説明

電気掃除機用集塵袋

【課題】集塵袋の使い勝手を維持しつつ、集塵袋内に集塵されたダニ、花粉等のアレルゲン物質による被害を防止する。
【解決手段】集塵袋1は、塵埃吸入口2を有する口紙3に袋本体4を接着して形成し、該袋本体4は薄い内層紙6と厚い外層紙7とから構成する。更に、該内層紙6全体にアレルゲン不活性化剤8を含浸させると共に、前記外層紙7の内側面にアレルゲン不活性化剤9を塗布する。内層紙6の内外両側面及び外層紙7の内側面にアレルゲン不活性化機能を付与することにより、袋本体4内に集塵された塵埃中のダニ、花粉等のアレルゲン物質10を不活性化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機用集塵袋に関するものであり、特に、紙製の袋本体にアレルゲン不活性化機能を付与せしめた電気掃除機用集塵袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機の集塵室に装着される集塵袋は、集塵吸入口を有する口紙に紙製の袋本体を接着して成り、該袋本体としては、高い通気性及び可撓性を確保するために、外層紙及び内層紙により形成したものがある(特許文献1)。この場合、該外層紙及び内層紙は、木材パルプ、麻パルプ、合成繊維(ポリエステル繊維、PVA繊維、アクリル繊維等)を原料として丸網抄紙機又は長網抄紙機によって製造されるが、この製造時に於ける抄紙工程では、紙の中に含まれている水分を乾燥処理することが必須になっている。
【0003】
そして、前記電気掃除機に集塵袋を装着して部屋掃除を行う場合、吸引ホースを介して前記集塵袋に吸入された塵埃の多くは、前記袋本体の内層紙の中に集塵されるが、一部の細かい塵埃については、該内層紙の目(メッシュ)を通過して該内層紙と外層紙の間に集塵される。尚、前記集塵袋内に所定量の塵埃が集塵されたときは、掃除者が該集塵袋を袋ごと電気掃除機から取り外して塵埃を廃棄処分している。
【特許文献1】特開平5−049572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記集塵された塵埃の中には、細かいハウスダストの他に、死骸や糞を含むダニアレルゲン、花粉アレルゲン等のアレルゲン物質(水溶性タンパク質)が混在している。従って、掃除者が前記集塵袋を電気掃除機から取り外す際、或いは、前記電気掃除機の内部等を手で拭いて掃除する際に、掃除者の手や腕などの皮膚面が前記アレルゲン物質と接触することがある。又、前記集塵袋内の微細な塵埃中のアレルゲン物質(生きたダニ類を含む)が外層紙を通って部屋内に漏洩・暴露され、該アレルゲン物質が居住者の皮膚に接触したり、或いは居住者によって吸い込まれる恐れがある。もし、ダニや花粉等のアレルゲン物質が人体に接触したり吸い込まれた場合は、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症などのアレルギー性疾患を引き起こすという問題があった。
【0005】
尚、良好な屋内環境を確保すべく、微細な前記アレルゲン物質が前記外層紙の外側へ通過・漏洩しないようにするには、該外層紙の厚さを厚くして紙の目を小さくすることが考えられるが、この場合は、該外層紙の通気性及び可撓性が失われるため、前記集塵袋の電気掃除機への装着性や吸引集塵性が低下して使い勝手が悪くなる。
【0006】
又、上記問題を解決するには、紙製袋本体にポリフェノール等のアレルゲン不活性化剤を含有させてアレルゲン不活性化機能を付与させることが考えられる。しかしながら、この場合、アレルゲンの不活性化反応を進行させるためには水分が不可欠になるが、前記袋本体の抄紙工程に於ける水分乾燥処理以降では水分が欠如するので、該袋本体にアレルゲン不活性化機能を付与させることができない。即ち、前記袋本体(外層紙、内層紙)の抄紙工程に於いて紙の中の水分を乾燥させた後は、アレルゲン不活性化反応に必要な水分が失われるので、例えば、ポリフェノール単体ではアレルゲン不活性化反応を進行さることができなくなる。
【0007】
