説明

電気二重層キャパシタ用電解液およびこれを用いた電気二重層キャパシタ

【課題】電気二重層キャパシタの経時的な性能劣化を飛躍的に改善し、耐電圧が高い電気二重層キャパシタを構成できること。
【解決手段】電解質(A)、有機溶媒(S)及びトリアゾール誘導体(B)を含有してなる電気二重層キャパシタ用電解液を使用する。トリアゾール誘導体(B)としては、3位及び/又は5位がアミノ基で置換された3−アミノ−1,2,4−トリアゾールが好ましい。添加剤(B)は、電解液の重量に対し、0.002〜2重量%添加することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用電解液およびそれを用いた電気二重層キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャパシタの電解質にはテトラエチルアンモニウムのBF塩、トリエチルメチルアンモニウムのBF塩等が電解質として用いられている。特に過酷な条件下で、しかも大電流で使用されるハイブリッド電気自動車等の新しい用途分野では、低温でも安定に使用可能な、長期安定性に優れた電気化学素子が要望されており、このためそれを構成する部材である電解液にも、低温環境下で使用可能であり、かつ高耐電圧(電位窓が広い)である電解液の開発が急務となっている。
こうした状況の中、耐電圧に優れた電気二重層キャパシタ(例えば、特許文献1)、低温特性が改善された電気二重層キャパシタ用電解液(例えば、特許文献2)、高い耐熱性及び耐久性を持ち、広範な温度範囲において凝固を起こさない電気二重層キャパシタ用電解液(例えば、特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−205041号公報
【特許文献2】特開平09−92579号公報
【特許文献3】特開2008−171902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3の電解液を用いると、経時的に混入する水の電気分解で発生する酸や、アニオンが加水分解して発生するハロゲン化水素酸により、電極の集電極の腐食や、電極バインダーの劣化、電解液の分解が引き起こされ、耐電圧が経時的に低くなるという課題があった。
本発明は上記問題点を解決するもので、電極の集電極の腐食や、電極バインダーの劣化、電解液の分解を抑制し、高温負荷特性に優れる高耐電圧を発現する電気二重層キャパシタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、電解質(A)、有機溶媒(S)及びトリアゾール誘導体(B)を含有してなる電気二重層キャパシタ用電解液、および該電気二重層キャパシタ用電解液を用いる電気二重層キャパシタである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電解液を使用することにより、電極の集電極の腐食や、電極バインダーの劣化、電解液の分解を抑制でき、高温負荷特性に優れることから高耐電圧を発現する電気二重層キャパシタを構成できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における電解質(A)は、有機カチオン(C)とアニオン(D)から成る。有機カチオン(C)としては、テトラアルキルアンモニウム系カチオン、テトラアルキルホスホニウム系カチオン、エチレンジアンモニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、ヘキサメチレンイミニウム系カチオン、モルホリニウム系カチオン、ピペラジニウム系カチオン、テトラヒドロピリミジニウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピコリニウム系カチオン、イミダゾリニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、キノリニウム系カチオン、ビピリジニウム系カチオン、その他の脂環式アンモニウムカチオン及び上記2種以上のカチオンが挙げられる。主な例として以下のカチオンが挙げられる。
【0008】
・テトラアルキルアンモニウム系カチオン
テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、メチルトリ−n−プロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルメチルアンモニウム、エチルトリ−n−ブチルアンモニウム、トリ−n−オクチルメチルアンモニウム、エチルトリ−n−オクチルアンモニウム、ジエチルメチル−i−プロピルアンモニウム、トリメチル−1−メチル−プロピルアンモニウム及びトリメチル−2−メチル−プロピルアンモニウムなど。
・テトラアルキルホスホニウム系カチオン
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム及びメチルトリエチルホスホニウムなど。
・エチレンジアンモニウム系カチオン
N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチルエチレンジアンモニウム及びN,N’−ジエチル−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアンモニウムなど。
【0009】
・ピロリジニウム系カチオン
N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム及びピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムなど。
・ピペリジニウム系カチオン
N,N−ジメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム、N−n−ブチル−N−メチルピペリジニウム、N−エチル−N−n−ブチルピペリジニウム及びスピロ−(1,1’)−ビピペリジニウムなど。
【0010】
・ヘキサメチレンイミニウム系カチオン
N,N−ジメチルヘキサメチレンイミニウム、N−エチル−N−メチルヘキサメチルンイミニウム及びN,N−ジエチルヘキサメチレンイミニウムなど。
