説明

電子写真感光体、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】 液性及び電気特性の経時的な安定性に優れ、感光層を形成した場合に電気特性及び機械的強度の両方に優れ、塗布液の安定性にも優れる電子写真感光体の提供を課題とする。
【解決手段】 感光層形成用塗布液に、式(1)で表される繰り返し構造を含むポリアリレート樹脂を含有させ、さらに、電荷輸送材料の添加部数を調整する事により、塗布液の経時的な安定性に優れ、感光層を形成した場合に電気特性及び機械強度の両方に優れる電子写真感光体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等に用いられる電子写真感光体の感光層を形成するための感光層形成用塗布液、並びに、電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置に関する。詳しくは、塗布液安定性に優れた感光層形成用塗布液、並びに、機械的強度に優れ、且つ、電気特性の良好な電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、複写機、各種プリンターなどの分野で広く使われている。
電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下適宜「感光体」という)については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が使用されている。
【0003】
有機系の光導電材料を用いた感光体としては、光導電性微粉末をバインダ樹脂中に分散させたいわゆる分散型感光体、並びに、電荷発生層および電荷輸送層を積層した積層型感光体が知られている。積層型感光体は、それぞれ効率の高い電荷発生物質および電荷輸送物質を組み合わせることにより高感度な感光体が得られること、材料選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、並びに、感光層を塗布により容易に形成可能で生産性が高く、コスト面でも有利なことから、感光体の主流であり、鋭意開発され実用化されている。
【0004】
電子写真感光体は、電子写真プロセス、即ち、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されるため、その間様々なストレスを受け劣化する。このような劣化としては、例えば、帯電器として用いられるコロナ帯電器から発生する強酸化性のオゾンやNOxが感光層に化学的なダメ−ジを与えたり、像露光や除電光で生成したキャリアが感光層内を流れることや外部からの光によって感光層組成物が分解したりすることなどの、化学的、電気的劣化がある。
【0005】
また、これとは別の劣化として、クリーニングブレード、磁気ブラシなどの摺擦や現像剤、転写部材や紙との接触等による感光層表面の摩耗や傷の発生、膜の剥がれといった機械的劣化がある。特に、このような感光層表面に生じる損傷は画像上に現れやすく、直接画像品質を損うため、感光体の寿命を制限する大きな要因となっている。即ち、高寿命の感光体を開発するためには電気的、化学的耐久性を高めると同時に、耐摩耗性、耐傷性等の機械的強度を高めることも望まれる。
【0006】
表面保護層などの機能層を持たない一般的な感光体の場合、このような負荷を受けるのは感光層である。感光層は、通常バインダ樹脂と光導電性物質とからなっており、実質的に強度を決めるのはバインダ樹脂である。しかし、光導電性物質のドープ量が相当多いため、従来の技術では十分な機械強度を持たせるには至っていない。
また、高速印刷の要求の高まりから、より高速の電子写真プロセスに対応しうる材料が求められている。高速印刷を行なう場合、感光体には高感度、高寿命であることの他に、露光されてから現像されるまでの時間を短くするために応答性が良いことも望まれる。感光体の応答性は電荷輸送層、なかでも電荷輸送物質により支配されるがバインダ樹脂によっても大きく変わることが知られている。
【0007】
また、これらの電子写真感光体を構成する各層は、通常、支持体上に光導電性物質、バ
インダ樹脂等を含有する塗布液を、浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等により塗布して形成される。これらの層形成方法では、層に含有させる物質を溶剤に溶解させた塗布液を用意し、この塗布液を塗布するなどの公知の方法が適用されている。
【0008】
そして、多くの工程では、予め塗布溶液を調製し、それを保存しておくことが行われている。そのため、バインダ樹脂と電荷輸送材料それぞれ、またはその両方に、塗布工程に用いられる溶剤に対し溶解性が優れること、及び、溶解後の塗布溶液の安定性も望まれる。
感光層のバインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂が用いられている。数あるバインダ樹脂のなかではポリカーボネート樹脂が比較的優れた性能を有しており、これまで種々のポリカーボネート樹脂が開発され実用に供されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0009】
一方、商品名「U−ポリマー」として市販されている本発明のポリアリレート樹脂をバインダとして用いた電子写真用感光体の技術が開示され、その中でポリカーボネートに比して特に感度が優れていることが示されている(例えば、特許文献5および6参照)。
また、特定構造の二価フェノール成分を用いたポリアリレート樹脂をバインダ樹脂として用いた電子写真用感光体の技術が開示され、感光体製造時の溶液安定性が向上すること、機械的強度、特に耐摩耗性が優れていることが知られている(例えば、特許文献7および8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭50−98332号公報
【特許文献2】特開昭59−71057号公報
【特許文献3】特開昭59−184251号公報
【特許文献4】特開平5−21478号公報
【特許文献5】特開昭56−135844号公報
【特許文献6】特許第4222307号公報
【特許文献7】特開平3−6567号公報
【特許文献8】特開平10−288845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の感光体は、トナーによる現像、転写部材や紙との摩擦、クリーニング部材(ブレード)による摩擦など実用上の負荷によって、表面が摩耗したり、面に傷が生じてしまうなどの欠点を有していた。このため、感光体を用いた印刷では、実用上は限られた印刷性能にとどまっているのが現状である。
また、従前知られたポリエステル樹脂を用いた電子写真感光体では、機械的強度を向上させた場合に電気特性や化学的な耐久性が犠牲になる事が多く、高性能、高速マシンには適用が困難であった。また、電荷輸送材料の含有量によっては、感光層形成用塗布液としたときに安定性に乏しく、白濁したり、沈殿を生じたり、不溶化したりする等の課題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するべく創案されたもので、塗布液の経時的な安定性に優れ、感光層を形成した場合に電気特性及び機械的強度の両方に優れる電子写真感光体、それを用いた電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリアリレート樹脂を用いることにより、感光体が機械的強度に優れることを見出し、また、該ポリアリレート樹脂とともに用いる電荷輸送物質の量を特定した場合に特に、電気特性が向上し塗布液の安定も確保できることがわかり、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、バインダ樹脂として、下記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリアリレート樹脂を含有し、さらに、バインダ樹脂に対して10〜45重量%の電荷輸送材料を含有することを特徴とする電子写真感光体に存する(請求項1)。
