい。これらの電荷発生材料を併用する場合には、本発明による効果を阻害しないよう、質量基準で、概ね、テトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物と同量未満とすることが好ましく、2分の1以下とすることがより好ましい。
【0065】
前記電荷移動層における電荷移動物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記感光層における結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。
該結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記感光層における酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
【0068】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0069】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量としては、添加する層の総質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましい。
【0070】
前記感光層における可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0質量部〜30質量部程度が適当である。
【0071】
また、前記感光層中にはレベリング剤を添加してもよい。該レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用される。前記レベリング剤の使用量は、前記結着樹脂100質量部に対して、0質量部〜1質量部が好ましい。
【0072】
[表面被覆層]
本発明の電子写真感光体には、必要に応じて表面被覆層を設けても良い。
表面被覆層としては、特に制限はないが、例えば、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが好ましい。
また、表面被覆層に用いる樹脂としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高い熱硬化性樹脂が好ましい。
表面被覆層は薄い厚みであれば、電荷移動能力を有していなくても支障はないが、電荷移動能力を有しない表面被覆層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、表面被覆層中に前述の電荷移動物質を含有させたり、表面被覆層に用いる高分子として電荷移動能力を有するものを用いたりすることが好ましい。
【0073】
表面被覆層に用いる樹脂としては、画像形成時の書き込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの高分子としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂であってもよいが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることが好ましい。このようにすると表面被覆層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
【0074】
[画像形成プロセス]
画像形成のための一連のプロセスについて、図1を用いてネガ−ポジプロセスで説明を行なう。なお、全ての電子写真感光体、現像装置に共通する内容の場合には電子写真感光体を単に符号1で示し、現像装置を符号4で示す。
電子写真感光体1は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、後述する帯電部材を有する帯電装置2で均一にマイナスに帯電される。
帯電装置2による電子写真感光体1の帯電が行われる際には、後述する電圧印加装置から上記帯電部材に、電子写真感光体1を所望の電位に帯電させるに適した適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
帯電された電子写真感光体1は、レーザー光学系等の書き込み装置3によって照射されるレーザー光Lで潜像形成(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行なわれる。
レーザー光は半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴンミラー)等により電子写真感光体1の表面を、電子写真感光体1の回転軸方向に走査する。
【0075】
このようにして形成された静電潜像が、現像装置4にある現像剤担持体としての現像スリーブ40上に供給されたトナー粒子、又はトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。
静電潜像の現像時には、上記電圧印加装置から上記現像スリーブに、電子写真感光体1の露光部と非露光部の間にある、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
各色に対応した電子写真感光体1Y、1C、1M、1K上に形成されたトナー像は、1次転写手段としての1次転写ローラ52Y、52C、52M、52Kにより中間転写ベルト5上に順次重ねて転写される。このとき、1次転写ローラ52には、転写バイアスとしてトナー帯電の極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、中間転写ベルト5は電子写真感光体1から分離され、転写像が得られる。
中間転写ベルト5上に転写された重ね合わせトナー像は、給紙装置200から給送された紙などの記録媒体上に2次転写ローラ53により一括転写される。
【0076】
給紙装置200の選択された給紙カセットから給紙された記録媒体はレジストローラ対で一旦停止されて斜めずれを修正された後、2次転写ローラ53の2次転写部位へ所定のタイミングで搬送される。
重ね合わせ画像を一括転写された記録媒体は、定着装置7に送られてここで熱と圧力によりトナー像を定着される。定着を終えた記録媒体は排紙ローラ対により排紙トレイ8に排出・スタックされる。
【0077】
