説明

電子写真感光体の製造装置及び製造方法

【課題】硬化性、表面特性が良くなり、画像ボケ、転写性、CL性、電気特性などで性能が得られ、さらに、成膜性が向上、ゴミ付着も減少し生産収率が向上した硬化手段を必要とする感光層及び/又は保護層の電子写真感光体の製造方法とその製造装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に感光層及び保護層から選ばれる少なくとも1層の塗布層を形成する電子写真感光体の製造装置において、該導電性支持体を移動しながら該塗布層を形成する塗布装置と、該導電性支持体の移動方向下流側に設置された該導電性支持体の移動方向の同軸上にある該導電性支持体の表面に塗布された塗布層を硬化させる露光装置を有することを特徴とする電子写真感光体の製造装置及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の製造装置及び製造方法に関し、さらに詳しくは、優れた電気特性を有し、かつ、生産収率が向上した電子写真感光体の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性支持体上に感光層及び/又は保護層を塗布して形成する電子写真感光体の製造方法は良く知られて(例えば、特許文献1参照。)いる。
【0003】
そして、電子写真感光体の反応系の硬化手段を必要とする光硬化表面層は、転写性・CL性などの特性が良好で(例えば、特許文献2、3参照。)ある。しかしながら、成膜後時間が経ってからの光硬化では、硬化性、表面特性が下がり、生産性も低下するという問題点を有している。
【特許文献1】特開平11−149164号公報
【特許文献2】特開2001−166514号公報
【特許文献3】特開2001−125299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化性、表面特性が良くなり、画像ボケ、転写性、CL性、電気特性などで性能が得られ、さらに、成膜性が向上、ゴミ付着も減少し生産収率が向上した硬化手段を必要とする感光層及び/又は保護層の電子写真感光体の製造方法とその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0006】
1.導電性支持体上に感光層及び保護層から選ばれる少なくとも1層の塗布層を形成する電子写真感光体の製造装置において、該導電性支持体を移動しながら該塗布層を形成する塗布装置と、該導電性支持体の移動方向下流側に設置された該導電性支持体の移動方向の同軸上にある該導電性支持体の表面に塗布された塗布層を硬化させる露光装置を有することを特徴とする電子写真感光体の製造装置。
【0007】
2.前記塗布装置が塗布槽若しくは円形スライドホッパーであることを特徴とする前記1記載の電子写真感光体の製造装置。
【0008】
3.前記1又は2記載の電子写真感光体の製造装置により製造することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、硬化性、表面特性が良くなり、画像ボケ、転写性、CL性、電気特性などで性能が得られ、さらに、成膜性が向上、ゴミ付着も減少し生産収率が向上した硬化手段を必要とする感光層及び/又は保護層の電子写真感光体の製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を更に詳しく説明する。
【0011】
まず、本発明の電子写真感光体の製造装置について図を用いて説明する。図1(a−1)は、本発明の電子写真感光体の製造装置の斜視図であって、アルミドラム1は、保持チャック5で保持され、塗布槽2で塗布される。保持チャック5は、アルミドラム1を保持し、塗布槽1と光硬化部3の間を上下(図示せず)できる。光硬化は、図1(a−2)で示すように、電子写真感光体の光硬化を行う層、即ち、被硬化層の塗布直後、保持チャック5に保持された被硬化層の塗布されたアルミドラム1を引き上げ、光硬化部3で光硬化する。尚、図1(a−2)では光硬化部3が1つしか図示してないが図3(a)に示すように複数配置される。
【0012】
図1(b)及び(c)も、本発明の電子写真感光体の別の態様の製造装置の斜視図であって、図1(a)と同様にアルミドラム1は、保持チャック5で保持され、塗布槽2又は円形スライドホッパー4と光硬化部3の間を上下(図示せず)できる。そして、塗布槽2又は円形スライドホッパー4で塗布された、電子写真感光体の光硬化を行う層を硬化する際用いる。
【0013】
同軸上にある導電性支持体とは、図1(a−1)〜(c)で示すように、塗布槽2又は円形スライドホッパー4で塗布される支持体中心軸と光硬化部3の中心軸が同軸上にある事であって、塗布直後に硬化出来ることをいう。但し実用上の微差による軸ズレは同軸上の定義に含まれる事は言うまでもない。なお中心軸とは円筒形支持体の場合は回転中心軸を言う。図1(a)及び(b)は塗布装置が塗布槽の例であり、図1(c)は塗布装置が円形スライドホッパーの例である。図1(c)は縦方向に円形スライドホッパー4と光硬化部3が並んだ図であるが、本発明においては、横方向に並べてもよい。光硬化部3は活性エネルギー線を放射する光源であり、活性エネルギー線は紫外線が好ましく、具体的には、キセノンランプ、水銀灯などを挙げることができる。これらの光源は円形で、中央部をアルミドラム1が通過する。
【0014】
図2及び図3で、異軸上に塗布槽2又は円形スライドホッパー4と光硬化部3を配置した従来の装置を説明する。
【0015】
図2は、従来の電子写真感光体の塗布装置の斜視図である。アルミドラム1は、保持チャック2で保持され、塗布槽2で塗布された後塗布槽2から引き上げられる(図示せず)。
【0016】
