説明

電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】露光メモリを効果的に抑制できるとともに、高感度である単層型電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型の感光層を有する電子写真感光体において、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、かつ、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足する。
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【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及び画像形成装置に関し、特に、露光メモリの発生を効果的に抑制することができる電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【0002】
一般に、複写機やレーザープリンター等の電子写真機において使用される電子写真感光体には、近年、低価格や低環境汚染性等の要求から、有機感光体が多く用いられている。
また、このような有機感光体に対して、表面を帯電させ(主帯電工程)、静電潜像を形成した後(露光工程)、この静電潜像を現像バイアス電圧が印加された状態でトナー現像し(現像工程)、さらに形成されたトナー像を、反転現像方式により転写紙に転写し(転写工程)、それを加熱定着して、所定の画像形成を行うという画像形成プロセスが実施されている。
そして、有機感光体上の残留トナーについては、クリーニングブレードを用いて除去され(クリーニング工程)、有機感光体上の残留電荷については、LED等により消去される(除電工程)プロセスが実施されている。
【0003】
しかしながら、このような有機感光体においては、当該有機感光体を回転させて使用するため、前周回において露光された部分の電位(明電位)が残留して、次の周における帯電工程を経ても、かかる部分においては所望する帯電電位(暗電位)を得ることができない現象(露光メモリ)が見られた。
このため、露光メモリのある部分と無い部分とでは画像濃度が変わってしまい、良好な画像が得られないという問題が見られた。
【0004】
そこで、繰り返し使用した場合であっても電位の変動が少ない電子写真感光体を提供すべく、負帯電積層型の有機感光体において、電荷輸送剤として用いる物質を特定するとともに、電荷輸送層及び電荷発生層におけるそれぞれのイオン化ポテンシャルの差を規定した電子写真感光体が開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−36204(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された電子写真感光体は、負帯電積層型の有機感光体に限定されたものであり、他の感光体型に対しては未だ露光メモリの抑制ができないという問題が見られた。特に、正帯電単層型感光体のように、電子輸送距離が長い感光体においては、露光メモリが顕著に発生するという問題が見られた。
さらに、上述した正帯電単層型感光体等を搭載し、かつ除電手段を有しない画像形成装置においては、露光メモリの発生が、より顕著であった。
なお、正帯電単層型感光体における電子輸送距離が露光メモリに影響する要因としては、正孔輸送剤ほどの移動度を有する電子輸送剤が未だ開発されていないこと、及び積層型感光体と比較して、単層型感光体の方が、電荷輸送効率が低いこと等が挙げられる。
また、上述してきたように、露光メモリの発生を抑制する技術の開発が求められる一方で、画像形成装置における高速化の要求にも応える必要がある。そのため、電子写真感光体は、露光に対して高感度である必要もある。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、単層型感光体において、感光層における反射吸光度、膜厚等が所定の関係を満足するものとし、かつ使用する電荷発生剤の種類及び電子輸送剤の特性を制限することによって、露光メモリを抑制することができるばかりか、感度を向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明は、露光メモリを効果的に抑制できるとともに、高感度である単層型電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型の感光層を有する電子写真感光体において、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、かつ、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする電子写真感光体が提供され、上述した問題を解決することができる。
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すなわち、感光層が、関係式(1)で表される特性を満足することによって、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を良好なものとすることができるため、露光メモリを効果的に抑制することができる。
また、使用する電子輸送剤の還元電位を、所定の範囲内の値とすることによって、電荷発生剤から生じた電子を効率的に輸送し、露光メモリをより効果的に抑制することができる。
さらに、上述した露光メモリの抑制が可能となるにともなって、感光層中における電荷の移動が効率的に行われるようになるため、露光時における感度も向上させることができる。
【0008】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、電荷発生剤が、Y型結晶構造を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることが好ましい。
このように構成することにより、関係式(1)を満足することが容易となって、露光メモリの発生が少なくなるとともに、感度に優れた電子写真感光体を提供することができる。
【0009】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、電荷発生剤として、下記(a)及び(b)の特性、あるいはいずれか一方の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を含有することが好ましい。
(a)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50〜400℃の範囲内にピークを有しないこと
(b)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50℃〜200℃の範囲内にピークを有さず、200〜400℃の範囲内に1つのピークを有すること
このように構成することにより、感光層の製造の際の感光層用塗布液中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の経時安定性や分散性を、より優れたものとすることができる。
【0010】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、電荷発生剤として、(a)または(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶以外のオキソチタニルフタロシアニン結晶をさらに含有することが好ましい。
このように複数の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として使用することにより、関係式(1)を満足しやすくなるとともに、安価な電子写真感光体を提供することができる。
【0011】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、オキソチタニルフタロシアニン結晶として、下記(c)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を含有することが好ましい。
(c)有機溶媒中に24時間浸漬した後、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないこと
このように構成することにより、感光層用塗布液中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の経時安定性や分散性を、さらに優れたものとすることができる。
