説明

電気掃除機、電気掃除機用床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメント、及びこの床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメントを備えた電気掃除機

【課題】 電気掃除機の吸引風路や床用吸込具、アタッチメントなどに抗アレルゲン剤を付加し、被掃除面に付着したダニの死骸や糞あるいは花粉のアレルゲンを不活化して塵埃と共に吸引することにより、アレルゲンを無害化するようにした電気掃除機、床用吸込具、アタッチメント及びこの床用吸込具、アタッチメントを備えた電気掃除機を提供する。
【解決手段】 内部に電動送風機2及び集塵室3が設けられた電気掃除機本体1と、この電気掃除機本体1に接続されるホースユニット5と、ホースユニット5に接続される延長管9と、電気掃除機本体1、ホースユニット5又は延長管9に接続される床用吸込具10とを有し、床用吸込具10から集塵室3に至る吸引風路の全部又は一部に、アレルゲンを不活化する物質を付加し、又はこの物質を付加した部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気掃除機、電気掃除機用床用吸込具、床吸込具用、回転ロータ、アタッチメント、及びこの床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメントを備えた電気掃除機に係り、より詳しくは、人体に有害なアレルゲンの不活化手段を備えた電気掃除機等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダニ等の人体に有害な微生物は電気掃除機の吸引時に蛇腹ホース内を塵埃と共に高速で通過し、蛇腹ホースの凹凸に激突する際の衝撃で死滅することが知られている。
しかし、生き残ったダニ等が集塵室内に存在することもあるので、集塵室に蓄積された塵埃に含まれるダニを、電動送風機からの排熱を集塵室へ戻して殺傷する電気掃除機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、集塵袋を使用せず、直接集塵室にダニの死骸や糞等を含む塵埃を捕集するサイクロン方式の電気掃除機も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、従来の電気掃除機では、ダニ等の有害な微生物を殺傷することはできるが、ダニの死骸や塵埃に含まれるダニの糞は、集塵袋や集塵室に捕集されるのみであり、また、前記のように、蛇腹ホース内の凹凸に激突する際の衝撃が強いほど、乾燥して砕け易くなったダニの死骸が細かく粉砕される可能性が高まり、集塵室内に設けられたフィルターの小さい通気穴からダニの死骸等が漏れるおそれもある。
【0004】
このようなことから、集塵袋や集塵室に蓄積された塵埃を廃棄する際、あるいは掃除中に排気から細かい粉塵が空気中に舞い上り、その汚染された空気を吸込んでくしゃみの症状が出ることがある。これは、合同出版社発行の「ダニが主な原因、アトピー性皮膚炎の治し方」で紹介されているように、ダニの死骸や糞に含まれるアレルゲンが原因となってアレルギー性鼻炎を引き起こすからである。さらに、喘息やアトピー性皮膚炎等の病気の原因にもなるとされている。また、このアレルゲンは、花粉にも含まれており、花粉症の発病にも関係している。
【0005】
このようなアレルゲンに対する対策として、アレルゲン不活化剤と吸引性組成物を含有する抗アレルゲン組成物、及びそれを加工した抗アレルゲンフィルター材又はシートのような抗アレルゲン対策品を、電気掃除機のフィルターとして電動送風機の上流側、下流側に装着するようにした発明が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−127026号公報
【特許文献2】特開2001−104223号公報
【特許文献3】特開2002−326944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2の技術は、ダニ等の有害な微生物を殺傷することはできるが、ダニの死骸や糞は集塵室に捕集するだけで、アレルゲンについてはなんらの対策もなされていない。
