説明

電子写真用感光体

【課題】350〜500nmの波長で書き込みがされる電子写真用感光体であって、高感度で、かつ繰り返し使用時における電荷輸送物質の光劣化に起因するプリント画像の欠陥発生を防止した電子写真感光体を提供する。
【解決手段】書き込み波長が350〜500nmの範囲内にある書込み用光源を用いて有機感光体上に静電潜像を形成する露光工程、及び当該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において用いる電子写真用感光体であって、導電性支持体上に感光層を有し、当該感光層が、特定化学構造の電荷輸送物質及び樹脂を含有することを特徴とする電子写真用感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き込み波長が350〜500nmの範囲内にある書込み用光源を用いて静電潜像を形成する画像形成方法に適する有機感光体を用いた電子写真用感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷分野やカラー印刷の分野において、電子写真方式の複写機やプリンターを使用される機会が増加している。該印刷分野やカラー印刷の分野においては、高画質のデジタルのモノクロ画像或いはカラー画像を求める傾向が強い。
【0003】
このような要望・動向に対応すべく種々の試みがなされている。例えば、書き込み光のスポット(ドット)径の小径化は、潜像の書き込み密度、すなわち解像度を上げることに非常に有利であることから、書き込み光源を短波長化することが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、そのため、発振波長が350〜500nmの半導体レーザまたは発光極大波長が350〜500nmの発光ダイオード光源を用いる画像形成方法に適した高感度、高安定な電子写真感光体の開発が望まれている。
【0004】
しかしながら、短波長光を用い、露光のスポット(ドット)径を絞り、電子写真感光体上に細密の静電潜像を形成しても、最終的に得られる電子写真画像は、十分な高画質を達成し得ていないのが現状である。
【0005】
その原因は、電子写真感光体の感光特性や現像剤のトナーの帯電特性等が細密なスポット(ドット)潜像の形成やトナー画像の形成に必要な特性を十分に備えていないことによる。
【0006】
すなわち、電子写真感光体としては、従来の780〜800nmのような長波長レーザ用に開発された有機感光体(以後、単に「感光体」ともいう。)では、感度特性が劣り、短波長レーザ光を用いて露光のドット径を絞った像露光を行うと、ドット潜像が明瞭に形成されず、ドット画像の再現性が劣化しやすい。この原因は、電荷発生層のみならず、電荷輸送層にもあり、それぞれの層の物質や添加剤の短波長レーザに対する劣化要因を洗い出し、除去することが必要である。
【0007】
電荷輸送層での劣化要因としては、従来の有機感光体用に開発された電荷輸送物質は、350〜500nmの短波長光を吸収しやすく、その結果感度低下や残留電位の上昇等の電子写真特性の劣化を促進しやすい。
【0008】
このような問題に対して、電荷輸送物質としてパラ位にメチル置換されたフェニル基を有するポリアリールアルカン化合物が提案されているが(例えば特許文献2参照)、当該化合物は構造特性上、通常の溶媒やバインダーに対する溶解性が乏しいため、充分な充填濃度を加えることができないことによる感度不良が発生したり、耐久性試験において、膜欠陥の発生等による画質不良が発生し、高画質、高耐久を目指した感光体処方には向いていなかった。
【0009】
一方、350〜500nmの波長領域に吸収をもたない電荷輸送物質あるが、紫外光によって分解しやすい問題がある。この問題の解決策として、紫外光(UV)吸収剤を添加することによって電荷輸送物質の劣化を防止する方法があるが、繰り返し時の電気特性や、クリーニング性の低下や減耗量の増加など、表面物性に悪影響を与える場合がある。また、吸収剤によっては書き込み光の波長領域に光吸収性を持つものもあるため、感度低下が発生する場合もある。
【特許文献1】特開2000−250239号公報
【特許文献2】特開昭51−93224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、350〜500nmの波長で書き込みがされる電子写真用感光体であって、高感度で、かつ繰り返し使用時における電荷輸送物質の光劣化に起因するプリント画像の欠陥発生を防止した電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.書き込み波長が350〜500nmの範囲内にある書込み用光源を用いて有機感光体上に静電潜像を形成する露光工程、及び当該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において用いる電子写真用感光体であって、導電性支持体上に感光層を有し、当該感光層が、下記一般式(1)で表される電荷輸送物質及び一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【0013】
【化1】

