説明

電子写真用無端ベルト

【課題】 例えば温度70℃、相対湿度90%相対湿度のような過酷な環境下におかれても蛇行防止用ビードの端部を含めた全体が無端ベルト本体から剥離しない電子写真用無端ベルトを提供する。
【解決手段】 無端ベルト本体11と蛇行防止用ビード12とが接着された状態で温度70℃、相対湿度90%相対湿度の環境下で72時間湿熱エージングしたときに、湿熱エージング前後で生じる無端ベルト10の周方向の寸法変化率と、湿熱エージング前後で生じる蛇行防止用ビード12の全長の寸法変化率との差の絶対値が0.5%以下である電子写真用無端ベルト10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓性を有する無端ベルト本体の内周面の一側部又は両端部に沿った横断面が一様である略線状の蛇行防止用ビードが少なくとも1本以上接着された、電子写真複写機、レーザープリンタ、ファクシミリ、又はこれらを複合したOA機器に使用される電子写真用無端ベルト(以下単に「無端ベルト」という。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無端ベルト110は、例えば、図6に示すように、無端ベルト本体111と、無端ベルト本体111の内周面の側部に沿って周方向に接着される蛇行防止用ビード112とを備え、2つのローラ113、114の間に巻架されて中間転写ベルトとして利用される。
【0003】
無端ベルト本体111は、屈曲可能な可撓性の材料で走行方向においてエンドレスに成形されるが、蛇行防止用ビード112はエンドレス成形品ではなく、細長い線状に形成されて無端ベルト本体111の内周面の側部に沿って接着されると共に両端部が互いに周方向に対向して継ぎ目を形成している。
【0004】
このように形成された無端ベルト110は、蛇行防止用ビード112がローラ114外周面の端部に形成された嵌口溝115に嵌口しながら走行することから、2つのローラ113,114の回転に伴って蛇行することなく走行する。但し、無端ベルト110が長期に渡って使用し続けられるにつれて、蛇行防止用ビード112が無端ベルト本体111から剥離し、無端ベルト110がローラ113、114から外れてしまうことがある。
【0005】
そのために、蛇行防止用ビード112が無端ベルト本体111から剥離することを防止する無端ベルト110の発明として、特許文献1に記載されたようなものがある。この特許文献1には、エンドレスのシームレスベルト(無端ベルト)の少なくとも内周面一側部に、略線状のガイド(蛇行防止用ビード)を接着層により周方向に接着し、該ガイド(蛇行防止用ビード)の両端部を隙間を介して対向させたガイド(蛇行防止用ビード)付きシームレスベルト(無端ベルト)であって、上記シームレスベルト(無端ベルト)の内周面と上記ガイド(蛇行防止用ビード)の少なくとも一端部とを接着剤で接着し、この接着剤で上記接着層の端部露出面の少なくとも一部を被覆するようにしたことを特徴とするガイド(蛇行防止用ビード)付きシームレスベルト(無端ベルト)が記載されている。
【0006】
これによれば、せん断応力の作用に伴うガイド(蛇行防止用ビード)の端部の剥離を抑制防止し、これを通じてロール等からガイド(蛇行防止用ビード)が外れる虞を排除することができる旨記載されている。
【特許文献1】特開2003−128295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
即ち、特許文献1に記載された発明では、蛇行防止用ビードは、両端部が互いに対向して形成される継目の部分が接着剤によって繋げられることによって、連続成形されたと同等に機能を発揮して、蛇行防止用ビードの端部が無端ベルト本体から剥離することが防止される。
【0008】
しかし、無端ベルトを電子写真装置に使用した場合に、無端ベルトが転写装置付近で約70℃に達する高温環境となる中で長期に使用されることに起因して、蛇行防止用ビードの端部以外の部分が無端ベルト本体から剥離する虞がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、例えば温度70℃、相対湿度90%のような過酷な環境下におかれても蛇行防止用ビードの端部を含めた全体が無端ベルト本体から剥離しない電子写真用無端ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、可撓性を有する無端ベルト本体の内周面の一側部又は両端部に沿った横断面が一様である略線状の蛇行防止用ビードが少なくとも1本以上接着された電子写真用無端ベルトであって、前記蛇行防止用ビードは、弾性材料層と剛性材料層との間が接着された2層から構成され、前記無端ベルト本体の内周面に前記蛇行防止用ビードの前記剛性材料層が接着されている電子写真用無端ベルトとしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記弾性材料層はポリウレタンで形成され、前記剛性材料層はポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記無端ベルト本体と前記蛇行防止用ビードとが接着された状態で温度70℃、相対湿度90%の環境下で72時間湿熱エージングしたときに、該湿熱エージング前後で生じる前記無端ベルトの周方向の寸法変化率と、前記湿熱エージング前後で生じる前記蛇行防止用ビードの長尺方向の寸法変化率との差の絶対値が0.5%以下である電子写真用無端ベルトとしたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記蛇行防止用ビードは、前記湿熱エージング前後で生じる長尺方向の寸法変化率が−0.5%乃至+0.5%であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の構成に加え、蛇行防止用ビードは、弾性材料層と剛性材料層との間が接着された2層から構成され、前記弾性材料層が前記剛性材料層にラミネート接着され、前