説明

電子写真用トナー、電子写真用現像剤、及び、画像形成方法

【課題】紫外線暴露下においても定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が無く、長期にわたって保存可能な定着画像が形成される電子写真用トナーの提供。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、着色剤、及び、バリウム化合物を含有し、動的粘弾性測定より求めた緩和時間t=10×Dt(Dt:定着時の加熱時間)における緩和弾性率G(t)が2.0×10Pa以上3.0×10Pa以下であり、且つ、蛍光X線によるトナーの全構成原子量に対するバリウム含有量〔Ba〕が、0.1%以上0.5%以下である電子写真用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナー、電子写真用現像剤、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等のように、潜像(静電潜像)を経て画像情報を可視化する方法は、現在各種の分野で広く利用されている。前記電子写真法においては、帯電工程、露光工程(潜像形成工程)等を経て電子写真用感光体(静電潜像保持体、以下、「感光体」という場合がある)表面の静電潜像を電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)により現像し、転写工程、定着工程等を経て前記静電潜像が可視化される。
【0003】
原料とともに予め、紫外線吸収機能を有する化合物をトナー内に含有させ、紫外線の照射を減少させる方法が提案されている。これらの方法は紫外線吸収機能を有する化合物が紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを分子内の振動エネルギーに変換することにより、トナー内の他の材料への紫外線の影響を抑制するものである。そのための材料としてベンゾフェノン系化合物を添加する方法(例えば、特許文献1参照)、ベンゾフェノンとヒンダードアミンを添加する方法(例えば、特許文献2参照)、有機紫外線吸収剤が共有結合した高分子化合物を添加する方法(例えば、特許文献3参照)、フォトクロミック系材料を添加する方法(例えば、特許文献4参照)、サーモクロミック色素を添加する方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。
【0004】
一方、画像の強度を向上させる手段の一つとして、高分子重合体や架橋重合体をブレンドした結着樹脂を用いる方法(例えば、特許文献6、特許文献7等参照)が知られており、トナー溶融時の表面凝集力を高めることを謳っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−148928号公報
【特許文献2】特開平06−118684号公報
【特許文献3】特開平09−080797号公報
【特許文献4】特開2004−061813号公報
【特許文献5】特開2004−061818号公報
【特許文献6】特開昭50−134652号公報
【特許文献7】特開昭51−23354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、紫外線暴露下においても定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が無く、長期にわたって保存可能な定着画像が形成される電子写真用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、請求項1に係る発明は、
少なくとも結着樹脂、着色剤、及び、バリウム化合物を含有し、
動的粘弾性測定より求めた緩和時間t=10×Dt(Dt:定着時の加熱時間)における緩和弾性率G(t)が2.0×10Pa以上3.0×10Pa以下であり、且つ、蛍光X線によるトナーの全構成原子量に対するバリウム含有量〔Ba〕が、0.1%以上0.5%以下である電子写真用トナーである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載のトナーを含む電子写真用現像剤である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
感光体を帯電する帯電工程、帯電した前記感光体を露光して前記感光体上に潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像を請求項2に記載の電子写真用現像剤により現像し現像像を形成する現像工程、前記現像像を被転写体上に転写する転写工程、及び、前記被転写体上に前記現像像を定着する定着工程を含む画像形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、緩和弾性率の値又はバリウム含有量が上記範囲外である場合に比較して、紫外線暴露下における定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が無く、長期にわたって保存可能な定着画像が形成される電子写真用トナーが提供される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、緩和弾性率の値又はバリウム含有量が上記範囲外である場合に比較して、紫外線暴露下における定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が無く、長期にわたって保存可能な定着画像が形成される電子写真用現像剤が提供される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、緩和弾性率の値又はバリウム含有量が上記範囲外である場合に比較して、紫外線暴露下における定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が無く、長期にわたって保存可能な定着画像が形成される電子写真用現像剤を用いた画像形成方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子写真用トナー、電子写真用現像剤、及び、画像形成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<電子写真用トナー>
