説明

電子写真感光体、画像形成装置、プロセスカートリッジ

【課題】単層型電子写真感光体を用いた画像形成装置において、より高速な画像形成を可能とし長期にわたる画像形成の繰返しにおいても、高品位な画像を出力できる信頼性の高い電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生材料と電荷輸層材料とバインダー樹脂で構成され、該電荷輸層材料は、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物の電子輸送材料を含むものであり、ポリアルキレングリコールのモノ若しくはジエステル誘導体又はモノエーテル誘導体を前記電荷輸送材料に対し2〜15wt%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー、プリンタ、ファクシミリなどに用いられる電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して、光によって情報記録を行なう光プリンタは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術は、プリンタのみならず通常の複写機にも応用され、いわゆるデジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため、今後その需要性が益々高まっていくと予想される。さらに、パーソナルコンピュータの普及、及び性能の向上にともない、画像及びドキュメントのカラー出力を行うためのデジタルカラープリンタの進歩も急激に進んでいる。
画像形成装置に用いられる電子写真感光体は有機感光体と無機感光体に大別されるが、有機感光体は、従来の無機感光体に比べて製造が容易であり、コストが安く、電荷輸送材料、電荷発生材料、結着樹脂等の感光体材料の選択肢が多様で、機能設計の自由度が高いという利点を有することから、近年、広く用いられている。
【0003】
有機感光体には、電荷輸送材料(ホール輸送材料、電子輸送材料)を電荷発生材料とともに同一の感光層中に分散させた単層型感光体と、電荷発生材料を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光体とがある。
積層感光体では、負帯電型のものがほとんどであり、正帯電の積層型感光体は実用化には至っていない。その理由は、電子輸送能に優れ、毒性が少なく、バインダー樹脂との相溶性の高い電子輸送材料が実用化されていないためである。一方、一般に単層型感光体は正負両極性の感度を有するが、電子輸送材料の電子輸送能が低いため、ほとんどが正帯電で使用されている。
【0004】
電子輸送能を有する電子輸送材料の数少ない例として、特許文献1(特開平1−206349号公報)には、ジフェノキノン構造を有する化合物が電子写真感光体用電荷輸送剤として提案されている。また、特許文献2(特開平4−295853号公報)にはジフェノキノン誘導体を含有する単層分散型の正帯電有機感光体が提案されている。しかし、これら単層型有機感光体は、機能分離型の積層感光体に比べ、残留電位が高く、静電的繰り返し疲労による帯電電位、露光後電位の変化も大きいという単層特有の問題点を有している。
【0005】
このような単層型感光体の課題を解決するため、近年、新規電子輸送材料の開発が進められ、その開示例も認められる。特許文献3(国際公開番号WO2005/092901)に開示されているようなテトラカルボン酸誘導体、ナフタレンカルボン酸誘導体は、優れた電子輸送能を有するため、従来の単層型感光体の課題を解決し静電特性を大きく向上させることが可能である。
【0006】
前記<一般式1>及び<一般式2>で表されるナフタレンカルボン酸誘導体を用いた単層型感光体の支持体をアルミ蒸着したPETシートやニッケルベルト等のフレキシブルなシートとした場合、感光層成膜時に一般にカールと称される大きな反りが発生することが判明した。このことから、前記ナフタレンカルボン酸誘導体を用いて感光層を形成すると、感光層の体積収縮が比較的大きいため、剛直な支持体上に感光層を形成した場合、内部応力が蓄積された感光層となってしまうという課題が明らかになった。内部応力の蓄積された感光層は、高温放置や油分付着によるクラック、帯電ローラ、クリーニングブレード等の常時接触部材からの外力による物理的クラックが起こりやすく、画像品質の低下を招く。また、微少なクラックが多発した場合、画像形成の繰り返しによる摩耗量が大きくなり、感光体の寿命低下にする場合も想定される。加えて内部応力が高いことにより、支持体と感光層の接着強度も弱くなり、感光層の剥離という致命的な不具合が発生する。
【0007】
一般に感光層中の内部応力緩和のために添加剤(可塑剤等)を微量含有させる場合があるが、単層型感光体は、電荷発生機能、輸送機能を1層で発現させる構成をとるため、機能材料間の相互作用によって感光体の静電特性が低下することが多く、感光層中の応力を緩和するのに適当な添加剤は見つかっていない。また、単層型感光層と支持体との接着強度を向上させるため、ポリエステル系樹脂を含有させる例(特許文献4:特許第3262998号公報、特許文献5:特開平10−268540号公報)も見られるが、体積収縮率の比較的大きい感光層の場合では、画像形成を長期に亘り行うのに十分な接着強度が得られにくい。
【0008】
以上のように、電子輸送能に優れる前記<一般式1>及び<一般式2>のナフタレンカルボン酸誘導体を用いた場合、単層型感光体の電気特性が飛躍的に向上するが、感光層の体積収縮に起因するクラック発生という課題があり、機械的耐久性に対して満足な結果が得られていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平1−206349号公報
【特許文献2】特開平4−295853号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2005/092901号国際公開明細書
【特許文献4】特許第3262998号公報
【特許文献5】特開平10−268540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来の単層型電子写真感光体について、特定の電子輸送材料を用いることによって光感度、静電特性の安定性を向上させ、かつ感光層の機械的耐久性(耐クラック性、接着強度等)を改善し、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明は、単層型電子写真感光体を用いた画像形成装置において、より高速な画像形成を可能とし長期にわたる画像形成の繰返しにおいても、高品位な画像を出力できる信頼性の高い電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
先述したように、本発明で用いる前記<一般式1>及び<一般式2>のナフタレンカルボン酸誘導体は、優れた電子輸送能を有するため、従来の単層型感光体の課題を解決し静電特性を大きく向上させることが可能であるが、内部応力の高い感応層となってしまうため、感光層の機械的耐久性(耐クラック性、接着強度等)に課題を残している。
発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、優れた電子輸送能を有するナフタレンカルボン酸誘導体を含有する単層型電子写真感光体を用いた画像形成装置において、感光層にポリアルキレングリコール誘導体を用いることにより、感光体の静電気的特性を犠牲にすることなく、感光層の内部応力が緩和できることを見出し、その結果、長期にわたる画像形成の繰返しにおいても、高品位な画像を出力できる信頼性の高い電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジが提供できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
ポリアルキレングリコールのモノ若しくはジエステル誘導体又はモノエーテル誘導体
を添加することにより、感光層の内部応力を緩和できる実験によって判明した事実であり、その機構は詳細には分かっていないが、以下のような理由によるものと推測される。前記<一般式1>及び<一般式2>のナフタレンカルボン酸誘導体を用いた感光層において、内部応力が大きいのは、この電子輸送材料の結晶性が比較的高いことに起因すると考えられる。一般的に界面活性剤として知られているアルキレングリコールのモノ若しくはジエステル誘導体又はモノエーテル誘導体を感光層へ添加することで、感光層形成時の起こる前記ナフタレンカルボン酸誘導体同士(若しくは、その他の低分子成分やバインダー樹脂)の凝集効果を低減し、内部応力を緩和しているものと考えられるが詳細なメカニズムは明確になっていない。
【0013】
具体的には少なくとも導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生材料と、下記<一般式1>又は<一般式2>で表される電子輸送材料を含む電荷輸送物質と、バインダー樹脂で構成され、下記<一般式4>〜<一般式6>に示すポリアルキレンエチレングリコール誘導体を電荷輸送材料に対し2〜15wt%含有させることで感光層の高い内部応力による機械的耐久性を低減可能となる。
【0014】
【化1】


