説明

電子機器および導光レンズの取り付け方法

【課題】より簡易、かつ、低コストで導光レンズを取り付けることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、樹脂からなる意匠パネル12と、光源からの光を外部に導くべく前記意匠パネル12に取り付けられる導光レンズ16と、を備える。意匠パネル12には、導光レンズ16と対応した形状の貫通孔である挿入孔20が形成されており、導光レンズ16は、前記挿入孔20に押し込んだ際に当該挿入孔20の周縁が弾性変形することで前記挿入孔20に挿入されて、前記意匠パネル12に取り付けられる。前記挿入孔20の周縁近傍には、前記弾性変形を助長する補助溝22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示器を備えた電子機器、および、当該表示器を構成する導光レンズを意匠パネルに取り付ける取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の状態(例えば電源のON/OFFなど)を、光の点灯状況でユーザに表示する表示器を備えた電子機器が広く知られている。こうした表示器の多くは、光源の光を外部に導く導光レンズを備えている。そして、この導光レンズは、通常、意匠パネルに設けられた挿入孔に差し込まれ、取り付けられている。
【0003】
ここで、このように取り付けられた導光レンズは、挿入孔に単に差し込まれただけでは、挿入孔から抜けて脱落することがある。かかる脱落を防止するために、特許文献1では、導光レンズを挿入孔に差し込んだ後、当該導光レンズを意匠パネルに溶着している。より具体的には、特許文献1では、導光レンズの隅部分(レンズとして機能しない部分)に、意匠パネルの裏面から突出したボスが挿通される取付孔を形成し、この取付孔から突出したボスの先端を半田ゴテで溶かすことにより、導光レンズを意匠パネルに取り付けている。
【0004】
また、特許文献2には、軟質光透過体からなる導光レンズを、意匠パネルの挿入孔に圧入して、導光レンズの周側面を挿入孔の内周壁面に圧接して固着する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152844号公報
【特許文献2】特開2004−111568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1のように導光レンズを溶着する技術によれば、導光レンズの脱落は確実に防止される。しかし、かかる技術の場合、溶着設備が必要であり、簡易に取り付けることが出来ないという問題がある。また、一度溶着した導光レンズは取り外すことができないため、分解、再利用が困難という問題がある。
【0007】
特許文献2の技術では、軟質光透過体からなる導光レンズを用いているため、比較的簡単に取り付けも取り外しもできる。しかし、軟質光透過体という特殊な材料を利用しているため、部品コストが高くなりがちという問題があった。
【0008】
そこで、本発明では、より簡易、低コストで導光レンズが取り付けられる電子機器および取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子機器は、表示器を備えた電子機器であって、樹脂からなる意匠パネルと、前記表示器に設けられた光源からの光を外部に導く導光レンズであって、前記意匠パネルに取り付けられる導光レンズと、を備え、前記意匠パネルには、前記導光レンズと対応した形状の貫通孔である挿入孔が形成されており、前記導光レンズは、前記挿入孔に押し込んだ際に当該挿入孔の周縁が弾性変形することで前記挿入孔に挿入されて、前記意匠パネルに取り付けられる、ことを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、前記意匠パネルの裏面のうち、前記挿入孔の周縁近傍には、前記弾性変形を助長する溝または貫通孔が前記挿入孔の辺に沿って形成されている。
【0011】
