説明

電子写真感光体、及びそれを使用した画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】電荷発生物質が起因する電子写真感光体内の電荷蓄積を抑制することにより、画像欠陥のない高品質なプリントを長期間実現し、また、あらゆる環境下においても、安定した画質の出力を実現することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を設けてなり、感光層は、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際、前記溶液にフタロシアニン顔料を加えてなるアゾ化合物とフタロシアニン顔料との複合フタロシアニン顔料を含有する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度で、繰り返し使用、ならびにいかなる環境においても安定して画像出力ができる高安定な感光体、ならびにそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましく、特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行なうレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。急速に普及しているこれらのレーザープリンターやデジタル複写機は、最近では高速、高画質、高安定性への要求が急激に高くなっている。
【0003】
画像形成装置に使用される電子写真感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び低環境負荷等の理由から一般に広く応用されている。
【0004】
この有機感光体に用いられる電荷発生物質としては、様々なものが開発されておりアゾ顔料やフタロシアニン顔料など、感光体特性として有用な顔料が見出されている。アゾ顔料の例としては、例えば特許文献1(特開昭47−37543号公報)、特許文献2(特開昭52−55643号公報)等に記載されるベンジジン系ビスアゾ顔料や、特許文献3(特開昭52−8832号公報)に記載されるスチルベン系ビスアゾ顔料、特許文献4(特開昭58−222152号公報)に記載されるジフェニルヘキサトリエン系ビスアゾ顔料、特許文献5(特開昭58−222153号公報)に記載されるジフェニルブタジエン系ビスアゾ顔料等が知られている。
【0005】
フタロシアニン顔料の例として、チタニルフタロシアニン顔料としては、特許文献6(特開昭61−239248号公報)に記載されているα型,特許文献7(特開平1−17066号公報)に記載されているY型,特許文献8(特開昭61−109056号公報)に記載さているI型,特許文献9(特開昭62−67094号公報)に記載さているA型,特許文献10(特開昭63−364号公報)および特許文献11(特開昭63−366号公報)に記載されているC型,特許文献12(特開2005−15682号公報)に記載さてれているB型,特許文献13(特開昭63−198067号公報)に記載さてれているm型,特許文献14(特開平1−123868号公報)に記載されている準非晶質型などが挙げられる。無金属フタロシアニン顔料の具体例としては、特許文献15(米国特許第3,357,989号明細書)に開示されたX型無金属フタロシアニン,特許文献16(特開昭58−182639号公報)に開示されているτ型無金属フタロシアニンなどが挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の具体例としては、特許文献17(特開平5−263007号公報)及び特許文献18(特開平5−279591号公報)に開示されている。また、銅フタロシアニン顔料の具体例として、特許文献19(特開昭58−100134号公報)及び特許文献20(特開昭61−273994号公報)及び特許文献21(特開昭62−62367号公報)等に開示されている。また、クロロガリウムフタロシアニン顔料の例として、特許文献22(特開昭59−44053号公報)及び特許文献23(特開平1−221459号公報)等に開示されている。またクロロインジウムフタロシアニン顔料の例として、特許文献24(特開昭60−59355号公報)などに開示されている。
【0006】
しかしこれらの単独の顔料を用いた感光体は、対応波長領域が狭いため、レーザープリンターや複写機等の書き込み光の主流となる半導体レーザーが発信する長波長領域の光に対して感度が低く、また使用環境や使用経時により感光体特性が変動するなどの問題があり、今後の高画質または高速複写機用感光体としては不十分である。これらの問題を解決するため、無金属フタロシアニンとフルオレノン系アゾ顔料を含有する特許文献25(特開平5−301292号公報)、特許文献26(特開2001−290296号公報)、フタロシアニン化合物とアゾ顔料を含有する特許文献27(特開平9−127711号公報)、金属フタロシアニンとペリレン混成顔料の特許文献28(特開2002−23399号公報)、キナクリドン顔料とチタニルフタロシアニン顔料の特許文献29(特開2007−334099号公報)、チタニルフタロシアニン顔料とそれ以外のフタロシアニン顔料の特許文献30(特開平3−9962号公報)など、2種以上の顔料の混合が提案されているが、いまだ十分なものはない。
【0007】
この理由の一つとして上記の顔料は一般に有機溶剤に対する溶解性が極めて低く、高度に分散された均一な塗工液とし難く、また精製は有機溶媒による洗浄工程に限られており、不純物を十分に取り除けていないと考えられる。
【0008】
本出願人は、有機溶剤に対する溶解性を向上させたアゾ顔料を提案(特許文献31(特開2009−7523号公報)し、均一な塗工液による感光体の製造を可能にしているが、単一の電荷発生物質では、充分な感光体特性を得ることが困難であり、電気特性の異なる2種以上の電荷発生物質を併用することが考えられる。
【0009】
また、複数の顔料を混合する方法は、ミリング等の機械的手段が主であり分子レベルの混合・複合が不可能であり、有機光導電体としての機能を十分に発揮できていなかったと考えられる。また、アシッドペーストを併用する方法も提案されているが、濃硫酸を用いるため製造上の問題があるとともに、分解等が懸念され顔料への適用が制限される。また、フタロシアニン顔料のように結晶型により特性が大きく異なるものは、アシッドペーストの際に混合した場合、結晶転移が生じたり、所望の結晶型が得られず、結果的に十分な感光体特性が得られないという問題もあった。
そこで従来の欠点を克服した電子写真感光体を実現するべく、より優れた電荷発生物質が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、電荷発生物質が起因する電子写真感光体内の電荷蓄積を抑制することにより、画像欠陥のない高品質なプリントを長期間実現し、また、あらゆる環境下においても、安定した画質の出力を実現することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(1)〜(10)によって解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を設けてなり、該感光層は、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際、前記溶液にフタロシアニン顔料を加えてなるアゾ化合物とフタロシアニン顔料との複合フタロシアニン顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0012】
【化1】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0013】
【化2】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
(2)前記一般式(I)および前記一般式(a)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で示される残基Aを有するアゾ化合物であることを特徴とする、前記(1)に記載の電子写真感光体。
【0014】
【化3】


(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
(3)前記Cpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする前記(2)に記載の電子写真感光体。
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

上記一般式(3)〜(6)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただしここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0019】
【化8】

(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【0020】
【化9】

(上式中、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。Xは前記と同じ。)
【0021】
【化10】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【0022】
【化11】

【0023】
【化12】

(上記式(10)および(11)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
(4)前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(12)で示されることを特徴とする前記第(2)または第(3)に記載の電子写真感光体。
【0024】
【化13】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
(5)前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(13)で示されることを特徴とする前記第(2)または第(3)に記載の電子写真感光体。
【0025】
【化14】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
(6)前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(14)で示されることを特徴とする前記第(2)または第(3)に記載の電子写真感光体。
【0026】
【化15】

