説明

電子写真装置

【課題】常温常湿下のみならず低温低湿下においても、ゴーストや黒ポチの画像欠陥の少ない画像を維持しつつ、細線再現性の高い電子写真装置を提供すること。
【解決手段】発振波長λのレーザー光源を用いた露光手段、帯電手段、現像手段、転写手段、および電子写真感光体を有する電子写真装置において、該電子写真感光体は、支持体上に導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、をこの順に設けてなり;該導電層の十点平均粗さRzjisが0.8μm以下であり;該中間層はアゾ顔料を含有し、該アゾ顔料の波長λにおけるモル吸光係数をε、該アゾ顔料の該中間層におけるモル濃度をγ、該中間層の膜厚をξとするときε・γ・ξ≧1.4を満たし;該中間層表面形状の算術平均粗さRaが0.06μm以上であり;スキューネスRskが−0.5以上+1.0以下であることを特徴とする電子写真装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコピー機、静電プリンタ、ファクシミリ装置、レーザープリンタ、静電記録等の電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる像保持部材として、積層型の有機電子写真感光体がある。積層型の感光体においては、像露光光源としてレーザー光が使用された場合、感光体内部における露光光の多重反射によって潜像に干渉縞が発生するという問題が生じる。この問題を解決するために、反射面となる感光体の基体を粗面化するという手法が多く用いられてきた。
【0003】
一方、特許文献1には、干渉縞を防止する技術として、支持体と感光層の間に中間層を設け、この中間層に色素を含有させ露光光を吸収させるという考え方が示されている。またこれより以前に、特許文献2には中間層に顔料を分散させ、露光光を吸収させるという考え方が示されている。
【0004】
また、特許文献3には、干渉縞防止とは別の観点から、電気的な繰り返し特性の改善のために中間層へ顔料を分散させるという考え方が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−199977号公報
【特許文献2】特開平2−82263号公報
【特許文献3】特開2007−163578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子写真装置のさらなる高画質化に対応するために、露光ビームスポットの小径化が進んでいる。このため、干渉縞を防止するために施す基体の粗面化は、細線再現性に影響を及ぼすようになった。
よって、細線再現性の観点からは、干渉縞を防止する手段として、支持体と感光層の間に中間層を設け、この中間層に色素を含有させ露光光を吸収させる方が、基体の粗面化よりも好ましい。
【0007】
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、基体が粗面化されていない状態で、中間層に色素を添加しても干渉縞は消せないことが明らかになった。これは中間層と感光層の界面における反射率が、色素の添加濃度を高めるほど寧ろ上昇してしまい、新たな反射面となってしまうためである。
【0008】
一方で、近年の高画質化およびカラー化に対しては、あらゆる環境下においてゴースト現象による画質劣化の改善が望まれており、特に厳しい条件である低温低湿下、および、耐久による画質劣化に対して、さらなる改善が望まれている。ところが、中間層の膜厚は、ゴースト現象発現とトレードオフの関係にある。
【0009】
従って、中間層と感光層界面の反射率の上昇を抑えるべく、色素の添加濃度を低くしたまま吸光度を高めようとして中間層の膜厚を大きくとろうとすると、ゴースト現象による画質劣化が発生してしまうという課題があった。また、中間層の膜厚を大きくとろうとすると、低湿環境下での電位変動が悪化するという課題もあった。
【0010】
これとは逆に、中間層の膜厚を小さくとろうとすると、基体の欠陥起因で発生する黒ポチや、基体からのホール注入が起因で発生するカブリが抑えられないという課題もあった。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、常温常湿下だけでなく、低温低湿下であっても、ゴーストや黒ポチの画像欠陥の少ない画像を維持しつつ、細線再現性の高い電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った。
【0013】
まず、対ポチやカブリの観点から、支持体上に導電層を設けることが有効であることを再確認した上で、該導電層の十点平均粗さRzjisが0.8μm以下であるとき、細線再現性が良好となることを明らかにした。
【0014】
次に、この状態で、干渉縞を消すために、特許文献1や2に記載の方法を改善する方向で検討を進めたところ、該導電層のRzjisが0.8μm以下であっても、中間層の吸光度が十分大きく、かつ中間層の算術平均粗さRaを0.06μm以上としたときに、干渉が消せる場合があることを見出した。
【0015】
更に、鋭意検討を行ったところ、中間層の粗面化をブラスト加工のような追加工法によらず、アゾ顔料のサブミクロン分散によって行い、中間層表面形状のスキューネスRskを−0.5以上+1.0以下とした場合、上記の条件において干渉縞が消せうることを見出した。
【0016】
従来、顔料を感光体内に分散して用いようとする場合、特許文献3に記載されているように、なるべく粒径を小さくして用いようと工夫がなされてきた。本発明の核心は、従来からは考えられないほど粒径の大きな顔料を均一安定分散せしめたことで、寧ろ特性が向上することを見出したことにある。
【0017】
本発明は、これら知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであって、次の発明を提供する。
【0018】
本発明は、発振波長λのレーザー光源を用いた露光手段、帯電手段、現像手段、転写手段、および電子写真感光体を有する電子写真装置において;
該電子写真感光体は、支持体上に導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、をこの順に設けてなり;
該導電層の十点平均粗さRzjisが0.8μm以下であり;
該中間層はアゾ顔料を含有し、該アゾ顔料の波長λにおけるモル吸光係数をε、該アゾ顔料の該中間層におけるモル濃度をγ、該中間層の膜厚をξとするとき
ε・γ・ξ≧1.4
を満たし;
該中間層表面形状の算術平均粗さRaが0.06μm以上であり;
スキューネスRskが−0.5以上+1.0以下であることを特徴とする電子写真装置に関する。
【0019】
本発明は、該アゾ顔料が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする電子写真装置に関する。
一般式(1)
Ck−(N=N−Cp)
(式(1) 中、Ckは直接あるいは結合基を介して結合してもよい、置換または非置換の芳香族炭化水素基あるいは複素環基を表わし、Cpはフェノ−ル性水酸基を有するカプラ−残基を表わし、Cpの少なくとも一つは下記一般式(2)で表わされるカプラ−残基である。nは1〜3の整数を表わす。ただし、−N=N−Cpが同一ベンゼン環に複数個結合することはない。)
一般式(2)
【化1】

