電子機器の防水構造
【課題】 防水に用いる素材(防水素材)の弾性によってスイッチ操作が邪魔されることなく、かつ、防水素材の劣化を防ぐことができる電子機器の防水構造を得る。
【解決手段】 電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部(351)と、ユーザが可動部を可動させるために操作する操作部(31)と、可動部と操作部とは組み合わされていて、可動部と操作部との組み合わせ部を覆う防水シート(34)と、を有し、防水シートには凹凸部(341)が形成されており、凹凸部は、組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成することを特徴とする電子機器の防水構造による。
【解決手段】 電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部(351)と、ユーザが可動部を可動させるために操作する操作部(31)と、可動部と操作部とは組み合わされていて、可動部と操作部との組み合わせ部を覆う防水シート(34)と、を有し、防水シートには凹凸部(341)が形成されており、凹凸部は、組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成することを特徴とする電子機器の防水構造による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の防水構造に関するものであって、詳しくは、電子機器の防水に用いる素材(防水素材)の弾性によってスイッチ操作が邪魔されることなく、かつ、防水素材の劣化を防ぐことができる電子機器の防水構造および、同構造を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器を防水にするために、当該電子機器を収めても使用でき、かつ、防水性を備えたケース(防水ケース)が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載された防水ケースは、電子機器を内部に収めた状態でも電子機器の操作ボタンやスイッチを操作できるように、防水ケースの表面に、操作ボタンやスイッチの操作に用いられる部材が配置されている。これら部材と、ケース筐体の接合部分には、当然ながら防水構造を有している。
【0004】
また、電子機器自体が防水構造を備えているものが知られている。このような電子機器の防水構造は筐体の隙間や孔にシリコンやゴムなどの防水素材を配置させて、電子機器の内部に浸水することを防ぐものである。
【0005】
このような電子機器の防水構造には課題がある。すなわち、電子機器の操作に用いられるスライドスイッチなどは周囲に防水素材を配置する必要があるため、これらスイッチの操作時には、この防水素材の弾性が邪魔となって動かしにくくなることがある。また、スイッチを所定の方向に可動させるときは、スイッチの可動方向と反対の方向に、防水素材が引っ張られるから、摩耗が生じて耐久性に悪影響を及ぼすこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、電子機器の防水構造に用いる防水素材の可撓性や耐久性を損なうことなく、スイッチ類の操作感の向上も図ることができる電子機器の防水構造、および、同構造を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は電子機器の防水構造に関するものであって、電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部と、ユーザが可動部を可動させるために操作する操作部と、可動部と操作部とは組み合わされていて、可動部と操作部との組み合わせ部を覆う防水シートと、を有し、防水シートには凹凸部が形成されており、凹凸部は、組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成すること最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子機器の防水構造において、スライドスイッチの周囲に配置された防水素材が、スライドスイッチの操作の邪魔にならず、また、スライドスイッチの操作によって生じる摩擦等によって防水素材が劣化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る防水構造を備える電子機器の例であるデジタルカメラの外観を示す(a)正面斜視図、(b)背面斜視図、である。
【図2】上記防水構造の例を示す電子機器の分解斜視図である。
【図3】上記防水構造の例を示す縦断面図である。
【図4】上記防水構造の例において、切換部材を操作した状態を示す縦断面図である。
【図5】上記防水構造に係る防水効果の例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る防水構造を備える電子機器の別の例を示す分解斜視図である。
【図7】上記防水構造の別の例を示す縦断面図である。
【図8】上記防水構造の別の例において、切換部材を操作した状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る防水構造に用いるスイッチと防水シートの外観のさらに別の例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る防水構造のさらに別の例を示す縦断面図である。
【図11】上記防水構造のさらに別の例において、切換部材を操作した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器の防水構造の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0011】
本発明に係る電子機器の防水構造の実施形態を説明するに当たって、電子機器の例としてデジタルカメラを用いることとする。図1は、本発明に係る防水構造を有するデジタルカメラの外観の例を図1(a)の正面斜視図と、図1(b)の背面斜視図を用いて説明する。図1(a)に示すようにデジタルカメラ10は、上面に押しボタン式のシャッタースイッチ1が配置されている。また、図1(b)に示すように、背面には押しボタン式の背面操作ボタン群2およびスイッチ3が配置されている。なお、スイッチ3はデジタルカメラ1に上面に配置されてもよい。図1(b)に例示したスイッチ3はスライドスイッチであるが、本発明に係る電子機器の防水構造を適用可能なスイッチはスライドスイッチに限るものではない。
【0012】
次に、本発明に係る電子機器の防水構造の実施形態について、図2に示す電子機器の防水構造の主要部の分解斜視図を用いて説明する。図2において、符号100は、スイッチ3の周囲に係るデジタルカメラ10の筐体の一部である外カバーを示している。