【0014】
【化1】

【0015】
このとき、該電荷輸送材料の密度汎関数計算B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算の結果得られたHOMOのエネルギーレベルE_homoが、E_homo > -4.72 (eV)を満たすことが好
ましい(請求項2)。
さらに、上記B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算後に得られた安定構造における制限Hartree-Fock法計算(基底関数は6-31G(d,p))による分極率αの計算値αcalが、次式
αcal > 60 (Å3)を満たすことが好ましい(請求項3)。
【0016】
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、並びに前記トナーを被転写体に転写する転写手段のうち、少なくとも一つとを備えることを特徴とする、電子写真感光体カートリッジに存する(請求項4)。
【0017】
本発明の更に別の要旨は、前記の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対し露光を行ない静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段とを備えることを特徴とする、画像形成装置に存する(請求項5)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電気特性及び機械的強度に優れた電子写真感光体、並びにそれを用いた電子写真カートリッジ及び画像形成装置を得ることができる。また、感光層形成用塗布液の安定性も十分確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すX線回折図である。
【図3】押込み深さに対する荷重曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、
以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
[電子写真感光体]
<導電性支持体>
感光体に用いる導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために。適当な抵抗値をもつ導電性材料を塗布したものでもよい。
【0021】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸等の酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理がより良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化の場合、硫酸濃度は100―300g/l、溶存アルミニウム濃度は2−15g/l、液温は15−30℃、電解電圧は10−20V、電流密度は0.5−2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、前記条件に限定されるものではない。
【0022】
このようにして形成された陽極酸化被膜に対して、封孔処理を行うことは好ましい。封孔処理は、通常の方法でよいが、例えば、主成分としてフッ化ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる低温封孔処理、あるいは主成分として酢酸ニッケルを含有する水溶液中に浸漬させる高温封孔処理が施されるのが好ましい。
上記低温封孔処理の場合に使用されるフッ化ニッケル水溶液濃度は、適宜選べるが、3−6g/lの範囲で使用された場合、より好ましい結果が得られる。また、封孔処理をスムーズに進めるために、処理温度としては、25−40℃、好ましくは30−35℃で、また、フッ化ニッケル水溶液のpHは、4.5−6.5、好ましくは5.5−6.0の範囲で処理するのがよい。pH調節剤としては、シュウ酸、ホウ酸、ギ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア水等を用いることが出来る。処理時間は、被膜の膜厚1μmあたり1−3分の範囲で処理することが好ましい。なお、被膜物性を更に改良するためにフッ化コバルト、酢酸コバルト、硫酸ニッケル、界面活性剤等をフッ化ニッケル水溶液に添加しておいてもよい。次いで水洗、乾燥して低温封孔処理を終える。
【0023】
前記高温封孔処理の場合の封孔剤としては、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉛、酢酸ニッケル−コバルト、硝酸バリウム等の金属塩水溶液を用いることが出来るが、特に酢酸ニッケルを用いるのが好ましい。酢酸ニッケル水溶液を用いる場合の濃度は5−20g/lの範囲内で使用するのが好ましい。処理温度は80−100℃、好ましくは90−98℃で、また、酢酸ニッケル水溶液のpHは5.0−6.0の範囲で処理するのが好ましい。ここでpH調節剤としてはアンモニア水、酢酸ナトリウム等を用いることが出来る。処理時間は10分以上、好ましくは20分以上処理するのが好ましい。なお、この場合も被膜物性を改良するために酢酸ナトリウム、有機カルボン酸、アニオン系、ノニオン系界面活性剤等を酢酸ニッケル水溶液に添加してもよい。
【0024】
次いで水洗、乾燥して高温封孔処理を終える。平均膜厚が厚い場合には、封孔液の高濃度化、高温・長時間処理により強い封孔条件を必要とする。従って生産性が悪くなると共に、被膜表面にシミ、汚れ、粉ふきといった表面欠陥を生じやすくなる。このような点から、陽極酸化被膜の平均膜厚は通常20μm以下、特に7μm以下で形成されることが好
ましい。
【0025】
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものであってもよい。また、安価化のためには切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。特に引き抜き加工、インパクト加工、しごき加工等の非切削アルミニウム基体を用いる場合、処理により、表面に存在した汚れや異物等の付着物、小さな傷等が無くなり、均一で清浄な基体が得られるので好ましい。
【0026】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いられる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素含む金属酸化物粒子が挙げられる。1種類の粒子のみを用いていてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、またはステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることが出来る。また、複数の結晶状態のものが含有されていてもよい。
【0027】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径としては10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上50nm以下である。この平均一次粒径は、TEM写真等から得ることができる。
