電子機器用放熱装置
【課題】従来に比べて放熱性能を容易に確保可能な、電子機器用放熱装置を提供する。
【解決手段】ベース板10に板状フィン21をかしめ止めにて固定する電子機器用放熱装置であって、ベース板は、上記板状フィンが挿入される凹形状の挿入溝12と、該挿入溝の溝底部16に立設され上記板状フィンを当該ベース板にかしめ止めするかしめ部材13とを有し、該かしめ部材は、かしめ用溝14を有する。
【解決手段】ベース板10に板状フィン21をかしめ止めにて固定する電子機器用放熱装置であって、ベース板は、上記板状フィンが挿入される凹形状の挿入溝12と、該挿入溝の溝底部16に立設され上記板状フィンを当該ベース板にかしめ止めするかしめ部材13とを有し、該かしめ部材は、かしめ用溝14を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板を有する電子機器用の放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気・電子機器に用いる回路基板や半導体素子を搭載した半導体装置から発した熱を放出し、上記回路基板等を冷却するための構造として、放熱板を有するヒートシンク構造が使用されている。このような構造に関する従来の技術では、安価で容易な製造を可能にするため、かしめを利用して放熱板を取り付ける構造が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板には複数のフィン挿着溝及び突壁部を形成し、上記フィン挿着溝にフィンを挿入して上記突壁部をフィン側へ変形させることで、上記フィンを上記基板にかしめ止めするヒートシンクが開示されている。さらに、上記突壁部の先端には突条を設け、上記基板には上記突壁部の立設方向に沿って溝条を設けることを開示している。上記溝条により上記突壁部の変形が容易になり、フィンと基板との接触面積の確保が可能となり、また上記突条により上記フィンの基板からの離脱防止が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−161882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような電子機器用放熱構造では、放熱効率を上げるために、フィンと基板とを圧接状態として両者の接触面積を確保し接触熱抵抗を低減させる必要がある。上記特許文献1では、上記突壁部をかしめ変形させた際に上記突条がフィンにくい込み、フィンは基板に固着される。しかしながら、フィンが挿入されるフィン挿着溝側へ、突壁部から上記突条が突出していることから、フィン挿着溝へフィンを挿入するときに、突条がフィンに当接し、フィンの変形や損傷が発生する可能性がある。このような変形や損傷を防止するためには、フィンの厚み寸法は、フィン挿着溝の幅寸法から突条の高さ寸法を差し引いた大きさにしなければならないという制約が生じる。よって、このような制約がない場合に比べると、フィンの厚みは薄くなり、フィン自体の放熱性能は低下してしまう。さらにまた、工法によってはフィン挿着溝にフィンを挿入した際に、フィンが基板に対して垂直に立設されず傾斜した状態になる場合も考えられる。この場合、隣接するフィン同士が接触し、放熱性が劣化するという問題も生じる。
【0006】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、従来に比べて容易に放熱性能を確保可能な、電子機器用放熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における電子機器用放熱装置は、ベース板と、立設方向に沿って上記ベース板に立設され、かしめ止めにて上記ベース板に固定される板状フィンとを備えた電子機器用放熱装置であって、上記ベース板は、上記板状フィンが挿入される凹形状の溝であって上記立設方向に平行で上記板状フィンに面接触する溝壁を有する挿入溝と、上記板状フィンを上記溝壁との間に挟むように上記溝壁に対向して上記挿入溝の溝底部に立設され、板状フィン側への変形により上記板状フィンを当該ベース板にかしめ止めするかしめ部材とを有し、上記かしめ部材は、上記溝壁に対向する側面に、上記立設方向に直交する幅方向に凹となり上記立設方向及び上記幅方向に直交する延在方向に沿って形成されたかしめ用溝を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様における電子機器用放熱装置によれば、板状フィンをかしめ止めするためのかしめ部材には、かしめ用溝を設けたことにより、かしめ部材にかしめ荷重を作用させることで、かしめ部材は、ベース板の挿入溝に挿入された板状フィン側へ塑性変形し、板状フィンは、変形したかしめ部材にて溝壁との間にかしめ止めされる。またこのとき、かしめ部材の先端が板状フィンにくい込む効果によって、板状フィンは、挿入溝の溝壁に対して強固に固着される。よって、ベース板と板状フィンとの接触面積が確保され接触熱抵抗は低減される。
【0009】
このように、かしめ部材には、当該かしめ部材から板状フィン側へ突出する突起部等は設けていない。よって、従来の、先端部に突起や突条部を設けたかしめ用の突壁部を用いる場合に比べて、厚みの大きい板状フィンを用いることが可能になり、挿入溝一箇所当たりの放熱性能が向上するという効果がある。また、かしめ後の、ベース板に対する板状フィンの垂直性を向上させる効果もある。よって、板状フィン同士が接触し放熱性が劣化するということも防止できる。
【0010】
さらにまた、かしめ部材へのかしめ荷重を継続することで、板状フィンをベース板の挿入溝の溝壁への方向と、溝底部への方向とに押し付ける効果のうち、かしめ部材全体が溝底部付近の根元を基点に折れ曲がり変形することで、板状フィンと接するかしめ部材の先端部から加わる荷重成分が変化し、溝底部方向への荷重が増加する。よって、板状フィンの離脱や、板状フィンとベース板との間に隙間が生じることを防ぐことができ、その結果、ベース板に固着した板状フィンの垂直度を維持しながら、ベース板と板状フィンとの接触面積を確保できる。
したがって、本発明の一態様における電子機器用放熱装置によれば、電子機器や半導体装置の使用時における放熱性能を従来よりも容易に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1における電子機器用放熱装置の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子機器用放熱装置における挿入溝部分の拡大断面図である。
【図3】図1に示す電子機器用放熱装置においてかしめ部材のかしめ動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態2における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態3における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態4、5における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態6における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図8】図7に示す電子機器用放熱装置における板状フィンの先端部近傍及びかしめ部材の拡大図である。
【図9】本発明の実施形態7における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の実施形態8における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図11】図7に示す電子機器用放熱装置における板状フィン及びかしめ部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態である電子機器用放熱装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明では、「上」、「下」、「左」、「右」およびこれらの用語を含む名称を適宜使用する場合もあるが、これらの方向は図面を参照した発明の理解を容易にするために用いるものであり、実施形態を上下反転、あるいは任意の方向に回転した形態も、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0013】
実施の形態1.