(ただし、R24,R25,R26は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
(7)前記フタロシアニン顔料が少なくとも下記構造式で示されるチタニルフタロシアニンを含有したものであることを特徴とする前記第(1)乃至第(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
【0027】
【化16】

(式中、Mは、TiOであり、X〜X16はそれぞれ同じでも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基、アリーロキシル基を示す。)
(8)少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(1)乃至第(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(9)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
(10)電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジにおいて、該電子写真感光体が前記第(1)乃至第(7)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電子写真感光体内の感光層中に複合フタロシアニン顔料を用いることにより、画像欠陥のない高品質なプリントを長期間にわたって出力することができる電子写真感光体ならびに画像形成装置を提供するに至った。
【0029】
ここで、本発明での複合フタロシアニン顔料とは、少なくとも1種の前記一般式(1)で示されるアゾ化合物を、フタロシアニン顔料の共存下で有機溶剤に溶解させ、アゾ化合物とフタロシアニン顔料とを分子レベルで接触させた状態で、化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用い、脱カルボエステル化することにより製造されたものを示す。
【0030】
よって、本発明の複合フタロシアニン顔料は、高分散化が困難な有機溶剤に対する溶解性が低いアゾ顔料であってもとフタロシアニン顔料とが分子レベルで高度に分散され、かつ接合を有しているものであり、従来技術として知られているようなミリングにより顔料同士を混合したものとは基本的に異なり、従来のものでは成し得なかったような高感度化や画質安定化を実現したものである。
【0031】
このような効果が発現した理由として様々なものが考えられる。例えば選択するアゾ顔料により、低感度な結晶に転移しやすいフタロシアニン顔料をアゾ顔料で覆うことにより、外的要因により特性が変化しにくい非常に高安定な電荷発生物質が得られ、結果的にいかなる環境下においても画質の安定した電子写真感光体を得ることができる。
つまり、電荷発生層用塗工液の大きな課題として顔料の安定性が挙げられ、これにより電荷発生物質として用いることができる顔料や電荷発生層用塗工液の処方も制約があり、感光体特性が犠牲になっている部分もあった。特にフタロシアニン顔料において、Y型チタニルフタロシアニン顔料に代表されるように、感度は非常に高いが結晶安定性が低いために十分な特性を引き出せないことが多分にあった。
具体的には、電荷発生層用塗工液において、十分な結晶安定性を維持するためバインダー樹脂リッチにしたり、分散液作製時の結晶転移に配慮しシェアを抑制するため十分小粒径化しないまま用いたりしており、これらの方法は、感度などの感光体特性に対しては悪影響を及ぼす。
しかし、本発明の複合フタロシアニン顔料においては、所望の結晶型のフタロシアニン顔料の周りをアゾ顔料で包むことにより、フタロシアニン顔料の結晶安定性が高まったため、結晶型を維持するために上記のような方法を用いる必要はなく、小粒径で高分散の塗工液を作成することが可能であり、より電子写真特性が優れるほうに処方設計することが可能となった。
【0032】
また、一般的にエレクトロン輸送能力が低いフタロシアニン顔料においては、フタロシアニン顔料を単独で用いた電荷発生層においては、電荷が捕捉されやすく、繰り返し使用において電位が変動しやすいという課題を有していた。
これを解決するため、よりn型顔料をミリングなどにより混合して用いたり、エレクトロン輸送物質を電荷発生層中に分散させて用いたりする技術があるが、本発明の複合フタロシアニン顔料においてはフタロシアニン顔料に分子レベルで電子吸引性の構造を有するn型アゾ顔料を接合させることが可能であり、従来技術では成し得なかった高感度化や電位安定性を発現することができる。
【0033】
また、顔料のアシッドペースト時に他種顔料を混合させる方法も知られているが、フタロシアニン顔料の結晶型を制御することが難しく、所望の結晶型が得られずに、十分な感光体特性が得られないことが多いが、本発明の複合フタロシアニン顔料においては、所望の結晶型のフタロシアニン顔料に対して、分子レベルでアゾ顔料を接合するため、そのような問題も解決された。
【0034】
このように、複合フタロシアニン顔料を用いることで、これまでの様々な課題が克服され、結果的に、高感度で、かつ使用経時、使用環境によらず、非常に電位の安定した電子写真感光体並びに、画質安定性に優れた画像形成装置を提供するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図2】図2は、本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図3】図3は、本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図4】図4は、本発明に用いられる別の電子写真感光体の層構成を表わした図である。
【図5】図5は、本発明の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の帯電手段を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の別の電子写真プロセス及び画像形成装置を説明するための図である。
【図8】図8は、本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための図である。
【図9】合成例1で合成されたチタニルフタロシアニンのXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の感光体について、図面を参照して以下に説明する。
本発明の感光体(1)は、図1に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(3)と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(4)が積層された構成をなしている。
また、本発明の感光体(1)は、図2に示すように、導電性支持体(2)と、電荷発生層(3)との間に、下引き層(6)、あるいは中間層を形成してもよい。
また、本発明の感光体(1)は、図3に示すように、電荷輸送層(4)の上に保護層(5)を形成してもよい。
さらに、本発明の感光体(1)は、図4に示すように、導電性支持体(2)上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層の感光層(7)を有した単層型感光体の態様をなしてもよい。
【0037】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0038】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当なバインダー樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられるバインダー樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、これらの導電性粉体とバインダー樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0039】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0040】
<感光層>
次に、感光層について説明する。
積層構成の感光層は、少なくとも電荷発生層、及び電荷輸送層が順次積層されることによって構成されている。
【0041】
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、電荷発生物質を含む層である。該電荷発生物質として、本発明で用いられる複合フタロシアニン顔料を少なくとも含有する。
本発明に用いられる複合フタロシアニン顔料とは、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際にフタロシアニン顔料を共存させて得られるものである。
【0042】
【化17】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0043】
【化18】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【0044】
複合化する手段としては、前記一般式(1)で示されるアゾ化合物の溶液中にフタロシアニン顔料を加え、アゾ化合物とフタロシアニン顔料とを共存させた状態で、前記アゾ化合物を化学的手段、熱的手段及び光分解的手段の少なくとも1手段を用いて脱カルボエステル化し、複合化する手段が好ましい。
【0045】
本発明において好ましく用いることができるアゾ顔料としては、前記一般式(I)および前記一般式(a)で表されるアゾ化合物の残基Aが、下記一般式(2)で示されるアゾ化合物である。
【0046】
【化19】

(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
【0047】
また、より好ましくは前記一般式(2)のCpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基である。
【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

上記一般式(3)〜(6)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただしここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。
【0052】
【化24】

