説明

電子制御ユニット

【課題】電子制御ユニットのリセット後、電子制御ユニットが制御する機器のうち重要機能を早期に動作させるものである。
【解決手段】ECU10は、他のECUからのメッセージを受信する受信アプリケーションと重要機能の動作アプリケーションを記憶するサブ記憶部13aと、前記アプリケーションを含む動作アプリケーションを記憶するメイン記憶部13bと、メッセージを記憶するバッファ部13cと、メッセージを(1)重要機能に関するもの、(2)前記メッセージ以外で処理すべきもの、(3)制御処理対象外のものに解析・分類する処理部12とを備え、リセット後の起動時に、サブ記憶部のアプリケーションをメイン記憶部よりも優先的に起動させ、処理部が他のECUから受信したメッセージを解析・分類し、(1)はメッセージを処理して重要機能を動作させ、(2)はバッファ部に記憶し、(3)はメッセージを破棄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットに関し、電子制御ユニットのリセット後、電子制御ユニットが制御する機器の重要機能を早期に動作させるものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたライトやパワーウィンドウなどの電装品からなる機器は、電子制御ユニット(ECU)により制御されている。これらECUに接続した機器が電力消費量の大きい高負荷状態となったり、接続した配線にノイズが混入するなどの原因により、一時的にECUに電力を供給している電源の電圧が下がり、車両走行時にECUがリセット状態に陥る場合がある。ECUがリセット状態になると、該ECUと接続した機器は、該ECUで制御される動作が停止する。
前記リセット後にECUを再起動させると、まず、演算処理部等の初期設定、記憶部であるROMやRAMなどの初期化等の再起動処理を行った後、機器を動作させる信号をスイッチや他のECUから受信し、これらの動作指令信号に基づいて該機器を制御することで、該機器の再動作が開始する。
【0003】
一方、車両や機器の高性能化に伴い、ECUも高機能化、高性能化が進んでおり、ROMやRAMの容量が増加していると共にECUが制御すべき機器の数も増大している。
このため、リセット処理されたECUが再起動し、動作を停止した機器が再動作を開始するまでに時間がかかる問題がある。
特に、ECUがヘッドライトやテールライトなど安全系の機器と接続され、ライトの点滅等の重要機能を制御している場合、制御停止時間が所定時間を越えて長くなると、点灯していたライトが走行中に一時的に消灯する等の問題が生じる。
【0004】
前記問題に対して、特開2006−150999号公報(特許文献1)においては、ECUに接続された機器を重要機能とその他の機能に区分し、ECUのリセット処理後の再起動時に、重要機能の機器を制御する第1アプリケーションを、その他の機能の機器を制御する第2アプリケーションよりも優先的に起動させる方法が提案されている。
具体的には、第1アプリケーションはライト系アプリケーションであり、ライト系アプリケーションを優先的に起動させることで、リセット処理後のライトへの制御開始までの時間を短くしている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−150999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のライト系アプリケーションとは、単にヘッドライトのオンオフだけでなく、テールランプのオンオフ、オートモード、ロービーム、ハイビーム、ハイフラッシュ点灯などの点灯モードの切替、自動点灯消灯の切替、照度センサからの測定値の入力など種々の機能を含んでおり、さらに各機能がそれぞれ連携しているため、ライト系アプリケーションそのものが大規模複雑化している。
このため、特許文献1のようにライト系などの重要機能のアプリケーションを優先的に起動させたとしても起動に時間を要し、重要機能が再び制御されるまでの時間がそれほど短縮されないという問題がある。
【0007】