他の好適な態様では、前記挿入孔は、表面側における開口幅より、裏面側における開口幅のほうが小さくなっており、前記導光レンズは、前記挿入穴の断面形状と対応した断面形状部分を備え、表面側から前記挿入孔に圧入される。この場合、前記導光レンズのうち、当該導光レンズの表面と前記意匠パネルの表面とがほぼ同一平面になるまで押し込んだ際に、前記意匠パネルの裏面から突出する部分には、外側方向に張り出して、前記裏面と係合する返し部が設けられている、ことが望ましい。
【0012】
他の好適な態様では、前記挿入孔の裏面側周縁から突出し、導光レンズの裏面側からの進入を許容する一方で裏面側から進入された導光レンズの裏面と近接対向することで当該導光レンズの脱落を防止する突起体を備える。この場合、前記導光レンズは、レンズ部と、当該レンズ部の裏面周縁から外側方向に向かって延びる肉薄のフランジ部と、を有し、前記意匠パネルの裏面側のうち前記挿入孔の周縁には前記フランジ部を収容する凹部が形成されている、ことが望ましい。
【0013】
他の本発明であるレンズ取付方法は、電子機器の意匠パネルに、表示器に設けられた光源からの光を外部に導く導光レンズを取り付けるレンズ取付方法であって、樹脂からなる意匠パネルに前記導光レンズに対応した形状の挿入孔を形成し、前記導光レンズを、前記挿入孔に押し込んだ際に当該挿入孔の周縁を弾性変形させることで前記挿入孔に挿入し、前記意匠パネルに取り付ける、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、挿入孔の周縁を弾性変形させて当該挿入孔に導光レンズを取り付けているため、より簡易、かつ、低コストで導光レンズを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である光ディスクドライブを組み込んだPCの概略斜視図である。
【図2】意匠パネルの背面図である。
【図3】(a)は図2におけるB−B断面であり、(b)は図2におけるC−C断面図である。
【図4】(a)は導光レンズの背面図であり、(b)は導光レンズの短軸方向視図であり、(c)は導光レンズの長軸方向視図である。
【図5】レンズ組み付け前後における導光レンズ周辺の概略横断面図である。
【図6】レンズ組み付け前後における導光レンズ周辺の概略縦断面図である。
【図7】他の実施形態の導光レンズの図であり、(a)は導光レンズの正面図であり、(b)は導光レンズの短軸方向視図であり、(c)は導光レンズの長軸方向視図である。
【図8】他の実施形態における意匠パネルの背面図である。
【図9】(a)は図8のE−E断面図、(b)は図8のF−F断面図である。
【図10】レンズ組み付け前後における導光レンズ周辺の概略横断面図である。
【図11】レンズ組み付け前後における導光レンズ周辺の概略縦断面図である。
【図12】他の実施形態における意匠パネルの背面図である。
【図13】レンズ組み付け時における導光レンズ周辺の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である光ディスクドライブ10を組み込んだパーソナルコンピュータ(以下「PC」と略す)100の概略斜視図である。PC100に組み込まれた状態においては、光ディスクドライブ10の大部分はPC100の内部に収容され、光ディスクドライブ10の正面に位置する意匠パネル12のみが外部に露出することになる。この意匠パネル12には、ユーザからの操作支持を受け付ける操作ボタン14や、表示器の構成要素である導光レンズ16などが設けられている。
【0017】
表示器は、光ディスクドライブ10の駆動状況をユーザに通知するもので、電子機器の内部に設けられた光源(図示せず)と、当該光源からの光を外部に導く導光レンズ16と、を備えている。そして、光ディスクドライブ10の駆動状況に応じて、光源を点灯/消灯することにより、光ディスクドライブ10の駆動状況をユーザに通知する。
【0018】
こうした表示器を構成する導光レンズ16は、通常、意匠パネル12に形成された挿入孔に差し込まれ、意匠パネル12に取り付けられる。しかし、単に導光レンズ16を挿入孔に差し込むだけでは、導光レンズ16が挿入孔20から抜け落ち、脱落するおそれがある。
