説明

電子機器の付属部品取付構造、電子部品および付属部品、並びにオプションボックス付きプリンター

【課題】簡単な操作によって精度良く付属部品を電子機器に着脱可能に外付けできる係合爪および係合溝からなる取付構造を提案すること。
【解決手段】オプションボックス付きプリンター1では、プリンター本体2の板金製の底板10にオプションボックス20が取り外し可能に取り付けられている。底板10に形成した係合爪11〜14は、オプションボックス20の板金製の蓋板22に形成した係合溝31〜34における広幅の爪差し込み用溝部分31a〜34aに差し込めばよいので、正確な位置合わせが不要であり、寸法誤差があっても係合爪を変形させることなく簡単に差し込むことができる。係合爪11〜14を溝幅が漸減する爪ガイド用溝部分31b、34bを介して最も狭い溝幅の爪位置決め用溝部分31c〜34cまでスライドさせればよいので、幅方向の位置決めが自動的に形成され、スライド操作も小さな力で簡単に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンターなどの電子機器に各種の付属部品を着脱可能に取り付けるための付属部品取付構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
POSシステムなどに使用されるプリンターにおいては、入出金情報を含む取引情報をフィスカルメモリーと呼ばれるメモリーに記憶保持し、権限を有する者のみがフィスカルメモリーを取り外して確認できるようになっているフィスカルプリンターが知られている(特許文献1参照)。フィスカルプリンターでは、内蔵のフィスカルメモリーが不正に取り外されないように、オプションボックスと呼ばれる付属部品がプリンターケースに着脱可能に取り付けられ、不正に取り外されないように封印されている。封印構造としては例えば特許文献2に開示されている構造のものが用いられる。
【0003】
ここで、フィスカルプリンターにおいて、そのプリンターケースにオプションボックスを取り付けるための取付構造として、例えばプリンターケースの側に形成した係合爪をオプションボックスの側に形成した係合溝に差し込み、係合爪を係合溝に沿ってスライドさせて係合状態を形成するものが知られている。一般的には、強度などの関係で、プリンターケースに取り付けた板金部材の一部を切り起こして係合爪が形成され、オプションボックスに取り付けた板金部材の一部を切り取ることにより係合溝が形成される。
【0004】
例えば、図8に示すように、プリンター本体100の底面に取り付けた矩形の板金部材110における両側の縁部分に裏面側に折り曲げた4枚の係合爪111〜114が形成される。また、板金部材110の裏面側に取り付けられるオプションボックス120の上面に取り付けた矩形の板金部材130における両側の縁部分には係合爪111〜114を上側から差し込み可能な一定幅の係合溝131〜134が形成される。係合爪111〜114を各係合溝131〜134の上側から位置決めして、これらの係合溝131〜134に差し込み、これらの長さ方向にスライドさせると、係合爪111〜114の先端部分111a〜114aが係合溝131〜134の縁端部分の裏面側に嵌り込み、差し込み方向には外すことのできない係合状態が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−46954号公報
【特許文献2】実開昭62−87371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、このような係合爪および係合溝からなる付属部品取付構造では、各係合爪111〜114の先端部分111a〜114aの落ち込み深さ、すなわち、図8に示すように、板金部材110の裏面から先端部分111a〜114aの上端面までの隙間寸法Aと、オプションボックス120の側の板金部材130における係合溝131〜134の縁端部分の板厚Bとの間の寸法誤差、左右の係合爪と左右の係合溝の間の寸法誤差、例えば前側の係合爪111、112の間隔Cと左右の係合溝131、132の間隔Dの寸法誤差は、取付時における板金部材110、130の変形によって吸収しなければならない。
【0007】