【0012】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、単層型感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン濃度(C/重量%)を0.6〜3.0重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、関係式(1)を満足することが容易となるため、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性や感度が良好であって、かつ均一な厚さを有する感光層を、容易に製造することができる。
【0013】
また、本発明の別の態様は、電子写真感光体を備えた画像形成装置において、電子写真感光体が、基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型感光層を有し、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、かつ、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする画像形成装置である。
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すなわち、感光層が、関係式(1)で表される特性を満足することによって、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を良好なものとすることができるため、露光メモリを効果的に抑制することができる。
また、使用する電子輸送剤の還元電位を、所定の範囲内の値とすることによって、露光メモリをより効果的に抑制することができる。
さらに、上述した露光メモリの抑制が可能となるにともなって、感光層中における電荷の移動が効率的に行われるようになるため、露光時における感度も向上させることができる。
したがって、露光メモリが抑制された高画質画像を高スピードで印刷することが可能なプリンタ及びコピー機等の画像形成装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置を構成するにあたり、除電手段を有しないことが好ましい。
このように除電手段を有しない、いわゆる除電レスタイプの構成とすることにより、画像形成装置を小型化、及び簡素化することができる一方、露光メモリに関しても、十分に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態は、基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型の感光層を有する電子写真感光体において、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、かつ、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする電子写真感光体である。
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以下、第1の実施形態の電子写真感光体について、各構成要件に分けて説明する。
【0016】
1.基本的構成
図1(a)に示すように、単層型感光体10は、基体(導電性基体)12上に、単一の感光体層14を設けたものである。かかる感光層14は、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂を同一の層に含有することを特徴とする。
この理由は、同一感光層に対して、正孔輸送剤と電子輸送剤の両方を含有させることによって、露光時において電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶から発生する電荷を、効率的に輸送することができるためである。
また、図1(b)に示すように、基体12と感光層14との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されている感光体10´でもよい。また、図1(c)に示すように、感光層14の表面には、保護層18が形成されている感光体10´´でもよい。
【0017】
2.電荷発生剤
(1)種類
本発明としての電子写真感光体に用いられる電荷発生剤としては、下記一般式(1)で表されるオキソチタニルフタロシアニン化合物を用いることを特徴とする。
この理由は、電荷発生剤として一般に用いられている無金属フタロシアニンでは、電子写真感光体における高感度化を十分に達成することができないのに対し、一般式(1)で表されるオキソチタニルフタロシアニン化合物であれば、その結晶型によっては、量子収率を著しく向上させることができるためである。
なお、一般式(1)で表されるオキソチタニルフタロシアニン化合物の具体例として、下記式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0018】
【化1】

【0019】
(一般式(1)中、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ同一または異なっても良い置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、またはニトロ基を示し、繰り返し数a、b、c及びdはそれぞれ1〜4の整数を示し、それぞれ同一または異なっても良い。)
【0020】
【化2】

【0021】
また、オキソチタニルフタロシアニン化合物における結晶型をY型とすることが好ましい。
この理由は、かかるY型のオキソチタニルフタロシアニン結晶であれば、電荷発生剤おける量子収率が向上するため、露光時における感度を向上させることができるためである。すなわち、約90%とも言われるその量子収率であれば、露光によって照射された光に応じて効率的に電荷を発生させることができ、それにより、露光時における感度を十分に向上させることができるためである。
【0022】
(2)光学特性及び熱特性
また、電荷発生剤として、下記(a)及び(b)の特性、あるいはいずれか一方の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を含有することが好ましい。
(a)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50〜400℃の範囲内にピークを有しないこと
(b)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50℃〜200℃の範囲内にピークを有さず、200〜400℃の範囲内に1つのピークを有すること
この理由は、このように構成することにより、感光層用塗布液中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の経時安定性や分散性を、より優れたものとすることができるためである。
【0023】
より具体的には、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、(a)の特性を有する場合、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶は、結晶転移が起こりにくい安定結晶となるためである。
すなわち、感光層用塗布液を製造し、一定期間貯蔵した後に使用するような場合であっても、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、かかる感光層用塗布液に含まれるテトラヒドロフラン等の有機溶媒の作用によってY型からαまたはβ型への結晶転移を起こすことが少ない。よって、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、電荷発生に優れた結晶型であるY型を保持することができる。
【0024】
また、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、(b)の特性を有する場合、感光層用塗布液中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の経時安定性や分散性を、さらに優れたものとすることができるためである。
より具体的には、(b)の特性を有する場合、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶は、有機溶媒中における結晶転移を抑制することができるとともに、感光層塗布液中において、特に優れた分散性を発揮することができる。
すなわち、感光層を製造する際の感光層用塗布液を製造する際に、結晶型がαまたはβ型へ転移せず、Y型を保持できるとともに、かかる感光層用塗布液に対する分散性が特に優れるため、形成された感光層における露光時の電荷の発生を極めて効率的に行うことができる。さらには、かかる優れた分散性によって、オキソチタニルフタロシアニン結晶と電荷輸送剤との間における電荷輸送が効率的に行われるようになるため、感光層中における残留電位の発生を防止し、露光メモリを効果的に抑制することができる。
