説明

電気回路遮断器

【課題】簡素な構造で確実に作動させることのできる電気回路遮断器を提供する。
【解決手段】この電気回路遮断器20は、電気回路10の各端子間を接続する作動部材21と火薬式のアクチュエータ26とを備える。作動部材21は一端に貫通孔22が形成されるとともに他端に切り欠き部23が形成される。それら貫通孔22および切り欠き部23を利用して作動部材21が電気回路10の端子に接続される。アクチュエータ26はその作動時において作動部材21に向かって進む圧力波を発生するように配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から電気機器への電力供給を遮断する電気回路遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火薬式のアクチュエータを内蔵した電気回路遮断器が知られている。この電気回路遮断器は、作動信号が入力されると、ケース内に収容された火薬が着火・燃焼して圧力波を発生させる。そして、この圧力波を利用して電気回路が遮断されるようになる。
【0003】
こうした電気回路遮断器としては、特許文献1に記載のもののように、上記圧力波を受けて移動する移動部材と同移動部材に設けられたカッター部とを備えたものが知られている。この電気回路遮断器では、上記圧力波の発生に伴って移動部材ともどもカッター部が移動すると、同カッター部によって電気回路の一部をなす導体が切断されるようになる。
【0004】
その他、特許文献2に記載の電気回路遮断器のように、電気回路の一部をなす導体が、互いに離間した位置に配設された二つの接続部材とそれら接続部材の間に挟持されるとともに上記圧力波を受けて移動する移動部材とによって構成されたものなども知られている。この電位回路遮断器では、圧力波の発生に伴って移動部材が移動すると、同移動部材が二つの接続部材の間から脱出してそれら接続部材間の導通が遮断されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−241389号公報
【特許文献2】国際公開第97/41582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電気回路遮断器の内部の導体は金属板や電線などによって形成されるために、その導体を切断する際には大きな力が必要になることが多い。そのため、上述したカッター部により導体を切断するタイプの電気回路遮断器では、その作動に際して必要になる力が大きくなり易いと云える。電気回路遮断器を適正に作動させるうえでは、その作動に際して必要になる力が小さいことが好ましい。したがって、そうした力が大きくなり易い上記タイプの電気回路遮断器は改善の余地があると云える。
【0007】
これに対して、二つの端子部材の間に挟持された移動部材を移動させるタイプの電気回路遮断器では、比較的小さい力で移動部材を移動させることが可能になるため、その作動に際して必要になる力を小さく抑えることも可能になる。ただし、移動部材が各接続部材間に挟持される構造であるために、移動部材を適正な状態で、すなわち二つの接続部材の間に確実に保持されるとともに各接続部材間の導通が確保される状態で配設することが難しい。こうしたことから移動部材を適正な状態で配設するためには電気回路遮断器の構造が複雑になり易いといった問題がある。
【0008】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造で確実に作動させることのできる電気回路遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、電気回路への接続用の第1接続部および第2接続部が一体に形成されるとともにそれら接続部を互いに接続する形状で延設される導体と火薬式のアクチュエータとを備えた電気回路遮断器において、前記導体はその少なくとも一部が作動部材からなり、前記作動部材はその一端が前記第1接続部と一体に形成されてなるとともに他端が前記第1接続部に対して相対移動可能な状態で配設されてなり、前記アクチュエータはその作動時において前記作動部材に向かって進む圧力波を発生するように配設されてなることをその要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、アクチュエータの作動に伴い発生した圧力波によって作動部材を変形させることができる。電気回路遮断器を配設する際には作動部材の一端が第1接続部ともども電気回路に固定されるために、同作動部材は第1接続部側の端部が固定された状態で第2接続部側の端部が移動するといった態様で変形するようになる。そのため、上記導体が作動部材と同作動部材より第2接続部側の部分とからなるものにおいて作動部材を同部分から離間させるように変形させたり、第2接続部が作動部材に一体形成される構成において同第2接続部が元々の配設位置から移動するように変形させたりするなど、電気回路における第2接続部が接続される部分と作動部材との導通を遮断するように同作動部材の端部を移動させることができる。一般に、導体を切断するために必要な力と比較して、一端が固定された導体の他端を変形させるために必要な力は小さい。したがって、導体を変形させることによって電気回路を遮断する上記構成によれば、電気回路遮断器を小さい力で確実に作動させることができるようになる。しかも、作動部材が変形して移動する構造であるとはいえ、その一端を固定することの可能な構造であるために、二つの部材間に挟持される部材を配設する場合と比較して、作動部材を容易に配設することができる。そのため、電気回路遮断器を簡素な構造にすることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気回路遮断器において、前記導体は、一端に前記第1接続部が形成されるとともに他端に前記第2接続部が一体に形成された前記作動部材であり、前記第1接続部は前記電気回路に固定される構造であり、前記第2接続部は前記電気回路から強制離脱させることの可能な構造であることをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、電気回路に接続された第2接続部を同電気回路から強制離脱させて離間させるといったように作動部材を変形させることができる。そして、これにより電気回路を遮断することができるようになる。