このため、係合爪を係合溝に差し込む際には、寸法誤差を吸収するために板金部材を同時に四か所で変形させる力を加える必要がある。また、係合溝に差し込んだ係合爪をスライドさせる際には、4枚の係合爪を変形させながら、係合溝の側面との間に発生する摩擦力に逆らって係合爪をスライドさせる力が必要である。さらに、係合状態においては、各係合爪と各係合溝の縁端部分の係合部分の変形状態が異なり、付属部品の組み付け精度が劣化する可能性もある。
【0008】
このような弊害を回避するためには、精度良く係合爪および係合溝を形成すればよいが、別個の部材に係合爪および係合溝を精度良く形成することは一般に困難であり、特に、板金加工においては誤差が発生しやすい。また、誤差を見込んで、係合溝を全体として広幅としておくことも考えられるが、このようにすると取付状態においてガタつきが発生してしまうので好ましくない。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、係合爪および係合溝に寸法誤差がある場合においても係合溝に対する係合爪の差し込み操作、差し込み後の係合爪のスライド操作を簡単に行うことができ、しかも、ガタつき無く精度の良い取付状態を形成可能な電子機器の付属部品取付構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の電子機器の付属部品取付構造は、
少なくとも一対の係合爪を備えた爪形成部材と、
前記係合爪を差し込み可能な少なくとも一対の係合溝を備えた溝形成部材とを有し、
電子機器および当該電子機器に取り付けられる付属部品のいずれか一方の側に前記爪形成部材が取り付けられ、他方の側に前記溝形成部材が取り付けられており、
前記一対の係合爪は所定間隔で相互に平行に延びる一定厚さの爪であり、
前記一対の係合溝のそれぞれは、それらの長さ方向に沿って、前記係合爪が差し込まれる一定溝幅の爪差し込み用溝部分と、この爪差し込み用溝部分に連続して溝幅が漸減している爪ガイド用溝部分と、この爪ガイド用溝部分に連続して溝幅が最も狭い爪位置決め用溝部分とを備えており、
前記一対の係合溝における前記爪差し込み用溝部分の内側の縁端の間隔は、前記一対の係合爪における内側側面の間隔よりも狭く、
前記一対の係合溝における前記爪差し込み用溝部分の外側の縁端の間隔は、前記一対の係合爪における外側側面の間隔よりも広く、
各係合爪を各係合溝の前記爪差し込み用溝部分に差し込み、各係合爪を各係合溝に沿ってスライドさせると、各係合爪の前記係合溝の溝幅方向の位置が前記爪位置決め用溝部分によって規定されると共に、各係合爪の先端部分が各係合溝の縁端部分に対して前記差し込み方向とは反対側から係合した係合状態が形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の付属部品取付構造では、各係合溝に爪差し込み用溝部分が形成されており、この爪差し込み用溝部分の溝幅を係合爪の厚さよりも十分に広くしておけば、係合爪の間隔に寸法誤差がある場合においても、双方の係合爪を変形させることなく簡単に対応する係合溝に差し込むことができる。
【0012】
また、溝幅の広い爪差し込み用溝部分に差し込んだ後に係合爪をスライドさせると、係合溝は溝幅が漸減する爪ガイド用溝部分に沿って徐々に溝幅方向に位置決めされる。したがって、スライド時に必要な操作力が少なくて済み、スライド操作も簡単に行うことができる。係合爪が最も溝幅の狭い爪位置決め用溝部分までスライドすると、当該爪位置決め用溝部分によって係合爪は溝幅方向に位置決めされた状態になる。この爪位置決め用溝部分によって、係合爪は溝幅方向にガタ付くことなく精度良く溝幅方向に位置決めされた係合状態になる。
【0013】
本発明において、前記係合溝は、前記爪位置決め用溝部分に連続して溝幅が広がっている広幅溝部分を備えていることが望ましい。広幅溝部分まで係合爪をスライドさせることにより、爪位置決め用溝部分が係合爪の側面部分に確実に係合した状態となり、これによって、係合爪の溝幅方向の位置決めが確実に行われ、そのガタ付きも防止される。
【0014】
また、本発明において、各係合溝の溝形状を次のようにすることができる。すなわち、
前記係合溝における長さ方向に延びている一方の溝側面を直線状側面とする。当該係合溝における前記直線状側面に対峙している他方の溝側面を、当該直線状側面に平行に延びて前記爪差し込み用溝部分を規定している平行側面部分と、これに連続して前記直線状側面に接近する方向に傾斜する方向に延びて前記爪ガイド用溝部分を規定している傾斜側面部分と、これに連続して前記直線状側面から後退する方向に延びて前記広幅溝部分を規定している後退側面部分とを備えた形状と、前記傾斜側面部分における前記後退側面部分に繋がっている端部分によって前記爪位置決め用溝部分を規定する。この場合には、この溝形状の前記一対の係合溝を左右対称の状態に形成しておくことが望ましい。