【0025】
なお、(a)及び(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶をそれぞれ単独で使用してもよいし、あるいは組み合わせて用いても良い。
したがって、(a)および(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を組み合わせて用いる場合には、重量比で、(a)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶:(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶=10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、20/80〜80/20の範囲であることがより好ましい。
【0026】
また、電荷発生剤として、(a)または(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶以外の、別のオキソチタニルフタロシアニン結晶をさらに含有することが好ましい。
この理由は、(a)または(b)の特性を有しないオキソチタニルフタロシアニン結晶は、それ単独では、感光層用塗布液中における経時安定性や分散性が乏しい場合があるが、(a)または(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶と組み合わせることにより、その問題が著しく改善されるためである。
すなわち、(a)または(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を所定量使用する以上、従来の(a)または(b)の特性を有しないオキソチタニルフタロシアニン結晶であっても、好適に組み合わせて使用することができる。よって、このように複数の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を電荷発生剤として使用することにより、関係式(1)を満足しやすくなるとともに、安価な電子写真感光体を提供することができる。
【0027】
また、電荷発生剤として、下記(c)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を含有することが好ましい。
(c)有機溶媒中に24時間浸漬した後、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないこと
この理由は、オキソチタニルフタロシアニン結晶が、(c)の特性を有する場合、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶は、有機溶媒中における結晶転移を、さらに確実に制御することができるためである。
すなわち、オキソチタニルフタロシアニン結晶を、実際にテトラヒドロフラン等の有機溶媒中に24時間浸漬させた場合であっても、結晶型がαまたはβ型へ転移せず、Y型を保持していることを確認できるため、有機溶媒中における結晶転移を確実に制御することができるためである。
なお、オキソチタニルフタロシアニン結晶における熱特性の測定方法は、後の実施例において記載する。
【0028】
また、オキソチタニルフタロシアニン結晶における光学特性は、例えば以下のようにして測定することができる。
すなわち、Y型オキソチタニルフタロシアニン結晶0.3gをテトラヒドロフラン5g中に分散させ、温度23±1℃、相対湿度50〜60%RHの条件下、密閉系中で24時間保管した後、X線回折装置(理学電気(株)製 RINT1100)のサンプルホルダーに充填し、以下に示すような条件で測定を行うことができる。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:3.0°
ストップ角度:40.0°
走査速度:10°/分
【0029】
(3)イオン化ポテンシャル
また、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニンにおけるイオン化ポテンシャルの値を5.0〜5.5eVの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるイオン化ポテンシャルの値が5.0eV未満の値となると、後述する正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャルの値との差が過度に大きくなるため、効率的な電荷輸送が困難となる場合があるためである。そして、その結果、感光体における感度の低下及び露光メモリの原因となるためである。一方、かかるイオン化ポテンシャルの値が5.5eVを超えた値となると、後述する正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャルの値との差が過度に小さくなるため、感光体における帯電特性が低下する場合があるためである。
したがって、かかるオキソチタニルフタロシアニンにおけるイオン化ポテンシャルの値を5.1〜5.4eVの範囲内の値とすることがより好ましく、5.2〜5.3eVの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、イオン化ポテンシャルの測定方法は、例えば、大気雰囲気型紫外線光電子分析装置(理研計器(株)製、AC−1)を用いて測定することができる。
【0030】
(4)添加量
また、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶の添加量としては、全体量に対して、0.6〜3.0重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、オキソチタニルフタロシアニン結晶の添加量をかかる範囲内の値とすることによって、感光体への露光をした際に、当該オキソチタニルフタロシアニン結晶が効率的に電荷を発生することができるとともに、電荷輸送剤との間における電荷輸送も効率的に行われるためである。
すなわち、かかるオキソチタニルフタロシアニン結晶の添加量が、0.6重量%未満の値となると、電荷発生量が不十分となり、感光体上に所定の静電潜像を形成することが困難となる場合があるためである。一方、かかる電荷発生剤の添加量が3重量%を超えた値となると、感光層用塗布液中に均一に分散することが困難になる場合があるためである。
よって、電荷発生剤の添加量を、全体量に対して、0.8〜2.8重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0031】
3.正孔輸送剤
(1)種類
正孔輸送剤としては、従来公知の種々の正孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。例えば、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾ−ル系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、ピラリゾン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、及びジフェニレンジアミン系化合物の一種単独または二種以上の組合わせが挙げられる。
【0032】
また、上述した正孔輸送剤の具体例としては、下記式(3)〜(8)で表される正孔輸送剤(HTM−A〜F)が挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
(2)移動度
また、正孔輸送剤として、上述した一般的な正孔輸送剤の中でも、特に、濃度30重量%、電界強度3.0×105V/cmの条件下で測定される移動度が5.0×10-6〜5.0×10-4cm2/V/secの範囲内の値である正孔輸送剤を用いることが好ましい。
この理由は、正孔輸送剤の移動度をこのような範囲内の値とすることにより、電荷発生剤から生じた正孔を効率的に輸送し、露光メモリをより効果的に抑制することができるためである。
すなわち、濃度30重量%、電界強度3.0×105V/cmの条件下で測定される正孔輸送剤の移動度が5.0×10-6cm2/V/sec未満の値となると、露光によって発生した正孔を十分に輸送し切ることができず、感光層内に電荷が残留し、露光メモリの原因となるばかりか、感度が低下する場合があるためである。一方、濃度30重量%、電界強度3.0×105V/cmの条件下で測定される正孔輸送剤の移動度が5.0×10-4cm2/V/secを超えた値となると、正孔輸送能が向上するため、露光メモリの抑制及び感度の向上には好ましいが、かかる高性能な正孔輸送剤を得ることは、技術的、コスト的に困難である場合があるためである。また、電子輸送剤の電子輸送能とのバランスが崩れ、かえって感光層内に電荷を残留させてしまう場合があるためである。