【0013】
図2に示すように、外カバー100の内部には、スイッチ3を構成する部材である切換部材31と、Oリング32と、内カバー33と、防水シート34と、スイッチ35と、基板36と、が配置されている。
【0014】
切換部材31の上部は外カバー100に形成されている孔101から露出して、利用者が操作する操作部となる。また、切換部材31は、2つの突起部を有している。この突起部は、操作部とは反対側であって、図中下方向に所定の寸法をもってなる。切換部材31の突起部は、内カバー33の天面部に形成されている孔331を通して下方に突出し、後述するスイッチ35の可動部351を挟むことができるように形成されている。切換部材31の操作部をデジタルカメラ10の利用者が操作すると、スイッチ35の可動部351を可動させることができる。これらの動作によって、デジタルカメラ10が有する電気的接点の切り替え動作を行うことができる。
【0015】
内カバー33は、外観が箱状の形態を有する立方体の内部を中空にしたものであって、後述する防水シート34を挟みながらスイッチ35の周囲に覆い被せることができる形状を有している。内カバー33の天面には、孔331が形成されている。この孔331は切換部材31の突起部をスイッチ35に嵌合できるようにするためのものであって、切換部材31が所定の方向に可動できるように、所定の横寸法を有してなる。
【0016】
また、内カバー33の天面部には、孔331の外周に溝332が形成されている。溝332には、Oリング32が嵌合される。外カバー100の内壁面と内カバー33の天面部が接した状態でスイッチ3は組み付けられる。この組み付け状態において、孔101と切換部材31の隙間から入った水は、外カバー100の内壁面と内カバー33の天面部の間を抜けてデジタルカメラ10の内部に向かうことになる。その浸水を防止するために、Oリング32が配置されている。
【0017】
防水シート34は、切換部材31とスイッチ35の可動部351との間に配置される防水素材からなるシート状の部材であって、スイッチ35を覆うことができるように、波状の外形(蛇腹形状)を有する凹凸部341が内カバー33との対向面に形成されている。凹凸部341は、複数の凸部を有してなり、この複数の凹凸のうち、略中央の凸部は可動部351の周囲を覆い、その他の凸部は、可動部351の周囲に形成される弛みとなる。
【0018】
スイッチ35の可動部351は、図中左右方向に摺動させることで電気的接点を切り替えることができるものである。基板36は、スイッチ35の可動部351によって切り替えられた電気的接点に応じて、当該電子機器の動作を制御する電子回路を備えた回路基板である。
【0019】
次に、本実施例に係る防水構造について、図3の縦断面図を用いて説明をする。図3において、切換部材31は、外カバー100の表面に形成されている孔101から、その一部が外部に露出して操作可能になっている。この露出している部分が操作部となる。また、操作部の下部には、下方向に突出する2つの突起部を備えている。この突起部が、防水シート34を介してスイッチ35の可動部351に嵌合し、操作部を移動させることで、電気的接点を切り替えることができるように構成されている。
【0020】
防水シート34の凹凸部341を形成する複数の凸部のうち、中央の凸部(凹凸部341a)は、前述のとおり、スイッチ35の可動部351の周囲に覆い被さるようになっている。この凹凸部341aに連なる部分の凹部には、切換部材31の突起部が入り込むようになっている。また、凹凸部341のうち、スイッチ35の突起部分の周辺に位置する2つの凹凸部341bと凹凸部341cは、弛み部となっている。切換部材31の突起部は、防水シート34の凹凸部341aと凹凸部341bおよび凹凸部341cによって覆われるようになっている。
【0021】
ここで、図3において、スイッチ35の可動部351は、3ポジションのものを例示しているが、2ポジションのものであってもよい。
【0022】
上記実施例に係るスイッチ3を操作した例を図4に示す。図4は、切換部材31を当初のポジションから右方向に移動した状態を示している。切換部材31が右方向に移動されると、可動部351も、右方向に移動することになる。同時に、切換部材31の突起部の移動に応じて防水シート34の凹凸部341c側の弛みは間が詰まって、可動部351を挟んで反対側の凹凸部341bの弛みは間延びするようになる。
【0023】
防水シート34は、内カバー33の外壁端部と基板36に挟まれて固定されているので、切換部材31が移動すると、スイッチ35の周囲を覆っている防水シート34も同じ方向に移動することになるが、この移動によって防水シート34に加わる変形は、内カバー33と基板36に挟まれて固定されている部分の防水シート34に及ぶことはない。すなわち、スイッチ35への操作によって防水シート34に加わる力は、凹凸部341bと凹凸部341cの弛みにかかる変形によって吸収されるので、固定されている部分に、余計な力が加わることを防ぐことができる。これによって、防水機能を発揮する部分に余計な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0024】
このように本実施例に係る防水構造によれば、切換部材31とスイッチ35との間に複数の凹凸部を有する凹凸部341が形成されている防水シート34を用いることで、切換部材31が操作されてスイッチ35の可動部351が移動しても、これに伴って防水シート34に加わる力を凹凸部341が吸収し、操作方向と反対方向に作用する力を生じさせることも、また、固定部分への張力も生じさせることはないので、操作性を損なうことなく、耐久性に優れた防水構造を得ることができる。
【0025】
上記実施形態の防水効果の例を図5に示す。図5において、符号200で示した塗りつぶされた領域が浸水領域を示している。外カバー100に形成されている孔101と切換部材31の操作部の隙間からの浸水した水は、外カバー100の内壁面と内カバー33の天面の間において、Oリング32によって防水されている。また、切換部材31と内カバー33の孔331との隙間から浸水した水は、内カバー33の内壁面と防水シート34によって、防水されている。
【0026】
次に、本発明に係る電子機器の防水構造の別の実施形態について、図を用いて説明する。図6は、本発明に係る電子機器の防水構造の主要部の別の例を示す分解斜視図である。図6において、符号100aは、デジタルカメラ10の筐体の一部である外カバーの一部のみを示している。
【0027】
図6に示すように、外カバー100aの内部には、スイッチ3aを構成する切換部材の別の例であるボタン型の切換部材31aと、Oリング32と、内カバー33aと、防水シート34aと、可動部を有するスイッチ35aと、基板36と、が配置されている。