また、特許文献3の技術は、前述のように衝撃で粉砕されたダニの死骸はフィルターを通過するおそれがあるため、排気と一緒に室内の空気中に放出される可能性があり、アレルゲンの不活化対策としては不十分である。また、サイクロン方式などの直接塵埃を廃棄する電気掃除機の、塵埃を廃棄する際の微塵に含まれるアレルゲンの不活化防止対策が講じられていないため、空気中にアレルゲンを飛散させるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、電気掃除機の吸引風路や床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメントなどに抗アレルゲン剤を付加し、被掃除面に付着したダニの死骸や糞あるいは花粉のアレルゲンを不活化して塵埃と共に吸引することにより、アレルゲンを無害化するようにした電気掃除機、電気掃除機用床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメント、及びこの床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメントを備えた電気掃除機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気掃除機は、内部に電動送風機及び集塵室が設けられた電気掃除機本体と、該電気掃除機本体に接続されるホースユニットと、該ホースユニットに接続される延長管と、前記電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具とを有し、該床用吸込具から前記集塵室に至る吸引風路の全部又は一部に、アレルゲンを不活化する物質を付加し、又は該物質を付加した部材を設けたものである。
【0010】
また、本発明に係る床用吸込具、アタッチメントは、被掃除面に接触する部分に抗アレルゲン剤を付加したものである。
さらに、本発明に係る電気掃除機は、上記の床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメント又はそのいずれかを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電気掃除機の吸引風路や床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメントなどに抗アレルゲン剤を付加し、掃除の際に床や絨毯などの被掃除面に付着したダニの死骸や糞あるいは花粉などに抗アレルゲン剤を接触させて不活化し、塵埃と共に集塵室に吸引するようにしたので、被掃除面で生活し、また、塵埃を廃棄する際に飛散してもアレルギー感染することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の説明図である。
図1において、電気掃除機本体1には、空気を塵埃と共に吸上げる動力としての電動送風機2が内蔵され、電動送風機2の上流側には集塵室3が設けられている。なお、集塵室3は電気掃除機本体1の外部に設けてもよい。また、電気掃除機本体1には、延長目的でホースユニット5が設けられており、このホースユニット5を構成する蛇腹ホース6の一端には電気掃除機本体1に着脱可能に連結される接続部7が設けられており、他端に手元ハンドル8が設けられている。そして、手元ハンドル8には延長管9が着脱可能に連結され、さらに延長管9の上流側には床用吸込具10が着脱可能に連結されて、床用吸込具10から電動送風機2の集塵室3までの間に負圧の吸引風路が形成され、集塵室3の下流側から排気口(図示せず)の間には排気風路が形成されている。
【0013】
本実施の形態は、上述の負圧の吸引風路、すなわち床用吸込具10から集塵室3までの区間に、アレルゲンを不活化又は抑制(以下不活化という)する物質である抗アレルゲン剤を直接付加し、又は抗アレルゲン剤を付加した部品を抗アレルゲン剤が吸引風路に露出するように配置したものである。
ここで、抗アレルゲン剤を付加するとは、電気掃除機を構成する部材や部品の表面をコーティングする目的で抗アレルゲン剤を塗布したり、部材や部品を構成する原材料に抗アレルゲン剤を混入することをいう。なお、抗アレルゲン剤の混入比率は、必要に応じて適宜選択する。
【0014】
この場合、それぞれのメリットは、前者の表面コーティングは少ない量の抗アレルゲン剤でも、表面全体に抗アレルゲン剤が付着するので、アレルゲンに接触する確率が高くなり、アレルゲンの不活化効果が大きい。また、後者の原材料への混入は、表面コーティングに比べて抗アレルゲン剤の使用量が多くなるが、部材内部にも抗アレルゲン剤が含まれるので、部材が摩耗してもアレルゲンの不活化効果を持続することができる。
【0015】
抗アレルゲン剤は特に指定しないが、水溶液を必要としないものが好ましく、例えば、タンニン酸、ガロタンニン、エピカテキンガレード、エピカテキン、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレード等のポリフェノール類、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩等、さらには、茶抽出物、柿渋、没食子酸等が挙げられる。
【0016】