・モルホリニウム系カチオン
N,N−ジメチルモルホリニウム、N−エチル−N−メチルモルホリニウム、N−ブチル−N−メチルモルホリニウム及びN−エチル−N−ブチルモルホリニウムなど。
・ピペラジニウム系カチオン
N,N,N’,N’−テトラメチルピペラジニウム、N−エチル−N,N’,N’−トリメチルピペラジニウム、N,N’−ジエチル−N,N’−ジメチルピペラジニウム、N,N,N’−トリエチル−N’−メチルピペラジニウム及びN,N,N’,N’−テトラエチルピペラジニウムなど。
【0011】
・テトラヒドロピリミジニウム系カチオン
1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウム及び8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−エチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウムなど。
・ピリジニウム系カチオン
N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−メチル−4−ジメチルアミノピリジニウム及びN−エチル−4−ジメチルアミノピリジニウムなど。
・ピコリニウム系カチオン
N−メチルピコリニウム及びN−エチルピコリニウムなど。
【0012】
・イミダゾリニウム系カチオン
1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(2’−ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(3’−ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(4’−ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリニウム、1,1−ジメチルイミダゾリニウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリニウム及び1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリニウムなど。
【0013】
・イミダゾリウム系化合物カチオン
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(2’−ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(3’−ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−(4’−ヘプチル)イミダゾリウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリウム、1,1−ジメチルイミダゾリウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリウム及び1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリウムなど。
【0014】
・キノリニウム系化合物カチオン
N−メチルキノリニウム及びN−エチルキノリニウムなど。
・ビピリジニウム系カチオン
N−メチル−2,2’−ビピリジニウム及びN−エチル−2,2’−ビピリジニウムなど。
・その他の脂環式アンモニウムカチオン
1−メチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−1−イウム、1−メチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−1−イウム、1−エチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−1−イウム及び1−エチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−1−イウムなど。
【0015】
上記の有機カチオン(C)のうち、電気化学的安定性、溶媒に対する溶解性の観点等から、好ましいものとしては以下のテトラアルキルアンモニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、その他の脂環式アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0016】
アニオン(D)の具体例としては、I、BF、PF、AsF、PCl、BCl、AsCl、SbCl、TaCl、NbCl、PBr、BBr、AsBr、AlBr、TaBr、NbBr、SbF、AlF、ClO、AlCl、TaF、NbF、F(HF)(当該式中、nは1以上4以下の数値を表す)、N(RfSO、C(RfSO、RfSO、RfCO2などが挙げられる。
N(RfSO、C(RfSO、RfSO又はRfCO2で表されるアニオンに含まれるRfは、炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表し、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基及びノナフルオロブチル基などが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基及びヘプタフルオロプロピル基が好ましく、さらに好ましくはトリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
また、カルボン酸アニオンが挙げられ、好ましくは芳香族カルボン酸アニオン、さらに好ましくはフタル酸アニオンなどが挙げられる。
以上のアニオンのうち、電気化学的安定性の観点等から、好ましくは、I、BF、PF又はN(RfSOで表されるアニオン、さらに好ましくはI、PF又はBFで表される対アニオン、特に好ましくはBFで表されるアニオンである。
【0017】
有機カチオン(C)とアニオン(D)から成る有機電解質(A)の具体例としては、アルキルアンモニウムのBF塩及びPF塩並びにイミダゾリウムのBF塩及びPF塩等である。
