説明

電子制御式踏切しゃ断機

【課題】電子制御回路とリレー制御回路とを新たな形で協動させることで、安価に信頼性を高め、リレーの復旧不能や回生抵抗の断線を顕在化させる。
【解決手段】電子制御回路42にリレー監視プログラム44を設けて、降下時間監視リレーBRを一時的に復旧させる試行を遮断桿11が上昇停止位置に来ているとき間欠的に行う。自重降下リレーDRが復旧しないときはリレー制御回路47が故障したと判定する。リレー故障検知時には、故障通知や故障警報を外部に発し、遮断桿を強制的に下降させる。また、遮断桿11の下降中にリレー復旧を試行して、そのときの遮断桿の下降状態を正常時と比較し、相違していれば回生抵抗23が断線していると判定する。回生抵抗断線検知時には、断線通知や断線警報を外部に発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の踏切に設置されて遮断桿の昇降にて踏切道を開閉する踏切しゃ断機に関し、詳しくは、制御回路が昇降制御用の電子回路と自重降下制御用のリレー回路とを備えている電子制御式踏切しゃ断機に関する。
【背景技術】
【0002】
踏切しゃ断機は、鉄道の踏切に設置され、遮断桿を装着されて、踏切開閉のため遮断桿を水平から垂直(鉛直)へ垂直(鉛直)から水平へ揺動させるものであり、そのために、遮断桿保持部と回転伝動部とモータと制御駆動部とを備えている。
そのうち、遮断桿を昇降させる駆動源であるモータ(電動機)については、ブラシレスモータやサーボモータ等の採用が増えており、コイル等の電流検出器やロータリエンコーダ等の回転検出器を付設して、その検出に基づいてフィードバック制御を行うとともに機能を向上させたものも多い(例えば特許文献1〜4参照)。
【0003】
検出信号利用の機能向上例としては、モータ動作中のモータ駆動電流等を検出して下降中の跳ね上がり制御や上昇中の振りほどき制御を行うようになったものや(例えば特許文献1参照)、モータ回転位置等を検出して遮断桿の下降時間と上昇時間と下降停止位置と上昇停止位置とを外部から設定できるようになったもの(例えば特許文献2参照)、伝動機構の所で下降停止位置や上昇停止位置を検出するもの(例えば特許文献3参照)、モータ駆動電流等の検出結果を設定部に表示して可視化したものが挙げられる(例えば特許文献4参照)。
【0004】
また、制御駆動部は、別装置の踏切制御装置から踏切しゃ断機に対して送出された警報出力を制御信号として受けて、この制御信号を降下指令信号すなわち遮断桿の昇降を指示する指令信号として扱い、この降下指令信号に応じてモータ回転の制御と駆動を行うものであり、主に小電力で論理演算を行って昇降制御を担う制御回路と、それより大きな電力でモータ駆動を担うモータ駆動回路とに大別されるが、最近では、制御回路にマイクロプロセッサ(MPU)等の電子回路を採用した電子制御式踏切しゃ断機が増えている。そして、そのような電子素子自体では、踏切しゃ断機に求められるフェールセーフを実現することができないことから、マイクロプロセッサを二重系にするとともに両者の出力を一定の規約に従って照合するフェールセーフコンピュータを採用したうえで、照合不一致の場合には安全側に遷移することで、具体的には踏切しゃ断機の場合は遮断桿を下降させることで、必要なフェールセーフを実現させている。
【0005】
しかし、このようなフェールセーフコンピュータを搭載することはコスト高となることから、ノンフェールセーフコンピュータである汎用のマイクロプロセッサにて電子制御回路を構成するとともに、それに加えて別系統のリレー制御回路を設け、電磁リレーや半導体リレーといったリレー(継電器)を主体としたリレー回路でリレー制御回路を構成することで、コストダウンとフェールセーフとを両立させたものも開発されている。リレー制御回路は、電子制御回路とは全く独立に降下指令信号に応じて動作するものであり、通常の昇降制御は電子制御回路に委ねて、遮断桿の重さにより発生する回転モーメントによって遮断桿が降下する自重降下だけを担当するようになっている。すなわち、通常は降下指令信号に応じて電子制御回路によるモータ制御が行われるが、降下指令信号が降下を指示してから所定時間以内に下降停止位置に到達しないときには、電子制御回路が異常とみなされ、リレー制御回路によって自重降下制御が行われ、安全側に移行する。
【0006】
また、このような電子制御式踏切しゃ断機のリレー制御回路においては経過時間の確認に落下時素付きの降下時間監視リレーが用いられる。降下時間監視リレーそれ自体は一般的な電磁リレーや半導体リレーからなるリレーであるが、動作(励磁)状態から復旧(無励磁)状態に遷移するタイミングを所定の落下時素(遅延時間,所定時間)だけ例えば10秒ほど遅延させるディレイ回路が付加されている。その典型的な具体例としては、降下時間監視リレーに緩放リレーを採用したものが挙げられる。緩放リレーは、リレーに充放電回路が並列接続されていて緩放時間(遅延時間,所定時間)がコンデンサからの放電特性に基づいて決まるものが一般的であり、直流電圧が印加されるとリレーが動作し、直流電圧の印加が絶たれたときには緩放時間(遅延時間,所定時間)の経過後にリレーが復旧するようになっている(例えば非特許文献1,特許文献5参照)。
【0007】
また、降下時間監視リレーの他の回路例としては、昇降制御を担う電子制御回路とは別のカウンタ等を含む電子回路を降下時間監視リレーに付加して、この付加回路によりリレー制御回路の内部で発生する一定周期のパルスをカウントし、このパルスのカウント数が落下時素に対応する規定値になった時すなわち所定の遅延時間(所定時間)が経過した時に降下時間監視リレーを復旧させる、というものが挙げられる。
なお、本明細書では、リレー制御回路の構成例や動作例を詳述する際、回路構成が簡単な緩放リレーを降下時間監視リレーに採用したものを具体例として、説明する。
【0008】
さらに、サーボモータやインバータモータでは、遮断桿の自重降下を制動しながら適正速度で下降させる時の余分な起電力を放散するために、しばしば回生抵抗が用いられるが、モータ駆動回路には回生抵抗を内蔵したものもあれば外付けのものもある。
なお、この電子制御式踏切しゃ断機では、回生抵抗に対してその接続を断続するリレー接点が直列に接続されているので、本明細書では、そのような接続が簡単な外付けのものを具体例として、説明する。
【0009】
このような電子制御式踏切しゃ断機について、本発明の前提となる構成部分を、図面を引用して説明する。図5(a)は、従来の電子制御式踏切しゃ断機10の全体ブロック図であり、同図(b)は、そのうちのモータ駆動回路22のブロック図である。
【0010】
この電子制御式踏切しゃ断機10は、図示しない筐体と、筐体を内外に貫いていて筐体外で遮断桿11の揺動基端部を保持する遮断桿保持部12と、筐体に内蔵された回転伝動部13とモータ14と制御駆動部21とを備えている。そのうち、遮断桿11を昇降させる駆動源である例えば三相のモータ14(電動機)は、コイル等の電流検出器24やロータリエンコーダ等の回転検出器15が付設されており、その検出に基づいてフィードバック制御されるサーボモータである。回転伝動部13は、減速ギヤが典型例であるが、モータ14の出力軸の回転運動を適宜な回転速度で遮断桿保持部12に伝達できれば他の機構でも良く、これには下限検出器16と上限検出器17が付設されている。
【0011】
上限検出器17は、遮断桿11が揺動にて水平位置(遮断桿斜度θ=0〜5゜)から垂直位置(遮断桿斜度θ=85〜90゜)へ上昇して上昇停止位置に達すると、上昇停止位置情報Suの値をオンにし、遮断桿11が上昇停止位置から離れると上昇停止位置情報Suの値をオフにするようになっている。下限検出器16は、遮断桿11が揺動にて垂直位置から水平位置へ下降して下降停止位置に達すると、下降停止位置情報Slの値をオンにし、遮断桿11が下降停止位置から離れると下降停止位置情報Slの値をオフにするようになっている。回転検出器15は、モータ14の出力軸の回転角を検出してモータ回転情報Pmとするものである。モータ回転情報Pmと遮断桿斜度θが一対一で対応するので、モータ回転情報Pmが遮断桿斜度θに代えて昇降制御に用いられるようになっている。
【0012】