上記のように構成した本実施の形態によれば、電気掃除機の運転によって、床用吸込具10から吸引風路に吸引された塵埃中に、例えばダニの死骸や糞、花粉等に含まれるアレルゲンが存在していても、吸引風路中に設けた抗アレルゲン剤に接触することにより、アレルゲンが大小様々な無害のタンパク質に変化したり、あるいはアレルゲンを包み込んだりして不活化する。これにより、アレルゲンが直接人体に触れることがなく、また、水溶性のアレルゲンを不溶化して、鼻の濡れた粘膜等で溶けたりしないようになり、さらに、集塵室3に蓄積された塵埃中のアレルゲン量を減少させることができる。
【0017】
また、サイクロン式電気掃除機のように、直接塵埃を捨てる集塵方式の場合には、塵埃を廃棄する際に空気中に散布されるアレルゲンの量が減るため、鼻等から吸込んでもくしゃみが出にくくなり、アレルギーに感染するおそれも減少する。さらに、乾燥し砕かれて細かくなったダニの死骸等のアレルゲンが、万一電気掃除機本体1のフィルターを通過し、空気に混ざって部屋に排出されたとしても、アレルゲンが不活化状態であれば人体にとって無害であり、アレルギー感染を防止することができる。
【0018】
[実施の形態2]
図2は本発明の実施の形態2に係る床用吸込具の断面説明図である。
本実施の形態に係る床用吸込具10は、下部に塵埃の吸込口12を有し延長管9(又は手元ハンドル8等)に接続される連結管13が設けられた下ケース11と、この下ケース11の上部を覆うように装着された上ケース14と、外周に植毛やブレードあるいは起毛布16等(以下、植毛等という)が設けられ下ケース11内に回転自在に収容された回転ロータ15と、下ケース11から外方に突出した緩衝部材17と、下ケース11の底面に固定された植毛若しくは起毛布又はヘラ18(以下、植毛、ヘラ等という)と、下ケース11の底面に装着された車輪19とにより構成されており、絨毯40等を掃除する際に絨毯40等に接触する部分に、実施の形態1で説明した抗アレルゲン剤を付加したものである。
【0019】
また、ホースユニット5や延長管9に着脱可能に接続されるアタッチメントである隙間用ノズル20には、図3に示すように、ホースユニット5や延長管9への接続部の反対側に吸込口21とその近傍に植毛等16が設けられ、あるいは図4に示すように、吸込口(図示せず)側に設けた可動可能な植毛台22に植毛等16を設けたものがあるが、本実施の形態は、これら植毛等16に抗アレルゲン剤を付加したものである。
【0020】
本実施の形態に係る床用吸込具10又はアタッチメント20によれば、掃除中に被掃除面に付着したアレルゲンを含む塵埃を吸引すると同時に、アレルゲンが抗アレルゲン剤を付加した部材に接触するので、アレルゲンを不活化し、吸引した塵埃中のアレルゲンの量を減少させることができる。
【0021】
また、吸引できなかったアレルゲンが被掃除面に残ったとしても、抗アレルゲン剤を付加した部材に接触することでアレルゲンを不活化するため、被掃除面に残るアレルゲンの量を減少させることができる。
このように、本実施の形態においても実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0022】
上述の実施の形態1,2において、被掃除面に接触する部材のうち、塵埃の掻き揚げ、拭き、振動を加える等の直接清掃手段となる部材や、被掃除面に接触する部分のみに抗アレルゲン剤を付加すれば、コストを抑えることができる。具体的には、例えば、植毛等16あるいは植毛、ヘラ等18に抗アレルゲン剤を付加する。
【0023】
[実施の形態3]
次に、図2を参照して本発明の実施の形態3に係る床用吸込具について説明する。本実施の形態に係る床用吸込具10の部品構成は、実施の形態2の場合と同様であるが、本実施の形態においては、掃除の際に最も効果を発揮する回転ロータ15に設けた植毛等16に抗アレルゲン剤を付加したものである。
【0024】
このように構成したことにより、1分間に数千回転する回転ロータ15に設けた植毛等16が、回転しながら被掃除面に接触する。このとき、絨毯40を掻き揚げたりしながら、絨毯40の表面や根元に沈んでいるアレルゲンに、抗アレルゲン剤を付加した植毛等15を接触させたり、畳の溝奥に沈んだアレルゲンに接触させたり、あるいは床面に付着したアレルゲンに何度も接触させることができる。
【0025】
このため、アレルゲンの不活化効果が非常に高く、また、アレルゲンに接触する機会の少ない部分に抗アレルゲン剤を付加しなくても大部分のアレルゲンを不活化できるため効率がよく、その上コストを抑えることができる。なお、回転ロータ15を正逆回転可能とすれば、絨毯40の毛を寝かしたり起したりできるので、正回転のみでは絨毯40の毛が寝てしまって届かない場所のアレルゲンにも届くので、アレルゲンの不活化効果をより高めることができる。また、回転ロータ15を複数本設ければ、効果を本数倍高めることができる。さらに、回転ロータ15に杭アレルゲン剤を付加することにより、吸い上げられたアレルゲンが回転ロータ15に接触する機会が増加するので、アレルゲンの不活化効果をより高めることができる。
