説明

電子部品の実装構造

【目的】 信号の高速伝送が可能で、電源回路の電圧降下を減らすことができる電子部品の実装構造を得ること。
【構成】 LSIパッケージ1のピン8側に格子状の電源バス6を設け、この電源バス6の格子内に電源パターン3bと接地パターン3aを備えたフレキシブルプリント基板3を設ける。このフレキシブルプリント基板3の下面にハウジング4を設け、このハウジング4に形成した穴4aに、ピン8に嵌合するケーブルコネクタ5を挿着する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子部品の実装構造に係り、とくにLSIパッケージを実装する電子部品の実装構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子部品の実装構造を図5に示す。図5において、多層のプリント基板51には、多極コネクタ52が実装され、この多極コネクタ52には、LSI56が4個実装されたLSIパッケージ55が実装されている。このうち、LSIパッケージ55には、下面に複数本のピン57が突設されている。また、多極コネクタ52には、下端にリードが接続されたソケットコンタクト53が挿着され、このうち、図5において左端のソケットコンタクト53に接続されたリード54Aはプリント基板51の電源パターン61に接続され、中央のリード54Bはプリント基板51の信号パターン62に接続され、右端のリード54Cはグランドパターン63に接続されるとともに、プリント基板51の下方から挿入されるケーブルコネクタ58に接続されている。
【0003】このように構成された電子部品の実装構造においては、LSIパッケージ55のピン57がソケットコンタクト53に挿入されることで、LSIパッケージ55は多極コネクタ52に固定され、ソケットコンタクト53を介してリード54A、54B、54Cに接続される。
【0004】また、LSIパッケージ55への電源供給は、プリント基板51に形成された電源パターン61とグランドパターン63からソッケトコンタクト53を経て、ピン57からLSI56に供給される。一方、信号は、ピン57からソッケトコンタクト53を経て、プリント基板51の信号パターン62及びケーブルコネクタ58に伝送される。
【0005】ところで、近年、LSIパッケージに搭載されるLSIがますます高集積化されるに伴ない、消費電力も増える傾向にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このように構成された電子部品の実装構造においては、次のような問題がある。
(1)消費電力の増加に伴ないプリント基板の電源パターンやグランドパターンの層数を増やす必要があり、すると、アスペクト比(板厚/スルーホール径)が増え、プリント基板の製造が難しくなる。
(2)電流通過パスがプリント基板51、多極コネクタ52、ピン57と長くなり、電圧降下が増える。
(3)信号伝送の面から見ると、伝送路はピン57、ソケットコンタクト53、リード54、ケーブルコネクタ58となり、非常に長い伝送路となるだけでなく、多極コネクタ52を経由するため、インピーダンスの不連続を発生す ることにより、高速伝送には適さない。
【0007】そこで、本発明の目的は、信号の高速伝送が可能で、電源回路の電圧降下を減らすことのできる電子部品の実装構造を得ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、LSIパッケージのピン側に格子状の電源バスを設け、この電源バスの格子内に電源パターンと接地パターンを備えたフレキシブル基板を設け、このフレキシブル基板の下面にハウジングを設け、このハウジングにLSIのピンに嵌合するケーブルコネクタを挿着してなる電子部品の実装構造である。
【0009】
【作用】LSIパッケージの各ピンはフレキシブル基板の各パターンに接続され、フレキシブル基板の電源パターンは格子状の電源バスから分岐した電流経路で給電される。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の電子部品の実装構造を示す断面図、図2は図1のA部の拡大詳細図、図3は図2のB部拡大詳細図である。
【0011】図1、図2及び図3において、LSIパッケージ1は、セラミック板10に複数個のLSI11を実装し、裏面には複数本のピン8が実装されている。また、セラミック板10の周囲には、フランジ12が固定され、このフランジ12には、絶縁体13を介して格子状の給電バス2が固定されている。この給電バス2は、図2に示すように中央部にインシュレータ2aを備え、このインシュレータの両面にそれぞれグランドバス7、電源バス6を備えた積層構造で、各バスの格子の各辺には複数本のピン9が固定されている。