図3は光硬化部の斜視図である。図2の塗布装置で塗布されたアルミドラム1は図3(a)〜(d)で示される光硬化部に移されここで塗布液は硬化される。図3(a)は、光硬化部3が棒状の活性エネルギー線を放射する光源が複数本円形状に並べられており、図2の装置で塗布されたアルミドラム1はこの円形状の中心にセットされて硬化される。図3(b)は、図1で用いた光硬化部3の光源を用いる例である。図3(c)は、本願発明範囲外の一列並列に複数本棒状の活性エネルギー線を放射する光源が並べられた下を回転しながら、移動して硬化する例である。図3(d)は、同様に本願発明範囲外の二列並列に複数本棒状の活性エネルギー線を放射する光源が並べられた間を回転しながら、移動して硬化する例である。いずれの場合も、塗布と光硬化は同軸では行われない。
【0017】
上記図3の(c)、(d)の塗布装置を用いて硬化した場合、塗布から硬化までに移動時間がかかる為、ゴミ付着が多発し画像不良が発生したり、溶媒が気化して十分な成膜性が得られなかった。一方、本願のように塗布後すぐに硬化できる装置ではゴミの付着がほとんど見られず成膜性も良好であった。さらに、塗布装置としては、塗布液の外光への暴露の少ない遮光タイプの塗布装置の場合、不要な硬化反応による液劣化が生じず好ましい。遮光タイプの塗布装置とは、例えば、円形スライドホッパーやリングコーターなど、光に暴露される塗布液が少ないように構成された塗布装置をいう。
【0018】
(感光層)
感光層について説明する。本発明に関わる電子写真感光体の感光層の構成は、同一層中に電荷発生物質と電荷輸送物質双方を含有する単層型、あるいは電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを導電性支持体上に積層した積層型のいずれかである。導電層と感光層の中間にはバリアー機能と接着機能をもつ中間層を設けることもできる。同感光層上に本発明の保護層を設けることで本発明の目的は達成される。これらの中間層、感光層、保護層の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法などを用いることができる。
【0019】
以下に積層型の感光体について説明する。
【0020】
積層型の感光層の構成としては、導電性支持体上に電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層したものと、逆に電荷輸送層及び電荷発生層の順に積層したものがある。
【0021】
(導電性支持体)
本発明で用いる支持体は導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙などが挙げられる。
【0022】
(中間層)
本発明においては、導電層と感光層の中間にバリアー機能と接着機能をもつ中間層を設けることもできる。中間層はカゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド、ポリウレタン及びゼラチンなどによって形成できる。中でもアルコール可溶性のポリアミドが好ましい。中間層の膜厚は好ましくは0.1〜15μmである。
【0023】
また、中間層の抵抗調整の目的で各種の導電性微粒子や金属酸化物を含有させることができる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス等の各種金属酸化物。スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの超微粒子を用いることができる。これら金属酸化物を1種類もしくは2種類以上混合して用いてもよい。2種類以上混合した場合には固溶体または融着の形をとってもよい。このような金属酸化物の平均粒径は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0024】
(電荷発生層)
電荷発生層は、スーダンレッド及びダイアンブルーなどのアゾ原料、ビレンキノン及びアントアントロンなどのキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ顔料、フタロシアニン顔料などの電荷発生物質を単独もしくは公知の樹脂中に分散する形態で使用することができる。バインダー樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル及びアクリル樹脂などが望ましい。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対して20〜600質量部が好ましい。このような樹脂分散形態の電荷発生層の膜厚は好ましくは5μm以下、より好ましくは0.05〜3μmである。なお、電荷発生層用の塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。
前記顔料を真空蒸着することによって形成すこともできる。
【0025】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は主として電荷輸送物質と、本発明に用いるバインダー樹脂とを溶剤中に溶解させた塗料とを塗工乾燥して形成する。用いられる電荷輸送物質としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物及びチアゾール系化合物などが挙げられる。
【0026】
これらは0.5〜2倍量のバインダー樹脂と組み合わされ、塗工、乾燥し電荷輸送層を形成する。バインダー樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
又、電荷輸送層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
電荷輸送層の膜厚は好ましくは5〜40μm、より好ましくは15〜30μmである。
【0027】
(保護層)