そこで、上記集塵袋内に集塵されたアレルゲン物質によるアレルギー性疾患等の被害を防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は該課題を解決する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、集塵吸入口を有する口紙と、前記集塵吸入口と連通するように前記口紙に接着された袋本体とより成り、該袋本体が外層紙と該外層紙よりも薄い内層紙とから形成された電気掃除機用集塵袋に於いて、前記内層紙にアレルゲン不活性化剤が含浸されていると共に、前記外層紙の内側面にアレルゲン不活性化剤が塗布されている電気掃除機用集塵袋を提供する。
【0009】
この構成によれば、前記アレルゲン不活性化剤が前記内層紙の内外両側面、外層紙の内側面に含浸、塗布されているので、集塵袋内に収集されたダニや花粉等のアレルゲン物質は、前記内層紙の内外側表面又は外層紙の内側表面に接触することにより、該表面上のアレルゲン不活性化剤によってアレルゲン活性が不活性化される。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記アレルゲン不活性化剤が、上記アレルゲン物質を不溶化する無機塩と、該アレルゲン物質の立体構造を変化させるポリフェノールとを含む請求項1記載の電気掃除機用集塵袋を提供する。
【0011】
この構成によれば、前記無機塩によるアレルゲン不活化と、前記ポリフェノールによるアレルゲン不活化との2種類によって、前記アレルゲン物質のアレルゲン活性が消滅される。この場合、前記無機塩が前記アレルゲン物質を不溶化させることにより、水中に溶解した前記アレルゲン物質のアレルゲン活性が消滅されるものと考えられる。又、前記無機塩が空気中の水分を吸い込むことにより、水中に溶解した前記アレルゲン物質と前記ポリフェノールとが相互に反応して、前記アレルゲン物質のアレルゲン活性が消滅されるものと考えられる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、ダニ等の前記アレルゲン物質は、前記内層紙又は外層紙表面の前記アレルゲン不活性化剤に接触してアレルゲン活性を失うので、前記アレルゲン物質に人体が接触したり吸い込んだりしても、従来のようにアレルギー性疾患を引き起こす恐れがない。この場合、前記外層紙を厚く形成する必要がないので、前記袋本体の通気性及び可撓性が良好に確保され、前記集塵袋の使い勝手を悪くすることもない。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記アレルゲン物質のアレルゲン活性の消滅が、前記無機塩による不溶化反応経路と、前記ポリフェノールによる立体構造変化経路との2種類の経路により行われるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、前記アレルゲン物質に対するアレルゲン不活化作用を一層確実に行うことができるという利点を有する。
【0014】
又、前記内層紙及び外層紙は、抄紙工程及び薬品加工工程に於いて乾燥処理が行われるため、アレルゲン不活性化反応に必要な水分が失われるが、前記無機塩が吸湿組成物として機能することにより、空気中の水分を吸収して前記内層紙及び外層紙自体に必要な水分が常に含有されるので、ポリフェノール等のアレルゲン不活性化剤によるアレルゲン不活性化反応を円滑に進行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、集塵吸入口を有する口紙と、前記集塵吸入口と連通するように前記口紙に接着された袋本体とより成り、該袋本体が外層紙と該外層紙よりも薄い内層紙とから形成された電気掃除機用集塵袋に於いて、前記内層紙にアレルゲン不活性化剤が含浸されていると共に、前記外層紙の内側面にアレルゲン不活性化剤が塗布されていることにより、上記集塵袋に収集された塵埃中のアレルゲン物質によるアレルギー性疾患を防止するという目
的を実現した。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図9に従って説明する。図1に於いて、1は電気掃除機用集塵袋であり、該集塵袋1は電気掃除機の集塵室に脱着自在に装着される。該集塵袋1は、中央部に塵埃吸入口2が形成された口紙3と、該口紙3に接着された横長の袋本体4とより成る。該袋本体4の略中央部には、前記塵埃吸入口2と連通する開口部5が設けられ、該開口部5の内周縁部には、複数の切り込みが放射方向に形成されている。
【0017】