下引き層は、前記金属酸化物粒子をバインダ樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダ樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知の結着樹脂を用いることが出来る。これらは単独、もしくは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0028】
下引き層に用いられるバインダ樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、バインダ樹脂に対して、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以
下、好ましくは20μm以下である。下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。また、下引き層は、画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いてもよい。
【0029】
<感光層>
感光層は、上述の導電性支持体上に(前述の下引き層を設けた場合は下引き層上に)形成される。感光層は、本願で規定する電荷輸送材料を含有する層であり、その型式としては、電荷発生材料と電荷輸送材料(本願で規定する電荷輸送材料を含む)とが同一層に存在し、それらがバインダ樹脂中に分散した単層構造のもの(以下適宜、「単層型感光層」という。)と、電荷発生材料がバインダ樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送材料(本願で規定する電荷輸送材料を含む)がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層を含む、二層以上の層からなる積層構造の機能分離型のもの(以下適宜、「積層型感光層」という)が挙げられるが、何れの形態であってもよい。
【0030】
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に導電性支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
<機能分離型感光層>
<電荷発生層>
積層型感光層(機能分離型感光層)の電荷発生層は、電荷発生材料を含有すると共に、通常はバインダ樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷発生層は、例えば、電荷発生材料の微粒子及びバインダ樹脂を溶媒又は分散媒に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
【0031】
<電荷発生物質>
電荷発生物質は単独として用いてもよいし、またはいくつかの染顔料との混合状態で用いてもよい。
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム等の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、混合状態として用いる染顔料としては、光感度の面から、特にフタロシアニン顔料またはアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種のバインダ樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0032】
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニンおよび金属含有フタロシアニンが使用される。金属含有フタロシアニンの具体的な例としては、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各種結晶型が使用される。特に、感度の高い結晶型であるA型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型,I型等のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0033】
なお、これらのフタロシアニンのうち、A型(β型)、B型(α型)、D型(Y型)オキシチタニウムフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。特に、オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に主たる明瞭な回折ピークを有するものが好ましい。
【0034】
また、該オキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα特性X線による粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)9.0°〜9.7°に、明瞭な回折ピークを有することが好ましく、電子写真感光体特性に面から、9.6°、24.1°、27.2°、または9.5°、9.7°、24.1°、27.2°に主たる回折ピークを有することが好ましく、分散時の安定性の面からは26.2°付近にはピークを有さないことが好ましい。上述したオキシチタニウムフタロシアニンのなかでも、7.3°、9.6°、11.6°、14.2°、18.0°、24.1°及び27.2°、又は7.3°、9.5°、9.7°、11.6°、14.2°、18.0°、24.2°及び27.2°に主たる回折ピークを有することがより好ましい。
【0035】
電荷発生物質として、無金属フタロシアニン化合物、又は金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は比較的長波長のレーザー光、例えば、780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。また、モノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、又は660nm近辺の波長を有するレーザー光、もしくは比較的短波長のレーザー光(例えば、380nm〜500nmの範囲の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0036】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0037】
一方、電荷発生材料としてアゾ顔料を使用する場合には、光入力用光源に対して感度を有するものであれば従前公知の各種のアゾ顔料を使用することが可能であるが、各種のビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が好適に用いられる。
電荷発生物質として上記の有機顔料を用いる場合には、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上の顔料を混合して用いてもよい。この場合、可視域と近赤域の異なるスペクトル領域で分光感度特性を有する2種類以上の電荷発生物質を組み合わせて用いることが好ましく、中でもジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料とフタロシアニン顔料とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0038】
機能分離型感光体における電荷発生層に用いられるバインダ樹脂の例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリ
ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーの中から選択し、用いることが出来るが、これらポリマーに限定されるものではない。また、これら結着樹脂は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
機能分離型感光体における電荷発生層は、具体的に、上述のバインダ樹脂を有機溶剤に、電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
バインダ樹脂を溶解させ、塗布液の作製に用いられる溶媒、分散媒としては例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状、及び環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2―ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状、及び環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水などが挙げられ、前述の下引き層を溶解しないものが好ましく用いられる。またこれらは単独、または2種以上を併用しても用いることが可能である。
【0040】
機能分離型感光体の電荷発生層において、前記結着樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダ樹脂100重量部に対して10から1000重量部、好ましくは30から500重量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1μmから10μm、好ましくは0.15μmから0.6μmである。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下する虞がある。一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招く虞がある。
【0041】
前記電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散方法を用いることが出来る。この際粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の粒子サイズに微細化することが有効である。
<電荷輸送層>
電荷発生層と電荷輸送層を有する機能分離型感光体の電荷輸送層形成の際は、膜強度確保のためバインダ樹脂が使用される。
【0042】
機能分離型感光体の電荷輸送層の場合、電荷輸送物質とバインダ樹脂とを溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液、また、単層型感光体の場合、電荷発生物質と電荷輸送物質とバインダ樹脂を溶剤に溶解、あるいは分散して得られる塗布液を塗布、乾燥して得ることが出来る。
<バインダ樹脂>
<本発明のポリアリレート樹脂>
本発明にかかるポリアリレート樹脂は、下記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリアリレート樹脂である。
【0043】
【化2】

【0044】
本発明の式(1)で示されるポリアリレート樹脂は、例えばユニチカ株式会社製、商品名「Uポリマー」として入手できる。これは、ビスフェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分とのポリエステルから主としてなるポリマーであり、電気特性、機械的耐久性の両面において、よく使用されているポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の中間的性質を持つバランスのよい樹脂である。
【0045】
さらに、本発明にかかるポリエステル樹脂において、それぞれ、粘度平均分子量は、感光層を塗布形成するのに適するよう、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が低下し実用的でなくなる虞があり、300,000より大きいと、溶解性の低下や、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難となる虞がある。
【0046】
なお、本発明にかかるポリエステル樹脂は、他の樹脂を併用して、電子写真感光体に用いることも可能である。したがって、本発明の塗布液に、その他の樹脂を含有させるようにしてもよい。ここで併用される他の樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これら樹脂のなかでも、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂が好ましい。
【0047】
また、併用する樹脂の使用割合は特に限定されないが、本発明の効果を十分に得るためには、本発明にかかるポリエステル樹脂の割合を超えない範囲、即ち電荷輸送層のバインダ樹脂を100重量部として、併用する樹脂の割合が50重量部より少ないことが好ましい。
<電荷輸送材料>
本願発明の電荷輸送物質のB3LYP/6-31G(d,p)を用いた構造最適化計算によるHOMOのエネルギーレベルE_homoは、E_homo > -4.72(eV)が好ましく、E_homo > -4.70(eV)がより好ましく、E_homo > -4.67(eV)が最も好ましい。HOMOのエネルギーレベルが高いほど、露光後電位が低く優れた電子写真感光体が得られるからである。一方、E_homoが高すぎると、耐ガス性の低下、ゴーストの発生等の不具合が出るため、E_homo < -4.30(eV)が好ましく、E_homo < -4.50(eV)がより好ましく、E_homo < -4.56(eV)が最も好ましい。
【0048】
さらにB3LYP/6-31G(d,p)を用いた構造最適化計算後に得られた安定構造におけるHF/6-31G(d,p)計算による分極率αの計算値αcalは、αcal > 60(Å3)であることが好ましく、
αcal > 70(Å3)であることがより好ましく、αcal > 80(Å3)であることが最も好ましい。αcalの値が大きい電荷輸送物質を含む電荷輸送膜は高い電荷移動度を示し、該電荷輸
送膜を用いることにより、帯電性、感度などに優れた電子写真感光体が得られるからである。一方、αcalが大きすぎると電荷輸送物質の溶解性が低下することから、通常αcal <
200(Å3)であり、αcal < 150(Å3)であることが好ましく、αcal < 130(Å3)であるこ
とがより好ましく、αcal < 110(Å3)であることが最も好ましい。
【0049】
本発明においてHOMOのエネルギーレベルE_homoは密度汎関数法の一種であるB3LYP(A. D. Becke, J. Chem. Phys. 98, 5648(1993), C. Lee, W. Yang, and R. G. Parr, Phys. Rev. B37, 785(1988) 及び B. Miehlich, A. Savin, H. Stoll, and H. Preuss, Chem. Phys. Lett. 157, 200(1989)参照) を用い構造最適化計算により安定構造を求めて得た。この時、基底関数系として6-31Gに分極関数を加えた6-31G(d,p)を用いた(R. Ditchfield, W. J. Hehre, and J. A. Pople, J. Chem. Phys. 54, 724(1971), W. J. Hehre, R. Ditchfield, and J. A. Pople, J. Chem. Phys. 56, 2257(1972), P. C. Hariharan and J. A.
