説明

電子写真感光体、及びそれを使用した画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】高感度化ならびに電荷発生物質が起因する電子写真感光体内の電荷蓄積を抑制することにより、高速プリントに対応し、かつ画像欠陥のない高品質なプリントを長期間実現できる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を設けてなり、感光層は、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化した下記一般式(a)で示されるアゾ化合物と他の顔料とを含む複合アゾ顔料を含有する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度で繰り返し使用においても安定して画像出力ができる高安定な感光体、ならびにそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましく、特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行なうレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。急速に普及しているこれらのレーザープリンターやデジタル複写機は、最近では高速、高画質、高安定性への要求が急激に高くなっている。
画像形成装置に使用される電子写真感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び低環境負荷等の理由から一般に広く応用されている。
【0003】
この有機感光体に用いられる電荷発生物質としては、様々なものが開発されておりアゾ顔料やフタロシアニン顔料など、感光体特性として有用な顔料が見出されている。アゾ顔料の例としては、例えば特許文献1(特開昭47−37543号公報)、特許文献2(特開昭52−55643号公報)等に記載されるベンジジン系ビスアゾ顔料や、特許文献3(特開昭52−8832号公報)に記載されるスチルベン系ビスアゾ顔料、特許文献4(特開昭58−222152号公報)に記載されるジフェニルヘキサトリエン系ビスアゾ顔料、特許文献5(特開昭58−222153号公報)に記載されるジフェニルブタジエン系ビスアゾ顔料等が知られている。
【0004】
しかしこれらの単独の顔料を用いた感光体は、感度や使用環境や使用経時での安定性という点で十分ではなく、今後の高画質または高速複写機用感光体としては不十分である。このような問題を解決するため、2種類以上の顔料を混合して用いる技術も提案されている。例えば、無金属フタロシアニンとフルオレノン系アゾ顔料を含有する特許文献6(特開平5−301292号公報)、特許文献7(特開2001−290296号公報)、フタロシアニン化合物とアゾ顔料を含有する特許文献8(特開平9−127711号公報)、金属フタロシアニンとペリレン混成顔料の特許文献9(特開2002−23399号公報)、キナクリドン顔料とチタニルフタロシアニン顔料の特許文献10(特開2007−334099号公報)、チタニルフタロシアニン顔料とそれ以外のフタロシアニン顔料の特許文献11(特開平3−9962号公報)などがあるが、いまだ十分なものはない。
【0005】
この理由の一つとして上記の顔料は一般に有機溶剤に対する溶解性が極めて低く、高度に分散された均一な塗工液とし難く、また精製は有機溶媒による洗浄工程に限られており、不純物を十分に取り除けていないと考えられる。
【0006】
本出願人は、有機溶剤に対する溶解性を向上させたアゾ顔料を提案(特許文献12(特開2009−7523号公報)し、均一な塗工液による感光体の製造を可能にしているが、単一の電荷発生物質では、充分な感光体特性を得ることが困難であり、電気特性の異なる2種以上の電荷発生物質を併用することが考えられる。
【0007】
複数の顔料を混合する方法は、ミリング等の機械的手段が主であり分子レベルの混合・複合が不可能であり、有機光導電体としての機能を十分に発揮できていなかったと考えられる。また、アシッドペーストを併用する方法も提案されているが、濃硫酸を用いるため製造上の問題があるとともに、顔料の分解等が懸念され、適用が制限されたり、また結晶型により特性が大きく異なるものは、アシッドペーストの際に混合することにより、結晶転移が生じたり、所望の結晶型が得られず、結果的に十分な感光体特性が得られないという問題もあった。
そこで従来の欠点を克服した電子写真感光体を実現するべく、有用な電荷発生物質が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高感度化ならびに電荷発生物質が起因する電子写真感光体内の電荷蓄積を抑制することにより、高速プリントに対応し、かつ画像欠陥のない高品質なプリントを長期間実現できる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(1)〜(8)によって解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を設けてなり、該感光層は、少なくとも下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化した下記一般式(a)で示されるアゾ化合物と他の顔料とを含む複合アゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0010】
【化1】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0011】
【化2】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
(2)前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を含む溶液に、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物とは異なる他の顔料を加え、さらに脱カルボエステル化した複合アゾ顔料を含むことを特徴とする前記第(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記一般式(I)で示されるアゾ化合物の2種類以上を混合溶解し、該2種以上のアゾ化合物を同時にまたは段階的に、脱カルボエステル化し、前記一般式(a)で示されるアゾ化合物とした複合アゾ顔料を含むことを特徴とする前記第(1)又は第(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記一般式(I)および前記一般式(a)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(II)で示される残基Aを有するアゾ化合物であることを特徴とする、前記第(1)乃至第(3)のいずれか1に記載の電子写真感光体。
【0012】
【化3】

(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)」、
(5)「前記Cpが下記一般式(1)乃至(9)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする前記第(4)に記載の電子写真感光体。
【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

上記一般式(1)〜(4)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただし、ここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。
[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0017】
【化8】

(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【0018】
【化9】

(上式中、Aは、式(6)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。Xは前記と同じ。)
【0019】
【化10】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

