説明

電子式キャッシュレジスター・システム

【課題】電子式キャッシュレジスター本体とキャッシュドロアーとの特定の組み合わせに限ってドロアーの開放がなされるようにしセキュリティーを確保する。
【解決手段】金銭処理を行う本体11と本体に着脱または接続可能なキャッシュドロアー61とで構成する。本体は、キャッシュドロアーが装着または接続された状態で照合コードを生成し、照合コードをキャッシュドロアーへ通知し、キャッシュドロアーは通知された照合コードを格納する。キャッシュドロアーの開放は照合コードが付加された開放要求を本体制御部13からキャッシュドロアーに通知し、キャッシュドロアーの制御部63は、開放要求に付加された照合コードが一致するときはドロアー部を開放し、一致しないときは開放しないように制御。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体と前記本体に着脱または接続可能な少なくとも一つのキャッシュドロアーを含んでなる電子式キャッシュレジスター・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金銭の出納処理を行う電子式キャッシュレジスターの中には、金銭処理を行う本体に対して金銭を収容するキャッシュドロアーが着脱または接続可能な態様のものがある。この場合一般に、キャッシュドロアーは、電子式キャッシュレジスターの一部を構成するユニットもしくはオプションとして扱われる。そして、本体とキャッシュドロアーとの間は本体からキャッシュドロアーに電源を供給する電源線によって接続される。
【0003】
キャッシュドロアーは金銭を収容するドロアーを有し、本体からの電源は、非励磁状態でそのドロアーが閉じた状態にロックし励磁されると前記ドロアーを開放するドロアーソレノイドに接続される。
【0004】
本体は、前記電源線を介してキャッシュドロアーに供給するドロアー電源部を有する。そのドロアー電源部より電力が供給されると、ドロアーソレノイドが励磁されてドロアーを開放する。その状態でドロアーに収容された硬貨や貨幣などが取り出し可能な状態になる。本体は、金銭の出納処理などに応じてドロアー電源部の電力供給を制御する。
なお、ここでいう電子式キャッシュレジスターは、通信を介してサーバーや他の端末と接続されるPOS端末や単体のキャッシュレジスターを含む。
【0005】
本体が複数のキャッシュドロアーを制御する技術に関し以下のものが知られている。例えば、複数の個々のドロアーに番号が付与されており、取引に応じて開放するドロアー番号を指定して選択的に開放する技術がある。具体的には、電子レジスターのドロアー収納ケ−スに、例えば、現金が収納される4個のドロアー1a〜1dと商品券、小切手などの現金以外の金種を収納する4個のドロアー1A〜1Dが設けられている。そして、ドロアー1a、1Aを責任者AとEに、ドロアー1b、1B等もそれぞれ責任者が割当てられている。それらの割り当ては責任者別メモリー9bに記憶されている。顧客の登録処理を行うと、取引別キーに対応する取引別メモリー9aと責任者別キーに対応する責任者別メモリー9bとに金額の累計処理が行われる。次いで、取引別および責任者別に応じたドロアーナンバデ−タを読み出し、解読した結果をドロアーバツフアAにセツトする。これによりドロアー1a〜1Dの中の1つが開放されて処理が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
他の技術として、操作入力したオペレーター番号と予め記憶されている番号との一致によりドロアーを開放するものがある。具体的には、両替の為にドロアーを開放したい時はまずオペレーター番号を入力し、次に「両替」キーを押下する。マイクロプロセツサは、入力されたオペレーター番号と開局時又は交替時にメモリーに格納されたオペレーター番号とを比較する。両者が一致する場合、ドロアー開放のコマンドを出し、それに応答してドロアーを開放する。一致しない場合は操作ミスと見做し、カウンタ値を一つ増加させる。カウンタ値が所定値を越えるとマイクロプロセツサはホストコンピユ−タに異常発生を報告する。これによりPOSシステムの安全性を高める技術である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−207172号公報
【特許文献2】特開昭62−165298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、キャッシュドロアーにはある程度の金銭が格納されている。しかし、装着または接続された本体を識別して開放の可否を判断し、あるいは、本体とのペアリングを管理することができない。このため、コネクタ形状や信号形式さえ合致すればどの本体に装着されまたは接続されても開放されてしまう。この観点から、キャッシュドロアーのセキュリティーが十分とはいえなかった。
【0009】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、特定の本体と特定のキャッシュドロアーとの組み合わせに限ってドロアーの開放がなされるようにし、キャッシュドロアーのセキュリティーが確保されるようにした電子式キャッシュレジスター・システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、金銭処理を行う本体と前記本体に着脱または接続可能な少なくとも一つのキャッシュドロアーとを含んでなり、前記本体は、(a1)前記キャッシュドロアーが装着または接続された状態で照合コードを生成し格納するコード生成部と、(a2)生成された照合コードを前記キャッシュドロアーへ通知し、キャッシュドロアーを開放すべきときに前記照合コードが付加された開放要求を送出する本体制御部とを備え、前記キャッシュドロアーは、(b1)通知された照合コードを格納する格納部と、(b2)金銭を収容するドロアー部と、(b3)本体からの開放要求に応答してドロアー部の開放を制御するドロアー制御部とを備え、前記ドロアー制御部は、前記開放要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときはドロアー部を開放し一致しないときは開放しないように制御することを特徴とする電子式キャッシュレジスター・システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明の電子式キャッシュレジスター・システムにおいて、前記ドロアー制御部は、前記開放要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときはドロアー部を開放し一致しないときは開放しないように制御するので、特定の本体と特定のキャッシュドロアーとの組み合わせに限ってドロアーの開放がなされるようにし、キャッシュドロアーのセキュリティーが確保されるようにする。
