説明

電極形成用組成物および電極形成用組成物を用いるプラズマディスプレイパネル

【課題】アドレス電極で発生するマイグレーションおよびエッジカールの発生を防止して、製品の信頼度を向上できるように組成比を調整した電極形成用組成物、および調整された組成比を備える電極形成用組成物を適用して製造されたプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】本発明の電極形成用組成物は、フリット、金属質パウダーおよびビヒクルを含み、金属質パウダーの含有量は、52〜62質量部であり、フリットの含有量は、5〜15質量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極形成用組成物および電極形成用組成物を用いるプラズマディスプレイパネルに関し、より詳しくは、電極のマイグレーション(migration)現象およびエッジカールの発生を防止するために組成比を最適化した電極形成用組成物および電極形成用組成物を用いるプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
公知のように、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel、以下、PDPと略する)は、気体放電を通じて得られたプラズマから放射される真空紫外線(VUV、Vacuum Ultra−Violet)によって蛍光体を励起することにより発生する赤(R)、緑(G)、青(B)の可視光を利用して、映像を実現する。
【0003】
このようなPDPは、60インチ以上の超大型画面を僅か10cm以内の厚さで実現することができ、CRT(Cathode Ray Tube)のような自発光ディスプレイ素子であるために、色再現力および視野角によって変化する歪曲現象を生じない特性を備える。また、PDPは、LCD(Liquid Crystal Display)等に比べて、製造工法が単純で生産性および原価側面からも有力な利点を備える。これにより、PDPは、テレビおよび産業用平板ディスプレイに利用できるディスプレイ素子として注目されている。
【0004】
PDPの構造は、1970年代から長期間にわたって発展しており、現在一般によく知られている構造は、交流型3電極面放電型構造である。
【0005】
交流型3電極面放電構造のPDPは、基本的に前面基板上に形成されて面対向を構成する一対の表示電極と、前面基板から離隔される背面基板上に形成されるアドレス電極とを含んで構成される。そして、前面基板と背面基板との間の空間は、隔壁によって複数の放電セルに区画される。複数の放電セルは、表示電極とアドレス電極との交差点に沿って形成される。そして、放電セルの内部には蛍光体層が形成され、放電ガスが注入される。注入された放電ガスは、電極を通じて電圧が印加されるパターンによって放電セル内で放電を起こし、放電によって発生した紫外線は、放電セル内の蛍光体層に衝突して可視光を発生させる。
【0006】
このように構成される交流型3電極面放電構造のPDPは、壁電荷の記憶特性を利用して点灯される放電セルと点灯されない放電セルとを選択し、点灯される放電セルを放電させることで画像を表示する。
【0007】
最近、市販されているPDPは、42インチでXGA(1024×768)級の解像度を備える。しかし、現状では、Full−HD(High Definition)級の画像を表示できる究極的なディスプレイ素子が要求されているのが実情である。PDPでFull−HD級(1920×1080の解像度)の画像を表示するためには、放電セルの大きさを小さくして高精細(higher density)を実現することが必要であり、そのために電極の幅と間隔を減らして、さらに稠密に形成することも必要である。
【0008】
一般に、PDPに適用されるアドレス電極の材質として、電気伝導性が高くて相対的に安価である銀(Ag)が主に用いられている。しかし、銀(Ag)で形成されるアドレス電極は、高精細のためにアドレス電極の幅と間隔を稠密に形成する場合、隣接するアドレス電極の周縁部分で発生するマイグレーション現象によって、アドレス電極の断線または短絡を発生する。マイグレーション現象には様々な原因があるが、外気/外湿による化学的/物理的弱点に起因する場合が多い。このような外気/外湿の浸透は、結果的にアドレス電極で主に使用される感光性銀電極形成用組成物の拡散を促進させてアドレス電極を断線させたり、隣接する2つのアドレス電極の間にブリッジ(bridge)を形成して短絡させる。
【0009】
したがって、マイグレーション現象に起因したアドレス電極の不良現象を防止するために、多様な試みが行われている。
【0010】
一例として、マイグレーション現象が発生するアドレス電極の部分に多様な耐気/耐湿材料を適用し、洗浄などを利用してアドレス電極間の有機/無機性異物を最少化する方法が適用される。また、半導体をはじめとするその他の電極配線を備える電子製品の場合、高反応性物質である銀を使用せず、金、白金などの超高価の金属を使用したり、銀に対して全率固溶体であるパラジウム(Pd)等を投入したりもする。
【0011】
アドレス電極は、背面基板上に感光性銀ペーストを塗布した後、感光性銀ペーストを乾燥して電極層を形成し、電極層を露光および現像して電極層をパターニングする過程を通じて形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来技術のマイグレーション現象を防止する方法では、アドレス電極形成工程数は多くなり、製造費も増大する。そこで、銀材質のアドレス電極を主に使用しているプラズマディスプレイパネルの場合、アドレス電極の製造工程を減らして製造単価を節減するためには、アドレス電極自体の特性を制御してマイグレーション現象を防止することがさらに必要である。また、アドレス電極を形成する過程で適切に制御されなかった露光および現像工程は、アドレス電極の両側におけるエッジ部分が巻き上がるエッジカール(edge−curl)を発生させる(図6(a)参照)。エッジカールは、アドレス電極に印加される放電電圧を集中させ、ガス放電時にエッジカール部分を覆っている誘電体層を破損させるなど、製品信頼度を低下させる。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、アドレス電極で発生するマイグレーションおよびエッジカールの発生を防止して製品の信頼度を向上できるように組成比を調整した電極形成用組成物、および調整された組成比を備える電極形成用組成物を適用して製造されるプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、フリット、金属質パウダーおよびビヒクルを含み、金属質パウダーの含有量は、52〜62質量部であり、フリットの含有量は、5〜15質量部である電極形成用組成物が提供される。
【0015】