{但し、上記一般式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。}
【0015】
【化2】


{但し、式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、1から100までの整数を表す。}
【0016】
内部応力を緩和させ、静電気的特性に悪影響を与えないポリアルキレンエチレングリコール誘導体としては以下のものが挙げられる。
次の<一般式4>及び<一般式5>で示されるポリアルキレングリコールのモノ又は、ジエステル。
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

〔ここで、m=2〜4、n=1〜30(平均付加モル数)、R1,R2は炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基、好ましくは10〜20のアルキル基またはアルケニル基を示す〕
【0019】
例えばモノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0020】
また、前記ポリアルキレングリコールモノエーテルとして、下記<一般式6>で示されるポリアルキレングリコールモノエーテル。
【0021】
【化5】

(式中mは2〜4、Rは炭素数1〜30のアルキル基、好ましくは炭素数10〜20のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基で置換されたフェニル基を、nは平均付加モル数を示し、1以上、好ましくは1〜100の実数を表わす。)
【0022】
例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0023】
以上のようなポリアルキレングリコール誘導体は単独または数種類、組み合わせて使用することができる。感光層の内部応力を緩和させるためには、上記のポリアルキレングリコール誘導体を電子輸送材料に対して2〜20wt%添加するのが好ましい。1wt%以下では、内部応力緩和効果が得られにくく、15wt%以上では、内部応力は緩和効果が大きくなるものの、感光層と支持体との接着強度が弱くなっていくため、ポリアルキレングリコール誘導体の添加量としてはより好ましくは2〜15wt%である。
【0024】
更に、上記のような電子写真感光体に、より好ましい形態としてポリエステル系樹脂をバインダー樹脂に対し2〜15wt%含有させることで接着強度を向上させることができる。ポルアルキレングリコール誘導体は、添加量を増加させていくと、感光層の内部応力を小さくすることができるが、逆にその界面活性効果により、感光層と支持体の接着強度を低下させる傾向にあるため、ポリアルキレングリコール誘導体の添加量が比較的大きい領域では、ポリエステル形樹脂との併用により接着強度を維持しつつ、内部応力を緩和させることが可能となる。
【0025】
本発明に更に好ましい形態として用いられるポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸を主体とする二塩基酸とジオールとから誘導されたポリエステルが好適であり、溶剤に対する溶解性やポリカーボネートとの相溶性等からは共重合ポリエステルであることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボン酸等が挙げられ、それ以外のジカルボン酸としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマール酸、キシレンジカルボン酸等を挙げることができる。
一方、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA或いはビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物などのグリコール成分を挙げることができる。
芳香族ジカルボン酸成分は、感光層の機械的性質、耐湿性、耐久性及び電気的特性の点から、二塩基酸成分の40モル%以上、特に60モル%以上を占めているのが望ましく、このポリエステルの酸成分は、テレフタル酸及びイソフタル酸の組み合わせを含有することが、上記特性を満足させつつ、溶解性等を向上させる目的及びガラス転移点を低下させて感光層の基体に対する密着性を向上させる目的に好適である。勿論、上記の要件を満足する範囲内で、芳香族ジカルボン酸以外の脂肪族二塩基酸成分を含有していてもよく、これらの脂肪族二塩基酸成分はポリエステルの溶解性向上に役立つ。
グリコール成分は、エチレングリコール単独でも、或いはエチレングリコールと他のグリコール、例えばネオペンチルグリコールとの組み合わせであってもよく、後者の場合その量比は1:10乃至10:1のモル比の範囲内にあってもよい。
【0026】
本発明に用いるポリエステルは、ガラス転移点(Tg)が90℃以下、特に75℃以下であることが耐剥離性の向上に有用である。また、数平均分子量は10000乃至30000の範囲にあり、酸価は2以下であることが、感光層の機械的性質や耐久性の点で好ましい。
ポリエステルは、ホモポリエステル或いはコポリエステルの単独でも、或いはこれらの2種以上から成るブレンド物であってもよい。
ポリエステル系樹脂の添加量は、バインダー樹脂に対して2〜20wt%が良く、1wt%では接着強度が不十分であり、20wt%以上ではメインバインダー樹脂との相溶性の問題から感光層中で層分離を起こしやすくなるため、より好ましいポリエステル系樹脂の添加量は2〜15wt%である。
【0027】
さらに電荷発生材料においても特定の材料を用いることにより感度が向上する。本発明においては電荷発生材料として公知の材料を用いることが可能であるが、中でもフタロシアン構造のものが本発明で用いられる電荷輸送材料との組合せ上好ましい。
その中でも特に中心金属としてチタンを有する下記構造式(7)に示すようなチタニルフタロシアニンとすることによって、特に感度が高い感光体とすることが出来、画像形成装置としての高速化をよりいっそうはかることが可能となる。
【0028】
【化6】

