説明

電子写真用トナー、現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】低温定着性を発現させるとともに耐オフセットを向上させ定着性を良好とするとともに、黒色部の光沢度を抑制し、画像全体としてバランスがとれて見やすい画像を提供するとともに、モノクロ画像についてはユーザーに好まれる艶消し画像を提供する。
【解決手段】エロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色の電子写真方式の画像形成装置1に使用する電子写真用トナーにおいて、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を少なくとも1種以上からなる結着樹脂成分と離型剤と着色剤とを含み、DSC昇温(1回目)の50℃−100℃の融解熱量[mJ/mg]をEとした時にブラックトナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EBkとカラートナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EFc(EFcは3色の平均熱量)が、0.8<EBk/EFc<0.95の関係を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するための電子写真用トナー、これを用いた現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電記録、静電印刷等による画像形成は、一般に、像担持体(以下、「感光体」、「電子写真感光体」と称することもある)上に静電潜像を形成し、静電潜像を電子写真用トナー(以下、単に「トナー」と記す。)で現像して可視像(トナー像)とした後、該可視像を紙等の記録媒体上に転写し、定着することにより定着像とする一連のプロセスにより行われる。
現像剤としては、磁性トナー又は非磁性トナーを単独で用いる一成分現像剤と、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤とがある。
電子写真法における定着の方式としては、エネルギー効率の良さの点から、加熱ローラを直接記録媒体上のトナー像に圧接して定着する加熱ヒートローラ方式が広く一般に用いられている。加熱ヒートローラ方式は、定着のために多大な電力が必要となる。そこで、省エネルギー化を図る観点から、加熱ローラの消費電力を削減するスリープモード等が種々検討されている。例えば、画像を出力しない時には加熱ローラ用のヒータの出力を弱め、画像出力時にヒータの出力を上げて加熱ローラの温度を上昇させる方式が一般によく用いられている。
しかしこの場合、スリープ時から加熱ローラの温度を定着に必要な温度に上昇させるためには、数10秒間程度の待機時間が必要となり、ユーザーにとってはこの待機時間が長いという問題がある。
【0003】
また、画像を出力しない時には、ヒータを完全にオフにすることで、消費電力を抑えることが望まれている。これらの要求を達成するためには、トナー自体の定着温度を下げ、使用可能時のトナーの定着温度を低下させることが必要である。
現像剤に用いられるトナーでは、電子写真技術の発展に伴って、優れた低温定着性及び保存性(耐ブロッキング性)が要求されており、従来トナー用結着樹脂として一般に用いられてきたスチレン系樹脂に比べて記録媒体等との親和性が高く、低温定着性に優れたポリエステル樹脂を用いることが種々試みられている。例えば、分子量等の物性を規定した線状ポリエステル樹脂を含有したトナー(特許文献1参照)、酸成分としてロジン類を使用した非線状架橋型ポリエステル樹脂を含有したトナー(特許文献2参照)、などが提案されている。
近年、画像形成装置の更なる高速化及び省エネルギー化を図る上で、従来のトナー用結着樹脂では市場の要求に対しては未だ不十分であり、定着工程での定着時間の短縮化、及び定着手段による加熱温度の低温化により、十分な定着強度を維持することが非常に困難になっている。
【0004】
特許文献2のようなロジン類を使用したポリエステル樹脂を含有するトナーは、低温定着性に優れるとともに、粉砕性に優れるため粉砕法でのトナー生産性を向上できるという利点がある。また、アルコール成分に炭素数3の分岐鎖型のアルコールである1,2−プロパンジオールを用いることで、炭素数2以下のアルコールと対比して耐オフセット性を維持したまま低温定着性を向上させることが可能となり、炭素数4以上の分岐鎖型アルコールと対比してガラス転移温度の低下に伴う保存性の低下防止に有効である。このようなポリエステル樹脂をトナー用結着樹脂として用いることで、低温での定着が可能となり、かつ保存性が向上するという効果が奏される。
しかしながら、省エネルギーに対する要求は、今後ますます厳しくなる傾向があり、低温定着性に優れるポリエステル樹脂を用いることによって、従来に比べて低温定着性は改善される傾向にあるが、近い将来においてポリエステル樹脂を用いるだけでは、省エネルギーに対する要求に十分対応することは困難である。
【0005】
近年、定着補助成分をトナー中に導入することにより、低温定着性を向上させる試みがなされている(特許文献3参照)。特許文献3では、定着補助成分をトナー中に結晶ドメインとして存在させることにより、耐熱保存性と低温定着性を両立させるトナーを提案している。また、特許文献4,5では結晶性ポリエステル樹脂を導入することにより、耐熱保存性と低温定着性を両立させるトナーを提案している。だが、近年マシンの高速化に伴って、トナーには高い耐久性と同時に、更なる省エネルギーに対する要求を満足させることが望まれ、現状ではこれら要求に十分対応することは困難であり、更なる改良、開発が望まれているのが実状である。
【0006】
一方離型材については、例えば特許文献6〜9等に開示されているように、離型剤を加えることで低温定着、ホットオフセット、耐ブロッキング性に優れたトナーが提案されている。しかしながらこれらのトナーにおいても、特に高速機などにおいては、例えば、耐高温オフセット性は優れているが低温定着性が今一歩であったり、耐低温オフセット性や低温定着性には優れているが、耐ブロッキング性にやや劣り、現像性が劣化するなどの弊害があったり、低温時と高温時の耐オフセット性が両立できなかったりしていた。
そこで、特許文献10では離型剤の分散状態を制御することで、耐オフセット性を向上させ定着性を良好にするとともに、耐ブロッキング性を向上させて長期の保存性にも優れる画像形成装置が提案されている。
しかしながら、本方式の画像形成装置において高画像面積率で高枚数の画像通紙を行ったところ、以下のような不具合が発生した。それは、定着の際、トナーを離型させるために含有されているワックスが離型の際定着部材に微量に残る。本来これは離型性を出すため必然のこととなり、オフセット防止に役立つものであるが、これが定着部材上で滞留するため、高温状態で保たれてしまい、離型剤が揮発し、定着装置付近に付着、堆積する。そして定着の輻射熱により固まりとなって流れ出し、画像状にオイル付着状の画像として発生してしまう不具合となってしまった。
【0007】
また、特許文献11では、トナー中の揮発分が0.1重量%未満であり、ワックス成分がDSC曲線において昇温時に70〜130℃の領域に最大ピークを持ち、最大ピーク温度に対して±9℃の範囲に降温時の最大発熱ピークを有するトナーにより、定着性と耐オフセット性を向上し、感光体や現像剤端持体に悪影響を及ぼさないトナーが得られるとしている。しかしながら、トナーとしての揮発分を規定しこれが少なくても、ワックスが単離し、揮発し、定着部分に堆積し画像形成装置内を汚染する現象についてはワックス単体での揮発性が原因となるため、機内汚染を回避することができず、オイル付着画像異常画像となってしまう課題を解決することは出来なかった。
【0008】
また近年、電子写真技術を用いたカラー複写機やカラープリンターが広く使用されるようになってきたが、これら機械のフルカラーの再現については比較的良好であるが、モノクロ画像についてはモノクロの専用機に比べて速度が遅いことや、モノクロ画像の光沢が高く、モノクロ専用機と異なり、改良を必要とされる場合がある。
特に、モノクロ画像については従来から光沢が低い、いわゆる艶消し調の物が好まれている為、光沢があるカラー機でのモノクロ画像については、その光沢が敬遠される傾向にある。この為黒トナーについて、光沢を抑える手段として、一般のモノクロ専用機の黒トナーと同様の樹脂や軟化点の比較的高い高分子の樹脂を用いる方法がある。
たとえば、特許文献12では、黒色トナーの樹脂成分の分子量分布及び溶融粘度を規定し、白黒複写画像形成時とカラー複写画像の形成時とで定着の熱量を変えることで光沢を調整するとしている。しかし黒トナーの緒物性を規定してもカラー再現において多色トナーと黒トナーの光沢が著しく異なる可能性が生じる。そうすると人間の顔など黒色部を含む写真画像で光沢の差から著しく見苦しくなったりする。特に文字部と写真部が混在する場合においては、カラー写真のハイライト部と文字部で非常に大きな光沢度差があり文字、画像ともに見にくくなる。
【0009】
また仮に、カラーと黒がカラー再現において同等の光沢であったとしても一般にカラー写真画像等は現像量に幅があり、淡い色の再現などにおいては低現像郎部分が多くなるが、特に黒色部分については現像量が多くなってしまう。概してこのような画像では光沢ムラが発生しやすく黒色部の光沢が非常に高い見辛い画像になってしまう。
これを解消する手段として、特許文献13では、カラー画像におけるカラー及び黒トナーの光沢差を規定したものがあるが、これについてはモノクロ画像の出力の際、黒トナーの光沢が完全に消すことが出来ずいわゆる艶消し調とならない為、白黒を出せるカラー機としては存在しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、トナー中に使用される結着樹脂に結晶性と非晶性のポリエステルを有し、結晶性ポリエステルと、離型剤の特性と制御することで、低温定着性を発現させるとともに耐オフセットを向上させ定着性を良好とするとともに、黒色部の光沢度を抑制し、画像全体としてバランスがとれて見やすい画像を提供するとともに、モノクロ画像についてはユーザーに好まれる艶消し画像を得る電子写真用トナー、現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明の電子写真用トナーは、少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色の電子写真方式の画像形成装置に使用する電子写真用トナーにおいて、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を少なくとも1種以上からなる結着樹脂成分と離型剤と着色剤とを含み、DSC昇温(1回目)の50℃−100℃の融解熱量[mJ/mg]をEとした時にブラックトナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EBkとカラートナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EFc(EFcは3色の平均熱量)が、0.8<EBk/EFc<0.95の関係を満足することを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、前記結晶性ポリエステルの融点Mp(Cpes)が55〜80℃の範囲にあることを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、前記離型剤の融点が60℃〜80℃の範囲にあることを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、前記電子写真用トナーを形成するトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー材料液を水系媒体中に分散させ、得られた分散液から有機溶媒を除去することによって得られる電子写真用トナーを用いることを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分のGPC測定のそれぞれの値が、重量平均分子量(Mw)が3000〜30000の範囲で、数平均分子量(Mn)が1000〜10000の範囲で、分子量分布(Mw/Mn)が1〜10の範囲であることを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分のGPCのそれぞれの値が、重量平均分子量(Mw)が5000〜15000の範囲で、数平均分子量(Mn)が2000〜10000の範囲で、分子量分布(Mw/Mn)が1〜5の範囲であることを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、前記トナー材料液が結着樹脂成分として、結着樹脂前駆体を含有することを特徴とする。
