説明

電子写真感光体及びその製造方法、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置

【課題】繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体1と、前記導電性支持体の表面上に配置され、イソシアネート基を有する化合物を含む下引層2と、前記下引層上に配置された感光層3と、を有する電子写真感光体7。望ましくは、下引層が、導電性酸化物粒子を含み、さらに電子受容性化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及びその製造方法、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式は高速でかつ高印字の品質が得られることから、複写機およびレーザービームプリンター等の電子写真装置(画像形成装置)において利用されている。
画像形成装置において用いられる電子写真感光体としては、有機の光導電性材料を用いた有機電子写真感光体が主流となっている。有機の光導電性材料を用いた電子写真感光体を製造する場合、アルミニウム等の導電性支持体の上に下引層をまず形成した後、電荷発生層及び電荷輸送層からなる感光層を形成する場合が多い。下引層は、支持体の欠陥を隠蔽し、かつ電気特性上の安定を得るために、重要な役割を果たす。
【0003】
特に、近年は環境問題への意識の高まりから、長寿命の電子写真感光体の開発への期待が高まり、繰り返し使用時における電気特性や画質の安定性の向上が求められている。繰り返し安定性は、電荷発生層や電荷輸送層のみならず下引層にも依存する部分が多いことから、繰り返し使用による電荷蓄積の少ない下引層の検討がなされている。
【0004】
例えば、下引層から感光層へのブロッキング(電荷注入抑制)性を向上させる手段として、アミノ基を含有するシランカップリング剤を用いて正孔ブロッキング性を向上させる手段などが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、下引層に電子受容性物質や電子輸送性物質などの添加剤を含有させる手法が提案されている(例えば、特許文献3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08―166679号公報
【特許文献2】特開平11―133649号公報
【特許文献3】特開平07−175249号公報
【特許文献4】特開平08−44097号公報
【特許文献5】特開平09−197701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体と、前記導電性支持体の表面上に配置され、結着樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含む下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を有する電子写真感光体。
請求項2の発明は、前記下引層が、導電性酸化物粒子を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
請求項3の発明は、前記下引層が、電子受容性化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
請求項5の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた画像形成装置。
請求項6の発明は、少なくとも表面がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている導電性支持体の表面を温水と接触させて該導電性支持体の表面に水酸化アルミニウムを形成する工程と、前記水酸化アルミニウムが形成された前記導電性支持体の表面上に結着樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含む下引層を形成する工程と、前記下引層上に感光層を形成する工程と、を有する電子写真感光体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体とイソシアネート基を有する化合物を含む下引層のいずれか1つでも有さない場合に比べ、繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項2の発明によれば、下引層が、導電性酸化物粒子を含まない場合に比べ繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項3の発明によれば、下引層が、電子受容性化合物を含まない場合に比べ、繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項4の発明によれば、電子写真感光体が、表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体とイソシアネート基を有する化合物を含む下引層のいずれか1つでも有さない場合に比べ、繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
請求項5の発明によれば、電子写真感光体が、表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体とイソシアネート基を有する化合物を含む下引層のいずれか1つでも有さない場合に比べ、繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される画像形成装置が提供される。
請求項6の発明によれば、表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体とイソシアネート基を有する化合物を含む下引層のいずれか1つでも有さない場合に比べ、繰り返し使用しても画像の濃度ムラの発生が抑制される電子写真感光体が簡便に製造される電子写真感光体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の電子写真感光体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】本実施形態の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
【図4】本実施形態の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
【図5】本実施形態の電子写真カートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
アルミニウム製の支持体(基材)を用いた電子写真感光体を備えた画像形成装置では、初期的には安定した電子写真特性を示すが、繰り返し使用において十分な特性が得られない場合が多々ある。その原因のひとつは、電子写真感光体の支持体(基材)の変質によるものである。基材が繰り返し使用される間、電場がかかることで表面が酸化されるような状態となり、下引層や感光層中の材料成分の影響を受けて基材の変質が起こると考えられる。
【0011】
本発明者等は、導電性支持体の表面の変質を防ぐ手段について鋭意検討を行った結果、支持体を構成するアルミニウムの表面処理と下引層との組み合わせにおいて、特にアルミニウム表面の変質を抑制し、電子写真感光体の繰り返し安定性が向上することを見出した。具体的には、導電性支持体であるアルミニウム製の支持体の表面を温水で処理し、支持体の表面に水酸化アルミニウムを形成させ、その上にイソシアネート基を含む材料を含有する下引層を設けることで支持体の表面の変質が軽減し、繰り返し安定性が向上すること、具体的には、画像形成を繰り返しても、画像の濃度ムラの発生が抑制されることを見出した。
支持体の表面に水酸化アルミニウムを形成することで耐食性が向上し、さらにイソシアネート化合物を下引層に含有させることで、水酸化アルミニウムとの反応、親和力が働いて保護層を形成し、耐食性が著しく向上すると推測される。
【0012】
さらに、望ましくは、下引層中に導電性酸化物粒子が存在することで、正孔導電性が安定すること、下引層中の正孔トラップが減少し、支持体の表面に過度な電場がかかることが抑制され、支持体表面の変質を防ぐ効果があると推測される。
また、電子受容性化合物についても、下引層中および感光層−下引層界面の電子が残留しにくくなることから、支持体の表面に過度な電場がかかることがなくなる効果から、一層、アルミニウム支持体の表面の変質を抑制する効果があると推測される。
【0013】
以下、本実施形態の電子写真感光体について詳細に説明する。なお、下記の図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0014】
<電子写真感光体>
本実施形態の電子写真感光体は、表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体と、