(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【0053】
【化25】

(上式中、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。Xは前記と同じ。)
【0054】
【化26】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Ar1は炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【0055】
【化27】

【0056】
【化28】

(上記式(10)および(11)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【0057】
また、より好ましくは前記一般式(2)のBが、下記一般式(12)〜(14)で示されるアゾ化合物である。これらのアゾ化合物は一般的にn型の特性を示すため、フタロシアニン顔料と複合化させた場合、本発明の期待する効果を得るために、非常に有効である。
【0058】
【化29】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
【0059】
【化30】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【0060】
【化31】

(ただし、R24,R25,R26は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
該E基は下記のカルボエステル基:−C(=O)−O−R(式中Rは、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。)を表わす。nは、1から9の整数である。〕
【0061】
本発明に使用できる前記一般式(I)または前記一般式(a)で示されるアゾ化合物の好ましい化合物としては、アゾ化合物の主骨格が一般式(12)である式(12)−1〜(12)−14、アゾ化合物の主骨格が一般式(13)である式(13)−1〜(13)−5、アゾ化合物の主骨格が一般式(14)である式(14)−1〜(14)−5である。
以下に化合物例を示す。Eは水素またはカルボエステル基:−C(=O)−O−R1(式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。
【0062】
<アゾ化合物の主骨格が一般式(12)である化合物の例>
【0063】
【化32】

【0064】
【化33】

【0065】
【化34】


<アゾ化合物の主骨格が一般式(13)である化合物の例>
【0066】
【化35】

【0067】
【化36】


<アゾ化合物の主骨格が一般式(14)である化合物の例>
【0068】
【化37】

【0069】
【化38】

【0070】
前記カルボエステル基を有する式(I)の化合物は、例えば欧州特許第648770号公報及び欧州特許第648817号公報、また特表2001−513119号公報に記載されているようにして合成でき、例えば非プロトン性有機溶剤中、触媒として塩基の存在下0〜150℃、好ましくは10〜100℃の温度で、30分から20時間、前記一般式(2)のものと、下記式(15)のものとを、適切なモル比で反応させて合成できる。
【0071】
【化39】