本発明によれば、第1電極(アドレス電極)を形成するのに用いられる電極形成用組成物は、金属質パウダーおよびフリットを含んで構成される。本発明の電極形成用組成物では、上記のように金属質パウダーおよびフリットの組成比が最適化されている。よって、第1電極(アドレス電極)形成過程の焼成時において、液状焼結によって金属質パウダーがフリットによって形状化されて金属質層を形成し、フリットは、液状焼結によって金属質層の両側周縁に絶縁性ガラス層を形成する。結果、第1電極(アドレス電極)は、金属質層および絶縁性ガラス層によって構成される。これにより、金属質層の周縁部分で発生するマイグレーション現象を絶縁性ガラス層によって防止でき、金属質層のエッジ部分で発生するエッジカールを絶縁性ガラス層によって防止できる。また、本発明の電極形成用組成物では、組成比が最適化されているので、マイグレーション現象およびエッジカールを防止するとともに第1電極(アドレス電極)自体の性能を維持できる。従って、本発明の電極形成用組成物を第1電極(アドレス電極)の形成に用いると、第1電極(アドレス電極)を具備するプラズマディスプレイパネルの製品品質を向上できる。
【0016】
フリットは、BおよびBaOを含むことができる。ここで、Bに対するBaOの質量比が1以上であってよく、好ましくは、1以上5以下の範囲であってよい。
【0017】
金属質パウダーは、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀−パラジウム合金(Ag−Pd)およびこれらの組み合わせから構成される群より選択されてよい。金属質パウダーは、銀(Ag)パウダーであってよい。
【0018】
ビヒクルは、有機溶媒およびバインダーを含むことができる。
【0019】
有機溶媒は、ケトン類、アルコール類、エーテル系アルコール類、飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類、乳酸エステル類、エーテル系エステル類およびこれらの組み合わせから構成される群より選択されてよい。
【0020】
バインダーは、アクリル系樹脂、スチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂およびこれらの組み合わせから構成される群より選択されてよい。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によれば、所定の間隔を置いて、対向配置される第1基板および第2基板と、第1基板上に配置され、第1方向に沿って形成される第1電極と、第1基板と第2基板との間で第1電極から離隔して配置され、第1方向と交差する第2方向に沿って形成される第2電極と、第1基板と第2基板との間の空間で複数の放電セルを区画する隔壁と、各放電セル内に形成される蛍光体層とを備え、第1電極は、52〜62質量部の金属質パウダーおよび5〜15質量部のフリットから形成されるプラズマディスプレイパネルが提供される。
【0022】
フリットは、BおよびBaOを含むことができる。ここで、Bに対するBaOの質量比が1以上、好ましくは、1以上5以下の範囲であってよい。金属質パウダーは、銀(Ag)パウダーであってよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第3の観点によれば、所定の間隔を置いて、対向配置される第1基板および第2基板と、第1基板上に配置され、第1方向に沿って形成される第1電極と、第1基板と第2基板との間で第1電極から離隔して配置され、第1方向と交差する第2方向に沿って形成される第2電極と、第1基板と第2基板との間の空間で複数の放電セルを区画する隔壁と、各放電セル内に形成される蛍光体層とを備え、第1電極は、第1方向の周縁に絶縁性ガラス層を備えるプラズマディスプレイパネルが提供される。
【0024】
絶縁性ガラス層は、第1電極の両側周縁に沿って帯状に形成されてよい。
【0025】
第1電極は、金属質層を備えることができる。絶縁性ガラス層は、金属質層と同一平面上に形成されてよい。
【0026】
絶縁性ガラス層は、金属質層に隣接して形成され、絶縁性ガラス層の表面は、金属質層の表面周縁から第1基板の表面まで傾斜するように形成されてよい。
【0027】
金属質層は、銀(Ag)パウダーを含むことができ、絶縁性ガラス層は、フリットで形成されてよい。
【0028】
第1電極は、金属質パウダーおよびフリットから形成されてよい。ここで、金属質パウダーの含有量は、52〜62質量部であってよく、フリットの含有量は、5〜15質量部であってよい。
【0029】
フリットは、BおよびBaOを含むことができる。ここで、Bに対するBaOの質量比は、1以上であってよい。
【0030】
第1電極は、駆動時にアドレス電圧を印加されるアドレス電極であってよい。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、電極形成用組成物は、金属質パウダーを52〜62質量部で、フリットを5〜15質量部で含む。そして、フリットは、BおよびBaOを含み、フリットに含まれるBに対するBaOの質量比は、1以上となる。よって、本発明の電極形成用組成物を用いてアドレス電極を形成する場合、アドレス電極形成過程の焼成時に、電極形成用組成物の金属質パウダーが粒子間液状焼結によって金属質層を構成し、フリットによって金属質層の外部に絶縁性ガラス層を形成することができる。これにより、銀などでアドレス電極を形成する際に、隣接するアドレス電極の間で発生するマイグレーション現象を絶縁性ガラス層によって防止できる。また、電気伝導性金属質層のエッジ部分に絶縁性ガラス層が形成されるので、アドレス電極の周縁部分で発生するエッジカールを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
(プラズマディスプレイパネルの構造)
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿って切断した側断面図である。
【0034】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、第1基板10、第2基板20、隔壁16、放電セル18、第1電極12、第2電極27を含んで構成される。第1基板10(以下、背面基板とする)および第2基板20(以下、前面基板とする)は、既に設定された所定の間隔を間に置いて、互いに対向配置される。背面基板10と前面基板20が重なる周縁をフリット(図示せず)で封着し、背面基板10と前面基板20との間に密閉された放電空間を形成する。なお、背面基板10と前面基板20との間の間隔は、外気圧によって圧縮され、縮小することが多い。また、背面基板10および前面基板20によって形成される放電空間は、背面基板10と前面基板20との間に配置される隔壁16によって、複数の放電セル18に区画される。
【0035】
本発明の実施形態における隔壁16は、背面基板10上に隔壁誘電体ペーストを塗布し、隔壁誘電体ペーストをパターニングした後に焼成することにより形成される。よって、図1で例示された隔壁16は、背面基板10とは別途に形成されたものである。
【0036】
隔壁16は、第1方向(図1のy軸方向)に沿って形成される縦隔壁部材16aと、縦隔壁部材16aと直交する第2方向(図1のx軸方向)に沿って形成される横隔壁部材16bとを備える。したがって、放電セル18は、縦隔壁部材16aおよび横隔壁部材16bによって、略格子形状パターンに区画される。