しかも、導体を作動部材のみによって構成することができるため、導体を複数の部材によって構成する場合と比較して、電気回路遮断器を簡素な構造にすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電気回路遮断器において、前記作動部材は金属板からなり、前記第1接続部は前記作動部材に形成される貫通孔であり、前記第2接続部は前記作動部材に形成される切り欠き部であることをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、第1接続部としての貫通孔を利用してねじ等によって作動部材を電気回路の端子に取り付けることにより、同作動部材の一端を電気回路に固定することができる。しかも、第2接続部としての切り欠き部を利用してねじ等によって作動部材を電気回路の端子に取り付けることにより、切り欠き部の内部からねじ等を脱出させる方向に作動部材を変形させることによって、作動部材の端部を電気回路から強制離脱させることができる。したがって、作動部材の一端を電気回路から強制離脱させることの可能な状態で同電気回路に取り付けることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電気回路遮断器において、前記導体は、前記作動部材と、一端に前記第2接続部が一体形成されるとともに他端が前記作動部材の前記他端に接触した状態で配設される連通部材とからなることをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、作動部材の端部を連通部材の端部から離間させるように同作動部材を変形させることにより、それら作動部材および連通部材の間の導通を遮断することができる。そして、これにより電気回路を遮断することができるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電気回路遮断器において、前記作動部材および前記連通部材は、前記作動部材の前記他端および前記連通部材の前記他端のうちの一方に形成された凹部に他方が挿入された状態で配設されてなることをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、作動部材を変形させることによって同作動部材の他端および連通部材の他端のうちの一方に形成された凹部から他方を引き抜くことができる。そのため、凹部に挿入された状態の端部を引き抜くといった簡素な構造を通じて、同作動部材と連通部材との導通を遮断することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電気回路遮断器において、前記アクチュエータは、前記凹部に挿入された前記他端を同凹部から脱出させる方向に向かって進む圧力波を発生するように配設されてなることをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、アクチュエータの作動に伴い発生する圧力波を高い効率で作動部材に作用させることができるため、作動部材の他端および連通部材の他端のうちの一方に形成された凹部から他方を好適に引き抜くことができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気回路遮断器において、当該電気回路遮断器は、前記圧力波によって前記作動部材の前記他端の位置が変化するように同作動部材を変形させるものであり、該他端を変形後の位置で保持する保持部材を備えてなることをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、電気回路を遮断するべく作動部材を変形させた際に同作動部材を変形後の状態で保持することができる。そのため、作動部材が一旦変形した後に元の形状に復帰することを防止することができ、電気回路を確実に遮断することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の電気回路遮断器において、当該電気回路遮断器は、前記作動部材の前記他端が収容されるケースを備えてなり、前記保持部材は、前記ケースの内壁面に形成された段差部であることをその要旨とする。
【0024】
上記構成によれば、変形後の作動部材の端部をケース内壁面の段差部に引っ掛けて止めることができる。したがって、ケース内壁面に段差部を形成するといった簡素な構造により、作動部材を変形後の状態で保持することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気回路遮断器において、当該電気回路遮断器は、前記圧力波によって前記作動部材の前記他端の位置が変化するように同作動部材を変形させるものであって、前記変形させる前の前記導体と離間した位置であり且つ前記変形させた後の前記作動部材が接触する位置に配設された接続端子を備えてなることをその要旨とする。
【0026】
上記構成によれば、電気回路を切断することに併せて、その切断された部分の一方を例えば接地させたり電気回路の特定部位に接続したりするといったように特定部位に接続することができるようになる。これにより、電気回路遮断器の多機能化を図ることができる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気回路遮断器において、前記アクチュエータは、前記圧力波によって飛び出して前記作動部材を押圧する押圧部材を備えてなることをその要旨とする。
【0028】
上記構成によれば、アクチュエータが発生する圧力波が有するエネルギを押圧部材によって作動部材に効率よく伝達することができるようになる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡素な構造で確実に作動させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を具体化した第1の実施形態にかかる電気回路遮断器が適用される電気回路の概略構成を示す略図。
【図2】同電気回路遮断器の内部構造を示す断面図。
【図3】同電気回路遮断器の図2の矢印A方向から見た側面構造を示す側面図。
【図4】[a]および[b]アクチュエータの本体部の側面構造を示す側面図。
【図5】[a]および[b]アクチュエータの押圧部材の側面構造を示す側面図。
【図6】第1の実施形態にかかる電気回路遮断器の内部構造を示す断面図。
【図7】本発明を具体化した第2の実施形態にかかる電気回路遮断器の内部構造を示す断面図。