また、本発明の電子写真用トナーは、さらに、有機溶媒中に、少なくとも着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル系樹脂から成る結着樹脂前駆体、及びこれら以外の結着樹脂成分を溶解・分散させて得られる油相に、前記結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物を溶解させた後、前記油相を微粒子分散剤の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ、有機溶媒を除去して得られることを特徴とする。
【0012】
本発明の現像剤は、電子写真方式の画像形成に用いる現像剤において、上記のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いることを特徴とする。
本発明の現像装置は、像担持体に対向して配置され、前記像担持体上の潜像を現像する現像装置において、上記のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いることを特徴とする。
本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と現像装置及とを備え、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、上記のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、潜像を形成する像担持体と、像担持体表面に均一に帯電を施す帯電装置と、帯電した像担持体表面に露光し潜像を書き込む露光装置と、像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像装置と、像担持体表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置と、像担持体表面の可視像を直接又は中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する転写装置と、記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置とを備える画像形成装置において、上記のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決する手段である本発明によって、以下のような特有の効果を奏する。
本発明の電子写真用トナー、現像剤、プロセスカートリッジ及び画像形成装置によって、黒色部の光沢度を抑制し、画像全体としてバランスがとれて見やすい画像を提供するとともに、モノクロ画像についてはユーザーに好まれる艶消し画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のトナーが用いられる画像形成装置の一実施形態であるタンデム型の内部の構成を示す概略図である。
【図2】本発明のトナーが用いられる画像形成装置の一実施形態で、画像形成部の主要な構成を示す概略図である。
【図3】4つのプロセスカートリッジのうち1つを拡大して、その構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0016】
少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色の電子写真方式に用いる電子写真用トナー(以下、単に「トナー」と記す。)において、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を有する結着樹脂成分と離型剤とを含み、DSC昇温(1回目)の50℃〜100℃の融解熱量[mJ/mg]をEとした時ブラックトナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EBkとカラートナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EFc(EFcは3色の平均熱量)が、0.8<融解熱量比(EBk/EFc)<0.95の範囲を満足する。
さらに、イエロー、シアン、マゼンタ、その他の特殊な用途のカラートナーについては、光沢は必要であるが、ブラックに関してはフルカラーに比べ光沢が低いのが好ましい。発明者らは実験の結果より50℃〜100℃の融解熱量と光沢に関係がある事を見出し、トナーの融解熱量を調整することで画像の光沢制御ができることがわかる。
また、ブラックについて他色に比べ若干融解熱量を減量させることとなるが、上述の通りフルカラー画像においてもブラックの色重ねは少なく比較的低付着量で使用されるため低温定着性にはほとんど影響がない。
融解熱量比(EBk/EFc)が0.8以下となると、ブラックトナーの低温定着性に懸念が生じる。一方、融解熱量比(EBk/EFc)が0.95以上となると、ブラックとの光沢差が得られなくなる事から、有意性がなくなりユーザが望む画像が得られなくなる。ブラックとカラーの光沢差は一律には決まらないが、ブラックの光沢はカラー光沢の50〜90%程度であるとバランスが取れていると考えられる。
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。このトナーは、以下に示す画像形成装置1で、用いられる。
図1は、本発明のトナーが用いられる画像形成装置の一実施形態であるタンデム型の内部の構成を示す概略図である。
図2は、本発明のトナーが用いられる画像形成装置の一実施形態で、画像形成部の主要な構成を示す概略図である。
本発明に係る画像形成装置1は、上の方から、置かれた原稿を自動的に搬送する自動原稿搬送装置(ADF)5と、原稿を読み取る読取装置4、トナー画像を形成する画像形成部6、そして、その下に給紙装置70が配置されている。その他に、読取装置4と画像形成部6との間に、画像が形成された記録部材9を積載する排紙装置90は配置されている。
画像形成装置1は、その中央部に画像形成部6が配置されている。画像形成部6では、その内部の略中央に、画像形成ユニットとしてプロセスカートリッジ2をブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナーに対応した4つを並列に並べたタンデム型に配列している。なお、図1及び図2で、各色トナーに対応した4つプロセスカートリッジ2の配列が異なるが、この配列は所望の画質に応じて適宜変更可能である。その上に、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトで、4つのローラ531、532、533、534に掛け回して支持され、回転駆動する中間転写ベルト51を備えている。
また、図1及び図2を参照すると、4つのプロセスカートリッジの下方には、帯電した各感光体3の表面に各色の画像データに基づいて露光をし、潜像を形成する露光装置9が備えられている。中間転写ベルト51を挟んで、各感光体3と対向する位置には、感光体3上に形成されたトナー像を中間転写ベルト51上に一次転写する一次転写ローラ52がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ52は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。
【0018】
中間転写ベルト51の支持ローラ532で支持された部分の外側には、二次転写ローラ54が圧接されている。二次転写ローラ54は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。二次転写ローラ54と中間転写ベルト51との接触部が二次転写部であり、中間転写ベルト51上のトナー像が記録部材9に転写される。
中間転写ベルト51の支持ローラ531で支持された部分の外側には、二次転写後の中間転写ベルト51の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置55が設けられている。
二次転写部の上方には、記録部材9上のトナー像を記録部材9に半永久的に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、定着ローラ71と、これに対向し、圧接して配置される、内部にハロゲンヒータを有する加圧ローラ72とから構成されている。この他に、定着ローラ71の代わりに、図示しないが、内部にハロゲンヒータを有する加熱ローラ及び定着ローラに巻き掛けられた無端の定着ベルトを用いても良い。
画像形成装置の下部には、記録部材9を載置し、二次転写部に向けて記録部材9を送り出す給紙装置60が備えられている。
【0019】
以下、各装置について詳述する。
感光体3は、アモロファスシリコーン、セレン等の金属、または、有機系であり、ここでは、有機感光体で説明する。有機系静電潜像担持体11としては、導電性支持体上に、フィラー分散した樹脂層、電荷発生層及び電荷輸送層を有する感光層、その表面にフィラーを分散させた保護層を有する。
感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層構成の感光層でも構わないが、電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層型が感度、耐久性において優れている。
電荷発生層は、電荷発生能を有する顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。結着樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し0〜500質量部、好ましくは10〜300質量部が適当である。