図1及び図2には、本発明の実施の形態1による電子機器用放熱装置100が示されている。電子機器用放熱装置100は、ベース板10と、立設方向91に沿ってベース板10に立設され、かしめ止めによりベース板10に固定される板状フィン21とを備える。このような電子機器用放熱装置100は、例えば、板状フィン21の立設側とは反対側のベース板10の裏面側に半導体素子等の電子機器が装着され、上記電子機器から発生する熱の放散を行い、上記電子機器の冷却を行う。ここで「電子機器」には、半導体素子自体及び半導体素子を組み込んだ機器のみならず、回路基板単体及び素子を実装した基板等も含む概念である。また、以下に説明する各実施形態では、ベース板及び板状フィンを有する部材のみを例示するが、本発明の実施の形態による電子機器用放熱装置は、例えばファン等の既知の強制冷却装置を組み込んだ形態をも含む。
【0014】
ベース板10は、例えばアルミニウムや銅及びそれらの合金等にて作製される板状体である。また、板状フィン21は、例えば純アルミニウムや銅、銅合金等の放熱性の高い素材を板状に加工したものである。
【0015】
ベース板10の上表面11には、一若しくは複数の凹形状の挿入溝12が延在方向92に沿って形成されている。複数の挿入溝12が設けられる場合、各挿入溝12は、互いに平行に配置される。このような挿入溝12は、後述するように板状フィン21を挿入して板状フィン21をベース板10に立設するための溝である。
【0016】
挿入溝12は、図2に示すように、互いに平行で対向して延在方向92に延在する一対の溝壁15と、該溝壁15を連結する溝底部16とを有し、溝壁15及び溝底部16にて凹形状を形成する。溝壁15は、溝底部16に対して垂直で立設方向91に平行な側面であり、挿入溝12に挿入された板状フィン21と面接触する側面である。
【0017】
溝底部16には、板状フィン21が挿入可能な隙間を介して、大略凸状の断面を有するかしめ部材13が溝壁15、つまり挿入される板状フィン21に対向して、立設方向91に沿って立設される。かしめ部材13は、本実施形態では、ベース板10と同材料で溝底部16と一体的に形成されるが、形成方法はこれに限定されるものではない。また、かしめ部材13の高さは、図示のように挿入溝12の深さ以下にて適宜設定可能であり、一例として図2に示すように、挿入溝12の深さの半分程度である。尚、図2では、一つの挿入溝12に、2つのかしめ部材13を設けた場合を示しているが、後述の実施形態3に示すように一つのかしめ部材13を設けることもできる。
【0018】
さらに、かしめ部材13は、溝壁15、つまり挿入される板状フィン21に対向する側面13aに、延在方向92に直交する幅方向92に凹となり延在方向92に沿って形成されたかしめ用溝14を有する。立設方向91において、かしめ用溝14の位置は、適宜設定可能であるが、かしめ止め動作の観点から、図示するようにかしめ部材13の上部に設定するのが好ましい。このように構成されるかしめ部材13は、板状フィン21側へ変形されることにより、板状フィン21をベース板10にかしめ止め、つまり板状フィン21をベース板10に固定する機能を有する。
【0019】
ベース板10に設ける挿入溝12、かしめ部材13、及びかしめ部材13のかしめ用溝14については、加工方法を限定するものではなく、例えば素材の押し出し成型、押し抜き成型、及び切削加工等により、あるいはこれらの組み合わせによって、形成可能である。
【0020】
かしめ部材13を曲げて塑性変形させ、板状フィン21を固定するかしめ工法としては、例えば図3に示すように、かしめ治具31のような、接触して荷重負荷できる部材を、かしめ部材13間に押し当てるなどして、かしめ部材13の根元を基点に、板状フィン21側へ曲げ変形させるようにする。
【0021】
この構成によれば、かしめ部材13を、板状フィン21、つまり挿入溝12の溝壁15の方向へ変形させる場合、変形初期にかしめ用溝14が閉じる方向に、かしめ部材13は変形し、かしめ部材13の先端近傍が板状フィン21に接触し、くい込む。これにより、板状フィン21を溝壁15方向に固定するとともに、かしめ部材13がその根元を中心に曲げ変形していくことで、かしめ用溝14からの負荷は、連動して溝底部16方向に作用する。よって、放熱用の板状フィン21は、溝底部16に対しても確実に固着される。したがって、放熱用の板状フィン21は、溝壁15及び溝底部16に確実に固着され、接触面積及び面圧が確保できる。したがって、ベース板10に対する板状フィン21の垂直性を確保すると共に放熱性を従来よりも向上させることができる。
【0022】
即ち、例えば上記特許文献1に開示される従来技術では、かしめ変形させる押圧変形部の先端近傍に突起を有している。そのため、挿入溝に挿入可能な放熱板は、本実施の形態1の場合と比較して薄くなる。よって、放熱板自体の放熱性能が低下し、さらに放熱板挿入時に上記突起に接触することで放熱板の変形や表面の損傷が生じる場合がある。さらに、厚みの薄い放熱板の使用により、放熱板がベース板に対し垂直方向から傾いて固着される可能性がある。
これに対して本実施の形態1の構成によれば、挿入溝12の内幅が一定になり、かつかしめ部材13は突起を設けていないため、板状フィン21の挿入工程が容易になり、ベース板10もわずかに軽量化することができる。また、板状フィン21は、薄肉化する必要がないので、上述の変形や損傷が発生せず、放熱装置自体の長寿命化を図ることもできる。
【0023】
実施の形態2.