制御駆動部21は、プログラマブルなマイクロプロセッサ(MPU)を主体とした電子回路からなり遮断桿11の昇降制御を担う電子制御回路25と、フィードバック制御回路と出力段回路と電流検出器24とを具備していてモータ14の駆動を担うモータ駆動回路22と、電磁リレーや半導体リレーからなる降下時間監視リレーBRと自重降下リレーDRとを含んでいて遮断桿11の自重降下制御を担うリレー制御回路28とからなる。
【0013】
電子制御回路25には、外部の踏切制御装置の降下指令信号TERと上下限検出器16,17の下降停止位置情報Sl及び上昇停止位置情報Suと回転検出器15のモータ回転情報Pmとを入力してモータ回転指令Smを生成する昇降制御プログラム26と、例えばウォッチドッグタイマ等を用いて電子制御回路25のソフトウェア暴走その他の異常を検出するとともに電流検出器24でのモータ駆動電流の過大電流検出信号や図示しない温度計での過熱検出信号を取り込んでモータ駆動回路22の異常を検出して故障有無通知信号Sdを生成する故障診断プログラム27とがインストールされている。
【0014】
昇降制御プログラム26は、降下指令信号TERがオンからオフになって降下が指示されると、遮断桿11を下降させる向きにモータ14を回転させるようなモータ回転指令Smを生成して、そのモータ回転指令Smをモータ駆動回路22に送出するが、その際、モータ回転情報Pmと下降停止位置情報Slを監視していて、予め定めた一定の速度でモータ14が回転し延いては遮断桿11が定速揺動するようにモータ回転指令Smの値を随時調整するとともに、下降停止位置情報Slがオンしたところでモータ14の回転および遮断桿11の揺動を停止させるようになっている。
【0015】
また、昇降制御プログラム26は、降下指令信号TERがオフからオンになって上昇が指示されると、遮断桿11を上昇させる向きにモータ14を回転させるようなモータ回転指令Smを生成して、そのモータ回転指令Smをモータ駆動回路22に送出するが、その際、モータ回転情報Pmと上昇停止位置情報Suを監視していて、予め定めた一定の速度でモータ14が回転し延いては遮断桿11が定速揺動するようにモータ回転指令Smの値を随時調整するとともに、上昇停止位置情報Suがオンしたところでモータ14の回転および遮断桿11の揺動を停止させるようになっている。さらに、そのような昇降制御時にモータ14を定速回転させるため、モータ回転指令Smが速度を指示する場合は指令値を一定にし、遮断桿斜度θに対応した回転位相角などの位置をモータ回転指令Smが指示する場合は指令値の増減変量を一定にするようになっている。
【0016】
故障診断プログラム27は、電子制御回路25とモータ駆動回路22の何れにも異常がないときには故障有無通知信号Sdの値をオン(正常状態)にするが、電子制御回路25とモータ駆動回路22の何れかに異常が生じたときには故障有無通知信号Sdの値をオフ(故障状態)にするようになっている。この故障有無通知信号Sdは、故障通知のため踏切制御装置に送信されるとともに、電子制御回路25等に故障が発生した時には電子制御回路25の昇降制御を打ち切ってリレー制御回路28による遮断桿11の自重降下制御を優先実行させるために、リレー制御回路28にも送られるようになっている。
【0017】
モータ駆動回路22は、その動作電力を供給する給電線(B24−PW)に自重降下リレーDRのリレー接点が介挿接続されていて、自重降下リレーDRが動作状態のときには動作電力が供給されてモータ駆動を行うが、自重降下リレーDRが復旧状態のときには動作電力が断たれてモータ駆動を行わないものである。しかも、モータ駆動回路22は、電子制御回路25からモータ回転指令Smを入力するとともに、それを制御目標として電流検出器24の検出に基づくフィードバック制御の演算を行ってモータ14の相数と同じ三相のモータ制御信号を生成し、そのモータ制御信号を出力段回路にてパワー増幅してモータ駆動電流にし、そのモータ駆動電流をモータ14に供給するようになっている。このようなモータ駆動回路22は、自重降下リレーDRが動作している間は、モータ14ひいては遮断桿11をモータ回転指令Smに追従させるが、自重降下リレーDRが復旧すると、モータ14の駆動を停止して、遮断桿11を自重降下させるものとなっている。
【0018】
また、モータ駆動回路22には回生抵抗23が付設されているが、この回生抵抗23は上述したように遮断桿11の自重降下を制動するためのものなので、故障検知時などの異常事態の場合に遮断桿11を自重降下させるときには接続が動的に確立されるが、そうでない正常状態では接続されることなく切り離され続けるものとなっている。具体的には、回生抵抗23には自重降下リレーDRのリレー接点が直列に接続されていて、その直列接続回路が両側にダイオードを介在させてモータ駆動電流の給電線に並列接続されている。そして、回生抵抗23は、自重降下リレーDRが動作している間は、モータ駆動回路22によるモータ14のモータ駆動を妨げないよう自重降下リレーDRのリレー接点によってモータ駆動電流の給電線から切り離されているが、自重降下リレーDRが復旧すると、そのリレー接点によってモータ駆動電流の給電線に接続されて、遮断桿11の自重降下を制動しながら適正速度で下降させる時の余分な起電力を放散するようになっている。
【0019】
リレー制御回路28は、上述したように、降下時間監視リレーBRを主体とした降下時間監視リレー回路と、自重降下リレーDRを主体とした自重降下リレー回路とからなり、そのうち降下時間監視リレーBRには、コンデンサCaと抵抗Raとを直列接続した充放電回路からなるディレイ回路が付加されていて、降下時間監視リレーBRの復旧タイミングが遅延時間(所定時間)の約10秒ほど遅らされるようになっている。降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRもフェールセーフのため常時動作するリレーとなっている。
【0020】
具体的には、降下時間監視リレーBRは、その駆動ライン(B24−C24)に降下指令信号TERの制御下の開閉部材(リレー接点TER)と下降停止位置情報Slの制御下の開閉部材(リレー接点Sl)とが介挿接続されていて、踏切制御装置によって降下が指示されて降下指令信号TERがオフになってから遅延時間(所定時間)が経過しても未だ遮断桿11が下降停止位置に到達したいため下降停止位置情報Slがオンしないという異常事態の場合には復旧するが、そうでない正常状態では復旧することなく動作し続けるものとなっている。
【0021】
また、自重降下リレーDRは、その駆動ライン(B24−C24)に降下時間監視リレーBRのリレー接点と故障有無通知信号Sdの制御下の開閉部材とが介挿接続されていて、故障診断プログラム27によって電子制御回路25やモータ駆動回路22が故障していると診断された異常事態の場合と、降下時間監視リレーBRによって遮断桿11が所定の遅延時間内に降下しなかったことが検知された異常事態の場合には復旧するが、そうでない正常状態では復旧することなく動作し続けるものとなっている。
【0022】
この電子制御式踏切しゃ断機10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図6は、正常な通常の昇降時の信号等の波形例であり、図7は、電子制御回路25が故障してリレー制御回路28の制御により遮断桿11が自重降下しているときの信号等の波形例である。なお、ここでは、簡明化のため、波形例のうちモータ回転指令Smについては、指令値が位置を指示しているものとする。
【0023】
電子制御式踏切しゃ断機10が何ら異常なく正常に動作している場合(図6参照)、電子制御式踏切しゃ断機10の設置先の踏切に列車が来ていないときには(時刻t60)、降下指令信号TERがオンになっており、それに応じてモータ回転指令Smが遮断桿11の上昇を指示し、遮断桿11が上昇停止位置にとどまっているので、遮断桿斜度θとモータ回転情報Pmが上昇停止位置に対応した値を示し、上昇停止位置情報Suがオンで下降停止位置情報Slはオフになっており、コンデンサCaは十分に充電されている。その状態では、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも動作状態になっている。
