説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】従来のY型チタニルフタロシアニンに比べて高感度であり、繰り返し電位安定性が高く、かつ感度の湿度依存性がない電子写真感光体の製造方法を提供すること。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を含有する感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、該電荷発生物質が、チタニルフタロシアニンと(2R、3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S、3S)−2,3−ブタンジオール少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料であって、該顔料を超音波で分散した分散液を塗布することによって該感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は電子写真感光体に関し、更に詳しくは電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術や周辺機器の発達に伴い、電子写真方式を利用した複写機、及びプリンターの使用頻度が益々高まってきている。それらの複写機やプリンターに使用される電子写真感光体としては、有機材料を主成分とした有機感光体が広く用いられている。有機感光体は、使用する材料を選択することにより、任意の光源に適用できることから、半導体レーザーを光源とした複写機やプリンター用の感光体として近年注目を集めている。
【0003】
これらの中でも粉末X線回折スペクトルにてブラッグ角2θの27.2±0.2°に最大ピークを有するY型チタニルフタロシアニン(以下、単にY型チタニルフタロシアニンともいう)は高感度な素材として知られている。しかし、このY型チタニルフタロシアニンは乾燥した不活性ガス中での脱水処理によって光量子効率が低下することが知られている。このY型チタニルフタロシアニンは常温常湿度環境下に放置して水を再吸収させると再び量子効率が上がることから、Y型チタニルフタロシアニンは水を含んだ結晶構造を有し、水分子が光によって生成した励起子のホールとエレクトロンとの解離を促進し、これが高い光量子効率を示す理由の一つであると推測されている。
【0004】
このような素材を電荷発生物質として用いた有機感光体では、環境、特に湿度変動により感度特性が変化することが懸念されてきた。このY型チタニルフタロシアニンの感度特性が湿度依存性が大きいという欠点は、近年、高画質を要求されるにつれて問題とされる度合い高くなってきた。例えば夜雨が降り、翌日晴天になった場合、有機感光体の密閉された部分(現像器付近)は前日の高湿度雰囲気を保持しており、感光体の他の開放された部分との間に感度差が生じ、朝一の運転開始直後に中間濃度の画像に感度差によって生じた、所謂湿度メモリーと呼ばれる帯状の画像欠陥が発生する。
【0005】
この湿度依存性を解決するために、水の代わりに他の極性基をチタニルフタロシアニンに付与する試みがあり、2,3−ブタンジオールとの付加体チタニルフタロシアニン顔料も報告されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
更に、立体規則性を有した2,3−ブタンジオールのチタニルフタロシアニン付加体が、特に優れた性質をもつものとして報告されており(例えば特許文献2、3参照)、中でも、2,3−ブタンジオールのチタニルフタロシアニン付加体と、チタニルフタロシアニンの混晶が高感度を示す顔料として報告されている(例えば特許文献4参照)。
【0007】
しかしながら、これらの公開された技術はいずれも感度の湿度依存性が改善された反面、尚、前記Y型チタニルフタロシアニンに比して感度不足であり、また、高温高湿等の厳しい環境下での長期の感光体使用時に、電位の変動により画像濃度が十分得られず、更に画像カブリが発生するなどの問題があった。
【0008】
このため、高画質、高速性、高耐久性を要求される高速のデジタル複写機等の有機感光体に採用するには、湿度依存性の改良と共に、いっそうの高感度化と繰り返しの電位安定性を確保する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−273775号公報
【特許文献2】特開平7−173405号公報
【特許文献3】特開平8−82942号公報
【特許文献4】特開平9−230615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来広く用いられてきたY型チタニルフタロシアニンは、高感度であるが、環境依存性が大きく、高湿度下で湿度メモリーが発生しやすいという問題を持っていた。この湿度依存性の問題を解決するため、2,3−ブタンジオールを付加したチタニルフタロシアニンが提案されたが、感光層を形成するために、2,3−ブタンジールを付加したチタニルフタロシアニンを高剪断力で分散すると感度及び繰り返しの電位特性とも大きく低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたもので、従来の2,3−ブタンジオールを付加したチタニルフタロシアニン顔料を用いた電子写真感光体に比較して高感度であり、繰り返し電位安定性が高く、かつ高湿環境下での湿度メモリーの発生がない電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.