[式中、X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立に異なっていてもよいハロゲン原子を表しm、n、l及びkは、各々独立に0〜4の整数を表す。]
【0029】
チタニルフタロシアニンの合成法や電子写真特性に関する文献としては、例えば特開昭57−148745号公報、特開昭59−36254号公報、特開昭59−44054号公報、特開昭59−31965号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報などが挙げられる。また、チタニルフタロシアニンには種々の結晶系が知られており、特開昭59−49544号公報、特開昭59−166959号公報、特開昭61−239248号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭63−366号公報、特開昭63−116158号公報、特開昭64−17066号公報、特開2001−19871号公報等に各々結晶形の異なるチタニルフタロシアニンが記載されている。
これらの結晶形のうち、ブラッグ角2θの27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが特に優れた感度特性を示し、良好に使用される。特に、特開2001−19871号公報に記載されている27.2°に最大回析ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回析ピークとして7.3°にピークを有し、該7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニンを用いることで、高感度を失うことなく、繰り返し使用しても帯電性の低下を生じない安定した電子写真感光体を得ることができる。
【0030】
更に、本発明の感光体は、従来の正帯電型感光体に比べ、負極性での感度特性が向上しているため、負帯電プロセスでも使用可能である。単層型感光体はその層構成や製造のしやすさから、積層型感光体と比べ低コストであるため、従来から広く普及している負帯電プロセスで積層型感光体を用いた反転現像システムと本発明の単層型感光体を組み合わせることにより、画像形成装置の低コスト化が可能となる。
【0031】
即ち本発明によれば、上記課題は本発明の(1)「少なくとも導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生材料と電荷輸層材料とバインダー樹脂で構成され、該電荷輸層材料は、下記<一般式1>又は<一般式2>で表される電子輸送材料を含むものであり、ポリアルキレングリコールのモノ若しくはジエステル誘導体又はモノエーテル誘導体を前記電荷輸送材料に対し2〜15wt%含有することを特徴とする電子写真感光体;
【0032】
【化7】

{但し、上記一般式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。}
【0033】
【化8】

{但し、式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、1から100までの整数を表す。}」、
(2)「前記電子写真感光体が、ポリエステル系樹脂をバインダー樹脂に対し2〜15wt%含有することを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真感光体」、
(3)「前記電荷発生材料がフタロシアニンであることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の電子写真感光体」、
(4)「前記フタロシアニンがチタニルフタロシアニンであることを特徴とする前記第(3)項に記載の電子写真感光体」、
(5)「前記チタニルフタロシアニンがCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないことを特徴とする前記第(4)項に記載の電子写真感光体」、
(6)「前記電荷輸送材料が、前記電子輸送材料に加えて、さらに下記<一般式3>で表される電子輸送材料を含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項の何れかに記載の電子写真感光体;
【0034】
【化9】