また、ECUは他のECUと通信線を介してメッセージの送受信を行っており、他のECUから受信したメッセージを用いて自ECUに接続された機器の制御を行うことが多い。このため、車両の走行中にECUがリセット処理を行った場合、他のECUは起動状態を継続していることから、リセット処理後にECUが機器の制御を開始するまでの間に、他のECUからメッセージが送信され、該メッセージに基づいて機器を制御する必要もあるが、特許文献1では該メッセージの処理については記載されていない。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、ECUのリセット後、重要機能に関する再起動の時間を短縮し、早期に機器の制御を開始できるようにすると共に、該ECUに接続された機器の制御を開始するまでの間に他のECUから送信されたメッセージを前記機器の制御に反映できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、車載LANに接続される電子制御ユニットであって、
前記車載LANを介して他の電子制御ユニットから受信するメッセージを、接続している制御対象機器の重要機能の動作に関するメッセージであるか否かを解析・分類する処理部を備え、
リセット後の起動時に、優先的に、前記処理部で前記他の電子制御ユニットから受信したメッセージの解析・分類を行い、前記制御対象機器の重要機能に関するメッセージがある場合に、該メッセージに基づいて前記制御対象機器の重要機能を制御する構成としていることを特徴とする車載用の電子制御ユニットを提供している。
【0010】
自動車の走行中に電子制御ユニット(ECU)がリセットした場合、該ECUの全動作のアプリケーションが再び起動して機器の制御を開始する前であっても、起動状態にある他のECUから該ECUにメッセージが送信されている。本発明のECUはリセット後に該メッセージを受信し、該メッセージの解析・分類を優先的に行っているので、受信した重要機能に関するメッセージを前記制御対象機器の重要機能の制御に早期に反映することができる。
【0011】
前記他の電子制御ユニットからのメッセージを受信する受信アプリケーションと、
前記受信アプリケーションおよび全動作アプリケーションを記憶するメイン記憶部と、
動作アプリケーションのうち、接続している制御対象機器の重要機能の動作アプリケーションを記憶するサブ記憶部と、
前記他の電子制御ユニットからのメッセージを記憶するバッファ部を備え、かつ、
前記処理部は、他の電子制御ユニットから受信したメッセージを、(1)前記制御対象機器の重要機能に関するメッセージ、(2)前記重要機能を除く前記制御対象機器に関するメッセージ、(3)前記制御対象機器以外のメッセージに解析・分類する機能を有し、
リセット後の起動時に、前記サブ記憶部のアプリケーションを前記メイン記憶部のアプリケーションより優先して起動させ、前記(1)のメッセージを用いて前記制御対象機器の重要機能を制御し、前記(2)のメッセージは前記バッファ部に保存させ、前記(3)のメッセージは破棄していることが好ましい。
【0012】
本発明のECUはリセット後にサブ記憶部の受信アプリケーションを優先的に起動しているので、受信アプリケーションの起動後であれば該ECUが機器の制御を開始する前であっても、他のECUからのメッセージを受信することができる。リセット後他のECUからのメッセージの受信が出来ない期間を短くすることができ、メッセージの受信の取りこぼしを少なくすることができる。
また、サブ記憶部に記憶した重要機能の動作アプリケーションも優先的に起動しているので、他のECUから受信したメッセージを解析・分類し、(1)重要機能に関するメッセージである場合には、該メッセージを用いて重要機能を早期に制御することができる。
【0013】
前記処理部は、前記メイン記憶部の初期化及び前記全ての動作アプリケーションの起動後に、前記バッファ部に記憶させた前記(2)のメッセージを用いて、前記重要機能を除く前記制御対象機器を制御することが好ましい。
バッファ部には、受信アプリケーションが起動してメッセージの受信が可能となった時点からECUが受信したメッセージであって、かつ、前記重要機能を除く前記制御対象機器に関するメッセージが記憶されており、メイン記憶部の重要機能を除いた制御対象機器の動作アプリケーションの起動後に、処理部はバッファ部から順次メッセージを読み出し、該メッセージを用いて重要機能を除く機器の制御を行うことができる。
【0014】
さらに、他のECUから受信したメッセージが(3)制御処理対象外のメッセージである場合には、処理部は該メッセージを破棄しているので、ECUは不要なメッセージをバッファ部に記憶することがない。
【0015】