本実施形態の電子写真用トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び、バリウム化合物を含有し、動的粘弾性測定より求めた緩和時間t=10×Dt(Dt:定着時の加熱時間)における緩和弾性率G(t)が2.0×10Pa以上3.0×10Pa以下であり、且つ、蛍光X線によるトナーの全構成原子量に対するバリウム含有量〔Ba〕が、0.1%以上0.5%以下のトナーである。
【0015】
近年、トナー・現像剤技術を用いた電子写真による画像形成法は、デジタル化・カラー化の進展によって、印刷領域の一部へ適用されはじめ、ラベルあるいはパッケージ印刷市場、あるいはオンデマンドプリンテイングを初めとするグラフィックアーツ市場における実用化が顕著となり始めている。ここで、上記グラフィックアーツ市場とは、版画のようなもので印刷した部数の少ない創作印刷物や、筆跡・絵画などのオリジナルの模写、複写、そしてリプロダクションとよばれる大量生産方式による印刷物製造関連業務市場全般を指し、印刷物の製造に関わる業種・部門を対象とする市場であると定義される。
【0016】
しかしながら、本来の本格的従来型印刷と比較した場合、無版印刷としてのオンデマンド性の特徴はあるものの、その色再現域、解像度、光沢特性に代表される画質、質感、同一画像内における画質均一性、長時間連続プリント時の画質の維持性等、本格的に印刷を代替し、グラフィックアーツ領域において特に生産財としての市場価値を訴求するためには、性能面から見てもまだ数々の課題があることがわかってきている。
【0017】
画像の安定性に関する課題のひとつとして、長期保管に伴う定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が挙げられる。特に前記グラフィックアーツ領域における、カラー画像を伴う写真や絵画等、画像密度(トナー濃度という場合がある)が高い場合や、あるいは近年市場を広げつつある食品用包装材やフィルム/ステッカー等、日常的に日光に曝される機会が多い媒体上の画像においては、この傾向は顕著である。食品用包装材やフィルム/ステッカー等では、アルミニウム粒子やチタニア粒子を含有する白色系トナー或いは塗料の上に、通常のトナー像を定着させることから、下地の白色系画像中のアルミニウム粒子やチタニア粒子が通常のトナー像との親和性を妨げ、より脆化し易くさせていると考えられる。
また、長期保管に伴う定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下の原因は、日光その他照明等からの紫外線を着色剤分子や結着樹脂が吸収し、着色剤分子や結着樹脂が分解しているためと考えられている。さらに、従来複写機に用いられている樹脂においても、骨格の構成要素であるベンゼン環構造がより短波長側の光を吸収する為、長期間紫外線に曝されると、脆弱になり画像のひび割れや光沢度の低下が顕著になることがある。
【0018】
本実施形態は、特定の粘弾性を示すトナー粒子にバリウム化合物を特定の範囲で含有させることにより、バリウム化合物をより均一に分散させ紫外線による画像のひび割れ又は画像光沢の低下を防止することができる。また、トナー粒子に紫外線吸収剤を共存させることにより、より効果的に着色剤の変褪色、画像の脆弱化を防止することができる。
【0019】
本発明者らは、特定の粘弾性を示す電子写真用トナーにバリウム化合物を微量含有させることにより、画像のひび割れ、光沢度の低下や着色剤の変色及び褪色を防止することができることを見いだした。さらに、バリウム化合物を添加したトナーに紫外線吸収剤を共存させることで、より効果的に着色剤の褪色を防止できることを見いだした。
【0020】
本実施形態において用いられる結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物をアルコール成分に用いたポリエステル樹脂やスチレン・アクリル系樹脂が挙げられる。これらの結着樹脂は、いずれも芳香環を骨格中にもっていることが特徴である。
芳香環のように共役により、電子を供与しやすい性質を持つ官能基がある場合、励起される反結合性軌道のエネルギー準位が高いため、励起状態が不安定となる。そのため、骨格としての変質の原因となり、特に紫外線などのエネルギーが高い光に曝されると、劣化を招き、結果として樹脂が脆弱になる。また、エステル基の酸素のような非共有電子対を持つ官能基が芳香環の近くに或る場合、該非共有電子対が存在する非結合性軌道のエネルギー準位はさらに高くなるため、より励起状態が不安定となり、劣化が進む原因となる。
上述のように、芳香環を骨格中に有する結着樹脂は、紫外線曝露による劣化を生ずることがあるが、トナー中にバリウム化合物を添加することで、結着樹脂の劣化が抑制される。
【0021】
(バリウム化合物の推定作用機構)
バリウム化合物の添加による結着樹脂の劣化抑制の機構は未だ完全に解明されていないが、以下のような可能性が挙げられる。なお、これらの機構の真偽は特許性に影響を与えるものではない。
まず、バリウム化合物が、励起された樹脂骨格中の芳香環分子に対し紫外線吸収剤として作用し、樹脂の脆化を防止している可能性がある。
樹脂中の芳香環に吸収された光は電子を励起し、その分子は電子的に励起された状態となる。この電子励起状態の分子は、光化学第一次過程である(a)反応、(b)失活(放射及び無放射過程)、(c)エネルギー移動のうちの1つ、又は2つ以上の過程を経て、基底状態へ戻る。
芳香環を有する結着樹脂の場合、トナー中では着色剤等が隣接し立体障害を生じやすいため、上記(b)の過程による電子励起エネルギーの振動エネルギーへの変換が妨げられ、電子励起状態がより不安定となる。その結果、樹脂骨格中の分子のイオン化が生じ易く、上記(a)の化学反応により、樹脂骨格中の結合状態が切断するなどして劣化が引き起こされる。