前記導電性支持体の表面上に配置され、結着樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含む下引層と、前記下引層上に配置された感光層と、を有する。
なお、本実施形態において、導電性とは、体積抵抗率で1010Ωcm以下の範囲を意味し、絶縁性とは、体積抵抗率で1012Ωcm以上の範囲を意味する。
【0015】
図1は本実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す概略断面図である。電子写真感光体7は、導電性支持体1上に下引層2、中間層4、感光層3及び保護層5が順次積層された構造を有している。図1に示す電子写真感光体7は機能分離型の感光体であり、感光層3は電荷発生層31と電荷輸送層32とから構成されている。なお、本実施形態に係る電子写真感光体において中間層及び保護層は必要に応じて設けられ、また、電荷発生層と電荷輸送層とが一体的に形成された感光層を有する機能一体型の感光体であってもよい。
【0016】
(導電性支持体)
導電性支持体1としては、表面に水酸化アルミニウムを有していればよく、基材としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が望ましく使用される。また、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等のアルミニウム以外の金属ドラム、シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上に蒸着等によってアルミニウム層を設けたものでもよい。なお、導電性支持体1の形状はドラム状に限られず、例えば、シート状、プレート状としてもよい。
【0017】
本実施形態に係る導電性支持体1は、表面に水酸化アルミニウムを有する必要がある。支持体1の表面に水酸化アルミニウムを形成する方法としては、表面がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている導電性支持体の表面に温水を接触させて該導電性支持体の表面に水酸化アルミニウムを形成する方法が挙げられ、具体的には、温水中に浸漬させる方法が望ましい。温水の温度は70℃以上が望ましく、80℃以上が望ましい。70℃以上の温水であれば、表面に水酸化アルミニウムが確実に形成される。水質に関しては特に規定はない。
【0018】
導電性支持体を温水中に浸漬させる時間としては、温水の温度にもよるが、水酸化アルミニウムを確実に形成させるとともに生産性の観点から、例えば、3分以上1時間以下であり、5分以上30分以下がより望ましい。
導電性支持体1の表面に水酸化アルミニウムが形成されると、支持体1の表面が若干黒化することでわかる。
【0019】
(下引層)
導電性支持体1の表面上には下引層2が形成されている。本実施形態においては、下引層2はイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)と結着樹脂を含んで構成される。
下引層2を形成する方法としては、イソシアネート化合物と結着樹脂を含む下引層形成用塗布液を、表面に水酸化アルミニウムを形成した導電性支持体1の表面に塗布した後、硬化させる方法が挙げられる。
【0020】
−イソシアネート化合物−
イソシアネート化合物は、反応性が高いので、ブロック剤のような材料で保護されたものでも構わない。具体的には、ブロック化イソシアネートが挙げられる。
市販品としては、スミジュール3173(住友バイエルンウレタン社製)、スミジュールBL3175(住友バイエルウレタン社製)、デュラネートMF−B60X(旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0021】
本実施形態における下引層2中のイソシアネート化合物の含有量(一部分子状として存在するものも含む)は、0.1質量%以上50質量%以下の範囲であることが望ましく、1質量%以上30質量%以下の範囲であることがより望ましい。
下引層2におけるイソシアネート化合物の含有量が0.1質量%以上であれば、支持体1の表面の変質に対して十分な効果が得られ、50質量%以下であれば、電気特性は安定である。
【0022】
−結着樹脂−
下引層2に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のものが使用される。例えば、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。
【0023】
−導電性酸化物粒子−
下引層2は、導電性酸化物粒子を含むことが望ましく、特に金属酸化物粒子を含むことが望ましい。下引層2中に含有させる金属酸化物粒子は、望ましくは10質量%以上80質量%以下の範囲で用いられる。さらに望ましくは金属酸化物粒子は30質量%以上60質量%以下の範囲で用いられる。下引層2における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上であれば、下引層2内の電荷移動が十分に行われ、残留電荷が蓄積し難くなり、支持体1の表面に電場がかかって支持体1の表面の変質の原因となることが抑制される。また、下引層2における金属酸化物粒子の含有量が80質量%以下であれば、金属酸化物粒子同士の凝集が引き起こし難く、下引層形成時に下引層内で金属酸化物の良好な導電路が形成され、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化が抑制され、黒点などの画質欠陥を引き起こし難い。
【0024】
本実施形態に用いられる金属酸化物粒子としては、体積抵抗率が10Ω・cm以上1011Ω・cm以下の範囲の粉体が望ましく用いられる。その理由は、下引層2がリーク耐性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要であるためである。なお、金属酸化物粒子の体積抵抗率が10Ωcmより低いと十分なリーク耐性が得られず、1011Ωcmよりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
【0025】
中でも前記体積抵抗率を有する酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を用いるのが望ましい。特に酸化亜鉛が望ましく用いられる。
金属酸化物粒子としては、表面処理の異なるものあるいは粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
また、金属酸化物粒子としては、比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m/g以上であれば、帯電性の低下を招き難く、良好な電子写真特性が得られ易い。
金属酸化物粒子の体積平均粒径は50nm以上200nm以下の範囲であることが望ましい。
【0026】
本実施形態における金属酸化物粒子には表面処理を施してもよい。表面処理剤としてはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材など、所望の特性が得られるものであれば公知の材料から選択される。特にシランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
【0027】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いられるが、具体的例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いられるシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でも使用されるが、乾式法あるいは湿式法が用いられる。
乾式法にて表面処理を施す場合には、金属酸化物粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒まに溶解させたシランカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的にかたまってしまい均一な処理がされにくい。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けが行われる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
【0030】
湿式法としては、金属酸化物粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤を除去することで均一に処理される。溶剤は、ろ過あるいは蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けが行われる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物粒子に含まれる水分を除去してもよく、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0031】
