電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法
【課題】少量多品種生産に好適な電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法を提供すること。
【解決手段】溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型する成型工程を含む電子機器用カバーガラスブランクの製造方法であって、上記溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の関係に基づいて、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる上記一対の金型の温度差を求め、一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように上記一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行う。
【解決手段】溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型する成型工程を含む電子機器用カバーガラスブランクの製造方法であって、上記溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の関係に基づいて、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる上記一対の金型の温度差を求め、一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように上記一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルスティルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器としての携帯機器に表示画面の保護を主目的として、携帯機器用カバーガラスが用いられている。近年、携帯機器の薄型化・軽量化の要請、および、携帯機器の使用形態(機器の落下やタッチパネル機能による入力等)に対応した対加傷性、対衝撃性などの要請から、電子機器用カバーガラスとしての携帯機器用カバーガラスには、薄型で機械的強度が高いことが求められている。そこで、これらの要求特性を満足させるべく、化学強化を施した薄いガラス基板が作製されている。リチウムイオンやナトリウムイオンを含有する板状ガラスに対して化学強化を施すことについては、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、従来、携帯機器用カバーガラスの製造に当たって、板状ガラス(あるいはガラス基板)を作製する方法としてフロート法や、ダウンドロー法等が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−13052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、携帯機器の薄型化や高機能化に加え、様々な形状の携帯機器の筐体および表示画面に対応すべく、様々な形状のカバーガラスを少量作製する、すなわち少量多品種生産することが要請されている。しかしながら、上述したフロート法およびダウンドロー法は、大容積のガラス溶解設備を使用するので、同一形状のガラス基板を大量生産する場合に適しているが少量多品種生産には適していない。
【0006】
一方、少量多品種生産に適した板状ガラス(ガラスブランク)の製造方法としては、プレス法が考えられる。公知のプレス法は、下型上に溶融ガラスの塊を供給し、上型を使用して溶融ガラスの塊(溶融ガラス塊)をプレス成型する方法(垂直ダイレクトプレス法)である。しかしながら、この方法では、作製されるガラスブランクの平坦度(形状精度)が悪いという問題がある。
【0007】
この理由は以下のとおりである。垂直ダイレクトプレス法では、回転テーブルによって支持された下型上に溶融ガラス塊を配置してからプレス成型を開始するまでの期間において、下型が高温の溶融ガラスによって加熱される。そのため、下型を支持する回転テーブルにも熱が伝達されやすくなり、回転テーブルが熱により変形する。その結果、ガラスブランクの板厚偏差や平坦度等の形状精度が低下してしまう。
【0008】
また、垂直ダイレクトプレス法では、下型上に溶融ガラス塊を配置した直後から溶融ガラス塊のうち下型との接触面および接触面に近い部分のみが急激に冷却されることになる。このため、プレス成型直前における溶融ガラス塊内部の粘度分布(温度分布)が広範囲に亘る状態となる。つまり、プレス成型直前では、溶融ガラス塊内部の下側と上側との間で粘度差が比較的大きくなっている。この状態でプレス成型が行われると、ガラスブランクの板厚偏差の増大および平坦度の低下が生じてしまう。ガラスブランクの板厚偏差の増大および平坦度の低下は、下型上に溶融ガラス塊を配置してからプレス成型を開始するまでの間の時間差に起因しており、垂直ダイレクトプレス法では抜本的に抑制することができない。
【0009】
さらに、垂直ダイレクトプレス法では、溶融ガラス塊が下金型に貼り付いて除去できなくなることを防止するために、例えばBN(ボロンナイトライド)等の固体潤滑剤を下金型に塗布しておく必要がある。しかしながら、このような固体潤滑剤がガラスブランクに付着したままでは透明度が悪化する。したがって、垂直ダイレクトプレス法で作製されたガラスブランクは、その平坦度を改善し、かつ固体潤滑剤を剥離させるために、後工程で主表面の加工工程が必須である。このため、従来のプレス成型法では、電子機器用カバーガラスブランクを製造するには不向きであった。
【0010】
本発明は、少量多品種生産に好適な電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に直面して本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、発明者らは新たなプレス成型方法を考案した。すなわち、本実施形態のガラスブランクの製造方法では、落下中の溶融ガラス塊を、溶融ガラス塊の落下方向に対して直交する方向(水平方向)に対向配置された一対の金型(プレス成型型)によりプレス成型する水平ダイレクトプレス法を採用している。この水平ダイレクトプレス法において溶融ガラス塊は、プレス成型されるまでの間、溶融ガラス塊よりも温度の低い部材に一時的に接触・保持されない。この点で、従来の垂直ダイレクトプレス法とは異なる。このため、プレス成型の開始直前の時点において、垂直ダイレクトプレス法では、溶融ガラス塊の内部の粘度分布がプレス成型時に非常に広くなるのに対して、本実施形態の水平ダイレクトプレスでは、溶融ガラス塊の粘度分布は均一に保たれる。
【0012】
よって、垂直ダイレクトプレス法と比べて、水平ダイレクトプレス法では、プレス成型される溶融ガラス塊を均一に薄く延伸させることが極めて容易である。したがって、結果的に、垂直ダイレクトプレス法を利用してガラスブランクを作製した場合と比べて、水平ダイレクトプレス法を利用してガラスブランクを作製した場合では、平坦度の低下を抜本的に抑制することが極めて容易である。
【0013】
また、溶融ガラス塊をプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度の差が小さい場合には、その差が大きい場合と比較して、生成されるガラスブランクの平坦度を低下させることができる。これは、一対の金型間の温度差がより小さい場合には、高温の溶融ガラス塊が型の内側のプレス面(内周面)に接触して急激に冷却するときの熱的均衡が実現されやすい。このため、冷却段階での一対の金型間での微小な熱変形度合いの差に起因して生じうるガラスブランクの平坦度の低下をより抑制することができる。つまり、溶融ガラス塊をプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間には相関関係が存在する。
【0014】
この相関関係を既知とすると、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現するための一対の金型間の温度差(絶対値)の最大値が分かる。そこで、一対の金型間の温度差をその最大値以下となるように制御することで、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現することができる。
【0015】
上述した観点から、本発明は、溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型する成型工程を含む電子機器用カバーガラスブランクの製造方法であって、上記溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の相関関係に基づいて、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる上記一対の金型の温度差を求め、一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように上記一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスブランクの製造方法である。
【0016】
上記電子機器用カバーガラスの製造方法において、好ましくは、プレス成型工程では、上記一対の金型のそれぞれの溶融ガラスと接触する部分の温度が、上記一対の金型間で同一の温度となるようにプレスすることを特徴とする。
【0017】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法において、上記塊が上記金型に接触してから離れるまでの上記一対の金型の温度を、上記溶融ガラスのガラス転移点(Tg)未満の温度とすることを特徴とする。
【0018】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法において、上記プレス成型工程によって得られたガラスブランクの板厚が、上記電子機器用カバーガラスに要求される板厚と同じ板厚となるようにプレス成型を行うことを特徴とする。
【0019】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法は、好ましくは、溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、上記切断工程では、溶融ガラスの切断痕が上記ガラスブランクの周縁に位置するように、溶融ガラスを切断することを特徴とする。
【0020】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法は、好ましくは、溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、上記プレス成型工程では、溶融ガラスの切断痕が上記一対の金型からはみ出すタイミングで溶融ガラスをプレスすることを特徴とする。
【0021】
本発明の電子機器用カバーガラスの製造方法は、上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクに生じている歪みを残存させた状態で、上記ガラスブランクを電子機器用カバーガラスの形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の電子機器用カバーガラスの製造方法は、上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクの主表面の表面状態を維持して、上記ガラスブランクの主表面が電子機器用カバーガラスの主表面となるように、上記ガラスブランクの外周形状を電子機器用カバーガラスの外周形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明の電子機器用カバーガラスの製造方法は、上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法によって得られた電子機器用ガラスブランクを用いて電子機器用カバーガラスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、少量多品種生産に好適な電子機器用カバーガラスブランクおよび電子機器用カバーガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の携帯機器用カバーガラスの構成を示す図。
【図2】実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法の一実施形態のフローを示す図。
【図3】実施形態のプレス成型において用いられる装置の平面図。
【図4】実施形態のプレス成型において用いられる装置4組のプレスユニットの配置を示す図。
【図5】ゴブ形成型を用いた実施形態のプレス成型の変形例を示す図。
【図6】切断ユニットを用いないようにした、実施形態のプレス成型の変形例を示す図。
【図7】軟化炉で加熱した光学ガラスを用いた実施形態のプレス成型の変形例を示す図。
【図8】切断痕をガラスブランクから除去するための構成例を示す図。
【図9】切断痕がガラスブランクに生じないようにするための構成例を示す図。
【図10】切断痕がガラスブランクに生じないようにするためのプレス成型の変形例を示す図。
【図11】3次元形状の携帯機器用カバーガラスの外観形状の一例を示す図。
【図12】図11に例示した携帯機器用カバーガラス用のガラスブランクを作製するときのプレス成型方法を具体的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態では、電子機器用カバーガラスブランク及び電子機器用カバーガラスとして、それぞれ携帯機器用カバーガラスブランク及び携帯機器用カバーガラスを例に説明する。
(1)第1の実施形態
(1−1)実施形態のカバーガラス
本実施形態のカバーガラスの構成について図1を参照して説明する。図1において(a)は一形状例に係る本実施形態のカバーガラスの斜視図であり、(b)は本実施形態のカバーガラスの断面図である。
本実施形態のカバーガラスは、ガラス基板そのもの、あるいはガラス基板上に印刷層が形成されたものである(図1には後者の構造を図示)。本実施形態のカバーガラスの好ましい利用形態は例えば、携帯型電子機器、特に携帯電話機(携帯機器)の表示画面に使用されるカバーガラスである。したがって、本実施形態のカバーガラスは、機器の落下あるいは表示画面への操作入力(タッチパネル機能としての操作入力)に対する仕様を満足させるべく、薄くかつ高い強度を有するガラスである必要がある。このため、本実施形態のカバーガラスは、イオン交換処理による化学強化が可能なアルカリ金属酸化物を含むガラス材料からなる。
【0027】
例えば、SiO2と、Al2O3と、Li2OおよびNa2Oから選択される少なくとも1種のアルカリ金属酸化物と、を含むアルミノシリケートガラスや、ソーダライムガラスなど、公知のガラス材料を用いることが好適である。
【0028】
アルミノシリケートガラスとしては、板状ガラスの製造性、機械的強度、化学的耐久性等の実用上の観点等から、62重量%〜75重量%のSiO2と、5重量%〜15重量%のA12O3と、0〜8重量%のLi2Oと、4重量%〜16重量%のNa2Oと、0〜6重量%のK2Oと、0重量%〜12重量%のZrO2と、0〜6重量%のMgOを含むものであることがより好ましい。
【0029】
図1(b)を参照すると、本実施形態のガラス基板10の表面側および裏面側の表層部分にはそれぞれ、圧縮応力層10Uおよび圧縮応力層10Vが形成されている。この圧縮応力層10Uおよび圧縮応力層10Vは、ガラス基板を構成するガラス材料に元々含まれるアルカリ金属の一部を、よりイオン半径の大きなアルカリ金属に置換した変質層である。例えば、本実施形態のガラス基板を構成するガラス材料に含まれるナトリウムイオンがカリウムイオンに置換される。