【0012】
この発明において、本体は、オペレーターが操作し、売上入力や入出金、レシート印刷、領収書印刷などを行うものである。
照合コードは、特定の本体と特定のキャッシュドロアーとの組み合わせに限ってドロアーの開放がなされるようにするために照合されるべきコードであり、数字、文字および/または記号の組み合わせからなるデータである。後述する実施形態においては、数字を組み合わせた番号のデータとしている。
【0013】
本体制御部、ドロアー制御部は、いずれもCPUまたはマイクロコンピュータ(以下、単にCPUという)、ROM、RAMおよびインターフェイス回路から構成される。ROMは、前記CPUが実行すべきプログラムを格納する。RAMはワークエリアを提供する。インターフェイス回路は入力を受け付けおよび/または負荷を制御する入出力回路と前記CPUとの間のインターフェイスである。
【0014】
本体のコード生成部は、例えば、乱数として照合コードを発生する乱数発生器と発生した照合コードを格納する不揮発性メモリーから構成される。なお、前記不揮発性メモリーは本体制御部を構成する不揮発性記憶装置の一部を用いてもよい。
【0015】
キャッシュドロアーの格納部は、不揮発性メモリーから構成される。なお、前記不揮発性メモリーはドロアー制御部を構成する不揮発性記憶装置の一部を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の電子式キャッシュレジスター・システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明のシステムにおいて本体に複数のキャッシュドロアーが接続される態様を示す説明図である。
【図3】この発明において、電線線を用いて開放要求など情報を送る信号波形の一例を示す説明図である。
【図4】この発明に係る照合コードの登録処理を示す説明図である。
【図5】この発明のシステムにおいて、照合コードの登録が行われた後、ドロアーの開放を説明する説明図である。
【図6】この発明に係る照合コードの消去処理を示す説明図である。
【図7】この発明における本体制御部の処理を示すフローチャートである。
【図8】この発明におけるドロアー制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の好ましい態様について説明する。
前記格納部はキャッシュドロアーに固有の識別子を予め格納し、前記本体制御部は、本体に複数のキャッシュドロアーが接続されているときは開放を要求するキャッシュドロアーの識別子を前記開放要求に付加し、前記ドロアー制御部は、前記開放要求に付加された識別子が格納部に予め格納された識別子と一致しかつ前記開放要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときはドロアー部を開放し前記識別子または前記照合コードが一致しないときはドロアー部を開放しないように制御してもよい。
このようにすれば、本体に複数のキャッシュドロアーが接続された場合に識別子が一致するキャッシュドロアーのドロアーのみを開放させることができる。例えば、店員の権限に応じて開放できるドロアーやその数を異ならせることができる。
【0018】
また、前記ドロアー制御部は、照合コードが前記格納部に予め格納されていない状態で前記開放要求を受領したとき、照合コードの一致を判断することなくドロアー部を開放するように制御してもよい。このようにすれば、照合コードが格納されていない状態のキャッシュドロアーは、従来と同様、コネクタ形状や信号形式さえ合致すればどの本体に装着されまたは接続されても使用可能であるので、ユーザー側の用途に応じて照合コードを用いるか否かを使い分けることができる。
【0019】
さらにまた、前記ドロアー制御部は、照合コードが前記格納部に予め格納されていない状態で前記開放要求を受領したとき、照合コードが格納されていない旨を本体に通知してもよい。このようにすれば、照合コードの登録をユーザーが忘れていた場合にそれを知らせることができる。
【0020】
前記本体と前記キャッシュドロアーとは、本体からキャッシュドロアーへ電源を供給するための電源線で接続されてなり、前記本体制御部は、生成された照合コードおよび前記開放要求を前記電源線に信号として送出するように制御してもよい。このようにすれば、従来から用いられている電源線を用いて照合コードを伝達でき、余分なハードウェアの追加が不要であるので、ユーザーにコスト的な負担をかけず、また接続も複雑化しない。
【0021】
また、前記本体制御部は、オペレーターの指示に応答し、前記格納部に格納された照合コードを消去させる消去要求をその照合コードを付加して送出し、前記ドロアー制御部は、受領した消去要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときは消去を実行し一致しないときは消去しないようにしてもよい。このようにすれば、意図した照合コードが消去の対象になっているか否かをユーザーが確認した後に消去が実行されるので、意図しない照合コードが誤って消去されるのを防止できる。
【0022】
さらにまた、前記本体制御部は、生成された照合コードを前記キャッシュドロアーへ通知する際その照合コードにドロアー部の開放要求を付加し、オペレーターによるドロアー部開放の確認入力を受け付けて前記キャッシュドロアーへ通知し、前記ドロアー制御部は、受領した照合コードを格納部に格納する前に前記開放要求に応答してドロアー部を開放し、前記確認入力を受け付けた旨が本体制御部から通知されるのを待って前記照合コードを格納部へ登録してもよい。このようにすれば、意図したキャッシュドロアーが登録の対象になっているか否かをユーザーが確認した後に登録が実行されるので、意図しないキャッシュドロアーに照合コードが誤って登録されることがない。
【0023】