上記袋本体4は、図2に示すように、薄紙からなる内層紙6と、該内層紙6の外側に配置された外層紙7とから構成されている。該内層紙6及び外層紙7は共に、合成繊維とパルプ材を原料として抄造されている。本実施例では、該内層紙6、外層紙7は夫々原料量14g/m、50g/m使用して抄造されており、該外層紙7の紙の目(メッシュ)は前記内層紙6よりも細かく、且つ、該外層紙7の紙の厚さは内層紙6よりも厚く形成されている。斯くして、前記袋本体4内に集塵された塵埃のうち、大き目の塵埃は前記内層紙6の内側面に接触して捕捉されるが、粒径が所定以下である小さ目の塵埃は、該内層紙6を通過して該内層紙6の外側面と前記外層紙7の間に捕捉される。
【0018】
前記内層紙6にはアレルゲン不活性化剤8が含浸されていると共に、前記外層紙7の内側面にはアレルゲン不活性化剤9が塗布されている。該外層紙7に塗布されたアレルゲン不活性化剤9は、前記内層紙6に含浸されたアレルゲン不活性化剤8と同一又は異なる成分を含有するものを使用できるが、該アレルゲン不活性化剤9としては、例えば、液状又ペースト状のものを用いることができる。
【0019】
前記アレルゲン不活性化剤8,9は、公知のアレルゲン不活性化剤を抗アレルゲン組成物に所要量、例えば0.01乃至50重量%含有させた液状、粉粒状、ペースト状のものを使用できる。又、前記アレルゲン不活性化剤8,9の成分は特に限定されないが、例えば、タンニン酸、ガロタンニン、エピカテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレート等のポリフェノール類、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩等を使用できるほか、茶抽出物、柿渋、没食子酸等を使用できる。又、前記吸湿剤としては、例えば、アルカリ土類金属であるマグネシウム又はカルシウムの塩化物又は硫酸塩等を使用できる。
【0020】
上記集塵袋1は、電気掃除機の集塵室に装着して使用し、使用時に、前記塵埃吸入口2から前記袋本体4内に塵埃が吸引されると、図3に示すように、該袋本体4は略亀甲形に膨らむ。該袋本体4内に吸入された塵埃の多くは、前記内層紙6の内側面に接触した状態で捕捉され、この場合、塵埃中のダニ、花粉等のアレルゲン物質10は、図2に示すように、前記内層紙6に含浸した前記アレルゲン不活性化剤8により不活性化される。
【0021】
更に、前記アレルゲン物質10のうち粒径が所定以下の細かいものは、前記内層紙6を通過して前記内層紙6と外層紙7の間に存在するが、このアレルゲン物質10は、前記内層紙6の外側面又は外層紙7の内側面に接触して前記アレルゲン不活性化剤8,9により不活性化される。
【0022】
次に、前記アレルゲン不活性化剤9による不活性化のメカニズムについて、図4乃至図7に従って解説する。尚、該アレルゲン不活性化剤9は、一例として、無機塩11及び天然ポリフェノール12を含有する薬品名「アレルセーブT−30」(シントーファイン株式会社製造)を用いた。
【0023】
図4に示すように、前記外層紙7の内側面には、前記「アレルセーブT−30」の有効
成分である無機塩11及び天然ポリフェノール12が塗布されていると共に、その近傍には、前記内層紙6を通過したダニ、花粉等の前記アレルゲン物質10が存在する。そして、図5に示すように、前記無機塩11のうちの一部は空気中の水を取り込み、この水の中に前記天然ポリフェノール12が溶解する。
【0024】
次に、図6に示すように、前記天然ポリフェノール12のOH基と前記アレルゲン物質10のNH又はNH2 基との間に不活化反応が起こることにより、該アレルゲン物質10は立体構造に変化を生じて不活化される(図8参照)。
【0025】
他方、前記無機塩11のうちの他の一部は、空気中の水を取り込むことなく、該無機塩11の陽イオンM+ が前記アレルゲン物質10の陰イオンCOO- と結合反応を起こすことにより、該アレルゲン物質10は水に溶けない形となって不活化される(図9参照)。
【0026】
斯くして、図7に示すように、該アレルゲン物質10の全てが前記無機塩11及び天然ポリフェノール12によって不活化され、特に、該天然ポリフェノール12により不活化されたアレルゲン物質10の一部は、前記外層紙7の表面から内部に移行して捕捉される。