【0014】
[一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基表す。なお、R1及びR2は、結合して環を形成するものであってもよい。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Ar1〜Ar4は、それぞれ独立して、水素原子又はアリール置換基を持つ同一でも異なっても良いフェニル基を表す。R3は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、複素環基を表す。但し、m及びnは、1〜4の整数を表す。]
【0015】
【化2】

【0016】
[一般式(2)中、Ar1’及びAr2’は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。また両者は、同一でも異なっても良い。]
2.前記感光層が、下記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂を含有することを特徴とする前記1に記載の電子写真用感光体。
【0017】
【化3】

【0018】
[一般式(3)中、Ar1’及びAr2’は、それぞれ、置換基を有しても良い同一でも異なってもよいアリール基を表す。]
3.前記一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂が、前記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂から形成されたものであることを特徴とする前記1又は2に記載の電子写真用感光体。
【0019】
4.前記一般式(1)で表される電荷輸送物質が、下記一般式(1A)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用感光体。
【0020】
【化4】

【0021】
[一般式(1A)中、R1〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基表す。]
5.前記一般式(1A)で表される電荷輸送物質が、下記一般式(1B)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用感光体。
【0022】
【化5】

【0023】
[一般式(1B)中、R1〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基表す。]
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、350〜500nmの波長で書き込みがされる電子写真用感光体であって、高感度で、かつ繰り返し使用時における電荷輸送物質の光劣化に起因するプリント画像の欠陥発生を防止した電子写真感光体を提供することができる。
【0025】
上記効果について機構的観点から説明するならば、次のように説明できると考えられる。
【0026】
すなわち、本発明においては、感光層中に紫外線を吸収する特性を持つベンゾフェノン骨格を有する樹脂が含有されており、かつ当該樹脂が、感光層、特に最表面に近い電荷輸送層中に存在する特定構造を有するバインダーとしての樹脂から、紫外光による光転移反応によって、形成されることとなる。これによって、最表層は紫外線保護層として機能し、光転移反応転移が内部まで進行せず、全体としては優れた紫外線遮蔽性を持つことになり、電荷輸送物質等の紫外光とうによる光劣化を防止することができる。
【0027】
また、当該反応は最表層のみで発生するため、転移→クリーニングによる削れ→転移というサイクルによって常にフレッシュな状態が維持され、かつ過剰な光転移反応による感度低下が起きないメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の電子写真用感光体は、書き込み波長が350〜500nmの範囲内にある書込み用光源を用いて有機感光体上に静電潜像を形成する露光工程、及び当該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において用いる電子写真用感光体であって、導電性支持体上に感光層を有し、当該感光層が、前記一般式(1)で表される電荷輸送物質及び一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂を含有することを特徴とする。
【0029】
この特徴は、請求項1〜5に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0030】
本発明の実施態様としては、前記感光層が、前記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂を含有する態様であることが好ましい。また、前記一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂が、前記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂から形成されたものであることが好ましい。
【0031】
また、前記一般式(1)で表される電荷輸送物質が、前記一般式(1A)で表される化合物である態様であることが好ましい。更には、前記一般式(1A)で表される電荷輸送物質が、前記一般式(1B)で表される化合物であることが好ましい。
【0032】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様等について詳細な説明をする。
【0033】
(電子写真用感光体の構成)
本発明の電子写真用感光体(以下において、単に「感光体」ともいう。)は、導電性支持体上に感光層を有し、当該感光層が特定の有機化合物を含有する有機感光体であることを特徴とするが、その構成態様としては、種々の態様を採り得るが、導電性支持体と感光層の間に中間層を設けた態様とすることが好ましい。また、当該感光層は、電荷発生層(CGL:Carrier Generation Layer)と電荷輸送層(CTL:Carrier Transport Layer)に分離した構成をとることが好ましい。その他、目的に応じて、特別な機能層を設けることも好ましい。
【0034】
以下、典型的な例として、導電性支持体上に中間層及び感光層を設けた電子写真用感光体における各構成要素について、感光層、中間層導電性、支持体の順に説明するとともに、本発明の電子写真感光体が搭載可能な画像形成装置について説明する。
【0035】
(感光層)
本発明の電子写真用感光体の感光層の構成は、中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を採ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。また、負帯電用の感光体では、中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を採ることが好ましい。
【0036】
以下に、典型的例として、機能分離した負帯電用感光体の感光層構成について説明する。
【0037】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM:Carrier Transport Material)及び電荷輸送物質を混合し、成膜するバインダー樹脂より構成されるものである。電荷輸送層中には、上記構成物の他に、必要に応じて酸化防止剤等の添加剤を含有することも可能である。
【0038】
電荷輸送物質(CTM)には、波長が380〜500nmの領域の光の吸収が小さく、かつ、高い電荷輸送能を有する有機化合物が好ましい。また、電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成するものにしてもよい。
【0039】
《一般式(1)で表される化合物》
本発明では、電荷輸送物質として下記一般式(1)で表される化合物を1種以上用いることを要する。
【0040】
【化6】