これらのうち、テトラエチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下TEA・BFと記載)、トリエチルメチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下TEMA・BFと記載)、エチルトリメチルアンモニウム=テトラフルオロボラート(以下、ETMA・BFと記載)、ジメチルピロリジニウム=テトラフルオロボラート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=テトラフルオロボラート(以下EMI・BFと記載)、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム=テトラフルオロボラート(以下、EDMI・BFと記載)、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム=テトラフルオロボラート、1−メチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−1−イウム=テトラフルオロボラート、1−メチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−1−イウム=テトラフルオロボラート(以下、MAOI・BFと記載)及びスピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム=テトラフルオロボラート(以下、SBP・BFと記載)等が好ましい。さらに好ましくはEDMI・BF、MAOI・BF及びSBP・BFである。
【0018】
有機溶媒(S)の具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのうち2種類以上を併用することも可能である。
・エーテル類:鎖状エーテル[炭素数2〜6(ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルなど);炭素数7〜12(ジエチレングリコールジエチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルなど)]、環状エーテル[炭素数2〜4(テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン及び1,4−ジオキサンなど);炭素数5〜18(4−ブチルジオキソラン及びクラウンエーテルなど)]。
・アミド類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド及びN−メチルピロリドンなど。
・鎖状エステル類:酢酸メチル及びプロピオン酸メチルなど。
・ラクトン類:γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びδ−バレロラクトンなど。
・ニトリル類:アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、アクリロニトリル及びベンゾニトリルなど。
・環状炭酸エステル類:プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び2、3−ブチレンカーボネートなど
・鎖状炭酸エステル類:ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジエチルカーボネートなど。
・スルホン類:エチルプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン及び2,4−ジメチルスルホランなど。
・ニトロ類:ニトロメタン及びニトロエタンなど。
・ベンゼン類:トルエン、キシレン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン及び1,4−ジクロロベンゼンなど。
・複素環式類:N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルピロリジノンなど。
・ケトン類:アセトン、2,5ヘキサンジオン及びシクロヘキサンなど。
・リン酸エステル類:トリメチルリン酸、トリエチルリン酸及びトリプロピルリン酸など
【0019】
これらのうち電気化学的安定性の観点等から好ましくは、環状炭酸エステル類、鎖状炭酸エステル類、ラクトン類、鎖状エステル類、ニトリル類、及びスルホン類であり、更に好ましくはプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、スルホラン、アセトニトリル及びγ−ブチロラクトンである。
【0020】
トリアゾール誘導体(B)としては、分子量350以下のベンゾトリアゾール誘導体(B1)及びアミノ基を有するトリアゾール誘導体(B2)が挙げられる。具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのうち2種類以上を併用することも可能である。
ベンゾトリアゾール誘導体(B1)としては、5−メチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0021】
アミノ基を有するトリアゾール誘導体(B2)は、アミノ基を有し、高温負荷特性の観点から、1〜5個のアミノ基を有するトリアゾール誘導体であることが好ましい。更に好ましくは1〜2個のアミノ基を有するトリアゾール誘導体である。
トリアゾール誘導体(B2)が有するアミノ基としては、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びジプロピルアミノ基等)が挙げられる。これらのうち、アミノ基が好ましい。
【0022】