1次転写後電子写真感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置6により除去・回収され、2次転写後中間転写ベルト5上に残存するトナー粒子は中間転写ベルト用クリーニング装置により除去・回収される。
本実施形態では、画像形成装置として、中間転写ベルト5を用いて2次転写する構成としたが、記録媒体を搬送ベルトで搬送しながら複数の電子写真感光体1のトナー像を順次記録媒体上に重ね転写する構成としてもよい。
【実施例】
【0078】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明する、尚、実施例における部は質量部を示す。
【0079】
[評価方法]
次に、評価方法について説明する。
【0080】
被覆層厚さ(下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層の合計)は、渦電流式の膜厚測定器(万能型膜厚計 LZ−200 (株)ケット科学研究所製、LHP−20(NFe)型プローブ)を用いて、像担持体回転軸方向に沿って10箇所測定して平均した。
【0081】
初期画像品質とは、大略、1〜4枚目の用紙に形成された画像の品質をいう。200000枚後画像品質は、200000枚目の用紙に形成された画像の品質をいう。また、画像の品質については、ドットの均一性を、目視または25倍のルーペで観察して、評価したものである。また、A4版テキストチャートを用紙に形成された初期画像の品質をいう。また、200000枚後画像品質は、画素密度5%のA4版テキストチャートを200000枚通紙後に、再度行い、安定性を確認した画像の品質である。
【0082】
目視2by2とは、600dpi、画素密度25%の、2by2全面トーンのA4版の用紙に、形成された画像を目視したものである。ここで、画素密度25%の、2by2全面トーンとは、4×4画素で形成される方形領域において、2×2画素分の方形の画像領域、該方形の画像領域以外を非画像領域として、これを全面に亘り画像形成することで、4/16=25%の画素密度の画像を形成することである。
【0083】
目視ベタとは、画素密度100%の、全面ベタに形成された画像を目視したものである。全面ベタ画像とは、画素密度100%で、全面に形成された画像をいう。
【0084】
目視白紙とは、画素密度0%の、画像が形成されていない白紙を目視したものである。
【0085】
拡大2by2とは、画素密度25%の、2by2全面トーンのA4版の用紙に、形成された画像を25倍のルーペで拡大して目視したものである。なお、拡大して観察する場合、画像幅方向(現像ローラ軸方向)における両端部及び中央の3箇所で測定したドット径(面積基準円相当径)の、各測定箇所における平均値について最大値Rmax[μm]と最小値Rmin[μm]の比Rr(Rr=Rmin/Rmax)を取り、以下の基準により評価した。
【0086】
また、表中の◎等の評価基準について説明する。
≪目視2by2画像≫
◎:極めて優れている(全面にわたってムラが感知できないレベル)
○:実用上問題ないレベル(◎と並べて見るとわずかにムラが感知できるレベル)
△:実用上許容できるレベル(◎と並べて見るとムラが感知できるレベル)
×:使用不可(単独で明らかにムラが感知できる)
≪目視ベタ≫
◎:極めて優れている(全面にわたってムラが感知できないレベル)
○:実用上問題ないレベル(◎と並べて見るとわずかにムラが感知できるレベル)
△:実用上許容できるレベル(◎と並べて見るとムラが感知できるレベル)
×:使用不可(単独で明らかにムラが感知できる)
≪目視白紙≫
◎:極めて優れている(全面にわたって異常な細線が感知できないレベル)
○:実用上問題ないレベル(◎と並べるとわずかに汚れが感知できるレベル)
△:実用上許容できるレベル(◎と並べて見ると汚れが感知できるレベル)
×:使用不可(単独で明らかに汚れが感知できる)
≪拡大2by2≫
◎:極めて優れている(ドットが非常にそろっている;Rrが0.9以上)
○:実用上問題ないレベル(視野毎のドットの大きさに差異がある場所が少数ある;
Rrが0.8以上0.9未満)
△:実用上許容できるレベル(視野毎のドットの大きさに差異がある場所がある;Rr
が0.6以上0.8未満)
×:使用不可(複数領域のドットの大きさが明らかに異なる;Rrが0.6未満)
【0087】
[実施例1]
<電子写真感光体1の作製>
導電性円筒状支持体として、外径40mm、肉厚0.8mmのアルミニウムシリンダーを用いた。このアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷移動層用塗工液を順次、浸漬塗布、乾燥を繰り返すことにより、15μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、約30μmの電荷移動層を形成して、電子写真感光体1を得た。
【0088】
〔下引き層用塗工液〕
下記組成の下引き層用塗工液を前記アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布した後、120℃で25分間加熱乾燥して、15μmの下引き層を形成した。
−下引き層用塗工液組成−
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
N型半導体 アルミニウムドープ酸化亜鉛 25部
(Pazet CK、ハクスイテック社製)
電荷受容材料 1,2−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン 0.4部
酸化チタン 15部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 200部
【0089】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記組成の電荷発生層用塗工液を前記下引き層上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥に引き続き、毎分5℃の昇温速度で180℃まで昇温し、そのまま更に15分間保持することにより、テトラベンゾポルフィリン前駆体をテトラベンゾポルフィリンに熱変換して、0.2μmの電荷発生層を形成した。
−電荷発生層用塗工液組成−
化学式(2)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化9】