【0019】
かかる脱落を防止するために、従来では、導光レンズ16の一部を意匠パネル12に溶着したり、導光レンズ16を軟質材料(弾性材料)で構成したりしていた。しかし、こうした従来の技術では、取り付け工程が複雑であったり、一度取り付けた導光レンズ16を分解、取り外すことが出来なかったり、あるいは、部品コストが増加したり、といった問題があった。そこで、本実施形態では、これらの問題を解消するために、導光レンズ16の取り付け構造を特殊なものとしている。以下、これについて詳説する。
【0020】
はじめに、導光レンズ16が取り付けられる意匠パネル12について詳説する。図2は意匠パネル12の背面図である。また、図3(a)は図2におけるB−B断面であり、図3(b)は図2におけるC−C断面図である。
【0021】
意匠パネル12は、電子機器のうち、外部に露出する面に取り付けられるパネルであり、各種操作ボタンや、表示部材などが設けられるパネルである。本実施形態では、この意匠パネル12に表示器の構成要素である導光レンズ16が取り付けられる。
【0022】
意匠パネル12は、樹脂などの弾性のある材料から形成されている。この意匠パネル12のうち、導光レンズ16の取り付け箇所には、当該導光レンズ16が挿入される挿入孔20が形成されている。この挿入孔20は、後に詳説する導光レンズ16に対応した形状となっている。具体的には、挿入孔20は、正面視において、横長の略長方形となっている。ただし、その断面形状は、導光レンズ16の脱落を防止するために、表側における開口幅よりも裏側における開口幅のほうが小さくなるような形状となっている。
【0023】
すなわち、図3(a)に示すように、本実施形態の挿入孔20は、横断面形状が略T字状であり、長軸方向の開口幅が表側から裏側に向かう途中で一段階小さくなっている。別の言い方をすると、挿入孔20の長軸方向側面には、段差面が形成されている。また、図3(b)に示すように、本実施形態の挿入孔20は、縦断面形状が表側に向かうにつれ幅広となる略ラッパ形状であり、短軸方向の開口幅が、表側から裏側に向かう途中で徐々に小さくなっている。別の言い方をすると、挿入孔20の短軸方向側面には、テーパ面が形成されている。このように、表面における開口幅より裏面における開口幅を小さくすることで、表側から圧入された導光レンズ16が裏側から抜け落ちることが防止される。なお、本実施形態では、短軸方向の開口幅、長軸方向の開口幅の両方に関して、表側より裏側のほうが小さくなるようにしている。しかし、当然ながら、短軸方向の開口幅、長軸方向の開口幅のいずれか一方の開口幅のみを表側より裏側のほうが小さくなるようにしてもよい。また、短軸方向側面に段差を形成し、長軸方向側面にテーパ面を形成してもよく、短軸方向側面と長軸方向側面の両方にテーパ面を形成してもよい。
【0024】
意匠パネル12の裏面のうち、挿入孔20の長軸方向の辺(長辺)の近傍には、当該長辺に沿って延びる溝である補助溝22が形成されている。この補助溝22は、意匠パネル12の肉厚の半分程度の深さを有しており、表面からは視認できないようになっている。
【0025】
この補助溝22は、導光レンズ16を挿入孔20に挿入する際における挿入孔20の弾性変形を助長するために設けられている。すなわち、導光レンズ16は、表側から挿入孔20に押し込まれ、挿入される。このとき、挿入孔20の周縁が弾性変形により僅かに広がることで、導光レンズ16が挿入孔20へと挿入されることになる。この弾性変形をより確実に生じさせるために、本実施形態では、挿入孔20の長辺近傍に当該長辺に沿って延びる補助溝22を設けている。かかる補助溝22を設けることにより、長辺周辺が肉薄となり、短軸方向の剛性が大幅に低下する。その結果、挿入孔20の長辺周辺が弾性変形しやすくなり、これにより、導光レンズ16をより確実かつ簡易に挿入孔20に圧入することが可能となる。なお、補助溝22は意匠パネル12を貫通していないので、意匠パネル表面の剛性低下は抑えられる。
【0026】