下引層2中の金属酸化物粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定される。
【0032】
下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子と結着樹脂との比率は、所望する電子写真感光体特性が得られる範囲で任意に設定される。
【0033】
−電子受容性化合物−
本実施形態における下引層2は、金属酸化物粒子のほか、電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが望ましい。電子受容性化合物を含有することで下引層2中の電子移動がより安定に行われる。
下引層2に含ませる電子受容性化合物は、金属酸化物粒子と反応する基を有することが望ましく、特に水酸基を有するアントラキノン構造を含む化合物が望ましく用いられる。該水酸基を有するアントラキノン構造を含む化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などがあげられ、いずれも望ましく用いられる。さらに具体的にはアリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン、1−ヒドロキシアントラキノン、2−アミノ−3−ヒドロキシアントラキノン、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン、1,2-ジヒドロキシ-4-エトキシ-アントラキノン、1,2-ジヒドロキシ-4-オクトキシ-アントラキノンなどが特に望ましく用いられる。
【0034】
下引層中の電子受容性化合物の含有量(一部分子状として存在するものも含む)は、0.004質量%以上16質量%以下の範囲であることが望ましく、0.02質量%以上8質量%以下の範囲であることがより望ましい。
電子受容性化合物の含有量が0.004質量%に満たないと、電子受容性化合物を固形分として下引層中に分散させたとしても、下引層表面の露出量が十分でなく感光層からの電荷移動がスムーズに行われない場合がある。一方、16質量%を超えると、固形分の分散状態が不均一となり黒点発生の原因となる場合がある。
【0035】
また、下引層中に金属酸化物粒子を含有させる場合には、電子受容性化合物は望ましくは金属酸化物粒子100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下、さらに望ましくは金属酸化物粒子100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下の範囲で用いられる。0.01質量部以上であれば、下引層内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なアクセプター性が付与され、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招き難い。また、20質量部以下であれば金属酸化物粒子同士の凝集を引き起こし難く、下引層形成時に下引層内で金属酸化物が良好な導電路を形成し、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招き難くなるほか、黒点などの画質欠陥も引き起こし難くなる。
【0036】
下引層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために、種々の添加物が用いてもよい。
上記添加物としては、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
【0037】
シランカップリング剤は金属酸化物粒子の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに下引層形成用塗布液に添加して用いてもよい。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
【0038】
また、前記ジルコニウムキレート化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0039】
前記チタニウムキレート化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0040】
前記アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いられる。
【0041】
下引層形成用塗布液を調製するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
【0042】
また、これらの溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いられる。混合する際、混合溶剤として結着樹脂を溶かす溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0043】
なお上記溶剤の選択にあたっては、前述の電子受容性化合物を添加する場合、下引層中に固形物として分散された状態で残すために、電子受容性化合物の溶解性の悪い溶剤(貧溶剤)を用いることが望ましい。電子受容性化合物は一般に極性が強いことから、非極性溶媒において溶解性が悪い場合が多い。非極性溶媒としては、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤が望ましく用いられる。また、前記2種以上の溶剤を混合して用いる場合にも、上記非極性溶媒が主となるように配合することが望ましい。
【0044】
本実施形態における下引層形成用塗布液の調製は、上記電子受容性化合物の固形物化に最適な溶剤を選択し、これに前記最適量の電子受容性化合物、結着樹脂、さらに望ましい態様として金属酸化物粒子を混合する。この場合、先に結着樹脂を溶剤に溶解した後、電子受容性化合物、金属酸化物粒子を加えてもよい。
【0045】
これらを混合後、アクセプター性化合物等を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどによる公知の方法が用いられる。
本実施形態においては、電子受容性化合物の固形物を下引層中に均一に分散させることが望ましく、その観点からは予め定めた以上のせん断力で予め定めた時間以上分散させることが望ましい。
【0046】
上記分散条件としては、例えば直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルによる分散では(充填率:70体積%以上95体積%以下)、0.1時間以上100時間以下で分散させることが望ましい。
【0047】
さらに、下引層2を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0048】
なお、前記金属酸化物粒子と電子受容性化合物とを反応させる場合には、前記分散工程中で金属酸化物粒子と該金属酸化物粒子と反応する電子受容性化合物が反応しても、塗布膜乾燥・硬化中に反応しても良いが、分散液中で反応する方が均一に反応するため望ましい。
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、表面に水酸化アルミニウムを形成した導電性支持体上に下引層2が成膜される。
【0049】
成膜された下引層2は、ビッカース強度が35以上であることが望ましい。
また、下引層2の体積抵抗率は10Ωcm以上1013Ωcm以下の範囲であることが望ましく、10Ωcm以上1012Ωcm以下の範囲であることがより望ましい。体積抵抗率が10Ωcm未満では、帯電電位が十分のらなかったりリークが発生したりすることがある。また、1013Ωcmを超えると繰り返し使用で安定した電位特性が得られない場合がある。
【0050】
下引層2の厚さは、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定してもよいが、厚さが15μm以上であることが望ましく、さらに15μm以上50μm以下であることが望ましい。下引層2の厚さが15μm以上であれば、充分な耐リーク性能が得られ、また50μm以下であれば長期使用時に残留電位が残り難くなるため画像濃度異常が効果的に抑制される。
【0051】
また、下引層2の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)以上1/2λ以下に調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等が用いられる。
また、表面粗さ調整のために下引層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0052】
(中間層)
本実施形態の電子写真感光体では、下引層2と感光層3との間に、電気特性向上、画質向上、画質維持性向上、感光層との接着性の向上などのためにさらに中間層4を設けてもよい。