前記トリアゾール誘導体(B2)としては、1,2,4−トリアゾール誘導体[3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3,4,5−トリアミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−エチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−プロピル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−ブチル−1,2,4−トリアゾール、1−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−エチル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジエチル−4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,4−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、4−ジメチルアミノ−1,2,4−トリアゾール及び4−メチルアミノ−1,2,4−トリアゾール等];1,2,3−トリアゾール[1−アミノ−1,2,3−トリアゾール、2−アミノ−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1,2,3−トリアゾール及び1,2−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール等]が挙げられる。
これらのうち、耐電圧性の観点から、1,2,4−トリアゾール誘導体が好ましく、その中でも3位及び/又は5位がアミノ基で置換された1,2,4−トリアゾール誘導体が更に好ましい。
3位及び/又は5位がアミノ基で置換された1,2,4−トリアゾールとしては、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−エチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−プロピル−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−5−ブチル−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0023】
これらトリアゾール誘導体(B)の内、溶解性、高温負荷特性および耐電圧性の観点から好ましいのは、アミノ基を有するトリアゾール誘導体である。更に好ましいのは3位及び/又は5位がアミノ基で置換された1,2,4−トリアゾール誘導体であり、特に好ましいのは、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールである。
【0024】
トリアゾール誘導体(B)の添加量は、低温での溶解性、高温負荷特性および耐電圧性の観点から電解液の重量に基づいて、0.002〜2重量%であり、0.003〜1重量%が好ましく、0.005〜0.3重量%がさらに好ましい。
【0025】
本発明の電解液中の含水量は、電気化学的安定性の観点から、電解液の重量に基づいて300ppm以下が好ましく、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。この範囲であると、電気化学キャパシタの経時的な性能低下を抑制できる。
電解液中の含水量はカールフィッシャー法(JIS K 0113−2005、電量滴定方法)で測定することができる。電解液中の水分を上記の範囲にする方法としては、あらかじめ十分に乾燥した電解質(A)と、あらかじめ十分に脱水した非水溶媒とを使用する方法等が挙げられる。
乾燥方法としては、減圧下加熱乾燥(例えば2.5kPa減圧下、150℃で加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、再結晶等が挙げられる。
脱水方法としては、減圧下加熱脱水(例えば10kPaで加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、モレキュラーシーブ(ナカライテスク製、3A1/16等)、活性アルミナ粉末などの脱水剤を使用する方法等が挙げられる。
【0026】
また、これらの他に、電解液を減圧下加熱脱水(例えば10kPa減圧下、100℃で加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、モレキュラーシーブ、活性アルミナ粉末などの除水剤を使用する方法等が挙げられる。これらの方法は、それぞれ単独で行ってもよいし、組み合わせて行ってもよい。
【0027】
電気二重層キャパシタの基本構造としては、2つの分極性電極の間にセパレーターを挟み、電解液を含浸させたものである。分極性電極の主成分は、電解液に対して電気化学的に不活性で、かつ、適度な電気伝導度を有することから活性炭、グラファイト、ポリアセン系有機半導体などの炭素質物質が好ましく、上記のように、正極と負極の少なくとも一方は炭素質物質である。電荷が蓄積する電極界面が大きい点から、窒素吸着法によるBET法により求めた比表面積が10m2/g以上の多孔性炭素物質(例えば活性炭)がさらに好ましい。多孔性炭素物質の比表面積は、目的とする単位面積あたりの静電容量(F/m2)と、高比表面積化に伴う嵩密度の低下を勘案して選択されるが、窒素吸着法によるBET法により求めた比表面積が30〜2,500m2/gのものが好ましく、体積あたりの静電容量が大きいことから、比表面積が300〜2,300m2/gの活性炭が特に好ましい。
【0028】
本発明の電気二重層キャパシタの態様としては、コイン型、捲回型、角形のものがあげられる。本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、いずれの電気二重層キャパシタにも適用できる。
【0029】
本発明の電解液は、公知の方法等で調製することができ、電解液中の電解質(A)の濃度は、0.5〜2.0mol/Lが好ましく、0.7〜1.7mol/Lが更に好ましく、0.8〜1.5mol/Lがより好ましい。(A)の濃度が0.5mol/L以上では、電解液の電導度が十分であり、また、2.0mol/L以下では、低温特性が良好であるとともに、経済性に優れる。
【実施例】
【0030】
次に本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」を意味する。
