説明

電子天びん

【課題】風防の組立を容易にし、かつ、秤量室内にじゃまな柱を設けない。
【解決手段】天びん本体1から突き出た秤量皿2を取り囲むように下板3と上板4と前板5と後板6を設置する。上板4と下板3の間を後板6の外側に設置された結合棒8によって引きつけることによって前板5と後板6を挟み込み、秤量室の骨格を形成する。側板7は上板4と下板3の間に形成されている溝に沿って前後にスライドすることによって秤量室の引き戸となり、そこから試料の出し入れを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は試料の質量(重量)を測定する電子天びんに関し、特に質量を測定する際に周囲の風の影響を防ぐための風防が付属している電子天びんに関する。
【0002】
【従来の技術】電子天びんなどの精密なはかりは、そのはかりを設置している部屋の空気がわずかに動いただけでもその計量精度に影響をおよぼすため、従来から試料を載せるための秤量皿を囲むようにケースを設置し、空気の流れすなわち風を防ぐための風防とすることが行われている。この風防としては、はかりのケースと一体となった秤量室を設け、秤量室への試料の出し入れのために電動扉をつけたものや、中空体の角柱状または円柱状の筒を秤量皿を囲むように設置し、その上に上蓋を載せたような簡単なものまで様々な形のものが用いられている。
【0003】秤量皿の周囲を前後左右の板と上下の板で囲んで直方体形状の風防(すなわち秤量室)を形成する場合には、従来、上下の板を結ぶための4本の柱を設けこの柱と上下の板をネジなどで固定することが行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】天びんに備え付けられる風防は容積が大きいため天びんの出荷前の梱包された状態では分解されていることが多い。天びんを設置する際に風防も組み立てられるが、直方体形状の風防(秤量室)を形成する場合に、4本の柱を立てて上下の板を固定する従来の方法では、組立に使用するネジが多いので組み立てる際に手間がかかった。さらにまた、組み立てられた風防内にこの柱が存在すると重量測定作業の試料の出し入れの際にじゃまになることがあった。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、風防の組立が簡単であり、秤量室内に重量測定の際に障害となる柱などが存在しない電子天びんを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、上板と下板と前板と後板とスライド可能な左右の側板とからなる風防を有する電子天びんにおいて、前記後板の後ろ側に前記上板と下板との間を連結する連結棒を備え、この連結棒によって上板と下板の間に前板と後板を挟んで秤量室を形成したことを特徴とする。
【0007】上板と下板を連結棒によって結合するだけで風防の骨格部分が形成されるので組立が簡単である。しかも、この連結棒は後板のさらに後ろ側(すなわち風防によって形成される秤量室の外側)に位置しているので、秤量作業の時に障害となることがない。
【0008】なお、ここでいう電子天びんとは、電磁平衡型の電子天びんに限らず、ロードセルを用いた電子はかり等を含むものとする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の天びんを横から見た図である。天びん本体1には電磁平衡部などの天びん機構が内蔵されており、それから上方に重量を測定すべき試料が載せられる秤量皿2が突き出ている。天びん本体1の上部で秤量皿2の周りには、それを取り囲むように下板3と上板4と前板5と後板6と2枚の側板7からなる風防が取り付けられている。この風防に囲まれる空間が秤量室である。天びん正面(図1の左側)から見て左右にある2枚の側板7は下板3と上板4に形成されているスライド溝にはまりこんでおり、天びんの前後(図1の左右方向)に滑らせることができる。この側板7が秤量室に対して試料の出し入れを行う口となる引き戸である。風防を形成する6枚の板は互いに個別の板であるが、前板5は下板3に形成されている溝Bに差し込まれ、同様に後板6は溝Dに差し込まれており、さらに連結棒8が上板4と下板3を連結し引っ張ることによって前板5と後板6がそれらの板に挟まれて固定される。上板4には、下板3と同様に、前板5と後板6がはまりこむ溝がそれぞれ形成されている。
【0010】連結棒8は皿ネジ状の部材であり、図1の下側が皿ネジの頭、上側が雄ネジとなっている。それに対応するように下板3の下側面には皿ネジの頭がはまりこむザグリが形成されており、上板4には連結棒8の雄ネジと係合する雌ネジが形成されている。また、連結棒8は後板6のさらに後ろ側、すなわち、秤量室の外側の位置に配置されている。風防の組立は上板4と下板3の間に前板5と後板6を挟んで連結棒8をネジのようにしめることによって行う。このとき後板6の高さを前板5の高さより若干小さくすることでほとんどの引きつけ力は前板5にかかり、組立後に上板5の前端部(A部)を持ち上げようとしても風防がばらばらになることはない。そして、それを天びん本体1の上部に取り付けた後に2枚の側板7を後ろから差し込むが、側板7の高さを後板6の高さより小さくすることで、側板7は前後にスライド可能とすることができる。
