説明

電子写真感光体、並びにそれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】本発明は、耐摩耗性が高く、かつトナー離型性に優れクリーニング不良による異常画像などの発生を長期に渡って抑制することが可能な表面保護層を用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる電子写真感光体を提供することを目的とする。
【解決手段】支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、前記表面保護層の表面は複数の凹構造を有し、凹構造は最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有することを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性が高く、かつトナー離型性に優れクリーニング不良による異常画像などの発生を長期に渡って抑制することが可能な表面保護層を用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機感光体(OPC)はさまざまな利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、などが挙げられる。
【0003】
最近、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面の層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。
【0004】
したがって有機感光体の高耐久化においては摩耗量を低減することが不可欠であるが、更にはクリーニング性を高くする手段としてトナー離型性を高くすることも同時に要求される。特に、摩耗量が減少することによって表面にトナー成分が付着した場合は表面が削れないために付着物の除去が困難となるため異常画像につながるという問題を有しており、良好な表面性を有する有機感光体が必要とされている。
【0005】
このような感光体表面の耐摩耗性と高離型性を両立する技術としては、例えば(1)電子写真感光体の周面が特定のディンプル形状の凹部を複数有することで、高いクリーニング性を得る方法(特許文献1)、(2)表面保護層に硬化連鎖重合性官能基及び珪素原子を有する酸化防止剤、劣化防止剤、遮光剤又は潤滑材を重合した化合物を含有したもの(特許文献2)、(3)表面層にポリオルガノシロキサンを構成成分として含有する共重合体が分散され、かつ該表面層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂層を用いたもの(特許文献3)、(4)感光体最外層表面の純水との接触角が100°以上になるようにフッ素樹脂微粒子を10重量%以上含有したもの(特許文献4)、(5)感光層が、特定の構造単位を有するポリエステル樹脂、及びカルボン酸とアルコールとがエステル結合してなる炭素数20〜150のワックスを含有するもの(特許文献5)、(6)最表面層が特定のポリアリレート樹脂とポリ三フッ化エチレン及びパーフルオロポリエーテルのいずれか一種又はそれらの混合物を含有する(特許文献6)、(7)表面層にフルオロアルキル基及びフルオロアルキレン基の少なくとも一方を有するアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー他からなる特定の繰返し構造単位を有する重合体を含有する(特許文献7)、(8)表面層にパーフルオロポリエーテル部分を含む架橋ポリシロキサン組成物を含む(特許文献8)、(9)表面保護層が特定の表面処理シリカ粒子、並びに光重合開始剤を主に含有する組成物を塗布、硬化させて形成した層からなり、さらに当該表面保護層の表面にシロキサン結合を介した化学吸着層を設ける(特許文献9)などが挙げられる。しかしながら、これらのいずれにおいても、有機感光体に求められる機械的耐久性と高離型性、更には画像の安定性を長期に渡って維持するための特性を十二分に満足するには至っていない。
【0006】
以上の点から、前記先行技術文献においても良好な表面性を有する有機感光体として、未だ充分満足できる総合特性を有しているとは言えないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐摩耗性が高く、かつトナー離型性に優れクリーニング不良による異常画像などの発生を長期に渡って抑制することが可能な表面保護層を用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、支持体上に少なくとも感光層及び表面保護層を有する電子写真感光体において、前記表面保護層の表面は複数の凹構造を有し、凹構造の最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有することにより、前記課題が効果的に達成できることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための
手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、前記表面保護層の表面は複数の凹構造を有し、凹構造は最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有することを特徴とする電子写真感光体。
<2> 表面保護層がレゾール型フェノール樹脂を含有することを特徴とする<1>記載の電子写真感光体。
<3> 表面保護層が、フィラーを含有することを特徴とする<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
<4> 表面保護層の膜厚が、2〜5μmであることを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の電子写真感光体。
<5> <1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
<6> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記電子写真感光体が、<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
<7> 前記画像形成装置が、転写手段の後に電子写真感光体上のトナーを除去するクリーニング手段を有さないクリーナーレス画像形成装置であることを特徴とする<6>記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、耐摩耗性が高く、かつトナー離型性に優れクリーニング不良による異常画像などの発生を長期に渡って抑制することが可能な表面保護層を用いることにより、優れた耐久性と共に、安定で高品質の画像形成を長期間にわたり実現できる電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができる。
本発明の電子写真感光体は、例えばレーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機、直接又は間接の電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンター、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ、レーザー製版、及びフルカラー普通紙ファックスなどに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表面凹構造断面概略図である。((a):従来凹構造、(b):本発明における微細凹構造)