具体的には、前記接続した制御対象機器はヘッドライトを含み、前記サブ記憶部に記憶させて優先的に起動させる前記重要機能はヘッドライトのオンオフ機能である場合に本発明のECUは好適に用いられる。
ECUはリセット後、短時間でヘッドライトのオンオフ制御を行うことができる。
【0016】
また、重要機能としてライトに関する様々な機能を全て含むのではなく、ヘッドライトのオンオフ機能だけに限定し、オンオフ機能だけを行う動作アプリケーションをサブ記憶部に記憶させている。
メイン記憶部にはサブ記憶部と同じ受信アプリケーション及び動作アプリケーションが含まれているが、受信アプリケーションまたは動作アプリケーションは、メイン記憶部に記憶された他の機能のアプリケーションと連携しており、メイン記憶部の受信アプリケーションまたは動作アプリケーションだけを独立して起動させることはできない。
そこで、サブ記憶部に受信アプリケーション及び重要機能の動作アプリケーションを別体として設けることで、アプリケーションが簡単となると共に受信アプリケーション及び重要機能の動作アプリケーションだけを独立して起動させることができ、受信アプリケーション及び重要機能の動作アプリケーションの起動時間を短縮できる。
【0017】
前記サブ記憶部は、ROMの第1領域に前記受信アプリケーションと前記重要機能の動作アプリケーションを備えると共に、RAMの第1領域に前記受信アプリケーションと前記重要機能の動作アプリケーションを実行するための作業領域を備え、
前記メイン記憶部は、ROMの第2領域に前記電子制御ユニットの全ての動作アプリケーションを備えると共に、RAMの第2領域に前記全ての動作アプリケーションを実行するための作業領域を備え、
前記メイン記憶部の初期化後に、前記サブ記憶部のRAMの第1領域の内容をRAMの第2領域に引き継ぐことが好ましい。
【0018】
RAMの作業領域は、ROMに記憶されたアプリケーションを処理部が動作させる際の作業領域となり、データや引数の保存場所として使用される。
ECUのリセット後、サブ記憶部のROMの第1領域に記憶された受信アプリケーションおよび重要機能の動作アプリケーションを、RAMの第1領域を作業領域として使用して動作させるので、サブ記憶部のRAMの第1領域には、メッセージの受信及び重要機能の動作に用いられたデータや引数が保存される。
【0019】
サブ記憶部のアプリケーションの起動後、メイン記憶部の作業領域を初期化した後にROMの第2領域に記憶された全てのアプリケーションを起動する。メイン記憶部のアプリケーションはサブ記憶部の受信アプリケーションや重要機能の動作アプリケーションを含んでおり、メイン記憶部のアプリケーションの起動後はサブ記憶部のアプリケーションおよび作業領域は使用されず、メイン記憶部のアプリケーション及び作業領域が使用される。
サブ記憶部の作業領域の内容をメイン記憶部の作業領域に書き込んでデータ等を引き継ぐことで、処理部は、制御対象機器をメイン記憶部のアプリケーションを用いて制御する際にも、サブ記憶部のアプリケーションを用いたときのデータ等を使用することができ、制御対象機器を動作させるアプリケーションがサブ記憶部からメイン記憶部のアプリケーションに変わっても、制御対象機器の制御を継続することができる。
【発明の効果】
【0020】
前述したように、本発明のECUによれば、自動車の走行中に電子制御ユニット(ECU)がリセットした場合、該ECUの全動作のアプリケーションが再び起動して機器の制御を開始する前であっても、起動状態にある他のECUから該ECUにメッセージが送信されている。本発明のECUはリセット後に該メッセージを受信し、該メッセージの解析・分類を優先的に行っているので、重要機能に関するメッセージを前記制御対象機器の重要機能の制御に早期に反映することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3は本発明の第1実施形態を示す。
本発明の電子制御ユニット(ECU)10は車載LAN21を介して他のECU10Bと接続しており、他のECU10との間でメッセージの送受信を行っている。また、ECU10は信号線22を介して制御対象機器であるヘッドライト23とワイパー24と接続しており、本実施形態では重要機能はヘッドライト23のオンオフ機能としている。
【0022】