中間層4には、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが用いられる。これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いられる。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
【0053】
シリコン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ))シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
【0054】
これらの中でも特に望ましく用いられるシリコン化合物は、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−リシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0055】
有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0056】
有機チタン化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0057】
有機アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0058】
中間層4は、上層の塗布性改善の他に電気的なブロキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こす。したがって、中間層4を形成する場合には、0.1μm以上5μm以下の膜厚範囲に設定される。
【0059】
(感光層)
次に、下引層上に形成される感光層3について説明する。本実施形態に係る電子写真感光体は、電荷発生層31と電荷輸送層32により感光層3が構成されている。
【0060】
−電荷発生層−
感光層3を構成する電荷発生層31は、電荷発生物質を用いて真空蒸着により形成するか、電荷発生物質を含む分散液の塗布により形成される。分散液の塗布により電荷発生層31を形成する場合、例えば、有機溶剤に、電荷発生物質を、結着樹脂、添加剤等とともに分散し、得られた分散液を塗布することにより電荷発生層31が形成される。
【0061】
本実施形態において、電荷発生材料としては、公知の電荷発生物質が使用される。
赤外光用ではフタロシアニン顔料、スクアリリウム、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ系顔料、ペリレン、ジチオケトピロロピロール、可視光用としては縮合多環顔料、ビスアゾ顔料、ペリレン、トリゴナルセレン、色素増感した酸化亜鉛粒子等を用いる。これらの中で、特に優れた性能が得られ、望ましく使用される電荷発生物質として、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料が用いられる。これを用いることにより、特に高感度で、繰り返し安定性の優れる電子写真感光体7が得られる。
【0062】
また、フタロシアニン顔料やアゾ系顔料は一般に数種の結晶型を有しており、目的にあった電子写真特性が得られる結晶型であるならば、これらのいずれの結晶型も用いられる。特に望ましく用いられる電荷発生物質としては、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロススフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、オキシチタニルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン等が挙げられる。
【0063】
フタロシアニン顔料結晶は、公知の方法で製造されるフタロシアニン顔料を、自動乳鉢、遊星ミル、振動ミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー等で機械的に乾式粉砕するか、乾式粉砕後、溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うことによって製造される。
【0064】
上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、さらには数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系があげられる。
【0065】
使用される溶剤は、例えば、顔料結晶1質量部に対して、1質量部以上200質量部以下、望ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲で用いる。処理温度は、−20℃以上溶剤の沸点以下、望ましくは−10℃以上60℃以下の範囲とすることが望ましい。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いてもよい。磨砕助剤は顔料に対し0.5倍以上20倍以下、望ましくは1倍以上10倍以下で用いればよい。
【0066】
また、公知の方法で製造されるフタロシアニン系顔料結晶は、アシッドペースティングあるいはアシッドペースティングと前述したような乾式粉砕あるいは湿式粉砕を組み合わせることにより、結晶制御してもよい。アシッドペースティングに用いる酸としては、硫酸が望ましく、濃度70%以上100%以下、望ましくは95%以上100%以下のものが使用され、溶解温度は、−20℃以上100℃以下、望ましくは−10℃以上60℃以下の範囲に設定される。硫酸の量は、フタロシアニン顔料結晶の重量に対して、1倍以上100倍以下、望ましくは3倍以上50倍以下の範囲に設定される。析出させる溶剤としては、水あるいは、水と有機溶剤の混合溶剤が任意の量で用いられる。析出させる温度については特に制限はないが、発熱を防ぐために、氷等で冷却することが望ましい。
【0067】
電荷発生層31に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択される。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。これらの中では、特にポリビニルアセタール樹脂が望ましく用いられる
【0068】
電荷発生層形成用塗布液において、電荷発生物質と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1ないし1:10の範囲が望ましい。
塗布液を調製するための溶媒としては、公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
【0069】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いられる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤として結着樹脂を溶かす溶剤であればいかなるものでも使用してもよい。
分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等を使用した方法が用いらる。この分散の際には、電荷発生材料粒子を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることは、高感度・高安定性に対して有効である。
【0070】
さらに電荷発生材料には、電気特性の安定性向上、画質欠陥防止などのために表面処理を施してもよい。表面処理剤としてはシランカップリング剤、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物などが用いられるがこれに限定されるものではない。これらの具体例としては、前記下引層形成用塗布液の添加剤や中間層4に用いる有機金属化合物が同様に用いられる。
【0071】
さらに、この電荷発生層用塗布液には、電気特性向上、画質向上などのために種々の添加剤を添加してもよい。添加剤の具体例としては、前記下引層形成用塗布液に用いた添加剤が同様に用いられる。
【0072】
電荷発生層31を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0073】
−電荷輸送層−
上記電荷発生層上に形成される電荷輸送層32に含有される電荷輸送物質としては、公知のものならいかなるものでも使用されるが、下記のものが例示される。
すなわち、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体等の正孔輸送物質、
【0074】
クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送物質、あるいは以上に示した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等が挙げられる。
【0075】
