説明

電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置

【課題】中間層を備え、長期の使用によっても画像欠陥の発生しない長寿命でかつ塗布むらのない均一な中間層を備えた良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体と感光層との間に中間層14を備えてなり、該中間層が、少なくとも無機層状ケイ酸塩化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機層状ケイ酸塩化合物(平板状シリケート)を含有する中間層を備える電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
より詳細には、本発明は、スメクタイト、特に合成スメクタイト(平板状シリケート)を含有する中間層を備え、長期の使用によっても画像欠陥の発生しない長寿命でかつ塗布むらのない均一な中間層を備えた良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置(「電子写真装置」ともいう)は、複写機、プリンター、ファクシミリ装置などに多用されている。
電子写真プロセスに用いられる感光体は、導電性支持体上に光導電性材料を含有する感光層が積層されて構成されている。
【0003】
従来から、無機系光導電性材料を主成分とする感光層を備えた感光体(「無機系感光体」ともいう)が広く用いられてきたが、耐熱性、保存安定性、人体および環境に対する毒性、感度、耐久性、画像欠陥の発生、生産性、製造原価などのいずれかの点で欠点を有し、すべての点において満足のできるものが得られていない。
一方、有機系光導電性材料を主成分とする感光層を備えた感光体(「有機系感光体」ともいう)の研究開発が進み、現在では感光体の主流を占めてきている。
【0004】
有機系感光体は、感度、耐久性および環境に対する安定性などに若干の問題を有するが、毒性、製造原価および材料設計の自由度などの点において、無機系感光体に比べて多くの利点を有している。例えば、有機系感光体は、感光層を浸漬塗布法に代表される容易かつ安価な方法で形成することができる。
【0005】
有機系感光体としては、導電性支持体上に電荷発生物質および電荷輸送物質(「電荷移動物質」ともいう)を結着樹脂(「バインダ樹脂」、「結着剤樹脂」ともいう)に分散させた単層型感光層と、導電性支持体上に電荷発生物質を結着樹脂に分散させた電荷発生層と電荷輸送物質を結着樹脂に分散させた電荷輸送層とをこの順で、または逆順で形成した積層型感光層または逆積層型感光層が提案されている。これらの中でも、積層型感光層および逆積層型感光層を有する機能分離型の感光体は、電子写真特性および耐久性に優れ、材料選択の自由度が高く、感光体特性を様々に設計できることから広く実用化されている。
【0006】
有機系感光体の製造において導電性支持体上に直接感光層を塗布形成する場合には、感光層が導電性支持体表面の影響を受け易く、膜厚均一でかつ均質な膜形成が困難であることから、膜厚ムラなどが発生して種々の画像欠陥や濃度ムラの原因となるという問題があった。
【0007】
また、積層構造の感光層を有する有機系感光体では、導電性支持体と電荷発生層とが直接接しているために、帯電によって電界をかけた場合、電荷発生物質の一部で電荷が発生し、電荷発生物質が近くに存在するところで局所的に電位が低下し、反転現像においては白紙、グレー部にかぶりなどが発生するという問題があった。
【0008】
上記のような問題の対策として、導電性支持体と感光層との間に中間層(「下引き層」ともいう)と呼ばれる樹脂層を設けることが有効であることが知られている。
例えば、中間層として、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を塗布、乾燥した層が提案されている(例えば、特開昭52−25638号公報:特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、このような中間層を設けても、通常環境下では良好な電気特性、画像品質が得られるものの、これらアルコール可溶性樹脂は温度、湿度といった環境による抵抗変化が大きいため、環境変化による電位変化が大きく、また画像上、黒点やメモリーの発生、濃度ムラなどの不具合が生じるという問題がある。
【0010】
そこで、中間層として酸化チタンを含有した層が提案されている(例えば、特開昭56−52757号公報:特許文献2参照)。
また、画像特性向上を目的として、中間層塗布液中の酸化チタンの分散性を向上させるために、表面処理した酸化チタンを用いる技術が知られている。
中間層に用いる無機微粒子としては酸化チタンの他に、アルミナ、シリカ等が用いられてきた。
【0011】
また、無機微粒子は形状として粒状が一般的であるが針状や円盤状のものも知られている。その中で粒状ではない無機微粒子として無機層状ケイ酸塩化合物が知られており、塗料や化粧品分野で応用されている。電子写真感光体でもこのような無機層状ケイ酸塩化合物を感光層に添加した電子写真感光体の事例(特許文献3、4)、表面保護層に添加した電子写真感光体の事例(特許文献5)がある。
しかし、これらは電子写真感光体の表面層に用いる場合の事例であり、中間層への適用は未だ検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭52−25638号公報
【特許文献2】特開昭56−52757号公報
【特許文献3】特開平7−152166号公報
【特許文献4】特開平9−54446号公報
【特許文献5】特開2007−64998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように中間層によって導電性支持体からの電荷の注入を抑え局所的な電位の低下による画像欠陥を防止しようとする場合、中間層の膜厚は厚い方がその効果が大きい。