本発明のECU10は、リセット後、該ECU10の重要機能であるヘッドライト23のオンオフ機能を動作させるための動作アプリケーションと、他のECU10からのメッセージの受信を行う受信アプリケーションを優先的に起動させ、他のECU10からヘッドライト23のオンオフ信号を含むメッセージを受信し、該メッセージに従ってヘッドライト23を制御している。その後、重要機能でない他の機能を含む全てのアプリケーションを起動している。
【0023】
図1に示すように、ECU10は処理部12、記憶部13、送受信部11からなり、記憶部13はサブ記憶部13a、メイン記憶部13b、バッファ部13cからなる。
具体的には、図2に示すように、記憶部13はROM30及びRAM40により構成しており、ROM30は第2領域であるROMメイン領域30Mと第1領域であるROMサブ領域30Sの2つの領域を備えていると共に、RAM40は第2領域であるRAMメイン領域40M、第1領域であるRAMサブ領域40S、バッファ部となるバッファ領域40Bを備えている。
すなわち、サブ記憶部13aは、ROMサブ領域30SとRAMサブ領域40Sから構成しており、メイン記憶部13bはROMメイン領域30MとRAMメイン領域40Mから構成している。バッファ部13cはRAM40のバッファ領域40Bから構成している。
【0024】
ROMメイン領域30Mには、該ECU10に接続されたヘッドライト23とワイパー24を動作させるためのアプリケーション及び該ECU10と他のECU10間でデータを送受信するための通信用のアプリケーション等、ECU10の動作に必要なアプリケーションを全て記憶している。本実施形態では、通信アプリケーション33、ヘッドライトアプリケーション34、ワイパーアプリケーション35を備えており、通信アプリケーション33は受信アプリケーション33aと送信アプリケーション33bを有し、ヘッドライトアプリケーション34はオンオフアプリケーション34a、オートライトアプリケーション34b、ダイアグアプリケーション34cを有している。
【0025】
ROMサブ領域30Sは、ROMメイン領域30Mに記憶されたアプリケーションのうち、ECU10のリセット後に早期に起動させるべきアプリケーションだけをまとめたものであり、ROMサブ領域30Sのアプリケーションの機能は、ROMメイン領域30Mのアプリケーションの機能と重複している。
本実施形態ではROMサブ領域30Sに通信アプリケーション31のうち受信アプリケーション31aを備えると共に、ヘッドライトアプリケーション32のうちオンオフアプリケーション32aを備えている。
なお、ROM30は書き換え不可のマスクROMであるが、書き換え可能なEEPROMやフラッシュROMとしてもよい。
【0026】
RAMメイン領域40MはROMメイン領域30Mに記憶されたアプリケーションを処理部12が動作させる際の作業領域となり、データや引数の保存場所として使用される。RAMメイン領域40MにはROMメイン領域30Mのアプリケーションに対応した作業領域を設けており、例えば、ROMメイン領域30Mの通信アプリケーション33の受信アプリケーション33aに対応して受信アプリケーション作業領域43aを設けており、ヘッドライトアプリケーション34のオンオフアプリケーション34aに対応してオンオフアプリケーション作業領域44aを設けている。
同様に、RAMサブ領域40SはROMサブ領域30Sに記憶されたアプリケーションを処理部12が動作させる際の作業領域となり、例えば、ROMサブ領域30Sの受信アプリケーション31aに対して受信アプリケーション作業領域41aを設けており、ヘッドライトアプリケーション32のオンオフアプリケーション32aに対応してオンオフアプリケーション作業領域42aを設けている。
【0027】
また、バッファ領域40Bは、ECU10が受信するメッセージを一時的に記録する領域である。バッファ領域40Bの一部をサブバッファ領域46aとして優先的に初期化し、ROMサブ領域30Sのアプリケーションが起動している間に他のECU10から受信した記憶すべきメッセージは、サブバッファ領域46aに記録している。
サブバッファ領域46aはROMメイン領域30Mのアプリケーションを起動するまでの間に受信するメッセージを記憶するために必要最小限の領域としており、ECU10のリセット後のサブバッファ領域46aの初期化にかかる時間を短くしている。
なお、バッファ領域40Bの全ての領域の初期化が完了した場合には、サブバッファ領域46aはバッファ領域40Bと区別されずバッファ領域40Bとして使用される。