電荷輸送層32の結着樹脂としては、公知のものであればいかなるものでも使用されるが、電気絶縁性のフィルムを形成する樹脂が望ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリアクリルアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いてもよい。
【0076】
これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いてもよいが、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れ望ましく用いられる。結着樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)はいずれの場合も任意に設定されるが、電気特性低下、膜強度低下に注意しなくてはならない。
【0077】
また、高分子電荷輸送材を単独で用いてもよい。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに望ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用されるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
なお、電荷輸送物質と前記結着樹脂との配合比(電荷輸送物質:結着樹脂、質量比)は、10:1ないし1:5の範囲が望ましい。
【0078】
また、電荷輸送層32は、電荷輸送層32が電子写真感光体7の表面層(感光層の導電性支持体1から最も遠い側に配置される層)である場合、潤滑性を付与させ、表面層を磨耗しにくくしたり、傷がつきにくくするため、また感光体の表面に付着した現像剤のクリーニング性を高めるために、潤滑性粒子(例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子)を含有することが望ましい。これらの潤滑性粒子は、2種以上を混合して用いてもよい。特に、フッ素系樹脂粒子は望ましく用いられる。
【0079】
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が望ましい。
前記フッ素系樹脂粒子の一次粒径は0.05μm以上1μm以下の範囲が良く、更に望ましくは0.1μm以上0.5μm以下の範囲である。一次粒径が0.05μmを下回ると分散時あるいは分散後の凝集が進みやすくなる。また、1μmを上回ると画質欠陥が発生し易くなる。
【0080】
電荷輸送層32におけるフッ素系樹脂粒子の含有量は、電荷輸送層32全量に対し、0.1質量%以上40質量%以下の範囲が適当であり、特に1質量%以上30質量%以下の範囲が望ましい。上記含量が0.1質量%以上であればフッ素系樹脂粒子の分散による改質効果が十分得られ、一方、40質量%以下であれば、光通過性の低下が抑制され、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が抑制される。
【0081】
電荷輸送層32は、電荷輸送物質及び結着樹脂、並びにその他の材料を適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を塗布して乾燥することによって形成してもよい。
電荷輸送層32の形成に使用される溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0082】
また、電荷輸送層形成用塗布液には塗膜の平滑性向上のためのシリコーンオイル等のレベリング剤を微量添加してもよい。
電荷輸送層32中に前記フッ素系樹脂粒子を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機、貫通式メディアレス分散機等の方法が用いられる。
【0083】
電荷輸送層32を形成する塗布液の分散例としては、溶媒に溶解した結着樹脂、電荷輸送材料などの溶液中にフッ素系樹脂粒子を分散する方法が挙げられる。
電荷輸送層32を形成する塗布液を製造する工程では、塗布液の温度を0℃以上50℃以下の範囲に制御することが望ましい。塗布液製造工程での塗布液の温度を0℃以上50℃以下に制御する方法として、水で冷やす、風で冷やす、冷媒で冷やす、製造工程の室温を調節する、温水で暖める、熱風で温める、ヒーターで暖める、発熱しにくい材料で塗布液製造設備を作る、放熱しやすい材料で塗布液製造設備を作る、蓄熱しやすい材料で塗布液製造設備を作るなどの方法が利用される。
【0084】
分散液の分散安定性を向上させるため、及び塗膜形成時の凝集を防止するために分散助剤を少量添加することも有効である。分散助剤として、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。また、フッ素系樹脂と前記分散助剤を少量の分散溶剤中であらかじめ分散、攪拌、混合した後、電荷輸送材料と結着樹脂と分散溶剤とを混合溶解した液と攪拌、混合した後に前記方法により分散することも有効な手段である。
【0085】
電荷輸送層32を設けるときに用いられる塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、スプレー塗布法、ロールコータ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビアコータ塗布法、ビード塗布法、カーテン塗布法、ブレード塗布法、エアーナイフ塗布法等が用いられる。
電荷輸送層32の膜厚は、5μm以上50μm以下の範囲が望ましく、10μm以上45μm以下の範囲がより望ましい。
【0086】
さらに、本実施形態の電子写真感光体7には、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による電子写真感光体7の劣化を防止する目的で、感光層3中に酸化防止剤・光安定剤などの添加剤を添加してもよい。
例えば酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0087】
酸化防止剤の具体的な化合物例としては、フェノール系酸化防止剤では2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニル−アクリレート、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート]−メタン、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−[5,5]−ウンデカン等が挙げられる。
【0088】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイミル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,3,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
【0089】
有機イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0090】
有機燐系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルフォスフィート、トリフェニル フォスフィート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−フォスフィート等が挙げられる。
有機硫黄系および有機燐系酸化防止剤は2次酸化防止剤と言われフェノール系あるいはアミン系などの1次酸化防止剤と併用することにより相乗効果が得られる。
【0091】
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ジチオカルバメート系、テトラメチルピペリジン系などの誘導体が挙げられる。
前記ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0092】
前記ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラ−ヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
その他の化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ニッケルジブチル−ジチオカルバメート等がある。
【0093】
また感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として少なくとも1種の電子受容性物質を含有してもよい。
電子受容性物質としては、例えば無水琥珀酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げられる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系や、Cl、CN、NO等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に望ましい。
【0094】
(保護層)