(B,Cp,Rは前記に記載のとおりである)
それぞれの場合において、モル比は導入されるEの数に左右される。好ましくはピロ炭酸ジエステルを少し過剰に用いるのが適している。
【0072】
適切な非プロトン性有機溶剤は、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。好ましい溶剤は、ピリジン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドである。
【0073】
触媒として適切な塩基は、例えばアルカリ金属:ナトリウム、カリウムなど、ならびにそれらの水酸化物及び炭酸塩、またはアルカリ金属アミド類であり、ナトリウムアミド、カリウムアミド類であり、また水素化アルカリ金属類たとえば水素化リチウムなどがある。有機脂肪族、芳香族またはヘテロ環式N−塩基類としては、ジアザビシクロオクテン、ジアザビシクロウンデセン、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジン、トリエチルアミンなどが使用できる。好ましいのは、有機N−塩基類であり、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、ジメチルピリジン、ピリジンである。
【0074】
上記式(15)であらわされるピロ炭酸ジエステルは、一般に知られている方法で製造できる。また商業的にも入手できる。Rは、上記の記載のものを示すが、好ましくは溶解性の驚くべき向上の点で分岐のアルキル基が好ましい。
【0075】
また、本発明に用いられるフタロシアニン顔料は、いずれのものでも良いが、好ましくは、チタニルフタロシアニン、銅フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン等である。これらは単独でも感度が優れていることが知られているが、本発明の方法により電子吸引性の構造を有するアゾ化合物との複合化により、更に高感度化を実現することができる。
【0076】
本発明の、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物に変換する際に、フタロシアニン顔料を共存させて複合フタロシアニン顔料を製造する方法について説明する。
【0077】
【化40】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【0078】
【化41】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【0079】
アゾ化合物の脱カルボエステル化は、化学的手段、熱的手段、光分解的手段のいずれかを用いて行うのが好ましい。
【0080】
化学的手段(化学的方法)は、酸または塩基などの触媒によりアゾ顔料を製造する方法であるが、好ましい触媒は酸であり、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、安息香酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、p-トルエンスルホン酸。サリチル酸等が挙げられる。
熱的手段(熱的方法)は、溶媒の存在下に50℃〜300℃に加熱することによりアゾ顔料を製造する方法であるが、好ましくは、70℃〜250℃に大気圧下で30分から20時間反応させることが望ましい。
光分解的手段(方法)は、前記一般式(1)で示されるアゾ化合物が、吸収を有する光であれば使用することができる。具体的には、高圧または低圧水銀灯、タングステンランプ、LEDランプ、レーザー光源などが使用できる。
【0081】
ここに用いられる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等が挙げられる。
【0082】
化学的方法、熱的方法または光分解的方法は、併用することによりさらに効率的にアゾ顔料が製造できる。特に化学的方法と熱的方法を組み合わせることにより収率良く、高純度の複合フタロシアニン顔料が製造できる。
【0083】
一般式(I)で表されるアゾ化合物と共存させる他の顔料は、前もって微細化処理をしていることが望ましい。機械的粉砕方法、再沈殿方法、気相からの微粒子化の方法、等により好ましくは、0.5ミクロン以下の粒径の顔料が用いられる。
前記一般式(1)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解した溶液に、これらの顔料を添加し、撹拌することにより顔料にアゾ化合物が分子レベルで存在することが可能となり、このような状態で化学的手段、熱的手段または光分解的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、本発明の複合フタロシアニン顔料が製造できる。
【0084】
また、本発明においては前記一般式(1)で示されるアゾ化合物を有機溶剤に溶解し、その溶液をシリカゲル、アルミナ、フロリジル、活性炭素、活性白土、珪藻土、またはパーライトで吸着処理をする方法を用いることも好ましい。
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤またN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、4塩化炭素、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン、ピリジン、ピコリンまたはキノリン等及びこれらの混合溶剤が挙げられる。吸着処理の具体的方法としては、カラムクロマトグラフィー、室温または、加熱時に吸着剤を加え、濾過する方法がある。また、再結晶と組み合わせることによりさらに効率的に処理を行うことができる。
【0085】
電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。バインダー樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し、0〜500質量部が好ましく、10〜300質量部がより好ましい。
【0086】
本発明の複合フタロシアニン顔料においては、フタロシアニン顔料の周りをアゾ顔料で覆うため、フタロシアニン顔料の結晶安定性が高く、電荷発生層用塗工液に用いるバインダー樹脂の種類や添加量は従来より自由度が増した。すなわち、従来は、フタロシアニン顔料の結晶性を維持するため、一定量以上のバインダー樹脂が必要であったが、本発明の複合フタロシアニン顔料においては、結晶安定性を維持するためのバインダー樹脂の必要量は少なくてすむため、これまでバインダー樹脂の存在により生じていた電荷蓄積が抑制され、感光体特性を向上させることができる。
【0087】
前記電荷発生層は、電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの公知の分散方法を用いて分散し、これを導電性支持体上、もしくは下引き層や中間層上に塗布し、乾燥することにより形成される。バインダー樹脂の添加は、電荷発生物質の分散前、あるいは分散後のどちらでも構わない。
【0088】
前記電荷発生層の形成に用いられる前記溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等の一般に用いられる有機溶剤が挙げられるが、これらの中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0089】
前記電荷発生層の形成用塗工液は、電荷発生物質、溶媒及びバインダー樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていてもよい。
【0090】
上記塗工液を用いて電荷発生層を塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。塗工後には、オーブン等で加熱乾燥される。本発明における電荷発生層の乾燥温度としては、50℃以上160℃以下が好ましく、80℃以上140℃以下がより好ましい。
【0091】
<電荷輸送層>
次に電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶剤に溶解又は分散した塗工液を、塗布、乾燥することにより形成される。また、電荷輸送層の塗工液には、必要に応じて、単独又は2種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0092】
電荷輸送物質としては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、アミノビフェニル誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、エナミン誘導体等の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独又は2種以上混合して用いられる。
電荷輸送物質の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、通常、20〜300重量部であり、40〜150重量部が好ましい。
【0093】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0094】
塗工溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、キシレン、アセトン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種以上併用してもよい。
電荷輸送層の膜厚は、解像度や応答性の点から、10〜50μmであることが好ましく、15〜35μmがさらに好ましい。
【0095】
塗工する方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法等の公知の方法を用いることができるが、電荷輸送層は膜厚はある程度厚く塗る必要があるため、粘性の高い液で浸漬塗工法に塗工する方法ことが好ましい。
塗工後の電荷輸送層は、オーブン等で加熱乾燥される。乾燥温度は塗工液に含有される溶媒によっても異なるが、80〜160℃あることが好ましく、110〜140℃がより好ましい。また、乾燥時間は、10分以上であることが好ましく、20分以上がさらに好ましい。
【0096】
<単層>
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
上述した電荷発生物質、電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散乃至溶解させ、電荷発生機能、及び電荷輸送機能を一つの層で実現した感光体である。
感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の溶剤に溶解ないし分散し、これを浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどの従来公知の方法を用いて塗工して形成できる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質の双方が含有されることが好ましい。
また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
単層の感光層に用いられる電荷発生物質、電荷輸送物質、バインダー樹脂、有機溶剤及び各種添加剤等に関しては、前述の電荷発生層及び電荷輸送層に含有されるいずれの材料をも使用することが可能である。
バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。バインダー樹脂100質量部に対する電荷発生物質の量は、5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
また、電荷輸送物質の量は、0〜190質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。また、感光層の膜厚は、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0097】
<下引き層>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層の間に、下引き層を設けることができる。
下引き層は、一般に、樹脂を主成分とするが、このような樹脂は、その上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対する耐溶剤性が高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、イソシアネート、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0098】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
また、前述の電荷発生層や電荷輸送層と同様に、溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。
【0099】
<保護層>
本発明においては、感光体の最表面に耐摩耗性向上の為に、保護層を設けることができる。保護層としては、電荷輸送成分とバインダー成分とを重合させた高分子電荷輸送物質型、フィラーを含有させたフィラー分散型、硬化させた硬化型などが知られているが、本発明においては従来公知のいずれの保護層に対しても使用することができる。
【0100】
<画像形成装置>
次に、図面を用いて本発明の電子写真方法、並びに、画像形成装置を詳しく説明する。
図5は、本発明の電子写真プロセス、及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図5に示すように、感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電チャージャ(12)、転写前チャージャ(15)、転写チャージャ(18)、分離チャージャ(19)、クリーニング前チャージャ(21)には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)のほか、ローラ状の帯電部材あるいはブラシ状の帯電部材等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0101】
帯電部材は、コロナ帯電等の非接触帯電方式やローラあるいはブラシを用いた帯電部材による接触帯電方式が一般的であり、本発明においてはいずれも有効に使用することが可能である。特に、帯電ローラは、コロトロンやスコロトロン等に比べてオゾンの発生量を大幅に低減することが可能であり、感光体の繰り返し使用時における安定性や画質劣化防止に有効である。
しかし、感光体と帯電ローラとが接触していることにより、繰り返し使用によって帯電ローラが汚染され、それが感光体に影響を及ぼし異常画像の発生や耐摩耗性の低下等を助長する原因となっていた。
特に、耐摩耗性の高い感光体を用いる場合、表面の摩耗によるリフェイスがしにくいことから、帯電ローラの汚染を軽減させる必要があった。
【0102】
そこで、図6に示すように、帯電チャージャ(帯電ローラ)(12)にギャップ形成部材(12a)を設け、感光体(1)に対してギャップを介して近接配置させることによって、汚染物質が帯電ローラに付着しにくく、あるいは除去しやすくなり、それらの影響を軽減することが可能である。この場合、感光体と帯電ローラとのギャップは小さい方が好ましく、例えば、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
しかし、前記帯電ローラを非接触とすることによって、放電が不均一になり、感光体の帯電が不安定になる場合がある。このような問題は、直流成分に交流成分を重畳させることによって帯電の安定性を維持し、これによりオゾンの影響、帯電ローラの汚染の影響及び帯電性の影響を同時に軽減することが可能となる。
【0103】
一方、画像露光部(13)、除電ランプ(11)等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。これらの中でも半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が主に用いられる。
所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0104】
光源等は、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体(1)に光が照射される。但し、除電工程における感光体(1)への露光は、感光体(1)に与える疲労の影響が大きく、特に帯電低下や残留電位の上昇を引き起こす場合がある。
したがって、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印可することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の高耐久化の面から有効な場合がある。
【0105】
電子写真感光体(1)に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0106】
転写手段には、一般に前述の帯電器を使用することができるが、図5に示すように、転写チャージャ(18)と、分離チャージャ(19)とを併用したものが効果的である。
また、このような転写手段を用いて、感光体からトナー像を紙に直接転写されるが、本発明においては感光体上のトナー像を一度中間転写体に転写し、その後中間転写体から紙に転写する中間転写方式であることが感光体の高耐久化、あるいは高画質化においてより好ましい。
【0107】
感光体表面に付着する汚染物質の中でも帯電によって生成する放電物質やトナー中に含まれる外添剤等は、湿度の影響を拾いやすく異常画像の原因となっているが、このような異常画像の原因物質には、紙粉もその一つであり、それらが感光体に付着することによって、異常画像が発生しやすくなるだけでなく、耐摩耗性を低下させたり、偏摩耗を引き起こしたりする傾向が見られる。したがって、上記の理由により感光体と紙とが直接接触しない構成であることが高画質化の点からより好ましい。
【0108】
また、中間転写方式は、フルカラー印刷が可能な画像形成装置に特に有効であり、複数のトナー像を一度中間転写体上に形成した後に紙に一度に転写することによって、色ズレの防止の制御もしやすく高画質化に対しても有効である。
しかし、中間転写方式は、一枚のフルカラー画像を得るのに4回のスキャンが必要となるため、感光体の耐久性が大きな問題となっていた。
本発明における感光体は、ドラムヒーターなしでも画像ボケが発生しにくいことから中間転写方式の画像形成装置に組み合わせて用いることが容易であり、特に有効かつ有用である。
中間転写体には、ドラム状やベルト状など種々の材質あるいは形状のものがあるが、本発明においては従来公知である中間転写体のいずれも使用することが可能であり、感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し有効かつ有用である。
【0109】
現像ユニット(14)により、感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(17)に転写されるが、すべてが転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ(22)、あるいはクリーニングブレード(23)により、感光体(1)から除去される。
このクリーニング工程は、クリーニングブラシだけで行なわれたり、ブレードと併用して行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0110】
クリーニングは、前述のとおり転写後に感光体(1)上に残ったトナー等を除く工程であるが、上記のブレード(23)、あるいはブラシ(22)等によって感光体(1)が繰り返し擦られることにより、感光体(1)の摩耗が促進されたり、傷が入ったりすることによって異常画像が発生することがある。
また、クリーニング不良によって感光体の表面が汚染されたりすると異常画像の発生の原因となるだけでなく、感光体の寿命を大幅に低減させることにつながる。特に、耐摩耗性の向上のためにフィラーを含有させた層を最表面に形成された感光体の場合には、感光体表面に付着した汚染物質が除去されにくいことから、フィルミングや異常画像の発生を助長することになる。したがって、感光体のクリーニング性を高めることは感光体の高耐久化及び高画質化に対し非常に有効である。
【0111】
感光体のクリーニング性を高める手段としては、感光体表面の摩擦係数を低減させる方法が知られている。感光体表面の摩擦係数を低減させる方法としては、各種の潤滑性物質を感光体表面に含有させる方法と、外部より感光体表面に潤滑性物質を供給させる方法とに分類される。前者はエンジン廻りのレイアウトの自由度が高いため、小径感光体には有利であるが、繰り返し使用によって摩擦係数は顕著に増加するため、その持続性に課題が残されている。一方、後者は潤滑性物質を供給する部品を備える必要があるが、摩擦係数の安定性は高いことから感光体の高耐久化に対しては有効である。その中で、潤滑性物質を現像剤に含有させることによって現像時に感光体に付着させる方法は、エンジン廻りのレイアウトにも制約を受けずに、感光体表面の摩擦係数低減効果の持続性も高いため、感光体の高耐久化及び高画質化に対しては非常に有効な手段である。
【0112】
これらの潤滑性物質としては、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE、PFA、PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性液体や固体、粉末等が挙げられるが、特に現像剤に混合させる場合には粉末状である必要があり、特にステアリン酸亜鉛は悪影響が少なく、極めて有効に使用することができる。ステアリン酸亜鉛粉末をトナーに含有させる場合には、それらのバランスやトナーに与える影響を考慮する必要があり、トナーに対して0.01〜0.5質量%が好ましく、0.1〜0.3質量%がより好ましい。
【0113】
本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化を実現したことから小径感光体に適用できる。したがって、上記の感光体がより有効に用いられる画像形成装置あるいはその方式としては、複数色のトナーに対応した各々の現像部に対して、対応した複数の感光体を具備し、それによって並列処理を行なう、いわゆるタンデム方式の画像形成装置に極めて有効に使用される。上記タンデム方式の画像形成装置は、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(C)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色のトナー及びそれらを保持する現像部を配置し、更にそれらに対応した少なくとも4本の感光体を具備することによって、従来のフルカラー印刷が可能な画像形成装置に比べ極めて高速なフルカラー印刷を可能としている。
【0114】
図7は、本発明のタンデム方式のフルカラー電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図7において、感光体(1C(シアン)),(1M(マゼンタ)),(1Y(イエロー)),(1K(ブラック))は、ドラム状の感光体(1)であり、これらの感光体(1C,1M,1Y,1K)は、図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電部材(12C,12M,12Y,12K)、現像部材(14C,14M,14Y,14K)、クリーニング部材(15C,15M,15Y,15K)が配置されている。帯電部材(12C,12M,12Y,12K)は、感光体(1)の表面を均一に帯電するための帯電装置(12)を構成する。
【0115】
この帯電部材(12C,12M,12Y,12K)と、現像部材(14C,14M,14Y,14K)との間の感光体(1)の裏面側より、図示しない露光部材からのレーザー光(13C,13M,13Y,13K)が照射され、感光体(1C,1M,1Y,1K)に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体(1C,1M,1Y,1K)を中心とした4つの画像形成要素(10C、10M、10Y、10K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(25)に沿って並置されている。
転写搬送ベルト(25)は、各画像形成ユニット(10C、10M、10Y、10K)の現像部材(14C,14M,14Y,14K)と、クリーニング部材(15C,15M,15Y,15K)との間で感光体(1C,1M,1Y,1K)に当接しており、転写搬送ベルト(25)の感光体(1)側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(26C,26M,26Y,26K)が配置されている。各画像形成要素(10C、10M、10Y、10K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
【0116】
図7に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(10C、10M、10Y、10K)において、感光体(1C,1M,1Y,1K)が、矢印方向(感光体1と連れ周り方向)に回転する帯電部材(12C,12M,12Y,12K)により帯電され、次に、感光体(1)の外側に配置された露光部(図示せず)でレーザー光(13C,13M,13Y,13K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0117】
次に現像部材(14C,14M,14Y,14K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像部材(14C,14M,14Y,14K)は、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像部材で、4つの感光体(1C,1M,1Y,1K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。
【0118】
転写紙(17)は給紙コロ(24)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(16)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(25)に送られる。転写搬送ベルト(25)上に保持された転写紙(17)は搬送されて、各感光体(1C,1M,1Y,1K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
【0119】
感光体上のトナー像は、転写ブラシ(26C,26M,26Y,26K)に印加された転写バイアスと感光体(1C,1M,1Y,1K)との電位差から形成される電界により、転写紙(17)上に転写される。
そして、4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙(17)は、定着装置(27)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
また、転写部で転写されずに各感光体(1C,1M,1Y,1K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(15C,15M,15Y,15K)で回収される。
【0120】
なお、図7の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(10C,10M,10Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
更に、図7において帯電部材は感光体と当接しているが、図6に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
【0121】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
【0122】
前記プロセスカートリッジとは、図8に示すように、感光体(1)を内蔵し、他に帯電手段(12)、露光手段(13)、現像手段(14)、転写手段(18)、クリーニング手段(23)、及び除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。
【0123】
上記のタンデム方式による画像形成装置は、複数のトナー像を一度に転写できるため高速フルカラー印刷が実現される。
しかし、感光体が少なくとも4本を必要とすることから、装置の大型化が避けられず、また使用されるトナー量によっては、各々の感光体の摩耗量に差が生じ、それによって色の再現性が低下したり、異常画像が発生したりするなど多くの課題を有していた。
それに対し、本発明による感光体は、高光感度ならびに高安定化が実現されたことにより小径感光体でも適用可能であり、かつ残留電位上昇や感度劣化等の影響が低減されたことから、4本の感光体の使用量が異なっていても、残留電位や感度の繰り返し使用経時における差が小さく、長期繰り返し使用しても色再現性に優れたフルカラー画像を得ることが可能となる。
【0124】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0125】
<本発明で用いるチタニルフタロシアニン顔料の合成>
(合成例1)
特開2004−83859号公報、実施例1に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60部を96%硫酸1000部に3〜5℃下攪拌、溶解し、ろ過した。得られた硫酸溶液を氷水35000部中に攪拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過、ついで洗浄液が中世になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。
この水ペーストにテトラヒドロフラン1500部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARK,fモデル)により強烈に攪拌(2000rpm)し、ペーストの色が濃紺色から淡い青色に変化したら(攪拌開始後約20分)、攪拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。ろ過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキ98部を得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥してチタニルフタロシアニン顔料78部を得た。
【0126】
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角 7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0127】
<複合フタロシアニン顔料1>
前記アゾ化合物の主骨格が前記一般式(12)であるもののうち前記構造式(12−3)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を下記により合成し、これを用いて以下記載のようにチタニルフタロシアニン顔料との混合液を調製し、化学的手段と熱的手段を併用して脱カルボエステル化処理を行い、複合フタロシアニン顔料を製造した。
【0128】
[構造式(12−3)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の合成]
前記構造式(12−3)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕0.83グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル2.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、30分間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加えて、1.18グラム(収率:95.3%)の赤色の粉末を得た。これをさらにカラムクロマトグラム(シリカゲル/クロロフォルム)で精製を行なった。
得られた生成物の元素分析を行った結果を下記表1に示す。なお、下記表1中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(12−3)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがC592であるものとし、アゾ化合物の化学式をC6760613Cl2として算出したものである。
【0129】
【表1】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0130】
[アゾ顔料〔構造式(12−3)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とチタニルフタロシアニン顔料からなる複合フタロシアニン顔料の製造]
上記で得たアゾ化合物(12−3)〔E:C592〕0.98グラム、をトルエン100ml中で撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にチタニルフタロシアニン顔料0.46グラムを加えた後に、さらにトリフルオロ酢酸0.9グラム及び水0.5グラムを加え強く撹拌しながら、80℃で9時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物(12−3)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1μmのフルオロポアで濾取し、メタノール100mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(1.05グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物(12−3)で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0131】
<複合フタロシアニン顔料2>
前記アゾ化合物の主骨格が前記一般式(12)であるもののうち前記構造式(12−2)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を下記により合成し、これを用いて以下記載のようにチタニルフタロシアニン顔料との混合液を調製し、化学的手段と熱的手段を併用して脱カルボエステル化処理を行い、複合フタロシアニン顔料を製造した。
【0132】
[構造式(12−2)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の合成]
前記構造式(12−2)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(12−2)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕1.61グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル4.3グラム(10倍モル)を脱水ピリジン50ml、脱水N,N−ジメチルホルムアミド200mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約100mlを加えて、2.24グラム(収率:93%)の赤色の粉末を得た。
得られた粉末の元素分析を行った結果を下記表2に示す。なお、下記表2中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(12−2)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがC592であるものとし、アゾ化合物の化学式をC6863613Clとして算出したものである。
【0133】
【表2】