記ラミネート処理時に、前記剛性材料層の温度が80℃における前記剛性材料層の縦延伸方向の引張応力を1.0乃至8.5N/mmとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び2に記載の発明によれば、弾性材料層は、耐久性及び耐摩耗性を有しているので、蛇行防止用ビードは、無端ベルトが走行中に蛇行するのを従来通りに防止できると共に、剛性材料層は、寸法安定性及び剛性を有して無端ベルト本体の内周面と弾性材料層の間に設けられ、弾性材料層が湿熱エージングによって伸縮しようとするのを、熱変形量が少なく寸法安定性に優れた剛性材料層が抑制するので、蛇行防止用ビードが無端ベルト本体の内周面上で剥離したり割れたりすることを防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、無端ベルト本体と蛇行防止用ビードとが接着された状態で、無端ベルトを温度70℃、相対湿度90%の環境下で72時間湿熱エージングしたときに、湿熱エージング前後で生じる無端ベルトの周方向の寸法変化率と蛇行防止用ビードの長尺方向の寸法変化率との差の絶対値が0.5%以下であることから、無端ベルトと蛇行防止用ビードとでは、湿熱エージング前後で生じる伸縮度合いの差が小さくなるので、電子写真用無端ベルトが、例えば温度70℃、相対湿度90%のような過酷な環境下におかれても蛇行防止用ビードの端部を含めた全体が無端ベルト本体から剥離することが防止される。
【0017】
蛇行防止用ビードが湿熱変化によって無端ベルト本体から浮き上がったりずれたりする剥離現象を防止することによって、無端ベルトに波打ちが生じ難くなり、この無端ベルトが電子写真装置に用いられてローラに組み込まれた場合には適切なトルク範囲での走行を維持することができることから、電子写真装置の運転も安定持続する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、蛇行防止用ビードは、湿熱エージング前後で生じる長尺方向の寸法変化率が−0.5%乃至+0.5%と伸縮する度合いが小さいことから、蛇行防止用ビードが湿熱変化によって無端ベルト本体から浮き上がったりずれたりする剥離現象は更に確実に防止される。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、弾性材料層を剛性材料層にラミネート接着し、ラミネート処理時に、剛性材料層を、80℃の条件下で縦延伸方向に1.0乃至8.5N/mmで引張応力をかけて蛇行防止用ビードを作製する。このような引張応力をかけて作製するために、弾性材料層を剛性材料層にラミネート接着して蛇行防止用ビードを冷却した場合に、蛇行防止用ビード内に残留応力が残らず、蛇行防止用ビードが収縮することがなくなる。また、これとは反対に、引張応力が全くかけられない場合には、剛性材料層が無端ベルト本体の内周面上で撓んでしまう虞があるが、上記所定の引張応力をかけて作製するために、撓むこともない。従って、蛇行防止用ビードを、無端ベルト本体の内周面上に良好に接着して、無端ベルトを仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1乃至図5には、この発明の実施の形態を示す。
【0021】
まず、構成を説明すると、図1で示すように、無端ベルト10は、可撓性を有する無端ベルト本体11と、無端ベルト本体11の内周面の一側部に沿った横断面が一様である略線状の蛇行防止用ビード12とを備えている。
【0022】
前記無端ベルト本体11は、ベルトが継目なくエンドレスに成形されて断面が環状になっており、図2で示すようにローラ13とローラ14との間に巻架されて適度な引張応力をかけられている。ローラ14には、周面の端部側に蛇行防止用ビード12が嵌口する嵌口溝15が形成されている。そのため、ローラ13,14の回転に伴い、蛇行防止用ビード12が嵌口溝15に嵌口しながら無端ベルト10が蛇行することなく走行するようになっている。
【0023】
無端ベルト本体11に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PBT、PEN等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、アラミド樹脂、PEEK、エポキシ樹脂、架橋型ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等の熱変形の小さい樹脂が挙げられる。
【0024】
また、無端ベルト本体11の導電性を調整するために選択的に使用される導電性付与剤としては、金属、金属化合物、合金からなる針状、球状、板状、不定形等の金属性粉末、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボン粉末、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、セラミック粉末、表面が金属めっきされた各種粒子等が挙げられる。これらの導電性付与剤のサイズは樹脂材料への分散性の観点から0.01〜10μm程度が好ましく、導電性付与剤の添加量は導電性の程度によるものの、おおよそ5〜25容量%の範囲が好ましい。これは、5%容量%未満では導電性物質同士の距離が大きいので導電性が発現せず、25容量%を超えると、無端ベルト本体11の強度に悪影響を及ぼす虞があるからである。導電性付与剤は、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機、三本ロール、ホモジナイザ、ボールミル、又はビーズミル等を用いる公知の分散方法により樹脂材料に分散される。
【0025】
なお、本実施形態では樹脂材料に導電性付与剤を添加したものを示すが、これ以外にも可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、補強性フィラー、反応助剤、反応抑制剤等の添加剤を必要に応じて適宜添加することが可能である。