【0015】
次に、本発明において、係合爪の差し込み方向の位置決めを確実に行うためには、前記溝形成部材における前記係合溝の長さ方向の両側に溝側当接面を形成し、前記爪形成部材における前記係合爪の長さ方向の両側には、前記係合爪を前記係合溝に差し込むと前記溝側当接面に当接する爪側当接面を形成しておくことが望ましい。
【0016】
係合爪を係合溝に差し込んだ状態において、爪形成部材が溝形成部材に全体的に面接触すると、これらの面の歪みなどによって係合爪の差し込み方向の位置にばらつきが発生してしまう。本発明では、部分的に形成した溝側当接面および爪側当接面のみを精度良く形成しておけばよく、また、このようにすることは比較的容易であるので、係合爪の差し込み方向の位置を精度良く規定することができる。また、差し込み方向の側からは、係合溝の両側位置において爪側当接面が溝形成部材に押し付けられ、差し込み方向の反対側からは、係合爪の先端部分が溝形成部材に押し付けられた状態が形成される。よって、爪形成部材と溝形成部材とは差し込み方向にガタ付き無く組み付けられた状態になる。
【0017】
ここで、前記係合爪の先端部分が前記差し込み方向とは反対側から係合する前記係合溝の前記縁端部分を平坦な係合面とし、前記係合爪の前記先端部分を、前記係合面に向けて突出している凸状の輪郭形状にしておくことが望ましい。
【0018】
次に、本発明は、上記構成の付属部品取付構造によって付属部品が取り付けられる電子機器であって、前記係合爪が形成された前記爪形成部材および前記係合溝が形成された前記溝形成部材のうちの一方の部材を備えていることを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記構成の付属部品取付構造によって電子機器に取り付けられる電子機器の付属部品であって、前記係合爪が形成された前記爪形成部材および前記係合溝が形成された前記溝形成部材のうちの一方の部材を備えていることを特徴としている。
【0020】
一方、本発明の付属部品取付構造は、フィスカルメモリーが内蔵されているオプションボックス付きプリンターにおいて、オプションボックスをプリンター本体側に取り付けるために取付構造として用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電子機器の付属部品取付構造においては、係合爪を係合溝の広幅の爪差し込み用溝部分に差し込み、係合溝に沿ってスライドさせながら溝幅方向の位置決めを徐々に行って、溝幅が最も狭い爪位置決め用溝部分によって係合爪を精度良く溝幅方向に位置決めした係合状態を形成するようにしている。したがって、板金製の爪形成部材、溝形成部材を用いる場合において、係合爪、係合溝に寸法誤差があっても、係合爪を係合溝に差し込んでスライドさせて係合させる操作を小さな力で簡単に行うことができ、また、ガタ付きの無い精度の良い係合状態を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるオプションボックス付きプリンターの外観斜視図である。
【図2】図1のプリンターを底面側から見た場合の外観斜視図である。
【図3】図2において封印機構を分解した状態で示すプリンターの外観斜視図である。
【図4】オプションボックス取付構造を示す斜視図である。
【図5】オプションボックス取付構造を示す平面図および側面図である。
【図6】係合爪および係合溝を示す説明図である。
【図7】オプションボックスの取付操作を示す説明図である。
【図8】一般的な係合爪、係合溝からなる取付構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明を適用した電子機器の付属部品取付構造の実施の形態を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係るオプションボックス付きプリンターを示す外観斜視図であり、図2は当該プリンターを底面側から見た場合の外観斜視図である。オプションボックス付きプリンター1は、プリンター本体2と、このプリンター本体2の底面に、後述の取付構造によって着脱可能に取り付けたオプションボックス20とを備えている。プリンター本体2は、その底面部分を除き、プラスチック製のプリンターケース3によって覆われており、底面部分は板金製の底板10によって規定されている。底板10には、オプションボックス20が着脱可能に取り付けられている。