ポリビニルブチラール 0.1部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0090】
〔電荷移動層用塗工液〕
下記組成の電荷移動層用塗工液を前記電荷発生層上に浸漬塗布した後、135℃で20分間加熱乾燥して、電荷移動層を形成し電子写真感光体1を得た。浸漬塗布工程では、引き上げ速度及び周辺雰囲気調整し、塗工液の付着量が均等になるようにした。
−電荷移動層用塗工液組成−
下記構造式で表される電荷移動物質(D−1) 10部
【化10】

ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050:帝人化成社製)
シリコーンオイル 0.002部
(KF−50、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン 100部
【0091】
得られた電子写真感光体1の被覆層厚さは平均値で45.2μmであった。
この電子写真感光体1の両端にフランジを設けた。
【0092】
<プロセスカートリッジの作製>
リコー製、imagio MP C4500の作像ユニットに作製したフランジ付きの電子写真感光体1を組み込んだ。カートリッジは黒用を使用した。
【0093】
<画像品質の確認>
作製したプロセスカートリッジを、リコー製、imagio MP C4500の黒用カートリッジと置き換え、上記の手順により画像評価を行った。評価に用いた機種におけるレーザー出力の初期設定は、露光エネルギー基準で3.5mJ/m2である。
評価結果を、表1に示す。
【0094】
[実施例2]
<電子写真感光体2の作製>
下記組成の電荷発生層用塗工液を前記下引き層上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥に引き続き、毎分5℃の昇温速度で160℃まで昇温し、そのまま更に15分間保持することにより、テトラベンゾポルフィリン前駆体をテトラベンゾポルフィリンに熱変換して、0.2μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体2を作製した。
【0095】
−電荷発生層用塗工液組成−
化学式(4)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化11】

ポリビニルブチラール 0.1部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0096】
電子写真感光体2を用いた以外は、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表1に示す。
【0097】
[実施例3]
<電子写真感光体3の作製> ;錯体
下記組成の電荷発生層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体3を作製した。
−電荷発生層用塗工液組成−
化学式(7)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化12】

ポリビニルブチラール 0.1部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0098】
電子写真感光体3を用いた以外は、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表1に示す。
【0099】
[実施例4]
<電子写真感光体4の作製> ;置換基導入
下記組成の電荷発生層用塗工液を用いた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体3を作製した。
−電荷発生層用塗工液組成−
化学式(6)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化13】