【0024】
この状態で、列車が踏切に接近して踏切制御装置によって降下指令信号TERがオフにされると(時刻t61)、昇降制御プログラム26によってモータ回転指令Smの指令値が一定傾斜で下げられ、モータ回転指令Smを目標にして追従制御を行うモータ駆動回路22によるモータ14の駆動に従って遮断桿11が定速で降下し始めるので、遮断桿斜度θとモータ回転情報Pmも一定傾斜で下がり始め、上限検出器17が作動して上昇停止位置情報Suがオンからオフになるが、下限検出器16は未だ作動しないので下降停止位置情報Slはオフのままである。また、リレー制御回路28では、降下指令信号TERの変化に応じて、コンデンサCaが抵抗Raを介して放電し始めるので、コンデンサCaの電圧ひいては降下時間監視リレーBRの駆動電圧が下がり始める。それでも、未だ、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも動作状態を維持し続ける。
【0025】
そして、モータ回転指令Smの指令値が下降停止位置まで下がるとそこで下げ止まるが(時刻t62)、そのときには、モータ回転指令Smに従って遮断桿11が下降停止位置に到達して停止し、それに対応して遮断桿斜度θとモータ回転情報Pmも下げ止まる。遮断桿11が下降停止位置まで降下すると、上昇停止位置情報Suはオフのままであるが、下降停止位置情報Slがオフからオンになるので、リレー制御回路28では、コンデンサCaの放電が止まり、逆にコンデンサCaが充電されるので、コンデンサCaの電圧ひいては降下時間監視リレーBRの駆動電圧が上がり始める。正常状態では、コンデンサCaの放電時間(時刻t61〜時刻t62)が降下時間監視リレーBRの遅延時間(所定時間)より短いので、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも動作状態を維持し続ける。
【0026】
その後、列車が踏切を通過し終えて降下指令信号TERがオンになると(時刻t63)、モータ回転指令Smの指令値が下降停止位置から上昇停止位置を目指して一定傾斜で上がり始め、それに追従して遮断桿11が定速で上昇し始めるので、遮断桿斜度θとモータ回転情報Pmも一定傾斜で上がり始め、下限検出器16が作動して下降停止位置情報Slがオンからオフになるが、上限検出器17は未だ作動しないので上昇停止位置情報Suはオフのままである。また、リレー制御回路28では、既に開始されていたコンデンサCaの充電が継続されるので、電圧ひいては降下時間監視リレーBRの駆動電圧が上がり続け、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも動作状態を維持し続ける。そして、遮断桿11が上昇停止位置に達すると(時刻t64)、当初状態に戻る(時刻t60)。
【0027】
一方、電子制御回路25が故障して動作しなくなった場合(図7参照)、モータ回転指令Smがたまたま遮断桿11の上昇を指示していて遮断桿11が上昇停止位置に止まっていると、電子制御式踏切しゃ断機10の設置先の踏切に列車が来ていないときには(時刻t70)、各部の状態が正常時の当初状態と同じになるので、とりあえずは不都合がなく、外見では故障していないように見える。
ところが、列車接近によって降下指令信号TERがオンからオフになっても(時刻t71)、電子制御回路25が故障で動作しないため、モータ回転指令Smは変化しないままなので、遮断桿11も降下せず上昇停止位置にとどまる。
【0028】
もっとも、リレー制御回路28では、降下指令信号TERのオフ遷移に応じてコンデンサCaの放電が開始されるので、コンデンサCaの電圧ひいては降下時間監視リレーBRの駆動電圧が下がり始める。そして、降下時間監視リレーBRの遅延時間(所定時間)を超える時間が経過すると(時刻t72)、コンデンサCaの電圧低下に応じて降下時間監視リレーBRが動作状態から復旧状態になり、それに伴って自重降下リレーDRも動作状態から復旧状態になる。そうすると、モータ駆動回路22の動作電力が断たれて、遮断桿11が自重で降下するとともに、自重降下リレーDRの復旧によって回生抵抗23がモータ駆動電流の給電線に接続されて、遮断桿11の遮断桿斜度θが緩やかに下がり、遮断桿11によって踏切道が安全に閉鎖される。
【0029】
信号波形例の図示は割愛したが、また、繰り返しとなる詳細な説明も割愛するが、電子制御回路25やモータ駆動回路22の故障が故障診断プログラム27によって検知された場合も、故障診断プログラム27の出す故障有無通知信号Sdによってリレー制御回路28の自重降下リレーDRが復旧させられるので、モータ駆動回路22の動作電力が断たれて、遮断桿11が自重で降下するとともに、回生抵抗23がモータ駆動電流の給電線に接続されて、遮断桿11の遮断桿斜度θが緩やかに下がり、遮断桿11によって踏切道が安全に閉鎖される。
【0030】
このように、制御駆動部21は、フィードバック制御を行うサーボ機構を司るとともに、電子制御回路25のマイクロプロセッサ(MPU)のソフトウェアの暴走を検知するウォッチドッグタイマ(WDT)機能により、あるいはモータ14のコイルの過大電流を検出する電流検出器24から得られる情報や,異常な発熱を検知する不図示のセンサから得られる情報により、電子制御回路25及びモータ駆動回路22の異常を検知し、故障検出時には故障診断プログラム27の出力する故障有無通知信号Sdをオフからオンにして、自重降下リレーDRを復旧させる。そして、自重降下リレーDRが復旧すると、モータ駆動回路22への動作電力の供給が断たれるとともに、遮断桿11の重さにより発生する回転モーメントによって遮断桿11が降下する自重降下制御が行われ、安全側に移行する。
【0031】
また、通常は降下指令信号TERに応じて電子制御回路25によるモータ制御によって遮断桿11の昇降制御が行われるが、降下指令信号TERが降下を指示してから所定の遅延時間以内に遮断桿11が降下位置に到達しないときには、リレー制御回路28において、降下時間監視リレーBRが復旧し、続いて自重降下リレーDRが復旧する。そして、このようなリレー制御回路28による昇降動作監視および自重降下制御によって電子制御回路25の故障時には遮断桿11の自重降下制御が行われ、安全側に移行する。
この状態は、通常は降下指令信号TERに応じて電子制御回路25により行われるモータ制御が行われなくなった状態であり、そのような状態遷移は、電子制御回路25が異常の場合に、電子制御回路25の故障をリレー制御回路28が補完することで、しゃ断機に求められるフェールセーフ性が確保されることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2002−160634号公報
【特許文献2】特開2002−160635号公報
【特許文献3】特開2006−069333号公報
【特許文献4】特開2010−228580号公報
【特許文献5】特開2010−079722号公報
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】日本鉄道電気技術協会編「踏切保安装置 詳説」第291〜293頁、2007年5月31日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
このような従来の電子制御式踏切しゃ断機では、しゃ断機に求められるフェールセーフ性を確保するために、電子制御回路に加えて、電子制御回路の異常を補完するリレー制御回路を設けている。そして、電子制御回路には自回路の異常を検出する故障診断機能を持たせるとともに、リレー制御回路にて電子制御回路の動作状態を監視して、何れかで異常が検知されると、リレーにてモータ駆動回路の電力を断って遮断桿を自重降下させる。
そして、リレー制御回路の中心部材である降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも、フェールセーフ性の確保のため常時動作状態で使用される。
【0035】