本実施形態においては、トナーに含まれるバリウム化合物が励起状態の樹脂分子から励起エネルギーを受け取り、バリウム元素の最外殻電子を励起させるため(上記(c))、樹脂の脆化を防止できると推定される。特にバリウム化合物は、樹脂骨格と比較して分子が小さいために立体障害の影響を受けにくく、電子励起エネルギーは効率よく振動エネルギーへと変換できると推定される。
【0022】
また、バリウム化合物が励起酸素分子の補足剤として作用する可能性も挙げられる。
トナー表面付近で光により励起された一重項の酸素分子は反応性が高く、近傍の樹脂を酸化し、脆化させると考えられる。この励起酸素分子を効率よく消光するバリウム化合物を添加することにより、励起酸素分子を失活させ、樹脂の脆化を防止することができると推定される。
上述のように、バリウム化合物をトナーに添加することで結着樹脂の劣化が抑制されるため、本実施形態のトナーは紫外線暴露下における定着画像のひび割れ、あるいは画像光沢の低下が抑制されるものと推察される。
【0023】
本実施形態のトナーでは、動的粘弾性測定より求めた緩和時間t=10×Dt(Dt:定着時の加熱時間)における緩和弾性率G(t)を2.0×10Pa以上3.0×10Pa以下の範囲とする。好ましくは2.3x10Pa以上2.8x10Pa以下の範囲に調整することが適当である。
前記緩和時間における緩和弾性率G(t)が2.0×10Paを下回ると、添加したバリウム化合物が均一に分散しにくくなるばかりではなく、トナーとしての凝集性が十分得られず、画像の脆弱化を防止する効果が減少する要因となる。また、3.0×10Paを上回る場合には、画像の光沢度が低く、発色性に悪影響を及ぼす。
【0024】
本実施形態における緩和弾性率および緩和時間は、正弦波振動法による周波数分散測定により測定した動的粘弾性から求めた。動的粘弾性の測定にはTAインスツルメント・ジャパン社製ARES測定装置を用いた。
【0025】
緩和弾性率G(t)は、以下のようにして算出される。
上記測定で得られた損失弾性率、及び貯蔵弾性率の周波数依存曲線を時間-温度換算則にしたがって、横軸に時間、縦軸に緩和弾性率の関数に変換する。すると右下がりの曲線(グラフ)が得られる。任意の定着時間(定着時の加熱時間)Dtから上記式より緩和時間tを求め、上記曲線上においてそのtにおける緩和弾性率が、その定着時間での緩和弾性率となる。
【0026】
また、緩和弾性率G(t)の調整は、以下のようにして行われる。
すなわち、粘弾性を左右する制御因子としては、結着樹脂の分子量分布やモノマー組成の寄与が大きいため、結着樹脂の分子量分布を詳細に制御したり、特定のモノマー組成を選択することが必要である。特に、分子量分布として好ましい構成は、少なくとも三つのピークもしくはショルダーを有し、高分子量側から順にピークの谷もしくはショルダー部で分子量を分割した際に、高分子量側からそれぞれM1、M2、M3とすると、M1の重量平均分子量Mw1は5.0x105以上7.2x105以下、数平均分子量Mn1は4.0x105以上5.0x105以下、M2の重量平均分子量Mw2は8.0x104以上1.2x105以下、数平均分子量Mn2は8.0x104以上9.5x104以下、M3の重量平均分子量Mw3は1.0x104以上1.5x104以下、数平均分子量Mn3は3500以上4500以下であることがより好ましい。
【0027】
(バリウム化合物)
本実施形態のトナーはバリウム化合物を含有する。これにより、画像のひび割れや光沢度の低下、着色剤の変色又は褪色が抑制される。
バリウム化合物の含有量は、蛍光X線によるトナーの全構成原子量に対するバリウム含有量〔Ba〕として0.1%以上0.5%以下とされる。
【0028】
バリウム含有量が0.1%より少ない場合には、画像のひび割れや光沢度の低下の防止に対して効果がなく、0.5%より多い場合には、画像の濃度ムラを発生させ、画質に悪影響を与える恐れがあるため、上記範囲を満たす必要があり、0.12%以上0.45%以下の含有量が好ましい。
【0029】
本実施形態で使用できるバリウム化合物は、公知の無機のバリウム化合物が挙げられ、例えば、塩化バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酢酸バリウム、クロム酸バリウム、ホウ酸バリウム、鉄酸バリウム、臭化バリウム、亜硫酸バリウム、過酸化バリウム等が用いられる。また、張培善石(BaFCl)、重土長石(BaAlSi)、バナルシ石(BaNaAlSi16)、北投石(Ba,Pb)SO等の無機のバリウム鉱物を添加してもよく、ニッケルチタンイエロー(チタンニッケルバリウムイエロー)等の顔料を添加してもよい。
この中でも、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、チタンニッケルバリウムイエローがトナー特性や画像形成装置に悪影響及ぼすこと無くより良好に用いられ、さらに好ましくは、硫酸バリウム、チタン酸バリウムである。
【0030】
(トナーの製造方法)
本実施形態の電子写真用トナーは、結着樹脂、着色剤及びバリウム化合物を有し、更に必要に応じて、離型剤等、その他の成分を含有してなる。本実施形態の電子写真用トナーは、カラー画像において、長期紫外線暴露下においても画像のひび割れや光沢度の低下を防止することができ、優れた定着画像を与えることができる。
本実施形態の電子写真用トナーの製法としては、混練粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法等、特に制限はないが、特に好ましいのは。混練粉砕法と乳化凝集法である。
【0031】
本実施形態ではトナー内にバリウム化合物を均一に分散させることが好ましく、懸濁重合法においては重合性単量体中にバリウム化合物を分散、又は溶解する必要があるが、一般に重合性単量体は有機化合物であって、バリウム化合物が分散しない場合や、溶解が困難である場合がある。
これに対し混練粉砕法は結着樹脂や着色剤等の原料混合物中にバリウム化合物を混合させそのまま混練工程で分散できるため、均一にバリウム化合物を分散させることができる。このようにして得られた混練物を、粉砕、分級することによって所望のトナー粒子を得る。