また、電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリルニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、保護層が感光層の上に設けられることもある。保護層を設け、耐久性を向上させることによって、本発明の高感度で異常欠陥のない静電潜像担持体11を有用に用いることができる。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、シリカ等の無機フィラー、また有機フィラーを分散したもの等を添加することができる。保護層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また静電潜像担持体11を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、保護層9の最表層側において全固形分に対するフィラーの比で5質量%以上、好ましくは10質量%以上、50質量%以下、好ましくは30質量%以下程度が良好である。
【0020】
帯電装置10は、帯電部材として導電性芯金の外側に中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ11を備える。帯電ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の電圧が印加される。帯電ローラ11は、感光体3に対して微小な間隙をもって配設される。この微小な間隙は、例えば、帯電ローラ11の両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付けるなどして、スペーサ部材の表面を感光体3表面に当接させることで、設定することができる。また、帯電ローラ11は、感光体に接触させずに、近接させても良い。ローラ形状であり、感光体3に近接している部分で、放電して、感光体3を帯電させることができる。また、非接触にすることで、帯電ローラ11の転写残トナーによる汚れの発生を抑えることができる。また、帯電ローラ11には、帯電ローラ11表面に接触してクリーニングする帯電クリーナローラ13が設けられている。
現像装置40は、感光体3と対向する位置に、図示しないが内部に磁界発生手段のマグネットを備える現像ローラ41が配置されている。現像ローラ41の下方には、図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像ローラ41へ汲み上げる機構を併せて有する2つの供給・撹拌スクリュ43、44が備えられている。現像ローラ41によって搬送されるトナーと磁性キャリア(以下、単に「キャリア」と記す。)とからなる二成分現像剤(以下、単に「現像剤」と記すことがある。)は、規制部材42によって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像ローラ41に担持される。現像ローラ41は、感光体3との対向位置において同方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを感光体3の潜像面に供給する。そして、現像ローラ41上の現像剤を現像剤分離板46で分離して現像装置40内に回収し、補給されたトナーとサイド攪拌させて帯電させ、現像工程に供する。また、未使用のトナーが収納された各色のトナーカートリッジ45Y、45C、45M、45Kが、着脱可能に感光体3上部の空間に収納される。図示しないモーノポンプやエアーポンプなどのトナー搬送手段により、図2に示すように、各現像装置5に必要に応じトナーを、トナー補給経路48を通じて供給するようになっている。消耗の多いブラックトナー用のトナーカートリッジ45Kを、特に大容量としておくことも可能である。
【0021】
クリーニング装置20は、クリーニングブレード21が感光体3と当接・離間する機構を備え、画像形成装置本体の制御部にて、任意に当接・離間させることができる。クリーニングブレード21をカウンタ方式で、感光体3に当接し、これによって、感光体3上に残留するトナー、汚れとして付着している記録部材のタルク、カオリン、炭酸カルシウム等の添剤を感光体3から除去してクリーニングする。除去したトナー等は、廃トナー回収コイル22で、図示しない廃トナー容器に搬送し、貯留する。
潤滑剤塗布装置30は、固定されたケースに収容された固形潤滑剤32と、固形潤滑剤32に接触して潤滑剤を削り取り、感光体3に塗布するブラシローラ31とブラシローラ31で塗布された潤滑剤を均す潤滑剤塗布ブレード34を備える。固形潤滑剤32は、直方体状に形成されており、加圧バネ33によってブラシローラ31側に付勢されている。固形潤滑剤32はブラシローラ31によって削り取られ消耗し、経時的にその厚みが減少するが、加圧バネ33で加圧されているために常時ブラシローラ31に当接している。ブラシローラ31は、回転しながら削り取った潤滑剤を感光体3表面に塗布する。
本実施形態においては、上記ブラシローラ31による潤滑剤塗布位置に対して移動方向の下流側の感光体表面に潤滑剤均し手段としての潤滑剤塗布ブレード34を当接させている。潤滑剤塗布ブレード34は弾性体であるゴムから構成されているものであり、クリーニング手段としての機能も持たせ、感光体3の移動方向に対してカウンタ方向に当接してある。
【0022】
図3は、4つのプロセスカートリッジのうち1つを拡大して、その構成を示す概略図である。いずれのプロセスカートリッジ2でも同様の構成であるので、この図においては、色の区別を示すK、Y、M、Cの表示を省略する。各プロセスカートリッジ2は感光体3K、3Y、3M、3Cを有し、各感光体3の周りには、感光体3表面に電荷を与える帯電装置10、感光体3表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置40、感光体3表面に潤滑剤32を塗布する潤滑剤塗布装置30、トナー像転写後の感光体3表面のクリーニングをするクリーニング装置20がそれぞれ配置されている。
上述した各装置は、さらに、帯電装置10は、帯電ローラ11と図示しない帯電ローラ加圧バネと帯電クリーナローラ12とから構成されている。潤滑剤塗布装置30は、固形潤滑剤32と潤滑剤加圧バネ33と潤滑剤を塗布するブラシローラ31と潤滑剤を均す潤滑剤塗布ブレード34とから構成されている。現像装置40は、感光体3に二成分現像剤(以下、単に「現像剤」と記す。)を搬送する現像ローラ41、現像ローラ41上の現像剤量を規制する現像規制部材42、補給されたトナーをキャリアと攪拌しながら現像ローラ41に供給する供給・撹拌スクリュ43、44、現像ローラ41上の現像剤を分離させる現像剤分離板46等から構成されている。クリーニング装置20は、クリーニングブレード21と廃トナー回収コイル22とから構成されている。
図3では、これで、一つのプロセスカートリッジ2を形成しているが、プロセスカートリッジ2は、感光体3と、帯電装置10、現像装置40、クリーニング装置20、潤滑剤塗布装置のいずれか1つ以上を一体的に支持していて、画像形成装置1に着脱可能になっていればよく、本実施形態のプロセスカートリッジ2に限定するものではない。
【0023】
図1ないし図3を参照して、画像形成装置1は、感光体3上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われ、感光体3上に所望のトナー像が形成される。
感光体3は、不図示の駆動部によって回転駆動される。そして、帯電装置10の位置で、感光体3の表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体3の表面は、不図示の露光部から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体3の表面は、現像装置40との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、所望のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体3の表面は、中間転写ベルト51及び一次転写ローラ52との対向位置に達して、この位置で感光体3上のトナー像が中間転写ベルト51上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体3上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
その後、感光体3の表面は、クリーニング装置20との対向位置に達して、この位置で感光体3上に残存した未転写トナーがクリーニングブレード21によって回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体3の表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体3上の残留電位が除去される。
こうして、感光体3上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0024】
図1ないし図3を参照して、具体的に画像形成動作を説明する。
画像形成部6の下方に配設された露光装置7から、画像情報に基いたレーザ光Lが、各プロセスカートリッジ2K、2Y、2M、2Cの感光体3K、3Y、3M、3C上に向けて照射される。
露光装置7は、光源からレーザ光Lを発して、そのレーザ光Lを回転駆動されたポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学素子を介して感光体3上に照射する。その後、現像工程を経て各感光体3上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト51上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト51上にカラー画像が形成される。
4つの1次転写バイアスローラ52K、52Y、52M、52Cは、それぞれ、中間転写ベルト51を感光体3K、3Y、3M、3Cとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ52K、52Y、52M、52Cに、トナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。
【0025】
そして、中間転写ベルト51は、各1次転写バイアスローラ52K、52Y、52M、52Cの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体3K、3Y、3M、3C上の各色のトナー像が、中間転写ベルト51上に重ねて1次転写される。
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト51は、二次転写ローラ54との対向位置に達する。この位置では、二次転写バックアップローラともなっている中間転写ベルト51の支持ローラ532が、二次転写ローラ54との間に中間転写ベルト51を挟み込んで二次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト51上に形成されたカラートナー像は、この二次転写ニップの位置に搬送された転写紙等の記録部材9上に転写される。このとき、中間転写ベルト51には、記録部材9に転写されなかった未転写トナーが残存する。
中間転写ベルト51上に残存する未転写トナーは、クリーニング装置20によって除去されることで初期状態に復帰する。
こうして、中間転写ベルト51上で行われる、一連の転写プロセスが終了する。
【0026】