【0028】
切換部材31aの上部は、利用者が操作する操作部となる。切換部材31aは、外カバー100aに形成されている孔101aから挿入されて後述するスイッチ35aの可動部352に嵌合する。この切換部材31aが有する突起部は、略筒状の外形を有しており、底面の端部には、可動部352が嵌合できるように穴が形成されている。なお、図6において、切換部材31aの穴は図示を省略している。切換部材31aの操作部をデジタルカメラ10の利用者が操作すると、スイッチ35aの可動部352を可動させることができる。これらの動作によって、デジタルカメラ10の電気的接点の切り替え動作を行うことができる。
【0029】
内カバー33aは、平面視がロの字形状を有し、後述する防水シート34aとスイッチ35aの周囲に被せることができる形状を有している。内カバー33aの平面中央部分には、孔331aが形成されている。この孔331aによって切換部材31aの突起部がスイッチ35aの可動部352に嵌合できるようになっている。
【0030】
また、孔331aの周囲には溝332aが形成され、この溝332aに、Oリング32が嵌合される。外カバー100aの内壁面と内カバー33aが接した状態でスイッチ3aは組み付けられるので、組み付け状態において、孔101aと切換部材31aの隙間から入った水は、外カバー100aの内壁面と内カバー33aとの間を抜けて内部に向かう。その浸水を防止するために、Oリング32が配置されている。
【0031】
防水シート34aは、切換部材31aとスイッチ35aの可動部352との間に配置される防水素材からなるシート状の部材であって、スイッチ35aを覆うようことができるように、凹凸部342が形成されている。凹凸部342は、中央部と円周部に凸形状の盛り上がりが形成されており、中央の凸部と円周の凸部の間には凹部が形成されている。故に、凹凸部342の形状は中央の凸部と略同心円の凸部が所定の間隔を経て配置され、各凸部の間は凹部にて連結され、波状の外形(蛇腹形状)を有している。この凹凸部342が有する略中央の凸部はスイッチ35aの可動部352の周囲に覆い被さり、円周部の凸部は、可動部352の可動方向に追随して変形することができる弛みを形成している。
【0032】
スイッチ35aはいわゆる多方向型のスイッチであって、可動部352を所定の方向に傾斜させることで、または、押し込む(プッシュする)ことで電気的接点を切り替えることができるものである。基板36aは、スイッチ35aの可動部352によって切り替えられた電気的接点に応じて、当該電子機器の動作を制御する電子回路を備えた回路基板である。
【0033】
次に、本実施例に係る防水構造について、図7の断面図を用いて説明をする。図7において、切換部材31aは、外カバー100aに形成されている孔101aから突起部が挿入されて、露出している部分は操作可能な操作部を構成している。孔101aから挿入されている突起部は略円筒状の外形を有ており、その底面端部には、可動部352が嵌合可能な孔311aが形成されている。
【0034】
防水シート34aは、切換部材31aの突起部とスイッチ35aとの間に配置されており、複数の凸部を有する凹凸部342が形成されている。この凹凸部342を形成する複数の凸部のうち、中央の凸部(凹凸部342a)は、可動部352の周囲に覆い被さるようになっている。この凹凸部342aに連なる部分の凹部には、切換部材31の突起部が入り込むようになっている。また、凹凸部342のうち、スイッチ35aの突起部分の周辺に位置する凹凸部341bは、弛み部となっている。切換部材31aの突起部は、防水シート34aの凹凸部342aと凹凸部341bによって覆われるようになっている。
【0035】
上記実施例に係るスイッチ3aを操作した例を図8に示す。図8は、切換部材31aを当初のポジションから図中右方向に傾斜した状態を示している。切換部材31aが右方向に傾斜されると、可動部352も、右方向に傾斜することになる。同時に、切換部材31aの突起部が防水シート34aの凹凸部342b側を押し下げて、弛みの間が詰まり、可動部352を挟んで反対側の凹凸部342bの弛みは間延びするようになる。
【0036】
防水シート34aは、内カバー33aの外壁端部と基板36aに挟まれて固定されているので、切換部材31aが傾斜すると、可動部352の周囲を覆っている防水シート34aも同じ方向に傾斜して引っ張られることになるが、この引っ張りによって防水シート34aに加わる変形は、内カバー34aと基板36aに挟まれて固定されている部分の防水シート34aに及ぶことはない。すなわち、スイッチ35aへの操作によって防水シート34aに加わる力は、凹凸部342bの弛みにかかる変形によって吸収されるので、固定されている部分に、余計な力が加わることを防ぐことができる。これによって、防水機能を発揮する部分に余計な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0037】
このように本実施例に係る防水構造によれば、切換部材31aとスイッチ35aとの間に複数の凹凸部を有する凹凸部342が形成されている防水シート34aを用いることで、切換部材31aの操作によってスイッチ35aの可動部352が傾斜しても、これに伴って防水シート34aに加わる力を凹凸部342が吸収し、操作方向と反対方向に作用する力を生じさせることも、また、固定部分への張力も生じさせることはないので、操作性を損なうことなく、耐久性に優れる防水構造を得ることができる。
【0038】
なお、本実施例に用いたスイッチ35aの可動部352は、多方向に傾斜させるタイプを例示しているが、本発明に係る電子機器の防水構造を適用できるスイッチはこれに限ることはなく、可動部352を多方向にスライドさせることで接点を切り替えることができるものを用いてもよい。
【0039】
次に、本発明に係る電子機器の防水構造のさらに別の実施形態について、図を用いて説明する。図9は、本実施例に係るスイッチ3bを構成する防水シート34aとスイッチ35bを組み合わせた状態の外観の例を示す斜視図である。図9において、スイッチ35bには、防水シート34bが被せられている。防水シート34bは、凹凸部343を有してなる。凹凸部343は、蛇腹形状の外観を有してなる。防水シート34bの凹凸部343は、可動部353の周囲を覆う凸部である343aと、スイッチ35bの周囲を覆う凸部である343bと343cからなる複数の凸部を有し、343bと343cの間には凹部を有してなる。すなわち、既に説明をした実施形態においては、弛みを図中横方向に設けていたが、本実施例に係る防水シート34bにおいては、弛みを図中縦方向に設けている。
【0040】