Pople, Mol. Phys. 27, 209(1974), M. S. Gordon, Chem. Phys. Lett. 76, 163(1980),
P. C. Hariharan and J. A. Pople, Theo. Chim. Acta 28, 213(1973), J. -P. Blaudeau, M. P. McGrath, L. A. Curtiss, and L. Radom, J. Chem. Phys. 107, 5016(1997), M. M. Francl, W. J. Pietro, W. J. Hehre, J. S. Binkley, D. J. DeFrees, J. A. Pople, and M. S. Gordon, J. Chem. Phys. 77, 3654(1982), R. C. Binning Jr. and L. A.
Curtiss, J. Comp. Chem. 11, 1206(1990), V. A. Rassolov, J. A. Pople, M. A. Ratner, and T. L. Windus, J. Chem. Phys. 109, 1223(1998), 及び V. A. Rassolov, M. A.
Ratner, J. A. Pople, P. C. Redfern, and L. A. Curtiss, J. Comp. Chem. 22, 976(2001)を参照)。本発明において6-31G(d,p)を用いたB3LYP計算をB3LYP/6-31G(d,p)と記述する。
【0050】
さらに分極率αcalは上記B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算により得られた安定
構造において、制限Hartree-Fock法計算(“Modern Quantum Chemistry”, A. Szabo and
N. S. Ostlund, McGraw-Hill publishing company, New York, 1989を参照)により求め
た。この時、基底関数は6-31G(d,p)を用いた。本発明において6-31G(d,p)を用いたHartree-Fock計算をHF/6-31G(d,p)と記述する。
【0051】
本発明では、B3LYP/6-31G(d,p)計算及びHF/6-31G(d,p)計算とも用いたプログラムはGaussian 03, Revision D. 01(M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, J. A. Montgomery, Jr., T. Vreven, K. N. Kudin,
J. C. Burant, J. M. Millam, S. S. lyengar, J. Tomasi, V. Barone, B. Mennucci, M. Cossi, G. Scalmani, N. Rega, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, M. Hada, M. Ehara,
K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao,
H. Nakai, M. Klene, X. Li, J. E. Knox, H. P. Ilratchian, J. B. Cross, V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann, O. Yazyev, A. J. Austin,
R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski, P. Y. Ayala, K. Morokuma, G. A. Voth, P.
Salvador, J. J. Dannenberg, V. G. Zakrzewski, S. Dapprich, A. D. Daniels, M. C.
Strain, O. Farkas, D. K. Malick, A. D. Rabuck, K. Raghavachari, J. B. Foresman,
J. V. Ortiz, Q. Cui, A. G. Baboul, S. Clifford, J. Cioslowski, B. B. Stefanov, G. Liu, A. Liashenko, P. Piskorz, I. Komaromi, R. L. Martin, D. J. Fox, T. Keith, M. A. Al-Laham, C. Y. Peng, A. Nanayakkara, M. Challacombe, P. M. W. Gill, B. Johnson, W. Chen, M. W. Wong, C.Gonzalez, and J. A. Pople, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2004.)である。
【0052】
上記パラメータを満たす電荷輸送材料の構造に制限はなく、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、アニリン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれら
BR>フ化合物からなる基を主鎖、もしくは側鎖に有する重合体等の電子供与性材料等が挙
げられる。これらの中で、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、エナミン誘導体、およびこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましく、中でも、エナミン誘導体、及び芳香族アミンが複数結合したものがより好ましい。
【0053】
また、上記パラメータを有する電荷輸送材料は、本発明のパラメータの範囲外の電荷輸送材料と併用しても構わないが、前述の本発明の効果を十分に発揮するには、全電荷輸送材料中、本発明のパラメータを有する電荷輸送材料は通常10質量%以上、好ましくは5
0質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であることが最も好ま
しい。
【0054】
本発明において電荷輸送材料は、前述の本発明の効果を十分に発揮するには、電荷輸送層のバインダ樹脂100重量部に対して、通常20重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは35重量部以上である。また本発明のパラメータを有する電荷輸送材料は比較的少ない量でも効果を発揮できる利点を有しており、耐摩耗性について鑑みると、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。電荷輸送材料の添加部数が多すぎると耐摩耗性の低下、及び電荷輸送材料の析出の虞がある。
【0055】
また、本発明のパラメータを有する電荷輸送材料は、式(1)で表される繰り返し構造を有するポリアリレート樹脂を用いる場合に、特に有効である。ポリアリレート樹脂を用いた場合、ポリカーボネート樹脂を用いた場合に比べて、電気特性が悪化するが、本発明のパラメータを有する電荷発生材料を用いた場合、優れた耐摩耗性と電気特性を両立することができる。
【0056】
以下に、電荷輸送材料の例を表−1に挙げる。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
積層型感光体の場合、電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更に好ましくは30μm以下の範囲とする。
<単層型感光層>
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、機能分離型感光体の電荷輸送層と同様に、バインダ樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作成し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることが出来る。
【0064】