導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を含有する感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、該電荷発生物質が、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオール少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料であって、該顔料を超音波で分散した分散液を塗布することによって該感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
2.
前記感光層の分光吸収スペクトルが600nm以上850nm以下の領域に極大吸収値を有し、且つ780nmにおける吸光度(Abs780)と750nmにおける吸光度(Abs750)との比率(Abs780/Abs750)が0.6以上1.2以下であることを特徴とする前記1に記載の電子写真感光体の製造方法。
3.
前記超音波の周波数が10kHz以上100kHz以下で、振幅値が3μm以上50μm以下であることを特徴とする前記1または前記2に記載の電子写真感光体の製造方法。4.
前記分散液における前記顔料の分散後の体積平均粒子径が100nm以上1000nm以下であることを特徴とする前記1から前記3の何れかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、Y型チタニルフタロシアニン顔料に劣らぬ高感度であり、繰り返し電位安定性が高く、かつ高湿環境下での湿度メモリーの発生がない電子写真感光体を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する感光層の分光吸収スペクトルの一例。
【図2】(1)は2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ(±0.2°)9.5°に特徴的なピークを有する(9.5°型)と、(2)は8.3°に特徴的なピークを有する(8.3°型)フタロシアニンのスペクトル図(CG−2)。
【図3】本発明の電子写真感光体を用いたカラー画像形成装置の断面構成図。
【図4】X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ(±0.2°)27.2°に特徴的なピークを有するY型チタニルフタロシアニンのスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の構成と使用する素材、及び本発明の電子写真感光体の製造方法について以下詳細に説明する。
【0017】
電子写真感光体は、一般的に導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する感光層から構成されている。この感光層は電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層の2つの層から構成されていてもよいし、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一の層に含有されているものであってもよいが、電荷発生物質を含有する層は、結着樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液に電荷発生物質を分散させた塗布液を、塗布乾燥することで形成される。感光体における電気特性及び画像特性を高めるためには、電荷発生物質を感光層中に均一に分散させることが好ましい。分散が不十分な場合には、塗布液中に粗大粒子が含まれ、その結果、上記塗布液を用いて形成された感光層も電荷発生物質の粗大粒子を含有することになり、電気特性や画像特性が低下する。従って、電荷発生物質を含有する感光層の塗布液の調製過程においては、電荷発生物質の分散を十分に行い、塗布液中に二次凝集した粒子や粗大粒子が含まれず、かつ均一に分散されていることが好ましい。
【0018】
一方、高い分散シェア(剪断力とも言う)により電荷発生物質の分散性を高めると、均一に分散した塗膜は形成できるものの、分散シェアにより電荷発生物質の結晶構造が変化してその特性が損なわれ、感度及び電位安定性に問題を生じることがある。
【0019】
本発明者らは、本発明のチタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料(以下、簡単に、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料、又は2,3−ブタンジオールとチタニルフタロシアニンとの付加体ともいう)は、分散時に粉砕されることによって生じる破断面の活性が高く特性が不安定になるのではないかと推察した。即ち、粉砕した際にできる破断面等に生じる結晶の欠陥箇所において加水分解等によるブタンジオールの脱離やフタロシアニン環の分解が起りやすく、その分解物が電荷発生を阻害したり、電荷トラップになったりして感度や繰り返し特性に悪影響を及ぼすものと推論した。
【0020】
そこで本発明者らは、チタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料の分散方法として、従来公知の分散機について最適な分散方法を検討した結果、メディアを使用しない分散方法が結晶粒子表面を破壊することなく、均一に分散された分散液を作製出来ることを見出した。また、メディアを使用しない分散方法としては、超音波分散、ホモミキサー、ホモジナイザー、ペイントシェイカーなどが挙げられるが、これらの中でも超音波分散が最も本発明の目的に合致していることを見出したものである。
【0021】
超音波分散では電気的エネルギーがコンバーターによって縦方向の機械的振動に変換され、超音波ホーンに伝達される。ホーンの先端部が溶液に浸されると超音波振動は圧力波となり、キャビテーションを引き起こす。キャビテーションとは溶液の中での局所的な圧力低下により形成される無数の極めて小さな気泡が連続して潰れることを言い、圧力波のサイクルが負の時に形成された気泡が、正の時に潰れ、溶液中の物質に衝撃を繰り返し与えるものである。超音波分散では、この気泡の衝撃の力で、顔料の凝集粒子の解砕を行い、顔料の分散液を作製することができる。
【0022】