次に、本実施例に係る防水構造について、図10の断面図を用いて説明をする。図10において、切換部材31bは、外カバー100bに形成されている孔101bから突起部が挿入されて、露出している部分は操作可能な操作部を構成している。孔101bから挿入されている突起部は略円筒状の外形を有ており、その底面端部の外径は筒状部分に比べて大きく広がっている。この底面端部の略中心に、可動部353が嵌合可能な孔311bが形成されている。
【0041】
防水シート34bは、切換部材31bの突起部とスイッチ35bとの間に配置されており、複数の凸部を有する凹凸部343が形成されている。この凹凸部343を形成する複数の凸部のうち、中央の凸部(凹凸部343a)は、可動部353の周囲に覆い被さるようになっている。この凹凸部343aに連なる水平部分であって、周方向に形成されている凸部に至る平面部分と、切換部材31bの突起部の底面端部が接するようになっている。また、凹凸部343のうち、周方向に形成されている凹凸部343bと凹凸部343cによって弛み部が形成されている。
【0042】
上記実施例に係るスイッチ35bを操作した例を図11に示す。図11は、切換部材31bを当初のポジションから図中右方向に傾斜した状態を示している。切換部材31bが右方向に傾斜されると、可動部353も、右方向に傾斜することになる。同時に、切換部材31bの突起部が防水シート34bを傾斜方向に押し下げるので、凹凸部343bと凹凸部343cとの間の弛みは、傾斜方向側においては間が詰まり(図11のA部分)、可動部353を挟んで反対側の凹凸部343bと凹凸部343cとの間の弛みは間が広がるようになる(図11のB部分)。
【0043】
防水シート34bは、内カバー33bの外壁端部と基板36bに挟まれて固定されているので、切換部材31bが傾斜すると、可動部353の周囲を覆っている防水シート34bも同じ方向に傾斜して引っ張られることになるが、この引っ張りによって防水シート34bに加わる変形は、内カバー34bと基板36bに挟まれて固定されている部分の防水シート34bに及ぶことはない。すなわち、スイッチ35bが操作によって傾斜して防水シート34bに力が加わると、凹凸部343bと凹凸部343cが変形することで、その力が吸収されてしまうので、固定されている部分にまで、余計な力が加わることはない。これによって、防水機能を発揮する部分に余計な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0044】
このように本実施例に係る防水構造によれば、切換部材31bとスイッチ35bとの間に複数の凹凸部を有する凹凸部343が形成されている防水シート34bを用いることで、切換部材31bの操作によってスイッチ35bの可動部353が傾斜しても、これに伴って防水シート34bに加わる力を凹凸部343が吸収し、操作方向と反対方向に作用する力を生じさせることも、また、固定部分への張力も生じさせることはないので、操作性を損なうことなく、耐久性に優れる防水構造を得ることができる。
【0045】
本実施例に示した防水シート34cのように、縦方向に凹凸部343を形成し、外観形状を蛇腹形状にすると、防水シート34cの素材が有する弾性を利用した弛みの伸縮による変形力の吸収する実施形態に比べて、防水シート34c自体の伸びは少なくなる。その結果、防水シート34cの劣化を防止することができる。
【0046】
以上のように本発明に係る電子機器の防水構造は、所定の形状からなる弛みを備えたシート状の防水素材によって、電子機器の操作の用に供されるスイッチ類を覆うようことで、当該スイッチ類の周囲の隙間から浸水することを防ぐことができ、かつ、スイッチ類の操作によって、防水シートに加わる変形力を軽減させることができる。これによって、防水シートの弾性力によってスイッチ類の操作性が邪魔されることを防ぐことができる。
【0047】
さらに、変形によって生じる力を弛みに吸収する構造を有しているので、防水シートへ加わる力による劣化(断裂や摩耗)を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 デジタルカメラ
31 切換部材
32 Oリング
33 内カバー
34 防水シート
35 スイッチ
36 基板
100 外カバー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特許第4389166号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の防水構造に関するものであって、詳しくは、電子機器の防水に用いる素材(防水素材)の弾性によってスイッチ操作が邪魔されることなく、かつ、防水素材の劣化を防ぐことができる電子機器の防水構造および、同構造を有する電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器を防水にするために、当該電子機器を収めても使用でき、かつ、防水性を備えたケース(防水ケース)が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載された防水ケースは、電子機器を内部に収めた状態でも電子機器の操作ボタンやスイッチを操作できるように、防水ケースの表面に、操作ボタンやスイッチの操作に用いられる部材が配置されている。これら部材と、ケース筐体の接合部分には、当然ながら防水構造を有している。
【0004】
また、電子機器自体が防水構造を備えているものが知られている。このような電子機器の防水構造は筐体の隙間や孔にシリコンやゴムなどの防水素材を配置させて、電子機器の内部に浸水することを防ぐものである。
【0005】
このような電子機器の防水構造には課題がある。すなわち、電子機器の操作に用いられるスライドスイッチなどは周囲に防水素材を配置する必要があるため、これらスイッチの操作時には、この防水素材の弾性が邪魔となって動かしにくくなることがある。また、スイッチを所定の方向に可動させるときは、スイッチの可動方向と反対の方向に、防水素材が引っ張られるから、摩耗が生じて耐久性に悪影響を及ぼすこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、電子機器の防水構造に用いる防水素材の可撓性や耐久性を損なうことなく、スイッチ類の操作感の向上も図ることができる電子機器の防水構造、および、同構造を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は電子機器の防水構造に関するものであって、電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部と、ユーザが可動部を可動させるために操作する操作部と、可動部と操作部とは組み合わされていて、可動部と操作部との組み合わせ部を覆う防水シートと、を有し、防水シートには凹凸部が形成されており、凹凸部は、組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成すること最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子機器の防水構造において、スライドスイッチの周囲に配置された防水素材が、スライドスイッチの操作の邪魔にならず、また、スライドスイッチの操作によって生じる摩擦等によって防水素材が劣化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る防水構造を備える電子機器の例であるデジタルカメラの外観を示す(a)正面斜視図、(b)背面斜視図、である。