次に、導光レンズ16について図4を参照して説明する。図4(a)は導光レンズ16の背面図、図4(b)は導光レンズ16の短軸方向視図、図4(C)は導光レンズ16の長軸方向視図である。
【0027】
導光レンズ16は、光源からの光を外部に導くもので、透光性のある硬質材料、例えば、ガラスや透明プラスチックなどからなる。導光レンズ16は、挿入孔20と同じく、正面視において、横長の略長方形となっている。その一方で、導光レンズ16の厚みは、挿入孔20の深さ(すなわち意匠パネル12の厚み)よりも大きくなっている。そのため、挿入孔20に導光レンズ16を挿入して、導光レンズ16の前面と意匠パネル12の前面とをほぼ同一平面に位置させた組み付け完了時、導光レンズ16の後端部分が意匠パネル12の裏面から突出するようになっている。以下では、導光レンズ16のうち、組み付け完了時に、挿入孔20の内部に収容される部分を「収容部30」、意匠パネル12の裏面から突出する部分を「突出部32」と呼ぶ。
【0028】
収容部30は、挿入孔20に対応した形状を有している。すなわち、収容部30は、略T字状の横断面形状を有しており、長軸方向の幅が表側から裏側に向かう途中で一段階小さくなっている。また、収容部30は、略ラッパ状の縦断面形状を有しており、表側から裏側に向かう途中で短軸方向の幅が徐々に小さくなるテーパ部分を有している。
【0029】
突出部32は、収容部30の後端から延長される略矩形の部位である。この突出部32の短軸方向の両側面には、挿入孔20を通過した後、意匠パネル12の裏面と係合することで導光レンズ16の脱落を防止する返し部34が設けられている。この返し部34は、突出部32の後端(導光レンズ16の裏側端部)から突出部32の前端(突出部32と収容部30との境界部分)に向かう過程で徐々に短軸方向外側に張り出していく部位である。かかる返し部34が存在することで、突出部32の短軸方向の幅は、突出部32の後端から突出部32の前端に近づくにつれ、徐々に大きくなることになる。ここで、突出部32の後端における短軸方向の幅は、挿入孔20の短軸方向幅より僅かに小さく、突出部32の前端における短軸方向の幅は、挿入孔20の短軸方向幅より大きくなっている。その結果、この突出部32が、一度、挿入孔20を通過して、意匠パネル12の裏面から突出すると、その後、導光レンズ16が表側に移動(脱落)しようとしても、返し部34が挿入孔20の周縁に当接することになる。そして、これにより、導光レンズ16の表側への脱落が効果的に防止される。
【0030】
次に、こうした導光レンズ16を意匠パネル12に組み付ける流れについて図5、図6を参照して説明する。図5は、レンズ組み付け前後における導光レンズ16周辺の概略横断面図であり、図6はレンズ組み付け前後における導光レンズ16周辺の概略縦断面図である。
【0031】
導光レンズ16は、表側から挿入孔20に挿入される。ここで、導光レンズ16の後端の幅は、挿入孔20の前端の幅より十分に小さい。そのため、容易に、導光レンズ16の後端を挿入孔20へ挿し入れることができる。その後、導光レンズ16を裏側に押し付けていくと、導光レンズ16の返し部34の側面が挿入孔20の内周面に当接することになる。この当接した状態で、さらに、導光レンズ16を押し込むと、当該押し込みの力により、挿入孔20の周縁が撓み、返し部34の通過を許容するべく、挿入孔20の周縁形状が弾性変形する。このとき、挿入孔20の長辺近傍には、当該長辺に沿って補助溝22が形成されている。この補助溝22が存在することにより、挿入孔20の周縁周辺の剛性が低下し、当該周縁周辺が撓みやすくなっている。その結果、導光レンズ16を押し込む力が比較的小さくても、挿入孔20を弾性変形させることができ、容易に、返し部34を通過させることができる。押し込みの結果、返し部34が挿入孔20を通過すると、当該返し部34は、挿入孔20の周縁周辺と対向することになり、導光レンズ16の表側への移動を規制する。これにより、導光レンズ16の表側への脱落が効果的に防止される。また、挿入孔20のテーパ面や段差面は、導光レンズ16の収容部30の対応する面にそれぞれ対向し、当該動向レンズの裏側への更なる移動を規制する。その結果、導光レンズ16の裏側への脱落も効果的に防止される。