【0026】
前記蛇行防止用ビード12は、図3に示すように、弾性材料層16と剛性材料層17との2層から構成され、弾性材料層16は、剛性材料層17にラミネート処理されて接着されている。そして、この蛇行防止用ビード12における剛性材料層17側が、アクリル系両面感圧接着剤層18によって無端ベルト本体11の内周面側に接着されている。
【0027】
弾性材料層16は、耐久性及び耐摩耗性を有する材料で構成されており、剛性材料層17は、熱変化に対する寸法安定性及び剛性を有する材料で構成されている。
【0028】
なお、この発明の実施の形態では、剛性材料層17と無端ベルト本体11との間の接着方法は、剛性材料層17と無端ベルト本体11とをアクリル系両面感圧接着剤18によって接着することにより行われるが、接着することができるのであれば、その他の接着剤を用いて接着しても良く、又、両面テープを用いて接着しても良い。
【0029】
弾性材料層16を構成するエラストマ材料としては、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、塩化ビニル系エラストマ、スチレン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、シンジオタクチック1・2エラストマ、塩素系エチレンコポリマー架橋ポリマーアロイ、塩素化ポリエチレン、エステル・ハロゲン系ポリマーアロイ型エラストマ、NBR、ABS、イソプロピレンゴム、フッ素系エラストマ、EPDM、クロロプレンゴム(CR)、SBR、フッ素ゴム(FPM)、シリコーンゴム等が用いられる。
【0030】
剛性材料層17を構成するフィルム材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PBT、PEN等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリイミドアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、アラミド樹脂、PEEK、エポキシ樹脂、架橋型ポリエステル、メラミン樹脂等が用いられる。
【0031】
このような無端ベルト10の作製は、以下のように行う。
【0032】
まず、無端ベルト本体11の基材を作製するべく、ポリアミドイミドからなる流動性の溶液を用意する。
【0033】
この材料の調整に際しては、トリメリット酸無水物と4,4−ジアミノジフェニルメタンとの当量をジメチルアセトアミドに融解し、加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)28質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度15質量%、固形分比重1.2のポリアミドイミド溶液としたものである。
【0034】
次に、このポリアミドイミド溶液を回転成形金型内周に注入して無端ベルト本体11の基材を作製する。
【0035】
内面がポリッシングにより鏡面研磨された内径226mm、外径246mm、長さ400mmの金型を使用し、材料漏れを防止するために、金型両端の開口部に内径170mm、外径250mmのリング状の蓋をそれぞれ嵌口する。この金型内に材料190gを注入し、熱風乾燥機で雰囲気温度を80℃に保ちながら、ベルト基材の厚みが約100μmとなるように1000rpmの速度に調整して30分間回転成形した後、金型ごと後述する各実施例及び比較例に示す温度及び時間にてオーブンに投入してベルト基材を乾燥した。
【0036】
オーブンから金型を取り出した後、金型を室温で冷却し、金型とベルト基材の熱膨張差を利用してベルト基材を脱型した。そして、ベルト基材の両端部をそれぞれ切断して240mm幅とし、厚さ約100μmの無端ベルト本体11を作製し、後述する各実施例及び比較例に示す無端ベルト10に用いた。
【0037】
また、2層構成の蛇行防止用ビード12は以下の手順で作製する。
【0038】
まず、剛性材料層となる幅1000mm、厚さ100μmのPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーS10#100)を、後述する各実施例及び比較例の条件に冷却ロールと巻取ロールとの間の巻取張力を調整したフィルム成形機にセットし、弾性材料層となる120℃に加熱溶融させた熱可塑性ウレタン樹脂(日本ミラクトラン(株)製、E180)を、Tダイを用いて厚み0.9mmにフィルム押出し、PETフィルムにラミネート処理して2層のビード原反を得た。
【0039】
そして、このビード原反から縦方向(MD、Machine Direction)の長さ707mm、横方向(TD、Transverse Direction)の長さ5mmの蛇行防止用ビード12を、トムソン刃を用いて切り出した。
【0040】
なお、ビード原反は、ラミネート処理時、温度80℃における剛性材料層の縦延伸方向の引張応力を1.0乃至8.5N/mmとしている。
【0041】
このようにして、剛性材料層17としてPETフィルムを使用し、弾性材料層16として熱可塑性ウレタン樹脂を使用した2層構成の蛇行防止用ビードを作製した。この蛇行防止用ビード12を芯材のないアクリル系両面感圧接着剤18を介して無端ベルト本体11の内周面の一側面に接着して後述する各実施例及び比較例の無端ベルト10を作製した。この際に、蛇行防止用ビード12の継目の間隔を3mmとした。
【0042】
なお、この発明の実施の形態では、剛性材料層17に引張応力をかけるものであったが、蛇行防止用ビード12の寸法安定化を図ることができるのであれば上記の実施の形態に限らず、アニーリング等の内部ストレスを緩和する方法を採用しても良い。
【0043】