ポリビニルブチラール 0.1部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0100】
電子写真感光体4を用いた以外は、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表1に示す。
【0101】
[実施例5]
<電子写真感光体5の作製> ;下引き層違い
下記組成の下引き層塗工液を用い、下引き層の厚みを3.5μmに調整した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体5を作製した。
−下引き層用塗工液組成−
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン 40部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 200部
【0102】
電子写真感光体5を用いた以外は、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表1に示す。
【0103】
[比較例1]
<電子写真感光体6の作製>
下記組成の電荷発生層用塗工液を用い、120℃で20分間加熱乾燥して、0.2μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体6を作製した。
−電荷発生層用塗工液組成−
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール 0.2部
(エスレックBM−S、積水化学工業(株)製)
テトラヒドロフラン 50部
【0104】
電子写真感光体6を用いた以外は、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
次に、実施例1〜5及び比較例1の比較結果について示す。
<実施例1、2、3、4、5と比較例1の比較>
テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料を含む電子写真感光体による実施例1、2、3、4、5と、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料を含まない電子写真感光体による比較例1との比較結果について説明する。表1では、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料を含む電子写真感光体を用いた場合、画像品質の評価が良くなることが示されている。テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料を含まない電子写真感光体を用いた場合には、電荷発生層の不均一性に伴い初期から画像品質が十分ではなく、通紙試験で電子写真感光体表面がダメージを受ることによって、電荷発生層の不均一性が更に顕著に表れるようになり、画像品質の悪化が顕著となった。
従って、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料の有用性が証明された。
【0107】
<実施例1、2と実施例3、4の比較>
テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料として、実施例1、2では、特性基による置換や、金属原子による錯体化が行われないテトラベンゾポルフィリンを用い、実施例3、4では、それぞれテトラベンゾポルフィリンの金属錯体、テトラベンゾポルフィリンの誘導体を用いているが、いずれの実施例においても、初期および通紙試験後においても十分な画像品質を得る事ができ、良好な画像品質を得るために有効な電荷発生材料の構造としてはテトラベンゾポルフィリン骨格にあることが確認された。
【0108】
<実施例1と実施例5の比較>
実施例1では、下引き層中に電子受容材料及びN型半導性粒子とを同時に含んでいるのに対して、実施例5では、下引き層中にいずれの材料も含んでいない。そのため、実施例5においては、通紙試験後の画像品質中、ベタ画像部の均一性に若干の劣化が生じている。これは、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する電荷発生材料が極めて効率的に光電荷発生を行うため、露光により電子写真感光体の表面電荷を打ち消し、静電潜像を形成する際に発生する対電荷を支持体へより速やかに逃がすためには、下引き層中に電子受容材料及びN型半導性粒子を含有させるのが好ましいことを示している。
【0109】
これらの結果より、電子写真用感光体が電荷発生材料を含む電荷発生層を有し、該電荷発生材料がテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含む電子写真感光体、これを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置の画像品質の優位性が示された。
【0110】
[実施例6]
<電子写真感光体7の作製>
導電性円筒状支持体として、外径40mm、肉厚0.8mmのアルミニウムシリンダーを用いた。このアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷移動層用塗工液を順次、浸漬塗布、乾燥を繰り返すことにより、15μmの下引き層、0.15μmの電荷発生層下層、0.1μmの電荷発生層上層、約30μmの電荷移動層を形成して、電子写真感光体7を得た。
【0111】
〔下引き層用塗工液〕
下記組成の下引き層用塗工液を前記アルミニウムシリンダー上に浸漬塗布した後、120℃で25分間加熱乾燥して、15μmの下引き層を形成した。
−下引き層用塗工液組成−
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
N型半導体 アルミニウムドープ酸化亜鉛 25部
(Pazet CK、ハクスイテック社製)
電荷受容材料 化学式(I)のシリルメチルフラーレン誘導体 0.5部
【化14】

酸化チタン 15部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 200部
【0112】
〔電荷発生層1用塗工液〕
下記組成の電荷発生層1用塗工液を前記下引き層上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥して、0.15μmの熱変換前電荷発生層1(下層)を形成した。
−電荷発生層1用塗工液組成−
化学式(2)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 0.8部
【化15】

化学式(I)のシリルメチルフラーレン誘導体 0.5部
【化16】

ポリビニルブチラール 0.03部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0113】
〔電荷発生層2用塗工液〕
下記組成の電荷発生層2用塗工液を前記熱変換前電荷発生層1上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥に引き続き、毎分5℃の昇温速度で140℃まで昇温して、そのまま更に10分間保持し、更に、毎分5℃の昇温速度で180℃まで昇温して、そのまま更に15分間保持することにより、テトラベンゾポルフィリン前駆体のテトラベンゾポルフィリンへの熱変換およびPN接合部の形成を行い、トータル0.25μmの電荷発生層を形成した。
【0114】
−電荷発生層2用塗工液組成−
化学式(5)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化17】

ポリビニルブチラール 0.03部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0115】
〔電荷移動層用塗工液〕
下記組成の電荷移動層用塗工液を前記電荷発生層上に浸漬塗布した後、135℃で20分間加熱乾燥して、電荷移動層を形成した。浸漬塗布工程では、引き上げ速度及び周辺雰囲気調整し、塗工液の付着量が均等になるようにした。
【0116】
−電荷移動層用塗工液組成−
下記構造式で表される電荷移動物質(D−1) 10部
【化18】

ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050:帝人化成社製)
シリコーンオイル 0.002部
(KF−50、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン 100部
【0117】
得られた電子写真感光体7の被覆層厚さは平均値で45.3μmであった。
この電子写真感光体7の両端にフランジを設けた。
【0118】
<プロセスカートリッジの作製>
リコー製、imagio MP C4500の作像ユニットに作製したフランジ付きの電子写真感光体1を組み込んだ。カートリッジは黒用を使用した。
【0119】
<画像品質の確認>
作成したプロセスカートリッジを、リコー製、imagio MP C4500の黒用カートリッジと置き換え、上記の手順により画像評価を行った。ただし、感光体の高感度化の確認のため、本体のレーザー出力は初期設定値の75%に調整した。
評価結果を、表2に示す。
【0120】
[実施例7]
<電子写真感光体8の作製>
電荷発生層用塗工液として、下記組成の−電荷発生層3用塗工液組成−の塗工液を用い、前記熱変換前電荷発生層1上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥に引き続き、毎分5℃の昇温速度で160℃まで昇温して、そのまま更に10分間保持し、更に、毎分5℃の昇温速度で180℃まで昇温して、そのまま更に15分間保持することにより、テトラベンゾポルフィリン前駆体のテトラベンゾポルフィリンへの熱変換およびPN接合部の形成を行い、トータル0.25μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体8を作製した。
【0121】
−電荷発生層3用塗工液組成−
化学式(4)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化19】

ポリビニルブチラール 0.03部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0122】
電子写真感光体8を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
【0123】
[実施例8]
<電子写真感光体9の作製>
下記組成の下引き層用塗工液を用いた以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体9を作製した。
−下引き層用塗工液組成−
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
N型半導体 アルミニウムドープ酸化亜鉛 25部
(Pazet CK、ハクスイテック社製)
電荷受容材料 化学式(II)のシリルメチルフラーレン誘導体 0.5部
【化20】

酸化チタン 15部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 200部
【0124】
電子写真感光体9を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
【0125】
[実施例9]
<電子写真感光体10の作製>
下記組成の下引き層用塗工液を用いた以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体10を作製した。
−下引き層用塗工液組成−
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
N型半導体 アルミニウムドープ酸化亜鉛 25部
(Pazet CK、ハクスイテック社製)
電荷受容材料 化学式(V)のフラーレン誘導体 0.5部
【化21】

酸化チタン 15部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 200部
【0126】
電子写真感光体10を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
【0127】
[実施例10]
<電子写真感光体11の作製>
下記組成の下引き層塗工液を用いた以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体11を作製した。
−下引き層用塗工液組成−
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
N型半導体 アルミニウムドープ酸化亜鉛 25部
(Pazet CK、ハクスイテック社製)
電荷受容材料 1,2−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノン 0.4部
酸化チタン 15部
(CR−EL、石原産業社製)
メチルエチルケトン 200部
【0128】
電子写真感光体11を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
【0129】
[実施例11]
<電子写真感光体12の作製>
電荷発生層用塗工液として、実施例6の電荷発生層1用塗工液のみを用い、これを前記下引き層上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥に引き続き、毎分5℃の昇温速度で180℃まで昇温して、そのまま更に15分間保持することにより、テトラベンゾポルフィリン前駆体のテトラベンゾポルフィリンへの熱変換およびPN接合部の形成を行い、0.25μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体12を作製した。
【0130】
電子写真感光体12を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
【0131】
[実施例12]
<電子写真感光体13の作製>
電荷発生層用塗工液として、下記組成の電荷発生層用塗工液を用い、これを前記下引き層上に浸漬塗布した後、120℃で20分間の加熱乾燥に引き続き、毎分5℃の昇温速度で180℃まで昇温して、そのまま更に15分間保持することにより、テトラベンゾポルフィリン前駆体のテトラベンゾポルフィリンへの熱変換を行い、0.25μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体13を作製した。
【0132】
−電荷発生層用塗工液組成−
化学式(2)のテトラベンゾポルフィリン前駆体 2部
【化22】

ポリビニルブチラール 0.1部
(エスレックBM−S、積水化学工業社製)
テトラヒドロフラン 50部
【0133】
電子写真感光体13を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
また、電子写真感光体13については、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った評価も実施した。
評価結果を、表3に示す。
【0134】
[比較例2]
<電子写真感光体14の作製>
下記組成の電荷発生層用塗工液を用い、120℃で20分間加熱乾燥して、0.25μmの電荷発生層を形成した以外は、実施例6と同様にして、電子写真感光体14を作製した。
【0135】
−電荷発生層用塗工液組成−
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
化学式(I)のシリルメチルフラーレン誘導体 0.5部
【化23】