したがって、濃度30重量%、電界強度3.0×105V/cmの条件下で測定される正孔輸送剤の移動度を、1.0×10-5〜1.0×10-4cm2/V/secの範囲内の値とすることがより好ましく、2.0×10-5〜5.0×10-5cm2/V/secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0040】
(3)イオン化ポテンシャル
また、正孔輸送剤として、上述した一般的な正孔輸送剤の中でも、特に、イオン化ポテンシャル(eV)の値が5.1〜6.0eVの範囲内の値である正孔輸送剤を用いることがより好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値を5.1〜6.0eVの範囲内の値とすることによって、次項において詳述するように、正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値からオキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値を引いた値を所定の範囲内に調整することが容易となるためである。したがって、かかる正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値を5.2〜5.8eVの範囲内の値とすることがより好ましく、5.3〜5.7eVの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
また、正孔輸送剤として、当該正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値からオキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値を引いた値が0.1〜0.4(eV)の範囲内の値である正孔輸送剤を用いることが好ましい。
この理由は、正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値がオキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャル(eV)の値よりも0.1〜0.4eV大きい正孔輸送剤を使用することによって、感光層における露光メモリの抑制、感度の向上ばかりでなく、帯電特性についても向上させることができるためである。
すなわち、かかる正孔輸送剤のイオン化ポテンシャル(eV)と、オキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャル(eV)との差が0.1eV未満の値となると、正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャルとオキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャルとの差が過度に小さくなるため、感光体における帯電特性が低下する場合があるためである。
一方、かかる正孔輸送剤のイオン化ポテンシャル(eV)と、オキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャル(eV)との差が0.4eVを超えた値となると、効率的な電荷輸送が困難となって、感度が低下したり、露光メモリが発生したりする場合があるためである。
したがって、かかる正孔輸送剤のイオン化ポテンシャル(eV)と、オキソチタニルフタロシアニン化合物におけるイオン化ポテンシャル(eV)との差を0.12〜0.35eVの範囲内の値とすることがより好ましく、0.15〜0.3eVの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、正孔輸送剤におけるイオン化ポテンシャルの測定方法は、例えば、大気雰囲気型紫外線光電子分析装置(理研計器(株)製、AC−1)を用いて測定することができる。
【0042】
(4)添加量
また、正孔輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して、20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる正孔輸送剤の添加量が20重量部未満の値となると、感光層における正孔輸送機能が低下し、画像特性に悪影響を与える場合があるためである。一方、かかる正孔輸送剤の添加量が500重量部を超えた値となると、分散性が低下し、結晶化し易くなる場合があるためである。
したがって、正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜100重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0043】
4.電子輸送剤
(1)還元電位
また、本発明としての電子写真感光体に用いられる電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用いることを特徴とする。
この理由は、電子輸送剤の還元電位をこのような範囲内の値とすることにより、電荷発生剤から生じた電子を効率的に輸送し、露光メモリをより効果的に抑制することができるとともに、感度を向上させることができるためである。
すなわち、電子輸送剤の還元電位が−0.97V未満の値となると、輸送されている電子が、電子輸送剤から分離できない状態(キャリアトラップ)が生じ、電子輸送効率が低下する場合があるためである。一方、電子輸送剤の還元電位が−0.83Vを超えた値となると、LUMO(電子を有していない分子軌道の中で最もエネルギー準位が低い軌道をいい、励起された電子は通常この軌道に移動する。)のエネルギー準位が電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニンよりも高くなり、電子が電子輸送剤に移動せず、電荷発生効率が低下する場合があるためである。
【0044】
また、ここで、図2を用いて、電子輸送剤の還元電位と、露光メモリ電位との関係を説明する。
図2においては、横軸に電子輸送剤の還元電位(V)を採り、縦軸に感光体における露光メモリ電位(V)を採った特性曲線を示している。
かかる特性曲線から理解できるように、電子輸送剤の還元電位(V)の値が増加するのにともなって、露光メモリ電位(V)の値が臨界的に変化し、下に凸のピークを形成している。
より具体的には、電子写真感光体の還元電位(V)の値が−1.01Vから−0.97Vへと増加するのにともなって、露光メモリ電位(V)の値が99Vから79Vへと減少していることがわかる。そして、電子写真感光体の還元電位(V)の値が−0.97Vから−0.83Vの範囲内であるときは、その変化に関わらず、露光メモリ電位(V)の値は70V前後でほぼ一定の値をとっていることがわかる。一方、電子輸送剤の還元電位(V)の値が−0.83Vから−0.73Vへと増加する場合には、それにともなって、露光メモリ電位(V)の値が51Vから85Vへと増加していることがわかる。
よって、かかる特性曲線から、電子輸送剤の還元電位(V)の値が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値であれば、電荷発生剤から生じた電子を効率的に輸送し、露光メモリ電位(V)の値を80V以下の低い値に制御できることがわかる。
よって、電子輸送剤の還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値であれば、感光体における露光メモリの発生を効果的に抑制することができることがわかる。
したがって、電子輸送剤の還元電位を−0.95〜−0.85Vの範囲内の値とすることがより好ましく、−0.92〜−0.88Vの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、露光メモリ電位の測定方法は、実施例において後述する。
【0045】
(2)種類
また、上述した条件を満たす電子輸送剤の具体例としては、下記式(9)〜(14)で表される電子輸送剤(ETM−A〜F)が挙げられる。
【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
(3)添加量
