説明

電気信号伝送用ケーブル

【課題】製造に要する時間および製造コストを増大させることなく放射ノイズを低減し、良好な信号伝送が可能となる電気信号伝送用ケーブルを提供する。
【解決手段】複数の配線3、5と、複数の配線3,5の延びる方向における両端に設けられた接続部1A、1Bと、複数の配線3、5を覆う導電部材4と、を備え、複数の配線3、5は、絶縁材料で被覆された第1配線3と、少なくとも一部が被覆されていない第2配線5と、を備え、導電部材4は第2配線5の被覆されていない領域と電気的に接続され、第2配線5はグランド電位が供給される配線である電気信号伝送用ケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気信号伝送用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高速化、高性能化などに伴い、電子機器からの放射ノイズによる他の電子機器への影響が問題となっている。この放射ノイズによる他の電子機器への影響はEMI(Electro Magnetic Interference)と呼ばれ、電子機器の誤動作を引き起こす。
【0003】
電子機器からの放射ノイズは、プリント回路板やプリント回路板間に接続されるケーブルなどから発生する。特に、プリント回路板間に電気信号を伝送するために接続されたケーブルは、近年の伝送信号の高速化により放射ノイズの放射源としての問題が大きくなっており、ケーブルからの放射ノイズをいかに抑制するかが問題となっている。
【0004】
従来、ケーブルからの放射ノイズを抑制する技術としては、2枚のプリント回路板を電気的に接続して電気信号を送受信するケーブルを、グラウンドとほぼ同じ電位を有する導電性部材に挟まれた空間に配置して、ケーブルからの放射ノイズを低減させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−128205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、グラウンドとほぼ同じ電位を有する導電性部材が、シールドボックスにねじ止めすることによって固定され、ケーブル以外の部品点数が増加し、また特別な加工が必要となり、製造に要する時間および製造コストの増大を招くことがあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであって、製造に要する時間および製造コストを増大させることなく放射ノイズを低減し、良好な信号伝送が可能となる電気信号伝送用ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による電気信号伝送用ケーブルは、複数の配線と、前記複数の配線の延びる方向における両端に設けられた接続部と、前記複数の配線を覆う導電部材と、を備え、前記複数の配線は、絶縁材料で被覆された第1配線と、少なくとも一部が被覆されていない第2配線と、を備え、前記導電部材は前記第2配線の被覆されていない領域と電気的に接続され、前記第2配線はグランド電位が供給される配線である電気信号伝送用ケーブルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造に要する時間および製造コストを増大させることなく放射ノイズを低減し、良好な信号伝送が可能となる電気信号伝送用ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルの一構成例を説明するための図である。
【図2】比較例に係る電気信号伝送用ケーブルの一構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルは、複数の配線を備えるケーブル2と、ケーブル2の両端部に設けられたコネクタ(接続部)1A、1Bを備えている。
【0012】
コネクタ1A、1Bは、例えば回路基板に接続され、電気信号伝送用ケーブルを介して回路基板間で電気信号が送信および受信される。ケーブル2は、絶縁材料で被覆された配線(第1配線)3と、絶縁材料で被覆されていない配線(第2配線)5とを備えている。配線3は例えばツインペアケーブルである。配線5は、ケーブル2が延びる方向と略直交する方向において、ケーブル2の両端に配置された裸線である。
【0013】
ケーブル2の周囲は、配線5と導電部財4とが電気的に接続されるように、導電部材4に覆われている。本実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルでは、導電部材4は導電性テープである。導電テープは、配線5と電気的に接続されているため、配線5と導電位となる。
【0014】
上記のように、配線5を裸線とし、ケーブル2が延びる方向と略直交する方向における端部に配置することによって、導電部材4と接触可能となる領域を大きくすることができ、確実に導電部材4と配線5とを同電位にすることができる。
【0015】
ここで、配線5にグランド電位が供給されると、導電部材4もグランド電位となる。したがって、ケーブル2の周囲が、グランド電位である導電部材4に覆われることになる。上記のように、ケーブル2の配線の一部を絶縁材料で被覆されていない裸線とし、この裸線にグランド電位を供給することによって、特別の部品を用いたり、ケーブル2に特別な加工したりすることなく、ケーブル2の周囲を覆う導電部材4にグランド電位を供給することができる。ケーブル2をグランド電位が供給された導電部材4で覆うことによって、ケーブル2からの放射ノイズの影響を低減させることができる。
【0016】
図2に比較例に係る電気信号伝送用ケーブルを示す。なお、以下の説明において、図1に示す電気信号伝送用ケーブルと同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0017】