【0041】
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基表す。なお、R1及びR2は、結合して環を形成するものであってもよい。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基、又は複素環基を表す。Ar1〜Ar4は、それぞれ独立して、水素原子又はアリール置換基を持つ同一でも異なっても良いフェニル基を表す。但し、m及びnは、1〜4の整数を表す。
【0042】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
本発明においては、前記一般式(1)で表される電荷輸送物質が、下記一般式(1A)で表される化合物であることが好ましい。
【0049】
【化12】

【0050】
一般式(1A)中、R1〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基表す。
【0051】
なお、前記一般式(1A)で表される電荷輸送物質が、下記一般式(1B)で表される化合物であることが、より好ましい。
【0052】
【化13】

【0053】
一般式(1B)中、R1〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基表す。
【0054】
一般式(1)で表される化合物は公知の合成方法により作製することが可能である。以下に、一般式(1)で表される化合物の1つである前述のCTM−6で表される化合物の合成例を示す。
【0055】
【化14】

【0056】
上記CTM−6の合成スキームを解説する。先ず、4頭コルベンに冷却管、温度計、窒素導入管を装着し、マグネチックスターラーをセットする。この系内を減圧して、完全に窒素置換する。上記コルベン内に、
N,N−ビス(4−メチルフェニル)アニリン 4.00質量部
シクロヘキサノン 2.00質量部
酢酸 14.00質量部
メタンスルホン酸 0.09質量部
を順次投入する。この混合溶液を70℃で8時間反応させる。
【0057】
その後、精製した固体をアセトンで洗浄し、さらに、テトラヒドロフラン(THF)とアセトンを用いて再結晶化することにより、目的物であるCTM−6が得られる。上記CTM−6が得られたことは、質量分析法(MS)や核磁気共鳴法(NMR)等の公知の構造解析方法を用いることにより確認することができる。
【0058】
本発明の電子写真感光体に使用可能な電荷輸送物質(CTM)としては、一般式(1)で表される化合物の他に、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが可能である。たとえば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等が挙げられる。
【0059】
これらの電荷輸送物質を用いた電荷輸送層は、通常、適当なバインダー樹脂中にこれらの電荷輸送物質を溶解させ、溶解させた塗布液を用いて層形成を行うことができる。上記電荷輸送物質は、波長が380〜500nmの領域のレーザ光等の吸収が小さく、かつ、高い電荷輸送能を有するものが好ましい。
【0060】
《一般式(2)及び一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂等》
電荷輸送層に使用可能なバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれの樹脂でもよいが、本発明では、電荷輸送層に、少なくとも下記一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂を含有することを要する。
【0061】
【化15】

【0062】
一般式(2)中、Ar1’及びAr2’は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。また両者は、同一でも異なっても良い。
【0063】
本発明においては、当該樹脂を、予め合成等して用意しておき、感光層に含有させることもできるが、感光層、特に電荷輸送層中に含有させた下記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂から、下記に示すように光フリース転移反応等により、形成されたものであることが好ましい。従って、電荷輸送層に、少なくとも下記一般式(3)で表される化学構造を有するポリアリレート樹脂を含有することが好ましい。
【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂から一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂を形成する方法としては、画像形成のための書き込み露光の前に、予め紫外光等を感光層に一様に照射し、上記のような転移反応等を誘起させて形成さてもよい。また、画像形成のための書き込み露光の際に、当該樹脂が形成されるようにしても良い。
【0067】
感光層中に含有又は形成させる一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂の量は、感光層中に含有される樹脂全量に対して、1〜30質量%であることが好ましい。
【0068】
一方、一般式(3)で表される化学構造を有するポリアリレート樹脂としては、前記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂であれば、特に限定条件はないが、数平均分子量が、5,000〜80,000の範囲にあることが好ましく、20,000〜50,000がより好ましい。
【0069】
また、感光層中に含有又は形成させる一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂の量は、感光層中に含有される樹脂全量に対して、1〜30質量%であることが好ましい。
【0070】
一般式(3)で表される化学構造を有するポリアリレート樹脂の好ましい具体例としては、下記の化学構造を有する樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
【化18】