また、導電性支持体は切削加工されるのが通常であるが、コストダウンの観点から無切削の支持体を使用する試みが行われており、この場合の支持体の凹凸の影響を除外し平滑化するため中間層をさらに厚くする必要がある。
【0014】
しかし、浸漬塗布により厚く塗布する場合には液垂れが発生し均一に塗布することが困難である。
これに対して蒸発速度の速い溶剤を用いることが行われていたが、送風の位置により同一感光体でも乾燥速度の違いが生じ、均一な塗布膜が形成できない問題がある。
【0015】
また、均一な塗布膜を実現するための塗布液物性の適正化は従来、樹脂、微粒子、溶媒の3者による微妙な調整で行っており、調整範囲は狭く困難であった。また静置すれば酸化物微粒子の沈降が起き易く、塗布液の保存性、いわゆるポットライフは短かった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、平板状シリケートを中間層に用いることによりこれらの課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0017】
かくして、本発明によれば、導電性支持体と感光層との間に中間層を備えてなり、該中間層が、少なくとも無機層状ケイ酸塩化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、前記無機層状ケイ酸塩化合物が、スメクタイトである前記の電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記無機層状ケイ酸塩化合物が、合成スメクタイトである前記の電子写真感光体が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、前記無機層状ケイ酸塩化合物が、平板状シリケートである前記の電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記無機層状ケイ酸塩化合物が、数平均粒子径0.1μm〜
2μmを有する粉末である前記の電子写真感光体が提供される。
【0020】
また、本発明によれば、前記無機層状ケイ酸塩化合物が、バインダ樹脂に対して50重量%〜200重量%含有されている前記の電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記中間層が、10μm〜20μmの膜厚を有する前記の電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記中間層が、少なくとも2層構造を有する前記の電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、前記電子写真感光体が、無切削支持体により構成されている前記の電子写真感光体が記載される。
【0021】
さらに、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像して可視像化する現像手段と、現像によって可視像化された画像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明で用いられる無機層状ケイ酸塩化合物(平板状シリケート)は、少量でも増粘効果が大きく、塗布液の粘度調整が容易となる。特に、従来困難であった均一な厚い塗布膜の中間層を容易に製造できる。また、粘度調整の容易さから塗布方法の選択幅も広い。また、静置しても沈降しない特徴を有するので、塗布液が長期間安定に使用できる。
本発明による電子写真感光体が有する中間層が含有する無機層状ケイ酸塩化合物(平板状シリケート)は、少量でも増粘効果が大きく、塗布液の粘度調整が容易となるため、該中間層を設けることにより、塗布ムラのない良好な画像特性を実現でき、安価な無切削の素管を材料として感光体を製造する際に、該中間層を導電性支持体に積層することにより、素管の凹凸に起因する塗布ムラもなく良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【0023】
また、本発明によれば、厚みがある中間層を形成できるので、切削加工した導電性支持体を材料として用いずに、無切削の支持体、すなわち安価な素管を導電性支持体として用いても、素管の凹凸に起因する塗布ムラもない均一な塗布膜を実現でき、良好な画像特性を実現できる感光体を提供できる。
また、本発明の感光体の中間層を塗布形成する際の塗布液は、所望の分散状態を長期間保持することができ、長期保存後においても、塗布ムラのない塗布膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の電子写真感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の要部の構成を示す模式断面図である
【図4】本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の電子写真感光体は導電性支持体と感光層との間に中間層を備えてなり、中間層に少なくとも無機層状ケイ酸塩化合物(平板状シリケート)を含有する。
本発明に用いられる無機ケイ酸塩化合物(平板状シリケート)とは、アルカリ、アルカリ土類金属、アルミニウムなどを含有する層状ケイ酸塩を意味し、カオリン鉱物、雲母粘土鉱物およびスメクタイトが挙げられる。
【0026】
カオリン鉱物としては、カオリナイト、デイッカイト、ナクライト、ハロイサイトおよび蛇文石が挙げられる。
雲母粘土鉱物としては、パイロフィライト、タルク、白雲母、膨潤性合成フッ素雲母、セリサイトおよび緑泥石があげられる。
【0027】
スメクタイトとしては、スメクタイト、バーミキュライト、膨潤性合成フッ素バーミキュライトおよびモンモリロン石群鉱物が挙げられる。
【0028】
この中で好ましいものは、スメクタイトである。スメクタイトには、天然のスメクタイトと合成スメクタイトの2種類がある。
天然のスメクタイトの例としては、モンモリロナイトとバイデライトがあり、ベントナイト、酸性白土などとよばれる粘土として得られる。
【0029】