ここで、二次転写ニップの位置に搬送された記録部材9は、画像形成装置1の下方に配設された給紙装置60にある給紙カセット61から、給紙ローラ62やレジストローラ対63等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙装置60には、転写紙等の記録部材9が複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ62が回転駆動されると、一番上の記録部材9がレジストローラ対63のローラ間に向けて給送される。
レジストローラ対63に搬送された記録部材9は、回転駆動を停止したレジストローラ対63のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト51上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対63が回転駆動されて、記録部材9が二次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録部材9上に、所望のカラー画像が転写される。
その後、二次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録部材9は、定着装置70の位置に搬送される。
二次転写ニップの上方に設けられている定着装置70は、定着ローラ71及び圧力ローラ72による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録部材9上に定着される。
その後、記録部材9は、排紙ローラ対93のローラ間を経て、画像形成装置1の外へと排出される。
排紙ローラ対93によって画像形成装置1外に排出された記録部材9は、出力画像として、排紙部91上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0027】
このような画像形成装置1で、磁性キャリアとトナーとを有する二成分現像剤を用いている。現像剤は磁性・非磁性一成分現像剤と二成分現像剤とがある。二成分現像剤の方が、現像ローラ41上への搬送量、トナーの帯電量の制御が容易であるため、広く用いられている。
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、90〜98重量%であることが好ましく、93〜97重量%がさらに好ましい。
キャリアは、特に限定されないが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有することが好ましい。芯材は、体積平均粒径が10〜150μmであることが好ましく、20〜80μmがさらに好ましい。樹脂層の材料としては、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体のターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。また、樹脂層は、必要に応じて、導電粉等を含有してもよい。この被覆する樹脂
層の厚さは、0.1〜4μmであることが好ましく、0.5〜2μmがさらに好ましい。
トナーとしては、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等のトナーバインダーと、着色剤とを含有し、必要に応じて、荷電制御剤、ワックス等のその他の成分を含有する。これらの材料を各種有機溶媒に溶解し、着色剤を分散、かつ、離型剤を分散又は溶解し、これを前記トナー製造方法により微小液滴とし乾燥固化させることで、目的とするトナー粒子を作製することが可能である。トナーの体積平均粒径は、4〜10μmであることが好ましく、5〜8μmがさらに好ましい。また、流動性等を改質するために無機微粒子、有機微粒子の外添剤を含んでいても良い。また、本発明のトナーはキャリアを使用しない一成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
さらに、本発明の電子写真用トナーに関して、詳述する。はじめに、トナーを形成するのに用いる材料について説明する。
【0028】
上述したように、少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色の電子写真方式に用いる電子写真用トナー(以下、単に「トナー」と記す。)において、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を有する結着樹脂成分と離型剤とを含み、DSC昇温(1回目)の50℃〜100℃の融解熱量[mJ/mg]をEとした時ブラックトナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EBkとカラートナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EFc(EFcは3色の平均熱量)が、0.8<融解熱量比(EBk/EFc)<0.95の範囲を満足する。さらに、イエロー、シアン、マゼンタ、その他の特殊な用途のカラートナーについては、光沢は必要であるが、ブラックに関してはフルカラーに比べ光沢が低いのが好ましい。発明者らは実験の結果より50℃〜100℃の融解熱量と光沢に関係がある事を見出し、トナーの融解熱量を調整することで画像の光沢制御ができることがわかった。
(有機溶媒)
有機溶媒としては、高温で結晶性ポリエステル樹脂を完全に溶解して均一溶液を形成し、その反面、低温に冷却すると結晶性ポリエステル樹脂と相分離し、不透明な不均一溶液を形成するものが好ましい。詳しくは、結晶性ポリエステル樹脂の溶融温度(Tm)を基準として、(Tm−40)℃未満の温度では非溶媒の特性を示し、それ以上の温度では良溶媒の特性を示すものであればよく、具体例としてトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0029】
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、例として、アルコール成分として炭素数2〜12の飽和脂肪族ジオール化合物、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12ドデカンジオールおよびこれらの誘導体と、少なくとも酸性分として二重結合(C=C結合)を有する炭素数2〜12のジカルボン酸、もしくは、炭素数2〜12の飽和ジカルボン酸、特にフマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1、8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12ドデカン二酸およびこれらの誘導体を用いて合成される結晶性ポリエステルが好ましい。中でも、吸熱ピーク温度と吸熱ショルダー温度の差をより小さくする点で、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12ドデカンジオールのいずれか一種類のアルコール成分と、フマル酸、1,4−ブタン二酸、1,6−ヘキサン二酸、1、8−オクタン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸のいずれか一種類のジカルボン酸成分のみで構成されることが好ましい。
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性および軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
また、結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm−1もしくは990±10cm−1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
結晶性ポリエステルの融点Mp(Cpes)に関しては、55〜80℃の範囲にある。融点55℃より低いと耐熱保存性が悪くなり、使用できなくなる。一方80℃を超えると狙いの低温定着に対して、トナーの定着性が得られなくなる。したがって、55℃〜80℃で使用することが好ましい。さらに、結晶性ポリエステルの融点は60℃〜75℃が好ましい。これは低温定着性を発現させるためとなる。
分子量については、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化する。この観点から、鋭意検討した結果、o−ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量の測定から、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5〜4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3000〜30000、数平均分子量(Mn)で1000〜10000、分子量分布(Mw/Mn)が1〜10であることが好ましい。更には、重量平均分子量(Mw)で5000〜15000、数平均分子量(Mn)で2000〜10000、分子量分布(Mw/Mn)が1〜5であることが好ましい。
【0030】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であることが好ましく、一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。更に、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0〜50mgKOH/g、より好ましくは5〜50mgKOH/gのものが好ましい。
また、結晶性ポリエステルの量はフルカラートナーにおいて3〜25%が好ましく、5〜15%が更に好ましい。5%以下となると低温定着性を発現しにくくなり、25%以上となると保存性の維持が難しくなる。
【0031】
前記結着樹脂成分は、結着樹脂前駆体を含有することが好ましい。
また、トナーとしては、有機溶媒中に、少なくとも着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル系樹脂から成る結着樹脂前駆体、及びこれら以外の結着樹脂成分を溶解・分散させて得られる油相に、前記結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物を溶解させた後、前記油相を微粒子分散剤の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ、有機溶媒を除去して得られるトナーが好ましい。
【0032】
(結着樹脂前駆体)
結着樹脂前駆体としては、変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂前駆体が好ましく、イソシアネートやエポキシなどにより変性されたポリエステルプレポリマーを挙げることができる。これは、活性水素基を持つ化合物(アミン類など)と伸長反応し、離型幅(定着下限温度とホットオフセット発生温度の差)の向上に効果をおよぼす。このポリエステルプレポリマーの合成方法としては、ベースとなるポリエステル樹脂に、従来公知のイソシアネート化剤やエポキシ化剤などを反応させることで容易に合成することが出来る。イソシアネート化剤としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。また、エポキシ化剤としては、エピクロロヒドリンなどをその代表例としてあげることが出来る。
【0033】