(上記式(8)および(9)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。)
(6)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が前記第(1)乃至第(5)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(7)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする前記第(6)に記載の画像形成装置。
(8)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジにおいて、該電子写真感光体が前記第(1)乃至第(5)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電子写真感光体内の感光層中に複合アゾ顔料を用いることにより、高速プリントに対応し、かつ画像欠陥のない高品質なプリントを長期間にわたって出力することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供するに至った。
【0023】
ここで、本発明での複合アゾ顔料とは、カルボエステル基を有し、有機溶剤に対する溶解性が高い、少なくとも1種の前記一般式(1)で示されるアゾ化合物を、他の顔料の共存下で有機溶剤に溶解させて分子状態で他の顔料と接触させた状態、もしくは、少なくとも2種の前記一般式(1)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解させ混合させた状態で、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより製造されたものを示す。
よって、本発明の複合アゾ顔料は、本来有機溶剤に対する溶解性が低く、高分散化が困難な2種以上の顔料であっても、分子レベルで高度に分散され、かつ接合を有し、高感度化や画質安定化が実現されものであり、従来技術として知られているようなミリングにより、複数の顔料を混合したものとは、基本的に異なるものである。
【0024】
また、2種以上の顔料を溶解する同様の試みとして、アシッドペーストの際に2種以上の顔料を混合する方法もあるが、結晶型により電荷発生能力が大きく異なる顔料においては、アシッドペーストの際に結晶転移が生じ、所望の結晶型が得られず十分な感度が得られない場合が多いが、本発明においては、所望の結晶型の顔料に対して、分子レベルでアゾ顔料を接合できるため、さらなる高感度化を実現することができる。
【0025】
また、本発明における複合アゾ顔料は、複合時の方法により、ある顔料の周りを脱カルボエステル化した前記一般式(a)で表されるアゾ顔料で覆うことも可能である。この場合、選択する顔料によっては、外的要因により特性が変化しにくく、高安定な電荷発生物質が得られ、結果的に非常に高安定な電子写真感光体を得ることができる。
【0026】
また、電荷発生層用塗工液の大きな課題として顔料の分散安定性が挙げられ、これにより電荷発生物質として用いることができる顔料や電荷発生層用塗工液の処方も制約があり、感光体特性が犠牲になっている部分もあった。しかし、分散安定性が高いアゾ顔料を選択し、他の顔料を包むことにより、分散安定性という課題も解決することができる。それにより、これまで分散安定性の課題から用いることができなかった電荷発生物質を使用できたり、また電荷発生層用塗工液の処方も感光体の静電特性を重視して設計でき、結果的にこれまで実現できなかった特性の電子写真感光体を得ることが可能となった。
【0027】
また、少なくとも2種の前記一般式(1)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解させた状態で、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより複合アゾ顔料を得た場合、顔料化の過程で複数種のアゾ化合物が共存するため、反応条件によっては、結晶のサイズ成長を抑制することが可能であり、従来用いていた単独のアゾ顔料に比べ、一次粒径が小さいものも合成可能であり、結果的に感光体特性としても高感度なものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図2】本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図3】本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図4】本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図5】本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための図である。
【図6】本発明の帯電手段を説明するための図である。
【図7】本発明の別の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための図である。
【図8】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の感光体について、図面を参照して以下に説明する。
本発明の感光体(1)は、図1に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(3)と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(4)が積層された構成をなしている。
また、本発明の感光体(1)は、図2に示すように、導電性支持体(2)と、電荷発生層(3)との間に、下引き層(6)、あるいは中間層を形成してもよい。
また、本発明の感光体(1)は、図3に示すように、電荷輸送層(4)の上に保護層(5)を形成してもよい。
更に、本発明の感光体(1)は、図4に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層の感光層(7)を有した単層型感光体の態様をなしてもよい。
【0030】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0031】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、これらの導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0032】
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0033】
<感光層>
次に、感光層について説明する。
積層構成の感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層が順次積層されることによって構成されている。
【0034】
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、電荷発生物質を含む層である。該電荷発生物質として、本発明で用いられる複合アゾ顔料を少なくとも含有する。
本発明に用いられる複合アゾ顔料とは、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示される複合アゾ化合物としたものである。
【0035】
【化13】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0036】
【化14】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【0037】
複合化する手段としては、予め前記一般式(I)で示されるアゾ化合物と他の顔料とを有機溶媒に溶解し共存させ、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を化学的手段、熱的手段及び光分解的手段の少なくとも1手段を用いて脱カルボエステル化して前記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする複合化手段が好ましい。
【0038】
また、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物の2種類以上を、同時にまたは段階的に、化学的手段、熱的手段及び光分解的手段の少なくとも一手段を用いて脱カルボエステル化し複合化することも好ましい。
【0039】
本発明において好ましく用いることができるアゾ化合物としては、前記一般式(I)および前記一般式(a)中のAが、下記一般式(II)で示されるアゾ化合物である。
【0040】
【化15】

【0041】
(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
【0042】
また、より好ましくは前記一般式(II)のCpが、下記一般式(1)乃至(9)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基である。
【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
上記一般式(1)〜(4)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただしここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。
[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0048】
【化20】

(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【0049】
【化21】

(上式中、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。Xは前記と同じ。)
【0050】
【化22】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【0051】
【化23】