【図8】同電気回路遮断器の内部構造を示す断面図。
【図9】本発明を具体化した他の実施形態にかかる電気回路遮断器の内部構造を示す断面図。
【図10】同電気回路遮断器の内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態にかかる電気回路遮断器について説明する。
図1は、本実施形態にかかる電気回路遮断器が適用される電気回路の概略構成を示している。
【0032】
同図1に示すように、本実施形態の電気回路遮断器20が適用される電気回路10は蓄電池11と電気機器12とを備えている。この電気回路10では、電源としての蓄電池11からの電力供給によって電気機器12が作動するようになっている。なお、上記電気回路10は車両に搭載されている。車両が衝突などによってダメージを受けた場合に、電気機器12が適正に作動しなくなったり上記電気回路10からの漏電を招いたりするおそれがある。そのため、車両には、その衝突に際して蓄電池11と電気機器12との接続を遮断するための電気回路遮断器20が設けられている。
【0033】
この電気回路遮断器20は、電気回路10における蓄電池11の正極と電気機器12との間に設けられている。また車両には、その衝突の有無を検出するための衝突センサ13と、マイクロコンピュータを中心に構成される電子制御装置14とが設けられている。この電子制御装置14には、衝突センサ13の出力信号が取り込まれている。この電子制御装置14は、衝突センサ13の出力信号をもとに車両の衝突を検知すると、電気回路遮断器20を作動させる。これにより、蓄電池11から電気機器12への電力供給が停止されるようになる。
【0034】
本実施形態では、上記電気回路遮断器20として、車両の衝突が検知されたときに作動する火薬式アクチュエータを内蔵したものが採用されている。この電気回路遮断器20はアクチュエータの作動を通じて駆動される。
【0035】
以下、電気回路遮断器20の具体構造について説明する。
図2は、電気回路遮断器20の内部構造を示している。また図3は、図2における矢印A方向から見た電気回路遮断器20の側面構造を示している。
【0036】
図2および図3に示すように、電気回路遮断器20は、全体が金属板(具体的には、銅板)により一体に形成された作動部材21を備えている。この作動部材21はその一端に貫通孔22が形成されるとともに他端に切り欠き部23が形成されている。この作動部材21は、貫通孔22側の端部と切り欠き部23側の端部とが共に同一の方向(同図2における左右方向)に延びる形状に形成されている。切り欠き部23は作動部材21の先端の一部が切り取られた形状に形成されている。切り欠き部23は詳しくは、作動部材21の延設方向と平行に延びる形状であって、且つ同作動部材21の先端において開口する形状に形成されている。本実施形態では、貫通孔22が第1接続部として機能するとともに、切り欠き部23が第2接続部として機能する。
【0037】
上記電気回路遮断器20では、作動部材21の上記貫通孔22側の端部が同貫通孔22を利用してねじ等によって電気回路10の端子に取り付けられる。これにより、作動部材21の上記貫通孔22側の端部が電気回路10に固定される。その一方で、作動部材21の上記切り欠き部23側の端部は、同切り欠き部23を利用してねじ等によって電気回路10の端子に取り付けられる。これにより、作動部材21の上記切り欠き部23側の端部が電気回路10に取り付けられる。
【0038】
このようにして作動部材21の上記貫通孔22側の端部と上記切り欠き部23側の端部とを電気回路10の端子にそれぞれ接続することにより、それら電気回路10の各端子間が電気回路遮断器20の作動部材21を通じて導通されるようになる。本実施形態では、この作動部材21のみによって電気回路10の各端子間が接続されるため、それら端子間を複数の部材によって接続する構成と比較して、電気回路遮断器20を簡素な構造にすることができる。
【0039】
また上記電気回路遮断器20は、上記切り欠き部23の内部からねじ等を脱出させる方向(図2および図3における右方向)に作動部材21を変形させることにより、同作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を電気回路10の端子から引き抜くようにして強制離脱させることの可能な構造になっている。そして、そのようにして作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を電気回路10の端子から強制離脱させることによって、電気回路10の各端子間の導通が遮断されるようになる。
【0040】
電気回路遮断器20はケース24を備えている。また上記作動部材21は、その延設方向(図2中の左右方向)における中央部分(湾曲部25)が一方向(同図2における上方)に向けて突出するように湾曲した形状で延設されている。そして作動部材21は、その湾曲部25がケース24内部に収容された状態であり、且つ上記貫通孔22および切り欠き部23がそれぞれケース24外部に露出した状態で同ケース24に取り付けられている。
【0041】
また、上記ケース24には火薬式のアクチュエータ26が取り付けられている。このアクチュエータ26は、ケース24に固定された本体部27と前記電子制御装置14(図1参照)からの信号入力による火薬の着火燃焼によって燃焼ガスを発生させるガス発生部28と上記本体部27に取り付けられた押圧部材29とを備えている。
【0042】
図4に本体部27の側面構造を示す。なお図4[b]は、図4[a]における矢印B方向から見た本体部27の側面構造を示している。
図4[a]および図4[b]に示すように、本体部27は全体がほぼ円筒形状に形成されている。この本体部27には、その外周面から径方向における外方に向けて突出する形状のフランジ部30が形成されている。このフランジ部30がケース24(図3参照)に固定されることによって同ケース24にアクチュエータ26が取り付けられている。
【0043】
また本体部27の内部には上記ガス発生部28が配設されている。このガス発生部28は詳しくは、円筒形状の本体部27における一方の開口から配線接続用の端子31が露出する状態であり、且つ他方の開口から燃焼ガスの発生に伴う圧力波が放出される状態で配設されている。なお、上記配線接続用の端子31は前記電子制御装置14に接続される。この端子31を介して電子制御装置14からアクチュエータ26を作動させるための信号(詳しくは、ガス発生部28に燃焼ガスを発生させるための信号)が入力される。