前記本体制御部は、消去要求を前記キャッシュドロアーへ通知する際その消去要求にドロアー部の開放要求を付加し、オペレーターによるドロアー部開放の確認入力を受け付けて前記キャッシュドロアーへ通知し、前記ドロアー制御部は、照合コードを消去する前に前記開放要求に応答してドロアー部を開放し、前記確認入力を受け付けた旨が本体制御部から通知されるのを待って前記照合コードの消去を実行してもよい。このようにすれば、意図したキャッシュドロアーが消去の対象になっているか否かをユーザーが確認した後に消去が実行されるので、意図しないキャッシュドロアーの照合コードが誤って消去されることがない。
【0024】
また、照合コード生成部は、乱数発生器を用いて照合コードを生成してもよい。乱数発生器を用いてランダムに照合コードを生成することにより、一つの本体に装着または接続される個々のキャッシュドロアーに対し異なる照合コードを容易かつ確実に生成することができる。
ここで示した種々の好ましい態様は、それら複数を組み合わせることもできる。
【0025】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
≪システムの構成≫
図1は、この発明の電子式キャッシュレジスター・システムの主として電気的な構成を示すブロック図である。図1に示すように、前記システムは、大別して本体11とキャッシュドロアー61とから構成され、それらは電源線41で接続されている。あるいは、変形例として本体11とキャッシュドロアー61とは着脱可能であって、本体11にキャッシュドロアー61が装着されるとその間で図示しないコネクタが嵌合し、コネクタ端子を介して本体11からキャッシュドロアー61に電源が供給されるように構成されてもよい。
ここで、本体11は、電子キャッシュレジスター端末あるいはECR端末とも呼ばれる。
【0026】
本体11は、本体制御部13、入力部15、表示部17、プリンタ部、コード生成部21、ドロアー電源部27を含む。
本体制御部13は、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力のインターフェイス回路などのハードウェアから構成され、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することによりその機能が実現される。
【0027】
入力部15は、本体制御部13がオペレーターの金銭処理に係る操作を受け付けるための種々の操作キーから構成される。図1に示す操作キーのうちで登録キーは、コード生成部21に照合コードを生成させ、さらに前記照合コードを不揮発性記憶装置25および格納部65へ登録するようにオペレーターが指示を入力するためのものである。クリアキーは、登録された前記照合コードを消去する指示を入力するためのものである。オープンキーは、ドロアー部71を開放する指示をオペレーターが入力するためのものである。商品入力キーは、金銭処理に係る商品を入力するためのものである。テンキーは、ゼロから9までの数字を入力するためのものである。オープン確認キーは、照合コードの登録時および/または消去時に確認のためドロアー部71を開放する態様において、開放を確認した旨をオペレーターが入力するためのものである。オープン未確認キーは、前記態様において開放が確認できなかった旨をオペレーターが入力するためのものである。
【0028】
表示部17は、本体制御部13が実行した金銭処理の結果などを表示するものである。例えば、液晶表示装置が用いられる。
プリンタ部19は、金銭処理の結果が印刷されたレシートを出力する。
コード生成部21は、乱数発生器23と不揮発性記憶装置27を備える。不揮発性記憶装置27としては、例えば、フラッシュメモリーが用いられる。本体11にキャッシュドロアー61が装着または接続された状態で、前記登録キーがオペレーターによって押下されると、本体制御部13はその操作に応答してコード生成部21に照合コードを生成させる。照合コードの生成は、乱数発生器23を用いて行われる。よって、生成を実行する毎に、異なる照合コードが無作為に生成される。生成された照合コードは不揮発性記憶装置25に格納される。
【0029】
なお、本体に複数のキャッシュドロアーが接続される場合、各キャッシュドロアーに固有の識別子と照合コードとが対応付けて格納される。ここで、識別子はあるシステム内のキャッシュドロアーについて重複しなければよく、他のシステムで同じ識別子が用いられてもよい。よって、図2の例では、識別子はたかだか一桁の数字で足りる。また、システム内のあるキャッシュドロアーを交換する場合、交換の前後を通じて同じ識別子を用いてもよい。つまり、本体に同時に接続される複数のキャッシュドロアーの識別子が重複しなければ足りる。これに対して、照合コードは、本体とキャッシュドロアーの組合せを限定するためのものであるので、交換の前後を通じて同じ値にならないように考慮される。具体的には、組み合わせの数が十分多い数字、文字および/または記号が用いられ、重複が実質的に生じないよう考慮される。
【0030】
ドロアー電源部27は、本体制御部13の指示に基づきキャッシュドロアー61へ電力を供給する。この実施形態では、本体制御部13からドロアー制御部63への信号が電源電圧に重畳される。
【0031】
本体11とキャッシュドロアー61とを接続する電源線41は、接地電位のグランド線41aおよび所定の電源電圧を供給するドロアー電源線41bからなる。所定の電源電圧は、この実施例において直流24Vである。
【0032】
キャッシュドロアー61は、紙幣や硬貨を保管する為の装置であり、ドロアー制御部63、格納部65、駆動スイッチ67、ドロアーソレノイド69およびドロアー部71を含む。金銭は、キャッシュドロアー61の筐体から引き出し可能に構成されたドロアー部71に収納される。
【0033】
ドロアー部71には図示しないロック機構が設けられ、通常は筐体内に収容された状態で前記ロック機構によりロックされて金銭を出し入れできない。しかし、ドロアーソレノイド69が励磁されると前記ロック機構が解除され、ドロアー部71は図示しないバネの力で筐体から引き出されて開放される。開放されるとドロアー部71に収容された金銭が出し入れできる状態になる。オペレーターがバネの力に抗してドロアー部71を筐体内に押し込むと、再びロックされる。
【0034】