【0072】
本発明では、電荷輸送層に使用可能なバインダー樹脂として、前記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂の他に、種々のバインダー樹脂を含有させることができる。
【0073】
バインダー樹脂の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のビニル系重合体よりなる樹脂が挙げられる。また、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の縮合系の高分子材料もある。
【0074】
また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらの樹脂の他にシリコーン樹脂も使用可能である。また、これらの樹脂を構成する繰り返し単位構造のうち2つ以上の繰り返し単位構造を有する共重合体樹脂やこれらの樹脂を2種類以上併用するいわゆるポリマーブレンドと呼ばれる樹脂等もある。
【0075】
さらに、これらの樹脂の他に、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中でも、吸水率が小さく、電荷輸送物質を均一に分散させるとともに、良好な電子写真特性を発現するポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0076】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し電荷輸送物質を50〜200質量部とすることが好ましい。
【0077】
また、電荷輸送層の厚さは、現像時の潜像電位、電荷キャリアの拡散、形成画像の鮮鋭性、及び繰り返しの画像形成等の観点から、合計で30μm以下とすることが好ましく、10〜25μmとすることが特に好ましい。また、表面層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmとすることが好ましい。
【0078】
〈電荷発生層〉
本発明に係る感光体には、電荷発生物質として350〜500nmの波長領域に高感度特性を有する電荷発生物質を用いることが好ましい。このような電荷発生物質(CGM:Carrier Generation Material)としてはアゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等が好ましく用いられる。
【0079】
特に、市販の405mm近辺に発振波長を有する短波長レーザに対し、高感度を有するチタニルフタロシアニン顔料や、ジプロムアンスアンスロンの多環キノン系顔料、或いは、下記一般式(AZO)で表されるアゾ顔料等が好ましく用いられる。
【0080】
【化19】

【0081】
(一般式(AZO)中、Ar10は置換基を有していても良いアリール基を表し、Zは下記(a)及び(b)の混合物を表す。なお、(a)及び(b)中の環Xは位換基を有しても良い。)
【0082】
【化20】

【0083】
また、これらの顔料を併用して用いることができる。
【0084】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としては、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0085】
(中間層)
本発明の電子写真感光体では、導電性支持体と感光層の間に中間層を設けることも可能である。
【0086】
中間層を設ける場合、中間層中にN型半導電性粒子を含有させることが好ましい。「N型半導電性粒子」とは、主たる電荷キャリアが電子となる性質を有する粒子のことである。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、N型半導性粒子を用いた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してブロッキング性が少なくなる性質を有する。具体的なN型半導電性粒子としては、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)等があり、特に酸化チタンが特に好ましい。
【0087】
N型半導電性粒子は、転写メモリー発生防止、画像ムラ発生防止等の観点から、数平均一次粒子径が3〜200nmの範囲の大きさの粒子が用いられ、特に、5nm〜100nmの粒子が好ましい。「数平均一次粒子径」とは、N型半導電性粒子を透過型電子顕微鏡観察したときに10000倍に拡大した画像よりランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ方向平均径を測定値としたものである。
【0088】
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形、及びアモルファス形等が挙げられるが、この中でもルチル形またはアナターゼ形の酸化チタン粒子は、中間層を通過する電荷の整流性の向上に効果を有する。すなわち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させる作用を有するので、残留電位の増大が防止されて、高密度のドット画像形成に貢献することができる。
【0089】
本発明において、N型半導性粒子は、メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。当該メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高め、このN型半導性粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果がある。
【0090】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH3)O)−の構造単位とこれ以外の他のシロキサン単位の共重合体が好ましい。「他のシロキサン単位」としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
【0091】
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
【0092】
本発明の電子写真用感光体に中間層を設ける場合、中間層塗布液を作製してこれを塗布する方法が主に採られるが、中間層塗布液中には前記表面処理酸化チタン等のN型半導電性粒子の他にバインダー樹脂や分散溶媒が含有される。
【0093】
N型半導電性粒子の中間層中における比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比で1.0〜2.0倍(但し、バインダー樹脂の体積を1とする。)が好ましい。中間層中での比率をこの様に高密度にすることで、中間層の整流性が向上し、膜厚が厚くなっても残留電位の上昇や転写メモリーの発生を起こしにくくなる。したがって、黒ポチの発生を効果的に防止し、電位変動を小さく抑えることができる。
【0094】
また、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
【0095】
一方、N型半導性粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
【0096】
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これらの樹脂以外にも下記のような化学構造のポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
【0097】
【化21】