{式中、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R17、R18、R19、R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。}」により達成される。
また、上記課題は本発明の(7)「少なくとも電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、帯電後に像露光を行って静電潜像を形成する像露光手段と、該静電潜像を現像する現像手段と、現像像を転写する手段とを有する画像形成装置において、該電子写真感光体が前記第(1)項乃至第(6)項の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置」、
(8)「正帯電で帯電プロセスを行うことを特徴とする前記第(7)項に記載の画像形成装置」、
(9)「負帯電で帯電プロセスを行うことを特徴とする前記第(7)項に記載の画像形成装置」、
(10)「転写手段の形状が、ローラ状又はベルト状であることを特徴とする前記第(7)項乃至第(9)項の何れかに記載の画像形成装置」、
(11)「前記画像形成装置が複数の電子写真感光体を具備してなり、それぞれの電子写真感光体上に現像された単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする前記第(7)項乃至第(10)項の何れかに記載の画像形成装置」、
(12)「前記画像形成装置が電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする前記第(7)項乃至第(11)項の何れかに記載の画像形成装置」により達成される。
また、上記課題は本発明の(13)「少なくとも電子写真感光体を具備してなる画像形成装置用プロセスカートリッジであって、前記第(7)項乃至第(12)項の何れかに記載の画像形成装置に用いられる画像形成装置用プロセスカートリッジ」により達成される。
【発明の効果】
【0035】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の請求項に示す構成をとることにより、単層型感光体の光感度、静電特性の安定性を向上させ、機械的耐久性(耐クラック性、接着強度等)に優れた感光体が得られる。この単層型電子写真感光体を用いた画像形成装置において、より高速な画像形成を可能とし長期にわたる画像形成の繰返しにおいても、高品位な画像を出力できる信頼性の高い電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することができるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下図面に沿って本発明で用いられる電子写真装置を説明する。なおいずれの図面においても感光体は本発明の要件を満たす電子写真感光体である。
【0037】
図1は、本発明における電子写真装置の画像形成要素の一例を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、感光体(11)は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。
感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電手段(12)は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
転写手段(16)には、一般に上記の帯電器を使用できるが、ローラ又はシート状の転写手段が効果的である。
また、(13)は露光手段を表し、半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)などを用いることが出来る。また場合によっては所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
(1A)は除電手段であり必要性に応じて用いられる。光源としては蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。
現像手段(14)により感光体上に現像されたトナー(15)は、受像媒体(18)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段(17)により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
本発明では図1に示すような画像形成要素を複数具備してなることを特徴とするので、これらの画像形成要素を水平、もしくは斜めに複数並べ装置化して用いる。
【0038】
図2には、本発明における電子写真装置の画像形成要素の別の一例を説明するための例を示す。図2において、感光体(11)は、本発明の要件を満たす電子写真感光体であり、エンドレスベルト状のものである。
駆動手段(1C)により駆動され、帯電手段(12)による帯電、露光手段(13)による像露光、現像(図示せず)、転写手段(16)による転写、クリーニング前露光手段(1B)によるクリーニング前露光、クリーニング手段(17)によるクリーニング、除電手段(1A)による除電が繰返し行なわれる。図2においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0039】
図2の露光手段(13)においても、光源として半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)などを用いることが出来る。また場合によっては所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
本発明では図2に示すような画像形成要素を複数具備してなることを特徴とするので、これらの画像形成要素を水平、もしくは斜めに複数並べて用いても良い。
以上の画像形成要素は、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0040】
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。
これらのプロセスカートリッジは着脱自在でありメンテナンスが容易となる特徴がある。
本発明では図3に示すようなプロセスカートリッジ形態の画像形成要素を複数具備してなることを特徴とするので、これらの画像形成要素を水平、もしくは斜めに複数並べて用いる。
【0041】
図4、図5には本発明によるフルカラー電子写真装置の全体の例を示す。この電子写真装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体((11Y),(11M),(11C),(11Bk))が設けられている。この電子写真装置に用いられる感光体(11)は、本発明の要件を満たす電子写真感光体である。各感光体(11Y),(11M),(11C),(11Bk)の周りには、同様に帯電手段(12)、露光手段(13)、現像手段(14)、クリーニング手段(17)等が配設されている。
なお露光手段(13)((13Y),(13M),(13C),(13Bk)、図5における(13Y),(13M),(13C),(13Bk)も同様)は前述のように光源としては前述同様に本発明においては光源として半導体レーザー(LD)、発光ダイオード(LED)などを用いることができる。また場合によっては所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
また、直線上に配設された各感光体(11Y),(11M),(11C),(11Bk)の各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト(1G)が駆動手段(1C)にて掛け渡されている。この搬送転写ベルト(1G)を挟んで各感光体(1Y),(1M),(1C),(1Bk)に対向する転写位置には転写手段(16)が配設されている。
図4、図5の形態のような電子写真装置においても、各色毎の画像形成要素に前述のような着脱自在なプロセスカートリッジを用いることが可能である。
【0042】
次に本発明に用いられる電子写真感光体について詳細に説明する。
本発明における電子写真感光体の感光層は、単一の層中に電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する単層型感光層であってよい。
図6は本発明の電子写真装置で用いられる電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)の上に少なくとも電荷発生材料と、電荷輸送材料(前記<一般式1>又は<一般式2>で表される電子輸送材料を含む)と、バインダー樹脂を含む感光層(22)が設けられている。
【0043】
また図示していないが導電性支持体(21)と感光層(22)の間に下引き層を設けることや、感光層(22)の上に表面保護層を設けることも可能である。
【0044】
(導電性支持体)
導電性支持体(21)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨などにより表面処理した管などを使用することが出来る。
【0045】
(下引き層)
本発明に用いられる電子写真感光体には、感光層と導電性支持体との間に下引き層を設けることもできる。下引き層は、接着性の向上、モワレの防止、上層の塗工性の改良、残留電位の低減、導電性支持体からの電荷注入の防止などの目的で設けられる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましく、このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、下引き層には、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物、或いは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層と同様、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することが出来る。
【0046】
更に下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。この他に、アルミナを陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも下引き層として良好に使用できる。下引き層の膜厚は0.1〜10μmが適当であり、さらに好ましくは1〜5μmである。
【0047】
(単層型感光層)
単層構成時においても電荷輸送材料に用いることのできる材料としては、前述の<一般式1>又は<一般式2>で表わされる電子輸送材料を用いることが必須であるが、これに加えて公知の電子輸送材料(アクセプター)、正孔輸送材料(ドナー)を併用することもできる。
各構成材料の配合比は、配合比は以下のようになる。
電荷発生材料はバインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部が適当である。
電子輸送材料はバインダー樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部が適当である。
正孔輸送材料はバインダー樹脂100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは20〜150重量部が適当である。
電子輸送材料と正孔輸送材料の比率は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2が適当である。
また、感光体の高感度化を満足させるには、電荷輸送材料の配合量(電子輸送材料+正孔輸送材料)を、バインダー樹脂成分100重量部に対して70重量部以上とすることが好ましい。
【0048】
感光層塗工液を調製する際に使用できる溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。これらの溶媒は単独としてまたは混合して用いることができる。
また、必要により、感光層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、バインダー樹脂などの高分子化合物100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。かかるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーなどが使用できる。
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
感光層の膜厚は、10〜45μm程度が適当であり、好ましくは15〜36μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。
【0049】
(単層型感光層の電荷発生材料)
単層構成の感光層に用いることが出来る電荷発生材料は公知の材料を使用することができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができるが前述のようにフタロシアニン系の顔料が本件発明に必要な諸特性の面から特に好ましい。
【0050】
フタロシアニン系の顔料の中でも中心金属としてチタンを有するチタニルフタロシアニンであることによって、特に感度が高い感光層とすることが出来、電子写真装置として高速化をよりいっそうはかることが可能となる。さらに各種の結晶形のうち、ブラッグ角2θの27.2°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが特に優れた感度特性を示し、良好に使用される。特に、特開2001−19871号公報に記載されている27.2°に最大回析ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回析ピークとして7.3°にピークを有し、該7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニンを用いることで、高感度を失うことなく、繰り返し使用しても帯電性の低下を生じない安定した電子写真感光体を得ることができる。
これらの顔料は予めテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散しておくことが好ましい。また分散時には必要に応じてバインダー樹脂と共に分散しても良い。
【0051】
(単層型感光層の電子輸送材料)
本発明に用いる<一般式1>又は<一般式2>で表される電子輸送材料は、下記に示す構造骨格を有する。
【0052】
【化10】

{但し、上記一般式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のア
ルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる
群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞ
れ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無
置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基
からなる群より選ばれる基を表す。}
【0053】
【化11】

{但し、式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、1から100までの整数を表す。}
【0054】
【化12】