ドロアーソレノイド69の励磁コイルの一端は、駆動スイッチ67を経てドロアー電源線41bに接続される。他端はグランド線に接続されている。駆動スイッチ67は、ドロアー制御部63が非動作中は開状態であるが、ドロアー制御部63の動作中はドロアー制御部63によって開閉制御される。ドロアー制御部63および格納部65は、ドロアー電源線41bに24Vが印加された状態で動作するが、ドロアー電源線41bが接地電位の状態では動作しない。ただし、図3に示すように、ドロアー電源線41bには信号が重畳される。信号が重畳されるとき、ドロアー電源線41bの電圧はごく短い期間接地電位になることがある。このようにごく短い期間については、ドロアー制御部63が図示しない電圧平滑回路を有しているので継続的に動作する。本体制御部13は、ドロアー制御部63を動作させる場合、まずドロアー電源線41bに24Vが印加されるようドロアー電源部27を制御する。ドロアー制御部63が動作すると、駆動スイッチ67を閉じてドロアーソレノイド69を励磁してドロアー部71を開放したり、格納部65のデータの読み書きを行ったりする。
【0035】
図1は、本体に対して一つのキャッシュレジスターが接続される態様を示している。それほかに、本体に複数のキャッシュレジスターが接続される態様がある。
図2は、この発明のシステムにおいて本体に複数のキャッシュドロアーが接続される態様を示す説明図である。図2で、本体11には3つのキャッシュドロアー61a、61bおよび61cが接続されている。それぞれのキャッシュドロアーは、図1に示すキャッシュドロアー61と同じ構成である。
【0036】
図2のキャッシュドロアー61aの格納部65aには、そのキャッシュドロアーに固有の識別子として「1」が、照合コードとして「XXX」が格納されている。キャッシュドロアー61bの格納部65bには、そのキャッシュドロアーに固有の識別子として「2」が、照合コードとして「YYY」が格納されている。キャッシュドロアー61cの格納部65cには、そのキャッシュドロアーに固有の識別子として「3」が、照合コードとして「ZZZ」が格納されている。
本体11は、図1と同じ構成である。本体11の不揮発性記憶装置には、キャッシュドロアー61a、61bおよび61cのそれぞれに対応する識別子と照合コードが互いに関連付けられて格納されている。
【0037】
図3は、この発明において、電源線41を用いてドロアー開放など情報を伝達する信号波形の一例を示す説明図である。図3(b)は、ドロアー電源線41bの電圧の変化を示し、図3(a)は伝達される情報の形式を示す。図3(b)に示す様に、ドロアー電源線41bの電圧は、通常は接地電位(ゼロ)である。ドロアー制御部63を起動してドロアー部71の開放等の処理を実行させる場合は24Vが印加される。ただし、ドロアー制御部63へ情報を伝達するときは、接地電位と24Vの2値の状態をとる。
【0038】
より具体的には、図3は、本体制御部13がドロアー71を開放させる場合の例である。本体制御部13は、まず、ドロアー制御部61を起動させるためにドロアー電源線41bに24Vの電圧を印加するようにドロアー電源部27を制御する。それから所定時間経過後、本体制御部13は、ドロアー制御部61に伝達すべき情報の信号を電源電圧に重畳する。なお、1本の信号線で情報を伝達する技術は、周知のシリアル通信技術を適用して実現可能である。よって詳細な説明は省略するが、信号形式の一例を、図3(a)に示している。前記信号は、4つの部分からなる。
【0039】
第1の部分はその情報を受信したキャッシュドロアーがどのような動作をすべきかの指示を示す部分である。図3の例ではドロアー制御信号、即ち、ドロアーソレノイドを駆動してドロアー部71のロック解除を指示する信号である。その他として、照合コードの登録、消去を指示する信号がある。
【0040】
第2の部分は、前記指示を実行すべきキャッシュドロアーを指定する識別子である。識別子は、システム内のキャッシュドロアーに固有の値である。例えば、図2の接続態様において識別子の値が「2」であるとすると、キャッシュドロアー61bのみがドロアー制御信号の指示を実行し、他のキャッシュドロアー61aおよび61cは指示を無視する。
【0041】
第3の部分は本体とキャッシュドロアーとが所定の組み合わせか否かを確認するための照合コードである。図2の接続態様において、識別子が「2」かつ照合コードが「YYY」である場合を例に説明する。この信号を受領したキャッシュドロアー61bのドロアー制御部は、識別子「2」が自身を特定していると判断する。そして次に、照合コード「YYY」を格納部65bに予め格納された昇降コードと照合する。格納部65bに予め格納された照合コードは「YYY」であるので、両者は一致する。よって、ドロアー制御部は、ドロアーの開放を行なう。
【0042】
ここで仮に、伝達された情報の内容が識別子「2」かつ照合コード「AAA」であった場合、「AAA」は格納部65bに予め格納された照合コード「YYY」と一致しない。よって、ドロアー制御部は、前記指示を無視する。あるいは、不一致である旨を報知してもよい。報知は、例えば、キャッシュドロアーに表示用のランプやスピーカーなどを設けてオペレーターに知らせてもよい。
【0043】
あるいは、本体制御部13がキャッシュドロアー側から通知を受け、その通知に応じた表示を表示部17に行うようにしてもよい。ただし、この場合、キャッシュドロアー側から本体側へ電源線を介して通知の信号を送ることができるように構成されていることが前提である。そのためには、ドロアー制御部の指示に基づきドロアー電源線41bを駆動する回路がキャッシュドロアーに設けられており、駆動されたドロアー電源線41bの電圧変化を本体制御部13が検出できるようにインターフェイス回路が設けられていればよい。そうすれば、ドロアー制御部63から本体制御部13への通知ができる。
以上のように、照合コードの照合により、本体とキャッシュドロアーとが所定の組み合わせでなければ、ドロアーの開放が行われない。よって、本体とキャッシュドロアーの組合せに関してセキュリティーが確保される。
【0044】
第4の部分は、ドロアーソレノイド69に励磁エネルギーを供給するドロアーオープン信号である。ドロアーオープン信号の期間内にドロアー制御部63は、識別子および照合コードの一致を確認し、ドロアー制御信号に応答して駆動スイッチ67を閉じる。すると、ドロアーソレノイド69に24Vの電圧が印加されて励磁され、ドロアー部71が開放される。