【0030】
また、圧縮応力層10U、10Vの厚さは、ガラス基板の用途に応じて適宜選択されるが、主表面10T,10Bの耐傷性や、ガラス基板10の耐衝撃性を確保する観点からは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。一方、圧縮応力層10U、10Vの厚さの上限は特に限定されるものではない。なお、イオン交換処理に要する時間の増大や、外形加工(切断加工、ウェットエッチング)による切断時の両主表面の応力バランスの悪化によるガラス基板10製造中の自発的粉砕(自爆)を防ぐなどの実用上の観点から、100μm以下とすることが好ましく、70μm以下とすることがより好ましい。また、圧縮応力層10Uの厚さと、圧縮応力層10Vの厚さとは、異なっていてもよい。しかし、この場合、ガラス基板10の両主表面10T,10Bでの応力バランスが崩れて、ガラス基板10が反りやすくなる。それゆえ、通常は、圧縮応力層10Uの厚さと、圧縮応力層10Vの厚さとは、ほぼ同一であることが好ましい。
【0031】
ガラス基板10の板厚Tは特に限定されないが、ガラス基板10を利用する各種機器の重量増大の抑制や、機器の薄型化の観点から、通常は、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましい。なお、板厚の下限値は、ガラス基板10の機械的強度を確保する観点から、0.2mm以上とすることが好ましい。
【0032】
なお、本実施形態のガラス基板10は、ガラス基板10の本体のみから構成されていてもよいが、ガラス基板10の利用用途に応じて、図1に示すように、ガラス基板の両主表面10T,10Bのいずれか一方の面に、一層以上の加飾層20を設けてもよい。加飾層20としては、(1)ARコート(アンチリフレクションコ一ト、アンチグレアコート、ハーフミラーコート、偏光膜などの光学的機能を有する層、(2)ITO(Indium Tin Oxide)膜に代表される透明電極膜などの電気的機能を有する層、(3)印刷層などの審美性を向上させる機能を有する層などが一例として挙げられる。また、複数種の加飾層20を積層、パターニング加工等することで、ガラス基板10にタッチパネルとしての機能を付加することもできる。
【0033】
(1−2)実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法
次に、図2を参照して、携帯機器用カバーガラスの製造工程について説明する。図2は、携帯機器用カバーガラスの製造工程を示すフローチャートである。
図2に示すように、この携帯機器用カバーガラスでは先ず、プレス成型工程において溶融ガラスをプレス成型してガラスブランクを作製する(ステップS10)。次に、プレス成型により得られたガラスブランクに対して形状加工を施し、所望の形状のガラス基板を作製する(ステップS20)。次に、ガラス基板に対して化学強化を施してガラス基板の表層部分に圧縮応力層を形成する(ステップS30)。さらに、必要に応じてガラス基板の表面に単層または多層からなる加飾層を設ける(ステップS40)。
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0034】
(a)プレス成型工程
先ず図3を参照して、プレス成型工程(ステップS10)について説明する。図3は、プレス成型において用いられる装置の平面図である。図3に示されるように、装置101は、4組のプレスユニット120,130,140,150と、切断ユニット160と、を備える。切断ユニット160は、溶融ガラス流出口111から流出する溶融ガラスの経路上に設けられる。装置101は、切断ユニット160によって切断されてできる溶融ガラスの塊(以降、ゴブともいう)を落下させ、そのとき、塊の落下経路の両側から、互いに対向する一対の型の面で塊を挟み込みプレスすることにより、ガラスブランクを成形する。
具体的には、図4に示されるように、装置101は、溶融ガラス流出口111を中心として、4組のプレスユニット120,130,140及び150が90度おきに設けられている。
【0035】
プレスユニット120,130,140及び150の各々は、図示しない移動機構によって駆動されて、溶融ガラス流出口111に対して進退可能となっている。すなわち、溶融ガラス流出口111の真下に位置するキャッチ位置(図3においてプレスユニット140が実線で描画されている位置)と、溶融ガラス流出口111から離れた退避位置(図3において、プレスユニット120,130及び150が実線で描画されている位置及び、プレスユニット140が破線で描画されている位置)との間で移動可能となっている。
【0036】
切断ユニット160は、キャッチ位置(プレスユニットによるゴブの捕獲位置)と溶融ガラス流出口111との間の溶融ガラスの経路上に設けられ、溶融ガラス流出口111から流出される溶融ガラスを適量に切り出して溶融ガラスの塊を形成する。切断ユニット160は、一対の切断刃161及び162を有する。切断刃161及び162は、一定のタイミングで溶融ガラスの経路上で交差するよう駆動され、切断刃161及び162が交差したとき、溶融ガラスが切り出されてゴブが得られる。得られたゴブは、キャッチ位置に向かって落下する。
【0037】
プレスユニット120は、第1の型121、第2の型122、第1駆動部123及び第2駆動部124を有する。第1の型121と第2の型122の各々は、ゴブをプレス成型するための面を有するプレート状の部材である。この2つの面の法線方向が略水平方向となり、この2つの面が互いに平行に対向するよう配置されている。第1駆動部123は、第1の型121を第2の型122に対して進退させる。一方、第2駆動部124は、第2の型122を第1の型121に対して進退させる。第1駆動部123及び第2駆動部124は、例えばエアシリンダやソレノイドとコイルばねを組み合わせた機構など、第1駆動部123の面と第2駆動部124の面とを急速に近接させる機構を有する。
なお、プレスユニット130,140及び150の構造は、プレスユニット120と同様であるため、説明は省略する。
【0038】
プレスユニットの各々は、キャッチ位置に移動した後、第1駆動部と第2駆動部の駆動により、落下するゴブを第1の型と第2の型とで挟み込んで所定の厚さに成形すると共に急速冷却し、円形状のガラスブランクGを作製する。つぎに、プレスユニットは退避位置に移動した後、第1の型と第2の型を引き離し、成形されたガラスブランクGを落下させる。プレスユニット120,130,140及び150の退避位置の下には、それぞれ第1コンベア171、第2コンベア172、第3コンベア173及び第4コンベア174が設けられている。第1〜第4コンベア171〜174の各々は、対応する各プレスユニットから落下するガラスブランクGを受け止めて、次工程の装置(図示せず)にガラスブランクGを搬送する。
【0039】
装置101では、プレスユニット120,130,140及び150が、順番にキャッチ位置に移動して、ゴブを挟み込んで退避位置に移動するよう構成されている。このため、各プレスユニットでのガラスブランクGの冷却を待たずに、連続的にガラスブランクGの成形を行うことができる。
【0040】
図4(a)〜(c)は、装置101を用いたプレス成型をより具体的に説明している。図4(a)は、ゴブを作る以前の状態を示す図であり、図4(b)は、切断ユニット160によってゴブが作られた状態を示す図であり、図4(c)は、ゴブをプレスすることによりガラスブランクGが成形された状態を示す図である。
【0041】
図4(a)に示されるように、溶融ガラス流出口111から、溶融ガラス材料LGが連続的に流出される。このとき、所定のタイミングで切断ユニット160を駆動し、切断刃161及び162によって溶融ガラス材料LGを切断する(図4(b))。これにより、切断された溶融ガラスは、その表面張力によって、概略球状のゴブGGとなる。溶融ガラス材料LGの時間当たりの流出量、及び切断ユニット160の駆動間隔については、目標とするガラスブランクGの大きさや、板厚から定まる体積に応じて適宜調整可能である。
【0042】
作られたゴブGGは、プレスユニット120の第1の型121と第2の型122の間の隙間に向かって落下する。このとき、ゴブGGが第1の型121と第2の型122の間の隙間に入るタイミングで、第1の型121と第2の型122が互いに近づくように、第1駆動部123及び第2駆動部124(図4参照)が駆動される。これにより、図4(c)に示されるように、第1の型121と第2の型122によってゴブGGが捕獲(キャッチ)される。さらに、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aとが、微小な間隔にて近接した状態になり、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの間に挟み込まれたゴブGGが、薄板状に成形される。
【0043】
なお、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aとの間隔を一定に維持するために、第1の型121のプレス面121a、および第2の型122のプレス面122aにはそれぞれ、突起121bおよび突起122bが設けられる。すなわち、突起121bおよび突起122bが互いに当接することによって、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aとの間の間隔は、一定に維持されて、ガラスブランクGの外形に相当する空間が形成される。
【0044】
第1の型121及び第2の型122には、図示しない温度調節機構が設けられており、第1の型121及び第2の型122の温度は、溶融ガラスLGのガラス転移温度(Tg)よりも十分に低い温度に保持されている。
【0045】
なお、ゴブGGをプレス成型する際の第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの対向位置における温度差と、プレス成型後に得られるガラスブランクの平坦度との間には相関関係が存在する。つまり、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの対向位置における温度差が小さいほど、プレス成型後に得られるガラスブランクの平坦度は良好なものとなる。これは、一対の型の間の温度がより近い場合には、高温のゴブGGが型のプレス面に接触して急激に冷却するときに熱的均衡が実現されるため、冷却段階での一対の金型間での微小な熱変形度合いの差に起因して生じうるガラスブランクの平坦度の低下を、より抑制することができるためである。
【0046】
ここで、この相関関係を既知としたならば、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現するための一対の金型間(第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの間)の温度差(絶対値)の最大値が分かる。そこで、一対の金型間の温度差をその最大値以下となるように制御することで、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現することができる。例えば、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を8μmとしたならば、一対の金型間の上記温度差を10℃以内とした状態でプレス成型を行うようにする。一対の金型間の上記温度差が0℃であるときに作製されるガラスブランクの平坦度が最も良好となる。但し、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度に応じて上記温度差は、上記相関関係から適宜決定してもよい。
【0047】
装置101では、ゴブGGが第1の型121のプレス面121a又は第2の型122のプレス面122aに接触してから、第1の型121と第2の型122とがゴブGGを完全に閉じ込める状態になるまでの時間は約0.06秒と極めて短い。このため、ゴブGGは極めて短時間の内に第1の型121のプレス面121a及び第2の型122のプレス面122aに沿って広がって略円形状に成形され、さらに、急激に冷却されて非晶質のガラスとして固化する。これによって、ガラスブランクGが作製される。なお、本実施形態において成形されるガラスブランクGの大きさは、目的とするカバーガラスの大きさにもよるが、例えば、直径(又は1辺の長さが)20〜200mm程度である。
【0048】
また、本実施形態のプレス成型方法では、第1の型121のプレス面121a及び第2の型122のプレス面122aが形状転写された形でガラスブランクGが形成されるため、一対の型のプレス面の平坦度および平滑性は、目的とするカバーガラスのそれと同等なものとしておくことが好ましい。この場合、プレス成型後に、ガラスブランクGに対する表面加工工程、すなわち研削および研磨工程は不要とすることができる。すなわち、本実施形態のプレス成型方法において成形されるガラスブランクGは、最終的に得られるカバーガラスの目標板厚と同一の板厚であってよい。例えば、ガラスブランクGは、厚さ0.2〜1.1mmの円形状の板である。プレス面121a及びプレス面122aの表面粗さは、ガラスブランクGの算術平均粗さRaが0.001〜0.1μmとなるように、好ましくは、0.0005〜0.05μmとなるように調整される。
【0049】
第1の型121と第2の型122が閉じられた後、プレスユニット120は速やかに退避位置に移動し、代わりに、他のプレスユニット130がキャッチ位置に移動し、このプレスユニット130によって、ゴブGGのプレスが行われる。
【0050】
プレスユニット120が退避位置に移動した後、ガラスブランクGが十分に冷却されるまで(少なくとも屈服点よりも低い温度となるまで)、第1の型121と第2の型122は閉じた状態を維特する。この後、第1駆動部123及び第2駆動部124が駆動されて第1の型121と第2の型122が離間し、ガラスブランクGは、プレスユニット120を離れて落下し、下部にあるコンベア171に受け止められる(図3参照)。
【0051】
装置101では、上記のように、0.1秒以内(約0.06秒)という極めて短時間のうちに第1の型121と第2の型122が閉じられ、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの全体に、略同時に溶融ガラスが接触することになる。このため、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aが局所的に加熱されることは無く、プレス面121aとプレス面122aに歪みは殆ど生じない。また、溶融ガラスから第1の型121及び第2の型122に熱が移動する前に、溶融ガラスが圧延されるため、成形される溶融ガラスの温度分布は略一様なものとなる。このため、溶融ガラスの冷却時、ガラス材料の収縮量の分布は小さく、ガラスブランクGの歪みが大きく発生することはない。したがって、作製されたガラスブランクGの主表面の平坦度は、従来の上下型のプレス成型により作製されるガラスブランクに比べて向上する。
【0052】
なお、図4に示す例では、切断刃161及び162を用いて、流出する溶融ガラスLGを切断することによって略球状のゴブGGが形成される。しかしながら、溶融ガラス材料LGの粘度が、切り出そうとするゴブGGの体積に対して小さい場合は、溶融ガラスLGを切断するのみでは切断されたガラスが略球状とはならず、ゴブが作れない。このような場合は、ゴブを作るためのゴブ形成型を用いる。
【0053】