また、電子輸送剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる電子輸送剤の添加量が20重量部未満の値となると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる電子輸送剤の添加量が500重量部を超えた値となると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光層としての適正な膜形成が困難となる場合があるためである。したがって、かかる電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して30〜200重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜100重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0053】
5.結着樹脂
結着樹脂としては、例えばスチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、及びポリエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びその他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレート、及びウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂などがあげられる。これら結着樹脂は単独で使用できるほか、2種以上を併用することもできる。
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、好ましい結着樹脂として、下記式(15)で示す構造単位を含むZ型ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。
【0054】
【化15】

【0055】
6.他の添加剤
また、感光層には、上述の各成分の他に、例えば増感剤、フルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添加することもできる。また感光体の感度を向上させるために、例えばターフェニル、ハロナフトキノン類、及びアセナフチレンなどの増感剤を、電荷発生剤と併用してもよい。
【0056】
7.基体
上述した感光層が形成される基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上述の金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、及び酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
すなわち、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するものが好ましい。
また、基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、及びドラム状などのいずれであってもよい。
【0057】
8.感光層
(1)関係式(1)
また、上述した感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
この理由は、関係式(1)を満足する感光層であれば、当該感光層中における電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を十分なものとすることができるためである。したがって、かかる関係式(1)を満足する感光層であれば、露光メモリを効果的に抑制することができることになる。また、このように露光メモリの抑制が可能となると、感光層中における電荷の移動が効率的に行われるようになるため、露光時における感度も向上させることができるためである。
【0058】
なお、関係式(1)における左辺(A・C-1・d-1)は、ランベルト・ベールの法則に準じて、言わば、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を表すパラメータと見なすことができる。
すなわち、感光層における膜厚(d/m)及びオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)が一定の場合、オキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が不十分であると、入射光が吸収されにくく、波長700nmの光に対する反射吸光度(A)が小さい値となりやすいためである。一方、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が良好であれば、入射光が吸収されやすく、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A)が大きい値となるためである。
よって、かかる理由から、関係式(1)における左辺(A・C-1・d-1)の値より、感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価できることがわかる。
【0059】
また、図3を参照して、関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の数値(単位:1/(重量%・m)、以下同様である。)と、感光体における露光メモリ電位と、の関係を説明する。
図3においては、横軸に関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の数値をとり、縦軸に感光体における露光メモリ電位(V)をとった特性曲線を示している。
かかる特性曲線から理解されるように、関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の値が0に近づく程露光メモリ電位(V)の値は大きく、関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の値がより大きな値となるにしたがって、露光メモリ電位(V)の値は小さくなっている。より具体的には、関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の値が0〜1.75×104の範囲においては、かかる値が大きくなるにしたがって急激に露光メモリ電位(V)の値が低下していることがわかる。一方、関係式(1)における左辺A・C-1・d-1の値が1.75×104以上の範囲においては、かかる値が増加するにともなって、露光メモリ電位(V)の値が緩やかに減少し、60V以下の範囲内の値をとっていることがわかる。
したがって、関係式(1)における左辺のA・C-1・d-1の値を1.9×104以上の値とすることがより好ましく、2.0×104以上の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
(2)反射吸光度
また、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)の値を0.7〜0.9の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度の値を0.7〜0.9の範囲内の値とすることによって、感光層における膜厚(d/m)及び感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)の値を調整して、関係式(1)を満足する特性を備える感光層を形成することが容易となるためである。さらに、かかる範囲の反射吸光度であれば、関係式(1)によって規定される条件下においても、さらに効果的に露光メモリを抑制しつつ感度も向上させることができるためである。
すなわち、かかる感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度の値が0.7未満の値となると、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の添加量が少なすぎて電荷発生量が不十分となり、感光体上に所定の静電潜像を形成することが困難となる場合があるためである。もしくは、感光層における膜厚が過度に小さくなり、感光体としての機械的強度が不十分となる場合があるためである。一方、かかる感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度の値が0.9を超えた値となると、感光層における膜厚または感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度の値が過度に大きくなり、関係式(1)を用いて感光層中におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性を評価することができなくなる場合があるためである。