ドロアーオープン信号の期間が終了すると、ドロアー電源線41bの電圧は接地電位になる。ドロアー制御部63への電源供給は停止し、その動作が停止する。
【0045】
次に、照合コードの管理について説明する。図1に示す様に、照合コードは、本体11の乱数発生器23を用いて無作為に生成される。照合コードの生成および登録、照合、消去の処理について説明する。
照合コードは、使用状態で本体11とキャッシュドロアー61とが接続または装着されるときにその組み合わせを排他的に管理するために用いられる。照合コードの生成は、市場で本体とキャッシュドロアーとが実際に接続または装着された後、その状態で生成し、前記本体およびキャッシュドロアーにそれぞれ格納される。以降、両者の一致を判定するためである。
【0046】
≪照合コードの登録≫
図4は、この発明に係る照合コードの登録処理を示す説明図である。前述のように、市場で本体とキャッシュドロアーとが接続または装着された状態で、入力部15の登録キーが押下されると、本体制御部13は、それに応答してコード生成部21に照合コードを生成させる。図2のように本体に複数のキャッシュドロアーが接続されている場合、いずれのキャッシュドロアーとの組み合わせに係る照合コードを生成するかを決定しなければならない。そこで、テンキーにより識別子の入力を受け付け、その識別子で指定されるキャッシュドロアーとの組み合わせに対して照合コードを生成するようにしてもよい。
【0047】
この実施形態で、照合コードは、乱数発生器23が発生する不作為の数字、文字および/または記号の組み合わせからなる。本体制御部13は、生成された照合コードを本体11の不揮発性記憶装置25に格納する。その際、識別子と対応付けて格納する。さらに、ドロアー電源部27を制御して24Vを印加し、ドロアー制御部63を起動する。起動後、照合コードの登録信号をキャッシュドロアー61へ送出する。信号の形式は、図3のごとくであるが、図3の「ドロアー制御」信号に代えて図4に示すように「登録」信号とする。図4の例では、識別子が「ドロアー1」、照合コードが「XXX」である。
【0048】
ドロアー制御部63は、本体11から登録信号を受けると、その信号に含まれる識別子を格納部65に予め格納された識別子と比較する。両者が一致すれば、「登録」の指示に従って処理を開始する。即ち、未だ照合コードが格納部65に登録されていない状態であることを確認し、登録信号に含まれる照合コード「XXX」を格納部65に登録する。
【0049】
≪登録後のドロアー制御≫
図5は、この発明のシステムにおいて、照合コードの登録が行われた後、ドロアーの開放を説明する説明図である。図5(a)は、本体とキャッシュドロアーとが正規の組み合わせの場合を示し、図5(b)は、正規の組み合わせでない場合を示す。
まず、図5(a)について説明する。本体11aの本体制御部は、金銭処理の結果キャッシュドロアー61aの開放を指示したとする。前記本体制御部は、ドロアー電源部を制御して24Vを印加し、各キャッシュドロアー61a、61bおよび61cのドロアー制御部を起動する。その状態で、図3に示す一連の信号を送出する。この場合、ドロアー開放の対象は「ドロアー1」、即ち識別子が「1」であり、照合コードは「XXX」である。
【0050】
各キャッシュドロアー61a、61bおよび61cのドロアー制御部は、本体11aから送られた信号を受ける。そして、その信号に含まれる識別子と格納部に予め格納された識別子とを比較する。両者が一致するキャッシュドロアー61aのドロアー制御部は、ドロアー開放の処理を開始する。まず、信号に含まれる照合コードと既に格納部に格納されている照合コードとを比較する。両者が「XXX」で一致するので、駆動スイッチを閉じ、ドロアー部を開放する。
【0051】
一方、キャッシュドロアー61bおよび61cのドロアー制御部は、本体11aからの信号の識別子「1」と格納部に予め格納された識別子とをそれぞれ比較するが、両者は一致しない。よってその信号を無視する。ドロアーの開放は行われない。
【0052】
以上が、図5(a)の説明である。なお、照合コードは、オペレーターの使用権限を定めるために用いることもできる。その態様について説明する。即ち、システム管理者等、限られた者だけが不揮発性記憶装置25に格納された照合コードを閲覧できるようにプロテクトをしておく。例えば、パスワード入力要求によるプロテクトである。照合コードが閲覧できるシステム管理者は、オペレーターAのみに識別子1に対応付けられた照合コードXXXを教える。別のオペレーターBには、識別子1の照合コードXXXと識別子2の照合コードYYYを教える。このような照合コードの人為的管理によって、キャッシュドロアーに対するオペレーターの使用権限を定める。一方、本体11aの本体制御部は、金銭処理の開始に際して、オペレーターが知っている照合コードの入力を求めるようにする。そして、入力された照合コードと一致するキャッシュドロアーのみ開放を指示することにする。
【0053】
そうすると、処理開始時に照合コードXXXを入力したオペレーターAは、識別子1のキャッシュドロアー61aを開放できるが、識別子2、3のキャッシュドロアー61bおよび61cは開放できないことになる。処理開始時に照合コードXXXとYYYを入力したオペレーターAは、識別子1と2のキャッシュドロアー61aおよび61bを開放できるが、識別子3のキャッシュドロアー61cは開放できないことになる。つまり、オペレーターAは、キャッシュドロアー61aの使用権限のみを有し、オペレーターBは、キャッシュドロアー61aおよび61bの使用権限を有する。
【0054】
次に、図5(b)について説明する。図5(b)は、図5(a)のキャッシュドロアー61cを異なる本体11bに接続しなおしたときの様子を示す。本体11bは、本体11aと別のシステムに使用されており、その不揮発性記憶装置には、識別子1に対して照合コードAAAが、識別子2に対して照合コードBBBが、識別子3に対して照合コードCCCがそれぞれ格納されているとする。本体11bに図5(a)のキャッシュドロアー61cを接続すると、偶然にも識別子3は本体11bとキャッシュドロアー61cとの間で一致する。識別子はたかだか一桁の数字だからである。オペレーターが金銭処理を行い、本体11bの本体制御部が識別子3のドロアーの開放を指示したとする。ドロアー開放の信号が送出される(図3参照)。この場合、ドロアー開放の対象は「ドロアー3」、即ち識別子「3」であり、照合コードはそれに対応付けられた「CCC」である。