【図2】上記防水構造の例を示す電子機器の分解斜視図である。
【図3】上記防水構造の例を示す縦断面図である。
【図4】上記防水構造の例において、切換部材を操作した状態を示す縦断面図である。
【図5】上記防水構造に係る防水効果の例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る防水構造を備える電子機器の別の例を示す分解斜視図である。
【図7】上記防水構造の別の例を示す縦断面図である。
【図8】上記防水構造の別の例において、切換部材を操作した状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係る防水構造に用いるスイッチと防水シートの外観のさらに別の例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る防水構造のさらに別の例を示す縦断面図である。
【図11】上記防水構造のさらに別の例において、切換部材を操作した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器の防水構造の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0011】
本発明に係る電子機器の防水構造の実施形態を説明するに当たって、電子機器の例としてデジタルカメラを用いることとする。図1は、本発明に係る防水構造を有するデジタルカメラの外観の例を図1(a)の正面斜視図と、図1(b)の背面斜視図を用いて説明する。図1(a)に示すようにデジタルカメラ10は、上面に押しボタン式のシャッタースイッチ1が配置されている。また、図1(b)に示すように、背面には押しボタン式の背面操作ボタン群2およびスイッチ3が配置されている。なお、スイッチ3はデジタルカメラ1に上面に配置されてもよい。図1(b)に例示したスイッチ3はスライドスイッチであるが、本発明に係る電子機器の防水構造を適用可能なスイッチはスライドスイッチに限るものではない。
【0012】
次に、本発明に係る電子機器の防水構造の実施形態について、図2に示す電子機器の防水構造の主要部の分解斜視図を用いて説明する。図2において、符号100は、スイッチ3の周囲に係るデジタルカメラ10の筐体の一部である外カバーを示している。
【0013】
図2に示すように、外カバー100の内部には、スイッチ3を構成する部材である切換部材31と、Oリング32と、内カバー33と、防水シート34と、スイッチ35と、基板36と、が配置されている。
【0014】
切換部材31の上部は外カバー100に形成されている孔101から露出して、利用者が操作する操作部となる。また、切換部材31は、2つの突起部を有している。この突起部は、操作部とは反対側であって、図中下方向に所定の寸法をもってなる。切換部材31の突起部は、内カバー33の天面部に形成されている孔331を通して下方に突出し、後述するスイッチ35の可動部351を挟むことができるように形成されている。切換部材31の操作部をデジタルカメラ10の利用者が操作すると、スイッチ35の可動部351を可動させることができる。これらの動作によって、デジタルカメラ10が有する電気的接点の切り替え動作を行うことができる。
【0015】
内カバー33は、外観が箱状の形態を有する立方体の内部を中空にしたものであって、後述する防水シート34を挟みながらスイッチ35の周囲に覆い被せることができる形状を有している。内カバー33の天面には、孔331が形成されている。この孔331は切換部材31の突起部をスイッチ35に嵌合できるようにするためのものであって、切換部材31が所定の方向に可動できるように、所定の横寸法を有してなる。
【0016】
また、内カバー33の天面部には、孔331の外周に溝332が形成されている。溝332には、Oリング32が嵌合される。外カバー100の内壁面と内カバー33の天面部が接した状態でスイッチ3は組み付けられる。この組み付け状態において、孔101と切換部材31の隙間から入った水は、外カバー100の内壁面と内カバー33の天面部の間を抜けてデジタルカメラ10の内部に向かうことになる。その浸水を防止するために、Oリング32が配置されている。
【0017】
防水シート34は、切換部材31とスイッチ35の可動部351との間に配置される防水素材からなるシート状の部材であって、スイッチ35を覆うことができるように、波状の外形(蛇腹形状)を有する凹凸部341が内カバー33との対向面に形成されている。凹凸部341は、複数の凸部を有してなり、この複数の凹凸のうち、略中央の凸部は可動部351の周囲を覆い、その他の凸部は、可動部351の周囲に形成される弛みとなる。
【0018】
スイッチ35の可動部351は、図中左右方向に摺動させることで電気的接点を切り替えることができるものである。基板36は、スイッチ35の可動部351によって切り替えられた電気的接点に応じて、当該電子機器の動作を制御する電子回路を備えた回路基板である。
【0019】
次に、本実施例に係る防水構造について、図3の縦断面図を用いて説明をする。図3において、切換部材31は、外カバー100の表面に形成されている孔101から、その一部が外部に露出して操作可能になっている。この露出している部分が操作部となる。また、操作部の下部には、下方向に突出する2つの突起部を備えている。この突起部が、防水シート34を介してスイッチ35の可動部351に嵌合し、操作部を移動させることで、電気的接点を切り替えることができるように構成されている。
【0020】
防水シート34の凹凸部341を形成する複数の凸部のうち、中央の凸部(凹凸部341a)は、前述のとおり、スイッチ35の可動部351の周囲に覆い被さるようになっている。この凹凸部341aに連なる部分の凹部には、切換部材31の突起部が入り込むようになっている。また、凹凸部341のうち、スイッチ35の突起部分の周辺に位置する2つの凹凸部341bと凹凸部341cは、弛み部となっている。切換部材31の突起部は、防水シート34の凹凸部341aと凹凸部341bおよび凹凸部341cによって覆われるようになっている。