保護層5は、積層構造からなる電子写真感光体7では帯電時の電荷輸送層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度を向上させ、表面層の磨耗、傷などへの耐性をさらに改善したりするために必要に応じて設けられる。
保護層5の形態としては、硬化性樹脂や電荷輸送性化合物を含む樹脂硬化膜、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された膜等があるが、電荷輸送性化合物を含有するものがより望ましく用いられる。
硬化性樹脂としては公知の樹脂が使用されるが、特に強度、電気特性、画質維持性などの観点から、架橋構造を有するものが望ましく、例えばフェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン系樹脂等が挙げられる。
【0095】
さらに架橋反応する他の化合物を併用しても良い。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコン系ハードコート剤を用いてもよい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0096】
市販のハードコート剤としては、KP−85、CR−39、X−12−2208、X−40−9740、X−41−1007、KNS−5300、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、およびAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)、などが挙げられる。
【0097】
また、保護層5には、表面潤滑性を付与する目的でフッ素原子含有化合物を添加してもよい。表面潤滑性を向上させることによりクリーニング部材との摩擦係数が低下し、耐摩耗性が向上する。また、電子写真感光体表面に対する放電生成物、現像剤および紙粉などの付着を防止する効果も有し、電子写真感光体7の寿命向上に役立つ。
前記フッ素含有化合物の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素原子含有ポリマーをそのまま添加するか、あるいはそれらポリマーの粒子を添加してもよい。
【0098】
また、フッ素含有化合物としては、アルコキシシランと反応するものを添加し、架橋膜の一部として構成するのが望ましい。
そのようなフッ素原子含有化合物の具体例として、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、などが挙げられる。
【0099】
前記フッ素含有化合物の添加量としては、20質量%以下とすることが望ましい。これを越えると、架橋硬化膜の成膜性に問題が生じる場合がある。
前記保護層5は十分な耐酸化性を有しているが、さらに強い耐酸化性を付与する目的で、酸化防止剤を添加してもよい。
【0100】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、等の公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては15質量%以下が望ましく、10質量%以下がさらに望ましい。
【0101】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、等が挙げられる。
【0102】
前記保護層5には、公知の塗膜形成に用いられるその他の添加剤を添加してもよく、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、界面活性剤、等公知のものが用いられる。
前記保護層5を形成するためには、前述の各種材料、および各種添加剤の混合物を感光層の上に塗布し、加熱処理する。これにより、3次元的に架橋硬化反応を起こし、強固な硬化膜を形成する。加熱処理の温度は、下層である感光層に影響しなければ特に制限はないが、室温(15℃)以上200℃以下、特に100℃以上160℃以下に設定するのが望ましい。
【0103】
前記保護層5の形成において、架橋硬化反応を行う際には無触媒で行なってもよいが、適切な触媒を用いてもよい。触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン等の塩基、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、オクエ酸第一錫等の有機錫化合物、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン化合物、有機カルボン酸の鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0104】
保護層5の形成には、塗布を容易にするため、必要に応じて溶剤が添加される。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル、等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。
【0105】
前記保護層5の形成において、塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
前記保護層の膜厚は0.5μm以上20μm以下の範囲、特に2μm以上10μm以下の範囲であることが望ましい。
【0106】
電子写真感光体7においては、高解像度を得るための電荷発生層31より上層の機能層の膜厚は50μm以下が望ましく、40μm以下がより望ましい。
【0107】
本実施形態に係る電子写真感光体7は、上記構成に限定されるものではない。例えば、電子写真感光体7において、中間層4及び/又は保護層5が存在しない構成のものでもよい。すなわち、導電性支持体1上に下引層2、及び感光層3が形成された構成のもの、導電性支持体1上に下引層2、中間層4、及び感光層3が順次形成された構成のもの、導電性支持体1上に下引層2、感光層3及び保護層5が順次形成された構成のものでもよい。
【0108】
また、電荷発生層31と電荷輸送層32とは、その積層順序が逆であってもよい。また、感光層3が単層構造であってもよい。その場合、感光層上に保護層を備えるものであってもよく、下引層2と保護層5を共に有するものであってもよい。さらに、下引層2上には、上述したように中間層4を設けてもよい。
【0109】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、上記の電子写真感光体7と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えている。
【0110】
図2は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略図である。図2に示す画像形成装置100は、周方向に回転するように設けられた本実施形態のドラム状(円筒状)の電子写真感光体7を備えている。電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の外周面の移動方向に沿って、帯電装置(帯電手段)8、露光装置(静電潜像形成手段)10、現像装置(現像手段)11、転写装置(転写手段)12、クリーニング装置(清掃手段)13及び除電器(除電手段)14がこの順で配置されている。
【0111】
帯電装置8は、コロナ帯電方式の帯電装置であり、電子写真感光体7を帯電させる。帯電装置8としては、コロトロン帯電器やスコロトロン帯電器が挙げられる。この帯電装置8は、電源9に接続されている。
露光装置10は、帯電した電子写真感光体7を露光して電子写真感光体7上に静電潜像を形成する。
【0112】
現像装置11は、電子写真感光体7の表面に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する。現像剤は、重合法により得られる体積平均粒子径が3μm以上9μm以下のトナー粒子を含有することが望ましい。
【0113】
転写装置12は、電子写真感光体7上に現像されたトナー像を記録媒体に転写する。
【0114】
クリーニング装置13は、転写後の電子写真感光体7上に残存するトナーを除去する。クリーニング装置13は、電子写真感光体7に対して線圧10g/cm以上150g/cm以下で接触するブレード部材を有することが望ましい。
【0115】
除電器(イレーズ装置)14は、電子写真感光体7の残存電荷を消去する。
また、画像形成装置100は、転写工程後の記録媒体にトナー像を定着させる定着装置15を備えている。
【0116】
図3は、本実施形態の画像形成装置の他の例を示す概略図である。図3に示す画像形成装置110は、電子写真感光体7を接触方式により帯電させる帯電装置8´を備えていること以外は、図2に示した画像形成装置100と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電装置(帯電手段)を採用する画像形成装置110において、電子写真感光体7は、優れた耐リーク性を有するため、望ましく使用される。なお、除電器14は設けられていなくてもよい。