【0098】
また、上記ポリアミド樹脂の分子量は、樹脂の溶媒溶解性や凝集性等の観点から、数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。
【0099】
上記ポリアミド樹脂は、その一部が既に市販されており、例えばダイセル・デグサ(株)製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
【0100】
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0101】
本発明に係る中間層の膜厚は、ドット画像の劣化防止の観点から、0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚は、0.5〜5μmがより好ましい。
【0102】
また、当該間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで、「絶縁層」とは、体積抵抗が1×108Ω・cm以上である。
【0103】
本発明に係る中間層及び保護層の体積抵抗は、中間層の電荷ブロッキング性及び繰り返し画像形成で残留電位の観点から、1×108〜1015Ω・cmが好ましく、1×109〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmである。なお、体積抵抗は下記のようにして測定できる。
【0104】
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
【0105】
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
(溶媒・分散媒)
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0106】
(酸化防止剤)
本発明の電子写真用感光体の表面層又は表面近傍の層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することができる。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし抑制する性質を有する物質である。代表的には下記の化合物群が挙げられる。
【0107】
【化22】

【0108】
【化23】

【0109】
【化24】

【0110】
【化25】

【0111】
(導電性支持体)
本発明の電子写真用感光体に使用可能な導電性支持体としては、たとえば、シート状あるいは円筒状の形状を有する導電性支持体が挙げられる。
【0112】
円筒状の導電性支持体は、感光体の回転により感光体上にエンドレスに画像形成が行えるもので、その円筒度は5〜40μmが好ましく、7〜30μmがより好ましい。ここで、「円筒度」とは、JIS規格(B0621−1984)により規定されるものである。すなわち、円筒基体を2つの同軸の幾何学的円筒で挟んだとき、同軸2円筒の間隔が最小となる位置を半径の差で表したもので、当該半径の差をμmで表す。
【0113】
円筒度は、円筒状基体の両端10mmの2点、中心部、両端と中心部の間を3等分した点の4点の、合計7点における真円度を測定することにより求められる。円筒度を測定する測定装置としては、たとえば、「非接触万能ロール径測定機((株)ミツトヨ製)」等が挙げられる。
【0114】
導電性支持体の構成材料としては、アルミニウムやニッケル等の金属ドラムの他に、アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等を蒸着させたプラスチックドラム、導電性物質を塗布した紙製あるいはプラスチックドラムが挙げられる。
【0115】
導電性支持体の電気特性は、常温下での比抵抗が103Ωcm以下となることが好ましい。
【0116】
また、導電性支持体表面に封孔処理を施してアルマイト膜を形成した導電性支持体を用いることも可能である。アルマイト処理は、通常はクロム酸や硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるものであるが、その中でも、硫酸を用いての陽極酸化処理を施したものが最も好ましいものである。硫酸中で陽極酸化処理を行う場合、硫酸濃度を100〜200g/リットル、アルミニウムイオン濃度を1〜10g/リットル、液温を20℃前後、印加電圧を約20Vに設定して行うことが好ましいが、この条件に限定されるものではない。また、形成する陽極酸化被膜の平均膜厚を通常20μm以下、特に10μm以下にすることが好ましい。
【0117】
(有機感光体を製造するための塗布方法)
本発明の電子写真用感光体、すなわち、有機感光体を製造するための塗布方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布方法が用いられる。表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いるのが最も好ましい。
【0118】
上記塗布液供給型の塗布装置の中でもスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法は、前記した低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体の場合は特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置等を用いて塗布することが好ましい。
【0119】
円形スライドホッパー型塗布装置を用いる塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm〜2mm)を持って配置されているため基材を傷つけることなく、また性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。更に性質が異なり同一溶媒に溶解する層を多層形成させる際にも、浸漬塗布方法と比べて溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へ殆ど溶出せず、塗布槽にも溶出することなく塗布できる。
【0120】
(画像形成装置)
本発明の電子写真感光体が搭載可能な画像形成装置の一例を図1に示す。画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成が可能なものであり、大きく分けて画像読取部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送部Dから構成される。
【0121】
画像読取部Aの上部には、原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられ、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12により1枚毎に分離搬送され、読取位置13aで画像の読取りが行われる。画像の読取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0122】
図1の画像形成装置1は上述した自動での画像読取りの他に、プラテンガラス13上に原稿を1枚ずつ置いて読取りを行うことも可能である。プラテンガラス13上で読取りを行う場合、原稿画像の読取りは走査光学系を構成する照明ランプと第1ミラーからなる第1ミラーユニット15と2つのミラーをV字状に配置した構造の第2ミラーユニット16とをそれぞれ移動させて行う。図1の画像形成装置では、第1ミラーユニット15の移動速度をv、第2ミラーユニットの移動速度をv/2にして、原稿画像の読取りを行う。
【0123】
画像読取部Aで前述の手順により読み取られた画像は、次の画像処理部Bでデジタルの画像信号に変換される。画像処理部Bでは、先ず、画像読取部Aで読み取られた画像が、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像したライン状の光学画像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換され、さらに、A(アナログ)/D(デジタル)信号に変換処理される。そして、デジタル信号に変換された画像信号は濃度変換やフィルタ処理等の処理が施され、形成された画像情報は画像信号としていったんメモリーに格納される。
【0124】
画像形成部Cは、画像処理部Bで形成されたデジタル信号を用いてトナー画像形成を行うもので、図1に示す様に画像形成に使用する部品を組み立ててなるユニット構造を有するものである。画像形成部Cを構成する画像形成ユニットは、ドラム状の感光体21を有し、感光体21の外周に感光体21を帯電する帯電手段(帯電工程)22、感光体21にトナー供給を行う現像手段(現像工程)23等を配置している。また、感光体21の外周には、感光体21で形成したトナー画像を用紙P等上に転写する転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、感光体21上の残留トナーを除去するクリーニング装置(クリーニング工程)26、次の画像形成に備えて感光体21表面を除電する光除電手段(光徐電工程)であるプレチャージランプ27が配置されている。感光体21の外周に配置された帯電手段22から光除電手段27に到るこれら部材は、画像形成時に行われる動作の順番に配置されている。
【0125】
また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ画像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21は画像形成時に図示方向、すなわち、時計方向に駆動回転するものである。