しかしながら、一般にリレーにとっては常時動作での使用の方が常時復旧での使用より接点の溶着などの不具合が起き易くて故障発生率が高いため、降下時間監視リレーBRにも、自重降下リレーDRにも、フェールセーフコンピュータよりは安価であるとは言ってもリレーのなかでは高価で信頼性の高いリレーを採用しているので、コストアップを抑えつつ信頼性を更に向上させることを、言い換えれば信頼性を維持しつつ原価を更に低減させることを、リレー制御回路そのものの改造だけで実現するのは難しい。
そこで、電子制御回路とリレー制御回路とを新たな形で協動させることにより、信頼性の高い電子制御式踏切しゃ断機を安価に実現することが、基本的な技術課題となる。
【0036】
また、降下時間監視リレーBRや自重降下リレーDRが接点の溶着などの原因で復旧すべきときに復旧しないという復旧不能の発生確率は、安全性の要求仕様を十分に満たすほど小さいとは言っても、更には上記対策にて改善したとしても、ゼロにはならない。しかも、電子制御回路が故障して降下時間監視リレーBRや自重降下リレーDRが復旧する確率は非常に小さいことから、これらのリレーBR,DRは、長い年月に亘って動作状態(励磁状態)を継続するが、その状態が正常時の電子制御回路の動作に合致する。そのうえ従来は電子制御回路をリレー制御回路で監視することはあって逆にリレー制御回路を電子制御回路で監視するようにはなっていなかった。そのため、電子制御回路が正常な間に発生したリレーBR,DRの復旧不能の異常は、電子制御回路が故障するまで、潜在化する。同様に、回生抵抗23の断線故障の事態すなわちモータ駆動電流の給電線に対する回生抵抗23の接続不良という異常事態も、電子制御回路が故障するまで、潜在化する。
【0037】
しかしながら、このような異常事態が潜在化した状態で電子制御回路が故障すると、踏切しゃ断機のフェールセーフの一翼を担う安全性機構の機能が損なわれるので、異常事態の潜在化はできり限り回避できるようにするのが望ましい。
そこで、電子制御回路とリレー制御回路とを新たな形で協動させることにより、リレーの復旧不能や回生抵抗の断線を電子制御回路の故障前に顕在化しうる電子制御式踏切しゃ断機を実現することが、更なる技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、遮断桿を昇降させるモータと、このモータの回転駆動を行うモータ駆動回路と、外部から受けた降下指令信号に応じて前記モータ駆動回路へのモータ回転指令を生成することで前記遮断桿の昇降制御を行うとともに自回路の故障診断も行う電子制御回路と、常時動作のリレーからなり前記降下指令信号が降下を指示してから所定時間内に前記遮断桿が下降停止位置に到達すれば動作状態を維持するが到達しないときには復旧する降下時間監視リレーと、常時動作のリレーからなり前記降下時間監視リレーが復旧したときに加え前記電子制御回路が故障の診断結果を出したときにも復旧して前記モータ駆動回路にモータ駆動を停止させることで前記遮断桿を自重降下させる自重降下リレーとを備えた電子制御式踏切しゃ断機において、前記降下時間監視リレーを一時的に復旧させる試行を間欠的に行うリレー監視手段を前記電子制御回路に設けたことを特徴とする。
【0039】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段2)、上記解決手段1の電子制御式踏切しゃ断機であって、前記リレー監視手段は、前記試行時に前記自重降下リレーの作動状態を調べて前記自重降下リレーが復旧したときには前記自重降下リレーも前記降下時間監視リレーも正常であると判定するが前記自重降下リレーが復旧しなかったときには前記自重降下リレーを含むリレー制御回路が故障したと判定するものである、又は、前記試行時に前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーの作動状態を調べて前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーが共に復旧したときには前記自重降下リレーも前記降下時間監視リレーも正常であると判定するが前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーの何れか一方もしくは双方が復旧しなかったときには前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーを含むリレー制御回路が故障したと判定するものであることを特徴とする。
【0040】
さらに、本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段3)、上記解決手段2の電子制御式踏切しゃ断機であって、前記リレー監視手段は、前記試行時に前記リレー制御回路が故障したと判定したときには故障の通知または警報を外部に発するものであることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段4)、上記解決手段2,3の電子制御式踏切しゃ断機であって、前記リレー監視手段は、前記試行時に前記リレー制御回路が故障したと判定したときには前記降下指令信号の指示にかかわりなく前記遮断桿を下降させる強制下降制御を行うものであることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段5)、上記解決手段1〜4の電子制御式踏切しゃ断機であって、前記リレー監視手段は、前記試行を前記遮断桿が上昇停止位置に来ているときに行うものであることを特徴とする。
【0043】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段6)、上記解決手段1〜4の電子制御式踏切しゃ断機であって、前記遮断桿の自重降下時に前記モータの起電力を放散して前記遮断桿の自重降下を制動する回生抵抗が前記モータ駆動回路に設けられており、前記リレー監視手段は、前記試行を前記遮断桿が下降している途中で行うとともに、そのときの前記遮断桿の下降状態を調べて、その下降状態と予め記憶保持している正常時の下降状態とを比較し、両状態の相違が許容範囲に収まっているときには前記回生抵抗が断線していないと判定するがそうでないときには前記回生抵抗が断線していると判定するようになっている、ことを特徴とする。
【0044】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機は(解決手段7)、上記解決手段6の電子制御式踏切しゃ断機であって、前記リレー監視手段は、前記試行時に前記回生抵抗が断線していると判定したときには断線の通知または警報を外部に発するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0045】
このような本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段1)、遮断桿の昇降制御を担う電子制御回路を降下時間監視リレーで監視するとともに、その降下時間監視リレーの監視結果と電子制御回路の自己診断結果とを反映した降下時間監視リレーにて故障時にはモータ駆動回路を停止させて遮断桿を自重降下させることで必要なフェールセーフ性を確保するという従来技術を踏襲したうえで、電子制御回路にリレー監視手段を設けて、降下時間監視リレーの一時的復旧が間欠的に試行されるようにしたことにより、降下時間監視リレーに加えて自重降下リレーもときどき一時的に復旧しようとする。フェールセーフのため降下時間監視リレーも自重降下リレーも大半の時間は従来通り常時動作で使用されるが、従来と異なり、ときどきは短時間の復旧も試行される。
【0046】
そのリレー復旧の試行時間は、一時的であり、リレーの応答時間よりは長いが、遮断桿の姿勢変化を目視で認識できるほど遮断桿の姿勢を乱すことのない短時間であって而も昇降制御に支承を来たすほど制御を妨げることのない短時間に限られる。また、リレー復旧の試行時期は間欠的であり、適宜分散した定期的な又は不定期のタイミングでリレー復旧が試行される、このように、常時動作のリレーがときどきは一時復旧するようになったため、リレー故障が発生し難くなるので、従来と同じリレーであれば信頼性が向上し、従来と同じ信頼性で良ければ安価なリレーでも間に合うこととなる。しかも、そのような復旧試行は開閉部材の追加や電子制御回路のプログラム改造などで簡便に具現化される。