【0027】
上記不活性化のメカニズムは、前記内層紙6に於けるアレルゲン不活性化剤8による場合についても同様であり、前記アレルゲン物質10は、前記内層紙6の内外両側面及び内部に含浸された前記アレルゲン不活性化剤8によって効果的に不活性化される。
【0028】
ここで、前記内層紙6と外層紙7の間に存在するアレルゲン物質10のうち、粒径が一定以下の微細なものについては、前記外層紙7を通過して前記袋本体4の外側に漏洩し、これにより、電気掃除機の集塵室や居室内に前記アレルゲン物質10が暴露される恐れがある。この場合、暴露されたアレルゲン物質10は、前記内層紙6及び外層紙7を通過する間に前記アレルゲン不活性化剤8,9により既に2段階で不活性化されているため、前記アレルゲン物質10のアレルゲン活性は殆ど消滅していると考えられる。従って、仮に、前記漏洩したアレルゲン物質10が居室内に暴露されている場合、或いは、前記集塵袋1を電気掃除機から取り外して廃棄する場合に、掃除者等が前記アレルゲン物質10に皮膚接触を起こしたり、或いは、該アレルゲン物質10を吸い込んだとしても、アレルギー性疾患を引き起こす恐れはない。
【0029】
このように、本発明は、前記集塵袋1内に集塵された塵埃中のアレルゲン物質10を確実に不活性化することができ、たとえ該アレルゲン物質10が前記集塵袋1の外側に漏洩してもアレルギー性疾患の発生を予防できる。この場合、該アレルゲン物質10が前記集塵袋1から漏洩することを阻止すべく、前記外層紙7を厚くする必要がないので、該集塵袋1は高い可撓性、通気性及び強靱性を有し、良好な使い勝手が確保される。
【0030】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、集塵袋の使用前の平面図。
【図2】図1の集塵袋の使用時の斜視図。
【図3】一実施の形態に係る袋本体の断面図。
【図4】本発明に係るアレルゲン不活性化メカニズムのアレルゲン不活性化剤の塗布状態をイメージして説明する模式図。
【図5】本発明に係るアレルゲン不活性化メカニズムの無機塩の水取込み状態をイメージして説明する模式図。
【図6】本発明に係るアレルゲン不活性化メカニズムのアレルゲン不溶化及び不活性化状態をイメージして説明する模式図。
【図7】本発明に係るアレルゲン不活性化メカニズムのアレルゲン不活化反応後をイメージして説明する模式図。
【図8】本発明に係る天然ポリフェノールによるアレルゲン不活化反応を示す説明図。
【図9】本発明に係る無機塩によるアレゲン不活化反応を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 集塵袋
2 塵埃吸入口
3 口紙
4 袋本体
5 開口部
6 内層紙
7 外層紙
8 アレルゲン不活性化剤
9 アレルゲン不活性化剤
10 アレルゲン物質
11 無機塩
12 天然ポリフェノール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵吸入口を有する口紙と、前記集塵吸入口と連通するように前記口紙に接着された袋本体とより成り、該袋本体が外層紙と該外層紙よりも薄い内層紙とから形成された電気掃除機用集塵袋に於いて、前記内層紙にアレルゲン不活性化剤が含浸されていると共に、前記外層紙の内側面にアレルゲン不活性化剤が塗布されていることを特徴とする電気掃除機用集塵袋。
【請求項2】
上記アレルゲン不活性化剤が、上記アレルゲン物質を不溶化する無機塩と、該アレルゲン物質の立体構造を変化させるポリフェノールとを含むことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機用集塵袋。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−42873(P2006−42873A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224233(P2004−224233)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【出願人】(000205823)大昭和紙工産業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】