【0011】図2は風防の組立の様子を示す見取り図であり、上板4を除いて描いてある。前板5は下板3に形成された溝Bに差し込まれ、後板6は溝Dに差し込まれ、連結棒8が下板3にあけられた穴Eを通って上板4(図示していない)と下板3とを引っ張って連結する。上下の板を連結棒8によって引っ張るときにより安定性を増すために、後板6は上から見てコの字形をしている。そして、後板6のうち連結棒8より秤量室側にある6aの部分の高さを6bの部分の高さよりも若干低くすればより確実に前板5を上下の板の間に挟むことができる。両側の側板7の高さは前板5と後板6の高さより少し小さめに作られて下板3の溝Cにはめ込まれ、前後方向(G方向)にスライドする。側板7には手動によりスライドさせるためのトッテ7aが形成される。
【0012】図3は下板3を上から見た図であり、前板5などを差し込む溝の様子を示している。前板5は溝Bに差し込まれ、後板6は溝Dに差し込まれる。溝Dの形状は後板6の形状に合わせてコの字形に形成されている。溝Cは側板7が差し込まれる溝でありその幅は側板7の厚みより大きく形成されているので、側板7は溝Cの中を自由にスライドできるようになっている。また、溝Cは下板3の後端部まで貫通しているので、風防が組み立てられた後に側板7を後ろ側から差し込むことができ、また、側板7をスライドさせて試料の出し入れ口を開口するときに十分に大きく開くようになっている。なお、符号Eは連結棒8を通すための穴であり、符号Fは秤量皿2を載せるための荷重軸を通すための穴である。
【0013】上述の説明で、上板にも前板と後板を差し込む溝を形成するとしたが、この溝は上下の板の両方に必ず必要というわけではなく、片方の板に形成されていれば十分である。また、下板は天びん本体の上面が兼用されてもよい。
【0014】連結棒についてはいろいろな変形が可能であり、上述の実施例では、2本使用するようにしたが、最小限では1本でもよい。また連結棒は下板の下側から差し込んでネジを締めるような形状としたが、これを上板の上側から差し込むようにしてもよい。さらに連結棒は上板と下板を引きつける役割を果たせばよいので、ネジを使うことや皿ネジのような形状に限定されることなく、例えばカギ状の金具で上板と下板を引きつけるようにしてもよい。
【0015】前板と後板についても変形が可能である。図4(a)に示すように、前板を板部5aとその左右に配置される柱部を組み合わせて構成してもよい。このようにすることによって風防を組み立てたときの見栄えをよくすることができる。さらにこの柱部5bの板部5aを差し込む以外の溝はスライドする側板の先端を差し込むポケットとすることができる。柱部5bとしては図4(b)に上から見た図を示すように断面がL字型の形状でもよい。また、図2では後板を上から見るとコの字形状である例を示したが、この形状は全体がつながったロの字形状(すなわち後板が角柱状の板からなるもの)でもよいし、ロの字の最後部の一辺の中心部を欠いた形状でもよい。
【0016】
【発明の効果】本発明の電子天びんは、風防を組み立てるのに上板と下板を連結棒によって結合するだけですむので、その組立が簡単である。しかも、この連結棒は風防によって形成される秤量室の外側に位置しているので、秤量作業の時に障害となることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子天びんの一実施例である。
【図2】本発明の電子天びんの風防部分の組立の様子を示す図である。
【図3】本発明の電子天びんの風防の下板に形成された溝を示す図である。
【図4】風防の前板の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1…天びん本体 2…秤量皿
3…下板 4…上板
5…前板 6…後板
7…側板 8…結合棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上板と下板と前板と後板とスライド可能な左右の側板とからなる風防を有する電子天びんにおいて、前記後板の後ろ側に前記上板と下板との間を連結する連結棒を備え、この連結棒によって上板と下板の間に前板と後板を挟んで秤量室を形成したことを特徴とする電子天びん。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開平10−239139
【公開日】平成10年(1998)9月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−45757
【出願日】平成9年(1997)2月28日
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)