【0032】
つまり、本実施形態によれば、導光レンズ16の表側、裏側いずれへの離脱も効果的に防止される。また、本実施形態では、挿入孔20の周縁を弾性変形させることにより、導光レンズ16を意匠パネル12に組み付けている。その結果、溶着などを用いていた従来技術に比して、組み付け作業を簡易化できる。また、導光レンズ16の材料として、高価な軟質透光体を用いる必要がないため、部品コストを低減できる。
【0033】
さらに、挿入孔20の周縁を弾性変形させて導光レンズ16を組み付けているため、組み付けた後、挿入孔20の周縁を再度、弾性変形させれば、一度取り付けた導光レンズ16を取り外すこともできる。すなわち、例えば、導光レンズ16と挿入孔20の周縁との間に、細い板材などを差し込み、挿入孔20を広げる方向に力を加えた状態で、導光レンズ16を押し出すようにすれば、一度組み付けた導光レンズ16を取り出すこともできる。かかる構成とした場合、導光レンズ16の取り付けミスあるいは導光レンズ16とは無関係の部分に不具合が生じた際に、導光レンズ16を無駄に廃棄する必要が無く、製造コストを低減することができる。これについて、導光レンズ16を溶着のように取り外し不可能な方法で取り付けた場合を例に挙げて説明する。
【0034】
導光レンズ16を溶着により意匠パネル12に取り付けた後、当該導光レンズ16の溶着ミスや当該導光レンズ16とは無関係な部位に生じた不具合が原因で意匠パネル12を廃棄する必要が生じたとする。溶着で取り付けた場合、導光レンズ16を意匠パネル12から取り外すことができないため、導光レンズ16に何ら不具合がない場合であっても、意匠パネル12とともに廃棄せざるを得なくなる。一方、本実施形態のように、挿入孔20周縁の弾性変形を利用して導光レンズ16を取り付ける場合には、当該導光レンズ16の溶着ミスがなくなるだけでなく、意匠パネル12の一部に不具合が生じた場合には、当該意匠パネル12から導光レンズ16を取り外し、意匠パネル12のみを廃棄することができる。そして、取り出された導光レンズ16を、別の意匠パネル12に再度、組み付けることができる。同様に、導光レンズ16に不具合が生じた場合でも導光レンズ16を取り外し、導光レンズ16のみを廃棄することができ、意匠パネル12を再利用することができる。その結果、導光レンズ16および意匠パネル12の無駄な廃棄を低減でき、製造コストをより低減できる。
【0035】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態と異なり、導光レンズ16の挿入孔20への挿入を、表側からではなく、裏側から行う。そのため、導光レンズ16、および、意匠パネル12の形態が第一実施形態と若干異なっている。この相違点を中心に、第二実施形態について説明する。
【0036】
はじめに第二実施形態に用いられる導光レンズ16について図7を参照して説明する。図7(a)は導光レンズ16の正面図であり、図7(b)は短軸方向視図、図7(c)は長軸方向視図である。
【0037】
本実施形態の導光レンズ16は、レンズとして機能するレンズ部36と、当該レンズ部36の周囲から外側に張り出すフランジ部38と、に大別される。レンズ部36は、正面視において、横長の略長方形となっている。このレンズ部36の四側面には、それぞれ、裏側に近づくにつれ外側方向に向かうテーパが形成されており、裏面よりも表面のほうが小サイズとなっている。別の見方をすれば、レンズ部36は、裏面から表面に向かって長方形のサイズが徐々に小さくなる略四角錐台形状となっている。
【0038】
レンズ部36の二つの長辺それぞれからは、フランジ部38が外側方向に張り出している。このフランジ部38は、略矩形の平板状部位であり、その前端面はレンズ部36の前端面(表面)と同一平面状にある。また、このフランジ部38の厚みは、レンズ部36の半分程度(意匠パネル12の厚みより小さい)となっている。そのため、レンズ組み付け時、当該フランジ部38は外部に露出せず、意匠パネル12に形成された凹部24に当接することになる。