電荷輸送物質およびバインダ樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質およびバインダ樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を十分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0065】
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると十分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダ樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダ樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲とする。
【0066】
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
このようにして得られた積層型感光層及び単層型感光層は、従来の感光体に比べて、マシン内で発生するオゾンや酸化性ガス等に強いという利点がある。これは、一般式(1)で示されるバインダ樹脂の硬度の影響が多大にあり、電荷輸送材料の添加量を本発明で規定する範囲とすることにより、電荷輸送材料とバインダ樹脂とのパッキング相性が良くなるためであると考えられる。電荷輸送材料を本発明で規定する添加量の範囲を超えて多く入れた場合には、ガスの影響を受けやすくなり、感光体の表面抵抗が低下するなどの悪影響が起こり、その結果画像ボケなどの欠陥が現れてくる。したがって、添加する電荷輸送材料の種類だけではなく、その添加量も、一般式(1)のバインダ樹脂の硬さとの相性において、本願で既定する範囲が適正領域であると考えられる。
【0067】
なお、積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜
性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などを含有させてもよい。
<弾性変形率>
クリーニングブレードとの摩擦に起因する表面の傷発生の抑制、トナーのクリーニング不良防止、及びフィルミング抑制の観点から、感光層の弾性変形率が高いことが好ましい。弾性変形率は、電荷輸送材料、およびバインダー樹脂双方に依存し、またその相溶性によっても影響されるため、材料の組合せで好適な範囲となるように設計する必要が有る。感光層の好ましい弾性変形率の範囲は、下限は、通常、38%以上、クリーニング不良防止の観点から、40%以上が好ましく、より好ましくは42%以上であり、更に好ましくは44%以上であり、上限は、通常、60%以下、好ましくは55%以下である。
本発明における弾性変形率は、Fischer社製微小硬度計FISCHERSCOPE
H100C(あるいは同等機のHM2000)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定した値である。測定には対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いる。測定条件は以下の通りに設定して行い、圧子にかかる荷重とその荷重下における押し込み深さとを連続的に読み取り、それぞれY軸、X軸にプロットした図3に示すようなプロファイルを取得する。
・測定条件
最大押込み加重 5mN
負荷所要時間 10秒
除荷所要時間 10秒
上記の弾性変形率は下記式により定義される値であり、押し込みに要した全仕事量に対して、除荷の際に膜が弾性によって行う仕事の割合である。
【0068】
弾性変形率(%)=(We/Wt)×100
上記式中、全仕事量Wt(nJ)は図2中のA−B−D−Aで囲まれる面積を示し、弾性変形仕事量We(nJ)はC−B−D−C で囲まれる面積を示す。弾性変形率が大き
いほど、負荷に対する変形が残留しにくく、弾性変形率が100の場合には変形が残らないことを意味する。
【0069】
<その他の機能層>
積層型、あるいは単層型感光体では、その最表層に、感光層の損耗を防止し、帯電器等からの発生する放電物質等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けてもよい。保護層は導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることが出来る。
【0070】
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いる結着樹脂としてはポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることも出来る。
【0071】
保護層の電気抵抗は、通常10Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が該範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層
は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
【0072】
<各層の形成方法>
上記した感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0073】
本発明の塗布液は、通常は溶剤を含有する。そして、上記の本発明にかかるポリエステル樹脂及び電荷輸送物質は、本発明の塗布液内において、溶剤に溶解又は分散した状態で存在するようになっている。中でも、本発明にかかるポリアリレート樹脂及び電荷輸送物質は、溶剤に溶解した状態で存在することが好ましい。
溶剤の種類に特に制限は無く、本発明にかかるポリアリレート樹脂及び電荷輸送物質を溶解又は分散させるものであれば、本発明の効果を著しく損なわない範囲において任意のものを用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類;アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類などが挙げられる。
【0074】
なお、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、溶剤を使用する場合、その使用量にも制限は無い。ただし、単層型塗布液および積層型の電荷輸送層塗布液の固形分濃度は、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲となるように、溶剤の使用量を調整することが望ましい。また、塗布液の塗布性を良好に保つためには、本発明の塗布液の粘度が、通常50mPa・s以上、好ましくは100mPa・s以上、また、通常1000mPa・s以下、好ましくは600mPa・s以下の範囲となるように、溶剤の組成及び使用量を調整することが望ましい。
【0075】
さらに、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、使用時の温度において、通常0.01mPa・s以上、好ましくは0.1mPa・s以上、また、通常20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下の範囲とする。
【0076】
これらの感光体を構成する各層は、前記方法により得られた塗布液を、支持体上に公知の塗布方法を用い、各層ごとに塗布・乾燥工程を繰り返し、順次塗布していくことにより形成される。塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレ
ードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
【0077】
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行っても良い。
<塗布液の安定性>
本発明の塗布液は、電気特性が経時的に安定である。即ち、製造直後の新しい塗布液でも、製造後時間が経過した後の古い塗布液でも、好適な電気特性を有する(維持する)感光体を製造することができる。
【0078】