図5(a)〜(c)は、図4に示す実施形態の変形例を説明する図である。この変形例ではゴブ形成型を用いる。図5(a)は、ゴブを作る前の状態を示す図であり、図5(b)は、切断ユニット160及びゴブ形成型180によってゴブGGが作られた状態を示す図であり、図5(c)は、ゴブGGをプレス成型してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図5(a)に示すように、プレスユニット120は、ブロック181,182をさらに有している。ブロック181,182は、相互に接近・開離する方向へ変位可能に配置されている。また、ブロック181,182は、駆動手段(図示せず)によって、溶融ガラスLGの経路を共同して開閉するように駆動される。ブロック181,182を溶融ガラスLGの経路上で閉じることにより溶融ガラスLGの経路が塞がれる。そして、ブロック181,182で作られる凹部180Cによって、切断ユニット160で切断された溶融ガラスLGの塊が受け止められる。この後、図5(b)に示すように、ブロック181,182が開かれることにより、凹部180Cにおいて球状となった溶融ガラスLGが一度にプレスユニット120に向けて落下し、溶融ガラスLGが球状のゴブGGとなる。球状のゴブGGは、落下途中、図5(c)に示すように、第1の型121と第2の型122とに挟まれてプレス成型されることにより、円形状のガラスブランクGが作製される。
【0054】
あるいは、図6(a)〜(d)に示すように、装置101は、図5(a)〜(c)に示す切断ユニット160を用いずに、ゴブ形成型180を、溶融ガラスLGの経路に沿って上流側方向あるいは下流側方向に移動させる移動機構を用いてもよい。図6(a)〜(d)は、ゴブ形成型180を使用する変形例を説明する図である。図6(a),(b)は、ゴブGGが作られる前の状態を示す図であり、図6(c)は、ゴブ形成型180によってゴブGGが作られた状態を示す図であり、図6(d)は、ゴブGGをプレス成型してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
【0055】
図6(a)に示すように、ブロック181,182によって共同して形成される凹部180Cが溶融ガラス流出口111から流出する溶融ガラスLGを受け止める。そして、図6(b)に示すように、所定のタイミングでブロック181,182を溶融ガラスLGの流れの下流側に素早く移動させる。これにより、溶融ガラスLGが切断されて、ゴブGGが形成される。この後、所定のタイミングで、図6(c)に示すように、ブロック181,182が離間する。これにより、ブロック181,182で保持されている溶融ゴブGGは、一度に落下する。ゴブGGは、溶融ガラスLGの表面張力により球状になる。球状のゴブGGは、落下途中、図6(d)に示すように、第1の型121と第2の型122とに挟まれてプレス成型されることにより、円形状のガラスブランクGが作製される。
【0056】
図7(a)〜(c)は、ゴブGGとの代わりに図示されない軟化炉で加熱した光学ガラスの塊CPを落下させ、落下途中の両側から型221,222で挟んでプレス成型する変形例を説明する図である。図7(a)は、加熱した光学ガラスの塊を成形する前の状態を示す図であり、図7(b)は、光学ガラスの塊を落下する状態を示す図であり、図7(c)は、光学ガラスの塊をプレス成型してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図7(a)に示すように、装置201は、光学ガラスの塊CPをガラス材把持機構212でプレスユニット220の上部の位置に搬送する。そして、この位置で、装置201は、図7(b)に示すように、ガラス材把持機構212による光学ガラスの塊CPの把持を開放して、光学ガラスの塊CPを落下させる。光学ガラスの塊CPは、落下途中、図7(c)に示すように、第1の型221と第2の型222とに挟まれて円形状のガラスブランクGが成形される。第1の型221及び第2の型222は、図5に示す第1の型121及び第2の型122と同じ構成及び作用をするので、その説明は省略する。
【0057】
<切断痕の位置を制御するための変形例>
以上詳述した装置101を用いたプレス成型では、ゴブGGの一対の切断刃161及び162による切断によって、得られたガラスブランクGに切断痕が残留することがある。切断痕が最終的に携帯機器用カバーガラスに残留することは品質上問題となるため、切断痕を後工程で除去する必要がある。しかし、ガラスブランクG上の切断痕の位置がガラスブランクごとにばらつくと、後の形状加工工程において安定的に所望の形状のガラス基板が切り出せず、歩留まりが低下する虞がある。そこで、ゴブGGを一対の切断刃161及び162で切断するときには、成形されるガラスブランクの周縁に切断痕が位置するように、ゴブGGを切断することが好ましい。発明者らの研究結果によれば、一対の切断刃161及び162のうち上方にある切断刃162を下方にある切断刃161よりも厚くすることで、ゴブGGに生ずる切断痕が落下中において上方に位置し続け、プレス中においてもゴブGGにおける切断痕の位置が変化せず、結果として、ガラスブランクGの周縁(プレス中は上方の周縁)に切断痕が生ずることが分かっている。この場合、例えば、上方の切断刃161の厚さを1.5mm、下方の切断刃162の厚さを1.0mmとする。
【0058】
<切断痕を除去するための変形例1>
また、切断痕のガラスブランクG上の位置を制御する代わりに、切断痕自体がガラスブランクGに生じないようにしてもよい。以下、図8を参照して、切断痕をガラスブランクGから除去するための構成例について説明する。なお、図8は図4と同様の形式の図である。図8(a)は、溶融ガラス材料LGと切断ユニット160が接触する前の側面図である。図8(b)は、切断ユニット160が溶融ガラス材料LGを切り出した後の側面図である。図8(c)は、プレスユニット120が溶融ガラスの塊GGをプレス成型している状態の側面図である。図8(d)は、プレスユニットからはみ出した溶融あるいは軟化したガラスを除去する状態の側面図である。
【0059】
図8に示すように、本変形例の装置は、切断刃165をさらに備えており、切断刃165以外の構成は図3に示す構成と同様である。本変形例の切断刃165は、第1の型121と第2の型122の上端において水平方向に進退可能に駆動させられる刃であり、プレスユニット120からはみ出した状態で溶融あるいは軟化したガラスを切断するために設けられている。
図8(a),(b)はそれぞれ、図4(a),(b)と同じである。本変形例では、プレスに際して、ゴブGGのうち少なくとも切断痕Tを含む一部がはみ出すタイミングで、第1駆動部123と第2駆動部124が第1の型121と第2の型122を駆動する。これにより、図8(c)に示すように、第1の型121と第2の型122の間にゴブGGのうち切断痕Tを含まない部分が捕獲(キャッチ)され、切断痕Tがプレスユニット120からはみ出した状態となる。次に、図8(d)に示すように、切断刃165が、プレスユニット120からはみ出した溶融あるいは軟化したガラスを除去する。なお、プレスユニット120からはみ出したガラスを除去できるものであれば、切断刃165の形状、材質は問わない。
【0060】
<切断痕を除去するための変形例2>
次に、切断痕自体がガラスブランクGに生じないようにするための別の構成例について、図9および図10を参照して説明する。図9(a)は、この変形例に係るプレスユニット320が備える第1の型321および第2の型322の平面図である。図9(b)は、本実施形態のプレスユニット220の側面図である。
図9(a)に示すように、本実施形態の第1の型321および第2の型322は、略円形状の弧の一部を直線状に切り取った形状である。第1の型321および第2の型322は、弧の一部を直線状に切り取られた直線部Lが鉛直上方に位置するように形成されている。図9(b)に示すように、第1の型321と第2の型322は、開状態ではゴブをプレス成型するための面の法線方向が水平方向に対して傾斜した状態で対向するように配置されている。また、閉状態において第1の型321のプレス面321aと第2の型322のプレス面322aの間隔を一定に維持し、プレスユニット320内に板状の空間を形成するように、第1の型321のプレス面321aおよび第2の型322のプレス面322aには、それぞれ突起321bおよび突起322bが設けられている。
【0061】
次に、図10に示す側面図を参照して、この変形例のプレス成型工程について説明する。図10は図4と同様の形態の図である。すなわち、図10(a)は、溶融ガラス材料LGとプレスユニット320とが接触する前の平面図である。図10(b)は、プレスユニット320が溶融ガラス材料LGを切り出した後の側面図である。図10(c)は、プレスユニット320が溶融ガラスの塊GGをプレス成型している状態の側面図である。
図10(a)に示すように、溶融ガラス材料LGは、溶融ガラス流出口111から連続的に流出される。このとき、第1の型321と第2の型322は、それぞれ、図10(a)に矢印で示すように、水平方向に移動する。そして、第1の型321の上部に配置された直線部Lと、第2の型322の上部に配置された直線部Lとが互いに接触することにより、図10(b)に示すように、溶融ガラス材料LGが切断される。また、溶融ガラス材料LGが切断されることにより、ゴブGGが形成される。この際、切断痕Tは各直線部Lの近傍に位置している。
【0062】
第1の型321および第2の型322は、各直線部Lが接触した状態を保ったまま、図10(b)に矢印で示すように、閉型するように第1の型321と第2の型322の各々の下端が移動する。これにより、図10(c)に示すように、第1の型321と第2の型322の間にゴブGGが捕獲(キャッチ)され、ガラスブランクGが作製される。この方法では、各直線部Lが接触することにより形成されたゴブGGの切断痕Tが各直線部Lの近傍に位置しているタイミングで、ゴブGGがプレス成型される。そのため、切断痕がガラスブランクGに生じないようになる。
【0063】
(b)形状加工工程
次に、形状加工工程(ステップS20)について説明する。
本実施形態のガラスブランクの製造方法では、前工程のプレス成型工程により作製されるガラスブランクが極めて高い平坦度および平滑性を備えうるため、ガラスブランクを再加熱してガラスブランクに生じている歪みを除去するアニール工程を行うことなく、プレス成型工程により作製されたガラスブランクを、この形状加工工程によって所望の携帯機器用カバーガラスの形状に加工してよい。
【0064】
つまり、ガラスブランクに生じている歪みを残存させた状態で、ガラスブランクを携帯機器用カバーガラスの形状に加工する形状加工工程を行ってもよい。ここで、ガラスブランクの表層部の歪みは、圧縮応力層である。これは、溶融ガラスの塊が一対の金型によってプレスされた際に、溶融ガラスから金型へ熱が伝わって溶融ガラスの表層側が中心側よりも先に冷え固まり、溶融ガラスにおける中心側が表層側から遅れて冷え固まることによる収縮差によって形成される(即ち物理強化による圧縮応力層に相当する)。
【0065】
形状加工工程は、プレス成型工程で得られたガラスブランクを、携帯機器用ガラス基板の外形に応じた所望の形状に加工してガラス基板を得る工程である。ガラスブランクを所望の形状に加工するための切断方法としては、例えば、エッチング、スクライビングなどがある。
スクライビングによる切断方法では、ガラスブランクを所望の形状とするために、ガラスブランクの表面に超鋼合金製あるいはダイヤモンド粒子からなるスクライバにより、所望の形状の輪郭に合致した切断線(線状のキズ)を設ける。その後、ガラスブランクを部分的に加熱することで、熱膨張により切断線を成長させることによってガラスブランクのうち所望の領域のみを除去する。
エッチングによる切断方法を利用した形状加工工程には、以下の(b−1)耐エッチング膜形成工程、(b−2)パターニング工程、(b−3)切断工程、の工程が含まれる。
以下、エッチングによる切断方法を利用した形状加工工程について説明する。
【0066】
(b−1)耐エッチング膜形成工程
耐エッチング膜形成工程では、ガラスブランクの少なくとも一方の面上に、耐エッチング膜を形成する。この耐エッチング膜は、通常、ガラスブランクの両面に形成されるが、後の切断工程において、片面のみをエッチング溶液に接触させる場合には、当該片面にのみ耐エッチング膜が形成されていればよい。なお、以下の説明においては、耐エッチング膜が、ガラスブランクの両面に形成されることを前提として説明する。耐エッチング膜としては、後のパターニング工程において、パターニング処理により部分的に除去可能であり、かつ、切断工程において用いるエッチング溶液に対しては溶解・除去されない性質を有するものであれば、適宜選択できる。このような耐エッチング膜としては、少なくとも弗酸水溶液に対して難溶性または不溶性を示すレジスト膜を用いることが好ましい。この場合、パターニング工程においては、レジスト膜を、フォトマスクを用いた露光処理と現像液による現像処理とによってパターニング処理し、切断工程においてエッチング溶液を利用して切断を行うことができる。
【0067】
(b−2)パターニング工程
パターニング工程では、少なくとも耐エッチング膜を、パターニングする。これにより、ガラスブランクの表面全面を覆う耐エッチング膜のうち、最終的に作製されるガラス基板の平面方向の形状に対応する領域以外の耐エッチング膜を除去する。耐エッチング膜のパターニング方法としては、代表的には、上述した露光・現像を組み合わせて実施するフォトリソグラフィが利用できる。なお、パターニング工程は、両面に耐エッチング膜が形成されたガラスブランクの少なくとも片面に対して実施すればよく、両面に対して実施してもよい。
【0068】
(b−3)切断工程
切断工程では、ガラスブランクの、パターニングされた耐エッチング膜が設けられた面を、エッチング溶液に接触させてエッチングすることで、ガラスブランクを小片に切断する。エッチング処理は、通常、ガラスブランクをエッチング溶液に浸漬させて行う。エッチング溶液としては、少なくとも弗酸を含むものであれば特に限定されないが、必要に応じて、塩酸等のその他の酸や、界面活性剤等の各種の添加剤が添加されていてもよい。
【0069】
(c)化学強化工程
次に、化学強化工程(ステップS30)について説明する。
化学強化工程では、形状加工工程によって所望の形状に加工されたガラス基板を複数枚、カセット(ホルダー)に装填し、溶融塩を含む化学強化処理液にカセットを浸漬させる。これにより、ガラス基板に含まれる1種以上のアルカリ金属を、溶融塩のアルカリ金属との間でイオン交換処理を行い、ガラス基板の表層部分に圧縮応力層を形成する。
【0070】
溶融塩の組成および温度、ならびに、浸漬時間は、ガラス基板のガラス組成や、ガラス基板の表層部分に形成する圧縮応力層の厚さ等に応じて適宜選択できるが、ガラス基板のガラス組成が上述したアルミノシリケートガラスやソーダライムガラスであれば、化学強化処理液の処理温度を通常500℃以下とする低温型イオン交換法を利用することが好ましい。これは、イオン交換をガラスの徐冷点以上の温度域で行う高温型イオン交換法では、低温型イオン交換法ほど大きな強度が得られず、また、強化処理中に溶融塩によってガラス表面が浸食され透明性が損なわれやすいため、携帯機器用カバーガラスに適したガラス基板が得られにくいことによる。例えば、本実施形態の化学強化工程では、溶融塩の組成および温度、ならびに、浸漬時間は、下記に例示する範囲から選択することが好ましい。
・溶融塩の組成 :硝酸カリウム、または、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混塩
・溶融塩の温度 :320℃〜470℃
・浸漬時間 :3分〜600分
【0071】