しかし、透明性が優れている点で合成物が最も好ましく用いられ、合成スメクタイトの具体例としては、例えば、コープケミカル(株)製の親水性ルーセンタイト(商品名)SWNおよびSWF、これを親油性に改質したルーセンタイト(商品名)SAN、SENおよびSPNなどを挙げることができる。
これら無機層状ケイ酸塩化合物の数平均粒子径は0.1μm〜2μmを有する粉末が好ましい。
【0030】
本発明の感光体の中間層は、少なくとも平板状シリケートとバインダ樹脂を含有し、必要に応じて、酸化防止剤、導電剤などの添加剤を含有していてもよい。
また、平板状シリケートの効果を妨げない範囲で従来の酸化物微粒子を添加してもよい。
【0031】
中間層に用いられる樹脂としては、例えばフェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂あるいはポリエステルなどが好ましい。これらの樹脂は、単独でも、二種類以上を組み合わせてもよい。これらの樹脂は、支持体に対する接着性が良好であるとともに、酸化物微粒子の分散性を向上させ、かつ成膜後の耐溶剤性が良好である。
上記樹脂のなかでも特にポリアミド樹脂が好ましい。中間層には表面性を高めるために、レベリング剤を添加してもよい。
このような市販のポリアミド樹脂としては、例えば、商品名:ウルトラミッド1c(BASF社製)、商品名:アミランCM8000(東レ製)などが挙げられる。
【0032】
中間層の膜厚は0.5μm〜30μm、好ましくは10μm〜20μmである。
本発明の中間層は導電性支持体の凹凸を平滑化したり、反射光を散乱させる働きと共に導電性支持体からのフリーキャリアが注入を防止している。フリーキャリアが感光層に到達すると感光体の帯電能が低下し、画像特性に大きな影響を及ぼす。中間層の膜厚を大きくするとフリーキャリアの防止効果は向上する一方、抵抗が大きく成りすぎ感度の低下を招く。そこで支持体表面の平滑化のための導電性の高い厚膜の中間層と、フリーキャリアをブロックする高抵抗で薄膜の中間層に機能分離する方法がある。こうしてフリーキャリアの注入を効果的に抑制しつつ支持体表面の平滑化を図ることができる。
【0033】
中間層は、平板状シリケート粒子、バインダー樹脂および必要に応じて添加剤を有機溶剤に溶解または分散させて中間層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥して有機溶剤を除去することにより形成することができる。
【0034】
具体的には、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解させ、得られた溶液に本発明の平板状シリケート粒子を加え、分散させることにより中間層形成用塗布液を調製することができる。
溶液中に酸化チタン粒子を分散させるために、ボールミル、サンドミル、ロールミル、ペイントシェーカ、アトライタ、超音波分散機などを用いて処理してもよい。
【0035】
中間層における平板状シリケートの含有量は、バインダ樹脂100重量部に対して20〜1000重量部であるのが好ましく、50〜500重量部であるのがより好ましく、さらに50〜200重量部であるのが好ましく、50〜100重量部であるのが特に好ましい。
【0036】
中間層における平板状シリケートの含有量が上記の範囲内であれば、平板状シリケートによる塗布液の粘度調整効果と、電気特性とのバランスを良好にすることができる。
【0037】
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、sec−ブタノールなどの低級アルコール類が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂の溶解性と調製された塗布液の塗布性の点でメタノール、エタノールが特に好ましい。
【0038】
中間層形成用塗布液において全溶剤中、上記低級アルコール系溶剤は、30〜100重量%であるのが好ましく、40〜100重量%であるのがより好ましく、50〜100重量%であるのが特に好ましい。
【0039】
また、中間層形成用塗布液の調製において、溶剤蒸発速度調整のために、トルエン、メチレンクロリド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどを助溶剤として併用してもよい。
助溶剤の使用量は、上記の有機溶剤の5〜30重量%程度が適当である。
【0040】
中間層形成用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、ディップコート法、スプレー法、ノズル法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
【0041】
これらの塗布方法の中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
【0042】
以上のことから、本発明の感光体の中間層は、平板状シリケート粒子およびバインダー樹脂を低級アルコールからなる溶剤に溶解または分散させた塗布液を用いた塗布法により形成されてなるのが好ましい。
【0043】
塗膜の乾燥工程における温度は、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃が適当であり、80〜130℃が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがある。また、乾燥温度が140℃を超えると、感光体の繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。
このような感光層の製造における温度条件は、中間層のみならず後述する感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
【0044】
次に、本発明の感光体の構成について具体的に説明する。
図1〜3は、いずれも本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1の感光体10は、導電性支持体15上に、中間層14と電荷発生層12と電荷輸送層11とがこの順で形成されている。