【0037】
しかし、本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、上述の構成形状に必ず限定されるわけではない。放電セル18は、上述した略格子形状パターンの他にも略帯形状パターンおよび略デルタ型形状パターンなど、多様な形状で構成される。
【0038】
背面基板10の面上には、各放電セル18に全て対応し、第1方向に沿って互いに平行に延長して形成される第1電極(以下、アドレス電極とする)12が形成される。つまり、複数のアドレス電極12は、背面基板10上で第1方向に沿って延長して形成され、第2方向に沿って互いに平行となるように並んで配置される。
【0039】
アドレス電極12は、金属質層12aと、金属質層12aの両側周縁に隣接して、同一平面上に形成される絶縁性ガラス層12bとを備える。アドレス電極12に対する説明は、以下の図3および図4を参照して、さらに詳しく説明する。
【0040】
そして、背面基板10上にはアドレス電極12を覆うように誘電体層14(以下、下部誘電体層とする)が形成される。下部誘電体層14上には、上述のように背面基板10と前面基板20との間で放電セル18を区画する隔壁16が形成される。
【0041】
そして、放電セル18内部の隔壁16の側面および下部誘電体層14の上部に蛍光体層19が形成される。蛍光体層19は、第1方向に沿って区画される各放電セル18内で同一色の蛍光体で形成され、第2方向に沿って形成される各放電セル18内には赤(R)、緑(G)および青(B)の蛍光体で繰り返して形成される。言い換えると、第1方向に沿って配置される放電セル18には、赤(R)、緑(G)および青(B)のうち一色の蛍光体層19が配置される。第2方向に沿って配置される各放電セル18には、赤(R)、緑(G)および青(B)の蛍光体層19が交互に配置される。
【0042】
前面基板20上には、放電セル18に対応し、第1方向(図1のy軸方向)と交差する第2方向(図1のx軸方向)に沿って延長して形成される第2電極(以下、表示電極とする)27が形成される。表示電極27は、各放電セル18に対応する走査電極23および維持電極26を対で含んで構成される。つまり、表示電極27は、背面基板10と前面基板20との間で、アドレス電極12に離隔して配置され、第2方向に沿って延長して形成される。複数の表示電極27は、第1方向に沿って互いに平行となるように並んで配置される。よって、表示電極27は、第2方向に沿って配置される放電セル18に対応する。
【0043】
走査電極23は、バス電極21および透明電極22を備える。バス電極21は、横隔壁部材16bに沿って延長して形成される。透明電極22は、バス電極21の上面と接しながら放電セル18の中央に向かって突出され、第2方向に沿って延長して形成される。維持電極26は、バス電極24および透明電極25を備える。バス電極24は、横隔壁部材16bに沿って延長して形成される。透明電極25は、バス電極24の上面に接しながら放電セル18の中央に向かって突出され、第2方向に沿って延長して形成される。図1では、透明電極22は、前面基板20上に配置され、バス電極21は、透明電極22の背面基板10に対向する面上に配置される。バス電極24、透明電極25も同様の配置となる。
【0044】
透明電極22および透明電極25は、前面基板20上において、第2方向に沿って配置される赤(R)、緑(G)および青(B)の放電セル18に全て対応するように、略帯状形状で延長形成される。また、透明電極22および透明電極25は、可視光の透過率を高めるために透明ITO(Indium Tin Oxide、インジウムスズ酸化物)などで形成される。
【0045】
しかし、本発明の実施形態の表示電極27は、必ずしも上述した構造に制限されるわけではない。つまり、透明電極22および透明電極25が、赤(R)の蛍光体層19が形成される放電セル18R、緑(G)の蛍光体層19が形成される放電セル18G、青(B)の蛍光体層19が形成される放電セル18Bの各々に対応し、バス電極21およびバス電極24から個別的に突出形成されてもよい。言い換えると、透明電極22および透明電極25は、赤(R)、緑(G)および青(B)の放電セル18のうち1つの放電セル18に対応するように、例えば放電セル18の第2方向の長さと同じ長さで形成されてよい。
【0046】
バス電極21およびバス電極24は、透明電極22および透明電極25による電圧降下を補充するために電気伝導性に優れた金属材質で形成される。バス電極21およびバス電極24は、プラズマ放電によって放電セル18内で発生する可視光の透過率を高めるために、放電セル18を間において配置される両側の横隔壁部材16bに隣接して設置されるのが好ましい。さらに、バス電極21およびバス電極24は、横隔壁部材16b上に沿って設置されてもよい。
【0047】
一方、走査電極23および維持電極26を覆うために誘電体層28(以下、上部誘電体層とする)が形成される。
【0048】
上部誘電体層28上には、保護膜29が形成される。保護膜29は、表示電極27および上部誘電体層28が放電セル18内で発生するプラズマ放電によって破損されることを防止する。保護膜29は、可視光透過性材質のMgO膜などで製作できる。MgO膜は、上部誘電体層28を保護し、高い二次電子放出係数(secondary electron emission coefficient)を備えるために、放電開始電圧をさらに下げることができる。
【0049】
そして、赤(R)、緑(G)および青(B)の蛍光体層19が形成される各放電セル18の内部には、プラズマ放電を発生するための放電ガス(例えば、キセノン(Xe)、ネオン(Ne)などを含む混合ガス)が充填される。
【0050】
したがって、本発明の実施形態のプラズマディスプレイパネルは、駆動時のリセット期間では、走査電極23に印加されるリセットパルスによってリセット放電を発生する。このリセット期間に続くスキャン期間では、走査電極23に印加されるスキャンパルスとアドレス電極12に印加されるアドレスパルス(アドレス電圧)によって、アドレス放電を起こす。その後、維持期間では、維持電極26および走査電極23に印加される維持パルスによって維持放電を起こす。
【0051】
このように、プラズマディスプレイパネルの駆動時では、維持電極26および走査電極23は、維持放電に必要な維持パルスを印加される電極の役割を果す。プラズマディスプレイパネルの駆動時では、走査電極23は、リセットパルスおよびスキャンパルスを印加される電極の役割を果す。プラズマディスプレイパネルの駆動時では、アドレス電極12は、アドレスパルス(アドレス電圧)を印加される電極の役割を果たす。しかし、本発明の実施形態の維持電極26、走査電極23およびアドレス電極12は、それぞれに印加される電圧波形によってその役割を違えることができるので、必ずしも上述の役割に限定されるわけではない。
【0052】
したがって、本発明の実施形態のプラズマディスプレイパネルは、アドレス電極12と走査電極23との相互作用によるアドレス放電によって、点灯される放電セル18を選択し、維持電極26と走査電極23との相互作用による維持放電によって、選択された放電セル18を駆動させて画像を表示する。