イソシアネート化剤の比率は、イソシアネート基[NCO]と、ベースとなるポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、このポリエステルプレポリマーのウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
このポリエステルプレポリマー中のイソシアネート化剤の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を超えると低温定着性が悪化する。
また、このポリエステルプレポリマー中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、伸長反応後のウレア変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
前記結着樹脂前駆体は、重量平均分子量が1×10以上3×10以下であることが好ましい。
【0034】
(結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物)
結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物としては、活性水素基を有する化合物が挙げられ、その代表として、アミン類をあげることができる。アミン類としては、ジアミン化合物、3価以上のポリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノメルカプタン化合物、アミノ酸化合物、および、これらのアミノ基をブロックした化合物などが挙げられる。ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール化合物としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン化合物としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸化合物としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。これらのアミノ基をブロックした化合物としては、前記アミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類のうち好ましいものは、ジアミン化合物およびジアミン化合物と少量のポリアミン化合物の混合物である。
【0035】
(着色剤)
本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0036】
本発明で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
本マスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得る事ができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を用いる事ができる。またいわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶媒とともに混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶媒成分を除去する方法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いる事ができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0037】
(離型剤)
離型剤は、融点が50〜120℃のワックスであることが好ましい。50℃以下であると耐熱保存性が悪くなり、使用できない。一方120℃を超えると狙いなの定着温度で十分な離型性を得られなくなる。より好ましくは60℃〜80℃であると狙いの定着温度でよりよい離型性を得られる事から好ましい。
このようなワックスは、定着ローラとトナー界面の間で離型剤として効果的に作用することができるため、定着ローラにオイル等の離型剤を塗布しなくても高温耐オフセット性を向上させることができる。
なお、ワックスの融点は、示差走査熱量計であるTG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて、最大吸熱ピークを測定することにより求められる。
離型剤としては、以下に示す材料を用いることができる。
ロウ類及びワックス類としては、カルナバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス等が挙げられる。
また、これらの天然ワックス以外の離型剤としては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス等が挙げられる。
さらに、1、2−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子である、ポリメタクリル酸n−ステアリル、ポリメタクリル酸n−ラウリル等のポリアクリレートのホモポリマー又はコポリマー(例えば、アクリル酸n−ステアリルーメタクリル酸エチル共重合体等)等の側鎖に長鎖アルキル基を有する結晶性高分子も離型剤として用いることができる。
【0038】
(帯電制御剤)
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
帯電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、もちろん有機溶媒に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0039】
(非結晶性ポリエステル樹脂)
本発明において、前記結着樹脂成分として非結晶性の未変性ポリエステル樹脂を用いる。変性ポリエステル系樹脂からなる結着樹脂前駆体を架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂と未変性のポリエステル樹脂は、少なくとも一部が相溶していることが好ましい。これにより、低温定着性及び耐ホットオフセット性を向上させることができる。このため、変性ポリエステル樹脂と未変性のポリエステル樹脂のポリオールとポリカルボン酸は、類似の組成であることが好ましい。また、未変性ポリエステル樹脂として、結晶性ポリエステル分散液に用いた非結晶性ポリエステル樹脂も未変性であれば、用いることができる。
未変性のポリエステル樹脂の吸熱ショルダー温度は、45℃以上65℃未満であることが好ましく、更には45℃以上55℃未満であることが好ましい。45℃未満であると、トナーの耐熱保存性が悪化する恐れがある。65℃以上であるとトナーの低温定着性が悪化する恐れがある。
未変性のポリエステル樹脂の酸価は、通常、1〜50KOHmg/gであり、5〜30KOHmg/gが好ましい。これにより、酸価が1KOHmg/g以上であるため、トナーが負帯電性となりやすく、さらには、紙への定着時に、紙とトナーの親和性が良くなり、低温定着性を向上させることができる。しかしながら、酸価が50KOHmg/gを超えると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下することがある。本発明において、未変性のポリエステル樹脂は、酸価が1〜50KOHmg/gであることが好ましい。
【0040】
未変性のポリエステル樹脂の水酸基価は、5KOHmg/g以上であることが好ましい。
水酸基価は、JIS K0070−1966に準拠した方法を用いて測定される。
具体的には、まず、試料0.5gを100mlのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを加える。次に、100±5℃の温浴中で1〜2時間加熱した後、フラスコを温浴から取り出して放冷する。さらに、水を加えて振り動かして無水酢酸を分解する。次に、無水酢酸を完全に分解させるために、再びフラスコを温浴中で10分以上加熱して放冷した後、有機溶媒でフラスコの壁を十分に洗う。
さらに、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113−SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で水酸基価を測定し、解析ソフトLabX
Light Version 1.00.000を用いて解析する。なお、装置の校正には、トルエン120mlとエタノール30mlの混合溶媒を用いる。
【0041】
このとき、測定条件は、以下の通りである。
Stir
Speed[%] 25
Time[s] 15
EQP titration
Titrant/Sensor
Titrant CH3ONa
Concentration[mol/L] 0.1
Sensor DG115
Unit of measurement mV
Predispensing
to volume
Volume[mL] 1.0
Wait time[s] 0
Titrant addition Dynamic
dE(set)[mV] 8.0
dV(min)[mL] 0.03
dV(max)[mL] 0.5
Measure mode Equilibrium
controlled
dE[mV] 0.5
dt[s] 1.0
t(min)[s] 2.0
t(max)[s] 20.0
Recognition
Threshold 100.0
Steepest jump
only No
Range No
Tendency None
Termination
at maximum
volume[mL] 10.0
at potential No
at slope No
after number
EQPs Yes
n=1
comb.termination
conditions No
Evaluation
Procedure Standard
Potential1 No
Potential2 No
Stop for reevaluation No
【0042】
なお、ウレア変性ポリエステル樹脂は、未変性のポリエステル樹脂以外に、ウレア結合以外の化学結合で変性されているポリエステル樹脂、例えば、ウレタン結合で変性されているポリエステル樹脂と併用することができる。
トナー組成物がウレア変性ポリエステル樹脂等の変性ポリエステル樹脂を含有する場合、変性ポリエステル樹脂は、ワンショット法等により製造することができる。
一例として、ウレア変性ポリエステル樹脂を製造方法について説明する。
まず、ポリオールとポリカルボン酸を、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイド等の触媒の存在下で、150〜280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら生成する水を除去して、水酸基を有するポリエステル樹脂を得る。次に、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを40〜140℃で反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得る。さらに、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を0〜140℃で反応させ、ウレア変性ポリエステル樹脂を得る。
ウレア変性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、通常、1000〜10000であり、1500〜6000が好ましい。