【0055】
キャッシュドロアー61cのドロアー制御部は、本体11bから送られた信号を受けると、その信号に含まれる識別子「3」と格納部に予め格納された識別子「3」とを比較する。両者は偶然一致するので、ドロアー開放の処理を開始する。そして次に、信号に含まれる照合コード「CCC」と格納部に格納されている照合コード「ZZZ」とを比較する。両者は一致しないので、その信号を無視する。ドロアー部は開放されない。
【0056】
即ち、正規の組合せでない本体11bは、キャッシュドロアー61cを開放することはできない。正規の組合せである本体11aのみがキャッシュドロアー61cを開放することができる。正規の組合せとは、照合コードの登録を行ったときの組合せである。以上のように、本体とキャッシュドロアーとの組合せに関してキャッシュドロアーのセキュリティーが確保される。
【0057】
≪照合コードの消去≫
登録された照合コードの消去について説明する。本体とキャッシュドロアーとの組合せを変更する場合は、登録された合コードの消去を行った後、新たに登録しなければならないように制約を課す。つまり、セキュリティーの観点から、正規の組合せでないにもかかわらず、照合コードの消去が行えるのは好ましくない。そこで、本体とキャッシュドロアーとが正規の組合せにある状態に限って登録された照合コードの消去ができるようにする。
図6は、この発明に係る照合コードの消去処理を示す説明図である。前述のように、正規の組合せの本体とキャッシュドロアーとが接続または装着された状態で、入力部15のクリアキーが押下されると、本体制御部13は、それに応答してドロアー電源部27を制御して給電しドロアー制御部63を起動する。その状態で、照合コード消去の信号をキャッシュドロアー61へ送出する。前記信号の形式は、図3と同様であるが、図3の「ドロアー制御」信号に代えて図6に示す「消去」信号とする。図6の例では、識別子が「ドロアー1」、照合コードが「XXX」である。
【0058】
ドロアー制御部63は、本体11からの信号を受けると、識別子の一致を確認した後、その信号に含まれる照合コードXXXを格納部65に予め格納された照合コードXXXと比較する。両者が一致するので格納部の照合コードを消去する。照合コードが不一致の場合は、この信号を無視する。消去が成功すると、ドロアー制御部63は、その旨を報知する。報知は、例えば、キャッシュドロアーに表示用のランプやスピーカーなどを設けてオペレーターに知らせるようにしてもよい。報知を確認したオペレーターが所定の操作、例えば、クリアキーの再押下を行うと、本体11の不揮発性記憶装置25に格納された照合コードXXXが消去される。
【0059】
あるいは、キャッシュドロアー側から本体側へ電源線を介して確認信号を送ることができるように構成されていてもよい。例えば、ドロアー制御部の指示に基づきドロアー電源線41bを駆動する回路がキャッシュドロアーに設けられており、駆動されたドロアー電源線41bの電圧変化を本体制御部13が検出できるようにインターフェイス回路が設けられていてもよい。そうすれば、ドロアー制御部63から本体制御部13へ消去完了の通知ができる。
【0060】
キャッシュドロアー側から消去完了の通知を受けた本体制御部13は、不揮発性記憶装置25に格納された照合コードXXXを消去するのである。
以上のように、本体とキャッシュドロアーとが正規の組み合わせである場合に限り、照合コードの消去が行われる。
【0061】
≪本体制御部およびドロアー制御部の処理≫
本体制御部およびドロアー制御部が実行する処理の手順を、フローチャートを用いて説明する。
図7は、この発明における本体制御部の処理を示すフローチャートである。
本体制御部13は、入力部15に対してオペレーターの操作がなされると、指示の内容を判断する(ステップS101)。
【0062】
照合コード登録の指示である場合(前記ステップS101の「登録処理」)、複数のキャッシュドロアーが接続されているときテンキーで識別子が入力されることによりキャッシュドロアーが指定されるのを待つ(ステップS103)。指定がなされると、その識別子に対応する照合コードが不揮発性記憶装置25に既に登録されているか否かを調べる(ステップS105)。登録済みの場合(ステップS105の「登録あり」)その旨を表示部17に表示させて処理を終了する(ステップS107)。その後、ルーチンはステップS101へ戻り、次の操作を待つ。
【0063】
一方、前記ステップS105で、照合コードがまだ登録されていない場合、本体制御部13は、ドロアー電源部27を制御してドロアー制御部63を起動させる。そして、照合コード登録の制御信号を送る(ステップS109)。また、コード生成部21に照合コードを生成させ(ステップS111)、識別子と生成された照合コードとをドロアー制御部63に送る(ステップS113)。さらに、所定期間ドロアー電源線に24Vが印加されるよう制御する。ドロアーオープン信号である(ステップS115)。
【0064】
なお、登録時にドロアーオープン信号を併せて送るのは、オペレーターが意図したキャッシュドロアーが選択されているか否かをドロアー開放動作によって確認させるためである。本体制御部は、オペレーターによる確認操作がなされるのを待つ(ステップS117)。操作がなされるとその内容を確認する(ステップS119)。
【0065】
意図したキャッシュドロアーが選択されている旨の操作がなされた場合(ステップS119の「オープンした」)、不揮発性記憶装置25に生成した照合コードを格納する(ステップS121)。そして、ルーチンはステップS101へ戻る。一方、意図したキャッシュドロアーが選択されている旨の操作がなされた場合(ステップS119の「オープンしなかった」)、登録操作をやり直すべき旨を表示部17に表示する(ステップS123)。そして、ルーチンはステップS101へ戻る。
【0066】
また、前記ステップS101でオペレーターの操作がドロアー開放であった場合、本体制御部13は、複数のキャッシュドロアーが接続されているときテンキーで識別子が入力されることによりキャッシュドロアーが指定されるのを待つ(ステップS151)。指定がなされると、本体制御部13は、ドロアー電源部27を制御してドロアー制御部63を起動させる。そして、ドロアー開放の制御信号を送る(ステップS153)。続いて識別子を送る(ステップS155)。次に、その識別子に対応付けられた照合コードが既に登録されているか否かを調べる(ステップS157)。登録されていない場合、無条件にドリアオープン信号を送信する(ステップS157の「登録なし」。ただし、変形例として、照合コードが登録されていないと判断したら登録処理を実行してもよい。具体的には、ステップS157の判断の後、ルーチンをステップS103へ進める。