【0026】
[実施の形態4]
次に、図2を参照して本発明の実施の形態4に係る床用吸込具について説明する。本実施の形態に係る床用吸込具10の部品構成は実施形態2の場合と同様であるが、本実施の形態においては、下ケース11の底面に設けた植毛、ヘラ等18のみに抗アレルゲン剤を付加したものである。
【0027】
このように構成したことにより、被掃除面で床用吸込具10を前後左右に移動させて掃除をする際に、被掃除面に植毛、ヘラ等18が接触して、掻き揚げ、乾拭き等の動作をしながらアレルゲンを不活化することができる。これにより、回転ロータ15を備えていない床用吸込具10においても、アレルゲンを不活化することができる。
また、抗アレルゲン剤を付加した植毛等16を有する回転ロータ15の前後の少なくともいずれか一方に、回転ロータ15とほぼ平行に植毛、ヘラ等18を設けて併用すれば、床用吸込具10の前後方向への移動時に、回転ロータ15と植毛、ヘラ等18の両者が必ず被掃除面に接触するので、アレルゲンの不活化効果をさらに高めることができる。
【0028】
さらに、抗アレルゲン剤を付加した植毛、ヘラ等18を、下ケース11の底部に取付けられ、任意の機構によって前後、左右、上下等に可動する部材に設けることにより、植毛、ヘラ等18を下ケース11の底部に固定した場合に比べて、被掃除面に対して衝撃等を加えることができるので、アレルゲンが表層に浮き出てき易くなって抗アレルゲン剤に接触することがより多くなるので、アレルゲンの不活化効果をより高めることができる。
【0029】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5に係る電気掃除機、床用吸込具及びアタッチメントについて説明する。
本実施の形態は、実施の形態1〜4において、部材に付加される抗アレルゲン剤に、例えば、ポリフェノールの如く即効の抗アレルゲン剤を用いたものである。このように構成したことにより、例えば、植毛等16や植毛、ヘラ等18の部材が被掃除面に接触すると同時にアレルゲンが不活化され、不活化されたアレルゲンが塵埃と共に集塵室3に集塵される(本実施の形態は、以下に説明する各実施の形態においても適用することができる)。
【0030】
本実施の形態の試験にあたっては、図5に示すように、電気掃除機本体1にホースユニット5を接続してその手元ハンドル8に、前後に通気可能な風路24a,24bを有し、この風路24a,24bの間に通気性を有するシートからなるサンプル25(以下、サンプルシートという)を挟んで構成したダストサンプラー23を接続した装置を用いた。
サンプルシート25は、一般に電気掃除機で使用する2層の紙パックフィルターを使用し、目の粗い内層側に抗アレルゲン剤と塩類の如き吸湿性組成物を含む抗アレルゲン組成物を加工した。
【0031】
そして、電気掃除機本体1を駆動してダニアレルゲンを含む塵埃0.02gを1分間吸引し、その直後と、60分放置後に、スキムミルク10%を含むPBS5mlによりダニアレルゲンを抽出し、その抽出液をELISA法によって評価した。評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1において、経過時間5分とあるのは、塵埃の吸引直後に測定を開始したが、測定の準備に5分を要したため表1には5分と記載した。ELISA洗による不活化率とは、(ブランクのダニアレルゲン量−評価サンプルのダニアレルゲン量)/ブランクのダニアレルゲン量×100である。表1から明らかなように、吸引直後に測定した結果と、60分放置後に測定した結果とがほぼ同じであり、本実施の形態によれば、アレルゲンの不活化に即効性があることが確認された。
【0034】
本実施の形態によれば、集塵室3内にアレルゲンの不活化処理をしていない電気掃除機においても、集塵室3に集塵されたアレルゲンは不活化されているので無害であり、アレルギー感染するおそれがない。また、吸引されなかったアレルゲンも、抗アレルゲン剤を付加した部材と接触することにより即時に不活化されるので、無害な状態となって被掃除面に残る。このようにして、被掃除面に残るアレルゲンの量も減少し、被掃除面の上で生活を続けてもアレルギー感染するおそれがなくなる。
【0035】
さらに、実施の形態3のような回転ロータ15を有する床用吸込具10であれば、短時間の間にアレルゲンと接触する機会が多く、接触と同時に不活化を繰返えすので、アレルゲンの不活化効果が高い。
本実施の形態に係る即効の抗アレルゲン剤によるアレルゲンの不活化手順は、アレルゲンを包み込む、分解する、結合するあるいは不溶化する等、どのような手段であってもよい。
【0036】
[実施の形態6]