【0045】
図2の感光体20は、導電性支持体25上に、中間層24と第2の中間層23と電荷発生層22と電荷輸送層21がこの順で形成されている。
【0046】
図3の感光体26は、導電性支持体30上に、中間層29と電荷発生層28と電荷輸送層27とがこの順で形成されている。
【0047】
本発明の感光体の感光層は、少なくとも本発明の中間層、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層、図2のように中間層と電荷発生層の間にさらに第2の中間層を設けてもよい。
【0048】
本発明の感光体における中間層以外の構成について説明する。
[導電性支持体15、25、30]
導電性支持体の構成材料は、積層型感光体(感光体)1の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
【0049】
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる支持体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
【0050】
導電性支持体の形状は、図4に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。円筒状の場合には、ポートホール法による引き抜き管などがある。
【0051】
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理を施されていてもよいが、本発明の中間層を厚く塗布すれば表面の凹凸や反射の影響を除くことができるため、処理を施さなくてもよい。
【0052】
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0053】
[電荷発生層12、22、28]
電荷発生層は、半導体レーザ光などの光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質を含有する。
【0054】
電荷発生物質として有効な物質としては、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;オキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
電荷発生物質は、その機能を向上させるために、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料、メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料、カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料、シアニン染料、スチリル染料、ピリリウム塩染料またはチオピリリウム塩染料などの増感染料と組み合わせて用いることができる。
【0056】
増感染料の使用割合は、特に限定されないが、電荷発生物質100重量部に対して、10重量部以下の割合が好ましく、0.5〜2.0重量部の割合が特に好ましい。
【0057】
電荷発生層は、結着性を向上させる目的でバインダ樹脂を含有していてもよい。
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、電荷発生物質との相溶性に優れるものが好ましい。
【0058】
具体的には、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。共重合体樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などが挙げられる。 バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、この分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
バインダ樹脂の使用割合は、特に限定されないが、電荷発生物質1重量部に対して0.5〜2.0重量部程度である。
【0060】
電荷発生層は、必要に応じて、ホール輸送物質、電子輸送物質、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散安定剤、増感剤、レベリング剤、可塑剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などから選ばれる1種または2種以上を適量含んでもよい。
【0061】
電荷発生層は、公知の乾式法および湿式法により形成することができる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質を導電性支持体上に形成された中間の表面に真空蒸着する方法が挙げられる。
【0062】
湿式法としては、例えば、電荷発生物質および必要に応じてバインダ樹脂を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体上に形成された中間層の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去する方法が挙げられる。
【0063】
電荷発生層用塗布液に使用される溶剤としては、例えばジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類;1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
電荷発生物質を溶剤中に溶解または分散させる前に、電荷発生物質は、予め粉砕機によって粉砕処理されていてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などが挙げられる。
【0065】
電荷発生物質を溶剤中に溶解または分散させるために、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどの分散機を用いることができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