また、この発明の実施の形態では、剛性材料層17に引張応力をかけるものであったが、蛇行防止用ビード12の寸法安定化を図ることができるのであれば上記実施の形態に限らず、温度と引き落し率の変化の関係を考慮して設計しても良い。引き落し率とは、フィルム成形時においてはロール間でのロール表面速度の比で表され、ロール径が同じである場合はロール回転数の比である。例えば、フィルム成形時に外径が同じであるロールA、Bがあるとする。そして、フィルムが、ロールAからロールBの方向に流れているとする。この時の各ロールの回転数をa,bとするとき、100×(b−a)/aの式で表される値を引き落し率という。
【0044】
蛇行防止用ビードの原反作製のために、弾性材料層18を剛性材料層17にラミネート成形する際に、流れている剛性材料層17をある程度の張力で張っておかなければ、皺、弛みなどがないきれいなビード原反を作製することができない。完全に冷え切った剛性材料層17であれば、張力が掛かっていても問題ないが、実際にラミネート処理するときには熱をかけてやわらかくしているため、張力を掛けすぎると剛性材料層17内に内部応力が残ってしまい、剛性材料層17の成形後に新たに剛性材料層17に熱が加わったときに寸法変化率が大きくなってしまう。このため、最適な張力を得るために引き落し率の管理が必要となる。
【0045】
ラミネート成形時には、何本ものロールの間を剛性材料層17が流れて行き、その過程で材料温度が低くなっていく。このときの温度のプロファイルと内部応力のプロファイルは、密接に関係している。
【0046】
仮に、剛性材料層17が80℃付近のロールの間の引き落し率を小さくした場合には、その条件で作成された剛性材料層17は、温度を上昇させていっても、80℃近辺までの寸法変化率が小さくなる。
【0047】
従って、ラミネート処理後の剛性材料層17の樹脂温度が徐々に下がっていく過程の中でかかっている内部応力の大小が、製品になった後の熱収縮の大小となり再現されるため、実際に使用するときに収縮して欲しくない温度領域から少し高い温度のところまでの引き落し率を小さくすることにより収縮を抑えることができる(表2の実施例8参照)。
【0048】
次に、寸法の測定方法に関して、無端ベルト10の周長測定方法及び蛇行防止用ビードの長尺方向の寸法測定方法について説明する。
【0049】
無端ベルト10の周長測定は、図4に示す周長測定装置で行う。精密に加工された外径25mmのローラ21およびローラ22に無端ベルト10を巻架し、ローラ22を固定しておいたまま、ローラ21を矢印方向に移動させて無端ベルト10に6kgの引張応力を与える。ローラ21およびローラ22の軸間距離Eを3次元形状測定器((株)ミツトヨ製、型式BH506)で測定し、ベルト周長=2×E+25πとして、この式により無端ベルト10の周長を算出する。
【0050】
蛇行防止ビード12の長尺方向の寸法測定方法は、平板上に置いた蛇行防止用ビード12を平滑なガラス板で上から押さえ、無端ベルトと同様に前記3次元形状測定器で長尺方向の寸法を測定する。
【0051】
無端ベルト10と蛇行防止用ビード12の寸法変化率は湿熱エージング前後の寸法測定結果よりそれぞれ算出して求める。
【0052】
まず、蛇行防止用ビード12は、ビード原反から型抜きした状態で曲げられることなく直線状のまま、温度23℃、相対湿度50%の環境に3時間放置される。この3時間静置された蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法を、A(mm)とする。
【0053】
次に無端ベルト10は、無端ベルト本体11に蛇行防止用ビード12を接着し、接着力が安定するまで72時間以上室温に放置し、更に温度23℃、相対湿度50%の環境下に3時間静置された後の無端ベルト10の周長を周長測定装置で測定して、湿熱エージング前の周長B(mm)とする。
【0054】
その後、無端ベルト10は、周長測定装置に巻架しロール間を6kgの張力で保持された状態で、温度70℃、相対湿度90%の環境下に72時間投入された後に、温度23℃、相対湿度50%の環境下に72時間静置される。この湿熱エージング後における無端ベルト10の周長を、C(mm)とする。
【0055】
一方、蛇行防止用ビード12は、引張応力が生じないように人手によって無端ベルト本体11と剥離した後、長尺方向の寸法を測定する。この湿熱エージング後における蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法を、D(mm)とする。
【0056】
ここで、無端ベルト10の周方向の寸法変化率をX1(%)とし、X1=100×(C−B)/Bとする。また、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率をX2(%)とし、X2=100×(D−A)/Aとする。この時、X1−X2の絶対値を寸法変化率の差と表現する。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例および比較例により更に詳述する。尚、本発明に係る無端ベルト10は以下の実施に限るものではない。
[実施例1]
【0058】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度220℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0059】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてポリウレタンを使用し、剛性材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、巻取張力を1.654N/mmとした剛性材料層17に弾性材料層16をラミネート処理したビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0060】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例1の無端ベルト10を得た。
【0061】