(d)加飾層形成工程
次に、化学強化されたガラス基板10の一方の主表面に対して加飾層20を形成するための加飾層形成工程を行う(ステップS40)。加飾層形成工程では、ガラス基板10の主表面に対して、スクリーン印刷等の公知の様々な印刷方法、あるいは公知の成膜方法によって加飾層20を形成する。公知の成膜方法としては、例えばディッピング法、スプレーコート法、ゾルゲルコート法、メッキ法等の公知の液相成膜法や、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の気相成膜法などが利用できる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法によれば、溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型するプレス成型工程を含む。このことから、一対の金型のプレス面の表面粗さを良好なレベル(例えば携帯機器用カバーガラスに求められる表面粗さ)に設定しておけば、その表面粗さが、プレス成型によって得られるガラスブランクの表面粗さとして形状転写される。このため、ガラスブランクの表面粗さを良好なレベルとすることができる。
【0073】
また、プレス成型工程では、溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の相関関係に基づいて、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる一対の金型の温度差を求め、一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行ってもよい。したがって、本実施形態のプレス成型工程で得られるガラスブランクは、その主表面の表面粗さおよび平坦度を携帯機器用カバーガラスに求められるレベルとすることができる。このため、後工程で主表面の加工工程を要しない。これを換言すると、ガラスブランクの主表面の表面状態を維持して、ガラスブランクの主表面が携帯機器用カバーガラスの主表面となるように、ガラスブランクの外周形状を携帯機器用カバーガラスの外周形状に加工する形状加工工程を行ってもよい。
【0074】
このガラスブランクを基に所定の形状に形状加工されたガラス基板に対して化学強化が施されるが、本実施形態では化学強化によってガラス基板の平坦度に対して悪化させることはない。そのため、最終的に得られる携帯機器用カバーガラスは薄型で高い機械的強度を備え、かつ従来よりも平坦度が高いものとなる。
【0075】
また、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法では、プレス成型工程において作製されるガラスブランクの大きさは携帯機器用カバーガラスの大きさに近く、そのガラスブランクを元に所望の形状に加工するため、少量多品種生産に適している。
【0076】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法について説明する。
従来の携帯機器用カバーガラスは、主として表示画面を保護するために用いられてきたため、その外形形状は全体として平坦な形状がほとんどであった。一方、携帯機器の筐体を保護するための部材としてはステンレス鋼が従来用いられてきたが、そのような携帯機器は、使用状況によっては筐体のステンレス鋼の部分に傷が付きやすく、使用していくにつれて携帯機器の見栄えが低下していくことが指摘されている。そのため、携帯機器の表示画面の保護に加えて携帯機器の筐体の保護を目的として、薄型の強化ガラスを使用することが要請されてきている。
【0077】
携帯機器の筐体の形状は一般に3次元形状であるが、3次元形状の携帯機器用カバーガラスを、フロート法やダウンドロー法によって得られる板ガラスを元にして作製することは困難である。すなわち、フロート法やダウンドロー法によって得られた板ガラスを元にして3次元形状の携帯機器用カバーガラスを作製するためには、板ガラスを再溶融させ、所望の3次元形状が得られるような型に溶融ガラスを流し込まない限り作製することが難しい。それに対して、第1の実施形態で説明したプレス成型方法では、所望の携帯機器用カバーガラスの外形形状に合致した型を用意することで、再溶融させずに済み、かつ、高い平坦度および平滑性が得られるため、携帯機器の筐体の保護を目的とした携帯機器用カバーガラスを作製するのに好適である。
【0078】
例えば、3次元形状の携帯機器用カバーガラスの外観形状の一例を図11に示す。図11に例示する携帯機器用カバーガラスは、概ねコの字状の形態をなしており、携帯機器の筐体を裏側から覆うような形態となっている。
図12は、図11に例示した携帯機器用カバーガラス用のガラスブランクを作製するときのプレス成型方法を具体的に示す図である。図12(a)は、ゴブを作る以前の状態を示す図であり、図12(b)は、切断ユニット160によってゴブが作られた状態を示す図であり、図12(c)は、ゴブをプレスすることによりガラスブランクGが成形された状態を示す図である。
【0079】
このプレス成型方法では先ず、図12(a)に示されるように、溶融ガラス流出口111から、溶融ガラス材料LGが連続的に流出される。このとき、所定のタイミングで切断ユニット160を駆動し、切断刃161及び162によって溶融ガラス材料LGを切断する(図12(b))。以上の点は、第1の実施形態で述べたプレス成型方法と同様である。
【0080】
本実施形態のプレスユニット420には、閉型時に目標とする3次元形状のガラスブランクGに相当する閉空間が得られるような形状の第1の型421と第2の型422とが用いられる。例えば、図11に示す形状のガラスブランクGを作製するには、閉型時に図11に示す形状と同一の閉空間が得られるようになっている。即ち、本実施形態では、第1の型421がプレス方向に突出する構造(凸構造)であり、第2の型422がプレス方向に窪む構造(凹構造)である。なお、金型の形状については、カバーガラスのデザインに応じて適宜変更可能であり、金型の形状を変更することによって、板厚方向へガラスブランクを部分的に曲げる等、カバーガラスの形状の自由度を向上させることができる。
【0081】
本実施形態のプレス成型方法でも第1の実施形態と同様に、作られたゴブGGは、プレスユニット420の第1の型421と第2の型422の隙間に向かって落下する。このとき、ゴブGGが第1の型421と第2の型422の隙間に入るタイミングで、第1の型121と第2の型122が互いに近づくように駆動されて、第1の型421と第2の型422とによってゴブGGが捕獲(キャッチ)される。このとき、図12(c)に示すように、第1の型421のプレス面421aの外周面421bと、第2の型422のプレス面422aの外周面422bとが当接する。そして、第1の型421のプレス面421aと第2の型422のプレス面422aの間に挟み込まれたゴブGGは急激に冷却されて固化し、図11に示した形状と同一のガラスブランクGに成形される。
【0082】
本実施形態のプレス成型方法では、プレス面421a及びプレス面422aの表面粗さは、ガラスブランクGの算術平均粗さRaが0.001μm〜0.1μmとなるように、好ましくは、0.0005μm〜0.05μmとなるように調整することができ、これによって、ガラスブランクの表面の平滑性は極めて高いものとなるため、主表面については、プレス成型後の研削および研磨工程を行わなくても済む。つまり、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法によれば、上記プレス成型方法によって最終製品である3次元形状(つまり、平坦でない所望の形状)のカバーガラスとほぼ同一の形状のガラスブランクを作製することができ、携帯機器の筐体の保護を目的とした携帯機器用カバーガラスを作製するのに好適である。
なお、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法においても、第1の実施形態で述べた化学強化工程、加飾層形成工程を含んでよい。
また、使用されるモデルやサイズによって、要求される値は異なるが、一般的に携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度としては、8cmの長さ辺り20μm以下になることが好ましい。本実施の形態にかかる携帯機器用カバーガラスブランクの製造方法を用いることで、上記の要求を満たすことができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0084】
[実施例]
ガラス組成として、63.5重量%のSiO2と、8.2重量%のA12O3と、8.0重量%のLi2Oと、10.4重量%のNa2Oと、11.9重量%のZrO2とを含む溶融ガラス材料を準備し、本発明の第1実施形態のプレス成型方法(図3、図4の装置を用いた方法)を用いて、直径90mm、厚さ0.7mmのガラスブランクを作製した。溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGの温度は1300℃であり、この時の溶融ガラス材料LGの粘度は700ポアズである。また、第1の型及び第2の型のプレス面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.01μm〜1μmとした。
溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGは、切断ユニット160によって切断され、直径約20mmのゴブGGとが形成される。ゴブGGとは、プレスユニットによって荷重3000kgfで、その温度が溶融ガラス材料のガラス転移温度(Tg)以下となるまで(約3秒)プレスされ、直径90mmのガラスブランクが形成された。このガラスブランクを45mm×80mmの小片に切断した。
この実施例では、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を8μm以下とした場合に、この平坦度を実現すべく、各プレスユニットにおいて第1の型及び第2の型の温度差は、10℃以内とした。具体的には、第1の型の温度を420℃とし、第2の型の温度を411〜429℃とした。
次に、ガラスブランクを溶融塩中に浸漬して化学強化を施し、ガラスブランクの両面に約40μmの圧縮応力層を形成した。化学強化(イオン交換処理)における溶融塩として、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混塩(混合比は重量%で、硝酸カリウム:硝酸ナトリウム=60:40)を用い、圧縮応力層の厚さが上記厚さとなるように、溶融塩の温度を320℃〜360℃の範囲内に保った状態で、浸漬時間を適宜調整した。
【0085】
[実施例のガラスブランクの測定]
実施例で作製された45mm×80mmのガラスブランク(化学強化後のガラスブランク)について、平坦度および表面粗さ(算術平均粗さRa)を測定した。
平坦度は、JIS B0602により規定され、例えば、Nidek社製フラットネステスターFT−900を用いて測定した。表1に示す平坦度の評価基準は、以下のとおりである。
◎:Raが4.0μm以下
○:Raが4.0μmより大きく8.0μm以下
△:Raが8.0μmより大きく12.0μm以下
×:Raが12.0μmより大きい
【0086】
表面粗さは、JIS B0601:2001(又はISO 4287:1997)により規定される算術平均粗さRaで表され、0.006μm以上200μm以下の場合は、例えば、ミツトヨ社製粗さ測定機SV−3100で測定し、JIS B0633:2001(又はISO 4288:1996)で規定される方法で算出できる。その結果粗さが0.03μm以下であった場合は、例えば、日本Veeco社製走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡;AFM)ナノスコープで計測しJIS R1683:2007で規定される方法で算出できる。本願においては、1μm×1μm角の測定エリアにおいて、512×512ピクセルの解像度で測定したときの算術平均粗さRaを用いた。
表1に示す表面粗さの評価基準は、以下のとおりである。
○:Raが0.01μm以下
△:Raが0.01μmより大きく0.1μm以下
×:Raが0.1μmより大きい
【0087】
【表1】
【0088】
表1から、各例のガラスブランクをプレス成型したときの一対の金型間の温度差と、各例のガラスブランクの平坦度との間には、相関関係が存在することが分かる。特に温度差を0℃にした場合に最も高い平坦度が得られた。また、第1の型及び第2の型のプレス面がガラスブランクに形状転写され、各例のガラスブランクの表面粗さについては、第1の型及び第2の型のプレス面の表面粗さとほぼ同じであった。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0090】
また、本発明の製造方法により製造した電子機器用カバーガラスブランクを、携帯機器用カバーガラスブランクの他に、タッチセンサの内部基板に対するカバー部材であるタッチセンサ用カバーガラスの基材としてのタッチセンサ用カバーガラスブランクに用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
10…ガラス基板
10T,10B…主表面
10U,10V…圧縮応力層
20…印刷層
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルスティルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器としての携帯機器に表示画面の保護を主目的として、携帯機器用カバーガラスが用いられている。近年、携帯機器の薄型化・軽量化の要請、および、携帯機器の使用形態(機器の落下やタッチパネル機能による入力等)に対応した対加傷性、対衝撃性などの要請から、電子機器用カバーガラスとしての携帯機器用カバーガラスには、薄型で機械的強度が高いことが求められている。そこで、これらの要求特性を満足させるべく、化学強化を施した薄いガラス基板が作製されている。リチウムイオンやナトリウムイオンを含有する板状ガラスに対して化学強化を施すことについては、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また、従来、携帯機器用カバーガラスの製造に当たって、板状ガラス(あるいはガラス基板)を作製する方法としてフロート法や、ダウンドロー法等が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−13052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、携帯機器の薄型化や高機能化に加え、様々な形状の携帯機器の筐体および表示画面に対応すべく、様々な形状のカバーガラスを少量作製する、すなわち少量多品種生産することが要請されている。しかしながら、上述したフロート法およびダウンドロー法は、大容積のガラス溶解設備を使用するので、同一形状のガラス基板を大量生産する場合に適しているが少量多品種生産には適していない。
【0006】
一方、少量多品種生産に適した板状ガラス(ガラスブランク)の製造方法としては、プレス法が考えられる。公知のプレス法は、下型上に溶融ガラスの塊を供給し、上型を使用して溶融ガラスの塊(溶融ガラス塊)をプレス成型する方法(垂直ダイレクトプレス法)である。しかしながら、この方法では、作製されるガラスブランクの平坦度(形状精度)が悪いという問題がある。
【0007】