したがって、この発明によれば、常時動作リレーの一時復旧を電子制御回路が試行させるようにしたことにより、信頼性の高い電子制御式踏切しゃ断機を安価に実現することができ、その結果、上述した基本的な技術課題が解決される。
【0047】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段2)、リレー接点に係る信号が電子制御回路に入力され、その信号に基づきリレー監視手段によってリレーの作動状態が調べられ、リレー復旧試行時のリレー復旧の有無に応じてリレー制御回路が正常なのか故障しているのかが判定される。
したがって、この発明によれば、リレー制御回路が電子制御回路を監視するだけでなく電子制御回路がリレー復旧試行時に復旧の有無を調べることでリレー制御回路が正常か故障かを電子制御回路が判定するという逆向きの監視も行われるようにしたことにより、リレーの復旧不能を電子制御回路の故障前に顕在化しうる電子制御式踏切しゃ断機を実現することができ、その結果、基本的な技術課題に加えて更なる技術課題も解決される。
【0048】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段3)、リレー制御回路の故障が電子制御回路によって検知されたときには、そのことが電子制御回路によって外部に知らされるので、故障の顕在化したリレー制御回路について修理等が促される。
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段4)、リレー制御回路の故障が電子制御回路によって検知されたときには、電子制御回路によって遮断桿が強制的に下降させられるので、リレー制御回路に加えて電子制御回路まで故障して列車接近時に遮断桿が下降しなくなるという不具合の発生が未然に而も確実に防止される。
【0049】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段5)、遮断桿が上昇停止位置に来ているときにリレー復旧が試行されるが、遮断桿が上昇停止位置に来ているときは、遮断桿を自重降下させても遮断桿が直ぐにはほとんど動かないことから、試行時期や試行時間の選定や設定が多少なら大雑把でも不都合がないので、リレー監視手段の具体化が容易である。
したがって、この発明によれば、常時動作リレーの一時復旧を電子制御回路が試行させることで信頼性の高い電子制御式踏切しゃ断機を安価かつ簡便に実現することができる。
【0050】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段6)、モータ駆動回路に回生抵抗が外装または内蔵されていて、その回生抵抗によって遮断桿の自重降下時にはモータの余分な起電力が放散されることで、遮断桿の自重降下が制動されて遮断桿が適度な速度で下降するが、回生抵抗について断線故障があると、遮断桿の下降速度が正常時の下降速度とは異なるものになる。そのような遮断桿の下降状態は、モータに付設されている回転検出器その他の検出器を利用して電子制御回路に入力する等のことで簡便に調べることができるが、遮断桿の下降状態に係る正常時と断線時での相違は、遮断桿の静止中よりも昇降中の方が大きく発現するうえ、遮断桿の下降中であれば自重降下制御を行っても目視で認識するのが困難なので踏切待ちの者に違和感を与えることもない。
【0051】
そこで、遮断桿の昇降制御を行っているリレー監視手段によってリレーの一時復旧が遮断桿の下降中に試行されるとともに、そのときの遮断桿の下降状態と正常時の下降状態とが比較されて、両状態の相違が許容範囲に収まっているときには回生抵抗が断線していないと判定されるが、そうでないときには回生抵抗が断線していると判定されるようにしたことにより、電子制御回路が正常なうちに回生抵抗の断線が検出されることとなる。
したがって、この発明によれば、電子制御回路が常時動作リレーの一時復旧を試行させた際に遮断桿の下降状態に基づいて回生抵抗の断線が検知されるようにしたことにより、回生抵抗の断線を電子制御回路の故障前に顕在化しうる電子制御式踏切しゃ断機を実現することができ、その結果、基本的な技術課題に加えて更なる技術課題も解決される。
【0052】
また、本発明の電子制御式踏切しゃ断機にあっては(解決手段7)、回生抵抗の断線が電子制御回路によって検知されたときには、そのことが電子制御回路によって外部に知らされるので、故障の顕在化した回生抵抗について修理等が促される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例1について、電子制御式踏切しゃ断機の構造を示すブロック図である。
【図2】リレー監視プログラムの内容を示すフローチャートである。
【図3】上昇停止中照査時の信号等の波形例である。
【図4】下降途中照査時の信号等の波形例である。
【図5】従来の電子制御式踏切しゃ断機のブロック図である。
【図6】正常な通常の昇降時の信号等の波形例である。
【図7】電子回路故障で自重降下時の信号等の波形例である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
このような本発明の電子制御式踏切しゃ断機について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜4に示した実施例1は、上述した解決手段1〜7(出願当初の請求項1〜7)を総て具現化したものである。
なお、その図示に際しては、簡明化等のため、機械的形状や,電気回路の詳細,電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものをブロック図や波形図で示した。また、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0055】
本発明の電子制御式踏切しゃ断機の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、電子制御式踏切しゃ断機40のブロック図であり、図2は、リレー監視プログラム44のフローチャートである。
【0056】
この電子制御式踏切しゃ断機40が既述した従来の電子制御式踏切しゃ断機10と相違するのは(図1参照)、リレー制御回路28にて電子制御回路25を監視するだけだった制御駆動部21が相互監視形の制御駆動部41になった点であり、制御駆動部41では、電子制御回路25が一部改造されて電子制御回路42になっており、リレー制御回路28がやはり一部改造されてリレー制御回路47になっている。機械部分12,13やモータ14及びモータ駆動回路22には変更がなく既述した従来のままであり、モータ駆動回路22に回生抵抗23が付設されていること等も変更がなく既述した従来のままである。
【0057】
リレー制御回路47の改造は小さく、リレー制御回路47がリレー制御回路28と相違するのは、降下時間監視リレーBRの駆動ラインに開閉部材48が介挿接続されている点である。開閉部材48の介挿部位は、ディレイ回路の接続部位よりも降下時間監視リレーBRの駆動部(コイル又はコイル相当部分)に近いところであり、図示した緩放リレーの場合はコンデンサCa及び抵抗Raのなす充放電回路の並列接続部分の内側になっている。開閉部材48は、例えばスイッチやリレー接点などからなり、電子制御回路42の出力するリレー照査信号Scを制御信号として電路開閉を行うようになっている。
そのため、降下時間監視リレーBRは、リレー照査信号Scがオフで開閉部材48が導通していれば従来通り緩放リレーとして機能するが、リレー照査信号Scがオンして開閉部材48が遮断状態になると直ちに復旧するものとなっている。
【0058】
電子制御回路42が電子制御回路25と相違するのは、昇降制御プログラム26が一部改造されて昇降制御プログラム43になった点と、リレー監視プログラム44が追加インストールされた点と、降下時間監視リレーBRの作動状態と自重降下リレーDRとについて動作状態なのか復旧状態なのかという作動状態を入力するようになった点と、リレー照査信号Scを出力して開閉部材48に送出するようになった点と、踏切制御装置に送信される故障通知にリレー故障通知Erと回生抵抗断線通知Ecが加わった点である。