保護層について説明する。一般に保護層は下層の感光層を機械的なストレスから保護することを目的に高分子量のポリカーボネート樹脂や光、熱による硬化性樹脂、シリコーン系のハードコート材料が使用される。また、膜強度の向上や抵抗調整のために各種フィラーを添加することもできる。フィラーとしてはシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス等の各種金属酸化物。スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの超微粒子を用いることができる。これら金属酸化物を1種類もしくは2種類以上混合して用いてもよい。2種類以上混合した場合には固溶体または融着の形をとってもよい。このような金属酸化物の平均粒径は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0028】
本発明に用いる保護層において、導電性金属酸化物微粒子の分散性の向上及び平滑性の向上を目的として種々の添加剤を加えることができる。特に分散性の向上に関しては、金属酸化物微粒子の表面処理を行うことが非常に有効である。表面処理剤としては、各種の無機物処理やケイ素化合物、含フッ素シランカップリング剤、フッ素変性シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤及びフッ素系グラフトポリマー等による処理があげられる。
【0029】
本発明に用いる保護層において、各種の滑剤粒子を加えることができる。例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を加えることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。保護層中のフッ素原子含有樹脂粒子の割合は好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%の範囲である。樹脂の分子量や粒子の粒径は適宜選択することができ、特に制限されるものではない。
【0030】
本発明においては前記保護層中に、耐候性を向上させる目的で酸化防止剤などの添加物を加えてもよい。
【0031】
保護層は、好ましくは前記バインダー樹脂中に導電性金属酸化物微粒子を分散した溶液を塗布し、硬化して形成する。
【0032】
保護層の膜厚は好ましくは0.2〜10μmであり、より好ましくは0.5〜6μmである。
【0033】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、文中の「部」は質量部を表す。
【0035】
(N型半導性粒子の表面処理:N型半導性粒子1の作製)
メチルハイドロジェンポリシロキサン0.2部をエタノール/n−プロピルアルコール/THF(45:20:35容量比)10部中に溶解分散し、該混合溶媒中にルチル型酸化チタン(数平均一次粒径35nm:アルミナによる5%一次表面処理がされている)3.5部を添加したのち、1時間撹拌し、表面処理(二次処理)を行い溶媒から分離後、加熱乾燥して表面処理済N型半導性粒子1を得た。
〔電子写真感光体の作製〕
(中間層)
バインダー樹脂(N−1)1部をエタノール/n−プロピルアルコール/THF(45:20:35容量比)20部に加え攪拌溶解後、表面処理済N型半導性粒子1の4.2部を混合し、該混合液をビーズミルを用い分散した。この際、平均粒径0.1〜0.5mmのイットリア含有酸化ジルコニウムを主成分とする球状ビーズ(ビーズ例:ニッカトー製YTZボール)を用い、充填率:80%、周速設定4m/sec、ミル滞留時間3時間分散し中間層塗布液を作製した。同液を5μmフィルターで濾過した後、該中間層塗布液を洗浄済みの円筒状アルミニウム基体上(切削加工によりJISB−0601規定の十点表面粗さRz:0.81μmに加工した)に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚およそ2μmの中間層を形成した。
【0036】
【化1】

【0037】
(電荷発生層)
下記成分を混合し、サンドミル分散機を用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0038】
Y−チタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシン顔料) 20部
ポリビニルブチラール(BX−1、積水化学(株)製) 10部
メチルエチルケトン 700部
シクロヘキサノン 300部
(電荷輸送層)
下記成分を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
【0039】
電荷輸送物質(下記構造) 50部
ポリカーボネート樹脂「ユーピロン−Z300」(三菱ガス化学社製)
100部
酸化防止剤(下記化合物A) 8部
テトラヒドロフラン/トルエン(体積比8/2) 750部
【0040】
【化2】

【0041】
(保護層)
下記成分を混合し、溶解して保護層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に浸漬塗布法で塗布した。
【0042】
硬化性材料A(M408:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)0.3部と硬化性材料B(E4858:分子量450、2官能のウレタンアクリレート)0.7部を1−プロパノール5.1部とメチルイソブチルケトン2.4部に溶解した。さらに粒径約300nmのフッ素樹脂微粒子0.6部とアナタース型酸化チタン微粒子(粒径約6nm、表面処理メチル水素シリコンオイル20質量%)0.8部を加え、超音波ホモジナイザーで15分間分散して硬化性材料とフッ素樹脂微粒子、酸化チタン微粒子を含有する分散液を得た。同分散液にラジカル硬化開始剤(化合物D)を0.05部加え保護層塗布液とした。