なお、この時の巻取張力を1.654N/mmとしているのは、以下の理由による。即ち、弾性材料層16を剛性材料層17にラミネート処理するときに、剛性材料層17を所定の張力を与えながら接着してから冷却するので、その冷却時に収縮しようとするエネルギーが剛性材料層17に蓄えられたままで製品化されてしまう。そのため、巻取張力は小さいほうが好ましいのであるが、巻取張力が小さすぎると剛性材料層17が無端ベルト本体11の内周面上で撓んでしまい、きれいに仕上がらないので、適度な張力で作製する。
[実施例2]
【0062】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度220℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0063】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてクロロプレンゴムを使用し、剛性材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、巻取張力1.654N/mmの剛性材料層17に弾性材料層16をラミネート処理したビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0064】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例2の無端ベルト10を得た。
[実施例3]
【0065】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度220℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0066】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてクロロプレンゴムを使用し、剛性材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、巻取張力を7.5N/mmとした剛性材料層17に弾性材料層16をラミネート処理したビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0067】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例3の無端ベルト10を得た。
[実施例4]
【0068】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度220℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0069】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてポリウレタンを使用し、剛性材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、巻取張力を7.5N/mmとした剛性材料層17に弾性材料層16をラミネート処理したビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0070】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例4の無端ベルト10を得た。
[実施例5]
【0071】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度180℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0072】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてクロロプレンを使用し、剛性材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、巻取張力を12N/mmとした剛性材料層17に弾性材料層16をラミネート処理したビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0073】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例5の無端ベルト10を得た。
[実施例6]
【0074】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度180℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0075】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてクロロプレンを使用したが、剛性材料層17は使用しなかった。そして、成形時のビード原反の巻取張力を12N/mmとし、型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0076】
この蛇行防止用ビード12の裏面の紙を剥離して無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例6の無端ベルト10を得た。
[実施例7]
【0077】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度200℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0078】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてポリウレタンを使用し、中間材料層17は使用しなかった。そして、成形時の巻取張力を3.2N/mmとし、型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0079】
この蛇行防止用ビード12の裏面の紙を剥離して無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例7の無端ベルト10を得た。
[実施例8]