また乳化凝集法は、粒径が1μm以下の結着樹脂の樹脂粒子を分散した樹脂粒子分散液、及び着色剤を分散した着色剤分散液等を混合し、樹脂粒子、着色剤をトナー粒径に凝集させる工程(以下、「凝集工程」と称することがある)にて、バリウム化合物を共存させることができるため、前述の問題を解決できる。バリウム化合物が水溶性であれば分子レベルでトナー粒子内部に添加することができるためより好ましい。樹脂粒子を構成する重合性単量体の成分にカルボキシル基含有単量体を添加することで、生成重合体中のカルボキシル基とバリウムとの塩構造を形成することができるので更に好ましい。凝集工程を経た凝集粒子は、樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱し凝集体を融合しトナー粒子を形成する工程(以下、「融合工程」とも称する。)を経てトナー粒子となる。
【0032】
上記凝集工程においては、互いに混合された樹脂粒子分散液、着色剤分散液、及び必要に応じて離型剤分散液中の各粒子を凝集させてトナー粒径の凝集粒子を形成する。該凝集粒子はヘテロ凝集等により形成される。該凝集粒子の安定化、粒度/粒度分布制御を目的として、前記凝集粒子とは極性が異なるイオン性界面活性剤や、金属塩等の一価以上の電荷を有する化合物が添加される。
ここで、「トナー粒径」とは、下記のトナーの体積平均粒径をいう。
【0033】
前記融合工程においては、前記凝集粒子中の樹脂粒子が、そのガラス転移温度以上の温度条件で溶融し、凝集粒子は不定形からより球状へと変化する。このとき凝集粒子内にあるバリウム化合物は融合の進行に関係なく粒子内に留まることによりバリウム化合物の分散状態を良好に制御することができる。凝集粒子内のカルボキシル基と塩構造を形成するバリウム化合物であればより制御しやすくなるのは言うまでもない。その後、凝集物を水系媒体から分離、必要に応じて洗浄、乾燥させることによってトナー粒子を形成する。
【0034】
トナーの体積平均粒径としては2μm以上10μm以下程度が好ましく用いられ、より好ましくは3μm以上8μm以下、更に好ましくは5μm以上7μm以下である。
【0035】
(結着樹脂)
本実施形態のトナーに使用し得る結着樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のエチレン系樹脂、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等を主成分とするスチレン系樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル等を主成分とする(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの共重合樹脂が挙げられるが、電子写真用トナーとして用いる際の帯電安定性や現像耐久性の観点からスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0036】
前記ポリエステル樹脂に用いる縮合性単量体としては、例えば、「高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような縮合性単量体成分であり、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールがある。2価のカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
2価のアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
【0038】
前記ポリエステル樹脂は、前記の縮合性単量体成分の中から任意の組合せで、例えば、「重縮合」(化学同人、1971年刊)、「高分子実験学(重縮合と重付加)」(共立出版、1958年刊)や「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編、1988年刊)等に記載された従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、組み合せて用いることができる。
【0039】
(着色剤)
本実施形態において、用いられる着色剤に、特に制限はなく、公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて選択することができる。着色剤を1種単独で用いてもよいし、同系統の着色剤を2種以上混合して用いてもよい。また異系統の着色剤を2種以上混合して用いてもよい。さらに、これらの着色剤を表面処理して用いてもよい。
【0040】
具体例としては、以下に示すような各色の顔料及び染料を挙げることができる。
例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3を代表的なものとして、例示することができる。
【0041】
着色剤は、定着時の発色性を確保するために、トナーの固体分総質量に対して、4質量%以上15質量%以下の範囲で添加することが好ましく、4質量%以上10質量%以下の範囲で添加することがより好ましい。ただし、黒色着色剤として磁性体を用いる場合は、12質量%以上48質量%以下の範囲内で添加することが好ましく、15質量%以上40質量%以下の範囲で添加することがより好ましい。前記着色剤の種類を選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、黒色トナー、白色トナー、緑色トナー等の各色トナーが得られる。
【0042】
<紫外線吸収剤>
本実施形態のトナーは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。本実施形態で使用される紫外線吸収剤は、従来公知のものを使用することができる。
代表的な紫外線吸収剤は、ベンソフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、パラアミノ安息香酸系、アニリド系、トリアジン系、ベンゾエート系の化合物を挙げることができる。これらの化合物の混合物であっても良い。
【0043】