その他の工程やその条件は、中間層の形成に準ずる。
【0066】
電荷発生層の膜厚は特に限定されないが、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下するおそれがある。また、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体の感度が低下するおそれがある。
【0067】
[電荷輸送層11、21、27]
電荷輸送層は、電荷発生層で発生した電荷を感光体表面まで輸送する機能を有する。
電荷輸送層は少なくとも電荷輸送物質とバインダ樹脂を含有する。
【0068】
電荷輸送物質としては、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリアセナフチレン等の高分子化合物、または各種ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、アリールアミン誘導体等の低分子化合物が使用できる。
バインダ樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエーテル、フェノキシ樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0069】
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂の中で、画像形成装置の露光光源の光を吸収しない透明な樹脂を使用でき、電荷発生層に含まれるものと同様の樹脂の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0071】
バインダ樹脂の使用割合は、特に限定されないが、電荷輸送物質100重量部に対して
50〜300重量部程度である。
【0072】
電荷輸送層は、必要に応じて、ホール輸送物質、電子輸送物質、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散安定剤、増感剤、レベリング剤、可塑剤、無機化合物もしくは有機化合物の微粒子などから選ばれる1種または2種以上を適量含んでもよい。
【0073】
電荷輸送層は、電荷発生層と同様に、電荷輸送層形成用塗布液を調製し、湿式法、特に浸漬塗布法により形成することができる。
電荷輸送層形成用塗布液の調製に使用する溶剤としては、電荷発生層形成用塗布液の調製に使用するものと同様の溶剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類;n‐ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランを単独で用いるのが特に好ましい。
【0075】
その他の工程やその条件は、中間層および電荷発生層の形成に準ずる。
電荷輸送層の膜厚は特に限定されないが、5〜40μmが好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下し、出力画像のコントラストが低下するおそれがある。また、電荷輸送層の膜厚が40μmを超えると、感光体の生産性が低下するおそれがある。
【0076】
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像して可視像化する現像手段と、現像によって可視像化された画像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えることを特徴とする。
【0077】
図面を用いて本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図4は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
【0078】
図4の画像形成装置(レーザープリンタ)100は、本発明の感光体1と、露光手段(半導体レーザー)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。図番51は転写紙を示す。
【0079】
感光体1は、図示しない画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44の回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電器32、露光手段31、現像器33、転写帯電器34およびクリーナ36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0080】
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、青色半導体レーザーを光源として備え、光源から出力されるレーザービームの光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザービームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0081】
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0082】
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる非接触式の転写手段である。
【0083】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0084】
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
また、符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は画像形成装置の各手段を収容するケーシングを示す。
【0085】