【0021】
ここで、図3において、スイッチ35の可動部351は、3ポジションのものを例示しているが、2ポジションのものであってもよい。
【0022】
上記実施例に係るスイッチ3を操作した例を図4に示す。図4は、切換部材31を当初のポジションから右方向に移動した状態を示している。切換部材31が右方向に移動されると、可動部351も、右方向に移動することになる。同時に、切換部材31の突起部の移動に応じて防水シート34の凹凸部341c側の弛みは間が詰まって、可動部351を挟んで反対側の凹凸部341bの弛みは間延びするようになる。
【0023】
防水シート34は、内カバー33の外壁端部と基板36に挟まれて固定されているので、切換部材31が移動すると、スイッチ35の周囲を覆っている防水シート34も同じ方向に移動することになるが、この移動によって防水シート34に加わる変形は、内カバー33と基板36に挟まれて固定されている部分の防水シート34に及ぶことはない。すなわち、スイッチ35への操作によって防水シート34に加わる力は、凹凸部341bと凹凸部341cの弛みにかかる変形によって吸収されるので、固定されている部分に、余計な力が加わることを防ぐことができる。これによって、防水機能を発揮する部分に余計な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0024】
このように本実施例に係る防水構造によれば、切換部材31とスイッチ35との間に複数の凹凸部を有する凹凸部341が形成されている防水シート34を用いることで、切換部材31が操作されてスイッチ35の可動部351が移動しても、これに伴って防水シート34に加わる力を凹凸部341が吸収し、操作方向と反対方向に作用する力を生じさせることも、また、固定部分への張力も生じさせることはないので、操作性を損なうことなく、耐久性に優れた防水構造を得ることができる。
【0025】
上記実施形態の防水効果の例を図5に示す。図5において、符号200で示した塗りつぶされた領域が浸水領域を示している。外カバー100に形成されている孔101と切換部材31の操作部の隙間からの浸水した水は、外カバー100の内壁面と内カバー33の天面の間において、Oリング32によって防水されている。また、切換部材31と内カバー33の孔331との隙間から浸水した水は、内カバー33の内壁面と防水シート34によって、防水されている。
【0026】
次に、本発明に係る電子機器の防水構造の別の実施形態について、図を用いて説明する。図6は、本発明に係る電子機器の防水構造の主要部の別の例を示す分解斜視図である。図6において、符号100aは、デジタルカメラ10の筐体の一部である外カバーの一部のみを示している。
【0027】
図6に示すように、外カバー100aの内部には、スイッチ3aを構成する切換部材の別の例であるボタン型の切換部材31aと、Oリング32と、内カバー33aと、防水シート34aと、可動部を有するスイッチ35aと、基板36と、が配置されている。
【0028】
切換部材31aの上部は、利用者が操作する操作部となる。切換部材31aは、外カバー100aに形成されている孔101aから挿入されて後述するスイッチ35aの可動部352に嵌合する。この切換部材31aが有する突起部は、略筒状の外形を有しており、底面の端部には、可動部352が嵌合できるように穴が形成されている。なお、図6において、切換部材31aの穴は図示を省略している。切換部材31aの操作部をデジタルカメラ10の利用者が操作すると、スイッチ35aの可動部352を可動させることができる。これらの動作によって、デジタルカメラ10の電気的接点の切り替え動作を行うことができる。
【0029】
内カバー33aは、平面視がロの字形状を有し、後述する防水シート34aとスイッチ35aの周囲に被せることができる形状を有している。内カバー33aの平面中央部分には、孔331aが形成されている。この孔331aによって切換部材31aの突起部がスイッチ35aの可動部352に嵌合できるようになっている。
【0030】
また、孔331aの周囲には溝332aが形成され、この溝332aに、Oリング32が嵌合される。外カバー100aの内壁面と内カバー33aが接した状態でスイッチ3aは組み付けられるので、組み付け状態において、孔101aと切換部材31aの隙間から入った水は、外カバー100aの内壁面と内カバー33aとの間を抜けて内部に向かう。その浸水を防止するために、Oリング32が配置されている。
【0031】
防水シート34aは、切換部材31aとスイッチ35aの可動部352との間に配置される防水素材からなるシート状の部材であって、スイッチ35aを覆うようことができるように、凹凸部342が形成されている。凹凸部342は、中央部と円周部に凸形状の盛り上がりが形成されており、中央の凸部と円周の凸部の間には凹部が形成されている。故に、凹凸部342の形状は中央の凸部と略同心円の凸部が所定の間隔を経て配置され、各凸部の間は凹部にて連結され、波状の外形(蛇腹形状)を有している。この凹凸部342が有する略中央の凸部はスイッチ35aの可動部352の周囲に覆い被さり、円周部の凸部は、可動部352の可動方向に追随して変形することができる弛みを形成している。
【0032】
スイッチ35aはいわゆる多方向型のスイッチであって、可動部352を所定の方向に傾斜させることで、または、押し込む(プッシュする)ことで電気的接点を切り替えることができるものである。基板36aは、スイッチ35aの可動部352によって切り替えられた電気的接点に応じて、当該電子機器の動作を制御する電子回路を備えた回路基板である。
【0033】
次に、本実施例に係る防水構造について、図7の断面図を用いて説明をする。図7において、切換部材31aは、外カバー100aに形成されている孔101aから突起部が挿入されて、露出している部分は操作可能な操作部を構成している。孔101aから挿入されている突起部は略円筒状の外形を有ており、その底面端部には、可動部352が嵌合可能な孔311aが形成されている。
【0034】
防水シート34aは、切換部材31aの突起部とスイッチ35aとの間に配置されており、複数の凸部を有する凹凸部342が形成されている。この凹凸部342を形成する複数の凸部のうち、中央の凸部(凹凸部342a)は、可動部352の周囲に覆い被さるようになっている。この凹凸部342aに連なる部分の凹部には、切換部材31の突起部が入り込むようになっている。また、凹凸部342のうち、スイッチ35aの突起部分の周辺に位置する凹凸部341bは、弛み部となっている。切換部材31aの突起部は、防水シート34aの凹凸部342aと凹凸部341bによって覆われるようになっている。
【0035】