【0043】
【化3】

【0044】
この保護層塗布液を前記電荷輸送層上に図1(a)の塗布硬膜装置で塗布し、硬膜した。光源は、2kWの高圧水銀灯から100mm離れた位置に感光ドラムを位置し回転させながら3分間光照射し保護層を硬化した。光硬化後に120℃で30分間の加熱乾燥を行い、保護層3μmを設置した電子写真感光体を作製し電子写真感光体1を得た。
【0045】
同様に、図1(b)及び(c)を用いて電子写真感光体2及び3を得た。この際の光源は円形(直径250mm)2kWの高圧水銀灯である。
【0046】
同様に、上記保護層塗布液を前記電荷輸送層上に図2の塗布硬膜装置で浸漬塗布した。硬膜は、それぞれ図3(b)〜図3(d)を用いた。光源は、図3(b)は図1(b)及び(c)と同一、図3(c)と(d)棒状の2kWの高圧水銀灯から100mm離れた位置に感光ドラムを位置し回転させながら3分間光照射し保護層を硬化した。光硬化後に120℃で30分間の加熱乾燥を行い、保護層3μmを設置した電子写真感光体4〜6を作製した。
【0047】
評価
上記本発明の電子写真感光体及び比較の電子写真感光体をミノルタQMS(MagiColor2300:A4紙16枚/分のプリンター:コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)に各々装着し、下記評価を行った。
【0048】
(転写性の測定)
感光体を帯電、現像、転写させ、ブレードによるクリーニングを行う前の残トナー量の質量を測定。
【0049】
◎:転写率(残トナー量)90%以上(5%未満)
○:転写率90〜85%以上
×:転写率85%以下
(クリーニング性(CL性)の評価)
10℃、15%RH環境下、エッジが10μm摩耗した劣化ブレードで、バネ荷重を変更しベタ画像のクリーニング限界荷重を以下のように評価した。
【0050】
Rank クリーニング限界荷重(N/m)
5:9未満
4:9以上、13未満
3:13以上、17未満
2:17以上、21未満
1:21以上
Rank3以上なら実用可能である。
【0051】
(膜減耗量の評価)
23℃、50%RH環境にてドラム100000回転相当実写した後のドラム減耗量を測定した。測定器はフィッシャースコープMMSを用いて、押し当て接触式の渦電流方式にて初期と実写後ドラムの減耗量を測定した。
1.0μm以下なら実用可能である。
【0052】
◎:減耗0.5μm未満
○:膜厚の0.5〜1未満
×:膜厚の1μm以上
(電気特性の測定)
30℃、80%RH環境にてドラム100000回転相当実写した後の残留電位の変化を測定した。実写後の変化が100V未満であれば実用可能である。
【0053】
◎:初期との偏差が〜+50V未満
○:+50〜+75V未満
△:+75〜+100V未満
×:〜+100V以上
(画像流れの評価)
30℃、85%RH環境下にてドラム20000回転相当実写し、実写終了12時間後の画像を目視評価した。
【0054】
◎:画像流れが全く認められない
○:画像流れがほとんど認められない
△:画像流れがややあるが許容範囲のレベルである
×:画像流れが多く、使用に耐えないレベルである。
【0055】
(成膜性の評価)
保護層の塗布、硬化、熱乾燥を終えた後のドラム表面の光沢を目視評価した。
【0056】
○:表面が滑らかで、欠陥がない
△:表面が滑らかであるが、やや欠陥がある
×:表面がザラついており、使用に耐えないレベルである。
【0057】
(ゴミ付着の測定)
それぞれにおいてn=100の試作を行い、ドラムの画像領域内において、φ0.1未満の大きさのゴミが2個未満、もしくは、φ0.1以上の大きいゴミがないドラムが90本以上であれば問題ないレベル。
【0058】
◎:収率95%以上でOKレベルである
○:収率90%以上でOKレベルである
×:収率90%未満でNGレベルである。
【0059】
得られた結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
本発明の製造方法で作製した電子写真感光体は、転写性、CL性、電気特性、画像流れ、成膜性、ゴミ付着に優れていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の電子写真感光体の製造装置の斜視図である。
【図2】従来の電子写真感光体の塗布装置の斜視図である。
【図3】従来の光硬化部の斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 アルミドラム
2 塗布槽
3 光硬化部
4 円形スライドホッパー
5 保持チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層及び保護層から選ばれる少なくとも1層の塗布層を形成する電子写真感光体の製造装置において、該導電性支持体を移動しながら該塗布層を形成する塗布装置と、該導電性支持体の移動方向下流側に設置された該導電性支持体の移動方向の同軸上にある該導電性支持体の表面に塗布された塗布層を硬化させる露光装置を有することを特徴とする電子写真感光体の製造装置。
【請求項2】
前記塗布装置が塗布槽若しくは円形スライドホッパーであることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子写真感光体の製造装置により製造することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−83130(P2008−83130A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260204(P2006−260204)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】