【0025】
オプションボックス20の内部には、電源用のACアダプター(図示せず)が収納されている。オプションボックス20は、全体として一定厚さの偏平な直方体形状をしており、上側が開口し底部21aと側壁部21bとが一体に形成されたプラスチック製の枠状ケース21と、この上側開口を封鎖する板金製の蓋板22(図4、図5参照)とを備えている。プリンター1は、フィスカル対応の仕様であり、プリンター本体2側には、フィスカル制御用のICチップおよびフィスカル情報を記憶保持するためのフィスカルメモリーチップ(いずれも図示せず)が搭載されている。そして、オプションボックス20をプリンター本体2より取り外さないとフィスカルメモリーチップにアクセスできない構造となっている。
【0026】
プリンター本体2およびオプションボックス20の後面側の部位には内側に切り込まれた矩形の凹部4が形成されている。この凹部4の内部には封印機構5が取り付けられており、フィスカルメモリーチップの改ざんを予防のためにオプションボックス20が不正に取り外されることを防止すると共に、不正に取り外されたことが確認できるようになっている。
【0027】
(封印機構)
図3は、図2と同じく、オプションボックス付きプリンター1を底面側から見た外観斜視図であり、封印機構5の構成部品を分解した状態で示してある。図3を参照して説明すると、封印機構5は、オプションボックス20の枠状ケース21の後端の背面壁21cに形成した取付け部51を備えており、この取付け部51には一対のリブ52が立設されている。この取付け部51には板金製の封印部材取付板53がリブ52に案内されてプリンター後側から装着されている。
【0028】
背面壁21cの前側には、取付けられたプリンター本体2の側の底板10から延出している連結部(図示せず)が当接している。この連結部にはナットが固定されている。取付け部51、封印部材取付板53の中心にはボルト穴が形成されており、これらを通してプリンター後側から締結ボルト54と底板10から延出している連結部のナットとが締結することにより一体に締結固定されて、プリンター本体2にオプションボックス20が固定されている。
【0029】
封印部材取付板53の左右の縁にはプリンター後方に突出した突出片53a、53bが形成されている。この封印部材取付板53には、プリンター後側からカバー金具55が被せられて締結ボルト54が覆い隠されている。図2に示すように、封印部材取付板53の突出片53a、53bのみが、カバー金具55を貫通してプリンター後方に突出している。突出片53a、53bの先端部分には封印部材(図示せず)を架け渡すための貫通穴が形成されており、これらの貫通穴に、封印部材を構成しているワイヤーなどのループ状の金具が架け渡され、カバー金具55の取り外しが出来ないようになっている。
【0030】
オプションボックス20をプリンター本体2の底面から外す場合には、封印部材を切断して、カバー金具55を取り外す。これにより、締結ボルト54の頭部が露出するので、締結ボルト54を工具を用いて緩めて外すことができる。締結ボルト54を外すと、オプションボックス20は以下に説明する着脱式の取付構造によってプリンター本体2の底面に取り付けられているので、当該オプションボックス20を取り外すことが可能になる。
【0031】
(オプションボックス取付構造)
次に、図4は、プリンター本体2にオプションボックス20を着脱可能な状態で取り付ける取付構造を構成している底板10および蓋板22を示す斜視図である。図5(a)および(b)は、これら底板10および蓋板22が組み付けられた状態を示す平面図および側面図である。また、図6(a)および(b)は係合爪および係合溝を示す説明図である。
【0032】
まず、図4および図5を参照して説明すると、プリンター本体2の板金製の底板10(爪形成部材)の両側の縁部分には、それらの前後にそれぞれ一対の前側係合爪11、12および後側係合爪13、14が形成されている。これらの係合爪11〜14は底板10の左右の縁から裏面側に直角に折れ曲がって延びている。これに対して、オプションボックス20の板金製の蓋板22(溝形成部材)は、その両側の縁から裏面側に直角に折り曲げられた一定幅の垂直側板22a、22bを備えており、これらの両側の縁に沿って前後にそれぞれ一対の前側係合溝31、32および後側係合溝33、34が形成されている。