また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0134】
[アゾ顔料〔構造式(12−2)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とチタニルフタロシアニン顔料からなる複合フタロシアニン顔料の製造]
上記で得たアゾ化合物(12−2)〔E:C592〕0.97グラム、をトルエン100ml中で撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にチタニルフタロシアニン顔料0.46グラムを加えた後に、さらにトリフルオロ酢酸1.8グラム及び水1.0グラムを加え強く撹拌しながら、80℃で9時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物(12−2)の消失を確認した後、室温に戻し、0.1μmのフルオロポアで濾取し、メタノール100mlで2回洗浄して濃紺色の粉末(1.04グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物(12−2)で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0135】
<複合フタロシアニン顔料3>
前記アゾ化合物の主骨格が前記一般式(14)であるもののうち前記構造式(14−5)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を下記により合成し、これを用いて以下記載のようにチタニルフタロシアニン顔料との混合液を調製し、脱カルボエステル化処理を行い、複合フタロシアニン顔料を製造した。
【0136】
[構造式(14−5)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の合成]
前記構造式(14−5)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(14−5)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕0.81グラム、ピロカルボン酸ジ-tert-アミルエステル2.7グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加えて、1.1グラム(収率:86.6%)の赤色の粉末を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を下記表3に示す。なお、下記表3中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(14−5)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがC112であるものとし、アゾ化合物の化学式をC7572613として算出したものである。
【0137】
【表3】