したがって、かかる感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度の値を0.72〜0.88の範囲内の値とすることがより好ましく、0.75〜0.85の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、反射吸光度の測定方法は、後の実施例において詳細に記載する。
【0061】
(3)膜厚
また、感光層における膜厚(d/m)を5.0×10-6〜1.0×10-4mの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる感光層における膜厚(d/m)を5.0×10-6〜1.0×10-4mの範囲内の値とすることによって、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)の値及び感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)の値を調整して、関係式(1)を満足する特性を備える感光層を形成することが容易となるためである。さらに、かかる範囲の感光層における膜厚(d/m)であれば、関係式(1)で規定される条件下においても、実用性に優れた感光体を得ることができるためである。
すなわち、かかる感光層における膜厚(d/m)が5.0×10-6m未満の値となると、感光体としての機械的強度が不十分となる場合があるためである。一方、かかる感光層における膜厚(d/m)が1.0×10-4mを超えた値となると、基体から剥離し易くなる場合があるためである。したがって、かかる感光層における膜厚(d/m)を1.0×10-5〜8.0×10-5mの範囲内の値とすることがより好ましく、2.0×10-5〜4.0×10-5mの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0062】
9.製造方法
また、単層型感光体を製造するにあたり、結着樹脂と、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、を溶媒に添加して、分散混合し、感光層用塗布液とする。すなわち、単層型感光体を塗布方法により形成する場合には、電荷発生剤としてのオキソチタニルフタロシアニン結晶、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、及び超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
また、感光層用塗布液を作るための溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、1、4−ジオキサン、及び1−メトキシ−2−プロパノール等の1種または2種以上が挙げられる。
さらに、感光層用塗布液中に、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性や感光体層表面の平滑性を良好なものとするために、界面活性剤やレベリング剤等を添加してもよい。
【0063】
[第2の実施形態]
また、本発明の第2の実施形態は、電子写真感光体を備えた画像形成装置において、電子写真感光体が、基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型感光層を有し、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、かつ、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする画像形成装置である。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
以下、第1の実施形態において既に説明した内容は省略し、第2の実施形態として、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
すなわち、第2の実施形態の画像形成装置の構成としては、図4に示す画像形成装置100のような構成が好適に使用される。
ここで、図4は、画像形成装置の全体構成を示す概略図であり、以下、その動作について、順を追って説明する。
まず、画像形成装置100の感光体111を、矢印Aで示す方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転させた後、その表面を帯電手段112によって所定電位に帯電させる。
次いで、露光手段113により、画像情報に応じて光変調されながら反射ミラー等を介して、感光体111の表面を露光する。この露光により、感光体111の表面に静電潜像が形成される。
次いで、この静電潜像に基づいて、現像手段114により潜像現像が行われる。この現像手段114の内部にはトナーが収納されており、このトナーが感光体111表面の静電潜像に対応して付着することで、トナー像が形成される。
また、記録紙120は、所定の転写搬送経路に沿って、感光体下部まで搬送される。このとき、感光体111と転写手段115との間に、所定の転写バイアスを印加することにより、記録材120上にトナー像を転写することができる。
【0065】
次いで、トナー像が転写された後の記録紙120は、分離手段(図示せず)によって感光体111表面から分離され、搬送ベルトによって定着器に搬送される。次いで、この定着器によって、加熱、加圧処理されて表面にトナー像が定着された後、排出ローラによって画像形成装置100の外部に排出される。
一方、トナー像転写後の感光体111はそのまま回転を続け、転写時に記録紙120に転写されなかった残留トナー(付着物)が感光体111の表面から、本発明のクリーニング装置117によって除去される。
【0066】
本発明においては、上述した感光体111が、基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型感光層を有し、電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、かつ、感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、感光層における膜厚(d/m)と、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
したがって、第1の実施形態において詳述したように、感光体111は、露光メモリを効果的に抑制するとともに露光時における感度にも優れたものとなる。
したがって、本発明としての画像形成装置100は、露光メモリが抑制された高画質画像を高スピードで印刷することが可能となる。
【0067】
また、本発明の画像形成装置においては、除電手段を有しないことが好ましい。
この理由は、上述したように、本発明としての画像形成装置100であれば、露光メモリを十分に抑制することができるため、除電手段によって当該露光メモリ等を消去する工程を省略しても、高画質画像を形成することができるためである。
よって、画像形成装置における構成を簡素化することができるとともに、画像形成装置における小型化を実現することが可能となるためである。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの記載内容に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
1.電子写真感光体の製造
ボールミルを用いて、式(2)で表されるY型オキソチタニルフタロシアニン(TiOPc)であって、表1において(TiOPc−A)で表される特性を有するY型オキソチタニルフタロシアニン3重量部と、式(9)で表される還元電位が−0.90Vである電子輸送剤(ETM−A)30重量部と、式(3)で表される正孔輸送剤(HTM−A)45重量部と、結着樹脂としての粘度平均分子量20,000である式(15)で表されるZ型ポリカーボネート(Resin−A)(帝人化成(株)製 TS2020)100重量部とを、800重量部のテトラヒドロフランとともに50時間、混合、分散させて感光層用の塗布液を製造した。
次いで、この感光層用塗布液を、基体としての直径30mm、全長254mmのアルミニウム製のドラム状支持体に対し、ディップコート法にて塗布した。その後、100℃で、40分間熱風乾燥して、膜厚2.5×10-5mの単層型の感光層を有する電子写真感光体を作製した。
【0070】
【表1】


TiOPc−Aは、それぞれ特許第346302号に記載の方法で作成した。
TiOPc−Bは実施例7に記載の方法で作成した。
【0071】
2.オキソチタニルフタロシアニン結晶におけるDSC測定