【0044】
図5に、上記押圧部材29の側面構造を示す。なお図5[b]は、図5[a]における矢印C方向から見た押圧部材29の側面構造を示している。
図5[a]および図5[b]に示すように、押圧部材29は、円筒形状に形成された基部32と同円筒形状の一方の開口を塞ぐ形状の蓋部33とにより構成されている。このように押圧部材29は一方の開口が塞がれた状態の円筒形状、いわゆる有蓋円筒形状に形成されている。
【0045】
そして図2に示すように、円筒形状に形成された本体部27の一方の開口(圧力波が放出されるほうの開口)を押圧部材29の開口によって塞ぐように、同押圧部材29が上記本体部27に取り付けられている。そのため、ガス発生部28からの燃焼ガスの発生に伴って本体部27から圧力波が放出されると、この圧力波によって押圧部材29が本体部27から離れて飛び出すようになる。
【0046】
押圧部材29は、アクチュエータ26の本体部27と上記作動部材21の湾曲部25との間に挟まれた位置に配設されている。これにより、アクチュエータ26が発生する圧力波の進行方向が押圧部材29に向けて進む方向、詳しくは作動部材21における上記押圧部材29の接触部分に向けて進む方向(図2中に矢印Dで示す方向)に設定されている。したがって押圧部材29は、アクチュエータ26の作動に際して作動部材21を押圧しつつ飛び出すようになる。
【0047】
押圧部材29は、詳しくは、その蓋部33が作動部材21の湾曲部25における切り欠き部23側の側面に当接するように配設されている。そのため、アクチュエータ26の作動に伴って押圧部材29が飛び出した際には、上記作動部材21の湾曲部25の突出幅(図2における左右方向における幅)を小さくするように同湾曲部25が押圧部材29によって押圧されるようになる。
【0048】
本実施形態では、こうした押圧部材29を配設することにより、アクチュエータ26が発生する圧力波が有するエネルギを作動部材21に効率よく伝達することができるようになる。
【0049】
以下、上記電気回路遮断器20の動作態様について詳しく説明する。
図6に、アクチュエータ26の作動後における電気回路遮断器20の内部構造を示す。なお先の図2は、アクチュエータ26の作動前における電気回路遮断器20の内部構造を示している。
【0050】
図2に示すように、本実施形態の電気回路遮断器20は、作動部材21の上記貫通孔22側(同図中における右側)の端部が電気回路10の端子に固定された状態で取り付けられるとともに、同作動部材21の上記切り欠き部23側(同図中における左側)の端部が電気回路10の端子に強制離脱させることの可能な状態で取り付けられている。そして、アクチュエータ26が作動すると、押圧部材29によって上記作動部材21の湾曲部25の突出幅を小さくするように作動部材21の湾曲部25が押圧されるようになる。
【0051】
その結果、図6に示すように、作動部材21の上記貫通孔22側の端部が固定された状態で切り欠き部23側の端部がケース24側に引き込まれる方向(同図中に矢印Eで示す方向)に移動するといった態様で、同作動部材21が変形するようになる。これにより、作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を元々の配設位置から移動させるように、換言すれば同端部を電気回路10の端子から引き抜くようにして強制離脱させて離間させるといったように、作動部材21が変形するようになる。そして、これによって作動部材21の上記貫通孔22側の端部が接続される電気回路10の端子と上記切り欠き部23側の端部が接続されていた電気回路10の端子との導通が遮断されるようになるために、同電気回路10が遮断されるようになる。
【0052】
このように本実施形態では、押圧部材29が作動部材21を押圧する押圧力が電気回路10の端子から作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を引き抜く方向に作用するように、アクチュエータ26が配置されている。そのため、アクチュエータ26が発生させる圧力波によって、電気回路10の端子から作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を効率よく引き抜いて離脱させることができる。一般に、金属板を切断するために必要な力と比較して、一端が固定された金属板の他端を変形させるために必要な力は小さい。したがって、金属板からなる作動部材21を変形させることによって電気回路10を遮断する上記電気回路遮断器20によれば、同電気回路遮断器20を小さい力で確実に作動させることができるようになる。しかも、作動部材21が変形して移動する構造であるとはいえ、同作動部材21が貫通孔22および切り欠き部23が一体に形成された一枚の金属板により形成されているために、作動部材21を容易に配設することができる。そのため、電気回路10の各端子間を繋ぐ導体が複数の部材によって構成されたものと比較して、電気回路遮断器20を簡素な構造にすることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)一端に貫通孔22が形成されるとともに他端が同貫通孔22に対して相対移動可能な状態で配設された作動部材21と、作動時において作動部材21に向かって進む圧力波を発生するアクチュエータ26とを配設するようにした。そのため、電気回路遮断器20を小さい力で確実に作動させることができる。しかも、作動部材21を容易に配設することができるため、電気回路遮断器20を簡素な構造にすることができる。
【0054】
(2)作動部材21として、全体を金属板により一体に形成したものを採用した。また作動部材21の一端に貫通孔22を形成するとともに他端に切り欠き部23を形成した。そのため、作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を電気回路10の端子から引き抜くようにして強制離脱させるといったように同作動部材21を変形させることができる。しかも、作動部材21のみによって電気回路10の各端子間を接続することができるため、それら端子間を複数の部材によって接続する構成と比較して、電気回路遮断器20を簡素な構造にすることができる。
【0055】