{式中、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R17、R18、R19、R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。}
【0055】
該置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1〜25、好ましくは炭素数1〜10の炭素原子を有するアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基といった直鎖状のもの、i―プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、メチルプロピル基、ジメチルプロピル基、エチルプロピル基、ジエチルプロピル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、メチルペンチル基、ジメチルペンチル基、メチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基等の分岐状のもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルキルカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基で置換されたアルキル基、シアノ基で置換されたアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたアルキル基に含まれる。
【0056】
該置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数3〜25、好ましくは炭素数3〜10の炭素原子を有するシクロアルキル環、具体的には、シクロプロパンからシクロデカンまでの同属環、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、テトラメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン等のアルキル置換基を有するもの、アルコキシアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基等で置換されたシクロアルキル基等が例示できる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されず、上記置換又は無置換のシクロアルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子(N、O、S等)に置換された基も置換されたシクロアルキル基に含まれる。
【0057】
置換または無置換のアラルキル基としては、上述の置換または無置換のアルキル基に芳香族環が置換した基が挙げられ、炭素数6〜14のアラルキル基が好ましい。より具体的には、ベンジル基、ペルフルオロフェニルエチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、ターフェニルエチル基、ジメチルフェニルエチル基、ジエチルフェニルエチル基、t−ブチルフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、トリチル基などが例示できる。
【0058】
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0059】
<一般式1>で表される電子輸送材料としては具体的に、下記構造式(8)乃至構造式(14)で表される電子輸送材料が、得られる画像が高品質である点で好ましい。尚、式中Meはメチル基を示す。
【0060】
【化13】

【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
【化17】

【0065】
【化18】

【0066】
【化19】

【0067】
〈一般式1〉で表される電子輸送材料の製造方法としては、下記の方法が例示できる。
ナフタレンカルボン酸は公知の合成方法(例えば、米国特許6794102号公報、Industrial Organic Pigments 2nd edition,VCH,485(1997)など)に従い、下記反応式より合成される。
【0068】
【化20】

「式中、RnはR3、R4、R7、R8を表し、RmはR5、R6、R9、R10を表す。」
【0069】
本発明に用いる〈一般式1〉で表される電子輸送材料は、上記のナフタレンカルボン酸若しくはその無水物をアミン類と反応させ、モノイミド化する方法、ナフタレンカルボン酸若しくはその無水物を緩衝液によりpH調整してジアミン類と反応させる方法等により得られる。モノイミド化は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロナフタレン、酢酸、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルエチレンウレア、ジメチルスルホキサイド等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。pH調整には水酸化リチウム、水酸化カリウム等の塩基性水溶液をリン酸等の酸との混合により作製した緩衝液を用いる。カルボン酸とアミン類やジアミン類とを反応させて得られたカルボン酸誘導体脱水反応は無溶媒、若しくは溶媒存在下でおこなう。溶媒としては特に制限は無いがベンゼン、トルエン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、無水酢酸等原料や生成物と反応せず50℃〜250℃の温度で反応させられるものを用いるとよい。いずれの反応も、無触媒若しくは触媒存在下でおこなってよく、特に限定されないが例えばモレキュラーシーブスやベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸等を脱水剤として用いることが例示できる。
【0070】
前記構造式(10)で表される電子輸送材料は、下記の方法により製造することができる。
(第一工程)
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノプロパン1.10g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。さらに、回収品をトルエン/ヘキサン混合溶媒により再結晶し、モノイミド体Bを2.08g(収率36.1%)得た。
(第二工程)
100ml4つ口フラスコに、2.0g(6.47mmol)のモノイミド体B、ヒドラジン一水和物0.162g(3.23mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。さらに、回収品をトルエン/酢酸エチル混合溶媒により再結晶し、構造式(10)で表される電子輸送材料0.810g(収率37.4%)を得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=614のピークが観測されたことにより、目的物であると同定した。元素分析は、計算値が炭素66.45%、水素3.61%、窒素9.12%であるのに対し、実測値は、炭素66.28%、水素3.45%、窒素9.33%あった。
【0071】
前記構造式(12)で表される電子輸送材料は、下記の方法により製造することができる。
(第一工程)
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物10g(37.3mmol)、ヒドラジン一水和物0.931g(18.6mmol)、p−トルエンスルホン酸20mg、トルエン100mlを入れ、5時間加熱還流させた。
反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。さらに、回収品をトルエン/酢酸エチル混合溶媒により再結晶し、二量体Cを2.84g(収率28.7%)得た。
(第二工程)
200ml4つ口フラスコに、5.0g(9.39mmol)の二量体C、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン1.08g(9.39mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、モノイミド体Dを1.66g(収率28.1%)得た。
(第三工程)
100ml4つ口フラスコに、1.5g(2.38mmol)のモノイミド体D、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、6−アミノウンデカン0.408g(2.38mmol)とDMF10mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。さらに、回収品をトルエン/ヘキサン混合溶媒により再結晶し、構造式(12)で表される電子輸送材料0.276g(収率14.8%)を得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=782のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は、計算値が炭素70.57%、水素5.92%、窒素7.16%であるのに対し、実測値は、炭素70.77%、水素6.11%、窒素7.02%あった。
【0072】
〈一般式2〉で表される電子輸送材料は主に以下の2とおりの合成方法によって合成される。
【0073】
【化21】

〈一般式2〉で表される電荷輸送材料の繰り返し単位nは1から100の整数である。
繰り返し単位nは、重量平均分子量(Mw)から求められる。すなわち化合物は分子量に分布をもった状態で存在する。nが100を超えると化合物の分子量が大きくなり、各種溶媒に対する溶解性が落ちるため、100以下が好ましい。
一方、例えばnが1の場合はナフタレンカルボン酸の三量体であるが、R1、R2の置換基を適切に選択することにより、オリゴマーでも優れた電子移動特性が得られる。このように繰り返し単位nの数により、オリゴマーからポリマーまで幅広い範囲のナフタレンカルボン酸誘導体が合成される。
オリゴマー領域の分子量が小さい範囲では、段階的に合成することで、単分散の化合物を得ることができる。分子量が大きい化合物の場合は、分子量に分布を持った化合物が得られる。
〈一般式2〉で表される電子輸送材料としては具体的に以下の構造式(15)〜構造式(17)のものが例示できる。
【0074】
【化22】