【0053】
(アドレス電極の構造)
以下、本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルのアドレス電極構造について図3および図4を参照して、より詳しく説明する。
【0054】
図3は、図2のIII部分を拡大して示す写真である。図4は、図3のアドレス電極の平面形状を示す拡大写真である。
【0055】
図3および図4を参照して説明すると、アドレス電極12は、金属質層12aと、金属質層12aの両側周縁に隣接して、同一平面上に形成される絶縁性ガラス層12bとを備える。金属質層12aは、背面基板10上で第1方向に沿って延長して形成され、対応する第1方向の各放電セル18にアドレス電圧を印加するための導電層を構成する。
【0056】
金属質層12aは、例えば導電性が高く、相対的に安価な銀(Ag)材質などで形成されてよい。金属質層12aは、大部分パウダー形状の銀から形成される。これら銀パウダー(金属質パウダー)は、ペースト状態から焼成過程を経て、フリットによって形状化されることにより、アドレス電極12の形状を構成することができる。
【0057】
一方、絶縁性ガラス層12bは、金属質層12aと同一平面上で金属質層12aの両側周縁に配置され、第1方向に沿って略帯状(band shaped)で形成される。絶縁性ガラス層12bの表面(上面)は、金属質層12aの表面周縁から背面基板10の表面まで傾斜するように形成される。したがって、絶縁性ガラス層12bは、金属質層12aの両側周縁を絶縁する絶縁層を構成することができる。
【0058】
このような絶縁性ガラス層12bは、フリットなどから形成される。つまり、金属質層12aは、主成分の金属質パウダーがフリットによって形状化されたものである。一方、絶縁性ガラス層12bは、フリット(主成分)から構成され、金属質層12aと一体に形成されるが、金属質層12aとは、互いに区分して形成される。この部分は、以下で詳細に説明するが、アドレス電極12の形成過程で金属質パウダーがフリットによって形状化されることにより、金属質層12aが形成される。一方、フリットが金属質層12aの両側周縁に形成されることにより、絶縁性ガラス層12bが形成される。
【0059】
この時、アドレス電極12は、金属質層12aの金属質パウダー約52〜62質量部、約5〜15質量部の範囲に属する含量のフリットを含む。つまり、アドレス電極12は、金属質パウダーおよびフリットから形成される。金属質パウダーの含有量は、約52〜62質量部であり、フリットの含有量は、約5〜15質量部となる。フリットが15質量部以上(金属質パウダーが52質量部未満)であると、導電性が不足してアドレス電極12の電気伝導度が低下する問題が発生する。また、フリットが5質量部未満(金属質パウダーが62質量部以上)であると、アドレス電極12の周縁に沿って絶縁性ガラス層12bを形成し難いため、エッジカール、マイグレーションなどの問題が発生する。
【0060】
そして、フリットは、BおよびBaOを成分として含む。Bに対するBaOの質量比は、約1以上5以下の範囲となる。フリットは、金属質パウダーと混合されて金属粒子間の結合を補助する役割を果たす。Bに対するBaOの質量比が1未満であると、ガラス転移温度が高くなって液状焼結が難しくなり、質量比が5以上であると、電気伝導性が低下する。フリットは、他の成分としてSiO、PbO、BiおよびZnOを含むことができる。
【0061】
このように、本発明の実施形態のアドレス電極12は、アドレス電極12の第1方向(図1のy軸方向)の両側周縁に形成される略帯状の絶縁性ガラス層12bによって、金属質層12aの両側周縁を絶縁することができる。これにより、隣接するアドレス電極12の間で発生するマイグレーション現象によるアドレス電極12の断線および短絡を防止することができる。
【0062】
したがって、銀材質などを主に使用するアドレス電極12の幅とピッチを減らすことができる。よって、ピッチの小さい放電セル18に全て対応するように、アドレス電極12自体を稠密に配置できるので、プラズマディスプレイパネルの高精細を実現できる。上記ではアドレス電極12の構成および形状について説明したが、本発明の実施形態におけるアドレス電極12の構成および形状は、プラズマディスプレイパネルに用いられる他の電極(例えば、走査電極23および維持電極26、中でもこれらのバス電極)にも適用できる。
【0063】
上述のアドレス電極12の構造は、後述する電極形成用組成物の組成比および製造工程を通じて得られる。
【0064】
(アドレス電極の形成工程)
以下、図5を参照して、本発明の実施形態に係るアドレス電極の形成過程を説明する。図5は、本発明の実施形態に係るアドレス電極の形成過程を概略的に示す図面である。
【0065】
図5を参照すると、本発明の実施形態に係るアドレス電極の形成過程は、電極層を形成する段階(ST1)、電極層を露光/現像する段階(ST2、ST3)および焼成する段階(ST4)を備える。
【0066】
図5(a)に示すように、電極層を形成する段階(ST1)は、背面基板10上にスクイーザー54(ドクターブレードに似た平坦化器具)を利用してペースト状態の電極形成用組成物を塗布した後、電極形成用組成物を乾燥して電極層52を形成する。
【0067】
本発明の実施形態の電極形成用組成物は、金属質パウダー、フリットおよびビヒクルを含む。このうち、金属質パウダーの含有量は、約52〜62質量部であり、フリットの含有量は、約5〜15質量部であることが好ましい。
【0068】
金属質パウダーは、大部分の金属質層12aを構成する電気伝導性金属質で、アドレス電極およびバス電極に通常に使用される金属質であれば、特に限定せずに使用できる。具体的には、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀−パラジウム合金(Ag−Pd)およびこれらの組み合わせなどから構成される群より選択される金属粉末を金属質パウダーとしてアドレス電極12の形成に使用することができる。言い換えると、金属質パウダーは、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀−パラジウム合金(Ag−Pd)などから構成される群より選択される少なくとも一つ以上の金属粉末によって構成される。その中でも大気中で焼成する場合、酸化によって導電性が低下せず、比較的安価である銀(Ag)パウダーを金属質パウダーとして用いるのがより好ましい。
【0069】
金属質パウダーは、略粒状型、略球形または略フレーク型など、その形状において特に限定されないが、光特性および分散性を考慮する時、略球形が好ましい。また金属質パウダーとして、単独で金属粉末を使用してもよいし、2種以上の互いに異なる形状の金属粉末を混合して使用することもできる。
【0070】
金属質パウダーおよびフリットを含む構成が一定であるとする時、金属質パウダーの含量が52質量部未満(フリットが15質量部以上)であると、導電性物質が不足してアドレス電極12の電気伝導度が低下する問題が発生する。また、金属質パウダーが62質量部以上(フリットが5質量部未満)であると、アドレス電極12の周縁に沿って絶縁性ガラス層12bを形成することが難しいため、エッジカール、マイグレーションなどの問題が発生する。