(3)貫通孔22を利用してねじ等によって作動部材21を電気回路10の端子に取り付けることにより、同作動部材21の上記貫通孔22側の端部を電気回路10の端子に固定することができる。しかも、切り欠き部23を利用してねじ等によって作動部材21を電気回路10の端子に取り付けることにより、同切り欠き部23の内部からねじ等を脱出させる方向に作動部材21を変形させることによって同作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を電気回路10の端子から強制離脱させることができる。したがって、作動部材21の上記切り欠き部23側の端部を電気回路10の端子から強制離脱させることの可能な状態で同端子に取り付けることができる。
【0056】
(4)アクチュエータ26として、前記圧力波によって飛び出して作動部材21を押圧する押圧部材29を備えたものを採用した。そのため、アクチュエータ26が発生する圧力波が有するエネルギを押圧部材29によって作動部材21に効率よく伝達することができるようになる。
【0057】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態にかかる電気回路遮断器について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお以下では、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、同構成についての詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施形態と第1の実施形態とは、電気回路遮断器の構造のみが異なる。
以下、本実施形態にかかる電気回路遮断器の具体構造について説明する。
図7は、本実施形態にかかる電気回路遮断器40の内部構造を示している。
【0059】
同図7に示すように、電気回路遮断器40は、電気回路10の各端子間を導通させるための導体として作動部材41と連通部材42とを備えている。これら作動部材41および連通部材42は共に金属板(具体的には、銅板)により形成されている。
【0060】
連通部材42は、その一方の端部が折り返された形状に形成された挿入部43と貫通孔44が形成された取り付け部45とを備えている。この連通部材42は、その取り付け部45がケース46の外部に配置されるとともに上記挿入部43がケース46の内部に配置されるように同ケース46に取り付けられている。なお、連通部材42の挿入部43はほぼ断面コの字形状、詳しくは対向する二枚の金属板の間に間隙が形成される形状で延設されている。そして連通部材42は上記挿入部43の間隙がケース46の内壁に沿って延びるように同ケース46に固定されている。本実施形態では、挿入部43が、作動部材の他端および連通部材の他端のうちの一方に形成された凹部として機能する。
【0061】
作動部材41は、ほぼ断面M字形状で延びるように形成された作動部47と貫通孔48が形成された取り付け部49とを備えている。この作動部材41は、その取り付け部49がケース46の外部に配置されるとともに作動部47がケース46の内部に配置されるように同ケース46に取り付けられている。また作動部材41は、その作動部47の先端が前記連通部材42の挿入部43の間隙に挿入された状態で配設される。このようにして作動部材41と連通部材42とが互いに接触した状態で配設される。
【0062】
上記電気回路遮断器40を電気回路10に取り付ける際には、連通部材42の取り付け部45が貫通孔44を利用してねじ等によって電気回路10の端子に取り付けられるとともに、作動部材41の取り付け部49が貫通孔48を利用してねじ等によって電気回路10の端子に取り付けられる。このようにして作動部材41と連通部材42とをそれぞれ電気回路10の端子に接続することにより、それら電気回路10の各端子間が連通部材42および作動部材41を介して導通されるようになる。本実施形態では、上記貫通孔48が第1接続部として機能するとともに、貫通孔44が第2接続部として機能する。
【0063】
また、上記ケース46の内部には火薬式のアクチュエータ50が取り付けられている。このアクチュエータ50は、前記電子制御装置14からの信号入力による火薬の着火燃焼によって燃焼ガスを発生させるガス発生部51と同ガス発生部51に取り付けられた押圧部材52とを備えている。
【0064】
上記ガス発生部51は全体がほぼ円柱形状に形成されている。また上記押圧部材52は円筒形状に形成された基部53と同円筒形状の一方の開口を塞ぐ形状の蓋部54とにより構成されている。すなわち押圧部材52は一方の開口が塞がれた状態の円筒形状、いわゆる有蓋円筒形状に形成されている。そして、上記押圧部材52の開口を円柱形状のガス発生部51に被せるように、同押圧部材52がガス発生部51に取り付けられている。
【0065】
上記ガス発生部51には前記電子制御装置14が接続されている。この電子制御装置14からアクチュエータ50を作動させるための信号(詳しくは、ガス発生部51に燃焼ガスを発生させるための信号)が入力される。アクチュエータ50が作動してガス発生部51からの燃焼ガスの発生に伴って圧力波が放出されると、この圧力波によって押圧部材52がガス発生部51から離れて飛び出すようになる。
【0066】
押圧部材52は、アクチュエータ50のガス発生部51と上記作動部材41の作動部47との間に挟まれた状態で配設されている。これにより、アクチュエータ50が発生する圧力波の進行方向が押圧部材52に向けて進む方向、詳しくは作動部材41における上記押圧部材52の接触部分に向けて進む方向(図7中に矢印Fで示す方向)に設定されている。したがって押圧部材52は、アクチュエータ50の作動に際して作動部材41を押圧しつつ飛び出すようになる。本実施形態では、こうした押圧部材52を配設することにより、アクチュエータ50が発生する圧力波が有するエネルギを作動部材41に効率よく伝達することができるようになる。
【0067】
上記押圧部材52は詳しくは、その蓋部54が、ほぼ断面M字形状に形成された作動部47の中央において湾曲した部分(湾曲部55)の下面に当接するように配設されている。そのため、アクチュエータ50の作動に伴って押圧部材52が飛び出す際には、上記作動部材41の作動部47を押し上げる方向(図7における上方)に、同作動部材41が押圧部材29によって押圧されるようになる。本実施形態では、アクチュエータ50が発生する圧力波の進行方向、言い換えれば上記押圧部材52による作動部材41の押圧方向として、連通部材42の挿入部43から作動部材41の作動部47の先端を脱出させる方向(脱出方向)と同一の方向が設定されている。