【0028】
処理部12はCPUから構成され、他のECU10から受信したメッセージを解析・分類する機能を備えている。処理部12は、該メッセージが(1)制御対象機器の重要機能に関するメッセージ、(2)重要機能を除く制御対象機器に関するメッセージ、(3)制御対象機器以外のメッセージ、のいずれかであるかを解析・分類する。解析・分類は、例えば、メッセージに付された識別子(ID)を読み込み、予め備えたテーブル等を参照することにより行う。
【0029】
処理部12は、受信したメッセージが(1)の場合には、受信したメッセージを即座に処理する。例えば、受信したメッセージがヘッドライト23のオンオフ信号であった場合、受信したメッセージを用いてROM30のROMサブ領域30Sに記憶されたオンオフアプリケーション32aに基づいて演算処理を行い、その処理結果を送受信部11を介してヘッドライト23に出力して、ヘッドライト23の制御を行う。また、(2)の場合には、RAM40のサブバッファ領域46aにメッセージを記憶させ、(3)の場合にはメッセージを破棄する。
【0030】
ECU10の送受信部11は車載LAN21を介して他のECU10と接続しており、ECU10間のメッセージの送受信は、ROM30に記憶された通信アプリケーション31、33を起動することで行っている。通信プロトコルは本実施形態ではCANプロトコルとしているが、CANプロトコルに限定されるものではない。
また、ECU10の送受信部11は信号線22を介してヘッドライト23及びワイパー24と接続しており、処理部12からヘッドライト23及びワイパー24へオンオフ信号を送信している。該オンオフ信号はROM30に記憶された通信アプリケーション31、33によって送信するものではなく、ヘッドライト23及びワイパー24とECU10の送受信部11とを直接接続して、送受信部11及びヘッドライト23、ワイパー24の各入出力端子の電圧変化によりオンオフ指令を検知している。
【0031】
本発明のECU10の動作を図3のフローチャートを用いて説明する。例として、車両の走行中にECU10がリセットし、本ECU10が他のECU10Bからヘッドライト23のオンオフ信号を受信して、重要機能であるヘッドライト23を制御する動作について説明する。
まず、ECU10はリセット後起動する。
ステップS10で、RAM40のRAMサブ領域40Sにある受信アプリケーション作業領域41aを初期化する。具体的には、該領域をゼロクリアし、ROM30の受信アプリケーション31aから必要な変数を読み込む等の処理を行う。
ステップS11では、ROM30のバッファ領域40Bのうちサブバッファ領域46aの初期化を行う。
【0032】
ステップS12は、RAM40のRAMサブ領域40Sにあるヘッドライト23のオンオフアプリケーション作業領域42aの初期化を行う。
ステップS13では、ROMサブ領域30Sの受信アプリケーション31a及びヘッドライトアプリケーション32のオンオフアプリケーション32aを起動する。該起動により、他のECU10からのメッセージの受信が可能になると共に、ヘッドライト23にECU10がオンオフの出力を出してヘッドライト23の制御が可能となる。
【0033】
ステップS14では、他のECU10からメッセージを受信したか否かを判断している。
受信した場合にはステップS15に進む。受信していない場合はステップS19へ進む。
ステップS15では、処理部12が他のECU10から受信した該メッセージの内容を解析・分類している。メッセージが(1)制御対象機器の重要機能に関するメッセージである場合はステップS16に進み、(2)重要機能を除く前記制御対象機器に関するメッセージである場合はステップS17に進み、(3)ECU10で制御処理対象外のメッセージである場合はステップS18に進む。
本例では、他のECU10から受信したメッセージはヘッドライト23のオンオフ信号を含み重要機能に関するメッセージであり、かつ、即座にヘッドライト23の制御を行う必要があるので、(1)に該当し、ステップS16に進む。
【0034】
ステップS16では、処理部12は、該メッセージを用いてRAMサブ領域40Sのヘッドライト23のオンオフアプリケーション作業領域42aを使用しつつROMサブ領域30Sのヘッドライトアプリケーション32のオンオフアプリケーション32aを実行し、その処理結果を送受信部11を介してヘッドライト23に出力し、ヘッドライト23をオンオフ制御する。