【0012】ピン8とピン9には、多層のフレキシブルプリント基板3が実装され、このフレキシブルプリント基板3には、グランドパターン3a、電源パターン3b、スルーホール3cを有し、このスルーホール3cの電源及びグランド用のスルーホールには、ピン9と電源及びグランド用のピン8に嵌合するソケットコンタクト21がはんだ付けされている。
【0013】各フレキシブルプリント板3の下面には、枠42に固定されたハウジング4が実装され、このハウジング4は、導電材で構成され、且つ複数個の穴4aを有しており、この穴4aの一端からピン8の先端部が挿入され、信号用のピン8には他端部からケーブルコネクタ5が挿入されている。このケーブルコネクタ5は、同軸線5aを有し、この同軸線5aの図示しない中心導体は、チューリップコンタクト状の中心コンタクト5bに結線されている。また、同軸線5aの図示しないシールド導体は、筒状の外部導体5cに結線され、この外部導体5cの外周には、ばね板状の外部コンタクト5dを有し、ハウジング4に接続されている。
【0014】グランド用のピン8に位置するハウジング4の穴4aには、グランドコンタクト32が実装され、このグランドコンタクト32には、内部にグランド用のピン8に接触するグランド用中心コンタクト32aと外部にグランド用コンタクト32aに接続されたグランド用外部導体32bを有し、このグランド用外部導体32bの外周には、ハウジング4と接触するばね板のグランド用外部コンタクト32cを有している。電源用のピン8に位置するハウジング4の穴4aには、導電材料で製作されたハウジング4と電源用のピン8との接触を防ぐために、絶縁材料で断面U字状に形成されたキヤップ33が実装されている。
【0015】複数個のハウジング4を固定した枠42は、フレーム43に固定されている。電源供給パスは、給電バス2からフレキシブルプリント基板3を経てピン8に供給される。給電バス2は、大型化を図ることができ、メイン電流の通路はこの給電バス2を通って各フレキシブルプリント基板3に給電され、フレキシブルプリント基板3は、複数の給電バス2から分岐する電流経路で給電される。信号はピン8より直接、ケーブルコネクタ5に伝送される。
【0016】次に、図4は、本発明の電子部品の実装構造の他の実施例を示す図で、図3に対応する図である。図4においては、フレキシブルプリント基板3のスルーホール3cにピン8、ピン9をはんだ付けして構成する。
【0017】尚、本発明のハウジングは、導電性であり、同軸線のシールド導体をピン8のグランドピンに接続する必要があるが、この導電部の形成方式としては、全体を金属材料で作る方法、又は、プラスチックスの表面に導電体を蒸着する方法、又は、プラスチックス製の内部に金属片を内蔵する方法がある。
【0018】
【発明の効果】以上、本発明によれば、LSIパッケージのピン側に格子状の電源バスを設け、この電源バスの格子内に電源パターンと接地パターンを備えたフレキシブル基板を設け、このフレキシブル基板の下面にハウジングを設け、このハウジングにLSIのピンに嵌合するケーブルコネクタを挿着することで、LSIパッケージの各ピンをフレキシブル基板の各パターンに接続し、LSIパッケージの電源用のピンもフレキシブル基板の電源パターンを経て格子状の電源バスから分岐した電力供給路に接続したので、信号の高速伝達が可能で、電源回路の電圧降下を減らすことのできる電子部品の実装構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子部品の実装構造の一実施例を示す図。
【図2】本発明の電子部品の実装構造の部分拡大詳細図。
【図3】図2のB部拡大詳細図。
【図4】本発明の電子部品の実装構造の他の実施例を示す部分拡大詳細図。
【図5】従来の電子部品の実装構造を示す図。
【符号の説明】
1 LSIパッケージ
2 給電バス
3 フレキシブルプリント基板
4 ハウジング
5 ケーブルコネクタ
6 電源バス
7 グランドバス
8,9 ピン
10 セラミック板
11 LSI

【特許請求の範囲】
【請求項1】 LSIパッケージのピン側に格子状の電源バスを設け、この電源バスの格子内に電源パターンと接地パターンを備えたフレキシブル基板を設け、このフレキシブル基板の下面にハウジングを設け、このハウジングに前記LSIのピンに嵌合するケーブルコネクタを挿着してなる電子部品の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−51883
【公開日】平成6年(1994)2月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−223346
【出願日】平成4年(1992)7月30日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)