【図2】表面凹構造平面概略図である。((a):従来凹構造、(b):本発明における微細凹構造)
【図3】表面微細凹構造の電子写真顕微鏡像である。
【図4】凹構造の最長径、最近接凹間距離の説明図である。
【図5】凹構造の最大深さの説明図である。
【図6】本発明の電子写真感光体の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の電子写真感光体の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図9】本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電子写真感光体は、表面保護層の表面に複数の凹構造を有し、凹構造の最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有することにより、高い耐摩耗性と高離型性を得られるものである。
【0013】
従来技術として、前記特許文献1(特許第3938210号)においては、最長径が1〜50μmの範囲にあってかつ深さが0.1μm以上であってかつ体積が1μm3以上であるディンプル形状の凹部の個数が、電子写真感光体の表面層の表面100μm四方当たり5〜50個の凹形状の表面構造を設けることによって、感光体表面とクリーニングブレードとの接触面積を低下させ、感光体表面とクリーニングブレードとの滑り性を向上させて感光体表面のトナーの除去性を高める方法が見出されているが、本発明においては、従来に比べ、より微細な凹構造を設けることで、感光体表面とトナー粒子そのものとの離型性を向上させることが可能となり、特にクリーニングブレードを有さないクリーナーレス画像形成装置において有用に用いることが可能となった。
【0014】
本発明は表面保護層の表面に、約5μm程度のトナー粒子に比べて、より小さい微細な凹構造を設けることで、感光体表面とトナー粒子の離型性を高めることが可能となることが見出された。その要因としては、トナーと感光体の接触面積が低減し、感光体表面とトナー粒子間の付着力が低減したものと推定される。特に、凹構造の最長径は1〜3μmの範囲であれば、トナーと感光体の接触面積低減に有効であり、感光体上のトナー離型性が向上した。また、凹部の深さを10〜50nmにすることで、従来の凹形状ではトナー外添剤に用いるシリカが凹部の孔に大量に埋没して付着し、シリカ付着による異常画像を誘発する問題があったが、シリカを付着しにくくすることが可能となった。図1及び図2に、本発明と従来技術における表面の凹構造の違いを概略図によって示した。図1及び図2において、(a)が従来の凹構造を示す図であり、(b)が本発明の凹構造を示す図である。また、図3に本発明における微細凹構造の電子写真顕微鏡像を示す。
【0015】
微細な凹構造を有する表面形状が形成される原因について詳細は不明であるが、特にレゾール型フェノール樹脂を用い、かつ特定の条件で製膜した際に形成することが可能であり、加熱硬化時の縮合反応によって、表面の収縮や急激な脱水等により、形成することが可能となるものと推定される。
本発明により、微細な凹構造を有する硬化型表面保護層を形成することで、耐摩耗性の向上と共に、長期に亘って高離型性を得られ、優れた画質を維持できる電子写真感光体を実現することが可能となるものである。
【0016】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0017】
<表面保護層>
前記表面保護層の表面は複数の凹構造を有し、凹構造の最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有する。
その形状は、分子間力顕微鏡を用いて任意の異なる3箇所について10μm四方の形状測定を行い、その平均値を求めることで、測定することが可能である。
ここで、図4に示すように、最長径とは感光体表面に存在する個々の凹部を上方から観察した際に計測できる個々の凹部の長径の中で最長の長径をいう。更に任意の凹構造が最も近隣に存在する凹構造との間の距離は、表面が平滑な部分の最小距離であり、最近接凹間距離として表す。更に10μm四方の形状測定において凹構造が存在せず、平滑な部分の高さ平均値を基準表面とし、また図5に示すように最大深さは個々の凹部の基準表面からの深さの中で一番深い深さを最大深さとした。
【0018】
本発明で用いる、表面保護層の表面はレゾール型フェノール樹脂を、後述する特定の条件で製膜した際の硬化時の縮合反応によって形成することが可能である。トナー粒子以下の凹構造を設けることで、トナーの離型性を高めることが可能となるとともに、レゾール型フェノール樹脂分子内のフェノール構造が高い硬度を有し、優れた耐摩耗性を有し、長期に亘って高離型性を得られ、優れた画質を維持できる電子写真感光体を実現することが可能となる。
【0019】
本発明に用いるレゾール型フェノール樹脂としては従来公知のものが使用できるが、例えば、以下の構造が挙げられ、加熱時に三次元架橋を形成するとともに、特に分子内の多数のフェノール構造は高い硬度を有し、高い機械耐久性を得ることが可能となり、優れた表面保護層を形成することが可能となる。
【0020】
【化1】

【0021】
レゾール型フェノール樹脂としては、 フェノライトTD−2547、フェノライトJ−325(DIC社製)、BLS−356B(昭和電工社製)、スミライトレジンPR−50404、PR−51206(住友ベークライト社製)等が挙げられる。
上記レゾール型フェノール樹脂はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒を用いた塗料の形態で、感光体表面保護層として成膜するが、塗料の固形分を10〜25wt%に希釈して用いることで、表面保護層の膜中に溶媒を多く含んだ状態で形成されるため、フェノール樹脂同士の運動性が高くなり、架橋や凹構造を形成しやすくなり、かつ適度な凹構造の深さを形成することが可能となる。
【0022】
上記、レゾール型フェノール樹脂は感光層上に塗布後、加熱硬化反応によって成膜され、表面に多数の凹構造を有する表面を作製するために、加熱温度は140〜180℃、好ましくは150〜170℃の範囲で加熱することが望ましい。
また、表面保護層の膜厚は2〜5μmが好ましい。前記膜厚が、2μm未満であると、膜中の溶媒が蒸発しやすくなるため、表面保護層中の溶媒量が少ない状態で架橋反応を起こし、表面に凹構造を形成することが困難である。また膜厚が5μmを超えると、電荷輸送性の悪化から画像の再現性が低下する問題がある。
【0023】
−硬化剤−
前記、レゾール型フェノール樹脂は加熱反応によって、硬化膜を形成するが、硬化反応を効率よく進行させるために硬化剤を併用してもよい。
硬化剤としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、キシレンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
前記硬化剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部に対し、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜5質量部がより好ましい。