【0033】
係合溝31〜34は係合爪11〜14のそれぞれに対応した位置に形成されており、各係合爪11〜14を対応する係合溝31〜34の上方において位置決めして、これらの係合溝31〜34に差し込み、しかる後に係合爪11〜14を係合溝31〜34の長さ方向(本例ではプリンター前後方向)にスライドすると、各係合爪11〜14の先端部分11a〜14a(プリンター後側に突出している部分)が、蓋板22における係合溝31〜34のプリンター後方側の縁端部分を規定している部分の裏面側(係合面)に入り込み、上下方向に外すことのできない係合状態が形成されるようになっている。
【0034】
次に、図4および図5を参照して、底板10の係合爪11〜14について詳しく説明する。まず、一対の前側係合爪11、12は、左右対称な形状をした一定厚さの爪であり、一定の間隔でプリンター前後方向に平行に延びている。
【0035】
本例では、底板10の両側の縁部分が前後の部分において裏面側に一定幅で直角に折り曲げられて、一対の前側垂直側板15、16および一対の後側垂直側板17、18が形成されている。前側垂直側板15、16における前側の部分には一定幅で下方に突出している係合爪11、12が一体形成されている。各係合爪11、12は、垂直側板15、16から下方に一定幅で突出した後にプリンター後方側にL状に突出しており、突出部分が係合用の先端部分11a、12aとなっている。先端部分11a、12aにおける上端面部分11b、12bは上方に突出した山形輪郭をしている。
【0036】
前側垂直側板15、16の下端面は全体として前後方向に延びる水平な平坦面であるが、係合爪11、12の前後には、下方に僅かに突出した一定長さの水平な前側当接面15a、16a(爪側当接面)および後側当接面15b、16b(爪側当接面)が形成されている。後側当接面15b、16bは、係合爪11、12の先端部分11a、12aよりも後側にオフセットした位置に形成されている。
【0037】
一対の後側係合爪13、14は、前後方向の長さが前側係合爪11、12よりも長い以外は前側係合爪11、12と同様であり、左右対称な形状をした一定厚さの爪であり、一定の間隔でプリンター前後方向に平行に延びている。また、各後側係合爪13、14は、後側垂直側板17、18から下方に一定幅で突出した後にプリンター後方側にL状に突出しており、突出部分が係合用の先端部分13a、14aとなっている。先端部分13a、14aにおける上端面部分13b、14bは上方に突出した山形輪郭をしている。
【0038】
後側垂直側板17、18の下端面においても、前側垂直側板15、16の場合と同様に、後側係合爪13、14の前後に、下方に僅かに突出した一定長さの水平な前側当接面17a、18aおよび後側当接面17b、18bが形成されており、後側当接面17b、18bは、後側係合爪13、14の先端部分13a、14aよりも後側にオフセットした位置に形成されている。
【0039】
次に、図4、図5および図6を参照して、オプションボックス20の蓋板22に形成した前側係合溝31、32および後側係合溝33、34について説明する。一対の前側係合溝31、32は、それらの長さ方向に沿って、プリンター前側から後側に向けて、前側係合爪11、12が差し込まれる一定溝幅の爪差し込み用溝部分31a、32aと、この爪差し込み用溝部分31a、32aに連続して溝幅が漸減している爪ガイド用溝部分31b、32bと、この爪ガイド用溝部分31b、32bに連続して溝幅が最も狭い爪位置決め用溝部分31c、32cと、これに連続して再び溝幅が広がっている広幅溝部分31d、32dとを備えた形状となっている。爪差し込み用溝部分31a、32aは、前側係合爪11、12の厚さに比べて十分に広い溝幅の部分であり、前側係合爪11、12を差し込み可能な長さ寸法となっている。これに対して、爪位置決め用溝部分31c、32cは、前側係合爪11、12の厚さとほぼ同様な溝幅の狭い部分である。
【0040】