【0126】
次に、感光体21への露光方法について説明する。感光体21は図示しない駆動手段により回転し、感光体21は回転中に帯電手段22により一様帯電され、像露光手段(像露光工程)30で示す露光光学系により、画像処理部Bのメモリーから呼び出された画像信号に基づいて像露光される。
【0127】
感光体21に画像情報を書込む書込手段に該当する像露光手段30は、図示しないレーザダイオードを発光光源とし、ポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35及び反射ミラー32により送られてきた露光光により主走査を行う。この様に送られてきた露光光を図中の位置Aoで感光体21上に照射することにより像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)により静電潜像が形成される。
【0128】
本発明では、感光体21上に静電潜像を形成するに際、書き込み波長が350〜500nmの範囲にある半導体レーザまたは発光ダイオードを露光光源として用い、これら露光光源からの露光光のドット径を10〜50μmに設定して露光を行うことが好ましい。露光光源の発光波長と露光ドット径が上記範囲内にあるいわゆる微細ドット光を用いた露光により、感光体21上にデジタル画像形成に対応可能な高精細なドット画像を形成することが可能になる。すなわち、発振波長と露光ドット径を上記範囲とすると、感光体21上にはたとえば1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)以上の高解像度の画像形成を行うことが可能になる。
【0129】
また、上記露光ドット径は、当該露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上となる領域の主走査方向に沿った露光ビームの長さをいうものである。露光ビームの光源としては、たとえば、半導体レーザを用いた走査光学系や発光ダイオード(LED)を用いた固体スキャナー等が挙げられる。また、露光ビームの強度はガウス分布やローレンツ分布等により分布を表現することもできるが、本発明では光強度の分布を特定する必要はなく、ピーク強度の1/e2以上となる領域からなる直径が10〜50μmのドット径を形成することができればよい。
【0130】
また、露光ビームとして、縦横それぞれ3本以上のレーザビーム発光点を有する面発光レーザアレイを用いると、電子写真感光体への静電潜像の書込みが迅速に行えるので、高速のプリント作製を行う上で好ましい。そして、画像形成を繰り返し行っても安定した潜像形成が可能な本発明に係る電子写真感光体上に面発光レーザアレイで露光を行うことにより、安定した画質を有するプリント物を迅速に作製することができる様になる。
【0131】
感光体21上に形成された静電潜像は、現像手段23よりトナー供給を受けて現像が行われ、感光体21表面に可視像であるトナー画像が形成される。デジタル対応の高精細な画像形成を実現する上で、現像手段23により供給される現像剤は重合トナーを用いることが好ましい。すなわち、重合トナーは、その生産工程で形状や粒度分布を制御しながら作製することが行える。
【0132】
次に、転写紙搬送部Dは、画像形成部Cで感光体21の外周に形成されたトナー画像を転写手段45により転写した用紙Pを次の定着手段50に向けて搬送するものである。転写紙搬送部Dには、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段である給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また、給紙ユニットの側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられている。これらの転写紙収納手段のいずれかより転写紙Pは選択され、案内ローラ43により搬送路40に沿って給紙される。
【0133】
転写紙搬送部Dには、給紙される転写紙Pの傾きと偏りを修正する対で構成される給紙レジストローラ44が設けられ、給紙レジストローラ44により転写紙Pは一時停止を行った後再給紙される。再給紙された転写紙Pは、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内される。
【0134】
感光体21上に形成されたトナー画像は、転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25により転写紙P上に転写される。このとき、転写紙Pは転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送された状態で紙面上にトナー画像の転写を受け、トナー画像が転写された転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に向けて搬送される。
【0135】
定着手段50は、定着ローラ51と加圧ローラ52とを有するもので、転写紙Pが定着ローラ51と加圧ローラ52の間を通過すると、加熱、加圧により、転写紙P上のトナー画像を定着させる。この様にして、トナー画像が転写紙P上に定着されると、転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0136】
以上の手順により、図1の画像形成装置は転写紙Pの片面にトナー画像を転写して、片面に画像を形成したプリント物を作製することができるが、転写紙Pの両面にトナー画像を転写したプリント物を作製することも可能である。
【0137】
転写紙Pの両面にトナー画像を形成する場合、転写紙搬送部Dの排紙切換部材170が作動して、転写紙案内部177が開放され、片面にトナー画像を形成した転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。転写紙Pは、搬送機構178により下方に搬送され、転写紙反転部179でスイッチバック搬送させられ、転写紙Pの後端部だった側が先端になって両面プリント用給紙ユニット130内に搬送される。
【0138】
転写紙Pは、両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pが再度給紙されて、転写紙Pは搬送路40に案内される。そして、前述の手順により、感光体21方向に転写紙Pが搬送され、転写紙Pの裏面にもトナー画像が転写され、定着手段50で定着された後、排紙トレイ64に排紙される。この様な手順により、転写紙Pの両面にトナー画像を形成したプリント物を作製することが可能である。
【0139】
また、図1に示す画像形成装置では、上記感光体21と、現像手段21、クリーニング装置26等の構成要素を一体に結合させたユニット構造のいわゆるプロセスカートリッジを形成し、これを装置本体に着脱自在に構成する方式を採ることもできる。また、プロセスカートリッジの様に全ての構成要素をユニット化するものの他に、帯電器、像露光器、現像手段23、転写又は分離装置、及び、クリーニング装置の少なくとも1つを感光体21と一体に支持した構造のカートリッジを形成し、装置本体に対して着脱自在にセット可能なユニットとすることも可能である。
【0140】
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成により形成されるトナー画像は、上記の様に、最終的に転写紙P上に転写され、定着工程を経て、転写紙P上に固定される。上記画像形成に使用される転写紙Pは、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材あるいは転写材とも呼ばれるものである。具体的には普通紙や上質紙と呼ばれる市販のコピー用紙や、アート紙やコート紙等の塗工処理が施された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられるが、本発明に使用可能なものはこれらに限定されるものではない。
【0141】
本発明に係る画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0142】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
【0143】
実施例1の作製:
〈中間層〉
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(切削加工により十点表面粗さRz:0.81μmに加工した。)上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃、30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
【0144】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0145】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部
ルチル形酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行い、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0146】
〈電荷発生層(CGL)〉
電荷発生物質(CGM):下記例示化合物CG−1 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBX−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0147】
【化26】