この電子写真装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段32から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
【0086】
露光手段33による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
【0087】
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって電子写真装置100の外部へ排紙される。
【0088】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【実施例】
【0089】
以下に製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの製造例および実施例により本発明が限定されるものではない。
【0090】
実施例1
図1に示される感光体の作製
平板状シリケートである商品名ルーセンタイトSPN(コープケミカル社製)8重量部および市販のポリアミド樹脂(商品名:ウルトラミッド(Ultramid)1c、BASF社製、8重量部を、メチルアルコール84重量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層形成用塗布液(3kg)を調製した。粘度は20mPa・sであった。
【0091】
得られた中間層形成用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体として直径30mm、全長340mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後引き上げ、自然乾燥して膜厚10μmの中間層を形成した。
【0092】
次いで、電荷発生物質としてCuKα 1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニン(パーマケムアジア社製)1重量部およびバインダ樹脂としてブチラール樹脂(商品名:#6000−C、電気化学工業株式会社製)1重量部をメチルエチルケトン98重量部に混合し、ペイントシェーカにて8時間分散処理して電荷発生層形成用塗布液(3kg)を調製した。
なお、本実施例に用いた27.3°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニンは、いわゆるY型チタニルフタロシアニンであり、例えばパーマケムアジア社より購入できる。
【0093】
得られた電荷発生層形成用塗布液を、中間層形成の場合と同様の方法で先に設けた中間層表面に塗布し、自然乾燥して膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として下記構造:
【0094】
【化1】

を有するトリフェニルアミン化合物100重量部、バインダ樹脂としてポリカーボネート樹脂(商品名:PCZ−400、三菱ガス化学株式会社製)150重量部およびシリコンオイル0.02重量部を混合し、テトラヒドロフランを溶剤として固形分25重量%の電荷輸送層形成用塗布液(3kg)を調製した。
【0095】
得られた電荷輸送層形成用塗布液を、中間層形成の場合と同様の方法で先に設けた電荷発生層表面に塗布し、130℃で1時間乾燥して膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
このようにして図1に示す感光体を作製した。
【0096】
実施例2
実施例1と同様にして得られた中間層形成用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体として直径30mm、全長340mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後、引き上げ速度を速めて、自然乾燥して膜厚20μmの中間層を形成したほかは実施例1と同様にして実施例2の電子写真感光体を作製した。
【0097】
実施例3
平板状シリケートとして商品名ルーセンタイトSEN(コープケミカル社製)8重量部を用いたほかは実施例1と同様にして実施例3の電子写真感光体を作製した。
【0098】
実施例4
平板状シリケートである商品名ルーセンタイトSAN(コープケミカル社製)8重量部および市販のポリアミド樹脂(商品名:ウルトラミッド(Ultramid)1c、BASF社製、8重量部を、テトラヒドロフラン42重量部、メチルアルコール42重量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層形成用塗布液(3kg)を調製した。粘度は100mPa・sであった。
【0099】
実施例5
図2に示される感光体の作製
平板状シリケートである商品名ルーセンタイトSPN(コープケミカル社製)8重量部、導電性酸化チタンFT-1000(石原産業社製)8重量部 および市販のポリアミド樹脂(商品名:ウルトラミッド(Ultramid)1c、BASF社製、8重量部を、メチルアルコール76重量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層形成用塗布液(3kg)を調製した。粘度は150mPa・sであった。
【0100】
得られた中間層形成用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体として直径30mm、全長340mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後引き上げ、自然乾燥して膜厚10μmの中間層を形成した。
【0101】
次に、ポリアミド樹脂としてアルコール可溶性共重合ナイロン(商品名:アミランCM8000、東レ株式会社製)8重量部、メチルアルコール92重量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して第2の中間層形成用塗布液(3kg)を調製した。
上記の中間層の上に浸漬塗布して膜厚1μmの図3に示す第2の中間層を形成した。
その後は実施例1と同様にして実施例5の電子写真感光体を作製した。