【0071】
フリットは、焼成を経て金属質パウダーを固形化することでアドレス電極12形状を構成することができ、アドレス電極12の周縁に絶縁性ガラス層12bを形成する。
【0072】
フリットは、焼成工程において金属質パウダーと背面基板(第1基板)10との間に接着力を供給できる物質で構成され、例えばSiO、PbO、Bi、ZnO、BおよびBaOなどを含むのが好ましい。
【0073】
フリット自体のガラス転移温度を低下するために、Bに対するBaOの質量比は、約1以上、好ましくは約1以上5以下の範囲となる。Bに対するBaOの質量比が1未満であれば、ガラス転移温度が増大して液状焼結が難しくなり、質量比が5以上であれば、電気伝導性が低下する。従って、本発明の実施形態では、電極形成用組成物の組成比を上記の通り、最適化できるので、以下で説明するエッジカールおよびマイグレーション現象を防止するとともに、アドレス電極12自体の性能を維持できる。
【0074】
ビヒクルは、有機溶媒およびバインダーを含む。
【0075】
有機溶媒としては、この分野で通常使用される有機溶媒が好ましい。具体的には、有機溶媒は、ケトン類、アルコール類、エーテル系アルコール類、飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類、乳酸エステル類、エーテル系エステル類およびこれらの組み合わせなどから構成される群より選択される化合物を含む。言い換えると、有機溶媒は、ケトン類、アルコール類、エーテル系アルコール類、飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類、乳酸エステル類、エーテル系エステル類などから構成される群より選択される少なくとも一つ以上の化合物を含む。ここで、ケトン類は、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどを含む。アルコール類は、n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、テキサノールなどを含む。エーテル系アルコール類は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどを含む。飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類は、酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどを含む。乳酸エステル類は、ラクト酸エチル、乳酸−n−ブチルなどを含む。エーテル系エステル類は、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオン酸塩、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ(2−メチルプロパノエイト)(2,2,4−trimethyl−1,3−pentanediol mono(2−methylpropanoate))などを含む。
【0076】
バインダーとしては、光開始剤によって架橋が可能で、アドレス電極形成時に現像工程によって簡単に除去できる高分子などを用いることができる。具体的には、バインダーとして、フォトレジスト組成分野で通常使用されるアクリル系樹脂、スチレン樹脂、ノボラック樹脂またはポリエステル樹脂およびこれら組み合わせなどから構成される群より選択される化合物が使用される。言い換えると、バインダーは、アクリル系樹脂、スチレン樹脂、ノボラック樹脂またはポリエステル樹脂などから構成される群より選択される少なくとも一つ以上の化合物を含む。好ましくは、下記のカルボキシル基含有モノマー類(i)、OH基含有モノマー(ii)およびその他の共重合可能なモノマー類(iii)などから構成される群より選択される1種以上の共重合体をバインダーとして使用することができる。また、バインダーとして、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、Hydroxypropylcellulose)、エチルセルロース(EC、Ethylcellulose)などの化合物も追加的に用いられてもよい。
【0077】
(カルボキシル基含有モノマー類(i))
カルボキシル基含有モノマー類としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、桂皮酸、琥珀酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)またはω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどがある。
【0078】
(OH基含有モノマー類(ii))
OH基含有モノマー類としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのOH基含有単量体類およびo−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどのフェノール性OH基含有モノマー類などがある。
【0079】
(その他の共重合可能なモノマー類(iii))
その他の共重合可能なモノマー類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなど、モノマー(i)以外の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系モノマー類、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(イソブチルメタクリレート)(PIBMA、Polyisobutyl methacrylate)などの重合体鎖の一側の末端に(メタ)アクリロイル基などの重合性不飽和基を備えるマクロモノマー類がある。
【0080】
また、背面基板(第1基板)10上に電極形成用組成物を塗布して金属質層12aを形成するために、バインダーは、適切な粘度を備える。そして、下記の現像工程における分解(溶解)を考慮して、重量平均分子量が約5,000〜50,000、酸価が約20〜100mgKOH/gであるバインダーを用いるのが好ましい。バインダーの重量平均分子量が5,000未満である場合には、現像時に金属質層12aの密着性に悪影響を与えることがあり、50,000を以上である場合には、現像不良が生じやすい。酸価が20mgKOH/g未満である場合には、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分であるため現像不良が発生しやすく、100mgKOH/g以上である場合には、現像時に金属質層12aの密着性低下や露光部の溶解が発生するため好ましくない。
【0081】
塗布工程に適した電極形成用組成物の粘度を得るために、有機溶媒およびバインダーの各々含有量は適切に調節される。
【0082】