【0039】
二つのフランジ部38それぞれには、意匠パネル12の凹部24から突出する位置決めボス26が差し込まれる位置決め孔40が形成されている。二つの位置決め孔40のうち、一つは位置決めボス26とほぼ同径の丸穴となっており、対応する位置決めボス26が挿入されることにより、導光レンズ16の長軸方向および短軸方向の位置を規定する。他の位置決め孔40は、短軸方向の幅が位置決めボス26の径とほぼ同じ長孔であり、対応する位置決めボス26が挿入されることにより、導光レンズ16の長軸方向の位置を規定する一方で、短軸方向の位置の微調整(位置決めボス26の形成位置の誤差吸収)を可能にする。これら二つの位置決め孔40は、いずれも、後端側の径(幅)が若干大きくなっており、位置決めボス26を容易に差し入れられるようになっている。
【0040】
次に、意匠パネル12について図8、図9を参照して説明する。図8は意匠パネル12の背面図であり、図9(a)は図8のE−E断面図、図9(b)は図8のF−F断面図である。
【0041】
意匠パネル12には、導光レンズ16が挿入される挿入孔20が形成されている。この挿入孔20は、導光レンズ16のレンズ部36に対応した形状をしており、正面視において横長の略長方形となっている。ただし、レンズ部36と異なり、この挿入孔20はその開口幅が厚み方向において一定となっている(レンズ部36の形状に対応させて、開口幅を変化させてもよい)。
【0042】
また、意匠パネル12の裏面のうち挿入孔20の二つの長辺それぞれからは外側方向に広がる略矩形の凹部24が形成されている。この二つの凹部24は、いずれも導光レンズ16のフランジ部38が収容される部位で、フランジ部38に対応した形状を有しており、その深さは、フランジ部38の厚みより僅かに小さくなっている。
【0043】
二つの凹部24それぞれの中央付近からは、位置決めボス26が立脚している。この二つの位置決めボス26が、フランジ部38に形成された位置決め孔40に挿通されることで、導光レンズ16の位置決めが図られるようになっている。
【0044】
挿入孔20の短辺からは断面略L字状の突起体28が形成されている。この突起体28は、導光レンズ16の裏側から挿入孔20への進入を許容する一方で、一度進入した導光レンズ16の裏側への移動を規制する部位である。この突起体28の先端は、内部側に向かって突出している。この先端の底面28bは、進入した導光レンズ16の後端面と対向する平坦面となっている。また、突起体28先端の上面28aには、内部側に向かって下がるようなテーパが形成されている。なお、この突起体28先端の底面28bから、意匠パネル12の前面までの距離は、導光レンズ16の厚みとほぼ同じである。また、二つの突起体28の内側端部の間の距離は、導光レンズ16の長軸方向幅より若干小さくなっている。
【0045】
意匠パネル12のうち、挿入孔20の短辺近傍、換言すれば、突起体28の根元近傍には、当該短辺に沿って延びる補助溝22が形成されている。この補助溝22は、意匠パネル12の厚みの半分程度の深さを有しており、表側からは視認できないようになっている。そして、この補助溝22が存在することにより、突起体28周辺の剛性が大幅に低下し、突起体28が容易に弾性変形できるようになっている。
【0046】
次に、こうした導光レンズ16を意匠パネル12に組み付ける流れについて図10、図11を参照して説明する。図10は、導光レンズ16組み付け前後における導光レンズ16周辺の横断面図であり、図11は導光レンズ16組み付け前後における導光レンズ16の縦断面図である。
【0047】
既述したように、本実施形態において、導光レンズ16を意匠パネル12に組み付ける際には、当該導光レンズ16を裏側から挿入孔20に挿し込む。裏側から挿入孔20に向かって押された導光レンズ16の表面は、まず、突起体28先端の上面に形成されたテーパ面に当接することになる。このテーパ面に当接した状態で、導光レンズ16を表側に押し込むと、当該押し込みの力がテーパ面により、横方向外向きの力に変換されて突起体28に伝達される。そして、この横方向外向きの力を受けて、突起体28が外側方向に撓むことになる。特に、本実施形態では、突起体28の根元近傍に、補助溝22を形成しているため、突起体28周辺の剛性が大幅に低下している。その結果、比較的小さい力を受けるだけで、突起体28が横方向外向きに撓むことになる。そして、この突起体28の撓み(弾性変形)により、導光レンズ16の通過が許容されることになる。