具体的には、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸p−オクチルフェニル、サリチル酸p−tertブチルフェニル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸グリセリル、エチル2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリゾール、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド、2−(4’,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられるが、特にヒドロキシベンゾフェノン系の紫外線吸収剤が好ましい。メカニズムは不明であるが、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物がトナーへ内添された場合、Ba化合物と共存することによってトナー凝集力が上昇し、画像強度が大きくなる効果が期待される。
【0044】
紫外線吸収剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。但しトナーの特性を考慮した上で、紫外線吸収剤の種類及び量を調整してもよい。例えば、粉体流動性、保管時のブロッキング、帯電性及び定着性などが、トナー使用時に問題とならないことが前提であり、トナー組成に対して、紫外線吸収剤をトナー母粒子に対して外添するときには0.1質量%以上3.0質量%以下、トナー調製時に内添するときには0.3質量%以上7.0質量%以下が好ましい。添加量が上記範囲であると、帯電性及び粉体流動性が低下しない。また定着画像に対して均一に分散し、かつ発色性に影響を与えないために、結着樹脂と親和性の高いものが好ましい。親和性が高いと、定着画像内で結晶化せず、光透過性が良好である。
紫外線吸収剤をトナーに添加する方法としては、トナー粒子に対して粉体で混合する方法や、結着樹脂又は着色剤などの溶融混練時に添加する方法、が挙げられる。
【0045】
(帯電制御剤)
本実施形態のトナーには、必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。
帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。なお、本実施形態のトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0046】
(離型剤)
本実施形態のトナーには、必要に応じて、離型剤を添加してもよい。離型剤は一般に離型性を向上させる目的で使用される。前記離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル等のエステル系ワックスなどが挙げられる。本実施形態において、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの離型剤の添加量としては、トナー粒子の全量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。上記範囲内であると、離型剤の効果が十分であり、また、トナー内にバリウム化合物が均一に分散されるだけでなく、現像機内部においてトナー粒子が破壊されにくいため、離型剤のキャリアへのスペント化が生じず、帯電も低下しにくい。
【0047】
(内添剤)
本実施形態のトナーは、トナー内部に内添剤を添加してもよい。内添剤は一般に定着画像の粘弾性制御の目的で使用される。前記内添剤の具体例としては、シリカ、チタニアのような無機粒子や、ポリメチルメタクリレート等の有機粒子などからなり、分散性を高める目的で表面処理されていてもよい。またそれらは単独でも、2種以上の内添剤を併用してもよい。
【0048】
(外添剤)
本実施形態のトナーには流動化剤や帯電制御剤等の外添剤を添加処理してもよい。外添剤としては、表面をシランカップリング剤などで処理したシリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、カーボンブラック等の無機粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー粒子、アミン金属塩、サリチル酸金属錯体等、公知の材料が使用できる。それらは単独でも、2種以上の外添剤を併用してもよい。
外添剤の配合量は、外添剤による処理前のトナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、1.0質量部以上3.5質量部以下がより好ましい。
【0049】
<電子写真用現像剤>
本実施形態に係る電子写真用現像剤は、本実施形態のトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態のトナーは、現像装置内に帯電付与構造をもつ一般に一成分現像剤という使用方法で使用されるのに加え、トナーとキャリアからなる二成分現像剤と呼ばれる方式でも使用される。
【0050】
(キャリア)
キャリアは、フェライト、鉄粉などを芯剤として、樹脂で被覆されたキャリアであることが好ましい。用いられる芯材(キャリア芯材)は、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、又は、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、磁気ブラシ法を用いる観点からは、磁性キャリアであるのが望ましい。キャリア芯材の平均粒径としては、トナー平均粒径の3倍以上10倍以下が好ましい。
被覆樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレア、ウレタン、メラミン、グアナミン、アニリン等を含むアミノ樹脂、またアミド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。またこれらの共重合樹脂でもかまわない。キャリアの被覆樹脂としては上述樹脂中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。また帯電を制御する目的で、樹脂粒子や、無機粒子などを被覆樹脂中に分散して使用してもよい。
【0051】