【0075】
【化23】

【0076】
【化24】

【0077】
また、これらの電子輸送材料に加えて、上記〈一般式3〉で表される電子輸送材料をさらに加えることにより、電荷輸送能を低下させることなく成膜時における収縮を更に緩和させることが可能となる。また添加により膜が緻密となるため酸性ガスによる影響をさらに受けにくくなるという利点、即ち耐ガス性が向上するという効果がある。加えて膜が緻密になることにより耐摩耗性も向上する。
【0078】
〈一般式3〉で表される電子輸送材料としては具体的に以下の構造式(18)、(19)のものが例示できる。
[構造式18]
【0079】
【化25】

(但し、式中、両端の末端基はMe(メチル基)を表す。
[構造式19]
【0080】
【化26】

(但し、式中、両端の末端基はMe(メチル基)を表す。)
【0081】
これらの電子輸送材料の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは電子輸送材料全体量に対して1%から50%程度であり、より好ましくは5%〜30%である。添加量が1%未満であると膜質改善が軽微で明確な効果が見られず、50%以上となると電荷輸送能がやや低下する傾向がみられる場合があるからである。
【0082】
前述の〈一般式1〉又は〈一般式2〉で表わされる電子輸送材料を用いることが必須であるが、更にその他の電子輸送材料として、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、下記構造式(20)、(21)の化合物及びその誘導体などの電子受容性物質を1種以上組み合わせて用いても良い。
【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
(単層型感光層の正孔輸送材料)
正孔輸送物質としては、電子供与性物質が好ましく用いられる。
その例としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体、エナミン誘導体などが挙げられる。
これらの正孔輸送物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0086】
(単層型感光層のバインダー樹脂)
バインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート、
酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられ、特にポリカーボネイト系の樹脂が好ましいが、これらに限定されるものではない。
これらの高分子化合物は、単独又は2種以上の混合物として、或いはそれらの原料モノマー2種以上からなる共重合体として、更には、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
単層型感光層の環境変動に対する安定性確保させる目的として、電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合には、例えばポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等が有効である。
ここで、電気的に不活性な高分子化合物とは、トリアリールアミン構造のような光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物を指す。
これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は50wt%以下とすることが好ましい。
【0087】
(添加剤)
本発明の目的を損なわない範囲で、耐環境性の改善、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、単層型感光層、下引き層、保護層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤を添加することが例示できる。
【0088】
該各層に添加できる酸化防止剤としては、上記目的より下記のものが好ましい。
(a)フェノ−ル系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、トコフェロール類。
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン。
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン。
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート。
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン。
【0089】
該各層に添加できる可塑剤として、上記目的より下記のものが好ましい。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル。
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチル。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチル。
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリン。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル。
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート。
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチル。
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステル。
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミド。
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシル。
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチル。
【0090】
該各層に添加できる滑剤としては、上記目的より下記のものが好ましい。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン。
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸。
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド。
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル。
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール。
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム。
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウ。
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物。
【0091】
該各層に添加できる紫外線吸収剤として、上記目的より下記のものが好ましい。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノン。
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート。
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール。
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレート。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェート。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン。
【実施例】
【0092】
以下本発明を実施例によって説明する。尚、これによって本発明の範囲は限定されるわけではない。部は全て重量部である。
【0093】
[電子輸送材料1(=前記構造式(8)の電子輸送材料)の合成例]
(第一工程)
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン2.14g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体A 2.14g(収率31.5%)を得た。
(第二工程)
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体A 2.0g(5.47mmol)と、ヒドラジン一水和物0.137g(2.73mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、構造式(8)で表される電子輸送物質0.668g(収率33.7%)を得た。(電子輸送材料1とする)
【0094】
【化29】

質量分析(FD−MS)において、M/z=726のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素69.41%、水素5.27%、窒素7.71%に対し、実測値で炭素69.52%、水素5.09%、窒素7.93%あった。
【0095】
[電子輸送材料2(=前記構造式(9)の電子輸送材料)の合成例]
(第一工程)
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸二無水物10g(37.3mmol)とヒドラジン一水和物0.931g(18.6mmol)、p−トルエンスルホン酸20mg、トルエン100mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、二量体C 2.84g(収率28.7%)を得た。
(第二工程)
100ml4つ口フラスコに、二両体C 2.5g(4.67mmol)、DMF30mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノプロパン0.278g(4.67mmol)とDMF10mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、モノイミド体C 0.556g(収率38.5%)を得た。
(第三工程)
50ml4つ口フラスコに、モノイミド体C 0.50g(1.62mmol)、DMF10mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン0.186g(1.62mmol)とDMF5mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、構造式(9)で表される電子輸送物質0.243g(収率22.4%)を得た。(電子輸送材料2とする)
【0096】
【化30】

質量分析(FD−MS)において、M/z=670のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素68.05%、水素4.51%、窒素8.35%に対し、実測値で炭素68.29%、水素4.72%、窒素8.33%あった。
【0097】
[電子輸送材料3(=前記構造式(11)の電子輸送材料)の合成例]
(第一工程)
200ml4つ口フラスコに、上述した二量体C 5.0g(9.39mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノヘプタン1.08g(9.39mmol)DMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、モノイミド体D 1.66g(収率28.1%)を得た。
(第二工程)
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体D 1.5g(2.38mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノオクタン0.308g(2.38mmol)とDMF10mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、反応容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、構造式(11)で表される電子輸送物質0.328g(収率18.6%)を得た。(電子輸送材料3とする)
【0098】
【化31】

質量分析(FD−MS)において、M/z=740のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素69.72%、水素5.44%、窒素7.56%に対し、実測値で炭素69.55%、水素5.26%、窒素7.33%あった。
【0099】
[電子輸送材料4(=前記構造式(15)の電子輸送材料)の合成例]
[構造式(15)]
【0100】
【化32】