(式(2)中、Yは式中のベンゼン環と縮合して置換基を有してもよい芳香族炭化水素環または置換基を有してもよい複素環を示し、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよい複素環基を示し、R及びRは結合して式中の窒素原子とともに環状アミノ基を形成してもよく、pは0または1を示す。)
【0020】
本発明は、該アゾ顔料が下記一般式(3)もしくは下記一般式(4)で示されることを特徴とする上記の電子写真装置に関する。
一般式(3)
【化2】

一般式(4)
【化3】

(式(3)及び(4) 中、Ck2及びCkは直接あるいは結合基を介して結合してもよい、置換または非置換の芳香族炭化水素基あるいは複素環基を表わし、R及びR、R及びR及びRは同一でも異なってもよく、R、R、R、R及びRは置換基を有してもよいアリール基を示し、RとR、RとRとRは同一でも異なってもよい。Y、Y、Y、Y及びYは式中のベンゼン環と縮合して置換基を有してもよい芳香族炭化水素環または置換基を有してもよい複素環を示し、qは1または2を示す。)
【0021】
本発明は、該アゾ顔料が下記一般式(5)の構造を有することを特徴とする上記の電子写真装置に関する。
【0022】
一般式(5)
【化4】

(式(5)中、R及びRは置換基を有してもよいアリール基を示し、RとRは同一でも異なってもよい。Xはハロゲン原子を示す。)
【0023】
本発明は、該アゾ顔料が下記一般式(6)の構造を有することを特徴とする上記の電子写真装置に関する。
一般式(6)
【化5】

(式(6)中、R10、R11及びR12は置換基を有してもよいアリール基を示し、R10とR11とR12は同一でも異なってもよい。)
【0024】
本発明は、電子写真感光体の中間層が、塗工液中の平均分散粒径として0.4μm〜1.0μmの粒径を有するアゾ顔料を使用して製造されることを特徴とする上記の電子写真装置に関する。
【0025】
本発明は、電子写真感光体の中間層が、前記アゾ顔料を分散させる際、ゲル化させた樹脂を用いて分散を開始させ、かつ、分散時の温度は、ゲル消失温度の95%〜100%の間とすることにより製造されることを特徴とする上記の電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、本発明の目的は、上記課題を解決し、常温常湿下だけでなく、低温低湿下であっても、ゴーストや黒ポチの画像欠陥の少ない画像を維持しつつ、細線再現性の高い電子写真装置を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】評価用の画像パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の電子写真装置に用いる感光体では、支持体上に導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層がこの順に形成される。
【0029】
支持体としては、導電性を有するものであればよく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタンのような金属およびこれらの合金、また、プラスチック、セラミック、ガラスのような物質に導電性処理をしたものが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムまたは3000(Al−Mn)系、5000(Al−Mg)系あるいは6000(Al−Mg−Si)系のアルミニウム合金が好ましい。
【0030】
導電層に用いる導電性材料としては、各種の金属、金属酸化物および導電性ポリマーがある。その中でも、粉体抵抗率が通常10乃至10Ω・cmの範囲にある酸化スズ(以下「SnO」ともいう。)は、抵抗特性に優れており好ましい。また、SnOの導電性材料の製造時に、酸化アンチモンなどのスズとは異なる価数の金属の化合物や非金属元素などを混合して(ドープして)、粉体抵抗率を1/1000乃至1/100000に小さくした導電性材料も使用可能である。また、構成元素を増やさずにノンドープでSnOの抵抗をアンチモンドープと同程度に小さくした酸素欠損型SnOの導電性材料は好適に使用できる。さらには酸素欠損型SnO被覆にて被覆されたTiO粒子はより好適に使用される。
【0031】
導電層の結着材料としては、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステルのような樹脂(結着樹脂)が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。また、各種樹脂の中でも、他層へのマイグレーション(溶け込み)の抑制、支持体への密着性、導電性材料の分散性・分散安定性、成膜後の耐溶剤性などの観点から、導電層の結着樹脂は硬化性樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂がより好ましい。具体的には、熱硬化性のフェノール樹脂やポリウレタンが好ましい。導電層の結着樹脂として硬化性樹脂を用いる場合、導電層用塗布液に含有させる結着材料は該硬化性樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとなる。
【0032】
導電性粒子として酸素欠損型SnO被覆にて被覆されたTiO粒子を用いる場合、導電層用塗布液における酸素欠損型SnO被覆TiO粒子(P)と結着材料(B)との質量比(P:B)は、2.3:1.0乃至3.3:1.0の範囲にあることが好ましい。酸素欠損型SnO被覆TiO粒子が少なすぎると、導電層の体積抵抗率を調節することが難しくなる。酸素欠損型SnO被覆TiO粒子が多すぎると、導電層における酸素欠損型SnO被覆TiO粒子の結着が難しくなり、クラックが発生しやすくなる。
【0033】
また、導電層の表面を粗面化するための表面粗し付与材を添加することも可能である。
表面粗し付与材としては、平均粒径が1μm以上3μm以下の樹脂粒子が好ましい。例えば、硬化性ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂などの硬化性樹脂の粒子が挙げられる。ただし、導電層中の表面粗し付与材の含有量が多いほど、導電層の十点平均粗さRzjis(JIS B 0601−2001)が上昇する傾向にある。導電層の十点平均粗さRzjis(JIS B 0601−2001)を0.8μm以下とするためには、導電層中の表面粗し付与材の含有量は、導電層中の結着樹脂に対して10質量%以下になるように調節することが好ましい。
【0034】
また、導電層の十点平均粗さRzjisを0.8μm以下とするためにレベリング剤を添加してもよい
【0035】
本発明にかかる感光体における中間層はアゾ顔料を含有する。
本願にて使用されうるアゾ顔料の骨格構造として、一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)を示す。
一般式(1)
Ck−(N=N−Cp)
ここで、式(1)中、Ckは直接あるいは結合基を介して結合してもよい、置換または非置換の芳香族炭化水素基あるいは複素環基を表わし、Cpはフェノ−ル性水酸基を有するカプラ−残基を表わし、Cpの少なくとも一つは下記一般式(2)で表わされるカプラ−残基である。nは1〜3の整数を表わす。ただし、−N=N−Cpが同一ベンゼン環に複数個結合することはない。
一般式(2)
【化6】