【0068】
上記ケース46の内壁面には段差部56が形成されている。この段差部56は、詳しくは、ケース46の上記連通部材42の挿入部43側の内壁面おける同挿入部43より上記脱出方向(図7中に矢印Fで示す方向)側の部分に形成される。また段差部56は、連通部材42の挿入部43側の部分より上記脱出方向側の部分が窪んだ形状に形成される。本実施形態では、この段差部56が保持部材として機能する。
【0069】
以下、上記電気回路遮断器40の動作態様について詳しく説明する。
図8に、アクチュエータ50の作動後における電気回路遮断器40の内部構造を示す。なお先の図7は、アクチュエータ50の作動前における電気回路遮断器40の内部構造を示している。
【0070】
図7に示すように、本実施形態の電気回路遮断器40は、連通部材42の取り付け部45と作動部材41の取り付け部49とがそれぞれ電気回路10の端子に固定されている。また、作動部材41の作動部47の先端が連通部材42の挿入部43内に挿入された状態でそれら作動部材41および連通部材42が配設されている。そして、アクチュエータ50が作動すると、押圧部材52によって上記作動部材41の作動部47を押し上げるように同作動部材41が押圧されるようになる。その結果、図8に示すように、作動部材41の作動部47の先端が連通部材42の挿入部43から脱出する方向(同図中における上方)に移動するといった態様で、同作動部材41が変形するようになる。
【0071】
したがって、作動部材41の作動部47を連通部材42の挿入部43内から引き抜くように、換言すれば作動部材41を連通部材42から離間させるといったように作動部材41が変形するようになる。これにより連通部材42および作動部材41を介した電気回路10の各端子間の導通が遮断されるようになるために、同電気回路10が遮断されるようになる。このように上記電気回路遮断器40では、連通部材42の挿入部43に挿入された状態の上記作動部材21の作動部47の先端を引き抜くといった簡素な構造を通じて、同連通部材42と作動部材41との導通を遮断することができる。
【0072】
また上記電気回路遮断器40では、押圧部材52が作動部材41を押圧する押圧力が同作動部材41の作動部47の先端を連通部材42の挿入部43内から引き抜く方向に作用するように、アクチュエータ50が配置されている。そのため、アクチュエータ50が発生させる圧力波によって、連通部材42の挿入部43から作動部材41の作動部47の先端を効率よく引き抜いて離脱させることができる。
【0073】
このように金属板からなる作動部材41の作動部47を変形させることによって電気回路10を遮断する上記電気回路遮断器40によれば、同電気回路遮断器40を小さい力で確実に作動させることができるようになる。しかも、作動部材41が変形して移動する構造であるとはいえ、同作動部材41が一枚の金属板により形成されるとともにケース46および連通部材42の挿入部43それぞれに係止されることによって支持される構造であるため、二つの部材間に挟持される部材を配設する場合と比較して、同作動部材41を容易に配設することができる。そのため、電気回路遮断器20を簡素な構造にすることができる。
【0074】
上記電気回路遮断器20では、その作動部材21の作動部47が変形する際に、同作動部47の先端がケース46の内壁面の段差部56を通り過ぎる位置まで移動するようになる。そのため、一旦変形した上記作動部47の先端が上記段差部56より連通部材42の挿入部43側の位置、すなわち変形前の位置に復帰するように移動した場合であっても、同作動部47の先端が上記段差部56に引っ掛かって止まった状態(図8に示す状態)になる。
【0075】
このように上記電気回路遮断器40では、電気回路10を遮断するべく作動部材41を変形させた際に同作動部材41を変形後の状態で保持することができる。そのため、作動部材41が一旦変形した後に元の形状に復帰することを防止することができ、電気回路10を確実に遮断することができる。また電気回路遮断器20では、作動部材41の作動部47を変形後の位置で保持するとの構成を、ケース46の内壁面に段差部56を形成するといった簡素な構造によって実現することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(5)連通部材42の取り付け部45と作動部材41の取り付け部49とをそれぞれ電気回路10の端子に固定するようにした。また、作動部材41の作動部47の先端を連通部材42の挿入部43内に挿入した状態でそれら作動部材41および連通部材42を配設するようにした。そのため、電気回路遮断器40を小さい力で確実に作動させることができる。しかも、二つの部材間に挟持される部材を配設する場合と比較して、作動部材41を容易に配設することができるため、電気回路遮断器20を簡素な構造にすることができる。
【0077】
(6)取り付け部45が一体形成された連通部材42と取り付け部49が一体形成された作動部材41とを互いに接触する状態で配設するようにした。そのため、作動部材41の端部を連通部材42の端部から離間させるように同作動部材41を変形させることにより、それら作動部材41および連通部材42の間の導通を遮断することができる。そして、これにより電気回路10を遮断することができるようになる。
【0078】
(7)作動部材21の作動部47の先端が連通部材42の挿入部43内に挿入された状態で、それら作動部材41および前記連通部材42を配設するようにした。そのため、作動部材41を変形させることによって同作動部材41の作動部47の先端を連通部材42の挿入部43から引き抜くことができる。したがって、連通部材42の挿入部43に挿入された状態の作動部47の先端を引き抜くといった簡素な構造を通じて、同作動部材41と連通部材42との導通を遮断することができる。
【0079】
(8)連通部材42の挿入部43内から作動部材41の作動部47の先端を脱出させる方向に向かって進む圧力波を発生するようにアクチュエータ50を配設した。これにより、アクチュエータ50の作動に伴い発生する圧力波を高い効率で作動部材41に作用させることができるようになるため、作動部材41の作動部47の先端を連通部材42の挿入部43から好適に引き抜くことができる。
【0080】