また、実施例1で使用したオキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)のDSC(示差走査熱量分析)は、示差走査熱量計(理学電機(株)製のTAS−200型、DSC8230D)を用いて行った。測定条件は下記の通りである。なお、図5に、得られた示差走査熱量分析チャートを示す。
サンプルパン:アルミニウム製
昇温速度:20℃/分
【0072】
3.電子写真感光体の評価
(1)反射吸光度測定
また、得られた感光層(基準厚さ2.5×10-5m)を積層した支持基体における、波長700nmの光に対する反射吸光度(A1)を、色差計(ミノルタ(株)製、色差計CM1000)を用いて測定した。次に、感光層を積層していない支持基体における、波長700nmの光に対する反射吸光度(A2)を、同様に測定した。
すなわち、図6(a)及び(b)を用いてより具体的に説明すると、図6(a)は、支持基体12上に感光層14が積層してある状態を示しており、図6(b)は、支持基体12のみの状態を示している。そして、図6(a)及び(b)中のI0は、それぞれの支持基体に対して照射された光(入射光)の強度を表しており、I1及びI2はそれぞれの支持基体に対して照射された入射光における反射光の強度を表している。したがって、支持基体の影響を排除して、感光層における反射吸光度を求めるためには、感光層と支持基体の反射吸光度が混在しているA1から、支持基体の反射吸光度であるA2を差し引けばよい。
よって、得られた反射吸光度の値(A1、A2)をもとに、下記数式(1)から、中間層の反射吸光度(A)を算出するとともに、その反射吸光度(A)を以下の基準に照らして、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
なお、図6(a)における反射吸光度(A1)は、下記数式(2)から算出され、同様に、図6(b)における反射吸光度(A2)は、下記数式(3)から算出される。そして、かかる感光層の反射吸光度(A)が大きいほど、感光層に吸収される光が多いことを示す。すなわち、感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の分散性が高いことを示す。なお、実施例1における感光層の反射吸光度Aは0.810であった。
また、ここで、実施例1におけるA・C-1・d-1の計算を具体的に説明する。まず、濃度Cは(TiOPc−A)3重量部と、電子輸送剤(ETM−A)30重量部と、正孔輸送剤(HTM−A)45重量部と、結着樹脂100重量部の合計178.0に対する(TiOPc−A)の割合(3/178.0)×100=1.69 よりC=1.69(重量%)を求めた。かかる値と、上述した感光層における反射吸光度、及び膜厚をそれぞれ代入して、A・C-1・d-1=0.810/{1.69(重量%)×2.5×10-5(m)}=1.92×104 を求めた。
【0073】
【数1】

【0074】
【数2】

【0075】
【数3】

【0076】
(2)露光メモリ電位の測定
また、得られた電子写真感光体の露光メモリ電位を以下の条件で測定した。
すなわち、得られた電子写真感光体を、除電ランプを省略したプリンタ(京セラミタ(株)製 Antico40)に搭載し、未露光部分(形成画像における白紙部分に対応)の表面電位、及び露光部分(形成画像における黒ベタ部分に対応)の帯電工程実施後の表面電位を測定し、その差を露光メモリ電位として、下記基準に準じて評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:メモリ電位が70(V)未満の値である。
○:メモリ電位が70〜80(V)未満の値である。
△:メモリ電位が80〜90(V)未満の値である。
×:メモリ電位が90(V)以上の値である。
【0077】
(3)感度測定
また、得られた感光体の感度測定を以下の条件で測定した。
すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC(株)製)を用いて、感光体の表面電位を+850Vに帯電させた状態で、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅20nm、光強度1.5μJ/m2)を感光体表面に対して50msec照射した。次いで、露光開始から0.35秒経過した時点での表面電位を感度として測定した。また、かかる測定結果を下記基準に準じて評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:感度の値が100(V)未満である。
○:感度の値が100(V)以上、150(V)未満である。
×:感度の値が150(V)以上である。
【0078】
(4)総合評価
また、上述した露光メモリ電位、及び感度における評価を総合した総合評価を、下記基準に準じて実施した。得られた結果を表2に示す。
◎:全ての項目において、◎の評価を受けている。
○:全ての項目において、◎以外に○の評価を1つ受けている。
×:全ての項目において、△または×の評価を少なくとも1つ以上受けている。
【0079】
[実施例2〜9]
実施例2〜9においては、感光体を製造する際に、実施例1で使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)、及び式(9)で表される電子輸送剤(ETM−A)のかわりに、それぞれ表2に示すようにY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A〜C)、及び式(9)〜(14)で表される電子輸送剤(ETM−A〜F)を使用したほかは、それぞれ実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、それぞれのY型オキソチタニルフタロシアニン結晶が有する特性は、表1において示す。
【0080】
また、実施例7及び8において使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−B)の製造方法を下記に示す。
1.チタニルフタロシアニンの製造
アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル22g(0.17モル)と、チタンテトラブトキシド25g(0.073モル)と、尿素2.28g(0.038モル)とキノリン300gとを加え、攪拌しつつ150℃まで昇温した。次に、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温した後、この反応温度を維持しつつさらに2時間、攪拌して反応させた。
反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄したのち真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
【0081】
2.チタニルフタロシアニン結晶の製造
(1)酸処理前工程
上述したチタニルフタロシアニン化合物の製造で得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100ミリリットル中に加え、攪拌しつつ130℃に加熱して2時間、攪拌処理を行った。次に、2時間経過した時点で加熱を停止し、23±1℃まで冷却した後、攪拌を停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。次いで、安定化された液をガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
【0082】
(2)酸処理工程
上述した酸処理前工程で得られたチタニルフタロシアニンの粗結晶5gを、濃硫酸100ミリリットルに加えて溶解した。次に、この溶液を、氷冷下の水中に滴下したのち室温で15分間攪拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。次に、上述した液をガラスフィルターによって濾別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗した後、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200ミリリットル中に分散させて50℃に加熱して10時間攪拌した。次いで、液をガラスフィルターによって濾別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、式(2)で表される無置換のチタニルフタロシアニン結晶(青色粉末)4.1gを得た。
また、実施例7及び8において使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−B)における示差走査熱量分析は、実施例1と同様の方法を用いて測定した。なお、図7に得られた示差走査熱量分析チャートを示す。
【0083】
[比較例1〜2]