【0102】
実施例6
中間層の膜厚を1μmとしたほかは実施例1と同様にして実施例6の電子写真感光体を作製した。
【0103】
実施例7
アルミニウム製導電性支持体表面の切削加工をしないまま用いた他は実施例1と同様にして図1に示す電子写真感光体を作製した。
【0104】
比較例1
中間層形成用塗布液の調製において平板状シリケートに替えて酸化チタン粒子としてアルミナ処理の酸化チタン粒子(商品名:TTO−55A、石原産業株式会社製、ルチル型結晶、平均一次粒子径35nm)を用いること以外は実施例1と同様にして、図1に示す電子写真感光体を作製した。中間層形成用塗布液の粘度は11mPa・sであった。
【0105】
比較例2
第2の中間層の膜厚を1μmにした以外は比較例1と同様にして、図3に示す電子写真感光体を作製した。
【0106】
比較例3
アルミニウム製導電性支持体表面の切削加工をしないまま用いた他は比較例2と同様にして図3に示す電子写真感光体を作製した。
【0107】
比較例4
市販の増粘剤として商品名メトローズ65SH4000(信越化学社製)1重量部、導電性酸化チタンFT−1000(石原産業社製)8重量部および市販のポリアミド樹脂(商品名:ウルトラミッド(Ultramid)1c、BASF社製)8重量部を、メチルアルコール83重量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して中間層形成用塗布液(3kg)を調製した。粘度は200mPa・sであった。
このままでは高粘度のために浸漬塗布が困難であるためメチルアルコール42重量部を加え、粘度を20mPa・sに調整した。
【0108】
得られた中間層形成用塗布液を塗布槽に満たし、導電性支持体として直径30mm、全長340mmの切削加工をしないアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後引き上げ、自然乾燥して膜厚10μmの中間層を形成した。
その後は実施例1と同様にして電荷発生層、電荷輸送層を形成して図1に示す電子写真感光体を作製した。
なお、中間層形成用塗布液は作製後2日で酸化チタンが沈降し非常に安定性に乏しいことが判った。
【0109】
以上のようにして作製した実施例1〜7および比較例1〜4の各感光体について電気特性と画像特性を評価した。
また、各感光体の作製において用いた中間層形成用塗布液の塗布性および塗布液安定性を評価した。
【0110】
<膜厚>
渦電流式膜厚計(商品名:フィッシャースコープMMS―3AM,株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)で,感光体の軸線方向に塗布上端から2cm、中央部、下端から2cmを測定した。中央部の膜厚を感光体の膜厚とした。

<塗布性>
上端部、下端部の膜厚から次の判定基準により塗布性を評価した。
G(good):良好 膜厚の差が2μm以下
B(bad):不良 膜厚の差が2μmより大
【0111】
<電気特性>
実施例1〜7および比較例1〜4の各感光体について光減衰特性を測定した。
感光体の帯電手段としてコロナ放電帯電器を備えた市販のデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:AR−450S)に、各感光体をそれぞれ装着した。
【0112】
初期の画像を確認した後、画像形成過程における感光体の表面電位を測定するために、デジタル複写機から現像器を取り外し、代わりに表面電位計(トレック・ジャパン株式会社製、型式:MODEL344)を取り付け、初期の電気特性および電気的耐久性を測定した。
【0113】
このデジタル複写機を用いて、温度25℃、相対湿度50%の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境下において、レーザ光による露光を施さなかった場合の感光体の表面電位を帯電電位V0(−V)として測定し、レーザ光により露光を施した場合の感光体の表面電位を露光電位VL(−V)として測定した。
また、レーザ光によって露光を施した直後の感光体の表面電位を残留電位Vr(−V)として測定した。これらの測定結果を初期の電気特性の評価指標とした。
【0114】
<画像評価>
次に、デジタル複写機から表面電位計を取り外して再び現像器を取り付け、各感光体について、半導体レーザーのパルス幅を変調させて255階調分の80階調としたハーフトーン画像における濃度ムラの有無を観察した。濃度ムラの判定基準は、以下の通りである。
G(good):目視にて、ハーフトーン画像に濃度ムラなし。良好な画像。
NB(not bad):目視にて、ハーフトーン画像に濃度ムラあり。実使用上問題ないレベル。
B(bad):目視にて、ハーフトーン画像に濃度ムラあり。実使用上問題となるレベル。
【0115】
次に、N/N環境下において、文字テストチャート(ISO19752)を記録紙10万枚に印刷(画像形成)した。
【0116】
10万枚の画像形成を終了し、初期と同様に画像評価をした後、デジタル複写機から現像器を取り外して再び表面電位計を取り付け、各感光体について、初期と同様にして帯電電位V0(V)および露光電位VL(V)をそれぞれ測定した。
【0117】
また、初期と同様にしてレーザ光によって露光を施した直後の感光体の表面電位を残留電位Vr(−V)として測定した。
電位変動ΔVL(|V0−VL|)が小さい程、電気特性の安定性に優れると評価し、同時に得られた文字画像の濃度や鮮明さを目視観察で評価した。
【0118】
次の判定基準により電気的特性を評価した。
VG(very good):非常に良好 ΔVL 30V未満。
G(good):良好 ΔVL 30V以上65V未満。
NB(not bad):使用上問題ない ΔVL 65V以上80V未満。
B(bad):不良 ΔVL 80V以上。
【0119】
<塗布液安定性>
実施例1〜7および比較例1〜4の各感光体の作製において用いた中間層形成用塗布液の粘度を、E型粘度計(東機産業製、RE−125L)を用いて測定した。調製直後および常温で90日間静置した後に測定し、粘度変化値を求めた。