また、本発明の塗布液は、液性が経時的に安定である。即ち、時間が経過しても析出物やゲルの発生、液の粘度の変化などによる液の状態の変化が生じにくい。なお、塗布液の液性は、析出物等が生じると液が白濁するので目視により確認することができ、白濁が生じない場合に経時的に安定であるといえる。また、粘度変化を測定し、その粘度変化が小さい場合(例えば、3ヶ月経過時の粘度変化率が10%以下である場合)に、経時的に安定であるといえる。
【0079】
また、本発明の塗布液を用いて感光層を形成することにより、電気特性及び機械的強度に優れる感光層を有する感光体を得ることができる。
<効果>
上記のように、感光層に本発明にかかるポリアリレート樹脂を含有させるとともに、本発明にかかる電荷輸送物質を特定量以下含有させることにより、電気特性及び機械的強度に優れた感光層を得ることができる。
【0080】
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0081】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電手段)2、露光装置(露光手段;像露光手段)3及び現像装置(現像手段)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置(転写手段)5、クリーニング装置(クリーニング手段)6及び定着装置(定着手段)7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0082】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナー
についても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
【0083】
露光装置3は、電子写真感光体1に対し露光(像露光)を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば、波長が700nm〜850nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長300nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
【0084】
特に、電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を使用する電子写真感光体の場合には、波長700nm〜850nmの単色光を用いることが好ましく、アゾ化合物を用いる電子写真感光体の場合には、白色光又は波長700nm以下の単色光を用いることが好ましい。本発明に係る感光体は、波長380nm〜500nmの単色光を光入力用光源として用いることも好適である。
【0085】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0086】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0087】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は0.05〜5N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0088】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μ
m程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
【0089】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体,被転写体)Pに転写するものである。
【0090】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0091】
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0092】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0093】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0094】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0095】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0096】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、感光体1は、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真感光体カートリッジ)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。例えば、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5の内、少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジとすることが出来る。この場合も、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に著しく反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例中「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
<粘度平均分子量の測定方法>
まず、樹脂の粘度平均分子量の測定について説明する。
【0098】
測定対象である樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて
、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=(t/t0)−1
b=100×ηsp/C C=6.00
η=b/a
Mv=3207×η1.205
<感光体シートの製造>
[実施例1]
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン
酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
【0099】
このようにして得られた下引き層形成用分散液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイアバーで塗布、乾
燥して下引き層を設けた。
次に、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10部を1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散
処理を行ない顔料分散液を作製した。こうして得られた160部の顔料分散液をポリビニル
ブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5重量%1,2−ジメトキ
シエタン溶液100部と適量の1,2−ジメトキシエタンに加え、最終的に固形分濃度4.0重量%の電荷発生層形成用分散液を作製した。
【0100】
この分散液を、上述の下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイアバーで
塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、下記式(バインダ1)で表されるポリアリレート樹脂(粘度平均分子量:27,200)100部、下記式(CT1)で表される電荷輸送物質30部、及び、レベリング剤としてシ
リコーンオイル0.05部を、ジクロロエタン溶媒640部に溶解し、電荷輸送層形成用塗布液
(感光層形成用塗布液)Aを調製した。
【0101】
【化3】

【0102】
この電荷輸送層形成用塗布液Aを上述の電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、
感光体シートA1を作製した。
[比較例1]
実施例1において、電荷輸送層のバインダ樹脂を下記構造式のバインダ2(粘度平均分子量:29,800)に代えた以外はすべて同様に行い、感光体シートR1を得た。
【0103】