上記実施例に係るスイッチ3aを操作した例を図8に示す。図8は、切換部材31aを当初のポジションから図中右方向に傾斜した状態を示している。切換部材31aが右方向に傾斜されると、可動部352も、右方向に傾斜することになる。同時に、切換部材31aの突起部が防水シート34aの凹凸部342b側を押し下げて、弛みの間が詰まり、可動部352を挟んで反対側の凹凸部342bの弛みは間延びするようになる。
【0036】
防水シート34aは、内カバー33aの外壁端部と基板36aに挟まれて固定されているので、切換部材31aが傾斜すると、可動部352の周囲を覆っている防水シート34aも同じ方向に傾斜して引っ張られることになるが、この引っ張りによって防水シート34aに加わる変形は、内カバー34aと基板36aに挟まれて固定されている部分の防水シート34aに及ぶことはない。すなわち、スイッチ35aへの操作によって防水シート34aに加わる力は、凹凸部342bの弛みにかかる変形によって吸収されるので、固定されている部分に、余計な力が加わることを防ぐことができる。これによって、防水機能を発揮する部分に余計な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0037】
このように本実施例に係る防水構造によれば、切換部材31aとスイッチ35aとの間に複数の凹凸部を有する凹凸部342が形成されている防水シート34aを用いることで、切換部材31aの操作によってスイッチ35aの可動部352が傾斜しても、これに伴って防水シート34aに加わる力を凹凸部342が吸収し、操作方向と反対方向に作用する力を生じさせることも、また、固定部分への張力も生じさせることはないので、操作性を損なうことなく、耐久性に優れる防水構造を得ることができる。
【0038】
なお、本実施例に用いたスイッチ35aの可動部352は、多方向に傾斜させるタイプを例示しているが、本発明に係る電子機器の防水構造を適用できるスイッチはこれに限ることはなく、可動部352を多方向にスライドさせることで接点を切り替えることができるものを用いてもよい。
【0039】
次に、本発明に係る電子機器の防水構造のさらに別の実施形態について、図を用いて説明する。図9は、本実施例に係るスイッチ3bを構成する防水シート34aとスイッチ35bを組み合わせた状態の外観の例を示す斜視図である。図9において、スイッチ35bには、防水シート34bが被せられている。防水シート34bは、凹凸部343を有してなる。凹凸部343は、蛇腹形状の外観を有してなる。防水シート34bの凹凸部343は、可動部353の周囲を覆う凸部である343aと、スイッチ35bの周囲を覆う凸部である343bと343cからなる複数の凸部を有し、343bと343cの間には凹部を有してなる。すなわち、既に説明をした実施形態においては、弛みを図中横方向に設けていたが、本実施例に係る防水シート34bにおいては、弛みを図中縦方向に設けている。
【0040】
次に、本実施例に係る防水構造について、図10の断面図を用いて説明をする。図10において、切換部材31bは、外カバー100bに形成されている孔101bから突起部が挿入されて、露出している部分は操作可能な操作部を構成している。孔101bから挿入されている突起部は略円筒状の外形を有ており、その底面端部の外径は筒状部分に比べて大きく広がっている。この底面端部の略中心に、可動部353が嵌合可能な孔311bが形成されている。
【0041】
防水シート34bは、切換部材31bの突起部とスイッチ35bとの間に配置されており、複数の凸部を有する凹凸部343が形成されている。この凹凸部343を形成する複数の凸部のうち、中央の凸部(凹凸部343a)は、可動部353の周囲に覆い被さるようになっている。この凹凸部343aに連なる水平部分であって、周方向に形成されている凸部に至る平面部分と、切換部材31bの突起部の底面端部が接するようになっている。また、凹凸部343のうち、周方向に形成されている凹凸部343bと凹凸部343cによって弛み部が形成されている。
【0042】
上記実施例に係るスイッチ35bを操作した例を図11に示す。図11は、切換部材31bを当初のポジションから図中右方向に傾斜した状態を示している。切換部材31bが右方向に傾斜されると、可動部353も、右方向に傾斜することになる。同時に、切換部材31bの突起部が防水シート34bを傾斜方向に押し下げるので、凹凸部343bと凹凸部343cとの間の弛みは、傾斜方向側においては間が詰まり(図11のA部分)、可動部353を挟んで反対側の凹凸部343bと凹凸部343cとの間の弛みは間が広がるようになる(図11のB部分)。
【0043】
防水シート34bは、内カバー33bの外壁端部と基板36bに挟まれて固定されているので、切換部材31bが傾斜すると、可動部353の周囲を覆っている防水シート34bも同じ方向に傾斜して引っ張られることになるが、この引っ張りによって防水シート34bに加わる変形は、内カバー34bと基板36bに挟まれて固定されている部分の防水シート34bに及ぶことはない。すなわち、スイッチ35bが操作によって傾斜して防水シート34bに力が加わると、凹凸部343bと凹凸部343cが変形することで、その力が吸収されてしまうので、固定されている部分にまで、余計な力が加わることはない。これによって、防水機能を発揮する部分に余計な負荷がかかることを防ぐことができる。
【0044】
このように本実施例に係る防水構造によれば、切換部材31bとスイッチ35bとの間に複数の凹凸部を有する凹凸部343が形成されている防水シート34bを用いることで、切換部材31bの操作によってスイッチ35bの可動部353が傾斜しても、これに伴って防水シート34bに加わる力を凹凸部343が吸収し、操作方向と反対方向に作用する力を生じさせることも、また、固定部分への張力も生じさせることはないので、操作性を損なうことなく、耐久性に優れる防水構造を得ることができる。
【0045】
本実施例に示した防水シート34cのように、縦方向に凹凸部343を形成し、外観形状を蛇腹形状にすると、防水シート34cの素材が有する弾性を利用した弛みの伸縮による変形力の吸収する実施形態に比べて、防水シート34c自体の伸びは少なくなる。その結果、防水シート34cの劣化を防止することができる。
【0046】
以上のように本発明に係る電子機器の防水構造は、所定の形状からなる弛みを備えたシート状の防水素材によって、電子機器の操作の用に供されるスイッチ類を覆うようことで、当該スイッチ類の周囲の隙間から浸水することを防ぐことができ、かつ、スイッチ類の操作によって、防水シートに加わる変形力を軽減させることができる。これによって、防水シートの弾性力によってスイッチ類の操作性が邪魔されることを防ぐことができる。
【0047】