【0067】
照合コードが登録済みの場合(ステップS157の「登録あり」)、不揮発性記憶装置25を参照し、前記識別子に対応する照合コードをドロアー制御部63に送る(ステップS155)。さらに、所定期間ドロアー電源線に24Vが印加されるよう制御する。ドロアーオープン信号である(ステップS161)。これにより選択されたドロアーが開放される。その後、ルーチンはステップS101へ戻り、次の操作を待つ。
さらにまた、前記ステップS101でオペレーターの操作が照合コードの消去であった場合、本体制御部13は、複数のキャッシュドロアーが接続されているときテンキーで識別子が入力されることによりキャッシュドロアーが指定されるのを待つ(ステップS171)。
【0068】
指定がなされると、その識別子に対応する照合コードが不揮発性記憶装置25に既に登録されているか否かを調べる(ステップS173)。登録されていない場合(ステップS173の「登録なし」)その旨を表示部17に表示させて処理を終了する(ステップS175)。その後、ルーチンはステップS101へ戻り、次の操作を待つ。
【0069】
一方、前記ステップS173で、照合コードが既に登録されている場合(ステップS173の「登録あり」)、本体制御部13は、ドロアー電源部27を制御してドロアー制御部63を起動させる。そして、登録されている照合コードの消去を指示する制御信号を送る(ステップS177)。続いて識別子を送り(ステップS181)、消去すべき照合コードを送る(ステップS181)。さらに、所定期間ドロアー電源線に24Vが印加されるよう制御する。ドロアーオープン信号である(ステップS183)。
【0070】
なお、消去時にドロアーオープン信号を併せて送るのは、オペレーターが意図したキャッシュドロアーが選択されているか否かをドロアー開放動作によって確認させるためである。本体制御部は、オペレーターによる確認操作がなされるのを待つ(ステップS185)。操作がなされるとその内容を確認する(ステップS187)。
【0071】
意図したキャッシュドロアーが選択されている旨の操作がなされた場合(ステップS187の「オープンした」)、不揮発性記憶装置25に格納されている照合コードを消去し(ステップS189)、消去が完了した旨を表示部17に表示する(ステップS191)。そして、ルーチンはステップS101へ戻る。一方、意図したキャッシュドロアーが選択されている旨の操作がなされた場合(ステップS187の「オープンしなかった」)、消去操作をやり直すべき旨を表示部17に表示する(ステップS193)。そして、ルーチンはステップS101へ戻る。
以上が、本体制御部の処理の説明である。続いて、ドロアー制御部が実行する処理の手順を説明する。
【0072】
図8は、この発明におけるドロアー制御部の処理を示すフローチャートである。ドロアー制御部63は、本体制御部13がドロアー電源線41bに24Vの電圧を印加するよう制御することにより起動される。起動後、ドロアー制御部63は、本体制御部からの制御信号を待つ(ステップS201)。受領した信号が制御信号であることを確認すると(ステップS203)、ドロアー制御部63は、制御信号に続く識別子を受信し(ステップS203)、その識別子が格納部65に予め格納された識別子と一致するか否かを判断する(ステップS205)。不一致であれば(ステップS205のNO)、その信号を無視する。一致すれば(ステップS205のYES)、受領した信号の内容に応じた処理を行う(ステップS207)。
【0073】
まず、受領した信号が照合コード登録の指示である場合の処理を説明する(ステップS207の「登録制御」)。ドロアー制御部63は、格納部に既に照合コードが登録されているか否かを調べる(ステップS211)。既に登録されていれば、何も処理を行わないで終了する(ステップS211の「登録あり」)。しかし、未登録であれば(ステップS211の「登録なし」)、本体から照合コードを受信し、(ステップS213)、格納部65に格納する(ステップS215)。その後、駆動スイッチ67を閉じ、ドロアーソレノイド69が励磁されるように制御する(ステップS217)。励磁は、ドロアー部71を開放することにより意図したキャッシュドロアーが選択されているか否かをオペレーターが確認できるようにするためである。
【0074】
次に、受領した信号がドロアーオープンの指示である場合の処理を説明する(ステップS207の「オープン制御」)。ドロアー制御部63は、格納部に既に照合コードが登録されているか否かを調べる(ステップS231)。未登録の場合(ステップS231の「登録なし」)は、照合コードの一致不一致を判断することなく、ルーチンはステップS237へ進み、駆動スイッチ67を閉じる。一方、照合コードが登録されているとき(ステップS231の「登録あり」)は、本体から照合コードを受信し、(ステップS233)、受信した照合コードが格納部65に格納された照合コードと一致するか否かを判断する(ステップS235)。不一致の場合(ステップS235の「一致しない」)、駆動スイッチ67を閉じることなく処理を終了する。よって、ドロアー部71は開放されない。照合コードが一致する場合(ステップS235の「一致する」)駆動スイッチ67を閉じ、ドロアーソレノイド69が励磁されるように制御する(ステップS237)。その結果、ドロアー部71は開放される。
【0075】
最後に、受領した信号が照合コード消去の指示である場合の処理を説明する(ステップS207の「クリア制御」)。ドロアー制御部63は、本体から照合コードを受信し、(ステップS251)、受信した照合コードが格納部65に格納された照合コードと一致するか否かを判断する(ステップS253)。不一致の場合(ステップS253の「一致しない」)、照合コードを消去することなく処理を終了する。よって、格納部65の照合コードは消去されない。照合コードが一致する場合(ステップS253の「一致する」)、ドロアー制御部63は格納部65の照合コードを消去する(ステップS255)。そして、駆動スイッチ67を閉じ、ドロアーソレノイド69が励磁されるように制御する(ステップS257)。励磁は、ドロアー部71を開放することにより意図したキャッシュドロアーが選択されているか否かをオペレーターが確認できるようにするためである。