【0052】
【化24】

(上記式(8)および(9)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【0053】
また、より好ましくは前記一般式(II)のBが、下記一般式(III)〜(X)で示されるアゾ化合物である。
【0054】
【化25】

(ただし、R11、R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
【0055】
【化26】

(ただし、R13、R14、R15は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0056】
【化27】

(ただし、R16、R17、R18は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0057】
【化28】

(ただし、R19、R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0058】
【化29】

(ただし、R21、R22、R23は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0059】
【化30】

(ただし、R24、R25、R26は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0060】
【化31】

(ただし、R27、R28、R29は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0061】
【化32】

(ただし、R30、R31は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。
【0062】
本発明に使用できる前記一般式(a)または(I)で示されるアゾ化合物の好ましい化合物としては、アゾ化合物の主骨格が一般式(III)である式(III)−1〜(III)−14、アゾ化合物の主骨格が一般式(IV)である式(IV)−1〜(IV)−5、アゾ化合物の主骨格が一般式(V)である式(V)−1〜(V)−8、アゾ化合物の主骨格が一般式(VI)である式(VI)−1〜(VI)−5、アゾ化合物の主骨格が一般式(VII)である式(VII)−1〜(VII)−7、アゾ化合物の主骨格が一般式(VIII)である式(VIII)−1〜(VIII)−5、アゾ化合物の主骨格が一般式(IX)である式(IX)−1〜(IX)−4、アゾ化合物の主骨格が一般式(X)である式(X)−1〜(X)−6である。
【0063】
以下に化合物例を示す。Eは水素またはカルボエステル基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。
【0064】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(III)である化合物の例>
【0065】
【化33】

【0066】
【化34】

【0067】
【化35】

【0068】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(IV)である化合物の例>
【0069】
【化36】

【0070】
【化37】

【0071】
【化38】

【0072】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(V)である化合物の例>
【0073】
【化39】

【0074】
【化40】

【0075】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(VI)である化合物の例>
【0076】
【化41】

【0077】
【化42】

【0078】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(VII)である化合物の例>
【0079】
【化43】

【0080】
【化44】

【0081】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(VIII)である化合物の例>
【0082】
【化45】

【0083】
【化46】

【0084】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(IX)である化合物の例>
【0085】
【化47】

【0086】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(X)である化合物の例>
【0087】
【化48】

【0088】
【化49】

【0089】
前記カルボエステル基を有する式(I)の化合物は、例えば欧州特許第648770号公報及び欧州特許第648817号公報、また特表2001−513119号公報に記載されているようにして合成でき、例えば非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下0〜150℃、好ましくは10〜100℃の温度で、30分から20時間、前記一般式(II)のものと、下記式(10)のものとを、適切なモル比で反応させて合成できる。
【0090】
【化50】