ポリビニルブチラール 0.2部
(エスレックBM−S、積水化学工業(株)製)
テトラヒドロフラン 50部
【0136】
電子写真感光体14を用いた以外は、実施例6と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った。
評価結果を、表2に示す。
また、電子写真感光体14については、実施例1と同様にして、<プロセスカートリッジの作成>及び、<画像品質の確認>を行った評価も実施した。
評価結果を、表3に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
次に、実施例6〜12、比較例2の比較結果について示す。
<実施例6、7、8、9、10、11と実施例12、比較例2の比較>
テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物及びシリルメチルフラーレン誘導体よりなる電荷発生材料を含む電子写真感光体による実施例6、7、8、9、10、11と、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物のみよりなる電荷発生材料を含む電子写真感光体による実施例12、テトラベンゾポルフィリン骨格を有さない化合物及びシリルメチルフラーレン誘導体よりなる電荷発生材料を含む電子写真感光体による比較例2との比較結果について説明する。
表2では、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物及びシリルメチルフラーレン誘導体よりなる電荷発生材料を含む電子写真感光体を用いた場合、画像品質の評価が良くなることが示されている。テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物のみよりなる電荷発生材料よりなる電子写真感光体を用いた場合には、露光時に加えられる光エネルギーを小さくした場合において、光電荷の発生が不十分となり、初期から画像品質が十分ではなく、通紙試験で電子写真感光体が電荷蓄積などのダメージを受ることによって、電荷発生の不均一性が更に顕著に表れるようになり、画像品質の悪化が顕著となった。
しかし、表3に示すように露光時に加えられる露光エネルギーが通常の露光エネルギーである場合は、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物のみよりなる電荷発生材料を含む実施例12の電子写真感光体も十分な画像品質が得られることがわかる。比較例3の電子写真感光体は、露光時に加えられる露光エネルギーが通常の露光エネルギーである場合においても、電荷発生層がテトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物を含まないため比較例1の電子写真感光体と同様に電荷発生材料分散の不均一さに起因すると考えられる不具合が発生した。初期品質の目視ベタについては、化学式(I)で表されるシリルメチルフラーレン誘導体を含有しているため、比較例1より幾分良い結果となっているが、その品質を維持できるものではなかった。
従って、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物及びシリルメチルフラーレン誘導体よりなる電荷発生材料を含む電子写真感光体の有用性が証明された。
【0140】
<実施例6、7と実施例8の比較>
下引き層の電子受容材料として、実施例6、7では、特定構造(化学式(I))のシリルメチルフラーレン誘導体を用いているのに対して、実施例8では、それ以外のシリルメチルフラーレン誘導体を用いている。特定構造以外のシリルメチルフラーレン誘導体を用いた場合には、通紙試験後において、極僅かにベタ画像部に変化が現れた。これにより、シリルメチルフラーレン誘導体の中でも、化合物(I)の構造が電子写真用感光体にとって有効であることが確認された。
【0141】
<実施例6、7、8と実施例9の比較>
下引き層の電子受容材料として、実施例6、7、8では、シリルメチルフラーレン誘導体を用いているのに対して、実施例9では、それ以外のフラーレン誘導体を用いている。シリルメチルフラーレン誘導体以外のフラーレン誘導体を用いた場合には、通紙試験後において、極僅かにベタ画像部及び2by2ハーフトーン部に変化が現れた。これにより、フラーレン誘導体の中でも、シリルメチルフラーレン誘導体が電子写真用感光体にとって有効であることが確認された。
【0142】
<実施例6、7、8、9と実施例10の比較>
下引き層の電子受容材料として、実施例6、7、8、9では、フラーレン誘導体を用いているのに対して、実施例10では、それ以外の化合物である1,2−ジヒドロキシ−9,10−アントラキノンを用いている。フラーレン誘導体以外の電子受容材料を用いた場合には、通紙試験後において、ベタ画像部及び2by2ハーフトーン部に劣化が現れた。これにより、電子受容材料の中でも、フラーレン誘導体が電子写真用感光体にとって有効であることが確認された。
【0143】
<実施例6、7と実施例11の比較>
電荷発生層として、実施例6、7では、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物及びシリルメチルフラーレン誘導体よりなる下層とテトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物よりなる上層の二層構造を用いているのに対して、実施例11では、テトラベンゾポルフィリン骨格を有する化合物及びシリルメチルフラーレン誘導体よりなる一層の電荷発生層を用いている。一層の電荷発生層とした場合には、通紙試験後において、極僅かにベタ画像部、白紙画像部及び2by2ハーフトーン部に変化が現れた。これにより、電荷発生層が、該導電性支持体に近い側から、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層と、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層とを、この順に形成することが、電子写真用感光体にとって有効であることが確認された。