【0080】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度220℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0081】
次いで、蛇行防止用ビード12には、弾性材料層16としてクロロプレンゴムを使用し、中間材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、剛性材料層17に弾性材料層をラミネート処理する時、ロール間でのロール回転数の比である引き落とし率を3%としたビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビード12を作製した。
【0082】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して実施例8の無端ベルト10を得た。
[比較例1]
【0083】
無端ベルト本体11は、前記した方法によって用意し、温度200℃のオーブンに90分間投入して作製した。
【0084】
次いで、蛇行防止用ビード12は、弾性材料層16としてポリウレタンを使用し、剛性材料層17としてPETフィルムを使用した。そして、剛性材料層17の巻取張力を12N/mmとして弾性材料層16をラミネート処理したビード原反より型抜きをして蛇行防止用ビードを作製した。
【0085】
この蛇行防止用ビード12の剛性材料層17側を無端ベルト本体11の内周面に接着して比較例1の無端ベルト10を得た。
[試験方法]
【0086】
実験例1乃至8、比較例1のそれぞれについて、無端ベルト本体11と蛇行防止用ビード12との接着状態を確認するため、無端ベルト10は、図4に示す測定ユニット23に組み込まれる。この状態で無端ベルト10の周長を3次元形状測定器((株)ミツトヨ製、型式BH506)により測定した。
【0087】
そして、無端ベルト本体11と蛇行防止用ビード12とが互いに接着された状態のままで、無端ベルト10を、6kgの張力で張られた状態で温度70℃、相対湿度90%の環境下で72時間放置して湿熱エージングする。
【0088】
その後、無端ベルト10が室温まで冷まされると、無端ベルト10の周長を3次元形状測定器((株)ミツトヨ製、型式BH506)により測定した。蛇行防止用ビードでは、無端ベルト本体11に接合する前の長尺方向の寸法と、試験後に無端ベルト本体11から剥離した長尺方向の寸法とを測定して湿熱エージング前後の寸法変化率を算出した。また、湿熱エージング後、蛇行防止用ビード12を無端ベルト本体11から剥離する前に、蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11から浮き上がっている高さについてノギスによる測定或いは目視による観察を行った。その結果は表1及び表2に示すものとなった。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
即ち、実施例1では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.05%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は−0.12%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.17%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0092】
実施例2では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.05%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は−0.13%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.18%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0093】
実施例3では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.12%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は+0.58%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.46%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0094】
実施例4では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.12%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は+0.58%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.46%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。実施例1から実施例4で得られた結果を表1に示す。
【0095】
実施例5では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.22%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は+0.69%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.47%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0096】
実施例6では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.22%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は+0.69%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.47%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0097】