(B、Cp、Rは前記に記載のとおりである)
それぞれの場合において、モル比は導入されるEの数に左右される。好ましくはピロ炭酸ジエステルを少し過剰に用いるのが適している。
【0091】
適切な非プロトン性有機溶剤は、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。好ましい溶剤は、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドである。
【0092】
触媒として適切な塩基は、例えばアルカリ金属:ナトリウム、カリウムなど、ならびにそれらの水酸化物及び炭酸塩、またはアルカリ金属アミド類であり、ナトリウムアミド、カリウムアミド類であり、また水素化アルカリ金属類たとえば水素化リチウムなどがある。有機脂肪族、芳香族またはヘテロ環式N−塩基類としては、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、トリエチルアミンなどが使用できる。好ましいのは、有機N−塩基類であり、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンである。
【0093】
上記式(10)であらわされるピロ炭酸ジエステルは、一般に知られている方法で製造できる。また商業的にも入手できる。Rは、上記の記載のものを示すが、好ましくは溶解性の驚くべき向上の点で分岐のアルキル基が好ましい。
【0094】
また、本発明に用いられる一般式(I)で示されるアゾ化合物とは異なる他の顔料として好ましい顔料としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料等のアゾ顔料、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、バナジルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、インジゴ顔料、ピロロピロール顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクエアリウム顔料等が挙げられる。また、フラーレン、カーボンナノチューブ等があげられる。または無機ナノ顔料としては、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ素、酸化ケイ素、セレン、硫化カドニウム、セレン化カドニウム等があげられる。
これらの顔料は複合が分子レベルで相互作用するためになるべく微細な粒子であることが好ましい。具体的には、粒径が1ミクロン以下、好ましくは0.5ミクロン以下が好ましい。
【0095】
また本発明に用いられる前記一般式(I)で示されるアゾ化合物の2種類以上を溶解混合し、脱カルボエステル化した複合アゾ顔料において、選択する2種以上のアゾ顔料の好ましい組み合わせとしては、複合が分子レベルで相互作用するために、P型半導体または電子供与性の構造または置換基を有する顔料と、N型半導体または電子吸引性の構造または置換基を有する顔料との組み合わせが好ましい。
たとえば、N型半導体の性質を示すと考えられている一般式(III)あるいは、一般式(VI)あるいは、一般式(VIII)のアゾ顔料とP型半導体の性質を示すと考えられている一般式(IV) あるいは、一般式(VII)のアゾ顔料の組み合わせ等は特に好ましい。
また、電子吸引性の置換基としてニトロ基、シアノ基、クロル原子を置換基として有するアゾ顔料とメトキシ基、メチル基などの電子供与性の置換基を有するアゾ顔料の組み合わせ等は特に好ましい。
【0096】
本発明の、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物としたアゾ化合物を少なくとも含む複合アゾ顔料を製造する方法について説明する。
【0097】
【化51】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0098】
【化52】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【0099】
一般式(I)で表されるアゾ化合物と共存させる他の顔料は、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料、フラーレン、カーボンナノチューブ、または無機ナノ顔料である。
【0100】
化学的手段(化学的方法)は、酸または塩基などの触媒によりアゾ顔料を製造する方法であるが、好ましい触媒は酸であり、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、安息香酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、p-トルエンスルホン酸。サリチル酸等が挙げられる。
熱的手段(熱的方法)は、溶媒の存在下に50℃〜300℃に加熱することによりアゾ顔料を製造する方法であるが、好ましくは、70℃〜250℃に大気圧下で30分から20時間反応させることが望ましい。
光分解的手段(方法)は、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物が、吸収を有する光であれば使用することができる。具体的には、高圧または低圧水銀灯、タングステンランプ、LEDランプ、レーザー光源などが使用できる。
【0101】
ここに用いられる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。
化学的方法、熱的方法または光分解的方法は、併用することによりさらに効率的にアゾ顔料が製造できる。特に化学的方法と熱的方法を組み合わせることにより収率良く、高純度の複合アゾ顔料が製造できる。
【0102】
前記一般式(I)で示されるアゾ化合物と該アゾ化合物とは異なる他の顔料とを共存させることにより複合化する場合は、共存させる他の顔料は、前もって微細化処理をしていることが望ましい。機械的粉砕方法、再沈殿方法、気相からの微粒子化の方法、等により好ましくは、0.5ミクロン以下の粒径の顔料が用いられる。
前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解した溶液に、これらの顔料を添加し、撹拌することにより顔料にアゾ化合物が分子レベルで存在することが可能となり、このような状態で化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、本発明の複合アゾ顔料が製造できる。
【0103】
また前記一般式(I)で示されるアゾ化合物の2種類以上を混合溶解し、さらに脱カルボエステル化した複合アゾ顔料は、2種以上の前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解した溶液を撹拌することによりアゾ化合物が分子レベルで存在することが可能となり、このような状態で化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより製造できる。この場合、脱カルボエステル化させる条件やアゾ化合物の種類によっては、ある特定種のアゾ化合物の反応速度を選択的に速くすることで、コアシェル構造のような顔料粒子を形成することも可能である。
【0104】
また、本発明においては前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解し、その溶液をシリカゲル、アルミナ、フロリジル、活性炭素、活性白土、珪藻土、またはパーライトで吸着処理をする方法を用いることも好ましい。
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、4塩化炭素、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等及びこれらの混合溶剤が挙げられる。吸着処理の具体的方法としては、カラムクロマトグラフィー、室温または、加熱時に吸着剤を加え、濾過する方法がある。また、再結晶と組み合わせることによりさらに効率的に処理を行なうことができる。
【0105】
電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。バインダー樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し、0〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。
【0106】
前記電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの公知の分散方法を用いて分散し、これを導電性支持体上、もしくは下引き層や中間層上に塗布し、乾燥することにより形成される。バインダー樹脂の添加は、電荷発生物質の分散前、あるいは分散後のどちらでも構わない。
【0107】
前記電荷発生層の形成に用いられる前記溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等の一般に用いられる有機溶剤が挙げられるが、これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0108】
前記電荷発生層の形成用塗工液は、電荷発生物質、溶媒及びバインダー樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていてもよい。
【0109】
上記塗工液を用いて電荷発生層を塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。塗工後には、オーブン等で加熱乾燥される。本発明における電荷発生層の乾燥温度としては、50℃以上160℃以下が好ましく、80℃以上140℃以下がより好ましい。
【0110】
<電荷輸送層>
次に電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶剤に溶解又は分散した塗工液を、塗布、乾燥することにより形成される。また、電荷輸送層の塗工液には、必要に応じて、単独又は2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0111】
電荷輸送物質としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、アミノビフェニル誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、エナミン誘導体等の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いられる。
電荷輸送物質の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。
【0112】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0113】
塗工溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレン、アセトン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
電荷輸送層の膜厚は、解像度や応答性の点から、10〜50μmであることが好ましく、15〜35μmがさらに好ましい。
【0114】
塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等の公知の方法を用いることができるが、電荷輸送層は膜厚をある程度厚く塗る必要があるため、粘性の高い液で浸漬塗工法に塗工する方法ことが好ましい。
塗工後の電荷輸送層は、オーブン等で加熱乾燥される。乾燥温度は塗工液に含有される溶媒によっても異なるが、80〜160℃あることが好ましく、110〜140℃がより好ましい。また、乾燥時間は、10分以上であることが好ましく、20分以上がさらに好ましい。
【0115】
<単層>
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
上述した電荷発生物質、電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散乃至溶解させ、電荷発生機能、及び電荷輸送機能を一つの層で実現した感光体である。
感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解ないし分散し、これを浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどの従来公知の方法を用いて塗工して形成できる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質の双方が含有されることが好ましい。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
単層の感光層に用いられる電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、有機溶剤及び各種添加剤等に関しては、前述の電荷発生層及び電荷輸送層に含有されるいずれの材料をも使用することが可能である。
バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。バインダー樹脂100質量部に対する電荷発生物質の量は、5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。また、電荷輸送物質の量は、0〜190質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。また、感光層の膜厚は、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0116】
<下引き層>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層の間に、下引き層を設けることができる。
下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、このような樹脂は、その上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、イソシアネート、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0117】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
また、前述の電荷発生層や電荷輸送層と同様に、溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。
【0118】
<保護層>
本発明においては、感光体の最表面に耐摩耗性向上の為に、保護層を設けることができる。保護層としては、電荷輸送成分とバインダー成分とを重合させた高分子電荷輸送物質型、フィラーを含有させたフィラー分散型、硬化させた硬化型などが知られているが、本発明においては従来公知のいずれの保護層に対しても使用することができる。