本発明の実施形態に係る電極形成用組成物は、架橋剤および光開始剤をさらに含むことができる。
【0083】
架橋剤は、光開始剤によってラジカル重合反応できる化合物であれば、特に限定されない。具体的には、架橋剤として、多官能モノマー、さらに好ましくはエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびテトラメチロールプロパンテトラメタクリレートなどから構成される群より選択される1種以上の化合物を使用することができる。
【0084】
架橋剤は、バインダーの含有量に対して所定の比で添加されるのが好ましい。より好ましくは、バインダー100質量部に対して約20〜150質量部の量で架橋剤が含まれる。この時、架橋剤の含有量が20質量部未満であれば、アドレス電極形成時の露光工程で露光感度が低下し、現像工程時にアドレス電極パターンに欠陥が生じる場合がある。これとは反対に、150質量部以上であれば、現像後に線幅が大きくなって、アドレス電極パターン形成時のパターン形状が不鮮明となり、焼成後、アドレス電極周囲に残留物を発生させるため、上記含有量範囲内の架橋剤を使用するのが好ましい。
【0085】
光開始剤は、露光工程中にラジカルを発生させ、架橋剤の架橋反応を開始することができる化合物であれば、特に限定されない。具体的には、光開始剤として、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2,4−ジエチルチオキサントン(2,4−Diethylthioxanthone)およびビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドなどから構成される群より選択される1種以上の化合物を使用することができる。
【0086】
光開始剤は、架橋剤の含有量に対して所定の比で含まれるのが好ましい。より好ましくは、架橋剤100質量部に対して約10〜50質量部の量で光開始剤が含まれる。この時、光開始剤の含有量が10質量部未満であれば、電極形成用組成物の露光感度が低下し、50質量部以上であれば、露光部の線幅が小さくなったり、非露光部が現像(溶解)されない問題が発生するため、鮮明なアドレス電極パターンが得られない。
【0087】
本発明の実施形態に係る電極形成用組成物は、上記成分の他にそれぞれの目的に応じて添加剤をさらに含むことができる。
【0088】
このような添加剤としては、感度を向上させる増減剤、電極形成用組成物の保存性を向上させる重合禁止剤および酸化防止剤、解像度を向上させる紫外線吸光剤、電極形成用組成物内の気泡を減らす消泡剤、分散性を向上させる分散剤、印刷時に膜の平坦性を向上させるレベリング剤、または窯変特性を付与する可塑剤などが挙げられる。
【0089】
これら添加剤は、必ず使用されるものではなく、必要に応じて使用され、添加の時には量を適切に調節して使用する。添加剤の量は、当業者に公知の範囲内となる。
【0090】
図5(b)に示すように、露光段階(ST2)では、電極層52上にアドレス電極パターンを備えるマスク56を置いて、その上に紫外線光(UV)を照射する。
【0091】
図5(c)に示すように、現像段階(ST3)では、ノズル58を介して現像液を噴射して、露光段階(ST2)で紫外線光照射による感光部分52aを除いた非感光部分52bをエッチングした後、残った感光部分52aを乾燥する。
【0092】
そして、図5(d)に示すように、焼成段階(ST4)では、電極層52の中で露光段階(ST2)および現像段階(ST3)によって残存した電極層52の部分(感光部分52a)を焼成してアドレス電極12を形成する。
【0093】
焼成段階を経て、電極形成用組成物のうち、有機溶媒およびバインダーなどから構成されるビヒクルが除去され、金属質パウダーおよびフリットが残る。
【0094】
したがって、アドレス電極12は、残存する金属質パウダーおよびフリットから構成される。金属質パウダーは、フリットによって固形化されてアドレス電極12の中心部で金属質層12aを形成する。フリットは、金属質層12aの両側エッジ部分で絶縁性ガラス層12bを形成する(図3および図4参照)。
【0095】
このように、焼成段階でフリットが絶縁性ガラス層12bを構成して金属質層12aのエッジ部分に形成されるメカニズムは、典型的なセラミックスの液状焼結(liquid−state sintering)として解釈できる。
【0096】
液状焼結の一段階である粒子再配列時において、金属質層12aを構成する銀パウダー粒子と銀パウダー粒子との間の移動を円滑にするのに、絶縁性ガラス層12bを構成するガラス成分のフリットが主な駆動力となる。そして、フリットは、銀パウダー粒子の間にネック(neck)を形成した後、金属質層12aの外側に排出される。
【0097】
したがって、ガラス成分のフリットが金属質層12aの表面に排出される場合には、銀パウダー粒子のみ存在する開気孔(open pore)の量を顕著に減少させる。
【0098】
そして、ガラス成分のフリットが金属質層12aの両側周縁に排出される場合、絶縁性ガラス層12bを形成することができる。
【0099】
絶縁性ガラス層12bは、金属質層12aの両側エッジ部分を絶縁させることによって、隣接するアドレス電極12の間で発生するマイグレーション現象を防止することができる。
【0100】
また、絶縁性ガラス層12bは、焼成段階(ST4)で金属質層12aのエッジ部分で発生する中心部との収縮荷重の差を緩和することによって、金属質層12aの周縁が浮き上がるエッジカール(edge−curl)の発生を防止することができる。以上上記では、アドレス電極12形成に用いられる電極形成用組成物およびアドレス電極12の形成方法について説明した。本発明の実施形態におけるアドレス電極12形成に用いられる電極形成用組成物およびアドレス電極12の形成方法は、プラズマディスプレイパネルに用いられる他の電極(例えば、走査電極23および維持電極26、中でもこれらのバス電極)にも適用できる。
【0101】
以下、本発明の実施形態に係る電極形成用組成物に対する好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の実施形態において好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施形態が下記の実施例に限定されるわけではない。
【0102】
(実施例1)
SiO、PbO、Bi、ZnO、BおよびBaOを含み、Bに対するBaOの質量比が1であるフリット150g、Agである金属質パウダー520g、メチルメタクリレート/メタクリレート共重合体((MMA/MAA)copolymer)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)およびポリ(イソブチルメタクリレート)(PIBMA)を混合したバインダー50g、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンである光開始剤15gおよびテトラメチロールプロパンテトラアクリレートである架橋剤10gを255mlのテキサノールに添加して撹拌機で混合した。次いで、3−ロールミルを使用して攪拌および分散をさらに行った後、ろ過工程および脱泡工程を経て電極形成用組成物を製造した。