また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0138】
[アゾ顔料〔構造式(14−5)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とチタニルフタロシアニン顔料からなる複合フタロシアニン顔料の製造]
上記で得たアゾ化合物(14−5)〔E:C112〕1.01グラム、を2−ブタノン100ml中で撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にチタニルフタロシアニン顔料0.92グラムを加えた後に、さらにトリフルオロ酢酸18.2グラム、酢酸10グラム、および水0.5グラムを加え強く撹拌しながら、80℃で6時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物の消失を確認した後、室温に戻し、0.1μmのフルオロポアで濾取し、メタノール100mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(1.45グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【0139】
<複合フタロシアニン顔料4>
前記アゾ化合物の主骨格が前記一般式(13)であるもののうち前記構造式(13−1)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を下記により合成し、これを用いて以下記載のようにチタニルフタロシアニンとの混合液を調製し、脱カルボエステル化処理を行い、複合フタロシアニン顔料を製造した。
【0140】
[構造式(13−1)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の合成]
前記構造式(13−1)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物の前駆体〔構造式(13−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕0.94グラム、ピロカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル 2.6グラム(12倍モル)を脱水ピリジン150mlに分散させ、室温で15分間攪拌した後、さらに約50℃に加温し、2時間反応させた。徐々に赤色味を帯び、均一な溶液が得られた。室温に戻し、溶媒を除去し、酢酸エチル約50mlを加えて、1.11グラム(収率:83.2%)の赤色の粉末を得た。
得られた生成物の元素分析を行った結果を下記表4に示す。なお、下記表4中の各元素の計算値(%)は、生成物が構造式(13−1)で示されるカルボエステル基(E基)の全てがC592であるものとし、アゾ化合物の化学式をC6860614Br2として算出したものである。
【0141】
【表4】