【0148】
〈電荷輸送層(CTL)〉
電荷輸送物質(例示化合物CTM−A) 225部
樹脂(例示化合物A) 300部
酸化防止剤(例示化合物AO−1) 3部
テトラヒドロフラン/トルエン=4/1(v/v) 2000部
シリコーンオイル(KF−96:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚20.0μmの電荷輸送層1を形成した。
【0149】
実施例2〜8および比較例1〜4の作製
上記電荷輸送層のCTMを、CTM−B〜CTM−D,樹脂をA〜Hに変更して、同様に作製した。
【0150】
評価:
《評価1》
このようにして作製した電子写真感光体を、評価機として、基本的に図1の構成を有するデジタル複写機Bizhub C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)改造機(像露光光源に405nmの半導体レーザを使用、ビーム径30μmで、1200dpiの露光を行うプロセス条件に改造)を用いて、以下のように評価した。電位測定は、上記改造機の現像器に電位測定プローブを組み込んだ電位測定治具を用いて行った。
【0151】
(感度)
感光体の表面電位を−700Vになるようにコロナ帯電器で帯電し、次いで405nmの半導体レーザで露光し、表面電位が−350Vまで減衰するのに必要な光量を測定し、感度(E1/2)を求めた。
【0152】
(繰り返し特性)
次に初期暗部電位(Vd)及び初期明部電位(Vl)をそれぞれ−700V、−100V付近に設定し、帯電、露光を10000回繰り返し、感度(E1/2)を測定した。
【0153】
(画像評価)
前記評価機を用いて、常温常湿環境(23℃、60%RH)にてA4縦で10万枚の実写を行った。
【0154】
下記の評価基準に基づき。プリント画像の白地部分に目視できる黒点(径0.4mm以上)の数がA4版1枚当たり何個あるかで評価した。
【0155】
評価基準
○:10万枚のプリントを通して、黒点の発生はなく良好。
【0156】
△:10万枚のプリントで、黒点の発生が見られるが3個/A4版以下で実用的に問題 なし。
【0157】
×:1万枚のプリントで、黒点の発生が4個/A4版以上みられ実用上問題あり。
【0158】
以上の評価結果を表1に示す。
【0159】
【表1】