ここで、前側係合溝31、32が形成されている蓋板22においては、その両側の縁部分が裏面側に直角に折り曲げられて、一定幅の垂直側板22a、22bが形成されている。これらの垂直側板22a、22bにおけるプリンター前後方向に直線状に延びている内側の平坦な垂直側面22c、22dによって、前側係合溝31、32の外側の溝側面が規定されている。前側係合溝31、32における反対側の溝側面は、垂直側面22c、22dに対して一定の間隔で平行に延びて爪差し込み用溝部分31a、32aを規定している平行側面部分31A、32Aと、これらに連続して垂直側面22c、22dに接近する方向に傾斜する方向に延びて爪ガイド用溝部分31b、32bを規定している傾斜側面部分31B、32Bと、これらに連続して垂直側面22c、22dから離れる方向に延びて広幅溝部分31d、32dを規定している後退側面部分31D、32Dとを備えた輪郭形状となっている。傾斜側面部分31B、32Bにおける後退側面部分31D、32Dに繋がっている端部分31C、32Cによって爪位置決め用溝部分31c、32cが規定されている。
【0041】
後側係合溝33、34も同様に形成されており、それらの長さ方向に沿って、プリンター前側から後側に向けて、後側係合爪13、14が差し込まれる一定溝幅の爪差し込み用溝部分33a、34aと、この爪差し込み用溝部分33a、34aに連続して溝幅が漸減している爪ガイド用溝部分33b、34bと、この爪ガイド用溝部分33b、34bに連続して溝幅が最も狭い爪位置決め用溝部分33c、34cと、これに連続して再び溝幅が広がっている広幅溝部分33d、34dとを備えた形状となっている。
【0042】
また、後側係合溝33、34においても、それらの外側の溝側面が、垂直側板22a、22bの垂直側面22c、22dによって規定されている。後側係合溝33、34における反対側の溝側面は、垂直側面22c、22dに対して一定の間隔で平行に延びて爪差し込み用溝部分33a、34aを規定している平行側面部分33A、34Aと、これらに連続して垂直側面22c、22dに接近する方向に傾斜する方向に延びて爪ガイド用溝部分33b、34bを規定している傾斜側面部分33B、34Bと、これらに連続して垂直側面22c、22dから離れる方向に延びて広幅溝部分33d、34dを規定している後退側面部分33D、34Dとを備えた輪郭形状となっている。傾斜側面部分33B、34Bにおける後退側面部分33D、34Dに繋がっている端部分33C、34Cによって爪位置決め用溝部分33c、34cが規定されている。
【0043】
ここで、図5に示すように、前側係合爪11、12および後側係合爪13、14における内側側面の間隔をD1、それらの外側側面の間隔をE1とすると、前側係合溝31、32および後側係合溝33、34における平行側面部分31A、32Aおよび33A、34Aの間隔DはD1よりも狭い寸法に設定されており、それらの外側の溝側面である垂直側面22c、22dの間隔EはE1よりも広い間隔に設定されている。また、最も幅の狭い爪位置決め用溝部分31c〜34cを規定している端部分31C、32Cおよび33C、34Cの間隔は、前側係合爪11、12の内側側面の間隔Dと同一となるように設定されている。
【0044】
(オプションボックスの取付操作)
図7(a)および(b)は、係合爪12を係合溝32に差し込んだ状態を示す部分側面図およびa−aで切断した部分を示す部分断面図であり、図7(c)および(d)は、係合爪12を係合溝32に沿ってスライドさせた後の係合状態を示す側面図およびc−c線で切断した部分を示す部分断面図である。主に図7を参照して、プリンター本体2の底面にオプションボックス10を取り付ける操作を説明する。
【0045】
まず、プリンター本体2の底板10に形成されている各係合爪11〜14を、オプションボックス20の蓋板22に形成されている各係合溝31〜34に対して上方から位置決めし(図4参照)、各係合爪11〜14を各係合溝31〜34の広幅の爪差し込み用溝部分31a〜34aに差し込む。爪差し込み用溝部分31a〜34aは係合爪11〜14の厚さに比べて十分に広いので、双方に位置誤差あるいは寸法誤差があっても小さな力で簡単に係合爪11〜14を係合溝31〜34に差し込むことができる。また、係合爪11〜14と係合溝31〜34との正確な位置合わせも不要になるので簡単に差し込み操作を行うことができる。
【0046】
図7(a)、(b)に示すように、係合爪11〜14を係合溝31〜34に差し込むと、これらの前後に形成されている前側当接面15a〜18aおよび後側当接面15b〜18bが、蓋板22の平坦な上面における係合溝31〜34の前後の縁部分22e、22f(溝側当接面)に当接する。これにより、係合爪11〜14の差し込み方向の位置決めがなされる。