樹脂被覆層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被覆層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被覆樹脂を粒子化し被覆樹脂の融解温度以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被覆させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。
上記方法により形成される樹脂被覆量は、キャリア芯材に対して0.5質量%以上10質量%以下とされる。トナーと上記キャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100乃至30:100の範囲であり、3:100乃至20:100の範囲がより好ましい。
【0052】
<画像形成方法>
本実施形態の画像形成方法は、感光体を帯電する帯電工程、帯電した前記感光体を露光して前記感光体上に潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像を本実施形態の電子写真用現像剤により現像し現像像を形成する現像工程、前記現像像を被転写体上に転写する転写工程、及び、前記被転写体上に前記現像像を定着する定着工程を含む。
各工程はそれ自体一般的な工程であり、例えば特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
【0053】
帯電工程における帯電方式は特に限定されず、公知のコロトロン、スコロトロンによる非接触帯電方式、接触帯電方式のいずれを用いてもよいが、オゾン発生量の少ない接触帯電方式が好ましい。
潜像(静電潜像)は、レーザー光学系やLEDアレイ等の露光手段で、表面が一様に帯電された感光体に露光することで形成される。露光方式は特に制限を受けるものではない。
転写は、現像像(トナー画像)を被転写体上に転写するものである。被転写体としては、転写紙等が例示できる。
定着は、転写紙等の被転写体に転写されたトナー画像を、定着部材からの加熱で被転写体上に定着するものであり、被転写体を2つの定着部材の間を通過させる間に被転写体上のトナー画像を加熱溶融して定着する。この定着部材は、ロール又はベルトの形態をなし、少なくとも一方に加熱装置を装着している。定着部材はロールやベルトをそのまま用いるか、その表面に樹脂を被覆して用いる。
【0054】
なお、Dt(定着時の加熱時間)とは、後述する被転写体と、前記定着部材の接触時間を示す。具体的には定着部材とは加熱部材であるロールやベルトと、加圧部材とからなるが、前記加熱部材と前記加圧部材の間を被転写体が通過することにより定着する。この加熱部材と加圧部材の間をニップといい、このニップは通常数ミリメートル乃至数十ミリメートルの幅を被転写体の通過する方向に対して有する。これをニップ幅といい、このニップ幅を通過する時間を定着時の加熱時間という。例えば、前記ニップ幅が5mmの定着機に前記被転写体が100mm/秒で通過する場合、定着時の加熱時間は5÷100=0.02で20ミリ秒(msecと記載する場合がある)となる。
このニップ幅は例えば以下の方法で測定が可能である。まず通常の複写機でベタ画像を用意する。これを定着機に通過中に電源を落とし、そのまま10秒放置、その後再び通過させる。電源が落ちていたときに定着部材に接触していた画像部分の光沢度が異なるため、この幅を測定する。これをニップ幅とする。
加圧部材に熱源を設置し、加圧、加熱の両部材から熱を加える方法を用いても良い。
【0055】
定着ロールは、シリコーンゴム、バイトンゴムなどをロール芯材表面に被覆して作られる。
定着ベルトは、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を単独か又は2種以上を混合して用いる。また、ロールとベルトの被覆樹脂は、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー等の単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合体、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、弗化ビニリデン、弗化エチレン等の含フッ素化合物の単独重合体及び/又はそれらの共重合体、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素の単独重合体及び/又はそれらの共重合体を用いることができる。
【0056】
トナーを定着させる被転写体は紙、樹脂フィルム等が用いられる。そして、定着用紙としては、紙表面の一部又は全部に樹脂をコートしたコート紙を用いることができる。また、定着用樹脂フィルムも表面に他の種類の樹脂で一部又は全部をコートした樹脂コートフィルムを使用することもできる。また、紙、樹脂フィルム等の摩擦及び/又は摩擦に起因する静電気等によって生じる被転写体の重送を防止し、かつ、定着時に被転写体と定着画像との界面に離型剤が溶出して定着画像の密着性が悪化することを防止する目的で、樹脂粒子や無機粒子を樹脂フィルム等に添加することもできる。
【0057】
紙や樹脂フィルムの被覆樹脂の具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー等の単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合体、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0058】
また、無機粒子の具体例としては、例えば、シリカ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、酸化セリウム等、通常トナー表面の外添剤として使用される全ての粒子が使用できる。樹脂粒子としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の通常トナー表面の外添剤として使用される全ての粒子が使用できる。なお、これらの無機粒子や樹脂粒子は、流動性助剤等としても使用できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0060】