【0160】
【化27】

【0161】
【化28】

【0162】
【化29】

【0163】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例については、感度及び繰り返し特性が優れている上に、黒点欠陥が皆無又は殆ど無く優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】デジタル方式による画像形成が可能な画像形成装置の断面図
【符号の説明】
【0165】
1 画像形成装置
21 感光体(電子写真感光体)
22 帯電手段
23 現像手段
26 クリーニング装置
27 光除電手段
30 像露光手段
45 転写手段
50 定着手段
A 画像読取部
B 画像処理部
C 画像形成部
D 転写紙搬送部
P 転写紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み波長が350〜500nmの範囲内にある書込み用光源を用いて有機感光体上に静電潜像を形成する露光工程、及び当該静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有する画像形成方法において用いる電子写真用感光体であって、導電性支持体上に感光層を有し、当該感光層が、下記一般式(1)で表される電荷輸送物質及び一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂を含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【化1】

[一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基表す。なお、R1及びR2は、結合して環を形成するものであってもよい。R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Ar1〜Ar4は、それぞれ独立して、水素原子又はアリール置換基を持つ同一でも異なっても良いフェニル基を表す。R3は炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、複素環基を表す。但し、m及びnは、1〜4の整数を表す。]
【化2】

[一般式(2)中、Ar1’及びAr2’は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。また両者は、同一でも異なっても良い。]
【請求項2】
前記感光層が、下記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
【化3】

[一般式(3)中、Ar1’及びAr2’は、それぞれ、置換基を有しても良い同一でも異なってもよいアリール基を表す。]
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化学構造を有する樹脂が、前記一般式(3)で表される化学構造を有する樹脂から形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用感光体。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される電荷輸送物質が、下記一般式(1A)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用感光体。
【化4】

[一般式(1A)中、R1〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基表す。]
【請求項5】
前記一般式(1A)で表される電荷輸送物質が、下記一般式(1B)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用感光体。
【化5】

[一般式(1B)中、R1〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアリール基表す。]

【図1】
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【公開番号】特開2009−204775(P2009−204775A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45665(P2008−45665)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】