この理由は以下のとおりである。垂直ダイレクトプレス法では、回転テーブルによって支持された下型上に溶融ガラス塊を配置してからプレス成型を開始するまでの期間において、下型が高温の溶融ガラスによって加熱される。そのため、下型を支持する回転テーブルにも熱が伝達されやすくなり、回転テーブルが熱により変形する。その結果、ガラスブランクの板厚偏差や平坦度等の形状精度が低下してしまう。
【0008】
また、垂直ダイレクトプレス法では、下型上に溶融ガラス塊を配置した直後から溶融ガラス塊のうち下型との接触面および接触面に近い部分のみが急激に冷却されることになる。このため、プレス成型直前における溶融ガラス塊内部の粘度分布(温度分布)が広範囲に亘る状態となる。つまり、プレス成型直前では、溶融ガラス塊内部の下側と上側との間で粘度差が比較的大きくなっている。この状態でプレス成型が行われると、ガラスブランクの板厚偏差の増大および平坦度の低下が生じてしまう。ガラスブランクの板厚偏差の増大および平坦度の低下は、下型上に溶融ガラス塊を配置してからプレス成型を開始するまでの間の時間差に起因しており、垂直ダイレクトプレス法では抜本的に抑制することができない。
【0009】
さらに、垂直ダイレクトプレス法では、溶融ガラス塊が下金型に貼り付いて除去できなくなることを防止するために、例えばBN(ボロンナイトライド)等の固体潤滑剤を下金型に塗布しておく必要がある。しかしながら、このような固体潤滑剤がガラスブランクに付着したままでは透明度が悪化する。したがって、垂直ダイレクトプレス法で作製されたガラスブランクは、その平坦度を改善し、かつ固体潤滑剤を剥離させるために、後工程で主表面の加工工程が必須である。このため、従来のプレス成型法では、電子機器用カバーガラスブランクを製造するには不向きであった。
【0010】
本発明は、少量多品種生産に好適な電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に直面して本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、発明者らは新たなプレス成型方法を考案した。すなわち、本実施形態のガラスブランクの製造方法では、落下中の溶融ガラス塊を、溶融ガラス塊の落下方向に対して直交する方向(水平方向)に対向配置された一対の金型(プレス成型型)によりプレス成型する水平ダイレクトプレス法を採用している。この水平ダイレクトプレス法において溶融ガラス塊は、プレス成型されるまでの間、溶融ガラス塊よりも温度の低い部材に一時的に接触・保持されない。この点で、従来の垂直ダイレクトプレス法とは異なる。このため、プレス成型の開始直前の時点において、垂直ダイレクトプレス法では、溶融ガラス塊の内部の粘度分布がプレス成型時に非常に広くなるのに対して、本実施形態の水平ダイレクトプレスでは、溶融ガラス塊の粘度分布は均一に保たれる。
【0012】
よって、垂直ダイレクトプレス法と比べて、水平ダイレクトプレス法では、プレス成型される溶融ガラス塊を均一に薄く延伸させることが極めて容易である。したがって、結果的に、垂直ダイレクトプレス法を利用してガラスブランクを作製した場合と比べて、水平ダイレクトプレス法を利用してガラスブランクを作製した場合では、平坦度の低下を抜本的に抑制することが極めて容易である。
【0013】
また、溶融ガラス塊をプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度の差が小さい場合には、その差が大きい場合と比較して、生成されるガラスブランクの平坦度を低下させることができる。これは、一対の金型間の温度差がより小さい場合には、高温の溶融ガラス塊が型の内側のプレス面(内周面)に接触して急激に冷却するときの熱的均衡が実現されやすい。このため、冷却段階での一対の金型間での微小な熱変形度合いの差に起因して生じうるガラスブランクの平坦度の低下をより抑制することができる。つまり、溶融ガラス塊をプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間には相関関係が存在する。
【0014】
この相関関係を既知とすると、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現するための一対の金型間の温度差(絶対値)の最大値が分かる。そこで、一対の金型間の温度差をその最大値以下となるように制御することで、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現することができる。
【0015】
上述した観点から、本発明は、溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型する成型工程を含む電子機器用カバーガラスブランクの製造方法であって、上記溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の相関関係に基づいて、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる上記一対の金型の温度差を求め、一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように上記一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスブランクの製造方法である。
【0016】
上記電子機器用カバーガラスの製造方法において、好ましくは、プレス成型工程では、上記一対の金型のそれぞれの溶融ガラスと接触する部分の温度が、上記一対の金型間で同一の温度となるようにプレスすることを特徴とする。
【0017】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法において、上記塊が上記金型に接触してから離れるまでの上記一対の金型の温度を、上記溶融ガラスのガラス転移点(Tg)未満の温度とすることを特徴とする。
【0018】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法において、上記プレス成型工程によって得られたガラスブランクの板厚が、上記電子機器用カバーガラスに要求される板厚と同じ板厚となるようにプレス成型を行うことを特徴とする。
【0019】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法は、好ましくは、溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、上記切断工程では、溶融ガラスの切断痕が上記ガラスブランクの周縁に位置するように、溶融ガラスを切断することを特徴とする。
【0020】
上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法は、好ましくは、溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、上記プレス成型工程では、溶融ガラスの切断痕が上記一対の金型からはみ出すタイミングで溶融ガラスをプレスすることを特徴とする。
【0021】
本発明の電子機器用カバーガラスの製造方法は、上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクに生じている歪みを残存させた状態で、上記ガラスブランクを電子機器用カバーガラスの形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明の電子機器用カバーガラスの製造方法は、上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクの主表面の表面状態を維持して、上記ガラスブランクの主表面が電子機器用カバーガラスの主表面となるように、上記ガラスブランクの外周形状を電子機器用カバーガラスの外周形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明の電子機器用カバーガラスの製造方法は、上記電子機器用カバーガラスブランクの製造方法によって得られた電子機器用ガラスブランクを用いて電子機器用カバーガラスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、少量多品種生産に好適な電子機器用カバーガラスブランクおよび電子機器用カバーガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の携帯機器用カバーガラスの構成を示す図。
【図2】実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法の一実施形態のフローを示す図。
【図3】実施形態のプレス成型において用いられる装置の平面図。
【図4】実施形態のプレス成型において用いられる装置4組のプレスユニットの配置を示す図。
【図5】ゴブ形成型を用いた実施形態のプレス成型の変形例を示す図。
【図6】切断ユニットを用いないようにした、実施形態のプレス成型の変形例を示す図。
【図7】軟化炉で加熱した光学ガラスを用いた実施形態のプレス成型の変形例を示す図。
【図8】切断痕をガラスブランクから除去するための構成例を示す図。
【図9】切断痕がガラスブランクに生じないようにするための構成例を示す図。
【図10】切断痕がガラスブランクに生じないようにするためのプレス成型の変形例を示す図。
【図11】3次元形状の携帯機器用カバーガラスの外観形状の一例を示す図。
【図12】図11に例示した携帯機器用カバーガラス用のガラスブランクを作製するときのプレス成型方法を具体的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態では、電子機器用カバーガラスブランク及び電子機器用カバーガラスとして、それぞれ携帯機器用カバーガラスブランク及び携帯機器用カバーガラスを例に説明する。
(1)第1の実施形態
(1−1)実施形態のカバーガラス
本実施形態のカバーガラスの構成について図1を参照して説明する。図1において(a)は一形状例に係る本実施形態のカバーガラスの斜視図であり、(b)は本実施形態のカバーガラスの断面図である。
本実施形態のカバーガラスは、ガラス基板そのもの、あるいはガラス基板上に印刷層が形成されたものである(図1には後者の構造を図示)。本実施形態のカバーガラスの好ましい利用形態は例えば、携帯型電子機器、特に携帯電話機(携帯機器)の表示画面に使用されるカバーガラスである。したがって、本実施形態のカバーガラスは、機器の落下あるいは表示画面への操作入力(タッチパネル機能としての操作入力)に対する仕様を満足させるべく、薄くかつ高い強度を有するガラスである必要がある。このため、本実施形態のカバーガラスは、イオン交換処理による化学強化が可能なアルカリ金属酸化物を含むガラス材料からなる。
【0027】
例えば、SiO2と、Al2O3と、Li2OおよびNa2Oから選択される少なくとも1種のアルカリ金属酸化物と、を含むアルミノシリケートガラスや、ソーダライムガラスなど、公知のガラス材料を用いることが好適である。
【0028】
アルミノシリケートガラスとしては、板状ガラスの製造性、機械的強度、化学的耐久性等の実用上の観点等から、62重量%〜75重量%のSiO2と、5重量%〜15重量%のA12O3と、0〜8重量%のLi2Oと、4重量%〜16重量%のNa2Oと、0〜6重量%のK2Oと、0重量%〜12重量%のZrO2と、0〜6重量%のMgOを含むものであることがより好ましい。
【0029】
図1(b)を参照すると、本実施形態のガラス基板10の表面側および裏面側の表層部分にはそれぞれ、圧縮応力層10Uおよび圧縮応力層10Vが形成されている。この圧縮応力層10Uおよび圧縮応力層10Vは、ガラス基板を構成するガラス材料に元々含まれるアルカリ金属の一部を、よりイオン半径の大きなアルカリ金属に置換した変質層である。例えば、本実施形態のガラス基板を構成するガラス材料に含まれるナトリウムイオンがカリウムイオンに置換される。
【0030】
また、圧縮応力層10U、10Vの厚さは、ガラス基板の用途に応じて適宜選択されるが、主表面10T,10Bの耐傷性や、ガラス基板10の耐衝撃性を確保する観点からは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。一方、圧縮応力層10U、10Vの厚さの上限は特に限定されるものではない。なお、イオン交換処理に要する時間の増大や、外形加工(切断加工、ウェットエッチング)による切断時の両主表面の応力バランスの悪化によるガラス基板10製造中の自発的粉砕(自爆)を防ぐなどの実用上の観点から、100μm以下とすることが好ましく、70μm以下とすることがより好ましい。また、圧縮応力層10Uの厚さと、圧縮応力層10Vの厚さとは、異なっていてもよい。しかし、この場合、ガラス基板10の両主表面10T,10Bでの応力バランスが崩れて、ガラス基板10が反りやすくなる。それゆえ、通常は、圧縮応力層10Uの厚さと、圧縮応力層10Vの厚さとは、ほぼ同一であることが好ましい。
【0031】
ガラス基板10の板厚Tは特に限定されないが、ガラス基板10を利用する各種機器の重量増大の抑制や、機器の薄型化の観点から、通常は、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましい。なお、板厚の下限値は、ガラス基板10の機械的強度を確保する観点から、0.2mm以上とすることが好ましい。
【0032】
なお、本実施形態のガラス基板10は、ガラス基板10の本体のみから構成されていてもよいが、ガラス基板10の利用用途に応じて、図1に示すように、ガラス基板の両主表面10T,10Bのいずれか一方の面に、一層以上の加飾層20を設けてもよい。加飾層20としては、(1)ARコート(アンチリフレクションコ一ト、アンチグレアコート、ハーフミラーコート、偏光膜などの光学的機能を有する層、(2)ITO(Indium Tin Oxide)膜に代表される透明電極膜などの電気的機能を有する層、(3)印刷層などの審美性を向上させる機能を有する層などが一例として挙げられる。また、複数種の加飾層20を積層、パターニング加工等することで、ガラス基板10にタッチパネルとしての機能を付加することもできる。
【0033】
(1−2)実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法
次に、図2を参照して、携帯機器用カバーガラスの製造工程について説明する。図2は、携帯機器用カバーガラスの製造工程を示すフローチャートである。
図2に示すように、この携帯機器用カバーガラスでは先ず、プレス成型工程において溶融ガラスをプレス成型してガラスブランクを作製する(ステップS10)。次に、プレス成型により得られたガラスブランクに対して形状加工を施し、所望の形状のガラス基板を作製する(ステップS20)。次に、ガラス基板に対して化学強化を施してガラス基板の表層部分に圧縮応力層を形成する(ステップS30)。さらに、必要に応じてガラス基板の表面に単層または多層からなる加飾層を設ける(ステップS40)。
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0034】
(a)プレス成型工程
先ず図3を参照して、プレス成型工程(ステップS10)について説明する。図3は、プレス成型において用いられる装置の平面図である。図3に示されるように、装置101は、4組のプレスユニット120,130,140,150と、切断ユニット160と、を備える。切断ユニット160は、溶融ガラス流出口111から流出する溶融ガラスの経路上に設けられる。装置101は、切断ユニット160によって切断されてできる溶融ガラスの塊(以降、ゴブともいう)を落下させ、そのとき、塊の落下経路の両側から、互いに対向する一対の型の面で塊を挟み込みプレスすることにより、ガラスブランクを成形する。
具体的には、図4に示されるように、装置101は、溶融ガラス流出口111を中心として、4組のプレスユニット120,130,140及び150が90度おきに設けられている。