図6は本発明の実施の形態6に係る床用吸込具の断面説明図である。なお、実施の形態2(図2)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態においては、回転ロータ15の近傍、すなわち、下ケース11の吸込口12の天面に、回転ロータ15に設けた植毛等16に接触するように、抗アレルゲン剤を付加した抗アレルゲン付加部材26を設けたものである。
【0037】
本実施の形態においては、被掃除面に付着したアレルゲンを植毛等16で掻き揚げながら被掃除面から取除いて植毛等16に付着させ、回転ロータ15の回転によりアレルゲンが付着した植毛等16を抗アレルゲン付加部材26に摺接させることで、アレルゲンを不活化させて吸引風路に吸引させる。なお、図において、黒丸27aはアレルゲンを、白丸27bは不活化されたアレルゲンを示す。
このように構成したことにより、植毛等16が摩耗しても影響を受けることなくアレルゲンを不活化できるので、アレルゲン不活化効果の寿命を長くすることができる。さらに、植毛等16にも抗アレルゲン剤を付加すれば、より効果を高めることができる。
【0038】
また、電動送風機2の前後などの風路に搭載するフィルタや、集塵用の紙袋等を抗アレルゲン処理した電気掃除機本体1に、実施の形態1〜5の技術及び本実施の形態を組合わせれば、床用吸込具10に付加した抗アレルゲン剤に接触せずに吸引されたアレルゲンも、集塵室3や排風路内で不活化されるので、電気掃除機全体のアレルゲン不活化性能を高めることができる。
【0039】
[実施の形態7]
図7は本発明の実施の形態7に係る電気掃除機の模式的説明図である。
本実施の形態は、横長の本体ケース31内に、電動送風機2、集塵室3、横長で底面に開口する吸込口に設定され植毛等16(図示せず)が設けられた回転ロータ14や、底面に直接又は間接的に植毛等16を設けた掃除機本体30に、この掃除機本体30を被掃除面で操作するためのパイプ32及びハンドル33を設けた充電式掃除機等の箒型の小型掃除機において、植毛等16を含む被掃除面に接触する部分に、抗アレルゲン剤を付加したものである。
【0040】
このように、上記のような小型掃除機においてもアレルゲン不活化対策を施すことが可能であり、また、吸気が弱く、排気も弱いか又は排気循環により排気が出ないため、被掃除面のアレルゲンを排気で飛ばすこともなく、アレルゲン不活化することができる。
【0041】
[実施の形態8]
次に、図1を参照して本発明の実施の形態8に係る電気掃除機について説明する。
本実施の形態は、負圧の吸引風路において、床用吸込具10から集塵室3までの区間において、吸引風路を構成する部材に抗アレルゲン剤を直接付加するか、又は抗アレルゲン剤を付加した部材を吸引風路に露出するように配置すると共に、それより上流側に例えば塩類を含む吸湿性部材を配置したものである。
【0042】
このように構成したことにより、吸湿性部材が吸った水分を直接又は空気などを媒介して間接的に抗アレルゲン剤を付加した部材に移行させ、その水分を利用して水溶性のアレルゲンを溶かし、抗アレルゲン剤と反応させて不活化させる。
本実施の形態によれば、水分が無いと反応しない抗アレルゲン剤を使用しなくても、水分を補給することなくアレルゲンを不活化することができる。
【0043】
[実施の形態9]
次に、図2〜図4を参照して本発明の実施の形態9に係る床用吸込具について説明する。
本実施の形態においては、図2の回転ロータ15に設けた植毛等16や、床用吸込具10の底面に設けた植毛、ヘラ等18、あるいは、図3、図4の隙間ノズル20に設けた植毛等16や植毛台22に設けた植毛等16に、素材の色と異なる色に着色された表面処理材に抗アレルゲン剤を混入して付加したものである。
【0044】
本実施の形態における作用は、図2〜図4の場合と同様であるが、長期間の使用により植毛等16や植毛、ヘラ等18の表面が摩耗して抗アレルゲン剤のコーティングが剥れ、アレルゲンの不活化効果が低下するが、コーティングが剥れると抗アレルゲン剤の色から素材の色に変化するため、摩耗により寿命が尽きたことを目視により知ることができるので、交換の目安となる。
【0045】
[実施の形態10]
図2〜図4を参照して本発明の実施の形態10に係る床用吸込具について説明する。
本実施の形態においては、図2の回転ローラ15に設けた植毛等16や、床用吸込具10の底面に設けた植毛、ヘラ等18、あるいは、図3、図4の隙間ノズル20に設けた植毛等16や植毛台22に設けた植毛等16の素材に、例えばナイロンなどの吸湿性を有する材料を用いたものである。
【0046】
本実施の形態における作用は、図2〜図4の場合と同様であるが、アレルゲンを不活化するために水分を必要とする抗アレルゲン剤を、植毛等16又は植毛、ヘラ等18に付加したので、水分を必要とする抗アレルゲン剤は、水分を与えることなく素材自から水分を吸湿し、抗アレルゲン剤の作用を助けてアレルゲンを不活化することができる。また、吸引により水分を移行させる必要もないので、掃除をしていないときでも植毛等16や植毛、ヘラ等18に付着したアレルゲンを不活化することができる。