上述の、実施の形態1における電子機器用放熱装置100では、図2に示すように、一つのかしめ部材13は、一つのかしめ用溝14を有する構成であるが、これに限定するものではない。即ち、図4に示す本実施の形態2における電子機器用放熱装置200のように、かしめ部材13−1は、立設方向91において、複数のかしめ用溝14を設けても構わない。尚、電子機器用放熱装置200におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0024】
このような構成によれば、かしめ部材13−1への荷重負荷時に複数のかしめ用溝14がそれぞれ閉じるように変形する。よって、板状フィン21に対するかしめ部材13−1の食い込みが、実施の形態1の場合に比べてより強固になると共に、かしめ部材13−1の先端近傍の曲がり方が大きくなるため、荷重負荷によって溝底部16に板状フィン21を固着させる作用がより強固になるという効果がある。その結果、かしめ工程中を通じて、溝壁15及び溝底部16に対して板状フィン21をより強固に固着させ、その垂直性をより維持することが可能となる。
【0025】
実施の形態3.
上述の、実施の形態1、2における電子機器用放熱装置100、200では、一つの挿入溝12において2つのかしめ部材13、13−1を設けた構成を説明した。しかしながら、既に実施の形態1でも説明し、また図5に示す本実施の形態3の電子機器用放熱装置300のように、一つの挿入溝12において一つのかしめ部材13を設けても良い。この構成においても、板状フィン21の垂直性を維持し、板状フィン21を強固にベース板10に固着させることができる。
【0026】
実施の形態4.
上述の、実施の形態1、2、3における電子機器用放熱装置100、200、300では、立設方向91において、かしめ用溝14よりも上方に位置する、かしめ部材13の先端部は、直角の角部を有している。しかしながら、図6に示す本実施の形態4における電子機器用放熱装置400のように、かしめ部材13−2の先端部13bは、必ずしも直角の角部を有していなくてもよく、例えば曲率を有する丸型であってもよく、さらに、三角形型や半楕円形などの形状であってもよい。また、このような構成において、かしめ用溝14の個数は一つに限らず、複数形成されてもよい。尚、電子機器用放熱装置400におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100、200、300における構成に同じである。
【0027】
実施の形態1〜3、及び実施の形態4の各構成によれば、かしめ部材13の先端部13bの断面形状による効果の大小の違いはあるものの、荷重負荷時にかしめ用溝14が閉じる方向にかしめ部材13が変形する構造に変わりは無い。よって、本実施形態4の電子機器用放熱装置400においても、実施の形態1〜3の場合と同様に、板状フィン21の垂直性を保ちながら、強固にベース板10に板状フィン21を固着させることができる。
【0028】
実施の形態5.
上述の実施の形態4において、かしめ部材13−2の先端部13bの一部又は全体に対して、表面処理又は表面加工を施してもよい。即ち、かしめ部材13−2を変形させ、放熱用の板状フィン21をかしめ止めするとき、かしめ部材13−2の先端部13bと板状フィン21とが接触したときの両者間の摩擦係数が高くなるように、例えば、先端部13bの表面に対して、ローレット加工やサンドブラストなどの面粗し加工、及び酸洗いなどの化学処理のどちらか、もしくはその両方を施すことができる。
【0029】
本実施の形態5の構成によれば、荷重負荷によるかしめ加工したとき、かしめ部材13−2の先端部13bが板状フィン21に接触した後、先端部13bの滑りが抑制されるため、負荷荷重がかしめ部材13−2及び先端部13bを通じて板状フィン21に効率よく伝達可能となる。よって、ベース板10に対して板状フィン21をより強固に固着させることが可能になる。尚、この実施の形態における構成は、他の実施の形態に対しても適用可能である。
【0030】
実施の形態6.
上述した各実施の形態では、挿入溝12へ挿入される板状フィン21の先端部の断面形状は、例えば図2に示すように、挿入溝12の溝壁15及び溝底部16に接触するように方形状となっている。これに対し、図7に示すように、本実施の形態6の電子機器用放熱装置500では、板状フィン21−1の先端部22は、切削加工によって形成され角部が90°以下となったくさび形形状であり、傾斜面22aを有する。このような板状フィン21−1は、図示するように、傾斜面22aがかしめ部材13−3側に位置するように配向され、尖端22bが溝底部16に接触して挿入溝12へ挿入される。
【0031】
このような形状を有する板状フィン21−1に対応して、本実施の形態6の電子機器用放熱装置500における、かしめ部材13−3は、以下のように構成される。即ち、かしめ部材13−3は、溝底部16と一体的に形成された基部13cと、立設方向91において基部13c上に一体的に形成されかしめ用溝14を有する上部13dとを有する。基部13cは、立設方向91に直交する幅方向93において、上部13dの幅よりも大きな幅を有する。さらに、図8に示すように、立設方向91において基部13cの高さh1は、板状フィン21−1の傾斜面22aの高さh2を超える高さである。
上述の板状フィン21−1と、上述のかしめ部材13−3とを有する電子機器用放熱装置500において、板状フィン21−1の傾斜面22aは、図7に示すように、挿入溝12の溝壁15とかしめ部材13−3の基部13cとの間に位置する。
尚、電子機器用放熱装置500におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0032】
以上のように構成される本実施の形態6の電子機器用放熱装置500においても、かしめ部材13−3を板状フィン21−1へ曲げ変形させることで、板状フィン21−1をベース板10にかしめ止めする。
このような構成によれば、板状フィン21−1には鋭角な先端部22を設け、先端部22が溝壁15及び溝底部16と接するように挿入溝12に対して板状フィン21−1を挿入し、かしめ止めが行われる。例えば先端部22が90°以上の鈍角な形状を有する場合では、板状フィン21−1と溝壁15とにおいて、溝底部16に近い部分ほど大きな空間ができてしまうのに対し、本実施の形態6の形態では、かしめ初期から、板状フィン21−1と溝壁15との接触面積を確保できる。よって、板状フィン21−1と溝壁15との接触面は、溝底部16に対して垂直性を保つことができる。さらに、かしめ初期から板状フィン21−1と溝壁15との間に空間が無く、例えば先端部22が90°以上の鈍角な形状を有する場合と比較して、板状フィン21−1と溝壁15との接触面積が大きいため、放熱性能を確保することができる。さらに、荷重負荷後に板状フィン21−1と溝壁15または溝底部16との間に生じた空間によって、板状フィン21がズレを生じることを防止することが期待される。
【0033】
実施の形態7.