【0024】
−フィラー−
前記表面保護層は、レゾール型フェノール樹脂を含有し、表面保護層の表面は複数の凹構造を有し、凹構造の最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有するものであるが、これら成分以外に、耐摩耗性の向上を目的としてフィラーを含有させることが好ましい。
【0025】
前記フィラーとしては、有機フィラー及び無機フィラーのいずれかが用いられる。
前記有機性フィラーとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂粉末;シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末などが挙げられる。前記無機フィラーとしては、例えば銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属粉末;シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物;フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物;チタン酸カリウム、窒化硼素などが挙げられる。これらの中でも、フィラーの硬度の点から無機フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
【0026】
前記フィラーの平均一次粒径は、表面保護層の光透過率や耐摩耗性の点から0.01μm〜0.5μmであることが好ましい。前記フィラーの平均一次粒径が、0.01μm未満であると、分散性の低下等を引き起こし、耐摩耗性の向上効果が十分に発揮されないことがあり、0.5μmを超えると、表面保護層分散液中においてフィラーの沈降性が促進されたり、トナーのフィルミングが発生することがある。
【0027】
前記フィラーの表面保護層における含有量は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、高すぎる場合には残留電位の上昇、表面保護層の書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。また、フィラー含有量が高いと表面に析出し凸構造が多く形成され、凹構造が得られなくなってしまう。したがって、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
前記フィラーは、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。
【0028】
前記表面処理剤としては、特に制限はなく、従来用いられている表面処理剤をすべて使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。
前記表面処理剤の使用量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、フィラー100質量部に対して3質量部〜30質量部が好ましく、5質量部〜20質量部がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こすことがある。
【0029】
前記表面保護層塗工液には、電荷輸送性を向上させるため、公知の電荷輸送物質を含有させることも可能である。ただし、電荷輸送物質の多量の添加は、可塑剤的な効果を示し、加熱硬化反応時に表面保護層表面の凹凸が緩和される場合があるため、電荷輸送性を向上させる手段としては、前述のフィラーのうち、導電性を有するフィラーを添加することが好ましい。
導電性フィラーとしては、前述のように、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム等の既知のフィラーが挙げられる。
【0030】
前記表面保護層塗工液は、前述のように、塗料の固形分を10〜25wt%に希釈して塗布することで、表面に多数の微細凹構造を形成することが可能となる。
溶媒としては、前述のように、レゾール型フェノール樹脂の溶解に有効なメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒を含む。
また、感光層と表面保護層との接着性を向上させるため、感光層の表面の溶解性が高い溶媒を混合することも有用であり、一例として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
塗布方法は、例えば浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などにより行うことができる。
【0031】
本発明においては、前記表面保護層塗工液を塗布後、外部から熱エネルギーを与え、硬化させて、表面保護層を形成するが、前述のように、表面に多数の凹構造を有する表面を作製するために、加熱温度は140〜180℃、好ましくは150〜170℃の範囲で加熱することが望ましい。
【0032】
<電子写真感光体の層構造>
本発明の電子写真感光体の層構造について図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の電子写真感光体の一例を表す断面図であり、支持体201上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層202が設けられた単層構造の表面に、表面保護層203を設けた構成を示したものである。
図7は、支持体201上に、電荷発生機能を有する電荷発生層204と、電荷輸送機能を有する電荷輸送層205とが積層された積層構造の表面に、表面保護層203を設けた構成を示したものである。
【0033】
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着法、又はスパッタリング法により、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
【0034】
また、前記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を溶剤に分散させた塗布液を塗布することにより設けることができる。
前記溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
更に、適当な円筒基体上に、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、支持体として良好に用いることができる。
【0036】
<感光層>
前記感光層は、積層構造でも単層構造でもよい。
前記感光層が積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、前記感光層が単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。
以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて説明する。
【0037】
<積層構造の感光層>
(1)電荷発生層
前記電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0038】