式(2)中、Yは式中のベンゼン環と縮合して置換基を有してもよい芳香族炭化水素環または置換基を有してもよい複素環を示し、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよい複素環基を示し、R及びRは結合して式中の窒素原子とともに環状アミノ基を形成してもよく、pは0または1を示す。
一般式(3)
【化7】

一般式(4)
【化8】

一般式(3)及び(4)中、Ck2及びCkは直接あるいは結合基を介して結合してもよい、置換または非置換の芳香族炭化水素基あるいは複素環基を表わし、R及びR、R及びR及びRは同一でも異なってもよく、R、R、R、R及びRは置換基を有してもよいアリール基を示し、RとR、RとRとRは同一でも異なってもよい。Y、Y、Y、Y及びYは式中のベンゼン環と縮合して置換基を有してもよい芳香族炭化水素環または置換基を有してもよい複素環を示し、qは1または2を示す。
【0036】
本発明にかかる感光体の中間層は、像露光光源の波長λにおけるモル吸光係数をε、該アゾ顔料の該中間層におけるモル濃度をγ、該中間層の膜厚をξとするとき
ε・γ・ξ≧1.4
を満たす。このため、像露光光源の波長λによって、好適に使用される化合物が適宜選択される。
【0037】
例えば、現在、LBP用の像露光光源として広く採用されている、発振波長λが780nm〜810nmの半導体レーザーを像露光光源(レーザー光源)とした場合には、一般式(5)で示される化合物が好適に使用される。
一般式(5)
【化9】

(式(5)中、R及びRは置換基を有してもよいアリール基を示し、RとRは同一でも異なってもよい。Xはハロゲン原子を示す。)
【0038】
また、複写機用の像露光光源として採用されている、発振波長λが650nm〜690nmの半導体レーザーを像露光光源とした場合には、一般式(6)で示される化合物が好適に使用される。
一般式(6)
【化10】

(式(6)中、R10、R11及びR12は置換基を有してもよいアリール基を示し、R10とR11とR12は同一でも異なってもよい。)
【0039】
一般式(3)および(4)で表される化合物の例の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は下記具体例に限定されるものではないし、逆に、前述したように、本発明においては、像露光光源の波長λによって、好適に使用される化合物が適宜選択あるいは排除されうる。
【0040】
例示化合物(A−1)
【化11】