本発明では、超音波分散機の出力周波数は、10kHz以上100kHz以下で、振幅値が3μm以上50μm以下の範囲とすることが好ましく、この範囲では、過剰な分散エネルギーを加えることが無い。その結果、2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料の結晶粒子を破壊することはなく、従って劈開面で欠陥が生じることもない。本発明は超音波分散機の出力周波数と振幅値を上記範囲とすることによって、顔料の凝集粒子を一次粒子近傍まで解砕し、分散するものであり、2,3−ブタンジオール付加体フタロシアニン顔料が本来持っている電荷発生機能を損なうことなく最大限発揮することが可能となったものと考えられる。上記範囲未満では、凝集粒子の解砕が不十分で、良好な感度特性が得られず、上記範囲を越えると、結晶粒子の破壊が起こる可能性がある。
【0023】
本発明の2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料は、そのブタンジオール付加比率の違いにより2種の結晶型を有する。
【0024】
チタニルフタロシアニンと、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれか(以下、ブタンジオール化合物ともいう)を過剰に反応させると、X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ(±0.2°):9.5°に特徴的なピークを有する(以下、9.5°型と略)図2(1)に示す顔料が得られる。該9.5型のブタンジオール付加チタニルフタロシアニン原顔料は9.5以外にも16.4°、19.1°、24.7°、26.5°にピークがみられる。
【0025】
該顔料の構造はIRスペクトルで970cm−1付近のTi=O吸収が消失し、630cm−1付近にO−Ti−Oの吸収が現れること、熱分析(TG)で390〜410℃に約11%の質量減少があること(熱分解によるブチレンオキシドの脱離のためと考えられる)、及び質量分析の結果から、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールが、1:1で脱水縮合した構造と考えられている。
【0026】
一方、チタニルフタロシアニン1モルに対し、ブタンジオール化合物を1モル以下で反応させると、粉末X線回折スペクトルで、ブラッグ角2θ:8.3°(±0.2°)に特徴的なピーク有する(以下、8.3°型と略)、図2(2)に示す顔料が得られる。該8.3°型のブタンジオール付加チタニルフタロシアニン顔料は8.3°以外にも24.7°、25.1°、26.5°にピークがみられる。該顔料は、IRスペクトルで970cm−1付近にTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。また、熱分析で390〜410℃にて質量減少が11%未満あること、及び質量分析の結果から、ブタンジオール/チタニルフタロシアニン=1/1付加体とチタニルフタロシアニンとが、ある割合で混晶(単に、1つの顔料粒子中に2つ以上の化合物が混在するという意味)を形成していると推測している。ブタンジオール付加比率は、熱分析における390〜410℃の質量減少から、40〜70モル%と推測される。
【0027】
尚、X線回折スペクトルにおいて前記特徴的なピークとは、バックグラウンドのバラツキを超える明確に異なるピークを言う。
【0028】
本発明においては、良好な感度、繰り返し電位安定性が得られる点で、前記顔料が、X線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角(2θ±0.2°)の8.3°に特徴的なピークを有することがより好ましい。
【0029】
〔2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料の作製方法〕
本発明のチタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール、又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオールとを各種溶媒中で室温あるいは加熱下で反応させことで合成することができる。原料であるチタニルフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンから得る合成法、ジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得る合成法、フタロニトリルと尿素とアルコキシチタンから得る合成法等通常知られている。何れの合成法も用いることが出来るが、特にはジイミノイソインドリンとアルコキシチタンから得られる塩素含有量の少ない高純度なチタニルフタロシアニンが好ましい。またチタニルフタロシアニンはアシッドペースト処理等の方法により無定形化してからブタンジオール化合物と反応させるものが好ましい。無定形チタニルフタロシアニンとブタンジオール化合物との付加反応には、通常5〜30倍の溶媒が使用される。溶媒には特に制限はなくクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロナフタレン、キノリンなどの芳香族溶媒からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジグライムなどのエーテル系溶媒、さらにはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、その他ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒など多数を挙げることができる。
【0030】
チタニルフタロシアニンとブタンジオール化合物との反応は下記反応式(1)に示すが、広範囲な温度条件下で行うことができ、反応温度は25〜300℃の範囲が好ましく、BET比表面積が20m/g以上の顔料を合成するためには、30〜100℃の範囲であることがより好ましい。
【0031】
また、反応溶媒は上記の中ではo−ジクロロベンゼンが特に好ましく、加水分解後はアルコール、若しくはアルコールと水の混合溶媒で置換し、室温から70℃でゆっくり乾燥することが好ましい。この時のアルコールと水の割合はメタノール100質量部に対して水0〜100質量部が好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