また、上記生成物の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1に飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1にカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
【0142】
[アゾ顔料〔構造式(13−1)中のE基の全てがH(水素原子)であるもの〕とチタニルフタロシアニン顔料からなる複合フタロシアニン顔料の製造]
上記で得たアゾ化合物(13−1)〔E:C592〕0.34グラム、をN,N−ジメチルホルムアミド100ml中で撹拌しながら加温し、濃い赤褐色の溶液とした。この溶液にチタニルフタロシアニン顔料3.1グラムを加えた後に、さらにパラトルエンスルホン酸5.2グラムを加え強く撹拌しながら、150℃で9時間反応させた。薄層クロマトグラフィーでアゾ化合物の消失を確認した後、室温に戻し、0.1μmのフルオロポアで濾取し、2−ブタノン100mlで2回洗浄し濃紺色の粉末(3.2グラム)を得た。
得られた粉末の赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)による分析の結果、アゾ化合物で認められた置換基に由来する吸収、すなわち、2980cm−1の飽和炭化水素に基づく吸収、1760cm−1のカルボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が消失したことを確認した。
【実施例1】
【0143】
導電性支持体としての直径30mm、長さ340mmのアルミニウムシリンダーに、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、下記組成の電荷輸送層塗工液を、順次浸漬塗工・乾燥し、約3.5μmの下引き層、電荷発生層、約28μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した。また、電荷発生層の膜厚は、780nmにおける電荷発生層の透過率が20%になるように調整した。電荷発生層の透過率は、下記組成の電荷発生層塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたアルミシリンダーに感光体作製と同じ条件で塗工を行ない、電荷発生層を塗工していないポリエチレンテレフタレートフィルムを比較対照とし、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、780nmの透過率を評価した。なお、電荷発生層用塗工液はビーズミルで分散後に約1ヶ月循環保存した液を用いた。また、各層の塗工後に指触乾燥を行った後、下引き層は130℃で20分、電荷発生層は150℃で20分、電荷輸送層は120℃で20分乾燥を行い電子写真感光体1を得た。
【0144】
(下引き層用塗工液)
酸化チタンCR−EL(石原産業社製) 50部
アルキッド樹脂ベッコライトM6401−50 14部
(固形分50重量%、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂L−145−60 8部
(固形分60重量%、大日本インキ化学工業社製)
2−ブタノン 120部
【0145】
(電荷発生層用塗工液)
複合フタロシアニン顔料1 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0146】
(電荷輸送層用塗工液)
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(17)の電荷輸送物質 7部
テトラヒドロフラン 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−1CS、信越化学工業製)
【0147】
【化42】

【実施例2】
【0148】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合フタロシアニン顔料1を複合フタロシアニン顔料2に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体2を得た。
【実施例3】
【0149】
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体3を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
複合フタロシアニン顔料1 10部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 2部
MEK 360部
【実施例4】
【0150】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合フタロシアニン顔料1を複合フタロシアニン顔料3に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体4を得た。
【実施例5】
【0151】
実施例1において電荷発生層用塗工液の複合フタロシアニン顔料1を複合フタロシアニン顔料4に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体5を得た。
【0152】
<比較例1>
実施例1において、電荷発生層用塗工液に用いる複合フタロシアニン顔料1を合成例1で得られたチタニルフタロシアニン顔料に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体6を得た。
【0153】
<比較例2>
実施例3において、電荷発生層用塗工液に用いる複合フタロシアニン顔料1を合成例1で得られたチタニルフタロシアニン顔料に変更した以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体7を得た。
【0154】
<比較例3>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体8を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
合成例1から得られたチタニルフタロシアニン顔料 5部
アゾ顔料(12)−3(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0155】
<比較例4>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体9を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
合成例1から得られたチタニルフタロシアニン顔料 5部
アゾ顔料(12−2)(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0156】
<比較例5>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体10を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
合成例1から得られたチタニルフタロシアニン顔料 5部
アゾ顔料(14)−5(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0157】
<比較例6>
実施例1において、電荷発生層用塗工液を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体11を作成した。
(電荷発生層用塗工液)
合成例1から得られたチタニルフタロシアニン顔料 5部
アゾ顔料(13)−1(E=H:但し、脱カルボエステル化したものでない) 5部
ポリビニルブチラール樹脂 BX−1(積水化学工業) 10部
MEK 600部
【0158】
<電荷発生層用塗工液の結晶安定性評価>
各実施例の処方で、ボールミルにより分散液を作製後に、30日間循環保存を行い、感光体の塗工前に液をサンプリングしてX線回折測定を行った。測定は、RINT―1100:理学電気にて以下の条件で行った。
X線管球 Cu 電圧: 40kV
電流: 20mA
走査速度: 1゜/分
走査範囲: 3゜〜40゜
【0159】
測定は、分散液作製前の複合フタロシアニン顔料またはフタロシアニン顔料と、電荷発生層用塗工液作製直後、さらに30日間循環保存後に行った。チタニルフタロシアニンの結晶型については、X線スペクトルのブラッグ角2θが26.2±0.2°、27.2±0.2°のピーク強度から、結晶安定性について評価を行った。
【0160】
【表5】

実施例3と実施例1のピーク強度の差は、比較例2と比較例1のピーク強度の差よりも小さいことから、本発明における複合フタロシアニン顔料は、塗工液中のバインダー樹脂が少なくても結晶転移が生じず、安定であることが分かる。
【0161】
<実機評価>
実機による通紙ランニングは、電子写真用プロセスカートリッジに前記電子写真感光体を装着し、リコー製imagio Neo271改造機を用いて、高温高湿、低温低湿環境、常温常湿環境での明部電位測定を、初期と30万枚の実機通紙試験(A4、NBSリコー製MyPaper、スタート時帯電電位−800V)後に以下の方法で行った。
高温高湿環境(温度30℃、湿度90%)または、常温常湿環境に(温度23℃、湿度55%)に感光体を24時間保存したのち、それぞれ保存した環境下で明部電位(VL)を測定した。測定方法は、現像ユニットを分解し、表面電位計に接続された電位計プローブを、感光体の上端から50mmの位置に現像ユニットに取り付け、それに感光体をセットして、暗部電位が−800(V)になるようにグリッド電位を調節した後、黒ベタ画像を出力することによって、明部電位を測定した。表面電位計はTREK MODEL344を用いた。
【0162】
また30万枚の実機通紙試験後に感光体を取り外し、一酸化窒素(NO)を40ppm、二酸化窒素(NO)を10ppmの混合ガス雰囲気下の暗所で2日間放置するガス曝露試験をおこなった直後、上記の画像形成装置に再度実装し画像出力をおこない画像品質を評価した。