ステップS17では、メッセージがワイパー24など重要機能以外の機能に関するメッセージの場合であり、バッファ領域40Bのサブバッファ領域46aにメッセージを保存する。
ステップS18では、メッセージが該ECU10で制御処理対象外の場合であり、処理部12は該メッセージを破棄する。
【0035】
ステップS19では、RAMメイン領域40Mの初期化を行う。またバッファ領域40Bのうちサブバッファ領域46aを除いた残りの領域についても初期化を行う。RAMメイン領域40M及びバッファ領域40Bの初期化は、ステップS14以降の他のECU10からのメッセージを受信していない空き時間に行っている。
ステップS20ではRAMメイン領域40Mの初期化が完了したか否かを判断している。完了した場合にはステップS21に進む。完了していない場合には、ステップS14に戻る。処理部12はステップS14からS20までの処理を周期的に行っており、例えば10msecごとに繰り返している。
ステップS21では、ROMサブ領域30Sの受信アプリケーション31a及びヘッドライトアプリケーション32のオンオフアプリケーション32aを終了する。
【0036】
ステップS22では、RAMサブ領域40Sの受信アプリケーション作業領域41aとヘッドライトアプリケーション作業領域42のオンオフアプリケーション作業領域42aに記憶されているデータや変数値を、RAMメイン領域40Mの受信アプリケーション作業領域43aとオンオフアプリケーション作業領域44aとにそれぞれ書き込む。
後述するステップS23で、ROMメイン領域30Mのアプリケーションが全て起動した後は、メッセージの受信及びメッセージの受信とヘッドライト23のオンオフの制御もROMメイン領域30Mに記憶された受信アプリケーション33aおよびヘッドライトアプリケーションのオンオフアプリケーション34aで行い、作業領域もRAMメイン領域40Mの作業領域を使用するため、RAMサブ領域40Sのデータや変数値を引き継いでいる。
ステップS23では、ROMメイン領域30Mのアプリケーションを全て起動する。ECU10は他のECU10へのメッセージの送信が可能になると共に、ヘッドライト23のオートライト機能、ダイアグ機能の制御及びワイパー24の制御が可能となる。
【0037】
また、ステップS15で処理部12が他のECU10から受信した該メッセージの内容を解析・分類しており、該メッセージが(2)重要機能以外の機能に関するメッセージである場合、例えば、ワイパー24の駆動に関するメッセージである場合には、サブバッファ領域46aにメッセージを記憶している。
処理部12は、ステップS23でROMメイン領域30Mのアプリケーションを全て起動した後、サブバッファ領域46aからメッセージを読み出し、該メッセージを用いてワイパーアプリケーション35を動作させ、ワイパー24の動作を制御する。
【0038】
前記構成によれば、自動車の走行中にECU10がリセットした場合、ECU10はリセット後にサブ記憶部13aの受信アプリケーションを優先的に起動しているので、他のECU10からのメッセージをリセット後早期に受信することができ、リセット後メッセージの受信が出来ない期間を短くすることができる。
また、他のECU10からメッセージを受信した場合には、該メッセージを(1)制御対象機器の重要機能に関するメッセージ、(2)重要機能を除く制御対象機器に関するメッセージ、(3)制御対象機器以外のメッセージに解析・分類しており、重要機能に関するメッセージを受信した場合は、サブ記憶部13aに記憶した重要機能の動作アプリケーションを優先的に起動しているので、該メッセージを処理して重要機能を早期に制御することができる。
【0039】
図4及び図5は本発明の第2実施形態を示す。
ECU10にはヘッドライト23、ワイパー24に加えて、送受信部11を介してヘッドライトスイッチ25を信号線22により接続している。ヘッドライトスイッチ25及びヘッドライト23はECU10のROM30に記憶された通信アプリケーション31、33によってオンオフ指令の送受信を行うものではなく、ヘッドライトスイッチ25及びヘッドライト23とECU10の送受信部11とを直接接続して、送受信部11及びヘッドライト23、ヘッドライトスイッチ25の各入出力端子の電圧変化によりオンオフ指令を検知している。
【0040】