【0047】
この後は、係合爪11〜14を係合溝31〜34に沿ってプリンター後方に向けてスライドさせる。換言すると、プリンター本体2をオプションボックス20に対して相対的に後方にスライドさせる。係合爪11〜14は係合溝31〜34の爪ガイド用溝部分31b〜34bによって溝幅方向(プリンター幅方向)に徐々にガイドされながら後方にスライドする。したがって、係合爪11〜14、係合溝31〜34に位置誤差、寸法誤差があったとしても、係合爪11〜14がスライドに伴って徐々に変形していく。また、スライド時における係合爪11〜14と係合溝31〜34の両側の溝側面との間の摩擦力も小さいので、スライドさせるために大きな力を必要とせずに、簡単にスライドさせることができる。
【0048】
さらに、係合爪11〜14の側の底板10は、その両側に形成した前側当接面15a〜18aおよび後側当接面15b〜18bが係合溝31〜34の側の平坦な縁部分22e、22fをスライドする。底板10と蓋板22は、これら以外の部位が相互に摺動することがない。よって、スライド時の摩擦力を低減でき、スライド操作を簡単に行うことができる。
【0049】
このようにして、係合爪11〜14を係合溝31〜34の後側の縁端に当たるまでスライドさせると、図7(c)、(d)に示すように、係合爪11〜14の先端部分11a〜14aが下側から、蓋板22における係合溝31〜34の縁端部分の裏面(係合面)22gに係合した係合状態が形成される。この係合状態では、係合爪11〜14の内側側面に対して内側から係合溝31〜34の内側の溝側面における端部分が当接して、係合爪11〜14の幅方向の位置決めがなされた状態になる。
【0050】
また、蓋板22の上側から前側当接面15a〜18aおよび後側当接面15b〜18bが当接し、その下側から係合爪11〜14の先端部分11a〜14aが当接し、これらの3点によって、プリンター上下方向、すなわち、係合爪差し込み方向の位置決めがなされた状態が形成される。したがって、係合爪11〜14は上下左右方向にガタつきなく精度良く位置決めされた取付状態が形成される。また、係合爪11〜14を係合溝31〜34に差し込む際およびスライドさせる際に、係合爪の側の部分および係合溝の側の部分に無理な力が作用しないので、これらの部分に無理な変形が生じた状態で組み付けられて組付け精度が低下してしまう、という弊害も回避できる。
【0051】
なお、このようにしてオプションボックス20を取り付けた後は、封印機構5によってオプションボックス20が取り外されないようにプリンター本体2に固定されて封印される。
【0052】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態は本発明の取付構造をオプションボックス付きプリンターに適用した例であるが、本発明の取付構造は、オプションボックス以外の付属部品をプリンターに外付けする場合の取付構造としても用いることができる。また、プリンター以外の電子機器に付属部品を取り付けるための取付構造として採用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 オプションボックス付きプリンター、2 プリンター本体、3 プリンターケース、4 凹部、5 封印機構、10 底板、11〜14 係合爪、11a〜14a 先端部分、11b〜14b 上端面部分、15,16 前側垂直側板、17,18 後側垂直側板、15a〜18a 前側当接面、15b〜18b 後側当接面、20 オプションボックス、21 枠状ケース、21a 底部、21b 側壁部、21c 背面壁、22 蓋板、22a,22b 垂直側板、22c,22d 垂直側面、22e,22f 縁部分、22g 裏面、31〜34 係合溝、31a〜34a 爪差し込み用溝部分、31b〜34b 爪ガイド用溝部分、31c〜34c 爪位置決め用溝部分、31d〜34d 広幅溝部分、31A〜34A 平行側面部分、31B〜34B 傾斜側面部分、31C〜34C 端部分、31D〜34D 後退側面部分、51 取付け部、52 リブ、53 封印部材取付板、53a,53b 突出片、54 締結ボルト、55 カバー金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の係合爪を備えた爪形成部材と、
前記係合爪を差し込み可能な少なくとも一対の係合溝を備えた溝形成部材とを有し、
