説明

電子機器のシールド構造

【考案の詳細な説明】
〔概要〕
外部接続における電波漏洩を防止する電子機器のシールド構造に関し、部品数および接続工数を削減するとともに、電波低減効果を高めることを目的とし、外部接続用のコネクタジャックを金属製筐体に、2層プリント板を介在して固定するとともに、前記2層プリント板の2層のプリント面に前記コネクタジャックおよび金属製の筐体をそれぞれ接続し、電子機器から発生する高周波信号を前記コネクタジャックから前記金属製筐体へ前記2層プリント板を通してバイパスするように構成する。
〔産業上の利用分野〕
本考案は、外部接続における電波漏洩を防止する電子機器のシールド構造に関するものである。
電子機器の外部接続において、電子機器から発生する高周波信号が、コネクタを経由して接続された同軸ケーブルへ伝わり、同軸ケーブルから外部へ不要な電波が漏洩するため、コネクタジャックと筐体間にバイパスコンデンサを接続して高周波信号を筐体側に逃がしていたが、バイパスコンデンサの接続工数が必要であり、またバイパスコンデンサの接続に用いるリード素子にリードインダクタンスが生じバイパス効果を低下させるため、接続工数を削減し、電波低減効果の高い電子機器のシールド構造が望まれている。
〔従来の技術〕
従来、電子機器のシールド構造は、第4図に示すように、コネクタジャック10を取付け板40で筐体20に取り付けて、さらに、コネクタジャック10と筐体20間にバイパスコンデンサ30を接続して、高周波信号を筐体側に逃がすことにより行われていた。
〔考案が解決しようとする課題〕
しかし、バイパスコンデンサ30はリード素子50によって、コネクタジャック10と筐体20とに接続されるため、コネクタジャック10の取り付けにバイパスコンデンサ30の接続工数が加わり、生産性を低下させ、また、リード素子50にはリードインダクタンスが発生し、周波数に比例して、インピーダンスが大きくなるため、高周波信号のバイパス効果を低下させるという欠点があった。
〔課題を解決するための手段〕
本考案を実施例に対応する第1図および第2図に基づいて説明すると、外部接続用のコネクタジャック1を金属製筐体2に2層プリント板3を介して固定することによって、固定と同時に2層プリント板3の両面に形成された2層のプリント面31および32にそれぞれ、コネクタジャック1および金属製筐体2が接続され、電子機器4から発生する高周波信号を前記コネクタジャック1から2層プリント板3を通じて金属製筐体2へバイパスするように構成する。
〔作用〕
上記構成に基づき、本考案においては、コネクタジャック1と金属製筐体2とを2層プリント板3を介して接続した状態となり、この2層プリント板3は、導体をプリントしたプリント面31、32を所定間隔をおいて2層に対向させているため、コンデンサと同様に高周波信号に対してバイパス効果を有する。
従って、2層プリント板3が、コネクタジャック1の取付板部材と高周波信号をバイパスするコンデンサ部材とを兼ねるため、従来のように、バイパスコンデンサを接続する工数が不要となり、リード素子によってバイパス効果が低下することがなく、電波低減効果を高めることが可能となる。
〔実施例〕
以下、本考案の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
第1図および第2図において示されるように、コネクタジャック1は、電子機器4の接続ケーブル41の先端に固着されており、外部接続用の端子11の周囲から一体状に、2層プリント板3に取り付けるための取付フランジ部12が突出形成されている。
コネクタジャック1を取り付ける2層プリント板3は絶縁基板33の両面に導体をプリントしたプリント面31および32が形成されており、中央部には、コネクタジャック1の端子11のための貫通孔34が穿設され、コネクタジャック1の取付フランジ部12が接合されるプリント面31の反対側のプリント面32において貫通孔34の周囲は導体を剥離して絶縁部35とし、端子11や取付ビス13を介して2層のプリント面31と32が接続されることのないようになっている。
プリント面31にコネクタジャック1の取付フランジ部12を接合して、取付ビス13によってビス止めした2層プリント板3は、もう一方のプリント面32を金属製筐体2に接合してビス止めされ、金属製筐体2の開口部21より外方へ端子11を突出して外部接続用のコネクタジャック1が金属製筐体2に取り付けられる。
このようにして取り付けられた、コネクタジャック1に外部接続用の同軸ケーブル5の先端に固着されたコネクタプラグ6を連結することによって、電子機器4を外部と接続すると、電子機器4より発生する高周波信号は、電子機器側の接続ケーブル41を通って、コネクタジャック1に達するが、コネクタジャック1は端子11からコネクタプラグ6に連結されていると同時に、取付フランジ部12から2層プリント板3を介して金属製筐体2へ接続されており、2層プリント板3はコンデンサ同様高周波成分に対してバイパス効果を有するため、電子機器4から発生した高周波信号はコネクタジャック1から2層プリント板3を通って金属製筐体2へバイパスされ、コネクタプラグ6側へ高周波信号が漏洩するのをカットし、外部接続用の同軸ケーブルから放射される電波をカットする。
第3図(a)は本考案の一実施例による周波数と放射電波の減衰量との関係を示すものであり、第3図(b)は従来例において4700pFのバイパスコンデンサの両端にそれぞれ15mmのリード素子を接続した場合の放射電波の減衰量を示しているもので、図示されるように、本考案の実施例ではリード素子による高周波部分での減衰量の低下がなく、広い範囲において高い減衰効果が認められた。
〔考案の効果〕
以上の説明から明らかなように、本考案による電子機器のシールド構造によれば、2層プリント板を介してコネクタジャックを金属製筐体に固定することにより、シールド構造が構成されるので、バイパスコンデンサを接続したり、ケーブルにシールド処理をしたりする必要がなく、部品数や接続工数を削減して生産性を向上し、さらにリード素子による高周波信号に対するバイパス効果の低下を無くし、高周波成分の広い範囲にわたって、大きな低減効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案の実施例を示す断面図、
第2図はコネクタジャックと2層プリント板を示す斜視図、
第3図(a)は本考案の実施例による放射電波の減衰量を示す図、
第3図(b)は従来例による放射電波の減衰量を示す図、
第4図は従来例を示す断面図である。
図において、
1はコネクタジャック、
2は金属製筐体、
3は2層プリント板、
31、32はプリント面、
4は電子機器である。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】外部接続用のコネクタジャック(1)を金属製筐体(2)に、2層プリント板(3)を介在して固定するとともに、前記2層プリント板の2層のプリント面(31)、(32)に前記コネクタジャック(1)および金属製筐体(2)をそれぞれ接続し、電子機器(4)から発生する高周波信号を前記コネクタジャック(1)から前記金属製筐体(2)へ前記2層プリント板(3)を通してバイパスすることを特徴とする電子機器のシールド構造。

【第1図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第3図】
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【公告番号】実公平6−32716
【公告日】平成6年(1994)8月24日
【考案の名称】電子機器のシールド構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願昭63−102762
【出願日】昭和63年(1988)8月4日
【公開番号】実開平2−24593
【公開日】平成2年(1990)2月19日
【出願人】(999999999)富士通株式会社