前記有機系材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、前記電荷発生層のバインダー樹脂としては、上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、(1)アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料、(2)ポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0041】
前記(1)の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0042】
また、前記(2)の具体例としては、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0043】
また、前記電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。
前記低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
前記電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔輸送物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記電荷発生層を形成する方法としては、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前記真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられる。
前記キャスティング法としては、前記無機系もしくは有機系電荷発生物質、必要に応じてバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
前記電荷発生層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm〜5μmが好ましく、0.05μm〜2μmがより好ましい。
【0045】
(2)電荷輸送層
前記電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層であり、少なくとも電荷輸送物質及び結着樹脂が含有されるものが一般的である。
前記電荷輸送物質としては、前記電荷発生層について記載する箇所に記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。特に高分子電荷輸送物質を用いることは、表面保護層塗工時の下層の溶解性の低減効果を示し、とりわけ有用である。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記電荷輸送物質の含有量は、前記結着樹脂100質量部に対し、20質量部〜300質量部が好ましく、40質量部〜150質量部がより好ましい。ただし、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
前記電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
【0047】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
前記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
前記レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
前記電荷輸送層の厚みは、5μm〜40μmが好ましく、10μm〜30μmがより好ましい。
【0048】
<単層構造の感光層>
前記単層構造の感光層は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、本発明の表面保護層を感光層上に設けることによって有用に用いられる。
単層構造の感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解乃至分散し、これを塗布し、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において、既に述べたものと同様なものが使用できる。前記結着樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能であり、表面保護層への感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。
【0049】
前記感光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm〜30μmが好ましく、10μm〜25μmがより好ましい。
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は、感光層全量に対し1質量部〜30質量部が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は全量の20質量部〜80質量部が好ましく、電荷輸送物質は10質量部〜70質量部が良好に用いられる。
【0050】
−中間層−
本発明の電子写真感光体においては、表面保護層と電荷輸送層、又は表面保護層と単層構造の感光層との間に中間層を設けることが可能である。
前記中間層は、ラジカル重合性組成物を含有する表面保護層中に感光層組成物の混入により生ずる硬化反応の阻害や表面保護層の凹凸を防止する。また、感光層と表面保護層の接着性を向上させることも可能である。
【0051】
前記中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として含有する。前記バインダー樹脂としては、例えばポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、特に制限はなく、一般に用いられる塗工法を採用することができる。
前記中間層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05μm〜2μmが好ましい。
【0052】
−下引き層−
本発明の電子写真感光体においては、支持体上に下引き層を設けることができる。
前記下引き層は、一般には樹脂を主成分として含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。前記樹脂としては、前記下引き層上に表面保護層、感光層、電荷発生層、又は中間層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが好ましい。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0053】
前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
前記下引き層は、前記感光層と同様に溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。
前記下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。その他、前記下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。
前記下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm以下が好ましい。
【0054】