ブタンジオール化合物はチタニルフタロシアニン1モルに対して通常0.2〜2.0モルの割合で添加される。等モルの付加体であるためには、ジオール化合物を前記割合で1.0モル以上使用することが必要である。ジオール化合物を前記割合で1.0モル以下の添加量の場合には、得られた付加体はチタニルフタロシアニンとの混晶となる。本発明の分散吸収を満たすかぎり混晶も本発明の範囲に入る。
【0034】
更に、チタニルフタロシアニンとブタンジオール化合物との反応物を水の存在下、溶媒中で処理することが好ましい。水処理を行うことにより、熱的に安定な状態のジオール付加比率を有する2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する混晶顔料を安定的に得ることができる。
【0035】
以上のようにして得られた2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料が高感度で電位安定性に優れ、湿度メモリーなどの湿度依存性が無く、極めて優れた電子写真特性を有している。
【0036】
〔2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料の分散〕
本発明のブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料を用いて、電荷発生層等の分散液を作るには、これらの顔料を溶媒中で分散する。溶媒としては特に制限はなくメチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジグライムなどのエーテル系溶媒、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブタノールなどのアルコール系溶媒、その酢酸エチル、酢酸t−ブチルなどのエステル系溶媒、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香属溶媒、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン系溶媒など多数を挙げることが出来る。
【0037】
分散液中にはバインダーを添加することが出来る。バインダーとしては使用する溶媒に溶解する範囲で広く選ぶことが出来る。例えばポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルおよびこれらのコポリマーなど多数に上る。バインダーと顔料の比率は特に制限はないが通常1/10から10/1である。バインダーが少ないと分散液が不安定になり、多すぎると電気抵抗が高くなって電子写真感光体にした時に繰り返しで残留電位が上昇するなどの欠点が起きやすい。
【0038】
本発明の分散手段はメディアレス分散であるが、メディアレス分散の中でも、超音波分散等が最も好ましい。超音波分散の方法に特に制限はないが、塗布液を納めた容器中に超音波発振機を直接浸漬する方法、塗布液を納めた容器外壁に超音波発振機を接触させる方法、超音波発振機により振動を加えた液体の中に塗布液を納めた溶液を浸漬する方法などがある。
【0039】
分散状態の指標としては、電荷発生層塗布液を塗布、乾燥した感光層の分光吸収スペクトルと体積平均粒子径で評価でき、電荷発生層塗布液の分散液の分光吸収スペクトルが600〜850nmの領域に吸収極大値を有し、且つ、780nmにおける吸光度(Abs780)と750nmにおける吸光度(Abs750)との比率(Abs780/Abs750)が0.6〜1.2の範囲にあることが好ましい。ここで、吸光度の比率の測定は、1000nmでの吸光度を0に補正して行う。上記吸光度の比率が0.6以下では電気特性に不具合が発生し、1.2以上では分散性不良となり、電荷発生層表面形状が均一でなく欠陥が生じてしまう。この吸収スペクトルの技術的意味は、分子間の相互作用が高く、電荷発生能力が高いと予想される分子間相互作用の高い部を反映している長波吸収である780nmの吸収と、分散が過剰に進み、これらの相互作用の高い部分構造が破壊され、長波吸収がなくなって個別分子構造に起因する750nmの吸収との相対比を検知していると推定している。構造的には、相互作用の働いている構造を維持しつつ、電位欠陥となるような粗大粒子等の解砕を図る程度の分散性が必要であると推定している。また、従って、粒子径は、100〜1000nmが好ましい。ここで粒子径とは体積平均のメジアン径である。この程度の粒子径であれば、懸念される凝集粒子はほぼ解砕されていると予想される。
【0040】
これらの吸収スペクトルと粒子径の制御は、分散時の超音波の周波数と振幅値と時間を調整することにより行うことができる。具体的には、超音波の周波数は、10kHz以上100kHz以下、振幅値は3μm以上50μm以下であることが好ましい。超音波の周波数と振幅を上記範囲とした時に、吸光度の比率を上記範囲に制御することが出来る。分散時間は、循環方式やバッチ方式、あるいは分散液の容量、分散液の粘度等で最適な出力、分散時間が選択される。
【0041】
〔感光体の作製〕
本発明の電子写真感光体の作製に当たっては有機感光体の公知の技術をそのまま使うことが出来る。以下、本発明に用いられる有機感光体の構成について記載する。
【0042】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0043】
上記有機感光体の層構成は、特に限定はないが、基本的には、導電性支持体上に必要に応じて中間層を設けた上に電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層から構成されるが、その上に表面層を塗設した構成でもよい。又、表面層は保護層の機能と電荷輸送の機能を有していることが好ましい。
【0044】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。
【0045】
(導電性支持体)
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0046】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスで画像形成を行う必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0047】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗10Ω・cm以下が好ましい。