図2に示すように、比較例に係る電気信号伝送用ケーブルは、ケーブル2と、ケーブル2の両端部に設けられたコネクタ1A、1Bと、を備えている。ケーブル2は、複数の配線3を備えている。配線3は絶縁材料で被覆されている。すなわち、比較例に係る電気信号伝送用ケーブルは、裸線である配線5を備えていない。比較例に係る電気信号伝送用ケーブルでは、ケーブル2が延びる方向と略直交する方向において、ケーブル2の両端に配置された配線が裸線ではなく、絶縁材料で被覆された配線3である。グランド電位は被覆された配線3に供給される。
【0018】
ケーブル2の周囲は、導電部材4で覆われている。ケーブル2は、さらに、導電部材4上から、導電性固定部材7によって固定されている。導電性固定部材7は外部グランド6に電気的に接続されている。したがって、導電部材4には、導電性固定部材7を介して、外部グランド6からグランド電位が供給される。
【0019】
図2に示すように、導電部材4にグランド電位を供給する場合、部品点数が増加するとともに、製造コストが増加し、また、導電性固定部材7を外部グランド6に接続するとともに、導電部材4と電気的に接続されるように固定する必要があり、製造に要する時間が増大する。
【0020】
これに対し、本実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルは、配線5として裸線を備えたケーブル2を導電部材4で覆い、配線5にグランド電位を供給することのみによって、ケーブル2をグランド電位の導電部材4で覆うことが可能である。しかも、導電部材4として導電テープを用いることにより、導電テープをケーブル2の周囲に貼り付けることで、ケーブル2を導電部材4で覆うことができるため容易である。
【0021】
すなわち、本実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルによれば、製造に要する時間および製造コストを増大させることなく放射ノイズを低減し、良好な信号伝送が可能となる電気信号伝送用ケーブルを提供することができる。
【0022】
本実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルが、例えば、差動小振幅信号を用いる機器に搭載される場合、差動小振幅信号は振幅が小さいためノイズの影響を受けやすく放射ノイズの低減が課題となることがある。
【0023】
また、差動小振幅信号がケーブルに供給される場合、高速伝送により伝送信号の周波数が増大するため、放射ノイズの低減が課題となることがある。このような課題を解決するために、本実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルを用いることにより、上記のように簡易な方法で放射ノイズを低減し、良好な信号伝送を実現することが可能となる。
【0024】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0025】
例えば、上記実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルのケーブル2は導電部材4としての導電性テープで覆われていたが、導電部材4は導電性テープに限らず、導電性材料の箔等、ケーブル2を覆うことができる導電部材であればよい。
【0026】
また、上記実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルの配線5は、裸線であったが、配線5は少なくともその一部が被覆されていないものであれば良く、被覆されていない部分が導電部材4と電気的に接続していれば上記実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルと同様の効果を得ることができる。
【0027】
さらに、配線5は、電気信号伝送用ケーブルの両端に配置される必要はなく、一方の端部に配置されていてもよく、配線3の間に配置されていても良い。いずれの場合であっても、配線5の被覆されていない部分が導電部材4と電気的に接続されれば、上記実施形態に係る電気信号伝送用ケーブルと同様の効果を得ることができる。
【0028】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1A.1B…コネクタ(接続部)、3…配線(第1配線)、4…導電部材、5…配線(第2配線)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線と、
前記複数の配線の延びる方向における両端に設けられた接続部と、
前記複数の配線を覆う導電部材と、を備え、
前記複数の配線は、絶縁材料で被覆された第1配線と、少なくとも一部が被覆されていない第2配線と、を備え、
前記導電部材は前記第2配線の被覆されていない領域と電気的に接続され、前記第2配線はグランド電位が供給される配線である電気信号伝送用ケーブル。
【請求項2】
前記第2配線は、前記複数の配線が延びる方向と略直交する方向において、その両端に配置されている請求項1記載の電気信号伝送用ケーブル。
【請求項3】
前記第2配線は裸線である請求項1または請求項2記載の電気信号伝送用ケーブル。
【請求項4】
伝送される信号は、差動小振幅信号である請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電気信号伝送用ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−177517(P2010−177517A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19745(P2009−19745)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】