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、単層構造の感光層、表面保護層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]クリコールエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
【0056】
前記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
前記ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
【0057】
前記有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
前記有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
【0058】
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
前記酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01質量部〜10質量部が好ましい。
【0059】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、必要に応じてクリーニング手段や更に適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
【0060】
−静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成手段は、電子写真感光体上に静電潜像を形成する手段である。
前記電子写真感光体としては、本発明の前記電子写真感光体を用いる。
前記静電潜像の形成は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記電子写真感光体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記電子写真感光体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0061】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記電子写真感光体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
前記帯電部材の形状としてはローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等、どのような形態をとってもよく、電子写真装置の仕様や形態にあわせて選択可能である。磁気ブラシを用いる場合、磁気ブラシは、例えば、Zn−Cuフェライト等、各種フェライト粒子を帯電部材として用い、これを支持させるための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールによって構成される。又はブラシを用いる場合、例えば、ファーブラシの材質としては、カーボン、硫化銅、金属又は金属酸化物により導電処理されたファーを用い、これを金属や他の導電処理された芯金に巻き付けたり張り付けたりすることで帯電器とする。
【0062】
前記帯電器は、上記のような接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電器を用いることが好ましい。
前記帯電器が電子写真感光体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって電子写真感光体表面を帯電するものが好ましい。
また、帯電器が、電子写真感光体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、該帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって電子写真感光体表面を帯電するものが好ましい。
【0063】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0064】
前記現像手段は、前記静電潜像を、前記トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する手段である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0065】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
前記現像器内では、例えば、前記トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて該電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0066】
前記現像器に収容させる現像剤としては一成分現像剤であってもよいし。二成分現像剤であってもよく、粉砕法、重合法のいずれの方法で作製したものでもよい。
なお、トナーの表面に添加する外添剤は、無機微粒子が好ましく用いられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0067】
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、記録媒体に直接転写を行う、あるいは中間記録媒体を用い、該中間記録媒体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が挙げられる。前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用いる場合、可視像を中間記録媒体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを含む態様がより好ましい。
なお、前記中間記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の記録媒体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0068】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0069】
前記定着手段は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる手段であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。
前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。
なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0070】
前記除電手段は、前記電子写真感光体に対し除電装置により除電バイアスを印加して除電を行う手段である。
前記除電装置としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0071】
前記クリーニング手段は、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーをクリーニング装置を用いて除去する手段である。