【0047】
[実施の形態11]
図8は本発明の実施の形態11に係る床用吸込具の回転ロータの説明図である。
本実施の形態は、回転ロータ14に設けた植毛等16を、それぞれ前後2種類からなる複数対(図には、4対の場合が示してある)の植毛等16a,16bで構成し、被掃除面に接触すると折れ曲ってそれぞれ植毛等16a,16bが接触するように配置及び長さを設定したものである。そして、前後いずれか一方の植毛等(例えば、16a)に抗アレルゲン剤を付加し、他方の植毛等16bの素材を例えば塩類を含む吸湿性部材で構成するか又は綿等の天然繊維やナイロン等の化学繊維からなる保湿性部材で構成した。
【0048】
このように構成したことにより、掃除中に植毛等16a,16bに付着したアレルゲンを吸湿性部材又は保湿性部材の水分で溶かし、さらに、抗アレルゲン剤が溶けたアレルゲンを不活化する。このため、植毛等16の列が図2の場合の倍の数になり、掻き揚げ量及び拭き量が倍になって、アレルゲンの不活化率を向上することができる。
【0049】
[実施の形態12]
次に、図6を参照して本発明の実施の形態12に係る床用吸込具について説明する。
本実施の形態は、下ケース11の吸込口12の天面に、回転ロータ15に設けた抗アレルゲン剤を付加した植毛等16が被掃除面に接触したのち、二次的に接触する吸湿性部材又は保湿性部材(図示せず)を設けたものである。
【0050】
このように構成したことにより、植毛等16に付着したアレルゲンが吸湿性部材又は保湿性部材と接触して溶け、次に、抗アレルゲン剤を付加した植毛等16が接触することにより抗アレルゲン剤が溶けたアレルゲンと反応して不活化する。この吸湿性部材又は保湿性部材は素材に吸湿性又は保湿性のある材料を用いてもよく、あるいは吸湿剤又は保湿剤を付加したものでもよい。また、吸湿性部材又は保湿性部材を着脱可能とすれば、水分を補給したり、汚れを清掃することができる。
【0051】
[実施の形態13]
次に、図2を参照して本発明の実施の形態13に係る床用吸込具について説明する。
本実施の形態は、絨毯40等を掃除する際に、絨毯40等に接触する緩衝部材17や車輪19など、吸引風路外にある部材に抗アレルゲン剤を付加したものである。
これにより、吸引風路外で被掃除面においてこれらの部材に擦れ合って付着したアレルゲンを不活化することができる。そして、付着後に剥れ落ちてもアレルゲンは無害な物質に変化しているため、アレルギー感染を防止することができる。
【0052】
[実施の形態14]
図9〜図13は本発明の実施の形態14に係る床用吸込具やアタッチメントに設けられる植毛等の説明図である。
本実施の形態は、床用吸込具10やアタッチメント20に設けられて被掃除面と接触する部材、例えば、植毛等16を構成する素材を、基布に単繊維を密集させて形成したものである。
このように構成したことにより、毛の密度が濃く、抗アレルゲン剤がアレルゲンに接触する機会が増加するので、アレルゲンの不活化率を向上することができる。また、単繊維を束状あるいは連続的に植毛することにより密度が増し、アレルゲンの不活化効果を高めるようにしたものである。
【0053】
図9は植毛等16を構成する単繊維16cを波形に形成したもので、塵埃を絡め捕り易く、塵埃に含まれるアレルゲンも同時に捕集し易くなるので、アレルゲンが抗アレルゲン剤と接触し易くなる。
また、図10に示すように、複数の単繊維16cを互いに絡み合わせて撚り合わせることにより、単繊維16c間に塵埃を捕獲し易くなり、アレルゲンの不活化効果をさらに向上させることができる。
さらに、図11に示すように、先端部が枝状に分岐した単繊維16cを使用すれば、単繊維自体の塵埃捕獲能力を向上することができる。
【0054】
図12は植毛等16の他の例を示すもので、単繊維16cの長手方向に連続した凹溝16dを設けるか、又は断面放射状に形成したものである。このように形成することにより、単繊維16cの断面積を増加させることができるので、塵埃を捕獲し易いばかりでなく、抗アレルゲン剤が凹溝16dに入るため、絨毯等に接触しても剥れにくくなる。
また、図13に示すように、単繊維16cの表面に不連続の複数の凹部16dを設けても、同様の効果を得ることができる。
上記の説明では、図9〜図13に係る単繊維16cからなる植毛等16に、抗アレルゲン剤を付加する場合を示したが、本実施の形態に係る植毛等16は、植毛等に抗菌剤や脱臭剤を付加した電気掃除機の床用吸込具やアタッチメントにも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電気掃除機の説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る床用吸込具の断面説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るアタッチメントの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るアタッチメントの他の例の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態5の試験装置の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態6に係る床用吸込具の断面説明図である。