【0048】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0049】
(中間層)
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることが好ましく、特にはポリアミド等のバインダー樹脂中に酸化チタン粒子を分散含有させる中間層が好ましい。該酸化チタン粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液の酸化チタン粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中の酸化チタン粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲の酸化チタン粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0050】
本発明に用いられる酸化チタン粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状の酸化チタン粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0051】
本発明の酸化チタン粒子は表面処理されていることが好ましい。中でも複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものが好ましい。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0052】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とは酸化チタン粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0053】
この様に、酸化チタン粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理された酸化チタン粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0054】
表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはメチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキチシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の各種アルコキシシラン及びメチルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0055】
(感光層)
本発明の電子写真感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0056】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0057】
(電荷発生層)
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0058】
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として前述のブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン顔料を使用するが、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを併用して用いることができる。
【0059】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0060】
(電荷輸送層)
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0061】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、任意のバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0062】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0063】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0064】
以上、本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0065】
感光層の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0066】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0067】
〔画像形成装置〕
図3は、本発明の製造方法で製造された電子写真感光体を用いたカラー画像形成装置の断面構成図の一例である。
【0068】
この画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜850nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを、像露光光源として用いるのが望ましい。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)から2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0069】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を言う。
【0070】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0071】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0072】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0073】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0074】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0075】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、あるいは、クリーニングブレード6Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0076】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0077】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0078】