【0117】
接触帯電方式では、ローラー状、ブレード状、ベルト状、ブラシ状、磁気ブラシ状等の帯電部材が適用される。特に、ローラー状やブレード状の帯電部材については電子写真感光体7に対し、接触状態又はある程度の空隙(100μm以下)を有した非接触状態として配置してもよい。
ローラー状の帯電部材、ブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材は帯電部材として有効な電気抵抗(10Ω以上10Ω以下)に調整された材料から構成される物であり、単層又は複数の層から構成されていても構わない。
【0118】
材質としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、帯電部材として有効な電気抵抗を発現させたものが用いられる。
【0119】
さらに、ナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の任意の手法により、積層して用いられる。
一方、ブラシ状の帯電部材については、従来用いられてきたアクリル、ナイロン、ポリエステル等に導電性を付与させた繊維を予めフッ素含浸処理した後、既存の手法を用いて植毛し、ブラシ状の帯電部材を作製してもよい。また、各種繊維をブラシ状の帯電部材に形成した後に、フッ素含浸処理を行っても構わない。
【0120】
尚、ここで言うブラシ状の帯電部材とは、ローラー状に形成されたもの及び平板上に植毛さられたもの等のいずれでもよく、その形状は特に限定されない。更に、磁気ブラシ状の帯電部材とは磁力を有するフェライト及びマグタイト等を多極磁石を内包するシリンダ外周上に放射状に配置したものであり、予め用いられるフェライト及びマグタイト等をフッ素含浸処理した後に磁気ブラシとすることが望ましい。
【0121】
図4は、本実施形態の画像形成装置の他の例を示す概略図である。画像形成装置200は、タンデム式中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング220内において4つの電子写真感光体201a,201b,201c,201d(例えば、201aがイエロー、201bがマゼンタ、201cがシアン、201dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成する)が中間転写ベルト209に沿って相互に並列に配置されている。
【0122】
ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体201a,201b,201c,201dは、それぞれ電子写真感光体7と同様のものである。
電子写真感光体201a,201b,201c,201dのそれぞれは特定の方向(紙面上は反時計回り)に回転し、その回転方向に沿って帯電ロール202a,202b,202c,202d、現像装置204a,204b,204c,204d、1次転写ロール210a,210b,210c,210d、クリーニング装置215a,215b,215c,215dが配置されている。現像装置204a,204b,204c,204dのそれぞれには、トナーカートリッジ205a,205b,205c,205dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。また、1次転写ロール210a,210b,210c,210dは、それぞれ中間転写ベルト209を介して電子写真感光体201a,201b,201c,201dに当たるように配置されている。
【0123】
ハウジング220内にはレーザー光源203が配置されている。レーザー光源203から出射されたレーザー光は、帯電後の電子写真感光体201a,201b,201c,201dの表面に照射されるようになっている。これにより、電子写真感光体201a,201b,201c,201dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト209上に重ねて転写される。
【0124】
中間転写ベルト209は、駆動ロール206、背面ロール208及び張架ロール207により張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転する。また、2次転写ロール213は、中間転写ベルト209を介して背面ロール208と当たるように配置されている。背面ロール208と2次転写ロール213との間を通った中間転写ベルト209は、例えば駆動ロール206の近傍に配置されたクリーニングブレード216により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0125】
また、ハウジング220にはトレイ(記録媒体トレイ)211が設けられており、トレイ211内の紙等の記録媒体230が移送ロール212により中間転写ベルト209と2次転写ロール213との間、さらには相互に当たる2個の定着ロール214の間に順次移送された後、ハウジング220の外部に排紙される。
【0126】
上述の説明においては、中間転写体(中間転写手段)として中間転写ベルト209を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト209のようにベルト状(例えば、無端ベルト状のもの)であってもよく、ドラム状であってもよい。中間転写体として中間転写ベルト209のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの膜厚は50μm以上500μm以下の範囲が望ましく、60μm以上150μm以下の範囲がより望ましい。なお、ベルトの膜厚は、材料の硬度に応じて適宜選択すればよい。また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが望ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層が形成される。
【0127】
なお、本実施形態でいう記録媒体とは、電子写真感光体状に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。
【0128】
(電子写真用カートリッジ)
次に、本実施形態の電子写真感光体を搭載した電子写真用カートリッジ(プロセスカートリッジ)につい説明する。
【0129】
図5は、本実施形態の電子写真用カートリッジの一例を示す概略図である。このプロセスカートリッジ300は、ケース301内に、電子写真感光体307とともに帯電装置308、現像装置311、クリーニング装置313及び除電器314を取り付けレール303を用いて組み合わせて一体化したものである。プロセスカートリッジ300には、露光装置が設けられていないが、ケース301に露光のための開口部305が形成されている。また、電子写真感光体307は、上述した本実施形態の電子写真感光体であり、導電性支持体上に少なくとも下引層と感光層とを有し、導電性支持体は表面に水酸化アルミニウムを有し、下引層はイソシアネート化合物を含有する。
【0130】
本実施形態に係るプロセスカートリッジ300は、転写装置312と、定着装置315と、図示しない他の構成部分と有する画像形成装置に自在に着脱される。
【実施例】
【0131】
以下、実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0132】
<実施例1>
アルミニウム支持体を、70℃の純水(温水)中に20分間浸漬し、温水から引き出した後に130℃10分間加熱することで、アルミニウム支持体の表面に水酸化アルミニウムを形成した。
酸化亜鉛(体積平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100質量部をテトラヒドロフラン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603、信越化学社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後テトラヒドロフランを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0133】
前記表面処理を施した酸化亜鉛粒子60質量部と、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)10質量部とを、メチルエチルケトン72質量部及びn−ヘキサン18質量部の混合溶剤に溶解し、この溶液57質量部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル(ガラスビーズ充填率:80体積%)にて2時間の分散を行い、分散液を得た。
【0134】
得られた分散液100質量部に、触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):4.0質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム支持体上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ25μmの下引層を得た。