(9)アクチュエータ50として、前記圧力波によって飛び出して作動部材41を押圧する押圧部材52を備えたものを採用した。そのため、アクチュエータ50が発生する圧力波が有するエネルギを押圧部材52によって作動部材41に効率よく伝達することができるようになる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第1の実施形態において、作動部材21が変形した後において同作動部材21が変形後の形状で保持される構造を採用してもよい。こうした構造としては具体的には、以下の[構造イ]〜[構造ニ]に記載する構造を挙げることができる。[構造イ]段差部や凸部などといった作動部材21の先端が引っ掛かる形状のものがケース24の内壁面に設けられたもの。[構造ロ]ケース24の内壁面から作動部材21に向けて出没可能に設けられた出没部材と作動部材21に形成されて同出没部材と係合する凹部(あるいは穴)とを備えたもの。[構造ハ]作動部材21からケース24の内壁面に向けて出没可能に設けられた出没部材とケース24の内壁面に形成されて同出没部材と係合する凹部(あるいは穴)とを備えたもの。[構造ニ]作動部材21が変形後の形状に形成されるとともに、変形前の状態に弾性変形させた状態で電気回路10の各端子に取り付けられたもの。
【0082】
・第1の実施形態において、作動部材21の湾曲部25より貫通孔22側の部分をケース24に固定するようにしてもよい。
・第1の実施形態において、電気回路10の端子から作動部材21の端部を強制離脱可能な構造としては、同作動部材21に切り欠き部23を形成する構造以外の構造を採用することができる。
【0083】
・第1の実施形態において、ケース24の内部における変形前の作動部材21と離間した位置であり、且つ変形後の作動部材21と接触する位置に接続端子を新たに設けるようにしてもよい。同構成によれば、電気回路遮断器の作動を通じて、電気回路10を切断することに併せて、その切断された部分の一方(作動部材21に接続された部分)を例えば接地させたり電気回路10の特定部位に接続したりするといったように特定部位に接続することができるようになる。これにより電気回路遮断器の多機能化を図ることができる。
【0084】
・第2の実施形態において、作動部材41が変形した後において同作動部材41を変形後の形状で保持するための構造は、ケース46の内壁面に段差部56を形成する構造に限らず、任意に変更することができる。こうした構造としては具体的には、以下の[構造ホ]〜[構造ト]に記載する構造を挙げることができる。[構造ホ]凸部などの作動部材41の先端が引っ掛かる形状のもので段差部以外のものがケース46の内壁面に設けられたもの。[構造ヘ]ケース46の内壁面から作動部材41に向けて出没可能に設けられた出没部材と作動部材41に形成されて同出没部材と係合する凹部(あるいは穴)とを備えたもの。[構造ト]作動部材41からケース46の内壁面に向けて出没可能に設けられた出没部材とケース46の内壁面に形成されて同出没部材と係合する凹部(あるいは穴)とを備えたもの。
【0085】
・第2の実施形態において、連通部材42をケース46に固定したり、作動部材41の取り付け部45をケース46に固定したりしてもよい。
・第2の実施形態において、ケース46の内部における変形前の作動部材41と離間した位置であり、且つ変形後の作動部材41と接触する位置に接続端子を新たに設けるようにしてもよい。
【0086】
図9および図10に、そうした電気回路遮断器60の一例を示す。なお図9はアクチュエータ50の作動前における電気回路遮断器60の内部構造を示している。また図10はアクチュエータ50の作動後における電気回路遮断器60の内部構造を示している。
【0087】
図9に示すように、電気回路遮断器60のケース65には、作動部材41および連通部材42に加えて、接続部材61が取り付けられている。この接続部材61は金属板により形成されている。また接続部材61は、貫通孔62が形成されるとともに上記ケース65の外部に配設される取り付け部63と、ケース65の内壁面から作動部材41の作動部47側に延びる形状に形成された接触部64とを備えている。この電気回路遮断器60では上記接触部64の上記ケース65内部側の先端が接触端子として機能する。そして、この接触部64の先端の位置が変形前の作動部材41と離間した位置であり且つ変形後の作動部材41と接触する位置になるように、同接触部64の延設形状が設定されている。
【0088】
図10に示すように、アクチュエータ50が作動すると、作動部材41の作動部47の先端が連通部材42の挿入部43から脱出する方向(同図中における上方)に移動するといった態様で、同作動部材41が変形するようになる。この作動部材41の変形に際して、同作動部材41は上記接触部64に接触するとともに同接触部64ともども変形するようになる。その結果、作動部材41の変形後において同作動部材41と接続部材61とが接触した状態になる。
【0089】
こうした電気回路遮断器60によれば、電気回路10を切断することに併せて、電気回路10における作動部材41に接続された部分を接続部材61に接続された部分(例えば接地部位や電気回路10の特定部位)に接続することができるようになる。これにより、電気回路遮断器60の多機能化を図ることができる。
【0090】
・第2の実施形態において、アクチュエータ50が発生する圧力波の進行方向を、作動部材41の作動部47が連通部材42の挿入部43から脱出する方向と同一の方向に設定することに限らず、若干ずれた方向に設定するようにしてもよい。
【0091】
・第2の実施形態において、作動部材41の作動部47にその先端が折り返された形状の挿入部43を形成するとともに同挿入部43に連通部材42の先端を挿入した状態で、それら作動部材41および連通部材42を配設するようにしてもよい。要は、作動部材41の作動部47および連通部材42のうちの一方に形成された凹部に他方が挿入された状態で、それら作動部材41および連通部材42を配設することができればよい。
【0092】
・第2の実施形態において、作動部材41と連通部材42とが互いに支持されるとともに接続されるのであれば、それらが接触する部分の構造は任意に変更することができる。
・第2の実施形態において、作動部材41の取り付け部45と連通部材42とが共にケース46に固定されるなど、それら作動部材41および連通部材42がともに確実に支持されるのであれば、連通部材42と作動部材41とが単に接触するようにそれら連通部材42および作動部材41を配設してもよい。