【0048】
二つの突起体28の間を通過した導光レンズ16は、さらに、表側に移動する。このとき、位置決めボス26が位置決め孔40に挿通されるように導光レンズ16の位置を微調整する。そして、二つの位置決めボス26が位置決め孔40に挿通されることで、導光レンズ16の水平方向の位置が規定されることになる。
【0049】
その後、さらに、導光レンズ16を押し込むと、最終的には、フランジ部38の前端面が凹部24の底面に当接することになる。この状態になれば、導光レンズ16の組み付けは完了となる。ここで、この組み付け完了の時点において、フランジ部38の前端面が凹部24の底面に当接している。そのため、導光レンズ16の表側への更なる移動は完全に阻害されるため、導光レンズ16の表側への脱落が確実に防止される。また、導光レンズ16の後端面には、突起体28の先端の底面が近接している。したがって、導光レンズ16を裏側に押し付けた場合には、導光レンズ16の後端面が突起体28の先端底面と当接することになり、導光レンズ16の裏側への更なる移動が規制されることになる。その結果、導光レンズ16の裏側への脱落も確実に防止される。
【0050】
つまり、本実施形態によれば、第一実施形態と同様に、導光レンズ16の表側、裏側いずれへの離脱も効果的に防止される。また、従来技術と比して、導光レンズ16の組み付けを簡易化でき、また、部品コストを低減することができる。
【0051】
さらに、本実施形態においても、一度組み付けた導光レンズ16を取り外すことができる。すなわち、導光レンズ16を挿入孔20に組み付けた後、取り外す必要ができた場合には、突起体28に外側方向の力を加えて外側方向に撓ませつつ、導光レンズ16を表側から裏側に押し付けることにより、導光レンズ16を意匠パネル12から取り外すことができる。その結果、導光レンズ16および意匠パネル12の無駄な廃棄を低減でき、製造コストをより低減できる。
【0052】
さらに、本実施形態では、導光レンズ16を裏側から取り付ける構成となっているため、取り付けの作業の際に、意匠パネル12の表面(外部に露出する面)を傷つける危険を大幅に低減できる。また、通常、意匠パネル12には導光レンズ16のほかに、操作ボタンなども組み付けられる。こうした操作ボタンなどは、通常、裏側から意匠パネル12に取り付けられることが多い。本実施形態のように、導光レンズ16を裏側から取り付ける形態とした場合、こうした、操作ボタンの組み付け作業と、導光レンズ16の組み付け作業との合間に、意匠パネル12を表裏反転させる手間が不要となり、製造の手間を低減できる。
【0053】
なお、上述の二つの実施形態では、いずれも、横長の略長方形の導光レンズ16を例に挙げて説明したが、挿入孔20の周縁を弾性変形させて導光レンズ16を挿入孔20内に取り付けるのであれば、導光レンズ16や挿入孔20の形状は適宜変更されてもよい。例えば、導光レンズ16およびそれに対応する挿入孔20を、正面視線において円形状や方形などにしてもよい。ただし、挿入孔20を効果的に弾性変形させるためには、挿入孔20(ひいては導光レンズ16)は、正面視において、一方向に長尺な形状、例えば、楕円径や、長方形などであることが望ましい。
【0054】
また、上述の実施形態では、挿入孔20の周縁の弾性変形を助長するために、補助溝22を設けたが、補助溝22に代えて、貫通長孔を設けてもよい。例えば、図12、図13に示すように、挿入孔20の長辺近傍に、当該長辺に沿って延びる貫通長孔42を設けてもよい。この場合、表側から当該貫通長孔42が視認されることを防止するために、導光レンズ16を、表面が当該貫通長孔42を覆える程度のサイズを持った断面略T字形状とし、この表面部分を収容できる程度の凹部を意匠パネル12の表面に形成しておく。そして、表側から挿入された導光レンズ16の表面で貫通長孔42を覆って隠すようにすることが望ましい。かかる構成であっても、挿入孔20の周縁が効果的に弾性変形でき、結果として、導光レンズ16を効果的に組み付けることができる。