なお、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを反応させる場合及びイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を反応させる場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。
溶媒としては、芳香族溶媒(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等);エーテル類(テトラヒドロフラン等)等のイソシアネート基に対して不活性なものが挙げられる。
なお、未変性のポリエステル樹脂を併用する場合は、水酸基を有するポリエステル樹脂と同様に製造したものを、ウレア変性ポリエステル樹脂の反応後の溶液に混合してもよい。
【0043】
油相に含有される結着樹脂成分としては、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、結着樹脂前駆体、未変性樹脂を併用してもよいが、更に、これらの樹脂以外の結着樹脂成分を含有してもよい。結着樹脂成分としては、ポリエステル樹脂を含有することが好ましく、ポリエステル樹脂を50重量%以上含有することがさらに好ましい。ポリエステル樹脂の含有量が50重量%未満であると、低温定着性が低下することがある。結着樹脂成分のいずれもがポリエステル樹脂であることが特に好ましい。
なお、ポリエステル樹脂以外の結着樹脂成分としては、ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン又はスチレン置換体の重合体;スチレン‐p‐クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0044】
(水系媒体中でのトナー製造法)
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。混和可能な溶媒としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
トナー粒子を形成する、結着樹脂前駆体、着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル分散液、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめ、これらのトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、着色剤、離型剤、帯電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜60分である。分散時の温度としては、通常、0〜80℃(加圧下)、好ましくは10〜40℃である。
【0045】
トナー組成物100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常100〜1000重量部である。100重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。1000重量部を超えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
ポリエステルプレポリマーと活性水素基を有する化合物を反応させる方法としては、水系媒体中でトナー組成物を分散する前に活性水素基を有する化合物を加えて反応させても良いし、水系媒体中に分散した後に活性水素基を有する化合物を加えて粒子界面から反応を起こしても良い。この場合、製造されるトナー表面に優先的にポリエステルプレポリマーによる変性したポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
トナー組成物が分散された油相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0046】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0047】
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
また水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いる事が出来る。
また高分子系保護コロイドもしくは、水に不溶な有機微粒子により分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0048】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ポリエステルプレポリマーが反応し変性したポリエステルが可溶の溶媒を使用することもできる。溶媒を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。溶媒は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。ポリエステルプレポリマー100部に対する溶媒の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶媒を使用した場合は、伸長及び/又は架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
伸長及び/又は架橋反応時間は、ポリエステルプレポリマーと活性水素基を有する化合物の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは30分〜24時間である。反応温度は、通常、0〜100℃、好ましくは10〜50℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することもできる。具体的にはトリエチルアミンなどの3級アミンやイミダゾールなどをあげることができる。
【0049】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。あるいは、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行っても良いが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、または粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際微粒子、または粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0050】
(外添剤)
トナーは、流動性や現像性、帯電性を補助するために外添剤を含有してもよい。
外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、特に5nm〜500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20〜500m/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に0.01〜2.0重量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
この他高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
感光体や中間転写ベルトに残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0051】
トナーの酸価は、低温定着性及び耐高温オフセット性に対して、重要な指標であり、未変性のポリエステル樹脂の末端カルボキシル基に由来するが、低温定着性(定着下限温度、ホットオフセット発生温度等)を制御するために、0.5〜40KOHmg/gであることが好ましい。
酸価が40KOHmg/gを超えると、反応性変性ポリエステル樹脂の伸長反応及び/又は架橋反応が不十分となり、耐高温オフセット性が低下することがある。また、酸価が0.5KOHmg/g未満では、製造時の塩基による分散安定性を向上させる効果が得られなくなったり、反応性変性ポリエステル樹脂の伸長反応及び/又は架橋反応が進行しやすくなったりして、製造安定性が低下することがある。
本発明において、酸価は、JIS K0070−1992に準拠した方法を用いて測定される。
具体的には、まず、試料0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mlに添加して、23℃で約10時間撹拌することにより溶解させる。次に、エタノール30mlを添加して試料溶液とする。なお、試料が溶解しない場合は、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いる。さらに、電位差自動滴定装置DL−53 Titrator(メトラー・トレド社製)及び電極DG113‐SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃で酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析する。
なお、装置の校正には、トルエン120mlとエタノール30mlの混合溶媒を用いる。
このとき、測定条件は、水酸基価の場合と同様である。
酸価は、以上のようにして測定することができるが、具体的には、予め標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、式酸価[KOHmg/g]=滴定量[ml]×N×56.1[mg/ml]/試料重量[g](ただし、Nは、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクター)により酸価を算出する。
【0052】
また、結晶性ポリエステル、非晶性ポリエステル、トナーの吸熱ピーク温度、吸熱ショルダー温度は、例えば、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「DSC−60」、島津製作所製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の吸熱ショルダー1、吸熱ピーク、吸熱ショルダー2は、下記手順により測定できる。
まず、ポリエステル樹脂約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱する。その後、150℃から降温速度10℃/minにて0℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minにて150℃まで加熱し、示差走査熱量計(「DSC−60」、島津製作所製)を用いてDSC曲線を計測する。
得られたDSC曲線から、DSC−60システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、低温及び高温域の安定状態をもとにベースラインをひき、そこから50〜100℃範囲の面積換算で吸熱量を測定する。
【0053】
また、粒度分布は、コールターカウンター法を用いて測定される。
粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−II及びコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