前記クリーニング装置としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。また、本発明の電子写真感光体においては、トナー離型性に優れた表面保護層を用いることから、トナーを転写した後の残留トナー量が低減するため、クリーニング手段を有さないクリーナーレス画像形成装置に適用することが有効であり、画像形成装置を小型にすることが可能である。
【0072】
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記電子写真用トナーを前記現像手段にリサイクルさせる手段である。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0073】
前記制御手段は、前記各工程を制御する手段である。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0074】
本発明の画像形成装置は、本発明における表面保護層を有する電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、転写媒体へのトナー画像の転写、定着というプロセスよりなる画像形成装置である。
ここで、図8は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体10を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ11が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
【0075】
次に、均一に帯電された感光体10上に静電潜像を形成するために画像露光部12が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体10上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット13が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0076】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を記録媒体15上に転写するために転写チャージャ16が用いられる。また、記録媒体15は感光体に搬送される際にレジストローラ14を通過する。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
また記録媒体15を感光体10より分離する手段として分離チャージャや分離爪が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャとしては、前記帯電手段が利用可能である。
【0077】
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ18、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段を用いた画像形成装置である。
前記画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱可能としたものであってもよい。
【0078】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、画像形成装置本体に着脱可能である。
図9は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
図9のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段106を有してなる。図9中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。また必要に応じて設けるクリーニング手段を設けることもできる。
【0079】
次に、図9に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、時計回り方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段106により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体表面は、除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、耐摩耗性が高く、トナー離型性に優れた表面保護層を有する電子写真感光体を用いているので、クリーニング不良による異常画像を抑制し、長期にわたって、高精細、高画質な画像を形成することができ、またクリーナレス画像形成装置においても良好に使用することが可能である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
実施例1
<電子写真感光体の作製>
アルミニウムシリンダ上に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布し、乾燥して、厚み3.5μmの下引き層、厚み0.2μmの電荷発生層、及び厚み23μmの電荷輸送層を形成した。
【0082】
−下引き層塗工液−
・アルキッド樹脂
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)
・・・6質量部
・メラミン樹脂
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)
・・・4質量部
・酸化チタン ・・・40質量部
・メチルエチルケトン ・・・50質量部
【0083】
−電荷発生層塗工液−
・下記構造式で表されるビスアゾ顔料 ・・・2.5質量部
【化2】

・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) ・・・0.5質量部
・シクロヘキサノン ・・・200質量部
・メチルエチルケトン ・・・80質量部
【0084】
−電荷輸送層塗工液−
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成株式会社製) ・・・10質量部
・下記構造式で表される電荷輸送物質 ・・・7質量部
【化3】

・テトラヒドロフラン ・・・100質量部
・1質量部のシリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液
(KF50−100CS、信越化学工業株式会社製) ・・・1質量部
【0085】
次に、前記電荷輸送層上に、下記組成の表面保護層塗工液(固形分20wt%)を用いて、スプレー塗工し、160℃で60分間乾燥し、膜厚3μmの表面保護層を形成した。以上により、実施例1の電子写真感光体1を作製した。
−表面保護層塗工液−
・レゾール型フェノール樹脂(スミライトレジンPR-50404(77wt%溶液))
・・・4質量部
・メタノール ・・・11.4質量部
【0086】
実施例2
実施例1において、表面保護層の膜厚を2μmに変更した以外は同様にして、電子写真感光体2を作製した。
【0087】
実施例3
実施例1において、表面保護層を下記組成の表面保護層塗工液(固形分20wt%)を用いて、スプレー塗工し、160℃で60分間乾燥し、膜厚5μmの表面保護層を形成した以外は同様にして、電子写真感光体3を作製した。
−表面保護層塗工液−
・レゾール型フェノール樹脂
(スミライトレジンPR-50404(77wt%溶液):住友ベークライト社製)
・・・4質量部
・フィラー
(導電性微粒子セルナックス CX-Z210IP(20wt%溶液):日産化学社製)