実施例7では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.12%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は−0.21%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.47%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0098】
実施例8では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.05%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は−0.15%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.20%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりがなかった。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%以下であることが認識された。
【0099】
比較例1では、無端ベルト10の周方向の寸法変化率は+0.12%であり、蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率は−0.72%であり、寸法変化率の差の絶対値は+0.84%であったが、蛇行防止用ビード12の浮き上がりが視認された。この場合は、寸法変化率の差の絶対値は0.5%より大きいことが認識された。実施例5から実施例8及び比較例1で得られた結果を表2に示す。
【0100】
また、前述してきた実施例1から8及び比較例1の蛇行防止用ビードについて、波打ち、磨耗性、ハンドリング性、ユニット回転安定性、耐久回数を評価するとともに、総合判定を行った。
【0101】
蛇行防止用ビード12の浮き具合は、目視によって、蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11から剥離することがない場合に非常に好ましい(◎)とし、蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11から剥離しているものの、その度合いが無端ベルト11の幅の30%未満に収まっている場合に好ましい(○)とする。また、蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11から剥離して、その度合いが無端ベルト11の幅の30%以上になっているものの、完全に剥離しているわけではない場合に一応好ましい(△)とし、蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11の回転軸方向に剥離している場合に不良(×)とする。
【0102】
蛇行防止用ビード12の波打ち具合は、目視によって判断し、試験後に蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11の内周面上で端部が波打ちしていない場合に非常に好ましい(◎)とし、良く見ると僅かに波打ちしている場合に好ましいとする。また、蛇行防止用ビード12が穏やかに波打ちしているが使用上問題がない場合に一応好ましい(△)とし、波うちの程度が大きくて無端ベルト本体11の内周面上における蛇行防止用ビード12の端部がうねり過ぎて使用ができない場合に不良(×)とする。
【0103】
摩耗性は、無端ベルト10を運転し続けることにより、弾性材料層16における嵌口溝15と当たる縁の部分がどの程度削れていくかという評価である。摩耗性は、やや削れているところがあるが目視により削れてないにほとんど等しい場合に非常に好ましい(◎)とし、削れているけれども使用するには問題ないと判断できる場合に好ましい(○)とする。また、削れが目立つがギリギリ使えると判断できる場合に一応好ましい(△)とし、削れが激しく使い物にならない場合に不良(×)とする。
【0104】
ハンドリング性は、無端ベルト本体11に蛇行防止用ビード12を接着するときに、剛性材料層17がないと蛇行防止用ビード12のコシがなく、柔軟すぎて蛇行しやすい状態になって扱いにくくなる。その蛇行防止用ビード12の扱い難さの度合いの評価である。ハンドリング性は、蛇行防止用ビード12のコシがしっかりしていて扱い易い場合に非常に好ましい(◎)とし、コシがなく、柔軟で蛇行し易い状態であるが使用できる場合に好ましい(○)とする。また、ハンドリング性が悪くて使えないという場合に不良(×)とする。
【0105】
ユニット回転安定性は、測定ユニット23に無端ベルト10をセットして無端ベルト10の寸法変化で規格値のセンターから離れていくと、ローラ21,22にかかるトルクが弱くなったりかかり過ぎたりと適正の範囲ではなくなり、ローラ21,22乃至は無端ベルト10が回転しづらくなるという評価である。蛇行防止用ビード12のユニット回転安定性は、無端ベルト10の寸法変化がほとんどなく最適なトルクがかかる場合に非常に好ましい(◎)とし、無端ベルト10が寸法変化を起こしているが回転には問題ない場合に好ましい(○)とする。また、蛇行防止用ビード12を接着した無端ベルト10を温度70℃、相対湿度90%の環境下に72時間放置して図5のように耐久試験によって回転させたときに、無端ベルト10が収縮することによりローラ21,22にかかるトルクが大きくなり過ぎたり、無端ベルト10が伸張することによりローラ21,22との摩擦力が小さくなりすぎたりすることによって、無端ベルト10が円滑に回転しない場合に好ましくない(△)とする。
【0106】