比較例1〜2においては、感光体を製造する際に、実施例1で使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)、及び式(9)で表される電子輸送剤(ETM−A)のかわりに、それぞれ表2に示すようにY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−D)、及び式(9)〜(10)で表される電子輸送剤(ETM−A〜B)を使用したほかは、それぞれ実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−D)が有する特性は、表1において示す。
【0084】
[比較例3]
比較例3においては、感光体を製造する際に、実施例1で使用した式(9)で表される電子輸送剤(ETM−A)のかわりに、下記式(16)で表される電子輸送剤(ETM−G)を使用したほかは、実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0085】
【化16】

【0086】
[比較例4]
比較例4においては、感光体を製造する際に、実施例1で使用した式(9)で表される電子輸送剤(ETM−A)のかわりに、下記式(17)で表される電子輸送剤(ETM−H)を使用したほかは、実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0087】
【化17】

【0088】
[比較例5〜6]
比較例5〜6においては、感光体を製造する際に、実施例1で使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)、及び式(9)で表される電子輸送剤(ETM−A)のかわりに、それぞれ表2に示すようにY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−E)、及び式(9)〜(10)される電子輸送剤(ETM−A〜B)を使用したほかは、それぞれ実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
なお、使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶が有する特性は、表1において示す。
【0089】
[比較例7]
比較例7においては、感光体を製造する際に、実施例1で使用したY型オキソチタニルフタロシアニン結晶(TiOPc−A)のかわりに、x型無金属チタニルフタロシアニン結晶(x−H2Pc)を使用したほかは、実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0090】
[比較例8]
比較例8においては、実施例1で使用した式(9)で表される電子輸送剤(ETM−A)のかわりに、下記式(18)で表される電子輸送剤(ETM−I)を使用したほかは、実施例1と同様に感光体の製造を行い、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0091】
【化18】

【0092】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明にかかる電子写真感光体及び画像形成装置によれば、単層型感光体において、関係式(1)を満足するように、感光層における反射吸光度、膜厚等を定め、かつ使用する電荷発生剤の種類及び電子輸送剤の特性を制限することによって、露光メモリを抑制することができるばかりか、感度を向上させることができることができるようになった。
したがって、本発明の電子写真感光体及び画像形成装置は、画像形成装置の高画質化、高スピード化等に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】(a)〜(c)は単層型感光体の構成を説明するために供する図である。
【図2】電子輸送剤の還元電位と、露光メモリ電位との関係を説明するために供する図である。
【図3】関係式(1)における左辺と、露光メモリ電位との関係を説明するために供する図である。
【図4】本発明にかかる電子写真感光体を備えた画像形成装置の概略構成を説明するために供する図である。
【図5】電荷発生剤であるTiPc−Aの示差走査熱量分析におけるチャートを示す図である。
【図6】感光層における反射吸光度の測定方法を説明するために供する図である。
【図7】電荷発生剤であるTiPc−Bの示差走査熱量分析におけるチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10:単層型感光体
10´:単層型感光体
10´´:単層型感光体
12:基体
14:感光層
16:バリア層
18:保護層
100:画像形成装置
111:電子写真感光体
112:帯電手段
113:露光手段
114:現像手段
115:転写手段
117:クリーニング装置
120:記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型の感光層を有する電子写真感光体において、
前記電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、
前記電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、
かつ、前記感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、前記感光層における膜厚(d/m)と、前記感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする電子写真感光体。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
【請求項2】
前記電荷発生剤が、Y型結晶構造を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷発生剤として、下記(a)及び(b)の特性、あるいはいずれか一方の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
(a)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50〜400℃の範囲内にピークを有しないこと
(b)示差走査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外は、50〜200℃の範囲内にピークを有さず、200〜400℃の範囲内に1つのピークを有すること
【請求項4】
前記電荷発生剤として、前記(a)または(b)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶以外のオキソチタニルフタロシアニン結晶をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記オキソチタニルフタロシアニン結晶として、下記(c)の特性を有するオキソチタニルフタロシアニン結晶を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
(c)有機溶媒中に24時間浸漬した後、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大ピークを有するとともに、26.2°にピークを有しないこと。
【請求項6】
前記単層型感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)を0.6〜3.0重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
電子写真感光体を備えた画像形成装置において、
前記電子写真感光体が、基体上に、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、結着樹脂と、を含む単層型感光層を有し、
前記電荷発生剤として、オキソチタニルフタロシアニン結晶を用い、
前記電子輸送剤として、還元電位が−0.97〜−0.83Vの範囲内の値である電子輸送剤を用い、
かつ、前記感光層における波長700nmの光に対する反射吸光度(A/−)と、前記感光層における膜厚(d/m)と、前記感光層におけるオキソチタニルフタロシアニン結晶の濃度(C/重量%)と、が下記関係式(1)を満足することを特徴とする画像形成装置。
A・C-1・d-1 > 1.75×104 (1)
【請求項8】
前記画像形成装置において、除電手段を有しないことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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