【0035】
プレスユニット120,130,140及び150の各々は、図示しない移動機構によって駆動されて、溶融ガラス流出口111に対して進退可能となっている。すなわち、溶融ガラス流出口111の真下に位置するキャッチ位置(図3においてプレスユニット140が実線で描画されている位置)と、溶融ガラス流出口111から離れた退避位置(図3において、プレスユニット120,130及び150が実線で描画されている位置及び、プレスユニット140が破線で描画されている位置)との間で移動可能となっている。
【0036】
切断ユニット160は、キャッチ位置(プレスユニットによるゴブの捕獲位置)と溶融ガラス流出口111との間の溶融ガラスの経路上に設けられ、溶融ガラス流出口111から流出される溶融ガラスを適量に切り出して溶融ガラスの塊を形成する。切断ユニット160は、一対の切断刃161及び162を有する。切断刃161及び162は、一定のタイミングで溶融ガラスの経路上で交差するよう駆動され、切断刃161及び162が交差したとき、溶融ガラスが切り出されてゴブが得られる。得られたゴブは、キャッチ位置に向かって落下する。
【0037】
プレスユニット120は、第1の型121、第2の型122、第1駆動部123及び第2駆動部124を有する。第1の型121と第2の型122の各々は、ゴブをプレス成型するための面を有するプレート状の部材である。この2つの面の法線方向が略水平方向となり、この2つの面が互いに平行に対向するよう配置されている。第1駆動部123は、第1の型121を第2の型122に対して進退させる。一方、第2駆動部124は、第2の型122を第1の型121に対して進退させる。第1駆動部123及び第2駆動部124は、例えばエアシリンダやソレノイドとコイルばねを組み合わせた機構など、第1駆動部123の面と第2駆動部124の面とを急速に近接させる機構を有する。
なお、プレスユニット130,140及び150の構造は、プレスユニット120と同様であるため、説明は省略する。
【0038】
プレスユニットの各々は、キャッチ位置に移動した後、第1駆動部と第2駆動部の駆動により、落下するゴブを第1の型と第2の型とで挟み込んで所定の厚さに成形すると共に急速冷却し、円形状のガラスブランクGを作製する。つぎに、プレスユニットは退避位置に移動した後、第1の型と第2の型を引き離し、成形されたガラスブランクGを落下させる。プレスユニット120,130,140及び150の退避位置の下には、それぞれ第1コンベア171、第2コンベア172、第3コンベア173及び第4コンベア174が設けられている。第1〜第4コンベア171〜174の各々は、対応する各プレスユニットから落下するガラスブランクGを受け止めて、次工程の装置(図示せず)にガラスブランクGを搬送する。
【0039】
装置101では、プレスユニット120,130,140及び150が、順番にキャッチ位置に移動して、ゴブを挟み込んで退避位置に移動するよう構成されている。このため、各プレスユニットでのガラスブランクGの冷却を待たずに、連続的にガラスブランクGの成形を行うことができる。
【0040】
図4(a)〜(c)は、装置101を用いたプレス成型をより具体的に説明している。図4(a)は、ゴブを作る以前の状態を示す図であり、図4(b)は、切断ユニット160によってゴブが作られた状態を示す図であり、図4(c)は、ゴブをプレスすることによりガラスブランクGが成形された状態を示す図である。
【0041】
図4(a)に示されるように、溶融ガラス流出口111から、溶融ガラス材料LGが連続的に流出される。このとき、所定のタイミングで切断ユニット160を駆動し、切断刃161及び162によって溶融ガラス材料LGを切断する(図4(b))。これにより、切断された溶融ガラスは、その表面張力によって、概略球状のゴブGGとなる。溶融ガラス材料LGの時間当たりの流出量、及び切断ユニット160の駆動間隔については、目標とするガラスブランクGの大きさや、板厚から定まる体積に応じて適宜調整可能である。
【0042】
作られたゴブGGは、プレスユニット120の第1の型121と第2の型122の間の隙間に向かって落下する。このとき、ゴブGGが第1の型121と第2の型122の間の隙間に入るタイミングで、第1の型121と第2の型122が互いに近づくように、第1駆動部123及び第2駆動部124(図4参照)が駆動される。これにより、図4(c)に示されるように、第1の型121と第2の型122によってゴブGGが捕獲(キャッチ)される。さらに、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aとが、微小な間隔にて近接した状態になり、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの間に挟み込まれたゴブGGが、薄板状に成形される。
【0043】
なお、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aとの間隔を一定に維持するために、第1の型121のプレス面121a、および第2の型122のプレス面122aにはそれぞれ、突起121bおよび突起122bが設けられる。すなわち、突起121bおよび突起122bが互いに当接することによって、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aとの間の間隔は、一定に維持されて、ガラスブランクGの外形に相当する空間が形成される。
【0044】
第1の型121及び第2の型122には、図示しない温度調節機構が設けられており、第1の型121及び第2の型122の温度は、溶融ガラスLGのガラス転移温度(Tg)よりも十分に低い温度に保持されている。
【0045】
なお、ゴブGGをプレス成型する際の第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの対向位置における温度差と、プレス成型後に得られるガラスブランクの平坦度との間には相関関係が存在する。つまり、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの対向位置における温度差が小さいほど、プレス成型後に得られるガラスブランクの平坦度は良好なものとなる。これは、一対の型の間の温度がより近い場合には、高温のゴブGGが型のプレス面に接触して急激に冷却するときに熱的均衡が実現されるため、冷却段階での一対の金型間での微小な熱変形度合いの差に起因して生じうるガラスブランクの平坦度の低下を、より抑制することができるためである。
【0046】
ここで、この相関関係を既知としたならば、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現するための一対の金型間(第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの間)の温度差(絶対値)の最大値が分かる。そこで、一対の金型間の温度差をその最大値以下となるように制御することで、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現することができる。例えば、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を8μmとしたならば、一対の金型間の上記温度差を10℃以内とした状態でプレス成型を行うようにする。一対の金型間の上記温度差が0℃であるときに作製されるガラスブランクの平坦度が最も良好となる。但し、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度に応じて上記温度差は、上記相関関係から適宜決定してもよい。
【0047】
装置101では、ゴブGGが第1の型121のプレス面121a又は第2の型122のプレス面122aに接触してから、第1の型121と第2の型122とがゴブGGを完全に閉じ込める状態になるまでの時間は約0.06秒と極めて短い。このため、ゴブGGは極めて短時間の内に第1の型121のプレス面121a及び第2の型122のプレス面122aに沿って広がって略円形状に成形され、さらに、急激に冷却されて非晶質のガラスとして固化する。これによって、ガラスブランクGが作製される。なお、本実施形態において成形されるガラスブランクGの大きさは、目的とするカバーガラスの大きさにもよるが、例えば、直径(又は1辺の長さが)20〜200mm程度である。
【0048】
また、本実施形態のプレス成型方法では、第1の型121のプレス面121a及び第2の型122のプレス面122aが形状転写された形でガラスブランクGが形成されるため、一対の型のプレス面の平坦度および平滑性は、目的とするカバーガラスのそれと同等なものとしておくことが好ましい。この場合、プレス成型後に、ガラスブランクGに対する表面加工工程、すなわち研削および研磨工程は不要とすることができる。すなわち、本実施形態のプレス成型方法において成形されるガラスブランクGは、最終的に得られるカバーガラスの目標板厚と同一の板厚であってよい。例えば、ガラスブランクGは、厚さ0.2〜1.1mmの円形状の板である。プレス面121a及びプレス面122aの表面粗さは、ガラスブランクGの算術平均粗さRaが0.001〜0.1μmとなるように、好ましくは、0.0005〜0.05μmとなるように調整される。
【0049】
第1の型121と第2の型122が閉じられた後、プレスユニット120は速やかに退避位置に移動し、代わりに、他のプレスユニット130がキャッチ位置に移動し、このプレスユニット130によって、ゴブGGのプレスが行われる。
【0050】
プレスユニット120が退避位置に移動した後、ガラスブランクGが十分に冷却されるまで(少なくとも屈服点よりも低い温度となるまで)、第1の型121と第2の型122は閉じた状態を維特する。この後、第1駆動部123及び第2駆動部124が駆動されて第1の型121と第2の型122が離間し、ガラスブランクGは、プレスユニット120を離れて落下し、下部にあるコンベア171に受け止められる(図3参照)。
【0051】
装置101では、上記のように、0.1秒以内(約0.06秒)という極めて短時間のうちに第1の型121と第2の型122が閉じられ、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aの全体に、略同時に溶融ガラスが接触することになる。このため、第1の型121のプレス面121aと第2の型122のプレス面122aが局所的に加熱されることは無く、プレス面121aとプレス面122aに歪みは殆ど生じない。また、溶融ガラスから第1の型121及び第2の型122に熱が移動する前に、溶融ガラスが圧延されるため、成形される溶融ガラスの温度分布は略一様なものとなる。このため、溶融ガラスの冷却時、ガラス材料の収縮量の分布は小さく、ガラスブランクGの歪みが大きく発生することはない。したがって、作製されたガラスブランクGの主表面の平坦度は、従来の上下型のプレス成型により作製されるガラスブランクに比べて向上する。
【0052】
なお、図4に示す例では、切断刃161及び162を用いて、流出する溶融ガラスLGを切断することによって略球状のゴブGGが形成される。しかしながら、溶融ガラス材料LGの粘度が、切り出そうとするゴブGGの体積に対して小さい場合は、溶融ガラスLGを切断するのみでは切断されたガラスが略球状とはならず、ゴブが作れない。このような場合は、ゴブを作るためのゴブ形成型を用いる。
【0053】
図5(a)〜(c)は、図4に示す実施形態の変形例を説明する図である。この変形例ではゴブ形成型を用いる。図5(a)は、ゴブを作る前の状態を示す図であり、図5(b)は、切断ユニット160及びゴブ形成型180によってゴブGGが作られた状態を示す図であり、図5(c)は、ゴブGGをプレス成型してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図5(a)に示すように、プレスユニット120は、ブロック181,182をさらに有している。ブロック181,182は、相互に接近・開離する方向へ変位可能に配置されている。また、ブロック181,182は、駆動手段(図示せず)によって、溶融ガラスLGの経路を共同して開閉するように駆動される。ブロック181,182を溶融ガラスLGの経路上で閉じることにより溶融ガラスLGの経路が塞がれる。そして、ブロック181,182で作られる凹部180Cによって、切断ユニット160で切断された溶融ガラスLGの塊が受け止められる。この後、図5(b)に示すように、ブロック181,182が開かれることにより、凹部180Cにおいて球状となった溶融ガラスLGが一度にプレスユニット120に向けて落下し、溶融ガラスLGが球状のゴブGGとなる。球状のゴブGGは、落下途中、図5(c)に示すように、第1の型121と第2の型122とに挟まれてプレス成型されることにより、円形状のガラスブランクGが作製される。
【0054】
あるいは、図6(a)〜(d)に示すように、装置101は、図5(a)〜(c)に示す切断ユニット160を用いずに、ゴブ形成型180を、溶融ガラスLGの経路に沿って上流側方向あるいは下流側方向に移動させる移動機構を用いてもよい。図6(a)〜(d)は、ゴブ形成型180を使用する変形例を説明する図である。図6(a),(b)は、ゴブGGが作られる前の状態を示す図であり、図6(c)は、ゴブ形成型180によってゴブGGが作られた状態を示す図であり、図6(d)は、ゴブGGをプレス成型してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
【0055】
図6(a)に示すように、ブロック181,182によって共同して形成される凹部180Cが溶融ガラス流出口111から流出する溶融ガラスLGを受け止める。そして、図6(b)に示すように、所定のタイミングでブロック181,182を溶融ガラスLGの流れの下流側に素早く移動させる。これにより、溶融ガラスLGが切断されて、ゴブGGが形成される。この後、所定のタイミングで、図6(c)に示すように、ブロック181,182が離間する。これにより、ブロック181,182で保持されている溶融ゴブGGは、一度に落下する。ゴブGGは、溶融ガラスLGの表面張力により球状になる。球状のゴブGGは、落下途中、図6(d)に示すように、第1の型121と第2の型122とに挟まれてプレス成型されることにより、円形状のガラスブランクGが作製される。
【0056】
図7(a)〜(c)は、ゴブGGとの代わりに図示されない軟化炉で加熱した光学ガラスの塊CPを落下させ、落下途中の両側から型221,222で挟んでプレス成型する変形例を説明する図である。図7(a)は、加熱した光学ガラスの塊を成形する前の状態を示す図であり、図7(b)は、光学ガラスの塊を落下する状態を示す図であり、図7(c)は、光学ガラスの塊をプレス成型してガラスブランクGが作られた状態を示す図である。
図7(a)に示すように、装置201は、光学ガラスの塊CPをガラス材把持機構212でプレスユニット220の上部の位置に搬送する。そして、この位置で、装置201は、図7(b)に示すように、ガラス材把持機構212による光学ガラスの塊CPの把持を開放して、光学ガラスの塊CPを落下させる。光学ガラスの塊CPは、落下途中、図7(c)に示すように、第1の型221と第2の型222とに挟まれて円形状のガラスブランクGが成形される。第1の型221及び第2の型222は、図5に示す第1の型121及び第2の型122と同じ構成及び作用をするので、その説明は省略する。
【0057】
<切断痕の位置を制御するための変形例>