【0059】
昇降制御プログラム43の改造は、小さく、リレー監視プログラム44からリレー故障通知Erを受け取るようになったことと、リレー故障通知Erがオフであれば従来通り降下指令信号TERに従って遮断桿11の昇降制御を行うが、リレー故障通知Erがオンになると、リレー監視プログラム44に代わって、降下指令信号TERの指示にかかわりなく強制的に遮断桿11を下降停止位置まで下降させる強制下降制御を行うようになったことである。
【0060】
リレー監視プログラム44は(図1参照)、モータ回転指令Smと下降停止位置情報Slと降下時間監視リレーBRの作動状態と自重降下リレーDRの作動状態とに基づいてリレー制御回路47の動作状態を監視するためにリレー照査信号Scを生成するとともに、監視結果としてリレー故障通知Erと回生抵抗断線通知Ecを生成するものであり、常態ではオフのリレー照査信号Scを短時間だけオンにして降下時間監視リレーBRひいては自重降下リレーDRも一時的に復旧させる試行を間欠的に行うようになっている。
【0061】
このリレー監視プログラム44の処理内容は、常時動作のリレーBR,DRが正しく復旧するか否かを調べるために遮断桿11が上昇停止位置に来ているときにリレー照査信号Scを一時オンさせてリレー復旧を試行する上昇停止中照査と、常時非接続の回生抵抗23が正しく接続されるかそれとも断線しているかを調べるために遮断桿11が下降している途中でリレー照査信号Scを一時オンさせてリレー復旧を試行する下降途中照査とに大別される。
【0062】
先ず上昇停止中照査を詳述すると(図2の左半分を参照)、モータ回転指令Smと下降停止位置情報Slと上昇停止位置情報Suに基づいて遮断桿11が上昇停止位置に停止しているか否かを調べ(ステップS11)、上昇停止位置に停止中であれば(Yes)、試行時期が到来しているか否かも調べ(ステップS12)、時期到来時にだけ(Yes)、上昇停止中照査を実行し(ステップS13〜S18)、それ以外のときは(No)、上昇停止中の時期到来を待つ(ステップS11〜S12)。試行時期は、しゃ断機の耐用寿命と使用するリレーの保障動作回数などに基づいて予め決定されており、例えば30分から60分程度の一定間隔にされて、パラメータ等としてデータ設定されている。試行時期が到来したか否かは例えば内蔵のタイマ等を利用して判定されるようになっている。
【0063】
試行時期が到来して上昇停止中照査を実行するときは、リレー照査信号Scをオフからオンにし(ステップS13)、降下時間監視リレーBR及び自重降下リレーDRの応答時間より長いが遮断桿11の応動時間よりは短い例えば数十ミリ秒程度の短時間だけ時間が経過するのを待って(ステップS14)、降下時間監視リレーBRの作動状態と自重降下リレーDRの作動状態を入力し(ステップS15)、それからリレー照査信号Scをオンからオフに戻して上昇停止中照査のうち最初のリレー照査の部分を終了するようになっている(ステップS16)。
【0064】
リレー照査後はその際に入力した降下時間監視リレーBR及び自重降下リレーDRの作動状態に基づいてリレー制御回路47が正常であるか否かを判別する(ステップS17)。具体的には、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも共にリレー照査に応じて復旧していたときには、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも更にはリレー制御回路47も正常であると判定する。これに対し、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも復旧せず動作したままであったときや、降下時間監視リレーBRはリレー照査に応じて復旧していたが自重降下リレーDRが復旧せず動作したままであったときに、降下時間監視リレーBR及び自重降下リレーDRを含んでいるリレー制御回路47が故障したと判定するようになっている。
【0065】
その判定でリレー制御回路47が正常であったと判定したときにはそれ以上は特に何もしないで上昇停止中照査を完了して次の試行時期を待つが(ステップS17,No)、リレー制御回路47が故障したと判定したときには(ステップS17,Yes)、リレー故障通知Erの値をオフからオンに変更するようになっている(ステップS18)。リレー故障通知Erをオンにすることで、リレー制御回路47が故障したことが外部の踏切制御装置にも内部の昇降制御プログラム43にも通知され、それを受け取った昇降制御プログラム43によって強制下降制御が代行されるので、リレー制御回路47が降下指令信号TERの指示にかかわりなく強制的に遮断桿11を下降停止位置へ下降させることと等価になる。
【0066】
次に下降途中照査を詳述すると(図2の右半分を参照)、モータ回転指令Smと下降停止位置情報Slと上昇停止位置情報Suに基づいて遮断桿11が下降している途中であるか否かを調べ(ステップS21)、下降途中であれば(Yes)、さらに遮断桿斜度θが閾値Th1になったか否かを調べ(ステップS22)、遮断桿斜度θが閾値Th1になったら(Yes)、下降途中照査を実行し(ステップS23〜S27)、それ以外のときは(No)、下降途中に傾斜が閾値Th1になるのを待つようになっている(ステップS11,S21,S22)。閾値Th1は、遮断桿11の自重降下時の速度や加速度が昇降制御プログラム43による昇降制御下の速度や加速度から明確に異なるような遮断桿斜度θから選定され、例えば水平から40゜程度の遮断桿斜度θに対応した値が採用される。
【0067】
遮断桿斜度θが閾値Th1になって試行時期が到来すると(ステップS22,Yes)、リレー照査にて遮断桿11に自重降下を強制するためにリレー照査信号Scをオフからオンにし(ステップS23)、遮断桿斜度θが閾値Th2になるのを待って(ステップS24)、リレー照査信号Scをオンからオフに戻して上昇停止中照査のうち最初の部分であるリレー照査による自重降下を解除するようになっている(ステップS25)。閾値Th2は、遮断桿11が急加速したとしても下降停止位置より十分手前で制動されるように且つ遮断桿11の速度が自重降下のものであると目視では確認できない程度に収まるように、例えば水平から30゜程度の遮断桿斜度θに対応した値が採用される。
【0068】
また、自重降下試行時には遮断桿斜度θが閾値Th1から閾値Th2まで変化するのに費やした経過時間Δtをタイマ計測等で求めておき、その経過時間Δtと閾値Th3とを自重降下解除後に比較する(ステップS26)。そして、経過時間Δtが閾値Th3より小さければ回生抵抗23が断線していると判定するが(Yes)、そうでなければ回生抵抗23が断線していないと判定する(No)。閾値Th3は、設計値からの算出や実機での測定にて求められて予めメモリ等に記憶保持されているデータ値であり、正常時の下降状態に許容範囲を加味したものである。一方、経過時間Δtは、上述したように、そのときどきの遮断桿11の下降状態を調べて得たデータ値である。そのため、ここでの判定は、下降途中照査時の下降状態と正常時の下降状態との相違が許容範囲に収まっているときには回生抵抗23が断線していないと判定するが、そうでないときには回生抵抗23が断線していると判定するものとなっている。
【0069】
その判定で回生抵抗23が断線していないと判定したときにはそれ以上は特に何もしないで下降途中照査を完了して次の試行時期を待つが(ステップS26,No)、回生抵抗23が断線していると判定したときには(ステップS26,Yes)、回生抵抗断線通知Ecの値をオフからオンに変更するようになっている(ステップS27)。回生抵抗断線通知Ecをオンにすることで、回生抵抗23が断線したことが外部の踏切制御装置に通知され、それを受け取った踏切制御装置やその上位装置によって回生抵抗23の修理が促されるようになっている。
【0070】
この実施例1の電子制御式踏切しゃ断機40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図3は、上昇停止中照査時の信号等の波形例であり、図4は、下降途中照査時の信号等の波形例である。