以下の実施例において、H−NMR、19F−NMR、及び13C−NMRの測定は、下記の方法で行った。
1H−NMRの測定条件機器:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz。
19F−NMRの測定条件機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチル
スルホキシド、周波数:300MHz
13C−NMRの測定条件機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチル
スルホキシド、周波数:300MHz
また、銀イオン含量は、原子吸光分光光度計(株式会社島津製作所AA−6200)で、ヨウ素イオン含量は比濁法により定量した。
【0031】
<製造例1> <<TEA・BF(A−1)の製造>>
・ヨウ化物塩の合成
トリエチルアミン(東京化成工業(株)製)102部、アセトン300部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化エチル171部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、テトラエチルアンモニウムのヨウ化物塩を257部得た。
【0032】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解し、AgBFメタノール溶液を得た。
【0033】
・BF塩の作成
上記のAgBF溶液745部をテトラエチルメチルアンモニウムのヨウ化物塩257部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を186部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を162部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶はTEA・BF(A−1)であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0034】
<製造例2> <<TEMA・BF(A−2)の製造>>
・ヨウ化物塩の合成
トリエチルアミン(東京化成工業(株)製)102部、アセトン300部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル156部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、トリエチルメチルアンモニウムのヨウ化物塩を243部得た。
【0035】
・BF塩の作成
製造例1で作成したAgBF溶液745部をトリエチルメチルアンモニウムのヨウ化物塩243部とメタノール232部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を186部得た。結晶にメタノール300部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を152部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶はTEMA・BF(A−2)であった。H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
【0036】
<製造例3> <<ETMA・BF(A−3)の製造>>
・ヨウ化物塩の合成
N,N−ジメチルエチルアミン(東京化成工業(株)製)110部、アセトン339部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル234部をゆっくりと滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し、80℃減圧にて乾燥を行い、エチルトリメチルアンモニウムのヨウ化物塩322部を得た。
【0037】
・BF塩の作成
製造例1で作成したAgBFメタノール溶液1117部を上記のエチルトリメチルアンモニウムのヨウ化物塩322部及びメタノール353部の混合溶液に対してゆっくりと滴下しながら、混合した後、濾過し濾液を回収した。回収した濾液中にAgBF溶液あるいは混合溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。
80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶262部を得た。結晶中の銀イオンは10ppm以下、ヨウ化物イオン含量は5ppm以下であった。結晶にメタノール3000部を加えて60℃で溶解させた後、−10℃に冷却し12時間静置し再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を124部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、この白色結晶はETMA・BF(A−3)であった。H−NMRの積分値から、純度は99モル%であった。
【0038】
<製造例4> <<EMI・BF(A−4)の製造>>
1−エチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)96部、ジメチル炭酸135部及びメタノール192部を冷却コンデンサ付きステンレス製オートクレーブに仕込み均一に溶解させた。ついで130℃まで昇温し反応を開始した。圧力は最初0.45MPaであったが、炭酸ガスの発生で徐々に上昇したので、適宜冷却コンデンサの上部からガス抜きを行い、圧力を0.8MPa以下に調節した。60時間後30℃まで冷却して、反応液を1H−NMR分析した結果、1−エチルイミダゾールが消失し、1−エチル−3−メチ
ルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩がほぼ定量的に生成していることがわかった。得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩/メタノール/ジメチル炭酸溶液415部に、攪拌下に42重量%ホウフッ化水素酸水溶液205部を25℃で約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い、炭酸ガスの泡が発生した。滴下が終了して泡の発生がおさまった後、2.5kPa、150℃で、溶媒を全量留去し、淡黄色液体194部を得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、得られた液体はEMI・BF4(A−4)であった。H−NMRの積分値から、純度は99モル%であった。
【0039】
<製造例5> <<EDMI・BF(A−5)の製造>>
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素ガス導入管を取り付けた反応フラスコにエチルアミン(70%水溶液)31部とアンモニア(28%水溶液)32部の混合液を仕込み、撹拌しながら均一溶液にした。温度を45℃以下に保ちながら滴下ロートからグリオキザール(40%水溶液)69部及びアセトアルデヒド(30%水溶液)71部から構成される混合液を滴下した。グリオキザールとアセトアルデヒドの混合液の滴下は5時間かけて行い、滴下終了後、40℃で1時間反応させた。次に、温度80℃、常圧(大気圧)から徐々に5.0kPaまで減圧し脱水を行い、続いて、温度105℃、圧力1.0kPaの条件で単蒸留して、1−エチル−2−メチルイミダゾールを得た。
【0040】
次に、還流コンデンサ付きステンレス製のオートクレーブに、得られた1−エチル−2−メチルイミダゾール100部、ジメチル炭酸135部及びメタノール192部を仕込み均一に溶解させた。次いで、130℃まで昇温し、圧力を0.8MPa以下に調節し、80時間反応を行い、反応混合物を得た。反応混合物のH−NMR分析を行ったところ、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩が生成していることがわかった。
【0041】
得られた反応混合物427部をフラスコに移し、これに、撹拌下において42%ホウフッ化水素酸水溶液207部を室温(約25℃)下、約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い炭酸ガスが発生した。泡(炭酸ガス)の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶剤(メタノール及び水)を全量除去して、黄褐色透明の固体物質82部を得た。この固体物質をH−NMR、19F−NMR及び13C−NMR分析したところ、主成分はEDMI・BF(A−5)であった。H−NMRの積分値から、純度は99モル%であった。
【0042】
<製造例6> <<MAOI・BF(A−6)の製造>>
・ヨウ化物塩の合成
1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)113部、アセトン339部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル156部をゆっくりと滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し、80℃減圧にて乾燥を行い、1−メチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−1−イウムのヨウ化物塩255部得た。
【0043】
・AgBF溶液の作成
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBFメタノール溶液を得た。
【0044】
・BF塩の作成
AgBFメタノール溶液745部を上記の1−メチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−1−イウムのヨウ化物塩253部及びメタノール253部の混合溶液に対してゆっくりと滴下しながら、混合した後、濾過し濾液を回収した。回収した濾液中にAgBF溶液あるいは混合溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶206部を得た。結晶中の銀イオンは10ppm以下、ヨウ化物イオン含量は5ppm以下であった。結晶にメタノール600部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置し再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い、白色結晶を147部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、白色結晶はMAOI・BF(A−6)であった。H−NMRの積分値から、純度は99モル%であった。
【0045】
<製造例7> <<SBP・BF(A−7)の製造>>
ピロリジン100部、炭酸カリウム97部をテフロン(登録商標)コーティングしたオー
トクレーブに仕込み、1,5−ジクロロペンタン198部を加え、90℃で8時間反応を
行った。この反応溶液に42重量%のホウフッ化水素酸水溶液294部を25℃で約30
分かけて徐々に滴下した。滴下が終了して、泡の発生がおさまった後、2.5kPa、100℃で、溶媒を全量留去して、固体200部が得られた。この固体をエタノール、2−
プロパノールを用いて晶析を2回行い、白色固体を155部得た。H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、白色固体はSBP・BF(A−7)であった。H−NMRの積分値から、純度は99モル%であった。
【0046】
実施例1
製造例1のTEA・BF(A−1)208.8gを脱水したプロピレンカーボネートに均一溶解して全体を1リットルに調製した(電解質濃度1.0mol/L)。その後、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール[東京化成工業(株)製](B2−1)を電解液の重量に対し、0.01重量%混合し、本発明の電解液(E−1)を得た。
【0047】
実施例2〜32および比較例1〜9