【0119】
<画像形成装置>
次に、図面を用いて本発明の電子写真方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。
図5は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図5に示すように、感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電チャージャ(12)、転写前チャージャ(15)、転写チャージャ(18)、分離チャージャ(19)、クリーニング前チャージャ(21)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0120】
帯電部材は、コロナ帯電等の非接触帯電方式やローラあるいはブラシを用いた帯電部材による接触帯電方式が一般的であり、本発明においてはいずれも有効に使用することが可能である。特に、帯電ローラは、コロトロンやスコロトロン等に比べてオゾンの発生量を大幅に低減することが可能であり、感光体の繰り返し使用時における安定性や画質劣化防止に有効である。
しかし、感光体と帯電ローラとが接触していることにより、繰り返し使用によって帯電ローラが汚染され、それが感光体に影響を及ぼし異常画像の発生や耐摩耗性の低下等を助長する原因となっていた。
特に、耐摩耗性の高い感光体を用いる場合、表面の摩耗によるリフェイスがしにくいことから、帯電ローラの汚染を軽減させる必要があった。
【0121】
そこで、図6に示すように、帯電チャージャ(帯電ローラ:12)にギャップ形成部材(12a)を設け、感光体(1)に対してギャップを介して近接配置させることによって、汚染物質が帯電ローラに付着しにくく、あるいは除去しやすくなり、それらの影響を軽減することが可能である。この場合、感光体と帯電ローラとのギャップは小さい方が好ましく、例えば、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
しかし、前記帯電ローラを非接触とすることによって、放電が不均一になり、感光体の帯電が不安定になる場合がある。このような問題は、直流成分に交流成分を重畳させることによって帯電の安定性を維持し、これによりオゾンの影響、帯電ローラの汚染の影響及び帯電性の影響を同時に軽減することが可能となる。
【0122】
一方、画像露光部(13)、除電ランプ(11)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0123】
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体(1)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(1)への露光は、感光体(1)に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印可することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0124】
電子写真感光体(1)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0125】
転写手段には、一般に前述の帯電器を使用することができるが、図5に示すように、転写チャージャ(18)と、分離チャージャ(19)とを併用したものが効果的である。
また、このような転写手段を用いて、感光体からトナー像を紙に直接転写されるが、本発明においては感光体上のトナー像を一度中間転写体に転写し、その後中間転写体から紙に転写する中間転写方式であることが感光体の高耐久化、あるいは高画質化においてより好ましい。
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0126】
また、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
しかし、中間転写方式は、一枚のフルカラー画像を得るのに4回のスキャンが必要となるため、感光体の耐久性が大きな問題となっていた。
本発明における感光体は、ドラムヒーターなしでも画像ボケが発生しにくいことから中間転写方式の画像形成装置に組み合わせて用いることが容易であり、特に有効かつ有用である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0127】
現像ユニット(14)により、感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(17)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体(1)上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ(22)、あるいはクリーニングブレード(23)により、感光体(1)から除去される。
このクリーニング工程は、クリーニングブラシだけで行なわれたり、ブレードと併用して行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0128】
クリーニングは、前述のとおり転写後に感光体(1)上に残ったトナー等を除く工程であるが、上記のブレード(23)、あるいはブラシ(22)等によって感光体(1)が繰り返し擦られることにより、感光体(1)の摩耗が促進されたり、傷が入ったりすることによって異常画像が発生することがある。
また、クリーニング不良によって感光体の表面が汚染されたりすると異常画像の発生の原因となるだけでなく、感光体の寿命を大幅に低減させることにつながる。特に、耐摩耗性の向上のためにフィラーを含有させた層を最表面に形成された感光体の場合には、感光体表面に付着した汚染物質が除去されにくいことから、フィルミングや異常画像の発生を助長することになる。したがって、感光体のクリーニング性を高めることは感光体の高耐久化及び高画質化に対し非常に有効である。
【0129】
感光体のクリーニング性を高める手段としては、感光体表面の摩擦係数を低減させる方法が知られている。感光体表面の摩擦係数を低減させる方法としては、各種の潤滑性物質を感光体表面に含有させる方法と、外部より感光体表面に潤滑性物質を供給させる方法とに分類される。前者はエンジン廻りのレイアウトの自由度が高いため、小径感光体には有利であるが、繰り返し使用によって摩擦係数は顕著に増加するため、その持続性に課題が残されている。一方、後者は潤滑性物質を供給する部品を備える必要があるが、摩擦係数の安定性は高いことから感光体の高耐久化に対しては有効である。その中で、潤滑性物質を現像剤に含有させることによって、現像時に感光体に付着させる方法は、エンジン廻りのレイアウトにも制約を受けずに、感光体表面の摩擦係数低減効果の持続性も高いため、感光体の高耐久化及び高画質化に対しては非常に有効な手段である。
【0130】
これらの潤滑性物質としては、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE、PFA、PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性液体や固体、粉末等が挙げられるが、特に現像剤に混合させる場合には粉末状である必要があり、特にステアリン酸亜鉛は悪影響が少なく、極めて有効に使用することができる。ステアリン酸亜鉛粉末をトナーに含有させる場合には、それらのバランスやトナーに与える影響を考慮する必要があり、トナーに対して0.01〜0.5質量%が好ましく、0.1〜0.3質量%がより好ましい。
【0131】
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。したがって、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0132】
図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、シアン(感光体:1C)、マゼンタ(1M)、イエロー(1Y)、ブラック(1K)は、ドラム状の感光体(1)であり、これらの感光体(1C、1M、1Y、1K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(12C、12M、12Y、12K)、現像部材(14C、14M、14Y、14K)、クリーニング部材(15C、15M、15Y、15K)が配置されている。帯電部材(12C、12M、12Y、12K)は、感光体(1)の表面を均一に帯電するための帯電装置(12)を構成する。
【0133】
この帯電部材(12C、12M、12Y、12K)と、現像部材(14C、14M、14Y、14K)との間の感光体1の裏面側より、図示しない露光部材からのレーザー光(13C、13M、13Y、13K)が照射され、感光体(1C、1M、1Y、1K)に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体(1C、1M、1Y、1K)を中心とした4つの画像形成要素(10C、10M、10Y、10K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(25)に沿って並置されている。
転写搬送ベルト(25)は、各画像形成ユニット(10C、10M、10Y、10K)の現像部材(14C、14M、14Y、14K)と、クリーニング部材(15C、15M、15Y、15K)との間で感光体(1C、1M、1Y、1K)に当接しており、転写搬送ベルト(25)の感光体1側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(26C、26M、26Y、26K)が配置されている。各画像形成要素(10C、10M、10Y、10K)は、現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0134】
図7に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(10C、10M、10Y、10K)において、感光体(1C、1M、1Y、1K)が、矢印方向(感光体(1)と連れ周り方向)に回転する帯電部材(12C、12M、12Y、12K)により帯電され、次に、感光体1の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(13C、13M、13Y、13K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0135】
次に現像部材(14C、14M、14Y、14K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(14C、14M、14Y、14K)は、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(1C、1M、1Y、1K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。
転写紙(17)は給紙コロ(24)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(16)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(25)に送られる。転写搬送ベルト(25)上に保持された転写紙(17)は搬送されて、各感光体(1C、1M、1Y、1K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
【0136】
感光体上のトナー像は、転写ブラシ(26C、26M、26Y、26K)に印加された転写バイアスと感光体(1C、1M、1Y、1K)との電位差から形成される電界により、転写紙(17)上に転写される。
そして、4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙(17)は、定着装置(27)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
また、転写部で転写されずに各感光体(1C、1M、1Y、1K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(15C、15M、15Y、15K)で回収される。
【0137】
なお、図7の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(10C、10M、10Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
更に、図7において帯電部材は感光体と当接しているが、図6に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
【0138】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
前記プロセスカートリッジとは、図8に示すように、感光体(1)を内蔵し、他に帯電手段(12)、露光手段(13)、現像手段(14)、転写手段(18)、クリーニング手段(23)、及び除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。
【0139】
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【実施例】
【0140】
(カルボエステル基を有するアゾ顔料の合成)
構造式(III−3)で表されるアゾ顔料(但し、EはC)の合成
特開2009−7523号公報の実施例1と同様にして、化合物(III−3)の前駆体(E基がすべてH(水素原子)であるもの)0.83グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル2.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し30分間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加え1.18グラム(収率:95.3%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロフォルム)で精製し、(III−3)で表されるアゾ顔料を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を下記表1に示す。なお、下記表1中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(III−3)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC676013Clとして算出したものである。
【0141】
【表1】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0142】
構造式(III−4)で表されるアゾ顔料(但し、EはC)の合成