図9に示すように、本実施の形態7の電子機器用放熱装置600では、板状フィン21−2の先端部22は、例えば実施形態1における板状フィン21の先端部に対してかしめ部材側へ突出した突起部22cを有する。該突起部22cの断面形状は、図示するような三角形の他に、例えば四角形、丸型などであってもよい。
【0034】
このような板状フィン21−2に対応して、本実施の形態7の電子機器用放熱装置600におけるかしめ部材13−4は、以下のように構成される。即ち、挿入溝12の溝底部16と一体的に形成された基部13eと、立設方向91において基部13e上に形成されかしめ用溝14を有する上部13fとを有する。ここで、基部13eは、板状フィン21−2の先端部22の突起部22cと干渉しない形状であり、突起部22cに対応した形状が好ましく、上記幅方向93において上部13fにおける幅よりも小さい幅を有する。また、本実施の形態7では、板状フィン21−2は、挿入溝12の上部からではなく、側面方向から挿入する。
尚、電子機器用放熱装置600におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0035】
このように構成される本実施の形態7の電子機器用放熱装置600によれば、かしめ負荷前のみならず、かしめ加工時における板状フィン21−2の転倒や外れを防止することができると共に、かしめ部材13−4によるかしめ止めにより板状フィン21−2を固着する際のバラツキを抑えることができる。
【0036】
実施の形態8.
図11には、本実施の形態8における電子機器用放熱装置700を示している。この電子機器用放熱装置700において、板状フィン21−3は、かしめ止めのために変形したかしめ部材13と係合する係合用溝23を有する。電子機器用放熱装置700におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0037】
係合用溝23には、かしめ加工時に、立設方向91においてかしめ用溝14よりも上方に位置する、かしめ部材13の先端部のいずれかの部分、好ましくは突起先端14aが入り込んで係合する。このような係合を達成可能とするため、図11に示すように、板状フィン21−3が溝底部16まで挿入された状態において、係合用溝23は、立設方向91において、かしめ部材13の先端面13gから「a」寸法、低い位置に配置される。また、係合用溝23は、例えば、押し出し加工、押し抜き加工、又は切削加工により板状フィン21−3に形成される。上記「a」寸法は、板状フィン21−3とかしめ部材13との間隔、上記幅方向93におけるかしめ部材13の幅寸法、等に起因して適宜設計される。
【0038】
このように構成される電子機器用放熱装置700によれば、かしめ加工時に、かしめ用溝14よりも上方に位置する、かしめ部材13のいずれかの部分が板状フィン21−3の係合用溝23と係合することで、かしめ部材13の先端近傍部分が板状フィン21−3の表面に対して摺動することを抑制することができる。よって、かしめ加工時における負荷荷重は、かしめ部材13の先端近傍部分等を通じて板状フィン21−3により効率よく伝達される。したがって、より低荷重による、かしめ加工が可能であり、また、同じかしめ荷重にあっては、より強固に板状フィン21−3をベース板10に固着させることが可能となる。
尚、本実施形態8の構成は、上述したその他の実施形態の構成においても適用可能である。
【0039】
また、上述した各実施形態における構成を適宜、組み合わせて構成することも可能である。このような組み合わせ構成では、各実施形態が有する効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ベース板、12 挿入溝,13、13−1〜13−4 かしめ部材、
13a 側面、13c 基部、13d 上部、13e 基部、13f 上部、
14 かしめ用溝、15 溝壁、 16 溝底部、21 板状フィン、
22 先端部、22c 突起部、23 係合用溝、
100,200,300,400,500,600、700 電子機器用放熱装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板を有する電子機器用の放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気・電子機器に用いる回路基板や半導体素子を搭載した半導体装置から発した熱を放出し、上記回路基板等を冷却するための構造として、放熱板を有するヒートシンク構造が使用されている。このような構造に関する従来の技術では、安価で容易な製造を可能にするため、かしめを利用して放熱板を取り付ける構造が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板には複数のフィン挿着溝及び突壁部を形成し、上記フィン挿着溝にフィンを挿入して上記突壁部をフィン側へ変形させることで、上記フィンを上記基板にかしめ止めするヒートシンクが開示されている。さらに、上記突壁部の先端には突条を設け、上記基板には上記突壁部の立設方向に沿って溝条を設けることを開示している。上記溝条により上記突壁部の変形が容易になり、フィンと基板との接触面積の確保が可能となり、また上記突条により上記フィンの基板からの離脱防止が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−161882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような電子機器用放熱構造では、放熱効率を上げるために、フィンと基板とを圧接状態として両者の接触面積を確保し接触熱抵抗を低減させる必要がある。上記特許文献1では、上記突壁部をかしめ変形させた際に上記突条がフィンにくい込み、フィンは基板に固着される。しかしながら、フィンが挿入されるフィン挿着溝側へ、突壁部から上記突条が突出していることから、フィン挿着溝へフィンを挿入するときに、突条がフィンに当接し、フィンの変形や損傷が発生する可能性がある。このような変形や損傷を防止するためには、フィンの厚み寸法は、フィン挿着溝の幅寸法から突条の高さ寸法を差し引いた大きさにしなければならないという制約が生じる。よって、このような制約がない場合に比べると、フィンの厚みは薄くなり、フィン自体の放熱性能は低下してしまう。さらにまた、工法によってはフィン挿着溝にフィンを挿入した際に、フィンが基板に対して垂直に立設されず傾斜した状態になる場合も考えられる。この場合、隣接するフィン同士が接触し、放熱性が劣化するという問題も生じる。