(蛍光X線によるバリウム含有量の測定法)
試料前処理としては、トナー4gを加圧成型器で10t、1分間の加圧成型を実施した。
(株)Rigaku社製の蛍光X線ZSX Primus 2を使用して、測定条件は定性定量測定で、管電圧60KV、管電流50mA、測定時間40deg/minで測定した。
【0061】
(トナーの粘弾性測定法)
動的粘弾性の測定にはTAインスツルメント・ジャパン社製ARES測定装置を用いた。
トナー約2gを錠剤成形機で圧縮成形した後、加熱炉で加熱した25mmのパラレルプレートに載せて一度溶融させ、トナー全体が溶融したところでもう一枚のパラレルプレートを上から挟んでセットし、ノーマルフォース0とした後、プレート温度100℃で0.1rad/sec乃至100rad/secの振動周波数で正弦振動を与えながら粘弾性を測定した。続いて160℃まで10℃刻みでプレート温度昇温させながら同様の測定を実施した。測定のインターバルは30秒、測定開始後の温度調整精度は±1.0℃以下とした。また、測定中各測定温度におけるひずみ量を適切に維持し、適正な測定値が得られるように適宜調整した。
これらの各測定温度において得られた測定結果より緩和弾性率を求めた。
【0062】
<トナー粒子の製造>
(ポリエステル樹脂1の製造)
・テレフタル酸 415部
・3−ドデセニル無水コハク酸 536部
・無水トリメリット酸 90部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 780部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 855部
上記原料を、ステンレススチール製撹拌機、ガラス製窒素ガス導入管および流下式コンデンサーを備えた1リットル容量の4つ口丸底スラスコ中に投入し、このフラスコをマントルヒーターにセットした。次いで、ガス導入管より窒素ガスを導入し、フラスコ内を不活性ガス雰囲気に保ちながら昇温した。その後、0.15部のジブチルスズオキシドを加えて反応物の温度を200℃に保ちながら、所定時間反応させることにより、ポリエステル樹脂1を合成した。得られたポリエステル樹脂1の分子量分布をTHF可溶分でGPC測定したところ、一つのショルダーを含めて三つ山の分子量分布を持ち、それぞれのピークの谷、もしくはショルダーで分子量を分割した際に、高分子量側から、M1、M2、M3としたとき、重量平均分子量Mw1は5.1x10、数平均分子量Mn1は4.3x10、重量平均分子量Mw2は9.4x10、数平均分子量Mn2は8.1x10、M3の重量平均分子量Mw3は1.2x10、数平均分子量Mn3は3600であった。
【0063】
(ポリエステル樹脂2の製造)
・テレフタル酸 415部
・フマル酸 174部
・3−ドデセニル無水コハク酸 268部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 320部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 1370部
樹脂の原料を上記組成に変更した以外は、ポリエステル樹脂1と同様の方法でポリエステル樹脂2を合成した。得られたポリエステル樹脂の分子量分布をGPCで測定したところ、GPCチャートは一山分布でMwが17800、Mnが6800であった。
【0064】
(ポリエステル樹脂3の製造)
・テレフタル酸 415部
・3−ドデセニル無水コハク酸 268部
・無水トリメリット酸 270部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 780部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 855部
樹脂の原料を上記組成に変更した以外は、ポリエステル樹脂1と同様の方法でポリエステル樹脂3を合成した。得られたポリエステル樹脂3の分子量分布をGPCで測定したところ、THF可溶分のGPCチャートは一山分布でMwが53200、Mnが14800であったがTHF不溶分が34%であった。
【0065】
<シアントナー(1)乃至(8)の製造>
表1に示す配合量のポリエステル樹脂、着色剤としてピグメント・ブルー15:3(PB15:3)、離型剤(ポリエチレンワックス、FNP0190、日本精蝋社製)、紫外線吸収剤およびバリウム化合物をヘンシェルミキサーで混合後、連続式混練機で溶融混練し、冷却後ジェット式粉砕機で粉砕し、次いで慣性力方式の分級機で分級し、表1に示す平均粒径(トナー粒径)のトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に外添剤としてチタニア粒子をトナー粒子100部に対して1.2部、シリカ粒子を0.8部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用シアントナーを得た。
【0066】
<マゼンタトナー(1)乃至(10)の製造>
表1に示す配合量のポリエステル樹脂、着色剤としてピグメント・レッド122(PR122)およびピグメント・レッド238(PR238)、離型剤(ポリエチレンワックス、FNP0190、日本精蝋社製)、紫外線吸収剤、並びに、バリウム化合物をヘンシェルミキサーで混合後、連続式混練機で溶融混練し、冷却後ジェット式粉砕機で粉砕し、次いで慣性力方式の分級機で分級し、表1に示す平均粒径のトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に外添剤としてチタニア粒子をトナー粒子100部に対して1.2部、シリカ粒子を0.8部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用マゼンタトナーを得た。
【0067】
<イエロートナー(1)乃至(8)の製造>