化合物(III−4)の前駆体(E基がすべてH(水素原子)であるもの)0.79グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル2.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し30分間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加え1.02グラム(収率:85.6%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロフォルム)で精製し、(III−4)で表されるアゾ顔料を得た。
得られた粉末の元素分析を行った結果を下記表2に示す。なお、下記表2中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(III−4)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC696613として算出したものである。
【0143】
【表2】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0144】
構造式(III−2)で表されるアゾ顔料(但し、EはC)の合成
化合物(III−2)の前駆体(E基がすべてH(水素原子)であるもの)1.61グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル4.3グラム(10倍モル)を脱水ピリジン50ml、脱水N、N−ジメチルホルムアミド200mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約100mlを加え2.24グラム(収率:93%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロフォルム)で精製し、(III−2)で表されるアゾ顔料を得た。
得られた粉末の元素分析を行った結果を下記表3に示す。なお、下記表3中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(III−2)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC686313Clとして算出したものである。
【0145】
【表3】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0146】
構造式(V−1)で表されるアゾ顔料(但し、EはC)の合成
化合物(V−1)の前駆体(E基がすべてH(水素原子)であるもの)0.92グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル2.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し40分間反応させた。徐々に橙赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加え1.16グラム(収率:88.0%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロフォルム)で精製し、V−1で表されるアゾ顔料を得た。
得られた粉末の元素分析を行った結果を下記表4に示す。なお、下記表4中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(V−1)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC808012として算出したものである。
【0147】
【表4】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0148】
構造式(VII−2)で示されるアゾ化合物(但し、EはC)の合成
前記構造式(VII−2)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(VII−2)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕1.20グラム、ピロカルボン酸ジベンジルエステル1.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、1時間反応させた。徐々に赤紫色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、シクロヘキサン約50mlを加えて、1.60グラム(収率:79.6%)の赤色の粉末を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を下記表5に示す。なお、下記表5中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(VII−2)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC127751120として算出したものである。
【0149】
【表5】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0150】
構造式(X−1)で示されるアゾ化合物(但し、EはC)の合成
前記構造式(X−1)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(X−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕0.16グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル0.52グラム(12倍モル)を脱水ピリジン30mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、赤橙色の沈殿が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加えて、0.16グラム(収率:80%)の赤色の粉末を得た。得られた生成物の元素分析を行った結果を下記表6に示す。なお、下記表9中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(X−1)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがCであるものとし、アゾ化合物の化学式をC645311として算出したものである。
【0151】
【表6】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0152】
(複合アゾ顔料の合成)
<複合アゾ顔料1>
[アゾ顔料〔構造式(III−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とキナクリドン顔料とからなる複合アゾ顔料の製造]
上記アゾ化合物(III−3)(E:C)0.98グラム、をトルエン100mlに撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にキナクリドン顔料0.25グラムを加えた後に、さらにトリフルオロ酢酸1.83グラムを加え強く撹拌しながら、80℃で4.5時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物(III−3)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取し、メタノール100mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(1.05グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物(III−3)で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0153】
<複合アゾ顔料2>
[アゾ顔料〔構造式(III−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とアゾ顔料〔構造式(III−4)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とからなる複合アゾ顔料の製造]
上記アゾ化合物(III−3)(E:C)0.98グラム、と上記アゾ化合物(III−4)(E:C)0.95グラム、をトルエン200mlに撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にトリフルオロ酢酸1.8グラムを加え強く撹拌しながら、還流下で5時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物(III−3)及び(III−4)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取し、メタノール200mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(1.2グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物(III−3)および(III−4)で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0154】
<複合アゾ顔料3>
[構造式(III−2)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ顔料と構造式(V−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるアゾ顔料とからなる複合アゾ顔料の製造]
上記アゾ化合物(III−2)(E:C)0.97グラム、と上記アゾ化合物(V−1)(E:C)1.05グラム、をクロルベンゼン150mlに撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にトリフルオロ酢酸0.9グラムを加え強く撹拌しながら、還流下で3時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物(III−2)及び(V−1)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1ミクロンのフルオロポアで濾取し、メタノール200mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(1.27グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物(III−2)および(V−1)で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0155】
<複合アゾ顔料4>
[アゾ顔料〔構造式(VII−2)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕と 二酸化チタン顔料からなる複合アゾ顔料の製造]
上記で得たアゾ化合物(VII−2)〔E:C〕1.1グラムをクロロベンゼン100ml中で撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液に二酸化チタン顔料0.3グラムを加えた後に、さらにトリフルオロ酢酸0.5グラムを加え強く撹拌しながら、110℃で6時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物の消失を確認した後、室温に戻し、0.1μmのフルオロポアで濾取し、メタノール100mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(0.75グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0156】
<複合アゾ顔料5>
[アゾ顔料〔構造式(X−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕と フラーレン(C60)顔料からなる複合アゾ顔料の製造]
上記で得たアゾ化合物(X−1)〔E:C〕0.15グラム、をシクロヘキサノン50ml中で撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にフラーレン(C60)顔料0.29グラムを加えた後に、さらにトリフルオロ酢酸9.1グラムを加え強く撹拌しながら、130℃で10時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物の消失を確認した後、室温に戻し、0.1μmのフルオロポアで濾取し、アセトン50mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(0.3グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【実施例1】
【0157】
導電性支持体としての直径30mm、長さ340mmのアルミニウムシリンダーに、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、下記組成の電荷輸送層塗工液を、順次浸漬塗工・乾燥し、約3.5μmの下引き層、電荷発生層、約28μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した。また、電荷発生層の膜厚は、650nmにおける電荷発生層の透過率が20%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行ない、電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムを比較対照とし、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、650nmの透過率を評価した。なお、各層の塗工後に指触乾燥を行った後、下引き層は130℃で20分、電荷発生層は150℃で20分、電荷輸送層は120℃で20分乾燥を行ない電子写真感光体1を得た。
【0158】
(下引き層用塗工液)
酸化チタンCR−EL(石原産業社製) 50部
アルキッド樹脂ベッコライトM6401−50 14部
(固形分50重量%、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂L−145−60 8部
(固形分60重量%、大日本インキ化学工業社製)
2−ブタノン 120部
(電荷発生層用塗工液)
複合アゾ顔料1 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン(シクロヘキサノン) 420部
MEK 180部
【0159】
(電荷輸送層用塗工液)
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(13)の電荷輸送物質 7部
テトラヒドロフラン 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−1CS、信越化学工業製)
【0160】
【化53】