【0103】
上述のように製造された電極形成用組成物は、金属質パウダーを52質量部、およびフリットを15質量部で含む。
【0104】
まず、ガラス基板(10cm×10cm)を洗浄および乾燥した後、上述で得た電極形成用組成物をガラス基板上にスクリーン印刷法で印刷した。そして、電極形成用組成物をガラス基板にスクリーン印刷法によって塗布した後、ドライオーブンで100℃、15分間乾燥して感光性導電膜を形成した。感光性導電膜上に帯状パターンを備えるフォトマスクを、所定の間隔をおいて配置した後、高圧水銀ランプを利用して450mJ/cmの紫外線を照射して露光した。露光後、感光性導電膜(電極形成用組成物)に35℃の0.4質量%炭酸ナトリウム水溶液をノズルを介して1.5kgf/cmの噴射圧力で25秒間噴射して現像することにより、未露光部位を除去してアドレス電極パターンを形成した。
【0105】
次に、電気焼成炉を利用して580℃で15分間焼成して、膜の厚さが約4μmであるパターン化されたアドレス電極を得た。
【0106】
パターン化されたアドレス電極上に異方性導電フィルム(ACF、Anisotropic Conductive Film)およびTCP(Tape Carrier Package)を乗せて仮圧着および本圧着してボンディングすることで、プラズマディスプレイパネルを製造した。
【0107】
(実施例2)
SiO、PbO、Bi、ZnO、BおよびBaOを含み、Bに対するBaOの質量比が1であるフリット50g、Agである金属質パウダー620g、メチルメタクリレート/メタクリレート共重合体((MMA/MAA)copolymer)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)およびポリ(イソブチルメタクリレート)(PIBMA)を混合したバインダー55g、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンである光開始剤15gおよびテトラメチロールプロパンテトラアクリレートである架橋剤10gを240mlのテキサノールに添加したことを除いては、実施例1と同様に実施してプラズマディスプレイパネルを製造した。
【0108】
実施例2で製造された電極形成用組成物は、金属質パウダーを62質量部、フリットを5質量部で含む。
【0109】
(実施例3)
SiO、PbO、Bi、ZnO、BおよびBaOを含み、Bに対するBaOの質量比が1であるフリット100g、Agである金属質パウダー580g、メチルメタクリレート/メタクリレート共重合体((MMA/MAA)copolymer)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)およびポリ(イソブチルメタクリレート)(PIBMA)を混合したバインダー56g、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンである光開始剤14gおよびテトラメチロールプロパンテトラアクリレートである架橋剤10gを240mlのテキサノールに添加したことを除いては、実施例1と同様に実施してプラズマディスプレイパネルを製造した。
【0110】
実施例3で製造された電極形成用組成物は、金属質パウダーを58質量部、フリットを10質量部で含む。上記実施例1〜実施例3では、10gの架橋剤を用いたが、50gの架橋剤を用いることもできる。
【0111】
(比較例1)
SiO、PbO、Bi、ZnO、BおよびBaOを含み、Bに対するBaOの質量比が1であるフリット30g、Agである金属質パウダー650g、メチルメタクリレート/メタクリレート共重合体((MMA/MAA)copolymer)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)およびポリ(イソブチルメタクリレート)(PIBMA)を混合したバインダー57g、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンである光開始剤13gおよびテトラメチロールプロパンテトラアクリレートである架橋剤10gを240mlのテキサノールに添加したことを除いては、実施例1と同様に実施してプラズマディスプレイパネルを製造した。
【0112】
比較例1で製造された電極形成用組成物は、金属質パウダーを65質量部、フリットを3質量部で含む。
【0113】
図6は、本発明の実施例1および比較例1に係るアドレス電極の形状を比較して示す側断面拡大写真である。
【0114】
図6を参照して説明すると、実施例1および比較例1で製造されたプラズマディスプレイパネルのアドレス電極を走査顕微鏡写真で観察し、その結果を図6(b)および図6(a)に示した。
【0115】
図6(b)は、実施例1のアドレス電極12に対する走査顕微鏡写真である。図6(a)は、比較例1のアドレス電極112に対する走査顕微鏡写真である。図6(b)を参照すると、実施例1のアドレス電極12には、金属質層12aの両側周縁に隣接し、同一平面上に形成される絶縁性ガラス層12bが形成されたことが確認できる。反面、図6(a)を参照すると、比較例1のアドレス電極112は、エッジカール112aが形成されたことが確認できる。図6では、図示していないが、実施例2、実施例3で形成されたアドレス電極も実施例1と同様の形状を示す。
【0116】
以上より、本発明の実施形態では、アドレス電極12を形成するのに用いられる電極形成用組成物は、金属質パウダーおよびフリットを含んで構成される。当該電極形成用組成物では、金属質パウダーおよびフリットの組成比を最適化している。よって、アドレス電極12形成過程の焼成時において、液状焼結によって金属質パウダーがフリットによって形状化されて金属質層12aを形成し、フリットは、液状焼結によって金属質層12aの両側周縁に絶縁性ガラス層12bを形成する。結果、アドレス電極12は、金属質層12aおよび絶縁性ガラス層12bによって構成される。これにより、金属質層12aの周縁部分において、電極形成用組成物が隣接する他のアドレス電極12へ拡散してアドレス電極12間の断線および短絡を発生させるマイグレーション現象を、絶縁性ガラス層12bによって防止できる。また、アドレス電極12形成過程の焼成時において、金属質層12aの中心部と金属質層12aのエッジ部分との収縮荷重の差を、絶縁性ガラス層12bによって緩和することにより、金属質層12aの周縁が浮き上がるエッジカールを防止できる。
【0117】
従って、本発明の実施形態に係る電極形成用組成物をアドレス電極12の形成に用いると、アドレス電極12を具備するプラズマディスプレイパネルの製品品質を向上できる。また、本発明の実施形態に係る電極形成用組成物では、組成比が最適化されているので、マイグレーション現象およびエッジカールを防止するとともにアドレス電極12自体の性能を維持できる。本発明の実施形態に係る電極形成用組成物をプラズマディスプレイパネルに具備される他の電極に用いることもできる。これにより、プラズマディスプレイパネル自体の製品品質をさらに向上できる。