【0041】
例示化合物(A−2)
【化12】

【0042】
例示化合物(A−3)
【化13】

【0043】
例示化合物(A−4)
【化14】

【0044】
例示化合物(A−5)
【化15】

【0045】
例示化合物(A−6)
【化16】

【0046】
例示化合物(A−7)
【化17】

【0047】
例示化合物(A−8)
【化18】

【0048】
例示化合物(A−9)
【化19】

【0049】
例示化合物(A−10)
【化20】

【0050】
例示化合物(A−11)
【化21】

【0051】
例示化合物(A−12)
【化22】

【0052】
例示化合物(A−13)
【化23】

【0053】
例示化合物(A−14)
【化24】

【0054】
例示化合物(A−15)
【化25】

【0055】
例示化合物(B−1)
【化26】

【0056】
例示化合物(B−2)
【化27】

【0057】
例示化合物(C−1)
【化28】

【0058】
例示化合物(C−2)
【化29】

【0059】
例示化合物(C−3)
【化30】

【0060】
例示化合物(C−4)
【化31】

【0061】
本発明において、モル吸光係数とは、中間層が形成された状態における、顔料1molあたりの吸収能力と定義し、単位は[l/mol・cm]である。本発明におけるモル吸光係数は、透明基体上に形成した中間層の吸光度、中間層のモル濃度、中間層の膜厚から求めることが出来る。本発明において中間層の吸光度測定は、紫外可視分光光度計(日立U−3300)を用いた。
【0062】
本発明において、モル吸光係数は3.6×10より大きいことが好ましい。これは、吸光係数が大きいほど、中間層膜厚が薄く設計でき、ゴーストの抑制効果が得られるということと、P/B比は小さい方が塗工液の安定性が高いという2点からの要請による。
【0063】
中間層の結着材料としては、以下のものが挙げられる:ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、にかわ及びゼラチン。中でも、分散するアゾ顔料のアミド結合に水素結合によって相互作用できる点で、ポリアミド樹脂が好ましく、とくにはN−メトキシメチル化6ナイロン樹脂が好ましい。
【0064】
本発明にかかる感光体の中間層は、あらかじめアゾ顔料、結着樹脂および溶剤を含有させた中間層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。本発明においてはアゾ顔料の分散安定性を高めるために、まず溶剤と樹脂とを用いてゲル化した樹脂を調製し、次いで、該ゲル化した樹脂に有機顔料を分散させる手法が好適に利用できる。あらかじめゲル化させておいた樹脂と有機顔料とが共存する状態で分散をはじめることによって、ゲル化樹脂表面に有機顔料が吸着できるようになるため、分散工程中に顔料同士が再凝集するのを防ぎ、短時間で効率よく分散させることが可能となる。
【0065】
さらに溶剤に該ゲル化した樹脂と有機顔料を分散させる工程において、Trをゲル消失温度(K)とするとき、分散液温度T (K)が、Tr未満であり、かつ、Tr×0.95 以上の温度に到達させる手法がより好適に使用される。すなわち、アゾ顔料の分散時の温度を、ゲル消失温度の95%〜100%の間とすることが好ましい。分散液温度をゲル消失温度付近まで加温することによって、ゲル化樹脂に柔軟性を付与できるようになるため、微細に分散された有機顔料をゲル中へ取り込みやすくし、結果、有機顔料の凝集が抑えられて分散状態が安定する。
【0066】
本発明にて好適に使用される「ゲル化させた樹脂」とは、ASTM D4359−90規格に従って固体−液体判定試験を行い、固体状態であると判断できる樹脂である。
【0067】
ゲル化させた樹脂は、例えば次のような方法で調製できる。樹脂と適当な溶剤を加えた混合物を加熱攪拌して、樹脂を溶剤中に完全に溶解させて樹脂溶液を作る。その後、この樹脂溶液を放冷静置もしくは冷却静置させることで、ゲル化した樹脂が得られる。
【0068】
ゲル化させる樹脂の種類は、既知の材料を用いることができ、特に限定されない。たとえばアクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂、アガロース樹脂、セルロース樹脂のような材料を使用できる。中でも、分散対象であるアゾ顔料に対して、アミド結合に水素結合によって相互作用できる点で、ポリアミド樹脂が好ましく、とくにはN−メトキシメチル化6ナイロン樹脂が好ましい。
【0069】
樹脂をゲル化させる際に使用する溶剤は、樹脂溶液を調製する事ができれば特に限定されず、たとえば、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、メチラール、テトラヒドロフラン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドを用いることができる。ゲル化溶剤は1種類又は2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0070】
分散液の分散方法としては、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、ロールミルのような既知の分散装置を使用してよく、また、分散媒体を用いて分散する方法を用いてもよく、特に限定されない。
【0071】
分散に使用する溶剤は、特に限定されず、たとえば、トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジオキサン、メチラール、テトラヒドロフラン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドを用いることができる。分散溶剤は1種類又は2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
分散液の固形分は分散液の安定性、塗工性を考慮して決定され特に限定されない。
【0072】
ゲル消失温度は、分散工程を始める前に、分散工程で分散させる混合物とまったく同一の混合物を用いて事前に確認する。具体的な手順は、まず、混合物中のゲル化した樹脂が溶解消失しない液温度にて分散工程を開始する。その後、液温度を0.5℃/1minで昇温させながら、ゲル化した樹脂が溶解消失することを目視で確認する。その際の温度をゲル消失温度とする。
【0073】
中間層用塗布液に含有されるアゾ顔料の平均粒径は塗工液中の平均分散粒径として0.4μm〜1.0μmであることが好ましい。アゾ顔料の平均粒径が大きすぎると電子写真感光体の外観上にポチが発生しやすく、また、画像欠陥が生じる場合がある。一方、アゾ顔料の平均粒径が小さすぎると中間層の算術平均粗さRa(JIS B 0601−2001)を0.06μm以上としにくくなる。
【0074】
中間層用塗布液中のアゾ顔料の平均粒径は、メジアン径であり、遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA−700(堀場製作所製)を用いて測定した。なお、遠心沈降式粒度分布測定時に必要なパラメータであるサンプル密度については、中間層用塗布液中に含有させるアゾ顔料の比重(g/cm)をピクノメーター法にて求めた。
【0075】
本発明にかかる感光体の中間層の膜厚は好ましくは3μm以下である。3μmを超えると、耐久電位変動が悪化し好ましくない。ゴーストによる画像劣化を防止するという観点から0.8μm未満であることがより好ましい。一方、カブリを防止するという観点からは0.4μmより厚いことが好ましい。
【0076】
本発明にかかる感光体の中間層の算術平均粗さRa(JIS B 0601−2001)は、0.06μm以上であり、スキューネスRsk(JIS B 0601−2001)が−0.5以上+1.0以下である。上記中間層の表面状態が満たされないと、ε・γ・ξ≧1.4が達成されたとしても、必ずしも干渉縞が消しきれない。RaおよびRskは株式会社小坂研究所製のサーフコーダSE3500を用いて測定した。
【0077】