以上詳述した装置101を用いたプレス成型では、ゴブGGの一対の切断刃161及び162による切断によって、得られたガラスブランクGに切断痕が残留することがある。切断痕が最終的に携帯機器用カバーガラスに残留することは品質上問題となるため、切断痕を後工程で除去する必要がある。しかし、ガラスブランクG上の切断痕の位置がガラスブランクごとにばらつくと、後の形状加工工程において安定的に所望の形状のガラス基板が切り出せず、歩留まりが低下する虞がある。そこで、ゴブGGを一対の切断刃161及び162で切断するときには、成形されるガラスブランクの周縁に切断痕が位置するように、ゴブGGを切断することが好ましい。発明者らの研究結果によれば、一対の切断刃161及び162のうち上方にある切断刃162を下方にある切断刃161よりも厚くすることで、ゴブGGに生ずる切断痕が落下中において上方に位置し続け、プレス中においてもゴブGGにおける切断痕の位置が変化せず、結果として、ガラスブランクGの周縁(プレス中は上方の周縁)に切断痕が生ずることが分かっている。この場合、例えば、上方の切断刃161の厚さを1.5mm、下方の切断刃162の厚さを1.0mmとする。
【0058】
<切断痕を除去するための変形例1>
また、切断痕のガラスブランクG上の位置を制御する代わりに、切断痕自体がガラスブランクGに生じないようにしてもよい。以下、図8を参照して、切断痕をガラスブランクGから除去するための構成例について説明する。なお、図8は図4と同様の形式の図である。図8(a)は、溶融ガラス材料LGと切断ユニット160が接触する前の側面図である。図8(b)は、切断ユニット160が溶融ガラス材料LGを切り出した後の側面図である。図8(c)は、プレスユニット120が溶融ガラスの塊GGをプレス成型している状態の側面図である。図8(d)は、プレスユニットからはみ出した溶融あるいは軟化したガラスを除去する状態の側面図である。
【0059】
図8に示すように、本変形例の装置は、切断刃165をさらに備えており、切断刃165以外の構成は図3に示す構成と同様である。本変形例の切断刃165は、第1の型121と第2の型122の上端において水平方向に進退可能に駆動させられる刃であり、プレスユニット120からはみ出した状態で溶融あるいは軟化したガラスを切断するために設けられている。
図8(a),(b)はそれぞれ、図4(a),(b)と同じである。本変形例では、プレスに際して、ゴブGGのうち少なくとも切断痕Tを含む一部がはみ出すタイミングで、第1駆動部123と第2駆動部124が第1の型121と第2の型122を駆動する。これにより、図8(c)に示すように、第1の型121と第2の型122の間にゴブGGのうち切断痕Tを含まない部分が捕獲(キャッチ)され、切断痕Tがプレスユニット120からはみ出した状態となる。次に、図8(d)に示すように、切断刃165が、プレスユニット120からはみ出した溶融あるいは軟化したガラスを除去する。なお、プレスユニット120からはみ出したガラスを除去できるものであれば、切断刃165の形状、材質は問わない。
【0060】
<切断痕を除去するための変形例2>
次に、切断痕自体がガラスブランクGに生じないようにするための別の構成例について、図9および図10を参照して説明する。図9(a)は、この変形例に係るプレスユニット320が備える第1の型321および第2の型322の平面図である。図9(b)は、本実施形態のプレスユニット220の側面図である。
図9(a)に示すように、本実施形態の第1の型321および第2の型322は、略円形状の弧の一部を直線状に切り取った形状である。第1の型321および第2の型322は、弧の一部を直線状に切り取られた直線部Lが鉛直上方に位置するように形成されている。図9(b)に示すように、第1の型321と第2の型322は、開状態ではゴブをプレス成型するための面の法線方向が水平方向に対して傾斜した状態で対向するように配置されている。また、閉状態において第1の型321のプレス面321aと第2の型322のプレス面322aの間隔を一定に維持し、プレスユニット320内に板状の空間を形成するように、第1の型321のプレス面321aおよび第2の型322のプレス面322aには、それぞれ突起321bおよび突起322bが設けられている。
【0061】
次に、図10に示す側面図を参照して、この変形例のプレス成型工程について説明する。図10は図4と同様の形態の図である。すなわち、図10(a)は、溶融ガラス材料LGとプレスユニット320とが接触する前の平面図である。図10(b)は、プレスユニット320が溶融ガラス材料LGを切り出した後の側面図である。図10(c)は、プレスユニット320が溶融ガラスの塊GGをプレス成型している状態の側面図である。
図10(a)に示すように、溶融ガラス材料LGは、溶融ガラス流出口111から連続的に流出される。このとき、第1の型321と第2の型322は、それぞれ、図10(a)に矢印で示すように、水平方向に移動する。そして、第1の型321の上部に配置された直線部Lと、第2の型322の上部に配置された直線部Lとが互いに接触することにより、図10(b)に示すように、溶融ガラス材料LGが切断される。また、溶融ガラス材料LGが切断されることにより、ゴブGGが形成される。この際、切断痕Tは各直線部Lの近傍に位置している。
【0062】
第1の型321および第2の型322は、各直線部Lが接触した状態を保ったまま、図10(b)に矢印で示すように、閉型するように第1の型321と第2の型322の各々の下端が移動する。これにより、図10(c)に示すように、第1の型321と第2の型322の間にゴブGGが捕獲(キャッチ)され、ガラスブランクGが作製される。この方法では、各直線部Lが接触することにより形成されたゴブGGの切断痕Tが各直線部Lの近傍に位置しているタイミングで、ゴブGGがプレス成型される。そのため、切断痕がガラスブランクGに生じないようになる。
【0063】
(b)形状加工工程
次に、形状加工工程(ステップS20)について説明する。
本実施形態のガラスブランクの製造方法では、前工程のプレス成型工程により作製されるガラスブランクが極めて高い平坦度および平滑性を備えうるため、ガラスブランクを再加熱してガラスブランクに生じている歪みを除去するアニール工程を行うことなく、プレス成型工程により作製されたガラスブランクを、この形状加工工程によって所望の携帯機器用カバーガラスの形状に加工してよい。
【0064】
つまり、ガラスブランクに生じている歪みを残存させた状態で、ガラスブランクを携帯機器用カバーガラスの形状に加工する形状加工工程を行ってもよい。ここで、ガラスブランクの表層部の歪みは、圧縮応力層である。これは、溶融ガラスの塊が一対の金型によってプレスされた際に、溶融ガラスから金型へ熱が伝わって溶融ガラスの表層側が中心側よりも先に冷え固まり、溶融ガラスにおける中心側が表層側から遅れて冷え固まることによる収縮差によって形成される(即ち物理強化による圧縮応力層に相当する)。
【0065】
形状加工工程は、プレス成型工程で得られたガラスブランクを、携帯機器用ガラス基板の外形に応じた所望の形状に加工してガラス基板を得る工程である。ガラスブランクを所望の形状に加工するための切断方法としては、例えば、エッチング、スクライビングなどがある。
スクライビングによる切断方法では、ガラスブランクを所望の形状とするために、ガラスブランクの表面に超鋼合金製あるいはダイヤモンド粒子からなるスクライバにより、所望の形状の輪郭に合致した切断線(線状のキズ)を設ける。その後、ガラスブランクを部分的に加熱することで、熱膨張により切断線を成長させることによってガラスブランクのうち所望の領域のみを除去する。
エッチングによる切断方法を利用した形状加工工程には、以下の(b−1)耐エッチング膜形成工程、(b−2)パターニング工程、(b−3)切断工程、の工程が含まれる。
以下、エッチングによる切断方法を利用した形状加工工程について説明する。
【0066】
(b−1)耐エッチング膜形成工程
耐エッチング膜形成工程では、ガラスブランクの少なくとも一方の面上に、耐エッチング膜を形成する。この耐エッチング膜は、通常、ガラスブランクの両面に形成されるが、後の切断工程において、片面のみをエッチング溶液に接触させる場合には、当該片面にのみ耐エッチング膜が形成されていればよい。なお、以下の説明においては、耐エッチング膜が、ガラスブランクの両面に形成されることを前提として説明する。耐エッチング膜としては、後のパターニング工程において、パターニング処理により部分的に除去可能であり、かつ、切断工程において用いるエッチング溶液に対しては溶解・除去されない性質を有するものであれば、適宜選択できる。このような耐エッチング膜としては、少なくとも弗酸水溶液に対して難溶性または不溶性を示すレジスト膜を用いることが好ましい。この場合、パターニング工程においては、レジスト膜を、フォトマスクを用いた露光処理と現像液による現像処理とによってパターニング処理し、切断工程においてエッチング溶液を利用して切断を行うことができる。
【0067】
(b−2)パターニング工程
パターニング工程では、少なくとも耐エッチング膜を、パターニングする。これにより、ガラスブランクの表面全面を覆う耐エッチング膜のうち、最終的に作製されるガラス基板の平面方向の形状に対応する領域以外の耐エッチング膜を除去する。耐エッチング膜のパターニング方法としては、代表的には、上述した露光・現像を組み合わせて実施するフォトリソグラフィが利用できる。なお、パターニング工程は、両面に耐エッチング膜が形成されたガラスブランクの少なくとも片面に対して実施すればよく、両面に対して実施してもよい。
【0068】
(b−3)切断工程
切断工程では、ガラスブランクの、パターニングされた耐エッチング膜が設けられた面を、エッチング溶液に接触させてエッチングすることで、ガラスブランクを小片に切断する。エッチング処理は、通常、ガラスブランクをエッチング溶液に浸漬させて行う。エッチング溶液としては、少なくとも弗酸を含むものであれば特に限定されないが、必要に応じて、塩酸等のその他の酸や、界面活性剤等の各種の添加剤が添加されていてもよい。
【0069】
(c)化学強化工程
次に、化学強化工程(ステップS30)について説明する。
化学強化工程では、形状加工工程によって所望の形状に加工されたガラス基板を複数枚、カセット(ホルダー)に装填し、溶融塩を含む化学強化処理液にカセットを浸漬させる。これにより、ガラス基板に含まれる1種以上のアルカリ金属を、溶融塩のアルカリ金属との間でイオン交換処理を行い、ガラス基板の表層部分に圧縮応力層を形成する。
【0070】
溶融塩の組成および温度、ならびに、浸漬時間は、ガラス基板のガラス組成や、ガラス基板の表層部分に形成する圧縮応力層の厚さ等に応じて適宜選択できるが、ガラス基板のガラス組成が上述したアルミノシリケートガラスやソーダライムガラスであれば、化学強化処理液の処理温度を通常500℃以下とする低温型イオン交換法を利用することが好ましい。これは、イオン交換をガラスの徐冷点以上の温度域で行う高温型イオン交換法では、低温型イオン交換法ほど大きな強度が得られず、また、強化処理中に溶融塩によってガラス表面が浸食され透明性が損なわれやすいため、携帯機器用カバーガラスに適したガラス基板が得られにくいことによる。例えば、本実施形態の化学強化工程では、溶融塩の組成および温度、ならびに、浸漬時間は、下記に例示する範囲から選択することが好ましい。
・溶融塩の組成 :硝酸カリウム、または、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとの混塩
・溶融塩の温度 :320℃〜470℃
・浸漬時間 :3分〜600分
【0071】
(d)加飾層形成工程
次に、化学強化されたガラス基板10の一方の主表面に対して加飾層20を形成するための加飾層形成工程を行う(ステップS40)。加飾層形成工程では、ガラス基板10の主表面に対して、スクリーン印刷等の公知の様々な印刷方法、あるいは公知の成膜方法によって加飾層20を形成する。公知の成膜方法としては、例えばディッピング法、スプレーコート法、ゾルゲルコート法、メッキ法等の公知の液相成膜法や、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の気相成膜法などが利用できる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法によれば、溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型するプレス成型工程を含む。このことから、一対の金型のプレス面の表面粗さを良好なレベル(例えば携帯機器用カバーガラスに求められる表面粗さ)に設定しておけば、その表面粗さが、プレス成型によって得られるガラスブランクの表面粗さとして形状転写される。このため、ガラスブランクの表面粗さを良好なレベルとすることができる。
【0073】
また、プレス成型工程では、溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の相関関係に基づいて、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる一対の金型の温度差を求め、一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行ってもよい。したがって、本実施形態のプレス成型工程で得られるガラスブランクは、その主表面の表面粗さおよび平坦度を携帯機器用カバーガラスに求められるレベルとすることができる。このため、後工程で主表面の加工工程を要しない。これを換言すると、ガラスブランクの主表面の表面状態を維持して、ガラスブランクの主表面が携帯機器用カバーガラスの主表面となるように、ガラスブランクの外周形状を携帯機器用カバーガラスの外周形状に加工する形状加工工程を行ってもよい。
【0074】
このガラスブランクを基に所定の形状に形状加工されたガラス基板に対して化学強化が施されるが、本実施形態では化学強化によってガラス基板の平坦度に対して悪化させることはない。そのため、最終的に得られる携帯機器用カバーガラスは薄型で高い機械的強度を備え、かつ従来よりも平坦度が高いものとなる。
【0075】
また、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法では、プレス成型工程において作製されるガラスブランクの大きさは携帯機器用カバーガラスの大きさに近く、そのガラスブランクを元に所望の形状に加工するため、少量多品種生産に適している。
【0076】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法について説明する。
従来の携帯機器用カバーガラスは、主として表示画面を保護するために用いられてきたため、その外形形状は全体として平坦な形状がほとんどであった。一方、携帯機器の筐体を保護するための部材としてはステンレス鋼が従来用いられてきたが、そのような携帯機器は、使用状況によっては筐体のステンレス鋼の部分に傷が付きやすく、使用していくにつれて携帯機器の見栄えが低下していくことが指摘されている。そのため、携帯機器の表示画面の保護に加えて携帯機器の筐体の保護を目的として、薄型の強化ガラスを使用することが要請されてきている。
【0077】
携帯機器の筐体の形状は一般に3次元形状であるが、3次元形状の携帯機器用カバーガラスを、フロート法やダウンドロー法によって得られる板ガラスを元にして作製することは困難である。すなわち、フロート法やダウンドロー法によって得られた板ガラスを元にして3次元形状の携帯機器用カバーガラスを作製するためには、板ガラスを再溶融させ、所望の3次元形状が得られるような型に溶融ガラスを流し込まない限り作製することが難しい。それに対して、第1の実施形態で説明したプレス成型方法では、所望の携帯機器用カバーガラスの外形形状に合致した型を用意することで、再溶融させずに済み、かつ、高い平坦度および平滑性が得られるため、携帯機器の筐体の保護を目的とした携帯機器用カバーガラスを作製するのに好適である。