【実施例2】
【0161】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合アゾ顔料1を複合アゾ顔料2に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体2を作成した。
【実施例3】
【0162】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合アゾ顔料1を複合アゾ顔料3に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体3を作成した。
【実施例4】
【0163】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合アゾ顔料1を複合アゾ顔料4に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体4を作製した。
【実施例5】
【0164】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合アゾ顔料1を複合アゾ顔料5に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体5を作製した。
【0165】
<比較例1>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体6を作製した。
(電荷発生層用塗工液)
キナクリドン顔料 2部
アゾ顔料(III−3)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 8部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0166】
<比較例2>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体7を作製した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(III−4)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
アゾ顔料(III−2)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0167】
<比較例3>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体8を作製した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(III−2)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
アゾ顔料(V−1)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0168】
<比較例4>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体9を作製した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(VII−2)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 8部
二酸化チタン顔料 2部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0169】
<比較例5>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体10を作製した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(X−1)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 3部
フラーレン(C60) 7部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0170】
<比較例6>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体11を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(III−3)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0171】
<比較例7>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体12を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(III−4)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0172】
<比較例8>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体13を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(III−2)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0173】
<比較例9>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体14を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(V−1)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0174】
<比較例10>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体15を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(VII−2)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0175】
<比較例11>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体16を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
アゾ顔料(X−1)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
アノン 420部
MEK 180部
【0176】
<実機評価>
実機による通紙ランニングは、電子写真用プロセスカートリッジに前記電子写真感光体を装着し、リコー製imagio Neo271改造機を用いて、全面黒画像書込時(全面露光時)の露光部電位、出力された画像について黒ベタ部分の画像濃度、黒ポチ、白ポチ、黒スジ、白スジなどの異常画像の有無等を総合的に評価した。
評価は初期と30万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位−800V)後に行なった。露光部電位測定は以下の条件で実施した。
【0177】
・感光体上下の明部電位測定
現像ユニットを分解し、表面電位計に接続された電位計プローブを、感光体の上端から50mmの位置になるように現像ユニットに取り付け、それに感光体をセットして、暗部電位が−800(V)になるようにグリッド電位を調節した後、黒ベタ画像を出力することによって、明部電位を測定した。表面電位計はTREK MODEL344を用いた。また、評価は室温環境下で行なった。
【0178】
○:画像品質にほとんど低下がないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0179】
【表7】