以上が、ドロアー制御部63の処理である。
なお、処理が終了した後、ドロアー制御部63は何もしないアイドル状態を続けるか、またはステップS201へ戻り次の信号を待つ。そのいずれの処理をするかは、本体制御部13の電源制御の態様に応じて予め決定される。即ち、本体制御部13が、1つの制御信号を送る毎、その後にドロアー電源線の電圧を接地電位にしてドロアー制御部を停止させる制御を行う場合、ドロアー制御部63は制御信号の処理を行った後、アイドル状態を続けるようにプログラムすればよい。次の信号を待つ必要がないからである。そうでなければ、ドロアー制御部63は処理終了後に次の信号を待つ必要がある。
【0076】
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0077】
11:本体
13:本体制御部
15:入力部
17:表示部
19:プリンタ部
21:コード生成部
23:乱数発生器
25:不揮発性記憶装置
27:ドロアー電源部
41:電源線
41a:グランド線
41b:ドロアー電源線
61:キャッシュドロアー
63:ドロアー制御部
65:格納部
67:駆動スイッチ
69:ドロアーソレノイド
71:ドロアー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金銭処理を行う本体と前記本体に着脱または接続可能な少なくとも一つのキャッシュドロアーとを含んでなり、
前記本体は、
(a1)前記キャッシュドロアーが装着または接続された状態で照合コードを生成し格納するコード生成部と、
(a2)生成された照合コードを前記キャッシュドロアーへ通知し、キャッシュドロアーを開放すべきときに前記照合コードが付加された開放要求を送出する本体制御部とを備え、
前記キャッシュドロアーは、
(b1)通知された照合コードを格納する格納部と、
(b2)金銭を収容するドロアー部と、
(b3)本体からの開放要求に応答してドロアー部の開放を制御するドロアー制御部とを備え、
前記ドロアー制御部は、前記開放要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときはドロアー部を開放し一致しないときは開放しないように制御することを特徴とする電子式キャッシュレジスター・システム。
【請求項2】
前記格納部はキャッシュドロアーに固有の識別子を予め格納し、
前記本体制御部は、本体に複数のキャッシュドロアーが接続されているときは開放を要求するキャッシュドロアーの識別子を前記開放要求に付加し、
前記ドロアー制御部は、前記開放要求に付加された識別子が格納部に予め格納された識別子と一致しかつ前記開放要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときはドロアー部を開放し前記識別子または前記照合コードが一致しないときはドロアー部を開放しないように制御する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ドロアー制御部は、照合コードが前記格納部に予め格納されていない状態で前記開放要求を受領したとき、照合コードの一致を判断することなくドロアー部を開放するように制御する請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ドロアー制御部は、照合コードが前記格納部に予め格納されていない状態で前記開放要求を受領したとき、照合コードが格納されていない旨を本体に通知する請求項1〜3のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項5】
前記本体と前記キャッシュドロアーとは、本体からキャッシュドロアーへ電源を供給するための電源線で接続されてなり、
前記本体制御部は、生成された照合コードおよび前記開放要求を前記電源線に信号として送出するよう制御する請求項1〜4のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項6】
前記本体制御部は、オペレーターの指示に応答し、前記格納部に格納された照合コードを消去させる消去要求をその照合コードを付加して送出し、
前記ドロアー制御部は、受領した消去要求に付加された照合コードが格納部に予め格納された照合コードと一致するときは消去を実行し一致しないときは消去しないようにする1〜5のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項7】
前記本体制御部は、生成された照合コードを前記キャッシュドロアーへ通知する際その照合コードにドロアー部の開放要求を付加し、オペレーターによるドロアー部開放の確認入力を受け付けて前記キャッシュドロアーへ通知し、
前記ドロアー制御部は、受領した照合コードを格納部に格納する前に前記開放要求に応答してドロアー部を開放し、前記確認入力を受け付けた旨が本体制御部から通知されるのを待って前記照合コードを格納部へ登録する請求項1〜6のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項8】
前記本体制御部は、消去要求を前記キャッシュドロアーへ通知する際その消去要求にドロアー部の開放要求を付加し、オペレーターによるドロアー部開放の確認入力を受け付けて前記キャッシュドロアーへ通知し、
前記ドロアー制御部は、照合コードを消去する前に前記開放要求に応答してドロアー部を開放し、前記確認入力を受け付けた旨が本体制御部から通知されるのを待って前記照合コードの消去を実行する請求項1〜7のいずれか一つに記載のシステム。
【請求項9】
照合コード生成部は、乱数発生器を用いて照合コードを生成する請求項1〜8のいずれか一つに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−242990(P2011−242990A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114348(P2010−114348)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】