この画像形成装置では、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0079】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0080】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された画像支持体(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての画像支持体Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、画像支持体P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された画像支持体Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や画像支持体等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0081】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより画像支持体Pにカラー画像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0082】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0083】
二次転写ローラ5bは、ここを画像支持体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0084】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0085】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0086】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0087】
この画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0089】
(合成例1:CG−1の合成)
(1)無定形チタニルフタロシアニンの合成
1,3−ジイミノイソインドリン;29.2gをo−ジクロロベンゼン200mlに分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド;20.4gを加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗メタノール洗浄して、乾燥後、26.2g(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
【0090】
ついで粗チタニルフタロシアニンを5℃以下で濃硫酸250ml中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5リットルに注いだ。析出した結晶をろ過し、充分に水洗してウエットペースト品225gを得た。
【0091】
ついでウエットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、ろ過、乾燥してチタニルフタロシアニン−アモルファス品24.8g(収率86%)を得た。
【0092】
(2)(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン(CG−1)の合成
1リットルの4ツ口フラスコに温度計、冷却管、メカニカルスターラを設置し、前述の無定形チタニルフタロシアニン10.0gと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール1.30g(0.83当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をo−ジクロロベンゼン(ODB)200ml中に混合し、60〜70℃で6.0時間加熱撹拌を行った。)
続いて反応液を一晩放置後、該反応液に水100mlを加え60〜70℃で6.0時間加熱撹拌し加水分解反応を行なった(加水分解工程)。付加反応及び加水分解工程の撹拌速度は、300rpmで撹拌した。
【0093】
該加水分解反応後、反応液を放冷し、メタノールを加えて生じた結晶をろ過し、ろ過後の結晶をメタノールで洗浄後、ろ過した後、60℃の乾燥箱にて一晩乾燥を行った。((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料)CG−1:10.3gを得た。CG−1のX線回折スペクトルを図1(2)に示す。8.3°に特徴的なピークがある。マススペクトルにおいて576と648にピークがあり、IRスペクトルでは970cm−1付近のTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。
【0094】
また熱分析(TG)では390〜410℃に約7%の質量減少があることから、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体(前記化1で示した脱水縮合構造)と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混晶と推定される。
【0095】
(合成例2:CG−2の合成)
(3)(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン(CG−2)の合成