【符号の説明】
【0180】
1 感光体
1C、1M、1Y、1K 感光体
2 導電性支持体
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 保護層
6 下引き層
7 単層型感光層
10C、10M、10Y、10K 画像形成要素
11 除電ランプ
12 帯電チャージャ
12C、12M、12Y、12K 帯電部材
13 画像露光部
13C、13M、13Y、13K レーザー光
14 現像ユニット
14C、14M、14Y、14K 現像部材
15 転写前チャージャ
15C、15M、15Y、15K クリーニング部材
16 レジストローラ
17 転写紙
18 転写チャージャ
19 分離チャージャ
20 分離爪
21 クリーニング前チャージャ
22 ファーブラシ
23 クリーニングブレード
24 給紙コロ
25 転写搬送ベルト
26C、26M、26Y、26K 転写ブラシ
27 定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0181】
【特許文献1】特開昭47−37543号公報
【特許文献2】特開昭52−55643号公報
【特許文献3】特開昭52−8832号公報
【特許文献4】特開昭58−222152号公報
【特許文献5】特開昭58−222153号公報
【特許文献6】特開平5−301292号公報
【特許文献7】特開2001−290296号公報
【特許文献8】特開平9−127711号公報
【特許文献9】特開2002−23399号公報
【特許文献10】特開2007−334099号公報
【特許文献11】特開平3−9962号公報
【特許文献12】特開2009−7523号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を設けてなり、該感光層は、少なくとも下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化した下記一般式(a)で示されるアゾ化合物と他の顔料とを含む複合アゾ顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【化2】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【請求項2】
前記一般式(I)で示されるアゾ化合物を含む溶液に、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物とは異なる他の顔料を加え、さらに脱カルボエステル化した複合アゾ顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記一般式(I)で示されるアゾ化合物の2種類以上を混合溶解し、該2種以上のアゾ化合物を同時にまたは段階的に、脱カルボエステル化し、前記一般式(a)で示されるアゾ化合物とした複合アゾ顔料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記一般式(I)および前記一般式(a)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(II)で示される残基Aを有するアゾ化合物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1に記載の電子写真感光体。
【化3】

(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
【請求項5】
前記Cpが下記一般式(1)乃至(9)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

上記一般式(1)〜(4)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただし、ここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。
[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【化8】

(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【化9】

(上式中、Aは、式(6)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。Xは前記と同じ。)
【化10】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【化11】

【化12】

(上記式(8)および(9)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【請求項6】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−282070(P2010−282070A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136158(P2009−136158)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】