本発明にかかる電子写真感光体の電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾのようなアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンのようなフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴのようなインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドのようなペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノンのような多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩、チアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコンのような無機物質や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、シアニン染料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素や、硫化カドミウムや、酸化亜鉛が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0078】
上記の各種電荷発生物質の中でも、高感度であり、本発明がより有効に作用するという点で、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。また電荷輸送層を厚くして感度を高くしようとすると、ゴーストが発生しやすくなるという観点で、本発明が最大限に活用されるのは、フタロシアニン顔料を用いた場合である。フタロシアニン顔料とその他の電荷発生物質とを併用する場合は、フタロシアニン顔料が電荷発生物質全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0079】
フタロシアニン顔料の中でも、金属フタロシアニン顔料が好ましく、特には、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンがより好ましく、その中でも、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが特に好ましい。
【0080】
オキシチタニウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°および27.1°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.5°、9.7°、11.7°、15.0°、23.5°、24.1°および27.3°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニン結晶が好ましい。
【0081】
クロロガリウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°、16.6°、25.5°および28.2°に強いピークを有する結晶形のクロロガリウムフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の6.8°、17.3°、23.6°および26.9°に強いピークを有する結晶形のクロロガリウムフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の8.7〜9.2°、17.6°、24.0°、27.4°および28.8°に強いピークを有する結晶形のクロロガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。
【0082】
ジクロロスズフタロシアニンとしては、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の8.3°、12.2°、13.7°、15.9°、18.9°および28.2°に強いピークを有する結晶形のジクロロスズフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の8.5、11.2°、14.5°および27.2°に強いピークを有する結晶形のジクロロスズフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の8.7°、9.9°、10.9°、13.1°、15.2°、16.3°、17.4°、21.9°および25.5°に強いピークを有する結晶形のジクロロスズフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.2°、12.2°、13.4°、14.6°、17.0°および25.3°に強いピークを有する結晶形のジクロロスズフタロシアニン結晶が好ましい。
【0083】
ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.3°、24.9°および28.1°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶や、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。
【0084】
本発明において、フタロシアニン結晶の結晶形のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角は、以下の条件で測定した。
測定装置:(株)マック・サイエンス製全自動X線回折装置(商品名:MXP18)
X線管球:Cu、管電圧:50kV、管電流:300mA、
スキャン方法:2θ/θスキャン、スキャン速度:2deg./min、サンプリング間隔:0.020deg.、
スタート角度(2θ):5deg.、ストップ角度(2θ):40deg.、
ダイバージェンススリット:0.5deg.、スキャッタリングスリット:0.5deg.、レシービングスリット:0.3deg.、
湾曲モノクロメーター使用。
【0085】
電荷発生物質の粒径は0.5μm以下であることが好ましく、特には0.3μm以下であることがより好ましく、さらには0.01〜0.2μmであることがより一層好ましい。
【0086】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、セルロース樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルメタクリレート樹脂、ポリビニルアクリレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独で、または、2種以上の混合物もしくは共重合体として用いることができる。
【0087】
このような電荷発生層は、あらかじめ電荷発生物質、結着樹脂および溶剤を含有させた電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。電荷発生物質、結着樹脂および溶剤を含有する溶液は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して得られる。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:0.3〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
【0088】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質や電子輸送物質の溶解性や分散安定性の観点から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
【0089】
電荷発生層の膜厚は0.05〜2.00μmであることが好ましく、電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を用いる場合、ゴーストによる画像劣化を防止するという観点からは0.14μm以下であることがより好ましい。
【0090】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
【0091】
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物が挙げられる。これら正孔輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、特には、ポリアリレート樹脂がより好ましい。
【0092】
ポリアリレート樹脂の中でも、下記式(7)で示される繰り返し構造単位を有するポリアリレート樹脂が好ましい。
式(7)
【化32】