【0071】
電子制御回路42やモータ駆動回路22の故障が故障診断プログラム27によって検知されたときの動作は既述した従来動作と同様であり、電子制御式踏切しゃ断機40に何の異常もない正常時の動作も、リレー監視プログラム44によって追加された上昇停止中照査や下降途中照査を除けば、既述した従来動作と同様なので、以下、リレー監視プログラム44による上昇停止中照査時の動作と下降途中照査時の動作を説明する。
【0072】
上昇停止中照査は(図3参照)、列車が踏切から離れていて遮断桿11が上昇停止位置にとどまっているときに所定周期で実行される。遮断桿11が上昇停止位置にとどまっているときには(時刻t30)、降下指令信号TERが上昇指示のオンで、モータ回転指令Smの指示が上昇で、遮断桿斜度θひいてはモータ回転情報Pmが垂直位置(鉛直位置)で、下降停止位置情報Slがオフで、上昇停止位置情報Suがオンで、リレー照査信号Scがオフ(“1”)で、降下時間監視リレーBRが動作状態(“1”)で、自重降下リレーDRも動作状態(“1”)で、リレー故障通知Erがオフ(“0”)になっている。
【0073】
この状態で、リレー照査の試行時期が到来すると(時刻t31)、リレー監視プログラム44によってリレー照査信号Scが数十ミリ秒の短時間だけ一時的にオン(“0”)にされ、それに応じてその期間だけ、リレー制御回路47が正常であれば、降下時間監視リレーBRが復旧状態(“0”)になり、さらに自重降下リレーDRも復旧状態(“0”)になる。そして、そのように降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも復旧すれば、リレー監視プログラム44によって、リレー制御回路47が正常であると判定され、リレー故障通知Erがオフ(“0”)の状態を維持する。また、上昇停止中照査の時間は極めて短いので、その間に遮断桿11が目視で判るほど明瞭に動くことはないため、見掛けの動作は従来と変わらないが、常時動作のリレーBR,DRが一時復旧にて負荷を軽減されるばかりか、リレー制御回路47が正常なのか故障しているのかまでも調べられる。
【0074】
そのような状態でリレー制御回路47が故障すると、例えば降下時間監視リレーBRが復旧不能になったとすると、次のリレー照査の試行時期に(時刻t32)、リレー照査信号Scが一時的にオン(“0”)になっても、、降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも動作状態(“1”)を維持し復旧状態(“0”)にならない。そうすると、リレー監視プログラム44によって、リレー制御回路47が故障したと判定され、リレー故障通知Erがオン(“1”)にされ、それが昇降制御プログラム43に通知されるとともに踏切制御装置にも通知される。
【0075】
リレー故障通知Erがオンになると、それを受けた昇降制御プログラム43によって強制下降制御が行われる。具体的には、降下指令信号TERがオンであろうとオフであろうとそれにはかまわず、モータ回転指令Smの指示が上昇停止位置から下降停止位置まで一定傾斜で下げられ、それに従って遮断桿11の遮断桿斜度θが垂直位置から水平位置へ定速で変化し、遮断桿11が下降停止位置まで下降して下降停止位置情報Slがオフ(“0”)からオン(“1”)になると、遮断桿11の下降が止められて遮断桿11が下降停止位置に保持される。
こうして、電子制御式踏切しゃ断機40では、リレー制御回路47の故障時にも、遮断桿11が下ろされて、フェールセーフ性が確保される。また、オンのリレー故障通知Erを受けた踏切制御装置や上位装置によってリレー制御回路47の修理が促される。
【0076】
下降途中照査は(図4参照)、列車が踏切に接近して遮断桿11が上昇停止位置から下降停止位置へ向けて下降したとき下降の途中で実行される。遮断桿11が上昇停止位置にあるときには、上述の如く、降下指令信号TERが上昇指示のオンで、モータ回転指令Smの指示が上昇で、遮断桿斜度θひいてはモータ回転情報Pmが垂直位置(鉛直位置)で、下降停止位置情報Slがオフで、上昇停止位置情報Suがオンで、リレー照査信号Scがオフ(“1”)で、降下時間監視リレーBRが動作状態(“1”)で、自重降下リレーDRも動作状態(“1”)で、回生抵抗断線通知Ecがオフ(“0”)になっている。
【0077】
この状態で、降下指令信号TERが上昇指示のオン(“1”)から下降指示のオフ(“0”)に転じると(時刻t40)、昇降制御プログラム43の通常の昇降制御であるフィードバック制御によって、モータ回転指令Smの指示が上昇停止位置から下降停止位置に向けて一定傾斜で下げられ、それに従って遮断桿11の遮断桿斜度θが垂直位置から水平位置に向けて定速で変化する。それと並行してコンデンサCaの電圧も下がり始めるが、ここでは電子制御回路42が正常なときの動作を説明しているので、コンデンサCaの電圧低下が降下時間監視リレーBRの復旧を引き起こすことにはならず、その前に遮断桿斜度θが閾値Th1になってリレー照査の試行時期が到来する(時刻t41)。
【0078】
リレー照査の試行時期が到来すると(時刻t41)、リレー監視プログラム44によってリレー照査信号Scが一時的にオン(“0”)にされ、それに応じてその期間だけ、リレー制御回路47が正常であれば、降下時間監視リレーBRが復旧状態(“0”)になり、さらに自重降下リレーDRも復旧状態(“0”)になるため、その期間は、遮断桿11の下降状態がフィードバック制御から外れて自重降下になる。そして、遮断桿斜度θが閾値Th2になると(時刻t42)、リレー照査信号Scが速やかにオフ(“1”)に戻され、それに応じて降下時間監視リレーBRも自重降下リレーDRも動作状態(“1”)に戻るため、遮断桿11の下降状態も自重降下からフィードバック制御に戻る。
【0079】
このように下降途中照査のリレー照査期間には、遮断桿11の下降制御がフィードバック制御から一時的に自重降下制御に切り替えられるが、回生抵抗23が断線しておらず回生抵抗23の制動が効く状態であれば、遮断桿11の下降速度は自重降下であってもフィードバック制御時の下降速度と大差ない(図4の実線の波形を参照)。そのように予め閾値Th1,Th2が選定されているためである。これに対し、回生抵抗23が断線していると、回生抵抗23の制動が効かないため、自重降下時の遮断桿11の下降速度がフィードバック制御時の下降速度より大きくなる(図4の二点鎖線の波形を参照)。そのため、遮断桿斜度θが閾値Th1から閾値Th2になるまでの経過時間Δtが、回生抵抗23の断線時には断線していないときより短くなる。
【0080】
閾値Th3には断線時の経過時間Δtと非断線時の経過時間Δtとの中間値が採用されているので、回生抵抗23が断線していると経過時間Δtが閾値Th3より小さくなり、その場合はリレー監視プログラム44によって回生抵抗23が断線していると正しく判定される。これに対し、回生抵抗23が断線していないときには、経過時間Δtが閾値Th3より大きくなるので、リレー監視プログラム44によって回生抵抗23が断線していないと正しく判定される。こうして、回生抵抗23に異常がないときには遮断桿11の下降状態についても従来とほとんど変わらないので踏切横断者等に気づかれることなく、遮断桿11の下降中に回生抵抗23の断線の有無まで調べられる。
【0081】
そして、回生抵抗23が断線して、リレー監視プログラム44によって、断線の判定が出されたときには、さらにリレー監視プログラム44によって、回生抵抗断線通知Ecがオン(“1”)にされ、それが踏切制御装置に通知される。
それから、それを受けた踏切制御装置やその上位装置によってリレー制御回路47の修理が促される。
【0082】
[その他]
上記実施例では、リレー監視プログラム44の上昇停止中照査によるリレー復旧不能検査が、降下時間監視リレーBRと自重降下リレーDRとの双方について作動状態を調べることで行われていたが、リレー制御回路47が正常であれば降下時間監視リレーBRの一時復旧に随伴して自重降下リレーDRも一時復旧することから、自重降下リレーDRの作動状態を調べるだけでもリレー制御回路47の故障を検知することができるので、降下時間監視リレーBRの作動状態を調べるのは省いても良い。