【図7】本発明の実施の形態7に係る電気掃除機の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態9に係る床用吸込具の回転ロータの説明図である。
【図9】本発明の実施の形態9に係る床用吸込具の植毛等の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態9に係る床用吸込具の植毛等の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態9に係る床用吸込具の植毛等の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態9に係る床用吸込具の植毛等の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態9に係る床用吸込具の植毛等の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 掃除機本体、2 電動送風機、3 集塵室、5 ホースユニット、6 蛇腹ホース、8 手元ハンドル、9 延長管、10 床用吸込具、11 下ケース、12 吸込口、14 上ケース、15 回転ロータ、16 植毛等、16c 単繊維、16d 凹溝、17 緩衝部材、18 植毛、ヘラ等、19 車輪、20 隙間ノズル(アタッチメント)、21 吸込口、26 抗アレルゲン剤含有部材、40 絨毯、41 被掃除面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電動送風機及び集塵室が設けられた電気掃除機本体と、該電気掃除機本体に接続されるホースユニットと、該ホースユニットに接続される延長管と、前記電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具とを有し、
該床用吸込具から前記集塵室に至る吸引風路の全部又は一部に、アレルゲンを不活化する物質を付加し、又は該物質を付加した部材を設けたことを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記アレルゲンを不活化する物質を、該アレルゲンを包み込み、分解し結合し又は不溶化する抗アレルゲン剤で構成したことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
内部に電動送風機及び集塵室が設けられた電気掃除機本体と、該電気掃除機本体に接続されるホースユニットと、該ホースユニットに接続される延長管と、前記電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具とを有し、
前記電動送風機の上流側及び下流側又はいずれか一方に抗アレルゲン剤を付加したフィルタを設けると共に、前記床用吸込具の植毛又は起毛布に抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
前記集塵室の上流側に吸湿性部材を設け、塵埃を吸引する際に該吸湿性部材の水分を抗アレルゲン剤を付加した部材に移行させるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気掃除機。
【請求項5】
内部に電動送風機及び集塵室が設けられた電気掃除機本体と、該電気掃除機本体に接続されるホースユニットと、該ホースユニットに接続される延長管と、前記電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具とを有し、
被掃除面に接する部分に抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項6】
本体ケース内に電動送風機、集塵室、回転ロータ等が設けられた掃除機本体と、該掃除機本体にパイプを介して設けられたハンドルとからなり、前記掃除機本体の被掃除面と接触する部分に抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項7】
前記抗アレルゲン剤に、即効の抗アレルゲン剤を用いたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電気掃除機。
【請求項8】