(式(7)中、R31〜R34は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜3までのアルキル基、フェニル基、炭素数1〜3までのアルコシキ基を示し、少なくとも1つの部位はアルキル基を有する。Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、
【化33】

を示す。R35、R36は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、およびR35とR36が結合することによって形成させるアルキリデン基、フルオレニリデン基を示す。Yは2価の有機基を示す)
【0093】
結着樹脂の重量平均分子量は50000〜200000であることが好ましく、特には100000〜180000であることが好ましい。
【0094】
本発明において、重量平均分子量は、東ソー(株)製のゲルパーミエーションクロマトグラフィーHLC−8120を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算で計算して求めた。展開溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)を用い、測定対象試料は0.1質量%溶液とした。カラムとしては排除限界分子量(ポリスチレン換算)4×10のカラム(商品名:TSKgel SuperHM−N、東ソー(株)製)を用い、検出器としてはRIを用いた。カラム温度は40℃とし、インジェクション量は20μlとし、流速は1.0ml/minとした。
【0095】
上記の樹脂は単独で、または、2種以上の混合物もしくは共重合体として用いることができる。
【0096】
電荷輸送層は、正孔輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られる正孔輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。正孔輸送物質の割合は、正孔輸送層全体の質量に対して30重量%〜70重量%の範囲が好ましい。
【0097】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステル、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素のようなハロゲン原子で置換された炭化水素が用いられる。
【0098】
電荷輸送層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることがより好ましい。
【0099】
なお、電荷輸送層上には、該電荷輸送層を保護することを目的とした保護層を設けてもよい。保護層は、結着樹脂を溶剤に溶解して得られる保護層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、結着樹脂のモノマー・オリゴマーを溶剤に溶解して得られる保護層用塗布液を塗布し、これを硬化および/または乾燥させることによって保護層を形成してもよい。硬化には、光、熱または放射線(電子線など)を用いることができる。
【0100】
保護層の結着樹脂としては、上記の各種樹脂を用いることができる。
【0101】
また、保護層には、抵抗制御の目的で、導電性酸化スズや導電性酸化チタンのような導電性粒子を分散してもよい。
【0102】
保護層の膜厚は0.2〜10μmであることが好ましく、特には1〜5μmであることが好ましい。
【0103】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法のような塗布方法を用いることができる。
【0104】
また、電子写真感光体の表面層には、クリーニング性や耐摩耗性を向上させる目的で、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系グラフトポリマー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系ブロックポリマー、シリコーン系ブロックポリマー、シリコーン系オイルのような潤滑剤を含有させてもよいし、耐候性を向上させる目的で、ヒンダードフェノールやヒンダードアミンのような酸化防止剤を添加してもよいし、強度を補強するためにシリコンのような膜強度補強剤を添加してもよい。
【0105】
なお、保護層を設ける場合は保護層が電子写真感光体の表面層であり、保護層を設けない場合は正孔輸送層が電子写真感光体の表面層である。
【0106】
図1に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面は、接触帯電部材(帯電ローラーなど)を有する接触帯電手段3により、正または負の所定電位に均一に帯電され、次いで、レーザービーム走査露光による露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙など)Pに順次転写されていく。トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、本発明のように、帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0107】
上述の電子写真感光体1および接触帯電手段3を容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、接触帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【実施例】
【0108】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0109】
(中間層用塗工液の調製例)
N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:EF30−T、ナガセケムテックス)160部をエタノール(キシダ化学製、特級)840部に加えて攪拌し、混合液とした。次いでこの混合液を50℃で加熱して、ポリアミド樹脂を溶解させて樹脂液を得た。その後、23℃の環境下で24時間静置した。このようにして得られた混合物に対して、ASTM D4359−90に基づき液体―固体判定試験を行い、固体であることを確認し、固形分16.0%のポリアミド樹脂ゲルが得られていることを確認した。ゲル消失温度は317Kであった。
【0110】
上記ポリアミド樹脂ゲルを篩(篩目開き2.0mm)にてつぶしながら、濾すことで2mm以下の大きさに破砕した。次いで、800mlスケールバッチ式縦型サンドミル装置(K−800、金田理化工業株式会社製、ディスク径7cm、ディスク枚数5枚)を用い、破砕済みのポリアミド樹脂ゲルを125部、エタノール(キシダ化学製、特級)を77部、1mmΦのガラスビーズ(GB201M、ポッターズ・バロティーニ製)を500部投入した。次いで、1300rpmで30分間分散し、ポリアミド樹脂とエタノールの混合液を得た。
【0111】
次いで、例示化合物(A−1)で示される有機顔料(比重1.368g/ml)を16部加えて、更に400rpmで60分分散した。分散工程時の液温度は最高温度305K、最低温度302Kに制御した。その後、エタノール(キシダ化学製、特級)436部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(キシダ化学製、1級)316部を加えながらナイロンメッシュ(材質ナイロン66、目粗さ200メッシュ)を用いてガラスビーズを取り除き、ポリフロンフィルター(PF020、孔径2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過して中間層用塗布液を得た。
【0112】
(中間層の評価例)
この中間層用塗布液をPETフィルムを巻付けた支持体に浸漬塗布し、これを5分間90℃で乾燥させることによって、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。塗工速度を変更して、膜厚が0.7μmと0.8μmの中間層もPETフィルム上に塗工した。
このPETフイルムの780nmにおける吸光度はそれぞれ
膜厚0.6μmのとき、吸光度1.40
膜厚0.7μmのとき、吸光度1.63
膜厚0.8μmのとき、吸光度1.87
であった。
上記データから平均をとって、例示化合物(A−1)のεは4.73×10、[mol-1 L cm-1]と算出した。
【0113】
(電子写真感光体の作製例)
(電子写真感光体D−1の作製)
・支持体
温度23℃、湿度60%RHの環境下で熱間押し出しすることにより得られた、長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金のED管、昭和アルミニウム(株)製)を支持体とした。
【0114】
・導電層
以下の材料を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。
酸素欠損型SnO被覆TiO粒子(粉体抵抗率100Ω・cm、SnOの被覆率(質量比率)は40%) 55部
フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分60%) 36.5部。
1−メトキシ−2−プロパノール 35部。
上記分散液に、以下の材料を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調製した。
シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2μm)0.8部。
シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)0.001部。
この導電層用塗布液を、支持体上に浸漬コーティングし、温度140℃で30分間乾燥、熱硬化して、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が15μmの導電層を形成した。
導電層の表面の十点平均粗さRzjisを測定したところ、0.4μmであった。
本発明において、Rzjisの測定は、JIS−B0601(1994)に準じ、(株)小坂研究所製の表面粗さ計サーフコーダーSE3500を用い、送り速度0.1mm/s、カットオフλc0.8mm、測定長さ2.50mmの設定で行った。
【0115】
・中間層の形成と評価
前述した中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを5分間90℃で乾燥させることによって、膜厚が0.7μmの中間層を形成した。中間層および中間層に含有されるアゾ顔料の物性値を表1に示す。
【0116】
・電荷発生層
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.3°、24.9°および28.1°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)20部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業(株)製)10部、ならびに、シクロヘキサノン350部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散し、酢酸エチル1200部を加え(このときの電荷発生物質のCAPA−700(堀場製作所(株)製)で測定した分散粒径は0.15μm)電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.14μmの電荷発生層を形成した。
【0117】
・電荷輸送層
次に、下記式(8)で示される構造を有する化合物(正孔輸送物質)9部、
【化34】

下記式(9)で示される化合物(正孔輸送物質)1部、
【化35】

および、下記式(10)で示される繰り返し構造単位(ビスフェノールC型)を有するポリアリレート樹脂(テレフタル酸骨格とイソフタル酸骨格の質量比:テレフタル酸/イソフタル酸=50/50)5部
【化36】