また、ライト角度調整ECU10Cを車載LAN21により接続している。ライト角度調整ECU10CとECU10はROM30に記憶された通信アプリケーション31、33によってメッセージの送受信を行っている。
また、ROMメイン領域30Mのヘッドライトアプリケーション34は角度調整アプリケーション34dを備えており、RAMメイン領域40Mのヘッドライトアプリケーションの作業領域には、角度調整アプリケーション作業領域44dを備えている。
【0041】
ECU10はヘッドライトスイッチ25からオンオフの指令を受け取ると、ヘッドライト23のオンオフアプリケーション32a、34aを用いてヘッドライト23にオンオフの指令を出している。
また、ECU10に接続された他のECU10は、走行速度及びステアリングの角度の情報を含むメッセージを該ECU10に送信し、該メッセージを受信したECU10は、角度調整アプリケーション34dを用いてこれらの情報からヘッドライト23の左右の角度を調節するようライト角度調整ECU10Cにメッセージを送信している。
【0042】
例として、車両の走行中にECU10がリセットし、本ECU10がヘッドライトスイッチ25からオンオフ指令を検知して重要機能であるヘッドライト23のオンオフ制御を行うと共に、他のECU10から走行速度及びステアリングの角度の情報を含むメッセージを受信して、ヘッドライト23の左右の角度を調節するメッセージをライト角度調整ECU10Cに送信する場合を考える。
【0043】
まず、ECU10がリセット後起動すると、RAM40のRAMサブ領域40Sにある受信アプリケーション作業領域41aを初期化すると共に、RAM40のバッファ領域40Bのうちサブバッファ領域46aの初期化を行う。また、RAM40のRAMサブ領域40Sにあるヘッドライトアプリケーション作業領域42のオンオフアプリケーション作業領域42aの初期化を行う。
次に、ROMサブ領域30Sの受信アプリケーション31a及びヘッドライトアプリケーション32オンオフアプリケーション32aを起動する。
【0044】
さらに、ヘッドライトスイッチ25よりヘッドライト23のオンオフ指令を検知する。オンオフアプリケーション32aは既に起動しているので、ECU10はヘッドライト23に送受信部11を介してオンオフ信号を出し、ヘッドライト23のオンオフを制御する。
【0045】
一方、他のECU10から走行速度及びステアリングの角度の情報を含むメッセージを受信した場合、ヘッドライト23の左右の角度調整は重要機能ではないため、該メッセージはサブバッファ領域46aに記憶される。
RAMメイン領域40Mやバッファ領域40Bの初期化が完了すると、RAMサブ領域40Sの受信アプリケーション作業領域41aとヘッドライト23のオンオフアプリケーション作業領域42aに記憶されているデータや変数値を、RAMメイン領域40Mの受信アプリケーション作業領域43aとオンオフアプリケーション作業領域44aとにそれぞれ書き込む処理が行われた後、ROMメイン領域30Mのアプリケーションを全て起動する。
角度調整アプリケーション34d及び送信アプリケーション33bが起動するので、処理部12はサブバッファ領域46aから走行速度及びステアリングの角度の情報を含むメッセージを読み出して、ライトの左右の角度調整の処理を行い、ヘッドライト23の左右の角度調整の指令を含んだメッセージをライト角度調整ECU10Cへ送信する。
【0046】
前記構成によっても、自動車の走行中にECU10がリセットした場合、ECU10はリセット後にサブ記憶部13aのオンオフアプリケーション32aを優先的に起動しているので、リセット後重要機能であるヘッドライト23のオンオフ制御を早期に開始することができる。
また、サブ記憶部13aの受信アプリケーション31aも優先的に起動しているので、リセット後メッセージの受信が出来ない期間を短くすることができ、重要機能に関するメッセージ以外のメッセージをバッファ部13cに記憶することができる。
なお、他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態における電子制御ユニットの構成図である。
【図2】(A)はROMの領域の説明図、(B)はRAMの領域の説明図である。
【図3】電子制御ユニットの動作を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態における電子制御ユニットの構成図である。