電子機器および当該電子機器に取り付けられる付属部品のいずれか一方の側に前記爪形成部材が取り付けられ、他方の側に前記溝形成部材が取り付けられており、
前記一対の係合爪は所定間隔で相互に平行に延びる一定厚さの爪であり、
前記一対の係合溝のそれぞれは、それらの長さ方向に沿って、前記係合爪が差し込まれる一定溝幅の爪差し込み用溝部分と、この爪差し込み用溝部分に連続して溝幅が漸減している爪ガイド用溝部分と、この爪ガイド用溝部分に連続して溝幅が最も狭い爪位置決め用溝部分とを備えており、
前記一対の係合溝における前記爪差し込み用溝部分の内側縁端の間隔は、前記一対の係合爪における内側側面の間隔よりも狭く、
前記一対の係合溝における前記爪差し込み用溝部分の外側縁端の間隔は、前記一対の係合爪における外側側面の間隔よりも広く、
各係合爪を各係合溝の前記爪差し込み用溝部分に差し込み、各係合爪を各係合溝に沿ってスライドさせると、各係合爪の前記係合溝の溝幅方向の位置が前記爪位置決め用溝部分によって規定されると共に、各係合爪の先端部分が各係合溝の縁端部分に対して前記差し込み方向とは反対側から係合した係合状態が形成されることを特徴とする電子機器の付属部品取付構造。
【請求項2】
前記係合溝は、前記爪位置決め用溝部分に連続して溝幅が広がっている広幅溝部分を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の付属部品取付構造。
【請求項3】
前記係合溝における長さ方向に延びている一方の溝側面は直線状側面であり、
当該係合溝における前記直線状側面に対峙している他方の溝側面は、当該直線状側面に平行に延びて前記爪差し込み用溝部分を規定している平行側面部分と、これに連続して前記直線状側面に接近する方向に傾斜する方向に延びて前記爪ガイド用溝部分を規定している傾斜側面部分と、これに連続して前記直線状側面から後退する方向に延びて前記広幅溝部分を規定している後退側面部分とを備えており、
前記傾斜側面部分における前記後退側面部分に繋がっている端部分によって前記爪位置決め用溝部分が規定されており、
前記一対の係合溝は左右対称の状態に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子機器の付属部品取付構造。
【請求項4】
前記溝形成部材における前記係合溝の長さ方向の両側には溝側当接部が形成されており、
前記爪形成部材における前記係合爪の長さ方向の両側には、前記係合爪を前記係合溝に差し込むと前記溝側当接部に当接する爪側当接部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の電子機器の付属部品取付構造。
【請求項5】
前記係合爪の先端部分が前記差し込み方向とは反対側から係合する前記係合溝の前記縁端部分は平坦な係合面であり、
前記係合爪の前記先端部分は、前記係合面に向けて突出している凸状の輪郭形状をしていることを特徴とする請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の電子機器の付属部品取付構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の付属部品取付構造によって付属部品が取り付けられる電子機器であって、
前記係合爪が形成された前記爪形成部材および前記係合溝が形成された前記溝形成部材のうちの一方の部材を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の付属部品取付構造によって電子機器に取り付けられる電子機器の付属部品であって、
前記係合爪が形成された前記爪形成部材および前記係合溝が形成された前記溝形成部材のうちの一方の部材を備えていることを特徴とする電子機器の付属部品。
【請求項8】
フィスカルメモリーが内蔵されているオプションボックス付きプリンターであって、
前記オプションボックスが請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の付属品取付構造によってプリンター本体側に取り付けられていることを特徴とするオプションボックス付きプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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