【0135】
次に、下引層上に感光層を形成した。まず、電荷発生物質としてのCuKα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が、少なくとも7.3゜、16.0゜、24.9゜、28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部及びn−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルにて4時間分散した。
【0136】
得られた分散液に、n−酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層用の塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0137】
次に、4フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.2μm)1質量部及びフッ素系グラフトポリマー0.02質量部を、テトラヒドロフラン5質量部及びトルエン2質量部とともに十分攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。
【0138】
次に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部と、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6質量部とを、テトラヒドロフラン23質量部及びトルエン10質量部に混合して溶解した。
これに前記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液8.02質量部を加えて攪拌混合した後、微細な流露を持つ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(ナノマイザー株式会社製、商品名LA−33S)を用いて、400kgf/cmまで昇圧しての分散処理を6回繰り返し、さらに、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2質量部を混合して電荷輸送層形成用塗布液を得た。この塗布液を前記電荷発生層上に塗布して、115℃で40分間乾燥し、膜厚32μmの電荷輸送層を形成して電子写真感光体(1)を得た。
【0139】
このようにして得られた電子写真感光体(1)を、接触帯電装置、中間転写装置を有する富士ゼロックス社製カラープリンターDocu Centre Color C400に搭載し、高温高湿下(28℃、85%RH)及び低温低湿下(15℃、10%RH)にて、それぞれ初期および連続1万枚のプリント後の画像の濃度ムラの発生(サイクル特性)を調べた。
【0140】
(サイクル特性)
以下のような基準により評価した。
◎:残留電位上昇が50V以下で、画像の濃度ムラの発生が見られない
○:残留電位上昇が50V以上100V以下で、画像の濃度ムラの発生は見られない
△:残留電位上昇が50V以上100V以下で、若干画像の濃度ムラの発生も見られる
×:残留電位上昇が100V以上で、画像の濃度ムラが発生
結果を表1にまとめて示した。
【0141】
<実施例2乃至6>
実施例1において、支持体および下引層を表1に示す構成に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。
なお、下引層形成用塗布液の導電性酸化物粒子として、実施例4では酸化スズ(体積平均粒子径:21nm、シーアイ化成社製、比表面積値:45m/g)を、実施例5では酸化チタン(体積平均粒子径:36nm、シーアイ化成社製、比表面積値:45m/g)をそれぞれ用いた。結果を表1に示した。
【0142】
<実施例7>
実施例1において、下引層形成用塗布液のブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)を20質量部に変更し、電子受容性化合物として、アリザリン0.3質量部を添加したこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0143】
<実施例8>
実施例1において、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛粒子を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に下引層形成用塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法にてアルミニウム支持体上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ15μmの下引層を得たこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0144】
<実施例9>
実施例1において、下引層形成用塗布液に用いたスミジュール3173 13.5質量部をスミジュール3175(住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0145】
<実施例10>
実施例7において、電子受容性化合物を、1,2-ジヒドロキシ-4-オクトキシ-アントラキノン 1.5質量部に、スミジュール3173を13.5質量部に変更したこと以外は実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0146】
<比較例1>
実施例1において、下引層を形成する前にアルミニウム支持体を温水に浸漬しなかったこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0147】
<比較例2>
実施例1において、ブロック化イソシアネート(スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に下引層形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて下引層を形成したこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0148】
<比較例3>
実施例1において、下引層を形成する前にアルミニウム支持体を30℃の純水中に20分間浸漬し、水から引き出した後に130℃、10分間加熱した。
次いで、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に特性を評価した。結果を表1に示した。
【0149】
【表1】

【符号の説明】
【0150】
1 導電性支持体、2 下引層、3 感光層、4 中間層、5 保護層、7,201,307 電子写真感光体、8,8’,308 帯電装置、10 露光装置、11,204,311 現像装置、12,312 転写装置、3,215,313 クリーニング装置、14,314 除電器、31 電荷発生層、32 電荷輸送層、100,110,200 画像形成装置、209 中間転写ベルト(中間転写手段)、210 1次転写ロール、213 2次転写ロール、214 定着ロール、300 電子写真用カートリッジ、301 ケース、303 取り付けレール、305 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水酸化アルミニウムを有する導電性支持体と、
前記導電性支持体の表面上に配置され、結着樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含む下引層と、
前記下引層上に配置された感光層と、
を有する電子写真感光体。
【請求項2】
前記下引層が、導電性酸化物粒子を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記下引層が、電子受容性化合物を含む請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項6】
少なくとも表面がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている導電性支持体の表面を温水と接触させて該導電性支持体の表面に水酸化アルミニウムを形成する工程と、
前記水酸化アルミニウムが形成された前記導電性支持体の表面上に結着樹脂及びイソシアネート基を有する化合物を含む下引層を形成する工程と、
前記下引層上に感光層を形成する工程と、
を有する電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−194260(P2012−194260A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56735(P2011−56735)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】