表1に示す配合量のポリエステル樹脂、着色剤としてピグメント・イエロー74(PY74)、離型剤(ポリエチレンワックス、FNP0190、日本精蝋社製)、紫外線吸収剤およびバリウム化合物をヘンシェルミキサーで混合後、連続式混練機で溶融混練し、冷却後ジェット式粉砕機で粉砕し、次いで慣性力方式の分級機で分級し、表1に示す平均粒径のトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に外添剤としてチタニア粒子をトナー粒子100部に対して1.2部、シリカ粒子を0.8部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して電子写真用イエロートナーを得た。
【0068】
<キャリアの製造>
ニーダーにMn−Mgフェライト(平均粒径50μm:パウダーテック社製)を1,000部投入し、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(重合比率40:60、ガラス転移温度90℃、重量平均分子量72,000:綜研化学(株)製)150部をトルエン700部に溶かした溶液を加え、常温(25℃)で20分混合した後、70℃に加熱して減圧乾燥した後、取り出し、コートキャリアを得た。さらに得たコートキャリアを75μm目開きのメッシュでふるい、粗粉を除去してキャリア(1)を得た。
【0069】
<現像剤の製造>
キャリア(1)と、イエロートナー(1)乃至(8)、マゼンタトナー(1)乃至(10)、又は、シアントナー(1)乃至(8)とを、それぞれ質量比95:5の割合でVブレンダーにいれ20分間撹拌し、電子写真用現像剤1乃至26を得た。電子写真用現像剤1乃至26に含まれるトナーの種類は表2に示すとおりである。
【0070】
<定着画像の形成>
得られた電子写真用現像剤をDocuCentre Color 320CP(富士ゼロックス(株)製)改造機の現像機に入れ、単色画像及び電子写真学会テストチャートNo.5−1を原稿画像として未定着画像を出力した。なお用紙は富士ゼロックス社製(J紙)であった。
【0071】
(実施例1乃至15、比較例1乃至11)
上記イエロートナー(1)乃至(8)、マゼンタトナー(1)乃至(10)、シアントナー(1)乃至(8)で形成された未定着画像を定着時間(定着時の加熱時間)220msecのオフライン定着機を用いて定着温度160℃で定着し、得られた画像に対して、テストチャート画像に対しては濃度ムラの有無を目視で評価すると共に、単色画像に対しては以下の長期紫外線暴露下の画像ひび割れ及び光沢度の評価を実施した。その結果を表3に示す。なお、各トナーにおける定着時間220msec、定着温度160℃での緩和弾性率を表2に示す。
【0072】
(実施例16、比較例12乃至14)
表4に示すトナーを含む現像剤の組合せで、下記二種類の定着媒体に単色およびプロセスブラック(3色重ね画像)を定着し、それぞれ、実施例1乃至16、比較例1乃至10と同様、以下の長期紫外線暴露下の画像ひび割れ及び光沢度の評価を実施した。その結果を表4に示す。
・食品用ラベル紙
・表面にチタニア粒子を含有する白色系塗料を塗布したステッカー用紙
【0073】
<長期紫外線暴露下の画像ひび割れ>
実施例1乃至16、比較例1乃至14の定着画像に対して、卓上型暴露試験機((株)東洋精機製作所製:SUNTEST CPS+)を用いて定着画像の紫外線暴露加速試験を行った。なお光源はキセノンアークランプ(100K ルクス 540W/m)を用い、光源からの距離が約20cmになるように定着像を配置し、湿度50%、標準黒色体の表面温度が43℃となる環境下で、照射テストを実施した。なお前記湿度と標準黒色体の表面温度は試験機の環境等により若干の幅を持ち、具体的には湿度は50±5%、標準黒色体の表面温度は43±5℃であった。照射時間は600時間、1200時間、2400時間であり照射後のひび割れについては、目視で評価した。
【0074】
<光沢度の評価>
光沢度については、グロスメーターにて画像の光沢度を測定した。紫外線照射前及び紫外線照射後の光沢度を測定し、照射前後で光沢度を比較し、以下の視点でグレード付けし評価した。
A:照射前後の光沢度の差は5未満で許容レベルである。
B:照射前後の光沢度の差は5以上12未満で許容レベルである。
C:照射前後の光沢度の差が12以上20未満の間で光沢度、発色性の低下が確認される。
D:照射前後の光沢度の差が20以上であり、画像としての劣化が著しい。
【0075】
表3の結果より、以下のことが明かである。すなわち本実施形態のトナーを用いることにより、濃度ムラの発生がなく適度な光沢度を持った画像を提供すると同時に、紫外線による長期暴露下においても画像のひび割れや光沢度の低下がない優れた画像保存性を有したドキュメントが提供可能である。また、表4の結果から、定着材が紙以外のラベル紙やステッカー用紙においても、本実施形態のトナーは優れた画像保存性を示すことが確認された。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、着色剤、及び、バリウム化合物を含有し、
動的粘弾性測定より求めた緩和時間t=10×Dt(Dt:定着時の加熱時間)における緩和弾性率G(t)が2.0×10Pa以上3.0×10Pa以下であり、且つ、蛍光X線によるトナーの全構成原子量に対するバリウム含有量〔Ba〕が、0.1%以上0.5%以下である電子写真用トナー。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーを含む電子写真用現像剤。
【請求項3】
感光体を帯電する帯電工程、帯電した前記感光体を露光して前記感光体上に潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像を請求項2に記載の電子写真用現像剤により現像し現像像を形成する現像工程、前記現像像を被転写体上に転写する転写工程、及び、前記被転写体上に前記現像像を定着する定着工程を含む画像形成方法。

【公開番号】特開2012−203405(P2012−203405A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71239(P2011−71239)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】