【0093】
・各実施形態において、作動部材や連通部材に貫通孔を形成することに代えて、作動部材や連通部材を電気回路の端子に確実に固定することができる構造のものであれば、任意の構造のものを設けることができる。
【0094】
・各実施形態において、作動部材や連通部材を、断面円形状で延びる金属材料や断面多角形状で延びる金属材料などといった金属板以外のものによって形成してもよい。また作動部材や連通部材を、例えば導電性の樹脂材料など、金属材料以外の材料によって形成することもできる。
【0095】
・各実施形態において、アクチュエータが発生する圧力波によって作動部材を適正に変形させることができるのであれば、押圧部材を省略してもよい。
・本発明は、車両に搭載される電気回路に限らず、工場などに設置された装置に設けられる電気回路にも適用することができる。この場合には、電気回路自体の異常や装置の異常などといった同装置に関する何らかの異常を検知するとともに、その検知をもとにアクチュエータを作動させるようにすればよい。
【0096】
・電源として蓄電池が接続される電気回路に限らず、電源として商用電源が接続される電気回路にも本発明にかかる電気回路遮断器は適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
10…電気回路、11…蓄電池、12…電気機器、13…衝突センサ、14…電子制御装置、20…電気回路遮断器、21…作動部材、22…貫通孔、23…切り欠き部、24…ケース、25…湾曲部、26…アクチュエータ、27…本体部、28…ガス発生部、29…押圧部材、30…フランジ部、31…端子、32…基部、33…蓋部、40…電気回路遮断器、41…作動部材、42…連通部材、43…挿入部、44…貫通孔、45…取り付け部、46…ケース、47…作動部、48…貫通孔、49…取り付け部、50…アクチュエータ、51…ガス発生部、52…押圧部材、53…基部、54…蓋部、55…湾曲部、56…段差部、60…電気回路遮断器、61…接続部材、62…貫通孔、63…取り付け部、64…接触部、65…ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路への接続用の第1接続部および第2接続部が一体に形成されるとともにそれら接続部を互いに接続する形状で延設される導体と火薬式のアクチュエータとを備えた電気回路遮断器において、
前記導体はその少なくとも一部が作動部材からなり、
前記作動部材はその一端が前記第1接続部と一体に形成されてなるとともに他端が前記第1接続部に対して相対移動可能な状態で配設されてなり、
前記アクチュエータはその作動時において前記作動部材に向かって進む圧力波を発生するように配設されてなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気回路遮断器において、
前記導体は、一端に前記第1接続部が形成されるとともに他端に前記第2接続部が一体に形成された前記作動部材であり、
前記第1接続部は前記電気回路に固定される構造であり、
前記第2接続部は前記電気回路から強制離脱させることの可能な構造である
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項3】
請求項2に記載の電気回路遮断器において、
前記作動部材は金属板からなり、
前記第1接続部は前記作動部材に形成される貫通孔であり、
前記第2接続部は前記作動部材に形成される切り欠き部である
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項4】
請求項1に記載の電気回路遮断器において、
前記導体は、前記作動部材と、一端に前記第2接続部が一体形成されるとともに他端が前記作動部材の前記他端に接触した状態で配設される連通部材とからなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項5】
請求項4に記載の電気回路遮断器において、
前記作動部材および前記連通部材は、前記作動部材の前記他端および前記連通部材の前記他端のうちの一方に形成された凹部に他方が挿入された状態で配設されてなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項6】
請求項5に記載の電気回路遮断器において、
前記アクチュエータは、前記凹部に挿入された前記他端を同凹部から脱出させる方向に向かって進む圧力波を発生するように配設されてなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気回路遮断器において、
当該電気回路遮断器は、前記圧力波によって前記作動部材の前記他端の位置が変化するように同作動部材を変形させるものであり、該他端を変形後の位置で保持する保持部材を備えてなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項8】
請求項7に記載の電気回路遮断器において、
当該電気回路遮断器は、前記作動部材の前記他端が収容されるケースを備えてなり、
前記保持部材は、前記ケースの内壁面に形成された段差部である
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気回路遮断器において、
当該電気回路遮断器は、前記圧力波によって前記作動部材の前記他端の位置が変化するように同作動部材を変形させるものであって、前記変形させる前の前記導体と離間した位置であり且つ前記変形させた後の前記作動部材が接触する位置に配設された接続端子を備えてなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電気回路遮断器において、
前記アクチュエータは、前記圧力波によって飛び出して前記作動部材を押圧する押圧部材を備えてなる
ことを特徴とする電気回路遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−192531(P2011−192531A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57688(P2010−57688)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)