【0006】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、従来に比べて容易に放熱性能を確保可能な、電子機器用放熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における電子機器用放熱装置は、ベース板と、立設方向に沿って上記ベース板に立設され、かしめ止めにて上記ベース板に固定される板状フィンとを備えた電子機器用放熱装置であって、上記ベース板は、上記板状フィンが挿入される凹形状の溝であって上記立設方向に平行で上記板状フィンに面接触する溝壁を有する挿入溝と、上記板状フィンを上記溝壁との間に挟むように上記溝壁に対向して上記挿入溝の溝底部に立設され、板状フィン側への変形により上記板状フィンを当該ベース板にかしめ止めするかしめ部材とを有し、上記かしめ部材は、上記溝壁に対向する側面に、上記立設方向に直交する幅方向に凹となり上記立設方向及び上記幅方向に直交する延在方向に沿って形成されたかしめ用溝を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様における電子機器用放熱装置によれば、板状フィンをかしめ止めするためのかしめ部材には、かしめ用溝を設けたことにより、かしめ部材にかしめ荷重を作用させることで、かしめ部材は、ベース板の挿入溝に挿入された板状フィン側へ塑性変形し、板状フィンは、変形したかしめ部材にて溝壁との間にかしめ止めされる。またこのとき、かしめ部材の先端が板状フィンにくい込む効果によって、板状フィンは、挿入溝の溝壁に対して強固に固着される。よって、ベース板と板状フィンとの接触面積が確保され接触熱抵抗は低減される。
【0009】
このように、かしめ部材には、当該かしめ部材から板状フィン側へ突出する突起部等は設けていない。よって、従来の、先端部に突起や突条部を設けたかしめ用の突壁部を用いる場合に比べて、厚みの大きい板状フィンを用いることが可能になり、挿入溝一箇所当たりの放熱性能が向上するという効果がある。また、かしめ後の、ベース板に対する板状フィンの垂直性を向上させる効果もある。よって、板状フィン同士が接触し放熱性が劣化するということも防止できる。
【0010】
さらにまた、かしめ部材へのかしめ荷重を継続することで、板状フィンをベース板の挿入溝の溝壁への方向と、溝底部への方向とに押し付ける効果のうち、かしめ部材全体が溝底部付近の根元を基点に折れ曲がり変形することで、板状フィンと接するかしめ部材の先端部から加わる荷重成分が変化し、溝底部方向への荷重が増加する。よって、板状フィンの離脱や、板状フィンとベース板との間に隙間が生じることを防ぐことができ、その結果、ベース板に固着した板状フィンの垂直度を維持しながら、ベース板と板状フィンとの接触面積を確保できる。
したがって、本発明の一態様における電子機器用放熱装置によれば、電子機器や半導体装置の使用時における放熱性能を従来よりも容易に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1における電子機器用放熱装置の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子機器用放熱装置における挿入溝部分の拡大断面図である。
【図3】図1に示す電子機器用放熱装置においてかしめ部材のかしめ動作を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態2における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態3における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態4、5における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態6における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図8】図7に示す電子機器用放熱装置における板状フィンの先端部近傍及びかしめ部材の拡大図である。
【図9】本発明の実施形態7における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の実施形態8における電子機器用放熱装置の挿入溝部分の拡大断面図である。
【図11】図7に示す電子機器用放熱装置における板状フィン及びかしめ部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態である電子機器用放熱装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明では、「上」、「下」、「左」、「右」およびこれらの用語を含む名称を適宜使用する場合もあるが、これらの方向は図面を参照した発明の理解を容易にするために用いるものであり、実施形態を上下反転、あるいは任意の方向に回転した形態も、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。
【0013】
実施の形態1.
図1及び図2には、本発明の実施の形態1による電子機器用放熱装置100が示されている。電子機器用放熱装置100は、ベース板10と、立設方向91に沿ってベース板10に立設され、かしめ止めによりベース板10に固定される板状フィン21とを備える。このような電子機器用放熱装置100は、例えば、板状フィン21の立設側とは反対側のベース板10の裏面側に半導体素子等の電子機器が装着され、上記電子機器から発生する熱の放散を行い、上記電子機器の冷却を行う。ここで「電子機器」には、半導体素子自体及び半導体素子を組み込んだ機器のみならず、回路基板単体及び素子を実装した基板等も含む概念である。また、以下に説明する各実施形態では、ベース板及び板状フィンを有する部材のみを例示するが、本発明の実施の形態による電子機器用放熱装置は、例えばファン等の既知の強制冷却装置を組み込んだ形態をも含む。
【0014】
ベース板10は、例えばアルミニウムや銅及びそれらの合金等にて作製される板状体である。また、板状フィン21は、例えば純アルミニウムや銅、銅合金等の放熱性の高い素材を板状に加工したものである。
【0015】
ベース板10の上表面11には、一若しくは複数の凹形状の挿入溝12が延在方向92に沿って形成されている。複数の挿入溝12が設けられる場合、各挿入溝12は、互いに平行に配置される。このような挿入溝12は、後述するように板状フィン21を挿入して板状フィン21をベース板10に立設するための溝である。
【0016】
挿入溝12は、図2に示すように、互いに平行で対向して延在方向92に延在する一対の溝壁15と、該溝壁15を連結する溝底部16とを有し、溝壁15及び溝底部16にて凹形状を形成する。溝壁15は、溝底部16に対して垂直で立設方向91に平行な側面であり、挿入溝12に挿入された板状フィン21と面接触する側面である。