蛇行防止用ビード12の耐久回数は、図5に示すベルト耐久試験機において、無端ベルト10をローラ21,22に掛け、ローラ21の軸に付随しているモーターユニット51によりローラ21を駆動させることにより無端ベルト10を連続回転させて試験することにより計測する。無端ベルト10の状態の確認頻度は、無端ベルト10が10000回転するまでは1000回転毎に状態を確認し、無端ベルト10が10000回転した後は10000回転毎に状態を確認し、蛇行防止用ビード12に亀裂が入ったり切れたりして異常を確認したときは、異常が発生した回数の前の確認時の回転数をもって耐久回数とした。
【0107】
一般的な電子写真装置に用いられる無端ベルトでは、100000(以下、単に「100K」という。)回転の耐久性が必要とされている。そのため、無端ベルト10では、200K回転以上の耐久性を示した無端ベルト10を非常に好ましい(◎)とし、100K回転以上200K回転未満の耐久性を示した無端ベルト10を非常に好ましい(○)とした。また、100K回転未満の耐久性しか示さなかった無端ベルト10を不良(×)とした。
【0108】
総合判定では、非常に好ましいものを(◎)、好ましいものを(○)、一応好ましいものを(△)、不良を(×)とした。その結果を表1及び表2に示す。
【0109】
以上の結果より、無端ベルト本体11に蛇行防止用ビード12が接着された状態で湿熱エージングしたときに、湿熱エージング前後で生じる無端ベルト10の周方向の寸法変化率と、湿熱エージング前後で生じる蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率との差の絶対値が、0.5%以下の無端ベルト10であれば無端ベルト本体11に接着した蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11から浮き上がらないことが確認された。
【0110】
また、この時に、蛇行防止用ビード12は、湿熱エージング前後で生じる長尺方向の寸法変化率が−0.5乃至+0.5%であるときは、ローラ13、14に無端ベルト10をセットし、運転したときにローラ13,14にかかるトルクが高すぎず低すぎず良好に安定して運転できる電子写真装置を提供できることを確認した。
【0111】
また、弾性材料層16のみで蛇行防止用ビード12を作製した場合でも、湿熱エージング前後で生じる無端ベルト10の周方向の寸法変化率と湿熱エージング前後で生じる蛇行防止用ビード12の長尺方向の寸法変化率との差の絶対値が、0.5%以下の無端ベルト10であれば無端ベルト本体11に接着した蛇行防止用ビード12が無端ベルト本体11から浮き上がらないことが確認され、電子写真装置を運転することが出来た。
【0112】
但し、剛性材料層のない蛇行防止用ビード12を無端ベルト本体11に接着させるときに、弾性材料層16の柔軟性が強いために、蛇行防止用ビード12の接着時の形状保持性が悪く、無端ベルト本体11に接着させることが容易でなかった。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】この発明の実施の形態に係る無端ベルトを示す構成図である。
【図2】同実施の形態に係る無端ベルトをローラに巻架した状態を示す構成図である。
【図3】同実施の形態に係る無端ベルトと蛇行防止用ビードとの接着状態を示す断面図である。
【図4】同実施の形態に係る無端ベルトの周長測定装置を示す概略図である。
【図5】同実施の形態に係る無端ベルトの耐久試験機を示す概略図である。
【図6】従来の無端ベルトを示す構成図である。
【符号の説明】
【0114】
10 無端ベルト
11 無端ベルト本体
12 蛇行防止用ビード
16 エラストマ材料層
17 フィルム材料層
18 アクリル系両面感圧接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する無端ベルト本体の内周面の一側部又は両端部に沿った横断面が一様である略線状の蛇行防止用ビードが少なくとも1本以上接着された電子写真用無端ベルトであって、
前記蛇行防止用ビードは、弾性材料層と剛性材料層との間が接着された2層から構成され、前記無端ベルト本体の内周面に前記蛇行防止用ビードの前記剛性材料層が接着されていることを特徴とする電子写真用無端ベルト。
【請求項2】
前記弾性材料層はポリウレタンで形成され、前記剛性材料層はポリエチレンテレフタレートで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用無端ベルト。
【請求項3】
前記無端ベルト本体と前記蛇行防止用ビードとが接着された状態で温度70℃、相対湿度90%の環境下で72時間湿熱エージングしたときに、該湿熱エージング前後で生じる前記無端ベルトの周方向の寸法変化率と、前記湿熱エージング前後で生じる前記蛇行防止用ビードの長尺方向の寸法変化率との差の絶対値が0.5%以下であることを特徴とする電子写真用無端ベルト。
【請求項4】
前記蛇行防止用ビードは、前記湿熱エージング前後で生じる長尺方向の寸法変化率が−0.5%乃至+0.5%であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真用無端ベルト。
【請求項5】
蛇行防止用ビードは、弾性材料層と剛性材料層との間が接着された2層から構成され、前記弾性材料層が前記剛性材料層にラミネート接着され、前記ラミネート処理時に、前記剛性材料層の温度が80℃における前記剛性材料層の縦延伸方向の引張応力を1.0乃至8.5N/mmとしたことを特徴とする請求項3又は4に記載の電子写真用無端ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−300985(P2006−300985A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117963(P2005−117963)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】