【図5】第2実施形態における(A)はROMの領域の説明図、(B)はRAMの領域の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 電子制御ユニット(ECU)
12 処理部
13 記憶部
13a サブ記憶部
13b メイン記憶部
13c バッファ部
21 載LAN
22 信号線
23 ヘッドライト
30 ROM
30M ROMメイン領域
30S ROMサブ領域
31、33 通信アプリケーション
31a、33a 受信アプリケーション
32、34 ヘッドライトアプリケーション
32a、34a オンオフアプリケーション
40 RAM
40M RAMメイン領域
40S RAMサブ領域
40B バッファ領域
41、43 通信アプリケーション作業領域
41a、43a 受信アプリケーション作業領域
42、44 ヘッドライトアプリケーション
42a、44a オンオフアプリケーション
46a サブバッファ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載LANに接続される電子制御ユニットであって、
前記車載LANを介して他の電子制御ユニットから受信するメッセージを、接続している制御対象機器の重要機能の動作に関するメッセージであるか否かを解析・分類する処理部を備え、
リセット後の起動時に、優先的に、前記処理部で前記他の電子制御ユニットから受信したメッセージの解析・分類を行い、前記制御対象機器の重要機能に関するメッセージがある場合に、該メッセージに基づいて前記制御対象機器の重要機能を制御する構成としていることを特徴とする車載用の電子制御ユニット。
【請求項2】
前記他の電子制御ユニットからのメッセージを受信する受信アプリケーションと、
前記受信アプリケーションおよび全動作アプリケーションを記憶するメイン記憶部と、
動作アプリケーションのうち、接続している制御対象機器の重要機能の動作アプリケーションを記憶するサブ記憶部と、
前記他の電子制御ユニットからのメッセージを記憶するバッファ部を備え、かつ、
前記処理部は、他の電子制御ユニットから受信したメッセージを、(1)前記制御対象機器の重要機能に関するメッセージ、(2)前記重要機能を除く前記制御対象機器に関するメッセージ、(3)前記制御対象機器以外のメッセージに解析・分類する機能を有し、
リセット後の起動時に、前記サブ記憶部のアプリケーションを前記メイン記憶部のアプリケーションより優先して起動させ、前記(1)のメッセージを用いて前記制御対象機器の重要機能を制御し、前記(2)のメッセージは前記バッファ部に保存させ、前記(3)のメッセージは破棄している請求項1に記載の車載用の電子制御ユニット。
【請求項3】
前記処理部は、前記メイン記憶部の初期化及び前記全ての動作アプリケーションの起動後に、前記バッファ部に記憶させた前記(2)のメッセージを用いて、前記重要機能を除く前記制御対象機器を制御する請求項2に記載の車載用の電子制御ユニット。
【請求項4】
前記サブ記憶部は、ROMの第1領域に前記受信アプリケーションと前記重要機能の動作アプリケーションを備えると共に、RAMの第1領域に前記受信アプリケーションと前記重要機能の動作アプリケーションを実行するための作業領域を備え、
前記メイン記憶部は、ROMの第2領域に前記電子制御ユニットの全ての動作アプリケーションを備えると共に、RAMの第2領域に前記全ての動作アプリケーションを実行するための作業領域を備え、
前記メイン記憶部の初期化後に、前記サブ記憶部のRAMの第1領域の内容をRAMの第2領域に引き継ぎ保存させている請求項2または請求項3に記載の車載用の電子制御ユニット。
【請求項5】
前記接続した制御対象機器はヘッドライトを含み、前記サブ記憶部に記憶させて優先的に起動させる前記重要機能はヘッドライトのオンオフ機能である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車載用の電子制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−222152(P2008−222152A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66661(P2007−66661)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)