【0078】
例えば、3次元形状の携帯機器用カバーガラスの外観形状の一例を図11に示す。図11に例示する携帯機器用カバーガラスは、概ねコの字状の形態をなしており、携帯機器の筐体を裏側から覆うような形態となっている。
図12は、図11に例示した携帯機器用カバーガラス用のガラスブランクを作製するときのプレス成型方法を具体的に示す図である。図12(a)は、ゴブを作る以前の状態を示す図であり、図12(b)は、切断ユニット160によってゴブが作られた状態を示す図であり、図12(c)は、ゴブをプレスすることによりガラスブランクGが成形された状態を示す図である。
【0079】
このプレス成型方法では先ず、図12(a)に示されるように、溶融ガラス流出口111から、溶融ガラス材料LGが連続的に流出される。このとき、所定のタイミングで切断ユニット160を駆動し、切断刃161及び162によって溶融ガラス材料LGを切断する(図12(b))。以上の点は、第1の実施形態で述べたプレス成型方法と同様である。
【0080】
本実施形態のプレスユニット420には、閉型時に目標とする3次元形状のガラスブランクGに相当する閉空間が得られるような形状の第1の型421と第2の型422とが用いられる。例えば、図11に示す形状のガラスブランクGを作製するには、閉型時に図11に示す形状と同一の閉空間が得られるようになっている。即ち、本実施形態では、第1の型421がプレス方向に突出する構造(凸構造)であり、第2の型422がプレス方向に窪む構造(凹構造)である。なお、金型の形状については、カバーガラスのデザインに応じて適宜変更可能であり、金型の形状を変更することによって、板厚方向へガラスブランクを部分的に曲げる等、カバーガラスの形状の自由度を向上させることができる。
【0081】
本実施形態のプレス成型方法でも第1の実施形態と同様に、作られたゴブGGは、プレスユニット420の第1の型421と第2の型422の隙間に向かって落下する。このとき、ゴブGGが第1の型421と第2の型422の隙間に入るタイミングで、第1の型121と第2の型122が互いに近づくように駆動されて、第1の型421と第2の型422とによってゴブGGが捕獲(キャッチ)される。このとき、図12(c)に示すように、第1の型421のプレス面421aの外周面421bと、第2の型422のプレス面422aの外周面422bとが当接する。そして、第1の型421のプレス面421aと第2の型422のプレス面422aの間に挟み込まれたゴブGGは急激に冷却されて固化し、図11に示した形状と同一のガラスブランクGに成形される。
【0082】
本実施形態のプレス成型方法では、プレス面421a及びプレス面422aの表面粗さは、ガラスブランクGの算術平均粗さRaが0.001μm〜0.1μmとなるように、好ましくは、0.0005μm〜0.05μmとなるように調整することができ、これによって、ガラスブランクの表面の平滑性は極めて高いものとなるため、主表面については、プレス成型後の研削および研磨工程を行わなくても済む。つまり、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法によれば、上記プレス成型方法によって最終製品である3次元形状(つまり、平坦でない所望の形状)のカバーガラスとほぼ同一の形状のガラスブランクを作製することができ、携帯機器の筐体の保護を目的とした携帯機器用カバーガラスを作製するのに好適である。
なお、本実施形態の携帯機器用カバーガラスの製造方法においても、第1の実施形態で述べた化学強化工程、加飾層形成工程を含んでよい。
また、使用されるモデルやサイズによって、要求される値は異なるが、一般的に携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度としては、8cmの長さ辺り20μm以下になることが好ましい。本実施の形態にかかる携帯機器用カバーガラスブランクの製造方法を用いることで、上記の要求を満たすことができる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0084】
[実施例]
ガラス組成として、63.5重量%のSiO2と、8.2重量%のA12O3と、8.0重量%のLi2Oと、10.4重量%のNa2Oと、11.9重量%のZrO2とを含む溶融ガラス材料を準備し、本発明の第1実施形態のプレス成型方法(図3、図4の装置を用いた方法)を用いて、直径90mm、厚さ0.7mmのガラスブランクを作製した。溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGの温度は1300℃であり、この時の溶融ガラス材料LGの粘度は700ポアズである。また、第1の型及び第2の型のプレス面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.01μm〜1μmとした。
溶融ガラス流出口111から吐出される溶融ガラス材料LGは、切断ユニット160によって切断され、直径約20mmのゴブGGとが形成される。ゴブGGとは、プレスユニットによって荷重3000kgfで、その温度が溶融ガラス材料のガラス転移温度(Tg)以下となるまで(約3秒)プレスされ、直径90mmのガラスブランクが形成された。このガラスブランクを45mm×80mmの小片に切断した。
この実施例では、携帯機器用カバーガラスに要求される平坦度を8μm以下とした場合に、この平坦度を実現すべく、各プレスユニットにおいて第1の型及び第2の型の温度差は、10℃以内とした。具体的には、第1の型の温度を420℃とし、第2の型の温度を411〜429℃とした。
次に、ガラスブランクを溶融塩中に浸漬して化学強化を施し、ガラスブランクの両面に約40μmの圧縮応力層を形成した。化学強化(イオン交換処理)における溶融塩として、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混塩(混合比は重量%で、硝酸カリウム:硝酸ナトリウム=60:40)を用い、圧縮応力層の厚さが上記厚さとなるように、溶融塩の温度を320℃〜360℃の範囲内に保った状態で、浸漬時間を適宜調整した。
【0085】
[実施例のガラスブランクの測定]
実施例で作製された45mm×80mmのガラスブランク(化学強化後のガラスブランク)について、平坦度および表面粗さ(算術平均粗さRa)を測定した。
平坦度は、JIS B0602により規定され、例えば、Nidek社製フラットネステスターFT−900を用いて測定した。表1に示す平坦度の評価基準は、以下のとおりである。
◎:Raが4.0μm以下
○:Raが4.0μmより大きく8.0μm以下
△:Raが8.0μmより大きく12.0μm以下
×:Raが12.0μmより大きい
【0086】
表面粗さは、JIS B0601:2001(又はISO 4287:1997)により規定される算術平均粗さRaで表され、0.006μm以上200μm以下の場合は、例えば、ミツトヨ社製粗さ測定機SV−3100で測定し、JIS B0633:2001(又はISO 4288:1996)で規定される方法で算出できる。その結果粗さが0.03μm以下であった場合は、例えば、日本Veeco社製走査型プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡;AFM)ナノスコープで計測しJIS R1683:2007で規定される方法で算出できる。本願においては、1μm×1μm角の測定エリアにおいて、512×512ピクセルの解像度で測定したときの算術平均粗さRaを用いた。
表1に示す表面粗さの評価基準は、以下のとおりである。
○:Raが0.01μm以下
△:Raが0.01μmより大きく0.1μm以下
×:Raが0.1μmより大きい
【0087】
【表1】
【0088】
表1から、各例のガラスブランクをプレス成型したときの一対の金型間の温度差と、各例のガラスブランクの平坦度との間には、相関関係が存在することが分かる。特に温度差を0℃にした場合に最も高い平坦度が得られた。また、第1の型及び第2の型のプレス面がガラスブランクに形状転写され、各例のガラスブランクの表面粗さについては、第1の型及び第2の型のプレス面の表面粗さとほぼ同じであった。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法および電子機器用カバーガラスの製造方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0090】
また、本発明の製造方法により製造した電子機器用カバーガラスブランクを、携帯機器用カバーガラスブランクの他に、タッチセンサの内部基板に対するカバー部材であるタッチセンサ用カバーガラスの基材としてのタッチセンサ用カバーガラスブランクに用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
10…ガラス基板
10T,10B…主表面
10U,10V…圧縮応力層
20…印刷層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型する成型工程を含む電子機器用カバーガラスブランクの製造方法であって、
上記溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の相関関係に基づいて、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる上記一対の金型の温度差を求め、
一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように上記一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項2】
上記プレス成型工程では、上記一対の金型のそれぞれの溶融ガラスと接触する部分の温度が、上記一対の金型間で同一の温度となるようにプレスすることを特徴とする、請求項1に記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項3】
上記塊が上記金型に接触してから離れるまでの上記一対の金型の温度を、上記溶融ガラスのガラス転移点(Tg)未満の温度とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項4】
上記プレス成型工程によって得られたガラスブランクの板厚が、上記電子機器用カバーガラスに要求される板厚と同じ板厚となるようにプレス成型を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項5】
溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、
上記切断工程では、溶融ガラスの切断痕が上記ガラスブランクの周縁に位置するように、溶融ガラスを切断することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項6】
溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、
上記プレス成型工程では、溶融ガラスの切断痕が上記一対の金型からはみ出すタイミングで溶融ガラスをプレスすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクに生じている歪みを残存させた状態で、上記ガラスブランクを電子機器用カバーガラスの形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクの主表面の表面状態を維持して、上記ガラスブランクの主表面が電子機器用カバーガラスの主表面となるように、上記ガラスブランクの外周形状を電子機器用カバーガラスの外周形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法によって得られた電子機器用ガラスブランクを用いて電子機器用カバーガラスを製造することを特徴とする、電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項1】
溶融ガラスの塊を一対の金型を用いてプレス成型する成型工程を含む電子機器用カバーガラスブランクの製造方法であって、
上記溶融ガラスをプレス成型する際の一対の金型の対向位置における温度差と、プレス成型後に得られたガラスブランクの平坦度との間の相関関係に基づいて、電子機器用カバーガラスに要求される平坦度を実現できる上記一対の金型の温度差を求め、
一対の金型の温度を上記求められた温度差以内になるように上記一対の金型温度を制御しながら、プレス成型を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項2】
上記プレス成型工程では、上記一対の金型のそれぞれの溶融ガラスと接触する部分の温度が、上記一対の金型間で同一の温度となるようにプレスすることを特徴とする、請求項1に記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項3】
上記塊が上記金型に接触してから離れるまでの上記一対の金型の温度を、上記溶融ガラスのガラス転移点(Tg)未満の温度とすることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項4】
上記プレス成型工程によって得られたガラスブランクの板厚が、上記電子機器用カバーガラスに要求される板厚と同じ板厚となるようにプレス成型を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項5】
溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、
上記切断工程では、溶融ガラスの切断痕が上記ガラスブランクの周縁に位置するように、溶融ガラスを切断することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項6】
溶融ガラスを切断して上記塊を上記一対の金型に向けて落下させる切断工程を備え、
上記プレス成型工程では、溶融ガラスの切断痕が上記一対の金型からはみ出すタイミングで溶融ガラスをプレスすることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクに生じている歪みを残存させた状態で、上記ガラスブランクを電子機器用カバーガラスの形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載された電子機器用カバーガラスブランクの製造方法により製造されたガラスブランクの主表面の表面状態を維持して、上記ガラスブランクの主表面が電子機器用カバーガラスの主表面となるように、上記ガラスブランクの外周形状を電子機器用カバーガラスの外周形状に加工する形状加工工程を行うことを特徴とする電子機器用カバーガラスの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器用カバーガラスブランクの製造方法によって得られた電子機器用ガラスブランクを用いて電子機器用カバーガラスを製造することを特徴とする、電子機器用カバーガラスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−214361(P2012−214361A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39054(P2012−39054)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
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