さらに、変形によって生じる力を弛みに吸収する構造を有しているので、防水シートへ加わる力による劣化(断裂や摩耗)を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 デジタルカメラ
31 切換部材
32 Oリング
33 内カバー
34 防水シート
35 スイッチ
36 基板
100 外カバー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特許第4389166号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部と、
ユーザが上記可動部を可動させるために操作する操作部と、を有する電子機器の防水構造であって、
上記可動部と上記操作部とは組み合わされていて、上記可動部と上記操作部との組み合わせ部を覆う防水シートと、を有し、
上記防水シートには凹凸部が形成されており、
上記凹凸部は、上記組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成することを特徴とする電子機器の防水構造。
【請求項2】
上記組み合わせ部は上記電子機器の筐体内部に収められており、
上記防水シートには、上記筐体内部への浸水を防ぐように、上記可動部と上記筐体の隙間を塞ぐ密接部が形成されて、上記可動部と上記筐体の隙間に位置決め固定されており、
上記操作部の操作によって上記可動部が可動したときに、上記凹凸部は、上記密接部の上記位置決め固定された状態を維持することを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項3】
上記可動部は水平方向に摺動可能であって、
上記凹凸部は、上記可動部を中心として水平方向に形成されており、
上記可動部が操作部によって操作されて摺動したときに、上記凹凸部の摺動方向の弛みは凹凸間隔が詰まり、摺動方向と反対方向の弛みは凹凸間隔が伸びることを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項4】
上記可動部は多方向に傾斜可能であって、
上記凹凸部は、上記可動部を中心として水平方向に形成されており、
上記可動部が操作部によって操作されて傾斜したときに、上記凹凸部の傾斜方向の弛みは凹凸間隔が詰まり、傾斜方向と反対方向の弛みは凹凸間隔が伸びることを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項5】
上記可動部は多方向に傾斜可能であって、
上記凹凸部は、上記可動部を頂点として、垂直方向に形成されており、
上記可動部が操作部によって操作されて傾斜したときに、上記凹凸部の傾斜方向の弛みは凹凸間隔が詰まり、傾斜方向と反対方向の弛みは凹凸間隔が伸びることを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項6】
電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部と、
ユーザが上記可動部を可動させるために操作する操作部と、
を備えた電子機器であって、
上記可動部と上記操作部とは組み合わされていて、上記可動部と上記操作部との組み合わせ部を覆う防水シート、
を有してなり、
上記防水シートには凹凸部が形成されており、
上記凹凸部は、上記組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成することを特徴とする電子機器。
【請求項1】
電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部と、
ユーザが上記可動部を可動させるために操作する操作部と、を有する電子機器の防水構造であって、
上記可動部と上記操作部とは組み合わされていて、上記可動部と上記操作部との組み合わせ部を覆う防水シートと、を有し、
上記防水シートには凹凸部が形成されており、
上記凹凸部は、上記組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成することを特徴とする電子機器の防水構造。
【請求項2】
上記組み合わせ部は上記電子機器の筐体内部に収められており、
上記防水シートには、上記筐体内部への浸水を防ぐように、上記可動部と上記筐体の隙間を塞ぐ密接部が形成されて、上記可動部と上記筐体の隙間に位置決め固定されており、
上記操作部の操作によって上記可動部が可動したときに、上記凹凸部は、上記密接部の上記位置決め固定された状態を維持することを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項3】
上記可動部は水平方向に摺動可能であって、
上記凹凸部は、上記可動部を中心として水平方向に形成されており、
上記可動部が操作部によって操作されて摺動したときに、上記凹凸部の摺動方向の弛みは凹凸間隔が詰まり、摺動方向と反対方向の弛みは凹凸間隔が伸びることを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項4】
上記可動部は多方向に傾斜可能であって、
上記凹凸部は、上記可動部を中心として水平方向に形成されており、
上記可動部が操作部によって操作されて傾斜したときに、上記凹凸部の傾斜方向の弛みは凹凸間隔が詰まり、傾斜方向と反対方向の弛みは凹凸間隔が伸びることを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項5】
上記可動部は多方向に傾斜可能であって、
上記凹凸部は、上記可動部を頂点として、垂直方向に形成されており、
上記可動部が操作部によって操作されて傾斜したときに、上記凹凸部の傾斜方向の弛みは凹凸間隔が詰まり、傾斜方向と反対方向の弛みは凹凸間隔が伸びることを特徴とする請求項1記載の電子機器の防水構造。
【請求項6】
電気的な接続を切り替えるための接点を可動させる可動部と、
ユーザが上記可動部を可動させるために操作する操作部と、
を備えた電子機器であって、
上記可動部と上記操作部とは組み合わされていて、上記可動部と上記操作部との組み合わせ部を覆う防水シート、
を有してなり、
上記防水シートには凹凸部が形成されており、
上記凹凸部は、上記組み合わせ部の周囲に複数の弛みを形成することを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−222283(P2012−222283A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89128(P2011−89128)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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