を、モノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン10部の混合溶媒に溶解させ正孔輸送層用塗布液とした。
この正孔輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、これを1時間110℃で乾燥させることによって、膜厚が18μmの正孔輸送層を形成した。
このようにして、支持体、導電層、中間層、電荷発生層および正孔輸送層をこの順に有し、該正孔輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。感光体の物性を表1に示す。
【0118】
<感光体D−2〜D−5>
感光体D−1の作製時において、中間層に用いる顔料を表1に示すように変更した以外は感光体D−1と同様にて感光体D−2〜D−5を作製し、物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0119】
<感光体D−6〜D−15、D−19〜D−31>
感光体D−1の作製時において、中間層に用いる顔料、顔料の濃度比、および中間層膜厚を表1に示すように変更した以外は感光体D−1と同様にて感光体D−6〜D−15、D−19〜D−31を作製し、物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0120】
<感光体D−16>
感光体D−1の作製時において、中間層に用いる結着樹脂を、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:EF30−T、ナガセケムテックス)160部から、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:EF30−T、ナガセケムテックス)100部とナイロン6−66−610−12四元ナイロン共重合体樹脂(商品名:CM8000、東レ社製)50部に代えた以外は、感光体D−4と同様にて感光体D−16を作製し、物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0121】
<感光体D−17>
感光体D−4の作製時において、中間層塗工液を以下のように変更した以外は感光体D−4と同様にて感光体D−17を作製し、物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0122】
(中間層用塗工液の調製)
N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:EF30−T、ナガセケムテックス)5部をメタノール(キシダ化学製、特級)95部に加えて攪拌し、混合液とした。この混合液に、例示化合物(A−4)で示される有機顔料を4部加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、中間層用塗布液を調製した。
【0123】
<感光体D−18>
感光体D−4の作製時において、中間層塗工液を以下のように変更し、中間層膜厚を1.8μmとした以外は感光体D−4と同様にて感光体D−18を作製し、物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0124】
(中間層用塗工液の調製)
「N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:EF30−T、ナガセケムテックス)3部とナイロン6−66−610−12四元ナイロン共重合体樹脂(商品名:CM8000、東レ社製)2部をメタノール(キシダ化学製、特級)95部に加えて攪拌し、混合液とした。
この混合液に、例示化合物(A−4)で示される有機顔料を10部加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、中間層用塗布液を調製した。
【0125】
【表1】

【0126】
<感光体E−1、E−5、E−8〜E−10>
感光体D−1の作製時において、中間層に用いる顔料、顔料の濃度比、および中間層膜厚を表2に示すように変更した以外は感光体D−1と同様にて感光体E−1、E−5、E−8〜E−10を作製し、物性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0127】
<感光体E−2〜E−4>
感光体D−18の作製時において、中間層に用いる顔料、顔料の濃度比、および中間層膜厚を表2に示すように変更した以外は感光体D−1と同様にて感光体E−2〜E−4を作製し、物性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0128】
<感光体E−6>
感光体D−13の作製時において、顔料の分散方法を変更した以外は感光体D−1と同様にて感光体E−6を作製し、物性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0129】
<感光体E−7>
感光体D−13の作製時において、顔料の分散方法を変更し、中間層まで塗工した後、ブラスト加工を施した以外は感光体D−1と同様にて感光体E−7を作製し、物性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0130】
<感光体E−11〜E−13>
感光体D−4の作製時において、導電層を表2に示すように変更した以外は感光体D−1と同様にて感光体E−11〜E−13を作製し、物性評価を行った。その結果を表2に示す。
【0131】
【表2】