本発明においては、コールターカウンターTA−II型測定装置に、個数分布及び体積分布を出力するインターフェイス(日科技研社製)を介して、PC−9801パーソナルコンピューター(NEC社製)を接続して、粒度分布の測定を行う。
具体的には、まず、電解液100〜150ml中に、分散剤として、界面活性剤(好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加える。なお、電解液とは、1級塩化ナトリウムを用いて、約1重量%の水溶液を調製したものであり、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。次に、試料を2〜20mg加えて懸濁させた後に、超音波分散機で1〜3分間分散させる。100μmアパーチャーを用いて、得られた分散液からトナーの体積及び個数を測定し、体積分布及び個数分布を算出する。
なお、チャンネルは、2.00μm以上2.52μm未満、2.52μm以上3.17μm未満、3.17μm以上4.00μm未満、4.00μm以上5.04μm未満、5.04μm以上6.35μm未満、6.35μm以上8.00μm未満、8.00μm以上10.08μm未満、10.08μm以上12.70μm未満、12.70μm以上16.00μm未満、16.00μm以上20.20μm未満、20.20μm以上25.40μm未満、25.40μm以上32.00μm未満及び32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径が2.00μm以上40.30μm未満の粒子を対象とする。
トナーの体積平均粒径は3μm以上7μm以下であることが好ましく、個数平均粒径に対する体積平均粒径の比が1.2以下であることが好ましい。また、粒径が2μm以下である成分を1個数%以上10個数%以下含有することが好ましい。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
【0055】
<結晶性ポリエステル>
〜結晶性ポリエステル樹脂1の合成〜
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,10−デカンニ酸2300g、1、8−オクタンジオール2530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で8時間反応させた後、215℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂1]を得た。DSCの熱特性(吸熱ピーク)、GPC測定での分子量を表1に示す。
〜結晶性ポリエステル樹脂2の合成〜
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,10−デカン二酸2300g、1、8−オクタンジオール2530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、170℃で7時間反応させた後、205℃に昇温して2時間反応させ、さらに7.8kPaにて1時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂2]を得た。DSCの熱特性(吸熱ピーク)、GPC測定での分子量を表1に示す。
〜結晶性ポリエステル樹脂3の合成〜
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,10−デカン二酸2300g、1、8−オクタンジオール2530g、ハイドロキノン4.9gを入れ、180℃で8時間反応させた後、210℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂3]を得た。DSCの熱特性(吸熱ピーク)、GPC測定での分子量を表1に示す。
〜結晶性ポリエステル樹脂4の合成〜
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコにフマル酸2160g、1、6−ヘキサンジオール2320g、ハイドロキノン4.9gを入れ、185℃で8時間反応させた後、205℃に昇温して3時間反応させ、さらに8.3kPaにて2時間反応させて[結晶性ポリエステル樹脂4]を得た。DSCの熱特性(吸熱ピーク)、GPC測定での分子量を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
<離型材>
(離型材1)
日本精蝋社製HNP−9を使用した。
【0058】
<非晶性ポリエステル>
〜非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)1樹脂の合成〜
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、イソフタル酸100部、テレフタル酸108部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で10時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸30部を入れ、180℃、常圧で3時間反応し、[非結晶性ポリエステル1]を得た。[非結晶性ポリエステル1]は、数平均分子量1800、重量平均分子量5500、Tg50℃、酸価20であった。
〜非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)2樹脂の合成〜
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、イソフタル酸100部、テレフタル酸108部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で220℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸30部を入れ、180℃、常圧で3時間反応し、[非結晶性ポリエステル2]を得た。非[結晶性ポリエステル2]は、数平均分子量1600、重量平均分子量4800、Tg55℃、酸価17であった。
【0059】
〜ポリエステルプレポリマーの合成〜
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価51であった。
次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。
〜ケチミンの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
〜マスターバッチ(MB)の合成〜
BK(ブラック):水1200部、カーボンブラック(Printex35デクサ製)〔DBP吸油量=42ml/100mg、pH=9.5〕540部、ポリエステル樹脂1200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、[マスターバッチBK]を得た。
M(マゼンタ):カーボンブラックの替わりにPigment.Red:269(DIC社製)を用いた以外はBKと動揺に実施し[マスターバッチM]を得た。
C(シアン):カーボンブラックの替わりにPigment.Blue:15−3を用いた以外はBKと動揺に実施し[マスターバッチC]を得た。
Y(イエロー):カーボンブラックの替わりにPigment.Yellow:74を用いた以外はBKと動揺に実施し[マスターバッチY]を得た。
【0060】
〜油相の作成〜
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[非結晶性ポリエステル1]378部、[離型材1]110部、荷電制御剤CCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチBK]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[非結晶性ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1042.3部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。
【0061】
〜結晶性ポリエステルの分散液作製〜
金属製2L容器に[結晶性ポリエステル樹脂1]を100g、酢酸エチル400gを入れ、75℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で27℃/分の速度で急冷した。これにガラスビーズ(3mmφ)500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)で10時間粉砕を行い、[結晶性ポリエステル分散液1]を得た。
また同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂1]を[結晶性ポリエステル樹脂2]に変更して、[結晶性ポリエステル分散液2]を得た。
また同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂1]を[結晶性ポリエステル樹脂3]に変更して、[結晶性ポリエステル分散液3]を得た。
また同様にして、[結晶性ポリエステル樹脂1]を[結晶性ポリエステル樹脂4]に変更して、[結晶性ポリエステル分散液4]を得た。
【0062】
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA−920で測定した体積平均粒径は、0.14μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
〜水相の調整〜
水990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業製)37部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
〜乳化・脱溶媒〜
[顔料・WAX分散液1]664部、[プレポリマー1]を109.4部、[結晶性ポリエステル分散液1]を73.9部、[ケチミン化合物1]4.6部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶媒した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0063】
〜洗浄・乾燥〜
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩った。
更に、得られたトナー母粒子100部に対し、外添剤としての1次粒子径15nmの疎水性シリカ0.5部と、平均粒径120nmの疎水性シリカ1.0部と疎水化酸化チタン0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、トナー[トナー1−BK]を製造した。
【0064】
イエロートナーについては、上記ブラックトナーの工程のうち油相作成工程で[マスターバッチBK]を[マスターバッチイエロー]に変更し、更に乳化時の[結晶性ポリエステル分散液1]を96部にした以外は[トナー1−BK]と同様に作成し[トナー1−Y]を作成した。
シアントナーについては、上記ブラックトナーの工程のうち油相作成工程で[マスターバッチBK]を[マスターバッチC]に変更し、更に乳化時の[結晶性ポリエステル分散液1]を96部にした以外は[トナー1−BK]と同様に作成し[トナー1−C]を作成した。
マゼンタトナーについては、上記ブラックトナーの工程のうち油相作成工程で[マスターバッチBK]を[マスターバッチM]に変更し、更に乳化時の[結晶性ポリエステル分散液1]を96部にした以外は[トナー1−BK]と同様に作成し[トナー1−M]を作成した。