電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具の被掃除面と接触する部分に、抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とする床用吸込具。
【請求項9】
電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具に設けた植毛、起毛布等に、抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とする床用吸込具。
【請求項10】
回転ロータを有し、電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具の前記回転ロータの近傍に、該回転ロータの植毛が接触する抗アレルゲン付加部材又は吸湿性部材若しくは保湿性部材を設けたことを特徴とする床用吸込具。
【請求項11】
回転ロータを有し、電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具の前記回転ロータに複数対の植毛を設け、各対の一方の植毛に抗アレルゲン剤を付加し、他方の植毛に吸湿性部材又は保湿性部材を付加したことを特徴とする床用吸込具。
【請求項12】
前記床用吸込具に設けた植毛、起毛布等、該床用吸込具に設けた回転ロータの植毛の素材に、吸湿性を有する材料を用いたことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の床用吸込具。
【請求項13】
前記床用吸込具に設けた植毛、起毛布等、該床用吸込具に設けた回転ロータの植毛に、素材の色と異なる色に着色された表面処理材に抗アレルゲン剤を混入して付加したことを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の床用吸込具。
【請求項14】
前記抗アレルゲン剤に、即効の抗アレルゲン剤を用いたことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の床用吸込具。
【請求項15】
回転ロータを有し、電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続される床用吸込具の前記回転ロータに植毛又はブレードを設け、該植毛又はブレードに抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とする床用吸込具用回転ロータ。
【請求項16】
電気掃除機本体、ホースユニット又は延長管に接続されるアタッチメントに設けた植毛又は起毛布に、抗アレルゲン剤を付加したことを特徴とするアタッチメント。
【請求項17】
前記植毛又は起毛布の素材に吸湿性を有する材料を用いたことを特徴とする請求項15記載のアタッチメント。
【請求項18】
前記植毛又は起毛布に、素材の色と異なる色に着色された表面処理材に抗アレルゲン剤を混入して付加したことを特徴とする請求項15又は16記載のアタッチメント。
【請求項19】
前記抗アレルゲン剤に、即効の抗アレルゲン剤を用いたことを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のアタッチメント。
【請求項20】
請求項9〜19のいずれかに記載の植毛を、単繊維の集合体を結束して形成したことを特徴とする床用吸込具又はアタッチメント。
【請求項21】
請求項9〜20のいずれかに記載の植毛を構成する単繊維を波形に形成したことを特徴とする床用吸込具又はアタッチメント。
【請求項22】
請求項9〜21に記載の植毛を、単繊維を絡み合い撚り合わせて形成したことを特徴とする床用吸込具又はアタッチメント。
【請求項23】
請求項9〜22のいずれかに記載の植毛を、単繊維の先端部を枝状に分岐して形成したことを特徴とする床用吸込具又はアタッチメント。
【請求項24】
請求項9〜23のいずれかに記載の植毛を構成する単繊維の長手方向に凹溝を設け、又は単繊維の断面形状を放射状に形成したことを特徴とする床用吸込具又はアタッチメント。
【請求項25】
請求項9〜24のいずれかに記載の植毛を構成する単繊維の表面に、複数の不連続の凹部を設けたことを特徴とする床用吸込具又はアタッチメント。
【請求項26】
請求項9〜25のいずれかに記載の床用吸込具、床吸込具用回転ロータ、アタッチメント又はそのいずれかを備えたことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−204350(P2006−204350A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16852(P2005−16852)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】