説明

電気二重層キャパシタ

【課題】高容量、低抵抗でコンパクトな電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】電極板12,13と絶縁板11とが積層された積層体14と、電解液15と、電解液15が充填されない内部空間17を形成する保液スペーサ16とを収納し、電極板12,13に接続される端子40,41を有するラミネートセル10a,10bと放熱板30とが交互に積層された電気二重層キャパシタ100であって、保液スペーサ16の下端19は放熱板30と重ねあわされ、保液スペーサ16の保液スペーサ16と重なり合わされていない部分の一方の側に圧力調節弁22が設けられ、保液スペーサ16の保液スペーサ16と重ね合わされていない部分の他方の側は圧力調節弁22と反対方向に向かって膨らんでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタは、比較的大きな容量を持ち、長寿命かつ急速な充放電が可能なので、セルモータ起動用電源やパソコンのバックアップ電源、二次電池の補充又は代替に用いられている。また、近年は電気自動車に搭載された二次電池の補助として大きな電力を充放電することにも多く用いられるようになってきている。
【0003】
電気二重層キャパシタは、分極性電極と集電電極から構成される正極体と負極体とをそれぞれセパレータを介して交互に積層した積層体を構成し、その積層体と電解液をアルミラミネートフィルムの容器に入れ、容器からそれぞれの極体に接続された端子を出したラミネートセルを複数積層したものが多く用いられている。
【0004】
電気二重層キャパシタは、容器の内部に保持される電解液の量が多いほど電気容量を大きくすると共に抵抗を下げることができるが、容器内部に保持されている電解液は、電気二重層キャパシタの温度が上昇すると一部がガスとなり、容器の内圧が上昇してしまう。このため、容器の上部に電解液のガスをためておく内部空間を構成する剛性の高い山形の蓋あるいは保液スペーサが配置されている。保液スペーサは、ある程度の剛性を持ち、山形の形状を保持し、その上部にガスを保持する内部空間を設けるように構成されると共に、ガスの圧力が上昇した際にガスを外部に排出する圧力調節弁が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、運転中に電気二重層キャパシタの温度の上昇を抑えることができるように、容器の間に放熱板を挟むように容器と放熱板とを交互に積層する構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−35049号公報
【特許文献2】特開2003−133188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電気二重層キャパシタの電気容量を増やすために内部に収納する電解液の体積を増加させた場合、容器の内容積が同じ場合には、保液スペーサの上部の内部空間体積が減少してしまい、圧力調節弁からガスを排出する際に電解液を一緒に外部に排出してしまうという問題があった。このため電解液の体積を増加させる場合には、保液スペーサ上部の内部空間容積を同時に増加させることが必要となる。しかし、ラミネートセルの厚さを厚くして容器の内容積を大きくすることは、電気二重層キャパシタのサイズが大きくなってしまい、車両に搭載する場合に大きな搭載スペースが必要となってしまうという問題があった。特に、ラミネートセルの間に放熱板を挟みこんでいる電気二重層キャパシタでは、放熱板の分だけサイズが大きくなるので、更に大きなスペースが必要となってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、高容量、低抵抗でコンパクトな電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気二重層キャパシタは、電極板と絶縁板とが積層された積層体と、電解液と、電解液が充填されない内部空間を形成する保液スペーサとを収納し、前記電極板に接続される端子を有するラミネートセルと放熱板とが交互に積層された電気二重層キャパシタであって、前記保液スペーサの下端は前記放熱板と重ねあわされ、前記保液スペーサの前記保液スペーサと重なり合わされていない部分の一方の側に圧力調節弁が設けられ、前記保液スペーサの前記保液スペーサと重ね合わされていない部分の他方の側は前記圧力調節弁と反対方向に向かって膨らんでいること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、高容量、低抵抗でコンパクトな電気二重層キャパシタを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における電気二重層キャパシタの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態における電気二重層キャパシタの詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本実施形態の電気二重層キャパシタ100について説明する。図1に示すように、本実施形態の電気二重層キャパシタ100はラミネートセル10a,10bと放熱板30とが交互に積層されており、各ラミネートセル10a,10bには端子40,41が取り付けられている。隣接するラミネートセル10a,10bの各端子40,41は正極、負極の各極性でそれぞれ直列となるように接続されている。図1に示すように、ラミネートセル10a,10bの内部には電極板と絶縁板とが積層された積層体14と、電解液15とが収納されており、ラミネートセル10a,10bの上部には電解液15が充填されない内部空間17を形成する保液スペーサ16が配置されている。
【0013】