【0017】
溝底部16には、板状フィン21が挿入可能な隙間を介して、大略凸状の断面を有するかしめ部材13が溝壁15、つまり挿入される板状フィン21に対向して、立設方向91に沿って立設される。かしめ部材13は、本実施形態では、ベース板10と同材料で溝底部16と一体的に形成されるが、形成方法はこれに限定されるものではない。また、かしめ部材13の高さは、図示のように挿入溝12の深さ以下にて適宜設定可能であり、一例として図2に示すように、挿入溝12の深さの半分程度である。尚、図2では、一つの挿入溝12に、2つのかしめ部材13を設けた場合を示しているが、後述の実施形態3に示すように一つのかしめ部材13を設けることもできる。
【0018】
さらに、かしめ部材13は、溝壁15、つまり挿入される板状フィン21に対向する側面13aに、延在方向92に直交する幅方向92に凹となり延在方向92に沿って形成されたかしめ用溝14を有する。立設方向91において、かしめ用溝14の位置は、適宜設定可能であるが、かしめ止め動作の観点から、図示するようにかしめ部材13の上部に設定するのが好ましい。このように構成されるかしめ部材13は、板状フィン21側へ変形されることにより、板状フィン21をベース板10にかしめ止め、つまり板状フィン21をベース板10に固定する機能を有する。
【0019】
ベース板10に設ける挿入溝12、かしめ部材13、及びかしめ部材13のかしめ用溝14については、加工方法を限定するものではなく、例えば素材の押し出し成型、押し抜き成型、及び切削加工等により、あるいはこれらの組み合わせによって、形成可能である。
【0020】
かしめ部材13を曲げて塑性変形させ、板状フィン21を固定するかしめ工法としては、例えば図3に示すように、かしめ治具31のような、接触して荷重負荷できる部材を、かしめ部材13間に押し当てるなどして、かしめ部材13の根元を基点に、板状フィン21側へ曲げ変形させるようにする。
【0021】
この構成によれば、かしめ部材13を、板状フィン21、つまり挿入溝12の溝壁15の方向へ変形させる場合、変形初期にかしめ用溝14が閉じる方向に、かしめ部材13は変形し、かしめ部材13の先端近傍が板状フィン21に接触し、くい込む。これにより、板状フィン21を溝壁15方向に固定するとともに、かしめ部材13がその根元を中心に曲げ変形していくことで、かしめ用溝14からの負荷は、連動して溝底部16方向に作用する。よって、放熱用の板状フィン21は、溝底部16に対しても確実に固着される。したがって、放熱用の板状フィン21は、溝壁15及び溝底部16に確実に固着され、接触面積及び面圧が確保できる。したがって、ベース板10に対する板状フィン21の垂直性を確保すると共に放熱性を従来よりも向上させることができる。
【0022】
即ち、例えば上記特許文献1に開示される従来技術では、かしめ変形させる押圧変形部の先端近傍に突起を有している。そのため、挿入溝に挿入可能な放熱板は、本実施の形態1の場合と比較して薄くなる。よって、放熱板自体の放熱性能が低下し、さらに放熱板挿入時に上記突起に接触することで放熱板の変形や表面の損傷が生じる場合がある。さらに、厚みの薄い放熱板の使用により、放熱板がベース板に対し垂直方向から傾いて固着される可能性がある。
これに対して本実施の形態1の構成によれば、挿入溝12の内幅が一定になり、かつかしめ部材13は突起を設けていないため、板状フィン21の挿入工程が容易になり、ベース板10もわずかに軽量化することができる。また、板状フィン21は、薄肉化する必要がないので、上述の変形や損傷が発生せず、放熱装置自体の長寿命化を図ることもできる。
【0023】
実施の形態2.
上述の、実施の形態1における電子機器用放熱装置100では、図2に示すように、一つのかしめ部材13は、一つのかしめ用溝14を有する構成であるが、これに限定するものではない。即ち、図4に示す本実施の形態2における電子機器用放熱装置200のように、かしめ部材13−1は、立設方向91において、複数のかしめ用溝14を設けても構わない。尚、電子機器用放熱装置200におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0024】
このような構成によれば、かしめ部材13−1への荷重負荷時に複数のかしめ用溝14がそれぞれ閉じるように変形する。よって、板状フィン21に対するかしめ部材13−1の食い込みが、実施の形態1の場合に比べてより強固になると共に、かしめ部材13−1の先端近傍の曲がり方が大きくなるため、荷重負荷によって溝底部16に板状フィン21を固着させる作用がより強固になるという効果がある。その結果、かしめ工程中を通じて、溝壁15及び溝底部16に対して板状フィン21をより強固に固着させ、その垂直性をより維持することが可能となる。
【0025】
実施の形態3.
上述の、実施の形態1、2における電子機器用放熱装置100、200では、一つの挿入溝12において2つのかしめ部材13、13−1を設けた構成を説明した。しかしながら、既に実施の形態1でも説明し、また図5に示す本実施の形態3の電子機器用放熱装置300のように、一つの挿入溝12において一つのかしめ部材13を設けても良い。この構成においても、板状フィン21の垂直性を維持し、板状フィン21を強固にベース板10に固着させることができる。
【0026】
実施の形態4.
上述の、実施の形態1、2、3における電子機器用放熱装置100、200、300では、立設方向91において、かしめ用溝14よりも上方に位置する、かしめ部材13の先端部は、直角の角部を有している。しかしながら、図6に示す本実施の形態4における電子機器用放熱装置400のように、かしめ部材13−2の先端部13bは、必ずしも直角の角部を有していなくてもよく、例えば曲率を有する丸型であってもよく、さらに、三角形型や半楕円形などの形状であってもよい。また、このような構成において、かしめ用溝14の個数は一つに限らず、複数形成されてもよい。尚、電子機器用放熱装置400におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100、200、300における構成に同じである。
【0027】
実施の形態1〜3、及び実施の形態4の各構成によれば、かしめ部材13の先端部13bの断面形状による効果の大小の違いはあるものの、荷重負荷時にかしめ用溝14が閉じる方向にかしめ部材13が変形する構造に変わりは無い。よって、本実施形態4の電子機器用放熱装置400においても、実施の形態1〜3の場合と同様に、板状フィン21の垂直性を保ちながら、強固にベース板10に板状フィン21を固着させることができる。
【0028】
実施の形態5.