【0118】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿って切断した側断面図である。
【図3】図2のIII部分を拡大した写真である。
【図4】図3に示すアドレス電極の平面形状を拡大した写真である。
【図5】本発明の実施形態に係るアドレス電極の形成過程を概略的に示す図面である。
【図6】本発明の実施例1および比較例1に係るアドレス電極の形状を比較して示す側断面拡大写真である。
【符号の説明】
【0120】
10 第1基板(背面基板)
12 第1電極(アドレス電極)
12a 金属質層
12b 絶縁性ガラス層
14 誘電体層(下部誘電体層)
16 隔壁
16a 縦隔壁部材
16b 横隔壁部材
18 放電セル
19 蛍光体層
20 第2基板(前面基板)
21、24 バス電極
22、25 透明電極
23 走査電極
26 維持電極
27 表示電極
28 誘電体層(上部誘電体層)
29 保護膜
52 電極層
52a 感光部分
52b 非感光部分
54 スクイーザー
58 ノズル
112 アドレス電極
112a エッジカール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリット、金属質パウダーおよびビヒクルを含み、
前記金属質パウダーの含有量は、52〜62質量部であり、前記フリットの含有量は、5〜15質量部であることを特徴とする、電極形成用組成物。
【請求項2】
前記フリットは、BおよびBaOを含み、
前記Bに対する前記BaOの質量比は、1以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電極形成用組成物。
【請求項3】
前記金属質パウダーは、銀、金、アルミニウム、銅、ニッケル、クロム、銀−パラジウム合金およびこれらの組み合わせから構成される群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電極形成用組成物。
【請求項4】
前記金属質パウダーは、銀パウダーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の電極形成用組成物。
【請求項5】
前記ビヒクルは、有機溶媒およびバインダーを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電極形成用組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、ケトン類、アルコール類、エーテル系アルコール類、飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類、乳酸エステル類、エーテル系エステル類およびこれらの組み合わせから構成される群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の電極形成用組成物。
【請求項7】
前記バインダーは、アクリル系樹脂、スチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂およびこれらの組み合わせから構成される群より選択されることを特徴とする、請求項5または6に記載の電極形成用組成物。
【請求項8】
所定の間隔を置いて、対向配置される第1基板および第2基板と;
前記第1基板上に配置され、第1方向に沿って形成される第1電極と;
前記第1基板と前記第2基板との間で、前記第1電極から離隔して配置され、前記第1方向と交差する第2方向に沿って形成される第2電極と;
前記第1基板と前記第2基板との間の空間において、複数の放電セルを区画する隔壁と;
各前記放電セル内に形成される蛍光体層と;
を備え、
前記第1電極は、52〜62質量部の金属質パウダーおよび5〜15質量部のフリットから形成されることを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記フリットは、BおよびBaOを含み、
前記Bに対する前記BaOの質量比は、1以上であることを特徴とする、請求項8に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記金属質パウダーは、銀パウダーであることを特徴とする、請求項8または9に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
所定の間隔を置いて、対向配置される第1基板および第2基板と;
前記第1基板上に配置され、第1方向に沿って形成される第1電極と;
前記第1基板と前記第2基板との間で、前記第1電極から離隔して配置され、前記第1方向と交差する第2方向に沿って形成される第2電極と;
前記第1基板と前記第2基板との間の空間において、複数の放電セルを区画する隔壁と;
各前記放電セル内に形成される蛍光体層と;
を備え、
前記第1電極は、前記第1方向の周縁に絶縁性ガラス層を備えることを特徴とする、プラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
前記絶縁性ガラス層は、前記第1電極の両側周縁に沿って帯状に形成されることを特徴とする、請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記第1電極は、金属質層を備え、
前記絶縁性ガラス層は、前記金属質層と同一平面上に形成されることを特徴とする、請求項11または12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記絶縁性ガラス層は、前記金属質層に隣接して形成され、
前記絶縁性ガラス層の表面は、前記金属質層の表面周縁から前記第1基板の表面まで傾斜することを特徴とする、請求項13に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項15】
前記金属質層は、銀パウダーを含むことを特徴とする、請求項13または14に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項16】
前記絶縁性ガラス層は、フリットから構成されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項17】
前記第1電極は、金属質パウダーおよび前記フリットから形成され、
前記金属質パウダーの含有量は、52〜62質量部であり、
前記フリットの含有量は、5〜15質量部であることを特徴とする、請求項16に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項18】
前記フリットは、BおよびBaOを含み、
前記Bに対する前記BaOの質量比は、1以上であることを特徴とする、請求項16または17に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項19】
前記第1電極は、駆動時にアドレス電圧を印加されることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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