合成例1のCG−1の合成において、(2R,3R)−2,3−ブタンジオールを(2S,3S)−2,3−ブタンジオールに換えた他は合成例1と同様に付加反応および加水分解工程を行い、メタノールで洗浄を行った後、メタノール/水=7/3の溶媒でメタノールを置換し、ろ過後、60℃の乾燥箱中で一晩乾燥し(2S,3S)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料CG−2:10.6gを得た。CG−2のX線回折スペクトルを測定すると8.3°に特徴的なピークが見られ、マススペクトルにおいて576と648にピークがあり、IRスペクトルではCG−1同様970cm−1付近のTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。また熱分析(TG)では390〜410℃に約7%の質量減少があることから、チタニルフタロシアニンと(2S,3S)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体(前記反応式(1)で示した脱水縮合構造)と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混晶と推定される。
(感光体1の作製)
円筒状アルミニウム基体上に、下記の組成の中間層塗布液を浸漬塗布して、膜厚4.0μmの中間層を形成した。
【0096】
〈中間層塗布液〉
下記組成を循環式湿式分散機を用いて分散した。
【0097】
ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 10質量部
酸化チタン(数平均一次粒径35nm、一次表面処理;シリカ・アルミナ処理、二次表面処理;メチルハイドロジェンポリシロキサン処理) 30質量部
メタノール 100質量部
その上に下記の電荷発生層塗布液を、浸漬塗布して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0098】
〈電荷発生層塗布液〉
下記組成を混合し、循環式超音波ホモジナイザーRUS−600TCVP(株式会社日本精機製作所製)にて出力600W、周波数19.5kHz、振幅25μmで30分分散した。
【0099】
電荷発生物質:CG−1 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12質量部
3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
その上に下記の組成を混合した電荷輸送層塗布液を塗布して、110℃;60分加熱乾燥し、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し感光体1を作製した。
【0100】
〈電荷輸送層塗布液〉
電荷輸送物質:下記CTM−1 200質量部
ポリカーボネート「ユーピロンZ300」(三菱瓦斯化学社製) 300質量部
2,6−ジ−t−ブチル−4−フェニルフェノール 5質量部
トルエン/テトラヒドロフラン=1/9(v/v) 2000質量部
【0101】
【化2】

【0102】
尚、上記電荷発生層を透明ペットベース上に乾燥後膜厚0.3μmで塗布乾燥し、分光吸収スペクトル測定用試料を作製し、分光光度計UV3100(島津製作所製)を用いて分光吸収スペクトルを測定した。780nmにおける吸光度(Abs780)と750nmにおける吸光度(Abs750)との比率は、Abs780/Abs750:1000nmでの吸光度を0として補正した値で算出した。
【0103】
また上記分散液を粒度分布測定機LB−550(HORIBA製)で粒子径を測定した。
【0104】
(感光体2の作製)
感光体1において、電荷発生層塗布液の電荷発生物質を、CG−2に変更した以外は同様にして感光体2を作製した。
【0105】
(感光体3の作製)
感光体1において、電荷発生層塗布液の分散機を、超音波洗浄槽UT−314(SHARP製)に変更した以外は同様にして感光体3を作製した。
【0106】
(感光体4〜7の作製)
上記、感光体1〜3において電荷発生層塗布液の分散時間を変更した以外は同様にして感光体4〜7を作製した。
【0107】
(感光体8〜15の作製)
上記、感光体1において電荷発生層塗布液の分散時における周波数と振幅値を変更した以外は同様にして感光体8〜15を作製した。
【0108】
(比較感光体1の作製)
感光体1において、電荷発生層塗布液の分散工程を、下記条件のサンドミル分散に変更した以外は同様にして比較感光体1を作製した。
【0109】
〈電荷発生層塗布液〉
下記組成を混合し、分散メディアとして外径1mmのガラスビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、回転数1000rpmの条件のサンドミルにて1時間分散を行った。
【0110】
電荷発生物質:化合物CG−1 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12質量部
3−メチル−2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
(比較感光体2の作製)
感光体1において、電荷発生層塗布液の電荷発生物質をチタニルフタロシアニンに変更し、下記条件のサンドミル分散に変更した以外は同様にして比較感光体2を作製した。
【0111】
〈電荷発生層塗布液〉
下記組成を混合し、分散メディアとして外径1mmのガラスビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、回転数1000rpmの条件のサンドミルにて1時間分散を行った。
【0112】
電荷発生物質:下記合成例で得られたY−TiOPc 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12質量部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 400質量部
(Y−TiOPc:Y型チタニルフタロシアニン顔料の合成例)
ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラブトキシドからチタニルフタロシアニン粗品を作り、これを硫酸に溶かし水に注いで生じた沈殿を濾過し水で十分に洗って無定型チタニルフタロシアニン顔料含水ペーストを得る。この顔料含水ペースト(固形分換算約10g)をオルトジクロロベンゼン100mlと水100mlの混合液(水層は分離している)に分散し、70℃で6時間加熱後、メタノールに注いで生じた結晶を濾過し、乾燥してY型チタニルフタロシアニン顔料(Y−TiOPc:X線回折スペクトルは図4)を得た。
【0113】
(比較感光体3の作製)