(第一工程)
200ml4つ口フラスコに、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.0g(18.6mmol)、DMF50mlを入れ、加熱還流させた。これに、2−アミノペンタン1.62g(18.6mmol)とDMF25mlの混合物を攪拌しながら滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣にトルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。更に回収品をトルエン/ヘキサンにより再結晶し、モノイミド体E 3.49g(収率45.8%)を得た。
(第二工程)
100ml4つ口フラスコに、モノイミド体E 3.0g(7.33mmol)と、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物0.983g(3.66mmol)、ヒドラジン一水和物0.368g(7.33mmol)、p−トルエンスルホン酸10mg、トルエン50mlを入れ、5時間加熱還流させた。反応終了後、容器を冷却し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて2回精製した。更に回収品をトルエン/酢酸エチルにより再結晶し、構造式(15)で表される電子輸送材料4を0.939g(収率13.7%)得た。質量分析(FD−MS)において、M/z=934のピークが観測されたことにより目的物であると同定した。元素分析は計算値、炭素66.81%、水素3.67%、窒素8.99%に対し、実測値で炭素66.92%、水素3.74%、窒素9.05%であった。(電子輸送剤材料4とする。)
【0101】
(顔料合成例1)
特開平2−8256号(特公平7−91486号)公報の製造例に記載の方法に準じて、顔料を作製した。すなわち、フタロジニトリル9.8gと1−クロロナフタレン75mlを撹拌混合し、窒素気流下で四塩化チタン2.2mlを滴下する。滴下終了後、徐々に200℃まで昇温し、反応温度を200℃〜220℃の間に保ちながら3時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷し130℃になったところ熱時ろ過し、次いで1−クロロナフタレンで粉体が青色になるまで洗浄、次にメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後、乾燥し顔料を得た。(顔料1とする)
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定し、公報に記載のスペクトルと同様であることを確認した。
【0102】
(X線回折スペクトル測定条件)
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0103】
(顔料合成例2)
特開2001−19871号公報に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗いを繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)2gをテトラヒドロフラン20gに投入し、4時間攪拌を行なった後、濾過を行ない、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た(顔料2とする)。
【0104】
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、顔料合成例1の条件によりX線回折スペクトル測定し、公報に記載の、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニンであることを確認した。
【0105】
(比較例1の感光体作製)
無金属フタロシアニンを下記組成の処方、条件にて分散を行い顔料分散液を作製した。
【0106】
無金属フタロシアニン顔料 3部
(大日本インキ工業株式会社:Fastogen Blue8120B)
シクロヘキサノン 97部
φ9cmのガラスポットにφ0.5mmのPSZボールを用い、回転数100rpmで5時間分散を行った。
【0107】
上記分散液を用いて下記組成の感光体用塗工液を作製した。
【0108】
上記分散液 80部
下記構造式(22)の正孔輸送材料 60部
【0109】
【化33】

電子輸送材料1 40部
Z型ポリカーボネート樹脂(帝人化成製:パンライトTS−2050) 100部
シリコーンオイル(信越化学工業社製:KF50) 0.02部
テトラヒドロフラン 700部
こうして得られた感光層用塗工液をφ30mm、長さ340mmアルミニウムドラム上に、浸漬塗工法にて塗布、120℃で20分間乾燥し、25μmの感光層を形成し、感光体ドラムを作製した。
【0110】
(比較例2〜6の感光体作製)
表1に示すように、電荷発生材料種、電子輸送材料種を変更したこと以外は比較例1の感光体と同様にして感光体ドラムを作製し、比較例2〜6の感光体を得た。
【0111】
(比較例7の感光体作製)
比較例1の感光体において、電子輸送材料1を下記構造式で表されるもの(電子輸送材料5)に変更したこと以外は、比較例1と同様にして感光体ドラムを作製し、比較例7の感光体を得た。
【0112】
【化34】

(式中nは1〜100まで数値を表し、これらのものの混合体である。式中、両端の末端基はMe(メチル基)を表す。)
【0113】
(比較例8の感光体作製)
比較例1の感光体において、表1に示すように正孔輸送材料の添加量を60重量部、電子輸送材料1の添加量を40重量部に変更したこと以外は、全て同様にして感光体ドラムを作製し、比較例8の感光体を得た。
【0114】
(比較例9の感光体作製)
比較例8の感光体において、電子輸送材料1を50重量部とし、下記構造式(18)で表されるものを10重量部加えたこと以外は、全て同様にして感光体ドラムを作製し、比較例9の感光体を得た。
【0115】
【化35】

(式中、両端の末端基はMe(メチル基)を表す。)
【0116】
(比較例10の感光体作製)
比較例1の感光体において、表1に示すようにアルキレングリコール誘導体種を所定量添加したこと以外は、全て同様にして感光体ドラムを作製し、比較例10の感光体を得た。
しかしながら、比較例10の感光体は、アルキレングリコール誘導体の添加量が多すぎるため、感光層が層分離を起こし成膜性が悪いため評価には至らなかった。
【0117】
(実施例1〜9の感光体作製)
比較例1〜9の感光体において、表1に示すようにアルキレングリコール誘導体種を所定量添加し、またポリエステル系樹脂(バイロン200:東洋紡製)を所定量添加したこと以外は全て実施例番号が対応する比較例の感光体と同様にして感光体ドラムを作製し、実施例1〜9の感光体を得た。
表1中のアルキレングリコール誘導体は
MO400:三洋化成製 モノオレイン酸ポリエチレングリコール
MS400:三洋化成製 モノステアリン酸ポリエチレングリコール
DS300:三洋化成製 ジステアリン酸ポリエチレングリコール
DO1000:三洋化成製 ジオレイン酸ポリエチレングリコール
である。
【0118】
【表1】