【0065】
(実施例2〜8、比較例1〜4)
非結晶性ポリエステルの種類および結晶性ポリエステル分散液の種類と添加量調整する以外は実施例1と同様にトナーを作成した。したがって、ワックスの添加量は同じになっている。
(実施例9)
実施例1に対し、ブラックトナーのみワックスの添加量を意図的に4/5になるように調整した以外は実施例1と同様にトナーを作成した。
(実施例10)
未変性ポリエステル樹脂2 75部
結晶性ポリエステル3 8部
マスターバッチBK 8部
荷電制御剤:E−84 (オリエント化学社製) 3部
離型材1 5部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合後、ニーデックス混錬機を用い、表面を50℃に設定し混練を行い、圧延冷却、粗粉砕後、ジェットミル方式の粉砕器(I−2式ミル:日本ニューマチック工業社製)と旋回流による風力分級(DS分級機:日本ニューマチック工業社製)を行い、重量平均粒径5.8μm、個数平均粒径4.8μmブラックの着色粒子を得た。
得られたトナー母粒子100部に対し、外添剤としての1次粒子径15nmの疎水性シリカ0.5部と、平均粒径120nmの疎水性シリカ1.0部と疎水化酸化チタン0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、(トナー10−BK)を製造した。
【0066】
イエロートナーについては、上記ブラックトナーの工程のうち油相作成工程で[マスターバッチBKを[マスターバッチイエロー]に変更した以外は[トナー10−BK]と同様に作成し[トナー10−Y]を作成した。
シアントナーについては、上記ブラックトナーの工程のうち油相作成工程で[マスターバッチBK]を[マスターバッチC]に変更した以外は[トナー10−BK]と同様に作成し[トナー10−C]を作成した。
マゼンタトナーについては、上記ブラックトナーの工程のうち油相作成工程で[マスターバッチBK]を[マスターバッチM]に変更した以外は[トナー10−BK]と同様に作成し[トナー10−M]を作成した。
また、実施例、比較例で同一のトナーを使用している場合がある。
具体的には実施例1のフルカラー(Fc)トナーは実施例5、比較例1比較例4で使用し、実施例1のBkトナーは実施例6、比較例3で使用した。また、実施例3と実施例6のフルカラー(Fc)トナーは同一となる。
【0067】
【表2】

【0068】
(耐熱保存性)
トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存率を測定した。
このとき、耐熱保存性が良好なトナー程、残存率は小さい。
なお、耐熱保存性は、残存率が10%未満である場合を◎、残存率が10%以上20%未満である場合を〇、残存率が20%以上30%未満である場合を△、30%以上である場合を×として、判定した。
(定着下限)
サンプル画像は20%の帯状画像(付着量0.85mg/cm)を使用し、いずれも25℃/70%RH環境下、30000枚の連続の画像形成動作を実施した。用紙はRicoh Type6000(70W)紙を使用した。
得られたサンプル画像を5000枚ごとに画像はがれがないこと、かつ定着パットでこすった後の画像濃度残存率が85%以上であるものを○、画像濃度残存率が70〜85%のものを△、画像はがれがあったり、画像濃度残存率が70%以下のものを×とした。
(ホットオフセット)
得られたサンプル画像を確認し、定着周長後に画像写りがないかを確認した。発生しなかったものは○、発生したものは×とした。
(光沢性)
得られたサンプル画像の光沢をVSG−1(日本電色)で確認した。
カラーは3色(Y,M,C)の平均値としてあらわしている。
ブラックトナー(Bk)の光沢がフルカラー(Fc)トナーの光沢の50%〜90%を○、それ以外を×とした。
【0069】
【表3】

【符号の説明】
【0070】
1 画像形成装置
2 画像形成ユニット/プロセスカートリッジ
3 像担持体/感光体
4 読取装置
5 自動原稿搬送装置(ADF)
6 画像形成部
7 露光装置
9 記録部材
10 帯電装置
11 帯電ローラ
20 クリーニング装置
21 クリーニングブレード
22 廃トナー回収コイル
30 潤滑剤塗布装置
31 ブラシローラ
32 固形潤滑剤
33 加圧バネ
34 潤滑剤塗布ブレード
40 現像装置
41 現像ローラ
42 規制部材
43、44 供給・撹拌スクリュ
45 トナー補給カートリッジ
47 現像剤収納部
48 トナー補給経路
50 転写装置
51 中間転写ベルト
52 一次転写ローラ
531、532、533、534 支持ローラ
54 二次転写ローラ
55 中間転写ベルトクリーニング装置
60 給紙装置
61 給紙カセット
62 給紙ローラ
63 レジストローラ
64 排紙ローラ
70 定着装置
90 排紙装置
91 排紙部
92 排紙口
93 排紙ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【特許文献1】特開2004−245854号公報
【特許文献2】特開平4−70765号公報
【特許文献3】特開2006−208609号公報
【特許文献4】特開2009−109971号公報
【特許文献5】特開2006−337872号公報
【特許文献6】特開平8−278662号公報
【特許文献7】特開平8−334920号公報
【特許文献8】特開平10−161347号公報
【特許文献9】特開2000−321815号公報
【特許文献10】特開2004−246345号公報
【特許文献11】特開平8−44110号公報
【特許文献12】特開平6−148935号公報
【特許文献13】特開平10−268562号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色の電子写真方式の画像形成装置に使用する電子写真用トナーにおいて、
前記電子写真用トナーは、
結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を少なくとも1種以上からなる結着樹脂成分と離型剤と着色剤とを含み、
DSC昇温(1回目)の50℃−100℃の融解熱量[mJ/mg]をEとした時にブラックトナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EBkとカラートナーに使用される融解熱量[mJ/mg]EFc(EFcは3色の平均熱量)が、0.8<EBk/EFc<0.95の関係を満足する
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子写真用トナーにおいて、
前記結晶性ポリエステルの融点Mp(Cpes)が55〜80℃の範囲にある
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子写真用トナーにおいて、
前記離型剤の融点が60℃〜80℃の範囲にある
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電子写真用トナーにおいて、
前記電子写真用トナーを形成するトナー材料を有機溶媒に溶解乃至分散させたトナー材料液を水系媒体中に分散させ、
得られた分散液から有機溶媒を除去することによって得られる電子写真用トナーを用いる
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電子写真用トナーにおいて、
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分のGPC測定のそれぞれの値が、
重量平均分子量(Mw)が3000〜30000の範囲で、
数平均分子量(Mn)が1000〜10000の範囲で、
分子量分布(Mw/Mn)が1〜10の範囲である
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項6】
請求項5に記載の電子写真用トナーにおいて、
前記結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分のGPCのそれぞれの値が、
重量平均分子量(Mw)が5000〜15000の範囲で、
数平均分子量(Mn)が2000〜10000の範囲で、
分子量分布(Mw/Mn)が1〜5の範囲である
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電子写真用トナーにおいて、
前記トナー材料液が結着樹脂成分として、更に、結着樹脂前駆体を含有する
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項8】
請求項7に記載の電子写真用トナーにおいて、
前記電子写真用トナーは、
有機溶媒中に、少なくとも着色剤、離型剤、結晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル系樹脂から成る結着樹脂前駆体、及びこれら以外の結着樹脂成分を溶解・分散させて得られる油相に、前記結着樹脂前駆体と伸長または架橋する化合物を溶解させた後、前記油相を微粒子分散剤の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ、有機溶媒を除去して得られる
ことを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項9】
電子写真方式の画像形成に用いる現像剤において、
前記現像剤は、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いる
ことを特徴とする現像剤。
【請求項10】
像担持体に対向して配置され、前記像担持体上の潜像を現像する現像装置において、
前記現像装置は、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いる
ことを特徴とする現像装置。
【請求項11】
少なくとも像担持体と現像装置及とを備え、画像形成装置本体に着脱可能であるプロセスカートリッジにおいて、
前記現像装置は、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いる
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
潜像を形成する像担持体と、
像担持体表面に均一に帯電を施す帯電装置と、
帯電した像担持体表面に露光し潜像を書き込む露光装置と、
像担持体表面に形成された潜像にトナーを供給し可視像化する現像装置と、
像担持体表面の残留トナーをクリーニングするクリーニング装置と、
像担持体表面の可視像を直接又は中間転写体に転写した後に記録媒体に転写する転写装置と、
記録媒体上のトナー像を定着させる定着装置とを備える画像形成装置において、
前記画像形成装置が、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いる
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−234103(P2012−234103A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103958(P2011−103958)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】