【0132】
上記、表1及び表2において、中間層塗工液中の顔料の液安定性は、以下の基準で評価した:
A:液安定性が良い
B:液安定性が普通
C:液安定性が悪い
【0133】
(実施例1〜34および比較例1〜16)
作製した電子写真感光体を、以下の評価装置に装着して画像出力を行った。
【0134】
・画像出力装置
画像出力には、ヒューレットパッカード社製レーザービームプリンター「カラーレーザージェット4600」の改造機(プロセススピード:100mm/sec、暗部電位:−700Vに設定)を用いた。このレーザービームプリンターの帯電手段は、帯電ローラーを備えた接触帯電手段であり、帯電ローラーには直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。露光光(画像露光光)としては発振波長780nmの半導体レーザーを用い、光量が可変となるようにした。
【0135】
・干渉縞評価
干渉縞の有無は、桂馬パターンのハーフトーン画像およびの感光体の反射スペクトルから判断した。反射スペクトル測定には大塚電子株式会社製の反射分光膜厚計FE−3000を用いた。
A:画像上干渉縞が全く確認されず、像露光波長域における反射スペクトル強度にも波長揺らぎが見られない
B:画像上干渉縞が全く確認されず、反射スペクトル強度には波長揺らぎが確認される。
C:画像上に干渉縞がわずかに観測されるが、実用上問題がない。
D:干渉縞が観測され、実用上好ましくない画像。
E:激しく干渉縞が発生し、実用的でない画像。
とした。評価結果は表2に示す。
【0136】
カブリ、ポチに関しては、ベタ白画像から評価した。評価基準は以下の通りである。
A:カブリ、ポチの見られない、優れた画像
B:わずかにカブリ、ポチが散見されるが、良好な画像。
C:カブリ、ポチが観測される
D:カブリ、ポチの発生が大きい
E:カブリ、ポチの発生が非常に激しく、実用上好ましくない画像。
【0137】
・画像評価用の印刷パターン
次に述べる画像評価を行う際には、前露光をOFFにした。
画像評価用の印刷パターンとして、図2に示すゴースト用パターンを用意した。図2中、201の部分(黒塗り長方形)はベタ黒、202の部分はベタ白、203の部分はベタ黒201に起因するゴーストが出現し得る部分、204はハーフトーン(1ドット桂馬パターン)の部分である。マゼンタ、シアン、イエロー、黒のそれぞれ単色で作製した。
【0138】
・画像評価方法
23℃/50%RHの環境下、画像濃度4%画像を3000枚出力直後、ゴースト用パターンを用い、前露光をOFFにして評価を行った。
まず、1枚目にベタ白画像を出力し、次に、上記のゴースト用パターンを連続5枚出力し、次に、ベタ黒画像を1枚出力した後、再度、上記のゴースト用パターンを連続5枚出力した。このように、ゴースト用パターンは計10枚である。
ゴーストの評価としては、X−Rite社製分光濃度計X−Rite504/508を用いた。ゴースト用パターンの画像中、ゴーストが出現し得る部分203の濃度からハーフトーンの部分204の濃度を差し引いた濃度を測定し、この測定を10点行い、10点の平均値を求めた(1枚あたりの平均値)。これを10枚分行い、それらの平均値を求めた(10枚の平均値)。さらに、これを4色(マゼンタ、シアン、イエロー、黒)すべてについて行い、それらの平均値を求めた(4色の平均値)。各色の測定結果は、分光濃度計X−Rite504/508のマゼンタ、シアン、イエロー、黒のそれぞれについて表示されるが、画像の色と同じ色の値を評価値として、ゴーストの評価を行った。得られた結果は、比較例1の感光体の値をリファレンスとした場合の相対評価でランク判定を行った。
A:評価値が非常に小さく、均一性に優れた画像
B:評価値が小さく、良好な画像。
C:実用的には問題の無い画質。
D:評価値が大きく、ゴーストが観測される。
E:評価値が非常に大きく、ゴーストがはっきり判る。
【0139】
細線再現性の評価としては、2ポイントサイズ、及び、3ポイントサイズのアルファベット(A〜Z)、及び、複雑な漢字(電、驚など)を1200dpiの解像度で配列したテストチャートを作成した。そのテストチャートをプリントアウトした画像によって感光体の解像度の評価を行った。具体的には、出力画像をスキャナー(キヤノン製CanoScan9900F)を使って1600dpiの解像度で読み取り、読み取った画像データとテストチャートの元データを比較した。テスト原稿の文字からのズレ部分(太り、細り)の面積を算出し、その数値によって感光体の解像度の評価を行った。得られた結果は、比較例1の感光体の値をリファレンスとした場合の相対評価でランク判定を行った。
A:細線再現性に優れ、鮮明な画像
B:細線再現性、画像の均一性が若干劣るものの、良好な画像。
C:細線再現性が劣るが、実用的には問題の無い画質。
D:細線再現性が悪い画像。
【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】
表3と表4の比較から明らかなように、該導電層の十点平均粗さRzjisが0.8μm以下であり;
該中間層はアゾ顔料を含有し、該アゾ顔料の波長λにおけるモル吸光係数をε、該アゾ顔料の該中間層におけるモル濃度をγ、該中間層の膜厚をξとするとき
ε・γ・ξ≧1.4
を満たし;
該中間層表面形状の算術平均粗さRaが0.06μm以上であり;
スキューネスRskが−0.5以上+1.0以下であることを特徴とする電子写真装置においては、干渉縞の発生を抑えつつ、ゴーストや黒ポチの画像欠陥の少ない画像を維持し、かつ細線再現性の高い電子写真装置を提供できていることが判る。
【符号の説明】
【0143】
1・・・電子写真感光体
2・・・軸
3・・・接触帯電手段
4・・・露光光(画像露光光)
5・・・現像手段
6・・・転写手段
7・・・クリーニング手段
8・・・定着手段
9・・・プロセスカートリッジ
10・・・案内手段
P・・・転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振波長λのレーザー光源を用いた露光手段、帯電手段、現像手段、転写手段、および電子写真感光体を有する電子写真装置において、
該電子写真感光体は、支持体上に導電層、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、をこの順に設けてなり;
該導電層の十点平均粗さRzjisが0.8μm以下であり;
該中間層はアゾ顔料を含有し、該アゾ顔料の波長λにおけるモル吸光係数をε、該アゾ顔料の該中間層におけるモル濃度をγ、該中間層の膜厚をξとするとき
ε・γ・ξ≧1.4
を満たし;
該中間層表面形状の算術平均粗さRaが0.06μm以上であり;および
スキューネスRskが−0.5以上+1.0以下であることを特徴とする電子写真装置。
【請求項2】
前記アゾ顔料が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする電子写真装置。
一般式(1)
Ck−(N=N−Cp)
(式(1)中、Ckは直接あるいは結合基を介して結合してもよい、置換または非置換の芳香族炭化水素基あるいは複素環基を表わし、Cpはフェノ−ル性水酸基を有するカプラ−残基を表わし、Cpの少なくとも一つは下記一般式(2)で表わされるカプラ−残基である。nは1〜3の整数を表わす。ただし、−N=N−Cpが同一ベンゼン環に複数個結合することはない。)
一般式(2)

(式(2)中、Yは式中のベンゼン環と縮合して置換基を有してもよい芳香族炭化水素環または置換基を有してもよい複素環を示し、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよい複素環基を示し、R及びRは結合して式中の窒素原子とともに環状アミノ基を形成してもよく、pは0または1を示す。)
【請求項3】
前記アゾ顔料が下記一般式(3)もしくは下記一般式(4)で示されることを特徴とする請求項1記載の電子写真装置。
一般式(3)

一般式(4)

(式(3)及び(4)中、Ck2及びCkは直接あるいは結合基を介して結合してもよい、置換または非置換の芳香族炭化水素基あるいは複素環基を表わし、R及びR、R及びR及びRは同一でも異なってもよく、R、R、R、R及びR7は置換基を有してもよいアリール基を示し、RとR、RとRとRは同一でも異なってもよい。Y、Y、Y、Y及びYは式中のベンゼン環と縮合して置換基を有してもよい芳香族炭化水素環または置換基を有してもよい複素環を示し、qは1または2を示す。)
【請求項4】
前記アゾ顔料が下記一般式(5)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置。
一般式(5)

(式(5)中、R及びRは置換基を有してもよいアリール基を示し、RとRは同一でも異なってもよい。Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項5】
前記アゾ顔料が下記一般式(6)の構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真装置。
一般式(6)

(式(6)中、R10、R11及びR12は置換基を有してもよいアリール基を示し、R10とR11とR12は同一でも異なってもよい。)
【請求項6】
電子写真感光体の中間層が、塗工液中の平均分散粒径として0.4μm〜1.0μmの粒径を有するアゾ顔料を使用して製造されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子写真装置。
【請求項7】
電子写真感光体の中間層が、前記アゾ顔料を分散させる際、ゲル化させた樹脂を用いて分散を開始させ、かつ、分散時の温度は、ゲル消失温度の95%〜100%の間とすることにより製造されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−248063(P2011−248063A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120602(P2010−120602)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】