【0119】
(感光体の画像形成繰り返しよる実機暗電位、露光後電位の安定性評価)
1.正帯電使用
リコー製imgio Neo 270(書き込みレーザー波長は780nm、除電LED有り)のパワーパックを交換して、ローラ帯電(正極性)、ローラ転写(負極性)に改造し、正帯電用トナー及び現像剤に変更した画像形成装置1に比較例1〜7及び実施例1〜9の感光体を搭載し、書き込み率5%チャートを用いA4横で通算1万枚印刷する耐刷試験を行った。試験開始時の感光体の帯電電位が+600Vとなるように設定し、試験終了に至るまでこの帯電条件で試験を行った。また現像バイアスは+450Vとした。試験環境は23℃、55%RHである。耐刷試験前後の暗電位と露光後電位を測定し、その変化量を評価した。初期VD(暗電位)の絶対値、初期VL(露光後電位の絶対値)、と1万枚画像出力後のVDの絶対値の低下量、VLの絶対値の上昇量を表2に示す。
2.負帯電使用
リコー製imgio Neo 270(書き込みレーザー波長は780nm、除電LED有り)で、ローラ帯電(負極性)、ローラ転写(負正極性)とし、負帯電用トナー及び現像剤に変更した画像形成装置2に比較例8〜9及び実施例8〜9の感光体を搭載し、書き込み率5%チャートを用いA4横で通算1万枚印刷する耐刷試験を行った。試験開始時の感光体の帯電電位が−600Vとなるように設定し、試験終了に至るまでこの帯電条件で試験を行った。また現像バイアスは−450Vとした。試験環境は23℃、55%RHである。耐刷試験前後の暗電位と露光後電位を測定し、その変化量を評価した。初期VD(暗電位)の絶対値、初期VL(露光後電位の絶対値)、と1万枚画像出力後のVDの絶対値の低下量、VLの絶対値の上昇量を表2に示す。
【0120】
(感光体の耐クラック性評価)
1.化学的耐クラック性
作製した感光体にオレイン酸を少量薄く塗布し、40℃で5日間放置後、上記画像形成装置1に装着し、中間調グレー画像、及び白紙を出力して画像でクラックの発生を目視評価した。結果を表2に示す。評価は以下の基準で行った。
◎:問題なし
○:非常に小さなクラックが僅かに発生
△:軽微なクラック発生
×:一目でわかるクラックが発生
2.機械的耐クラック性
作製した感光体に弾性ゴムローラを10N/mで押し当て、温度5℃の環境下で感光体と10万回転つれ周りさせた後、常温にもどして先述の画像形成装置1に装着し、中間調グレー画像、及び白紙を出力して画像でクラックの発生を目視評価した。結果を表2に示す。評価は上記と同じ基準で行った。
【0121】
(感光体の接着性評価)
それぞれの感光体に対し、基盤目試験の要領でカッターで切り込み1mm角の基盤目を100個作り、JIS Z 0237−1980粘着テープ・粘着シート試験法に準じ、碁盤目上に粘着テープを貼った後、ドラム周方向の接線に対し90°引きはがし、評価した。JIS K 5400−1979に従いニチバン製セロテープ(登録商標)CT−24を用いて実施した。結果を表2に示す。接着性は、碁盤目(1mm角)100個のうちめくれなかった個数を示している。
【0122】
【表2】

【0123】
表2に示すように、優れた電子輸送能を有する前記特定のナフタレンカルボン酸誘導体を含有する単層型電子写真感光体を用いた感光体において、感光層にポリアルキレングリコール誘導体を用いることにより、感光体の静電気的特性を犠牲にすることなく、感光層の内部応力が緩和でき、耐クラック性を改善可能であることが分かる。また前記特定のアルキレングリコール誘導体添加に加えて、ポリエステル系樹脂添加を併用することによって接着強度をより強くすることも可能となる。その結果、長期にわたる画像形成の繰返しにおいても、高品位な画像を出力できる信頼性の高い電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジが提供可能となる。
【0124】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの
実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例
を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明に係る電子写真装置の例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の別の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図5】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図6】本発明に係る電子写真感光体の層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0126】
11・・・電子写真感光体
12・・・帯電手段
13・・・露光手段
14・・・現像手段
15・・・トナー
16・・・転写手段
17・・・クリーニング手段
18・・・受像媒体
19・・・定着手段
1A・・・除電手段
1B・・・クリーニング前露光手段
1C・・・駆動手段
1D・・・第1の転写手段
1E・・・第2の転写手段
1F・・・中間転写体
1G・・・受像媒体担持体
21・・・導電性支持体
22・・・感光層
36 感光体
37 帯電チャージャ
38 クリーニングブラシ
39 画像露光部
40 現像ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生材料と電荷輸層材料とバインダー樹脂で構成され、該電荷輸層材料は、下記<一般式1>又は<一般式2>で表される電子輸送材料を含むものであり、ポリアルキレングリコールのモノ若しくはジエステル誘導体又はモノエーテル誘導体を前記電荷輸送材料に対し2〜15wt%含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

{但し、上記一般式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。}
【化2】

{但し、式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、nは繰り返し単位であり、1から100までの整数を表す。}
【請求項2】
前記電子写真感光体が、ポリエステル系樹脂をバインダー樹脂に対し2〜15wt%含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷発生材料がフタロシアニンであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記フタロシアニンがチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記チタニルフタロシアニンがCu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3゜のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないことを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記電荷輸送材料が、前記電子輸送材料に加えて、さらに下記<一般式3>で表される電子輸送材料を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電子写真感光体
【化3】

{式中、R15、R16は、それぞれ独立に水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表し、R17、R18、R19、R20はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシクロアルキル基、置換又は無置換のアラルキル基からなる群より選ばれる基を表す。}
【請求項7】
少なくとも電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電する帯電手段と、帯電後に像露光を行って静電潜像を形成する像露光手段と、該静電潜像を現像する現像手段と、現像像を転写する手段とを有する画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至6の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
正帯電で帯電プロセスを行うことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
負帯電で帯電プロセスを行うことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
転写手段の形状が、ローラ状又はベルト状であることを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記画像形成装置が複数の電子写真感光体を具備してなり、それぞれの電子写真感光体上に現像された単色のトナー画像を順次重ね合わせてカラー画像を形成することを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記画像形成装置が電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
少なくとも電子写真感光体を具備してなる画像形成装置用プロセスカートリッジであって、請求項7乃至12の何れかに記載の画像形成装置に用いられる画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−322576(P2007−322576A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150921(P2006−150921)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】