【0120】
次の判定基準により中間層形成用塗布液の塗布液安定性を評価した。
VG(very good):非常に良好 粘度変化値 1未満。
G(good):良好 粘度変化値 1以上 5未満。
NB(not bad):使用上問題ない 粘度変化値 5以上 20未満。
B(bad):不良 粘度変化値 20以上。
【0121】
<総合評価>
上記の塗布性、塗布液安定性、初期画像特性、電気特性、使用後画像特性について総合評価した。
G(good):良好 いずれも B(bad) なし
B(bad):不良 1項目でも B(bad) あり
【0122】
以上の評価において得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0123】
上記の表の評価結果から、次のことが判った。
従来、中間層は1μm程度の膜厚(比較例2)が多く、この中間層により導電性支持体からの電荷の注入防止による電気特性の改善、導電性支持体表面でのレーザー光の反射防止によるモアレ発生防止を行うことができる。
【0124】
しかし、切削した導電性支持体ではなく、コストダウンの要求により無切削の導電性支持体を用いると、わずか1μmの中間層では支持体表面の反射光を押さえることができず画像にモアレが発生している。(比較例3)
そこで、中間層の膜厚を10μmまで大きくすると、モアレ画像は防止できるものの湿潤した塗布液が乾燥するまでに垂れてしまい、塗布膜が不均一になってしまう。これは画像濃度にも影響を与える。(比較例1)
そこで上記の塗布液の液垂れを改良すべく比較例4のように従来より知られる増粘剤を酸化チタンとともに用いたが塗布液の最適化ができず均一な塗布膜は実現不可能であった。
【0125】
一方、本発明の平板状シリケートを用いた電子写真感光体(実施例1)は、この10μmという膜厚でも垂れを生じず均一に塗布できる。無切削の支持体においてもモアレの発生のない良好な画像が実現できる。(実施例7)
これは、平板状シリケートによる塗布液の増粘効果で垂れの生じない塗布液が実現できとたことがわかる。
【0126】
さらに中間層を厚くすることも可能であり(実施例2)中間層を2層とすることも可能である(実施例5)
また、本発明の中間層形成用塗布液は、高粘度であるにもかかわらず保存安定性に優れ、90日静置後も良好な分散状態を保っている。
【0127】
また、電気特性も従来技術と同等の性能を示している。
以上のことから、本発明の電子写真感光体は、塗布ムラのない良好な画像特性を実現できる電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【0128】
また、本発明の感光体の中間層を塗布形成する際の塗布液は、所望の分散状態を長期間保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明による電子写真感光体が有する中間層が含有する無機層状ケイ酸塩化合物(平板状シリケート)は、少量でも増粘効果が大きく、塗布液の粘度調整が容易となり、塗布ムラのない良好な画像特性を実現でき、安価な無切削の素管を材料として感光体を製造する際に、該中間層を導電性支持体に積層することにより、素管の凹凸に起因する塗布ムラもなく良好な画像特性を実現できる。
【符号の説明】
【0130】
1 積層型感光体(感光体)
10、20、26 電子写真感光体
11、21、27 電荷輸送層
12、22、28 電荷発生層
23 第2中間層
14、24、29 中間層
15、25、30 導電性支持体
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング(ケーシング)
41、42 矢符
44 回転軸線
51 転写紙
100 電子写真装置(レーザプリンタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と感光層との間に中間層を備えてなり、該中間層が、少なくとも無機層状ケイ酸塩化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記無機層状ケイ酸塩化合物が、スメクタイトである請求項1記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記無機層状ケイ酸塩化合物が、合成スメクタイトである請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記無機層状ケイ酸塩化合物が、平板状シリケートである請求項1〜3のいずれか一つに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記無機層状ケイ酸塩化合物が、数平均粒子径0.1μm〜2μmを有する粉末である請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記無機層状ケイ酸塩化合物が、バインダ樹脂に対して50重量%〜200重量%含有されている請求項1〜5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記中間層が、10μm〜20μmの膜厚を有する請求項1〜6のいずれか一つに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記中間層が、少なくとも2層構造を有する請求項1〜7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記電子写真感光体が、無切削支持体により構成されている請求項1〜7に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像して可視像化する現像手段と、現像によって可視像化された画像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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