上述の実施の形態4において、かしめ部材13−2の先端部13bの一部又は全体に対して、表面処理又は表面加工を施してもよい。即ち、かしめ部材13−2を変形させ、放熱用の板状フィン21をかしめ止めするとき、かしめ部材13−2の先端部13bと板状フィン21とが接触したときの両者間の摩擦係数が高くなるように、例えば、先端部13bの表面に対して、ローレット加工やサンドブラストなどの面粗し加工、及び酸洗いなどの化学処理のどちらか、もしくはその両方を施すことができる。
【0029】
本実施の形態5の構成によれば、荷重負荷によるかしめ加工したとき、かしめ部材13−2の先端部13bが板状フィン21に接触した後、先端部13bの滑りが抑制されるため、負荷荷重がかしめ部材13−2及び先端部13bを通じて板状フィン21に効率よく伝達可能となる。よって、ベース板10に対して板状フィン21をより強固に固着させることが可能になる。尚、この実施の形態における構成は、他の実施の形態に対しても適用可能である。
【0030】
実施の形態6.
上述した各実施の形態では、挿入溝12へ挿入される板状フィン21の先端部の断面形状は、例えば図2に示すように、挿入溝12の溝壁15及び溝底部16に接触するように方形状となっている。これに対し、図7に示すように、本実施の形態6の電子機器用放熱装置500では、板状フィン21−1の先端部22は、切削加工によって形成され角部が90°以下となったくさび形形状であり、傾斜面22aを有する。このような板状フィン21−1は、図示するように、傾斜面22aがかしめ部材13−3側に位置するように配向され、尖端22bが溝底部16に接触して挿入溝12へ挿入される。
【0031】
このような形状を有する板状フィン21−1に対応して、本実施の形態6の電子機器用放熱装置500における、かしめ部材13−3は、以下のように構成される。即ち、かしめ部材13−3は、溝底部16と一体的に形成された基部13cと、立設方向91において基部13c上に一体的に形成されかしめ用溝14を有する上部13dとを有する。基部13cは、立設方向91に直交する幅方向93において、上部13dの幅よりも大きな幅を有する。さらに、図8に示すように、立設方向91において基部13cの高さh1は、板状フィン21−1の傾斜面22aの高さh2を超える高さである。
上述の板状フィン21−1と、上述のかしめ部材13−3とを有する電子機器用放熱装置500において、板状フィン21−1の傾斜面22aは、図7に示すように、挿入溝12の溝壁15とかしめ部材13−3の基部13cとの間に位置する。
尚、電子機器用放熱装置500におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0032】
以上のように構成される本実施の形態6の電子機器用放熱装置500においても、かしめ部材13−3を板状フィン21−1へ曲げ変形させることで、板状フィン21−1をベース板10にかしめ止めする。
このような構成によれば、板状フィン21−1には鋭角な先端部22を設け、先端部22が溝壁15及び溝底部16と接するように挿入溝12に対して板状フィン21−1を挿入し、かしめ止めが行われる。例えば先端部22が90°以上の鈍角な形状を有する場合では、板状フィン21−1と溝壁15とにおいて、溝底部16に近い部分ほど大きな空間ができてしまうのに対し、本実施の形態6の形態では、かしめ初期から、板状フィン21−1と溝壁15との接触面積を確保できる。よって、板状フィン21−1と溝壁15との接触面は、溝底部16に対して垂直性を保つことができる。さらに、かしめ初期から板状フィン21−1と溝壁15との間に空間が無く、例えば先端部22が90°以上の鈍角な形状を有する場合と比較して、板状フィン21−1と溝壁15との接触面積が大きいため、放熱性能を確保することができる。さらに、荷重負荷後に板状フィン21−1と溝壁15または溝底部16との間に生じた空間によって、板状フィン21がズレを生じることを防止することが期待される。
【0033】
実施の形態7.
図9に示すように、本実施の形態7の電子機器用放熱装置600では、板状フィン21−2の先端部22は、例えば実施形態1における板状フィン21の先端部に対してかしめ部材側へ突出した突起部22cを有する。該突起部22cの断面形状は、図示するような三角形の他に、例えば四角形、丸型などであってもよい。
【0034】
このような板状フィン21−2に対応して、本実施の形態7の電子機器用放熱装置600におけるかしめ部材13−4は、以下のように構成される。即ち、挿入溝12の溝底部16と一体的に形成された基部13eと、立設方向91において基部13e上に形成されかしめ用溝14を有する上部13fとを有する。ここで、基部13eは、板状フィン21−2の先端部22の突起部22cと干渉しない形状であり、突起部22cに対応した形状が好ましく、上記幅方向93において上部13fにおける幅よりも小さい幅を有する。また、本実施の形態7では、板状フィン21−2は、挿入溝12の上部からではなく、側面方向から挿入する。
尚、電子機器用放熱装置600におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0035】
このように構成される本実施の形態7の電子機器用放熱装置600によれば、かしめ負荷前のみならず、かしめ加工時における板状フィン21−2の転倒や外れを防止することができると共に、かしめ部材13−4によるかしめ止めにより板状フィン21−2を固着する際のバラツキを抑えることができる。
【0036】
実施の形態8.