・・・1.5質量部
・メタノール ・・・11.4質量部
【0088】
実施例4
実施例1において、表面保護層を下記組成の表面保護層塗工液(固形分20wt%)を用いて、スプレー塗工し、160℃で60分間乾燥し、膜厚3μmの表面保護層を形成した以外は同様にして、電子写真感光体4を作製した。
−表面保護層塗工液−
・レゾール型フェノール樹脂
(スミライトレジンPR-50404(77wt%溶液):住友ベークライト社製)
・・・4質量部
・フィラー(アルミナフィラー、AA−03、住友化学株式会社製)
・・・0.3質量部
・メタノール ・・・12.6質量部
【0089】
比較例1
実施例1において、表面保護層の乾燥条件を130℃で60分間に変更した以外は同様にして、電子写真感光体5を作製した。
比較例2
実施例1において、表面保護層の膜厚を1μm、乾燥条件を130℃で60分間に変更した以外は同様にして、電子写真感光体6を作製した。
実施例5
実施例1において、表面保護層の乾燥条件を175℃で60分間に変更した以外は同様に、電子写真感光体7を作製した。
比較例3
実施例1において、乾燥条件を190℃で60分間に変更した以外は同様にして、電子写真感光体8を作製した
【0090】
比較例4
実施例1において、表面保護層の膜厚を1μmに変更した以外は同様にして、電子写真感光体9を作製した。
実施例6
実施例1において、表面保護層の膜厚を6μmに変更した以外は同様にして、電子写真感光体10を作製した。
【0091】
比較例5
電荷輸送層上に、下記組成の表面保護層塗工液(固形分5wt%)を用いて、スプレー塗工し、160℃で60分間乾燥し、膜厚3μmの表面保護層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体11を作製した。
−表面保護層塗工液−
・レゾール型フェノール樹脂(スミライトレジンPR-50404(77wt%溶液))
・・・4質量部
・メタノール ・・・57.6質量部
【0092】
比較例6
電荷輸送層上に、下記組成の表面保護層塗工液(固形分30wt%)を用いて、スプレー塗工し、160℃で60分間乾燥し、膜厚3μmの表面保護層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体12を作製した。
−表面保護層塗工液−
・レゾール型フェノール樹脂(スミライトレジンPR-50404(77wt%溶液))
・・・4質量部
・メタノール ・・・6.25質量部
【0093】
比較例7
実施例1において、表面保護層を設けない以外は同様にして、電子写真感光体13を作製した。
【0094】
上記で作製した電子写真感光体1〜13について、10×10μm四方の表面形状を分子間力顕微鏡を用いて、以下に示す条件で測定を実施した。
その結果を表1に示す。
分析装置: アサイラム・テクノロジー社製 分子間力プローブ顕微鏡システムMFP-3D-SA
カンチレバー: OMCL-AC240TS (Si プローブ, 共振周波数70kHz(Typ.), ばね定数1.8N/m(Typ.))
・ 測定モード: AC モード (Tapping モード)
測定条件
加振周波数: 75.093 KHz
Scan Rate: 0.5 Hz
Scan Points: 256×256
【0095】
【表1】

【0096】
次に、作製した各電子写真感光体を、クリーニング手段(クリーニングブラシ、クリーニングブレード)を取り外したプロセスカートリッジに装着し、株式会社リコー製imagio MP9001にて、連続して合計2万枚の実機通紙試験を行い、以下のようにして、転写率測定、及び画像評価を行った。結果を表に示す。
【0097】
(転写率測定)
2万枚通紙前後に以下の評価を実施した。まず、画像面積2cm2の黒ベタ画像を出力し、感光体上のトナーが転写紙に転写される前に装置を停止させ、感光体上のトナー量を求めた。続いて、再度画像面積2cm2の黒ベタ画像を出力し、感光体上のトナーが転写紙に転写された直後に装置を停止させ、感光体上のトナー量を求めた。以上の結果をもとに、感光体上の未転写トナー量の比率を測定することで、転写率を測定した。
【0098】
(画像評価)
2万枚通紙後に、前記実機通紙試験で用いた株式会社リコー製imagio MP9001を用いて、白パターン、黒パターン、及びハーフトーンパターンのA3サイズ画像を2枚出力し、異常画像の有無を確認した。
【0099】
【表2】

【0100】
上記結果に示すように、複数の凹構造を有する表面保護層を有し、かつ凹構造は最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有する電子写真感光体を用いた画像形成装置は、異常画像のない優れた画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0101】
10 感光体
11 帯電チャージャ
12 画像露光部
13 現像ユニット
14 レジストローラ
15 記録媒体
16 転写チャージャ
18 除電ランプ
101 電子写真感光体
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 記録媒体
106 転写装置
201 支持体
202 感光層
203 表面保護層
204 電荷発生層
205 電荷輸送層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特許第3938210号公報
【特許文献2】特許第4208367号公報
【特許文献3】特許第4160512号公報
【特許文献4】特開平6−95413号公報
【特許文献5】特許第4214655号公報
【特許文献6】特開2007−193309号公報
【特許文献7】特開2009−104146号公報
【特許文献8】特開2007−025676号公報
【特許文献9】特開2003−066642号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、少なくとも感光層及び表面保護層を有してなり、
前記表面保護層の表面は複数の凹構造を有し、
凹構造は最長径が1〜3μm、かつ最大深さが10〜50nmであり、
任意の凹構造は、その3μm以内に少なくとも1つの近接する凹構造を有する
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
表面保護層がレゾール型フェノール樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
【請求項3】
表面保護層が、フィラーを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
表面保護層の膜厚が、2〜5μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、及び除電手段から選択される少なくとも一つの手段とを有し、
画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成装置が、転写手段の後に電子写真感光体上のトナーを除去するクリーニング手段を有さないクリーナーレス画像形成装置であることを特徴とする請求項6記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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