【0055】
また、上述の実施形態では、電子機器として光ディスクドライブを例示したが、導光レンズを備えた表示器を有する電子機器であれば、他の電子機器であっても当然よい。
【符号の説明】
【0056】
10 光ディスクドライブ、12 意匠パネル、14 操作ボタン、16 導光レンズ、20 挿入孔、22 補助溝、24 凹部、26 位置決めボス、28 突起体、30 収容部、32 突出部、34 返し部、36 レンズ部、38 フランジ部、40 位置決め孔、42 貫通長孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器を備えた電子機器であって、
樹脂からなる意匠パネルと、
前記表示器に設けられた光源からの光を外部に導く導光レンズであって、前記意匠パネルに取り付けられる導光レンズと、
を備え、
前記意匠パネルには、前記導光レンズと対応した形状の貫通孔である挿入孔が形成されており、
前記導光レンズは、前記挿入孔に押し込んだ際に当該挿入孔の周縁が弾性変形することで前記挿入孔に挿入されて、前記意匠パネルに取り付けられる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記意匠パネルの裏面のうち、前記挿入孔の周縁近傍には、前記弾性変形を助長する溝または貫通孔が前記挿入孔の辺に沿って形成されている、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器であって、
前記挿入孔は、表面側における開口幅より、裏面側における開口幅のほうが小さくなっており、
前記導光レンズは、前記挿入穴の断面形状と対応した断面形状部分を備え、表面側から前記挿入孔に圧入される、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記導光レンズのうち、当該導光レンズの表面と前記意匠パネルの表面とがほぼ同一平面になるまで押し込んだ際に、前記意匠パネルの裏面から突出する部分には、外側方向に張り出して、前記裏面と係合する返し部が設けられている、ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電子機器であって、
前記挿入孔の裏面側周縁から突出し、導光レンズの裏面側からの進入を許容する一方で裏面側から進入された導光レンズの裏面と近接対向することで当該導光レンズの脱落を防止する突起体を備える、ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記導光レンズは、レンズ部と、当該レンズ部の裏面周縁から外側方向に向かって延びる肉薄のフランジ部と、を有し、
前記意匠パネルの裏面側のうち前記挿入孔の周縁には前記フランジ部を収容する凹部が形成されている、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
電子機器の意匠パネルに、表示器に設けられた光源からの光を外部に導く導光レンズを取り付けるレンズ取付方法であって、
樹脂からなる意匠パネルに前記導光レンズに対応した形状の挿入孔を形成し、
前記導光レンズを、前記挿入孔に押し込んだ際に当該挿入孔の周縁を弾性変形させることで前記挿入孔に挿入し、前記意匠パネルに取り付ける、
ことを特徴とするレンズ取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−138251(P2012−138251A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289595(P2010−289595)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】