実施例1と同様に、表1に記載の電解質(A)を脱水した溶媒(S)に均一溶解させて全体を1リットルに調製した後、トリアゾール誘導体(B)または比較化合物(B’−1)を表1記載の濃度となるように配合することにより、電解液(E−2)〜(E−32)及び(E’−1)〜(E’−9)を作製した。
【0048】
本発明の実施例1〜32の電解液、及び比較例1〜9の比較用電解液について、下記の方法で抵抗変化率及びガス発生量を測定して、その結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

なお、表1中の略称は以下のとおりである。
(A−1):TEA・BF
(A−2):TEMA・BF
(A−3):ETMA・BF
(A−4):EMI・BF
(A−5):EDMI・BF
(A−6):MAOI・BF
(A−7):SBP・BF
(B2−1):3−アミノ−1,2,4−トリアゾール
(B2−2):3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール
(B2−3):2−アミノ−1,2,3−トリアゾール
(B1−1):2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
(B’1−1):1,2,4−トリアゾール
(S−1):プロピレンカーボネート
(S−2):γ−ブチロラクトン
【0050】
・電気二重層キャパシタの作成
粉状の活性炭(関西熱化学(株)製 「MSP−20」)をカーボンブラックおよびポリ
テトラフルオロエチレン粉(PTFE)と混合した。重量比は、10:1:1とした。
【0051】
得られた混合物を乳鉢にて5分程度練り、これをロールプレスで圧延して活性炭シートを得た。活性炭シートの厚さは、400μmとした。この活性炭シートを20mmΦのディスク状に打ち抜き、活性炭電極を得た。
【0052】
得られた活性炭電極(正極、負極及び参照極)を用いて、3電極式電気二重層キャパシタ(パワーシステム(株)社製)を組み立てた。これらセルを真空中170℃で7時間乾燥し、30℃まで冷却した。乾燥雰囲気中で<実施例1〜32>、<比較例1〜9>の電解液をセルに注入し、ついで真空含浸を行い、電気二重層キャパシタを作製した。
【0053】
・耐久試験および試験後の抵抗変化率
作成した電気二重層キャパシタに充放電試験装置(パワーシステム(株)製、「CDT−5R2−4」)を接続し、設定電圧まで25mAにて定電流充電を行い、充電開始から3600秒後に25mAにて定電流放電を行った。これを設定電圧2.8V、85℃で150サイクル実施し、初期の抵抗、150サイクル後の抵抗から、抵抗変化率(%)を以下の式で求め、耐電圧性の指標とした。
抵抗変化率(%)={(Y150)×100/(Y)}
ただし、Y:耐久試験前の初期抵抗値、Y150:150サイクル後の抵抗値、である。
抵抗変化率が小さいほど、電極の集電極の腐食や、電極バインダーの劣化を抑制でき、電気二重層キャパシタが高耐電圧性を有することを示す。
【0054】
・ガス発生量の測定
サイクル試験後の3電極式電気二重層キャパシタから発生したガスを、密閉したキャパシタから、体積を測定できる注射器に捕集し、その体積を測定した。ガス発生量(cm)が少ないほど、電解液の分解を抑制でき、電気二重層キャパシタが高耐電圧性を有することを示す。
【0055】
・高温負荷特性評価
上記耐久試験において、評価条件を設定電圧2.3V、105℃に変更した以外は同様にして求めた150サイクル後の抵抗値(Z150)から、高温負荷特性を以下の式で求め、耐熱性の指標とした。その結果を表1に示した。
高温負荷特性=(Y150)/(Z150
高温負荷特性評価値が大きいほど、高温での電極の集電極の腐食や、電極バインダーの劣化を抑制でき、電気二重層キャパシタが高耐熱性を有することを示す。
【0056】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜32の電解液を使用した電気二重層キャパシタは、比較例1〜9の電解液を使用した電気二重層キャパシタに比べてサイクル試験後の抵抗増加率が小さく、高温負荷特性が高く、ガス発生量が少ないことから、耐電圧が高い。よって本発明の電解液は電気二重層キャパシタの経時的な性能劣化を飛躍的に改善し、耐電圧が高い電気二重層キャパシタを構成できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の電気二重層キャパシタ用電解液は、耐電圧が高いため蓄電容量を大きくでき、また、耐久性が高いため、産業機械用途、自動車アシスト電源用途ならびに風力発電等の蓄電用途に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質(A)、有機溶媒(S)及びトリアゾール誘導体(B)を含有してなる電気二重層キャパシタ用電解液。
【請求項2】
トリアゾール誘導体(B)が、ベンゾトリアゾール誘導体(B1)及びアミノ基を有するトリアゾール誘導体(B2)から選ばれる1種以上である請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
アミノ基を有するトリアゾール誘導体(B2)が、3位及び/又は5位がアミノ基で置換された1,2,4−トリアゾールである請求項2に記載のキャパシタ用電解液。
【請求項4】
アミノ基を有するトリアゾール誘導体(B2)が、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールである請求項2又は3に記載のキャパシタ用電解液。
【請求項5】
トリアゾール誘導体(B)が、電解液の重量に対し、0.002〜2重量%添加されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタ用電解液を用いる電気二重層キャパシタ。

【公開番号】特開2012−109539(P2012−109539A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222779(P2011−222779)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】