【化4】

【0104】
[比較例2]
実施例1において、電荷輸送層のバインダ樹脂を下記構造式のバインダ3(粘度平均分子量:35,600)に、また、溶媒をTHFに代えた以外はすべて同様に行い、感光体シートR2を得た。
【0105】
【化5】

【0106】
[実施例2]
実施例1において、電荷輸送材料CT1の代わりに、下記構造式のCT2を20部使用した以外はすべて実施例1と同様に行い、電荷輸送層形成用塗布液Bと、感光体シートB1を得た。
【0107】
【化6】

【0108】
[実施例3]
実施例1において、電荷輸送材料を下記構造式のCT3に代え、その添加量を40部とした以外はすべて実施例1と同様に行い、電荷輸送層形成用塗布液Cと、感光体シートC1を得た。
【0109】
【化7】

【0110】
[実施例4]
実施例1において、電荷輸送材料を下記構造式のCT4に代えた以外はすべて実施例1と同様に行い、電荷輸送層形成用塗布液Dと、感光体シートD1を得た。
【0111】
【化8】

【0112】
[実施例5]
実施例1において、電荷輸送材料を下記構造式のCT5とし、添加部数を40部に代えた以外はすべて実施例1と同様に行い、電荷輸送層形成用塗布液Eと、感光体シートE1を得た。
【0113】
【化9】

【0114】
[比較例3]
実施例5において、電荷輸送材料を60部に代えた以外はすべて実施例5と同様に行い、電荷輸送層形成用塗布液Fと、感光体シートF1を得た。
次に、塗布液の安定性を調べるために、電荷輸送層形成用塗布液EとFを室温で2ヶ月間保存した。塗布液Eには変化は見られなかったが、塗布液F中には電荷輸送材料と思われる析出物が確認された。
【0115】
[評価]
作製した感光体シートA1〜E1及びR1〜R2について、以下の電気特性試験と摩耗試験とを行ない、感光体シートF1については電気特性試験のみを行なった。これらの結果を表2にまとめた。
<電気特性試験>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートを直径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感
光体シートのアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が-700VVになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干
渉フィルターで780nmの単色光としたものを0.8μJ/cm2で露光したときの露光後表
面電位(以下、VLと呼ぶことがある)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとし、高速応答の条件とした。測定環境は、温度25℃、相対
湿度50%で行なった。
【0116】
<摩耗試験>
上記感光体シートを直径10cmの円状に切断しテーバー摩耗試験機(Taber社製)により、摩耗評価を行なった。試験条件は、23℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS−10F(type−III)を用いて、荷重なし(摩耗輪の自重)で1000回回転後の摩耗量を
試験前後の重量を比較することにより測定した。
【0117】
【表7】

【0118】
[感光体の表面特性]
実施例1、比較例1および比較例2で調整した電荷輸送層形成用塗布液を、ガラス板上に乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布し、Fischer社製微小硬度計FISCHERSCOPE H100Cを用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で弾性変形率を測定した。結果を以下表−3に示す。
【0119】
【表8】

【0120】
上記の表−3で示されるような弾性変形率が高い感光層を使用することで、クリーニングブレードによるクリーニング性がよく、またトナーのフィルミング、傷といった問題を表面に生じにくい、表面性のよい電子写真感光体を得ることができる。
次に、ドラム状の感光体での評価を行なった。
実施例8
表面が鏡面仕上げされた外径30mm、長さ375.8mm、肉厚1.0mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーの表面に、陽極酸化処理を行い、その後酢酸ニッケルを主成分とする封孔剤によって封孔処理を行なうことにより、約6μmの陽極酸化被膜(アルマイト被膜)を形成した。次に、実施例1で使用した電荷発生層用塗布液に、陽極酸化処理したアルミニウムシリンダーを浸漬塗布し、室温乾燥後の膜厚が0.6μmとなるように電荷発生層を作製し、この電荷発生層上に実施例1、比較例1で使用した電荷輸送層用塗布液をそれぞれ同様に浸漬塗布して、乾燥後の膜厚が18μmの感光体ドラムDR1(本発明のバインダ樹脂含有)、DR2(上記構造式バインダ2含有)を得た。
【0121】
<実機評価>
作製した感光体ドラムを、A3印刷対応である市販のタンデム型カラープリンター(沖データ社製 Microline Pro 9800PS−E)のブラックドラムカートリッジに装着し、上記プリンターに装着した。
MICROLINE Pro 9800PS−Eの仕様
・4連タンデム
・カラー36ppm、モノクロ40ppm
・1200dpi
・DC接触ローラ帯電
・LEDによる書き込み
・除電光あり
・重合トナー
次に本プリンターにパソコンを繋ぎ、白黒の画像を入力し、出力されるプリントアウトの画像を確認したところ、両感光体とも初期画像は良好であった。更に、1万枚の連続印刷の耐刷テストを行ったところ、感光体DR2はテスト終了時の画像はコントラストが不十分で、感光体DR1のそれより見にくい画像であった。これらの耐刷後感光体を取り出しての膜厚を測定したところ、DR1は15.7μm、DR2は12.1umであった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は電子写真感光体を使用する任意の分野で使用することが可能であり、特に、プリンタや複写機等の画像形成装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0123】
1 電子写真感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、バインダ樹脂として下記一般式(1)で示される繰り返し構造を含むポリアリレート樹脂を含有し、且つ該感光層中に、バインダ樹脂100重量部に対して10〜45重量部の電荷輸送材料を含有することを特徴とする、電子写真感光体。
【化1】

【請求項2】
前記電荷輸送材料の密度汎関数計算B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算の結果得られたHOMOのエネルギーレベルE_homoが、
E_homo > -4.72 (eV)
を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記B3LYP/6-31G(d,p)による構造最適化計算後に得られた安定構造における制限Hartree-Fock法計算(基底関数は6-31G(d,p))による分極率αの計算値αcalが、次式
αcal > 60 (Å3)
を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子写真感光体
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体を、静電潜像担持体として用いる画像形成装置用の電子写真感光体カートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体を、静電潜像担持体として用いることを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−227486(P2011−227486A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70825(P2011−70825)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】