【0083】
上記実施例では、リレー監視プログラム44が、上昇停止中照査にてリレー復旧不能を検知したときにはリレー故障通知Erを踏切制御装置に送出し、下降途中照査にて回生抵抗23の断線を検知したときには回生抵抗断線通知Ecを踏切制御装置に送出するようになっていたが、それに代えて又はそれに加えて、リレー故障の警報や回生抵抗断線の警報を外部に発するようにしても良い。警報の具体例としては、アラーム音や、合成音声、警報灯の点滅、赤色ステータスランプの点灯、ディスプレイ表示などが挙げられる。
【0084】
上記実施例では、遮断桿斜度θの把握にモータ回転指令Smを用いていたが、それに代えて又はそれに加えてモータ回転情報Pmを用るようにしても良く、他に適当な位置センサ等があればそれを利用するようにしても良い。
上記実施例では、回生抵抗23がモータ駆動回路22に外付けされている態様を説明したが、回生抵抗23はモータ駆動回路22に内蔵されていても良い。
【0085】
上記実施例では、リレー監視プログラム44による上昇停止中照査の時間が比較的短いこともあって上昇停止中照査が開始後は中断することなく実行されるようになっていたが、上昇停止中照査の実行中に降下指令信号TERの指示が降下になったような場合には、リレー監視プログラム44による上昇停止中照査を打ち切って、昇降制御プログラム43による遮断桿11の昇降制御を優先実行させるようにしても良い。さらに、そのようにした場合、上昇停止中照査を打ち切って遮断桿昇降を実行した後では、一定周期での次の試行時期の到来を待たずに、打ち切り分の上昇停止中照査を再試行するのが好ましい。
【0086】
上記実施例では、リレー監視プログラム44の下降途中照査による回生抵抗23の断線検査が、遮断桿11の所定斜度降下時間Δtの大小に基づいて行われていたが、所定時間における遮断桿11の降下量(ΔθやΔPm)の大小に基づいて行うようにしても良い。例えば、上記実施例では遮断桿斜度θが閾値Th1から閾値Th2へ変化する期間が下降途中照査において自重降下を強制する期間になっていたが(図2ステップS22〜S25)、下降途中照査において自重降下を強制する期間を、数秒程度たとえば2〜3秒程度の一定時間にしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の電子制御式踏切しゃ断機は、バランサーを具備したものであれ、バランサーを具備していないものであれ、何れにも適用することができる。
また、上述したような遮断桿を揺動させるものに限らず、昇降制御と自重降下制御とを切り替えられる電子制御式踏切しゃ断機であれば、水平な姿勢を保ったまま遮断桿を昇降させるものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
10…電子制御式踏切しゃ断機、
11…遮断桿、12…遮断桿保持部、13…回転伝動部、
14…モータ(電動機)、15…回転検出器、16…下限検出器、
17…上限検出器、21…制御駆動部、22…モータ駆動回路、
23…回生抵抗、24…電流検出器、25…電子制御回路(MPU)、
26…昇降制御プログラム、27…故障診断プログラム、28…リレー制御回路、
40…電子制御式踏切しゃ断機、
41…制御駆動部、42…電子制御回路(MPU)、
43…昇降制御プログラム、44…リレー監視プログラム、
47…リレー制御回路、48…開閉部材(スイッチ,リレー)、
θ…遮断桿斜度、TER…降下指令信号、
Ra…抵抗、Ca…コンデンサ、BR…降下時間監視リレー、
DR…自重降下リレー、Sl…下降停止位置情報、Su…上昇停止位置情報、
Pm…モータ回転情報、Sm…モータ回転指令、Sc…リレー照査信号、
Sd…故障有無通知信号、Er…リレー故障通知、Ec…回生抵抗断線通知

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断桿を昇降させるモータと、このモータの回転駆動を行うモータ駆動回路と、外部から受けた降下指令信号に応じて前記モータ駆動回路へのモータ回転指令を生成することで前記遮断桿の昇降制御を行うとともに自回路の故障診断も行う電子制御回路と、常時動作のリレーからなり前記降下指令信号が降下を指示してから所定時間内に前記遮断桿が下降停止位置に到達すれば動作状態を維持するが到達しないときには復旧する降下時間監視リレーと、常時動作のリレーからなり前記降下時間監視リレーが復旧したときに加え前記電子制御回路が故障の診断結果を出したときにも復旧して前記モータ駆動回路にモータ駆動を停止させることで前記遮断桿を自重降下させる自重降下リレーとを備えた電子制御式踏切しゃ断機において、前記降下時間監視リレーを一時的に復旧させる試行を間欠的に行うリレー監視手段を前記電子制御回路に設けたことを特徴とする電子制御式踏切しゃ断機。
【請求項2】
前記リレー監視手段は、前記試行時に前記自重降下リレーの作動状態を調べて前記自重降下リレーが復旧したときには前記自重降下リレーも前記降下時間監視リレーも正常であると判定するが前記自重降下リレーが復旧しなかったときには前記自重降下リレーを含むリレー制御回路が故障したと判定するものである、又は、前記試行時に前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーの作動状態を調べて前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーが共に復旧したときには前記自重降下リレーも前記降下時間監視リレーも正常であると判定するが前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーの何れか一方もしくは双方が復旧しなかったときには前記自重降下リレー及び前記降下時間監視リレーを含むリレー制御回路が故障したと判定するものであることを特徴とする請求項1記載の電子制御式踏切しゃ断機。
【請求項3】
前記リレー監視手段は、前記試行時に前記リレー制御回路が故障したと判定したときには故障の通知または警報を外部に発するものであることを特徴とする請求項2記載の電子制御式踏切しゃ断機。
【請求項4】
前記リレー監視手段は、前記試行時に前記リレー制御回路が故障したと判定したときには前記降下指令信号の指示にかかわりなく前記遮断桿を下降させる強制下降制御を行うものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載された電子制御式踏切しゃ断機。
【請求項5】
前記リレー監視手段は、前記試行を前記遮断桿が上昇停止位置に来ているときに行うものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された電子制御式踏切しゃ断機。
【請求項6】
前記遮断桿の自重降下時に前記モータの起電力を放散して前記遮断桿の自重降下を制動する回生抵抗が前記モータ駆動回路に設けられており、前記リレー監視手段は、前記試行を前記遮断桿が下降している途中で行うとともに、そのときの前記遮断桿の下降状態を調べて、その下降状態と予め記憶保持している正常時の下降状態とを比較し、両状態の相違が許容範囲に収まっているときには前記回生抵抗が断線していないと判定するがそうでないときには前記回生抵抗が断線していると判定するようになっている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された電子制御式踏切しゃ断機。
【請求項7】
前記リレー監視手段は、前記試行時に前記回生抵抗が断線していると判定したときには断線の通知または警報を外部に発するものであることを特徴とする請求項6記載の電子制御式踏切しゃ断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−201270(P2012−201270A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68939(P2011−68939)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)