【0144】
これらの結果より、電子写真用感光層が電荷発生材料を含む層を有し、該電荷発生材料がテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物及びシリルメチルフラーレン系の化合物を含む電子写真感光体、これを用いたプロセスカートリッジ、画像形成装置の画像品質の優位性が示された。
【符号の説明】
【0145】
1Y,C,M,K 電子写真感光体
2 帯電装置
3 書き込み装置
4 現像装置
5 中間転写ベルト
6 クリーニング装置
7 定着装置
8 排紙トレイ
9 光ガイド部材
10 電子写真感光体支持体
11 下引き層
12 感光層
20 帯電ローラ
21 帯電クリーニングローラ
40 現像スリーブ
41 現像剤攪拌搬送部材
42 現像剤攪拌搬送部材
50 中間転写ベルト支持ローラ
51 中間転写ベルト支持ローラ
52Y,C,M,K 1次転写ローラ
53 2次転写ローラ
60 クリーニングブレード
100 画像形成装置
120 電荷発生層
1200 電荷発生層下層部(シリルメチルフラーレン誘導体含有)
1201 電荷発生層上層部(シリルメチルフラーレン誘導体非含有)
121 電荷移動層
200 給紙機構
300 プロセスカートリッジ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0146】
【特許文献1】特開平8−311363号公報
【特許文献2】特開平9−311477号公報
【特許文献3】特開平10−55074号公報
【特許文献4】特開平11−15179号公報
【特許文献5】特開平4−184449号公報
【特許文献6】特開2002−131944号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性支持体上に、該導電性支持体に近い側から、少なくとも、下引き層、電荷発生材料を含む電荷発生層、電荷移動材料を含む電荷移動層を、この順に形成してなる電子写真感光体において、該電荷発生材料がテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含むことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記電荷発生層がシリルメチルフラーレン系の化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷発生層が、該導電性支持体に近い側から、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物とシリルメチルフラーレン系の化合物を含有する層と、少なくともテトラベンゾポルフィリン骨格を持つ化合物を含有しシリルメチルフラーレン系の化合物を含有しない層とを、この順に形成してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記下引き層に少なくとも電子受容材料及びN型半導性粒子を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記電子受容材料がフラーレン誘導体であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記フラーレン誘導体がシリルメチルフラーレン系化合物であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記シリルメチルフラーレン系の化合物が下記化学式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化1】

【請求項8】
少なくとも電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、該電子写真感光体上の残存トナーをクリーニングするクリーニング手段を有するプロセスカートリッジにおいて、該電子写真感光体が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
少なくとも電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、電子写真感光体上に静電潜像を形成するための書き込み手段と、トナーにより静電潜像を可視像化する現像手段と、電子写真感光体上のトナー可視像を、中間転写媒体を介してまたは介さずに、記録媒体上へ転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着固定化する定着手段とを有する画像形成装置において、上記電子写真感光体が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
少なくともプロセスカートリッジと、電子写真感光体上に静電潜像を形成するための書き込み手段と、トナーにより静電潜像を可視像化する現像手段と、電子写真感光体上のトナー可視像を、中間転写媒体を介してまたは介さずに、記録媒体上へ転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着固定化する定着手段とを有する画像形成装置において、上記プロセスカートリッジが、請求項8に記載のプロセスカートリッジであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−97300(P2013−97300A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242185(P2011−242185)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】