図11には、本実施の形態8における電子機器用放熱装置700を示している。この電子機器用放熱装置700において、板状フィン21−3は、かしめ止めのために変形したかしめ部材13と係合する係合用溝23を有する。電子機器用放熱装置700におけるその他の構成は、電子機器用放熱装置100における構成に同じである。
【0037】
係合用溝23には、かしめ加工時に、立設方向91においてかしめ用溝14よりも上方に位置する、かしめ部材13の先端部のいずれかの部分、好ましくは突起先端14aが入り込んで係合する。このような係合を達成可能とするため、図11に示すように、板状フィン21−3が溝底部16まで挿入された状態において、係合用溝23は、立設方向91において、かしめ部材13の先端面13gから「a」寸法、低い位置に配置される。また、係合用溝23は、例えば、押し出し加工、押し抜き加工、又は切削加工により板状フィン21−3に形成される。上記「a」寸法は、板状フィン21−3とかしめ部材13との間隔、上記幅方向93におけるかしめ部材13の幅寸法、等に起因して適宜設計される。
【0038】
このように構成される電子機器用放熱装置700によれば、かしめ加工時に、かしめ用溝14よりも上方に位置する、かしめ部材13のいずれかの部分が板状フィン21−3の係合用溝23と係合することで、かしめ部材13の先端近傍部分が板状フィン21−3の表面に対して摺動することを抑制することができる。よって、かしめ加工時における負荷荷重は、かしめ部材13の先端近傍部分等を通じて板状フィン21−3により効率よく伝達される。したがって、より低荷重による、かしめ加工が可能であり、また、同じかしめ荷重にあっては、より強固に板状フィン21−3をベース板10に固着させることが可能となる。
尚、本実施形態8の構成は、上述したその他の実施形態の構成においても適用可能である。
【0039】
また、上述した各実施形態における構成を適宜、組み合わせて構成することも可能である。このような組み合わせ構成では、各実施形態が有する効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ベース板、12 挿入溝,13、13−1〜13−4 かしめ部材、
13a 側面、13c 基部、13d 上部、13e 基部、13f 上部、
14 かしめ用溝、15 溝壁、 16 溝底部、21 板状フィン、
22 先端部、22c 突起部、23 係合用溝、
100,200,300,400,500,600、700 電子機器用放熱装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板と、立設方向に沿って上記ベース板に立設され、かしめ止めにて上記ベース板に固定される板状フィンとを備えた電子機器用放熱装置であって、
上記ベース板は、上記板状フィンが挿入される凹形状の溝であって上記立設方向に平行で上記板状フィンに面接触する溝壁を有する挿入溝と、上記板状フィンを上記溝壁との間に挟むように上記溝壁に対向して上記挿入溝の溝底部に立設され、板状フィン側への変形により上記板状フィンを当該ベース板にかしめ止めするかしめ部材とを有し、
上記かしめ部材は、上記溝壁に対向する側面に、上記立設方向に直交する幅方向に凹となり上記立設方向及び上記幅方向に直交する延在方向に沿って形成されたかしめ用溝を有する、
ことを特徴とする電子機器用放熱装置。
【請求項2】
上記挿入溝へ挿入される上記板状フィンの先端部は、上記かしめ部材側に傾斜面を形成したくさび形状であり、
上記かしめ部材は、上記溝底部と一体的に形成された基部と、上記立設方向において当該基部上に形成され上記かしめ用溝を有する上部とを有し、上記基部は、上記立設方向に直交する幅方向において上記上部の幅よりも大きな幅を有し、上記立設方向において上記傾斜面の高さを超える基部高さを有し、
上記板状フィンの上記傾斜面は、上記挿入溝の上記溝壁と上記基部との間に位置する、請求項1記載の電子機器用放熱装置。
【請求項3】
上記かしめ部材は、上記溝底部と一体的に形成された基部と、上記立設方向において当該基部上に形成され上記かしめ用溝を有する上部とを有し、上記基部は、上記立設方向に直交する幅方向において上記上部の幅よりも小さい幅を有し、
上記挿入溝へ挿入される上記板状フィンの先端部は、上記基部に対応して上記かしめ部材側へ突出した突起部を有する、請求項1記載の電子機器用放熱装置。
【請求項4】
上記板状フィンは、かしめ止めのために変形した上記かしめ部材と係合する係合用溝を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用放熱装置。
【請求項5】
上記かしめ部材は、一つの上記挿入溝において、2つが平行して上記溝底部に立設される、請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器用放熱装置。
【請求項6】
それぞれの上記かしめ部材は、上記立設方向において複数の上記かしめ用溝を有する、請求項5記載の電子機器用放熱装置。
【請求項1】
ベース板と、立設方向に沿って上記ベース板に立設され、かしめ止めにて上記ベース板に固定される板状フィンとを備えた電子機器用放熱装置であって、
上記ベース板は、上記板状フィンが挿入される凹形状の溝であって上記立設方向に平行で上記板状フィンに面接触する溝壁を有する挿入溝と、上記板状フィンを上記溝壁との間に挟むように上記溝壁に対向して上記挿入溝の溝底部に立設され、板状フィン側への変形により上記板状フィンを当該ベース板にかしめ止めするかしめ部材とを有し、
上記かしめ部材は、上記溝壁に対向する側面に、上記立設方向に直交する幅方向に凹となり上記立設方向及び上記幅方向に直交する延在方向に沿って形成されたかしめ用溝を有する、
ことを特徴とする電子機器用放熱装置。
【請求項2】
上記挿入溝へ挿入される上記板状フィンの先端部は、上記かしめ部材側に傾斜面を形成したくさび形状であり、
上記かしめ部材は、上記溝底部と一体的に形成された基部と、上記立設方向において当該基部上に形成され上記かしめ用溝を有する上部とを有し、上記基部は、上記立設方向に直交する幅方向において上記上部の幅よりも大きな幅を有し、上記立設方向において上記傾斜面の高さを超える基部高さを有し、
上記板状フィンの上記傾斜面は、上記挿入溝の上記溝壁と上記基部との間に位置する、請求項1記載の電子機器用放熱装置。
【請求項3】
上記かしめ部材は、上記溝底部と一体的に形成された基部と、上記立設方向において当該基部上に形成され上記かしめ用溝を有する上部とを有し、上記基部は、上記立設方向に直交する幅方向において上記上部の幅よりも小さい幅を有し、
上記挿入溝へ挿入される上記板状フィンの先端部は、上記基部に対応して上記かしめ部材側へ突出した突起部を有する、請求項1記載の電子機器用放熱装置。
【請求項4】
上記板状フィンは、かしめ止めのために変形した上記かしめ部材と係合する係合用溝を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器用放熱装置。
【請求項5】
上記かしめ部材は、一つの上記挿入溝において、2つが平行して上記溝底部に立設される、請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器用放熱装置。
【請求項6】
それぞれの上記かしめ部材は、上記立設方向において複数の上記かしめ用溝を有する、請求項5記載の電子機器用放熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−15237(P2012−15237A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148667(P2010−148667)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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