ラミネートセル10a,10bの保液スペーサ16の一方の面には電解液15がガス化してラミネートセル10a,10bの内圧が上昇した際にガスを外部に排出する圧力調節弁22が取り付けられている。この圧力調節弁22の設けられている面は、圧力調節弁22が圧力を開放する際の膨らみ変形のスペースを確保するように、放熱板30に接するラミネートセル10a,10bの表面からラミネートセル10a,10bの中心方向に控えた位置となっている。そして、図1に示すように、電気二重層キャパシタ100は、ラミネートセル10a,10bの圧力調節弁22がある側が外側となるように放熱板30を介して2つのラミネートセル10a,10bを背中合わせに積層された一対のラミネートセル組10をその間に放熱板30を挟んで複数積層した構造となっている。一対のラミネートセル組10の各圧力調節弁22の間には圧力調節弁22が動作するために十分な間隔が保持される。
【0014】
図2を参照しながら、本実施形態の電気二重層キャパシタ100の構成の詳細について説明する。電気二重層キャパシタ100は、正電極板12と負電極板13とこれらの間を絶縁する絶縁板13を積層して一つのユニットとし、絶縁板13を介してこのユニットを複数積層した積層体14をアルミラミネート等の可撓性のシート状の素材で形成された容器23の中に収納したものである。容器23は袋状となっており、その内部の上側にはプラスチックや樹脂等のある程度の剛性があり、その形状を保持することができる材料で形成された保液スペーサ16が取り付けられている。
【0015】
保液スペーサ16は、頂部上面が平面の山形で、圧力調節弁22が取り付けられている前面16aと圧力調節弁22が設けられていない背面16bとを備えている。前面16aは圧力調節弁22の設けられている垂直面と垂直面から容器23の厚さが広がる方向に向かう傾斜面と傾斜面に続き垂直下側に延びる下端19とを含んでいる。背面16bは、頂部上面から垂直に伸びる垂直面と、垂直面から放熱板30の厚み分だけ容器23の厚み方向の中心側に向かう段部16cと、段部16cから垂直下側に向って延びる下端19を含んでいる。
【0016】
ラミネートセル10a,10bはアルミラミネートの袋状の容器23の中に積層体14と電解液15とを入れたのち、保液スペーサ16を入れ、保液スペーサ16の頂部から端子40,41を貫通させて容器23の外に突出させ、保液スペーサ16と端子40,41の左右両面から袋状の容器23の開口部を熱融着することで、容器23と保液スペーサ16及び端子40,41の間を気密に密閉したものである。そしてこのラミネートセル10a,10bは各保液スペーサ16の各背面16bが向き合うように放熱板30を介して重ねあわされ、一対のラミネートセル組10となり、放熱板30を介してこのラミネートセル組10を積層して電気二重層キャパシタ100となる。各放熱板30は下端19の部分で保液スペーサ16と重なり合うよう積層されている。
【0017】
図2に示すように、各ラミネートセル10a,10bの保液スペーサ16の背面16bの放熱板30と重ねあわされる下端19以外の部分は、その外表面が各ラミネートセル10a,10bに向って互いに膨らんでいる。つまり、保液スペーサ16の背面16bの放熱板30と重ねあわされる下端19以外の部分は、前面16aと反対方向に向かって階段状に突出している。そして、保液スペーサ16の背面16b側の内面には段状の窪み16dが形成されている。この段状の窪み16dは、図2に示す保液スペーサ16の下端19の内表面を示す線25よりも背面16b側に窪んでいるため、保液スペーサ16の背面16bの段部16cがなく、背面16bが平面として構成された場合よりも窪み16dの分だけ保液スペーサ16の内部空間17の体積が大きくなる。
【0018】
このように、本実施形態では、保液スペーサ16との下端19以外の部分を圧力調節弁22と反対方向に向かって膨らますことによって、保液スペーサ16の内部空間17の体積を大きくすることができる。これにより、電解液15の余剰量を増加でき、かつ、発生するガスを一時的に溜める緩衝機能を強化することができる。また、この内部空間17はラミネートセル10a,10bの間の放熱板30の厚みの部分に向かって保液スペーサ16の背面16bを階段状に突出させることで形成しているので、放熱板30の厚みによって生じたデッドスペースを保液スペーサ16の内部空間17の体積を増加させることに使うものであることから、電気二重層キャパシタ100全体の大きさを保ったまま、内部空間17の体積を大きくすることができる。これにより、本実施形態は、高容量、低抵抗でコンパクトな電気二重層キャパシタ100を提供することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 ラミネートセル組、10a,10b ラミネートセル、12 正電極板、13 負電極板、13 絶縁板、14 積層体、15 電解液、16 保液スペーサ、16a 前面、16b 背面、16c 段部、16d 窪み、17 内部空間、19 下端、22 圧力調節弁、23 容器、25 線、30 放熱板、40,41 端子、100 電気二重層キャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板と絶縁板とが積層された積層体と、電解液と、電解液が充填されない内部空間を形成する保液スペーサとを収納し、前記電極板に接続される端子を有するラミネートセルと放熱板とが交互に積層された電気二重層キャパシタであって、
前記保液スペーサの下端は前記放熱板と重ねあわされ、前記保液スペーサの前記保液スペーサと重なり合わされていない部分の一方の側に圧力調節弁が設けられ、前記保液スペーサの前記保液スペーサと重ね合わされていない部分の他方の側は前記圧力調節弁と反対方向に向かって膨らんでいること、
を特徴とする電気二重層キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−234973(P2012−234973A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102661(P2011−102661)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】