○:画像品質にほとんど低下がないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0163】
【表6】

【符号の説明】
【0164】

1 感光体
1C、1M、1Y、1K 感光体
2 導電性支持体
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 保護層
6 下引き層
7 単層型感光層
10C、10M、10Y、10K 画像形成要素
11 除電ランプ
12 帯電チャージャ
12C、12M、12Y、12K 帯電部材
13 画像露光部
13C、13M、13Y、13K レーザー光
14 現像ユニット
14C、14M、14Y、14K 現像部材
15 転写前チャージャ
15C、15M、15Y、15K クリーニング部材
16 レジストローラ
17 転写紙
18 転写チャージャ
19 分離チャージャ
20 分離爪
21 クリーニング前チャージャ
22 ファーブラシ
23 クリーニングブレード
24 給紙コロ
25 転写搬送ベルト
26C、26M、26Y、26K 転写ブラシ
27 定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0165】
【特許文献1】特開昭47−37543号公報
【特許文献2】特開昭52−55643号公報
【特許文献3】特開昭52−8832号公報
【特許文献4】特開昭58−222152号公報
【特許文献5】特開昭58−222153号公報
【特許文献6】特開昭61−239248号公報
【特許文献7】特開平1−17066号公報
【特許文献8】特開昭61−109056号公報
【特許文献9】特開昭62−67094号公報
【特許文献10】特開昭63−364号公報
【特許文献11】特開昭63−366号公報
【特許文献12】特開2005−15682号公報
【特許文献13】特開昭63−198067号公報
【特許文献14】特開平1−123868号公報
【特許文献15】米国特許第3,357,989号明細書
【特許文献16】特開昭58−182639号公報
【特許文献17】特開平5−263007号公報
【特許文献18】特開平5−279591号公報
【特許文献19】特開昭58‐100134号公報
【特許文献20】特開昭61‐273994号公報
【特許文献21】特開昭62‐62367号公報
【特許文献22】特開昭59‐44053号公報
【特許文献23】特開平1‐221459号公報
【特許文献24】特開昭60‐59355号公報
【特許文献25】特開平5-301292号公報
【特許文献26】特開2001−290296号公報
【特許文献27】特開平9-127711号公報
【特許文献28】特開2002−23399号公報
【特許文献29】特開2007−334099号公報
【特許文献30】特開平3−9962号公報
【特許文献31】特開2009−7523号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも感光層を設けてなり、該感光層は、下記一般式(I)で示されるカルボエステル基を有するアゾ化合物を溶解し、さらに脱カルボエステル化することにより、下記一般式(a)で示されるアゾ化合物とする際、前記溶液にフタロシアニン顔料を加えてなるアゾ化合物とフタロシアニン顔料との複合フタロシアニン顔料を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

[但し式(I)中、Aはアゾ化合物の残基であり、この残基Aは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を介してn個のE基に結合しており、そしてこれらのヘテロ原子は、NおよびOからなる群から選ばれ、残基Aの一部を形成しており、E基は独立してH(水素原子)または次式で示されるカルボエステル基:−C(=O)−O−R1〔式中R1は、炭素数4から10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはアラルキル基を表わす。〕を表わす。ただし、E基の全てが同時に水素原子であることはない。nは、1から9の整数である。]
【化2】

[但し式(a)中、Aは一般式(I)と同義であり、Hは水素原子を表わし、nは、1から9の整数である。]
【請求項2】
前記一般式(I)および前記一般式(a)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で示される残基Aを有するアゾ化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化3】


(ただし、Bはアゾ化合物の主骨格を示し、Cpはカップラー成分残基であり、mは2又は3の整数を表わす。)
【請求項3】
前記Cpが下記一般式(3)乃至(11)の少なくともいずれかで表わされるカップラー成分残基であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
【化4】


【化5】

【化6】

【化7】

上記一般式(3)〜(6)中、X、Y、Z、pおよびqはそれぞれ以下のものを表わす。
X:−OH、−N(R)(R)または−NHSO−R
(ただしここで、RおよびRは水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、Rは置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表わす。)
:水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホン基、置換もしくは無置換のスルファモイル基または−CON(R)(Y)。[Rは水素原子、アルキル基もしくはその置換体またはフェニル基もしくはその置換体を表わし、Yは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体、または−N=C(R)(R)(但し、Rは炭化水素環基もしくはその置換体、複素環基もしくはその置換体またはスチリル基もしくはその置換体、Rは水素原子、アルキル基またはフェニル基もしくはその置換体を表わすか、あるいはRおよびRはそれらに結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。)を示す。]
Z:炭化水素環もしくはその置換体または複素環もしくはその置換体。
p:1または2の整数。
q:1または2の整数。

【化8】

(上式中、Rは置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Xは前記と同じである。)
【化9】

(上式中、Aは、式(8)中に記載された2個のN原子と共にN含有ヘテロ環を形成するに必要な芳香族炭化水素の2価基または窒素原子を環内に含むヘテロ原子含有の2価基を表わす(これらの環は置換または無置換でもよい)。Xは前記と同じ。)
【化10】

(上式中、Rはアルキル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはそのエステルを表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わし、Xは前記と同じである。)
【化11】

【化12】

(上記式(10)および(11)中、Rは水素原子または置換もしくは無置換の炭化水素基を表わし、Arは炭化水素環基またはその置換体を表わす。但し、同時にRが水素原子でかつArがシクロアルキル基又はシクロアルケニル基になることはない。
【請求項4】
前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(12)で示されることを特徴とする請求項2または3に記載の電子写真感光体。
【化13】

(ただし、R11,R12は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基またはそのエステルを表わす。)
【請求項5】
前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(13)で示されることを特徴とする請求項2または3に記載の電子写真感光体。
【化14】

(ただし、R19,R20は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【請求項6】
前記一般式(2)で示されるアゾ化合物において、Bが下記一般式(14)で示されることを特徴とする請求項2または3に記載の電子写真感光体。
【化15】

(ただし、R24,R25,R26は独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、カルボキシル基及びそのエステルを表わす。)
【請求項7】
前記フタロシアニン顔料が少なくとも下記構造式で示されるチタニルフタロシアニンを含有したものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【化16】

(式中、Mは、TiOであり、X〜X16はそれぞれ同じでも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基、アリーロキシル基を示す。)
【請求項8】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジを搭載し、かつ該カートリッジが装置本体に対し着脱自在であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体となったカートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−282072(P2010−282072A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136166(P2009−136166)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】