上記、比較感光体1において電荷発生層塗布液の分散時間を変更した以外は同様にして比較感光体3を作製した。
【0114】
(比較感光体4の作製)
上記、比較感光体1において電荷発生層塗布液の分散機を、ディスパーマットに変更した以外は同様にして比較感光体4を作製した。
【0115】
(比較感光体5の作製)
上記、比較感光体1において電荷発生層塗布液の電荷発生物質をCG−2に変更した以外は同様にして比較感光体5を作製した。
【0116】
上記感光体2〜15についても感光体1と同様に分光吸収スペクトルと粒度分布を測定した。各感光体の分散方法と測定結果を表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
上記の通りに作製した感光体1〜15、比較例感光体1〜5を、デジタル複写機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に組み込み、黒単色の画像出力試験を行った。
【0119】
〔感光体の評価〕
作製した感光体について、下記のようにして、感度、繰り返し特性、電位安定性および画像評価(1ドットライン、2ドットライン)の評価を行った。
【0120】
(感度)
基本的にbizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を、黒現像機の位置で表面電位計にて感光体表面の電位を測定可能なように改造した。
【0121】
感光体の表面電位を−700Vになるように帯電し、露光にて、表面電位が−350Vまで減衰するのに必要な光量(μJ/cm)を測定し、感度(E1/2)を求めた。
【0122】
感度(E1/2)は小さい方が良好な特性といえる。
【0123】
(繰り返し特性)
感度測定に用いた改造機を用いて、初期暗部電位(Vd)および初期明部電位(Vl)をそれぞれ−700V、−200V付近に設定し、帯電、露光を3000回繰り返し、Vd、Vlの変動量(ΔVd、ΔVl)(V)を測定し帯電、露光の繰り返し特性を測定し耐久性の指標の一つとした。なお、マイナスは電位の低下を表し、プラスは電位の上昇を表す。電位差絶対値の小さい方が良好な特性といえる。
【0124】
(電位安定性)
外部光照射による影響を測定した。上記改造機を用い、感光体に1000ルックス(lx)の蛍光灯を30分間照射する前後での露光部電位(Vi)を測定し電位安定性を評価し、蛍光灯照射前後の電位の差を耐久性の指標の一つとした。蛍光灯照射前後で電位差が小さい方が良好な特性といえる。
【0125】
(環境メモリー)
デジタル複写機bizhubPRO C6500を高温高湿環境下(HH:33℃;80%)に24時間放置後、低温低湿環境下(LL:10℃、20RH%)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.4の濃度の黒ハーフトーン画像を0.4の濃度にコピーし、得られたコピー画像A3サイズ1枚の中での最大濃度と最小濃度の差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定した。
【0126】
◎:ΔHDが0.05以下(良好)
○:ΔHDが0.05より大で0.1未満(実用上問題なし)
×:ΔHDが0.1以上(実用上問題あり)
(耐久試験後画像評価)
高温高湿(HH)環境下(33℃;80%)にて5万回の実写試験及び低温低湿(LL)環境下(15℃;30%)にて5万回の実写試験を行い、環境メモリーと画像濃度の評価を行った。
【0127】
画像濃度の判定基準は、下記に示す通りである。
【0128】
画像濃度:
白地のA4紙に黒ベタ画像を作製し、マクベス社製RD−918を使用して画像濃度を測定した。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。多数枚のコピーで残留電位が増加すると、画像濃度が低下する。
【0129】
◎:黒ベタ画像が1.3以上(極めて良好)
○:黒ベタ画像が1.1〜1.2未満(良好)
△:黒ベタ画像が1.0〜1.1未満(実用上問題なし)
×:黒ベタ画像が1.0未満(実用上問題あり)
評価結果を表2,表3に示した。
【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
以上の結果から明らかなように本発明の感光体は、比較用感光体に比べて、感度、繰り返し特性、電位安定性、初期及び5万コピー実写後の環境メモリー、画像特性の各項目において優れた特性を有している。
【符号の説明】
【0133】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
7 中間転写体ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を含有する感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、該電荷発生物質が、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオール又は(2S,3S)−2,3−ブタンジオール少なくともいずれかとの付加体を含有する顔料であって、該顔料を超音波で分散した分散液を塗布することによって該感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
前記感光層の分光吸収スペクトルが600nm以上850nm以下の領域に極大吸収値を有し、且つ780nmにおける吸光度(Abs780)と750nmにおける吸光度(Abs750)との比率(Abs780/Abs750)が0.6以上1.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
前記超音波の周波数が10kHz以上100kHz以下で、振幅値が3μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
前記分散液における前記顔料の分散後の体積平均粒子径が100nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42848(P2012−42848A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185895(P2010−185895)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】