説明

電気掃除機

【課題】電気掃除機運転時の排気のクリーンレベルを大幅に高めた電気掃除機を提供すること。
【解決手段】吸引された塵埃に脱臭材7を粉体状にして混合させ、塵埃より発生する臭気を直接吸着させることで、集塵室から排出する臭気を低減し、また運転停止時の集塵室2内の臭気の滞留量も少なくなるため、次回の運転時に濃度の高まった臭気が集塵室2より一気に排出されることもなくなり、常に快適な空質環境を維持しながら、掃除作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭材料を用いて吸引した塵埃の臭気を除去し、排気の臭気を低減する電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住環境の快適性が求められるなか、電気掃除機においても、クリーン機能向上へのニーズが年々高まっており、特に排気に含まれる塵埃、臭気、細菌等に対する低減、除去のニーズは、最もニーズが高い。
【0003】
従来の電気掃除機の排気脱臭に関しては、排気経路に脱臭フィルターを搭載する構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−231019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記排気経路に脱臭フィルターを搭載する方法では、電動送風機の風量が大きいため、脱臭フィルター中の消臭剤と臭気との接触時間が短くなり、脱臭効率が小さく臭気の低減も小さいという課題を有していた。
【0005】
また、脱臭性能を高めるため脱臭フィルターの容量を増加させた場合には、排気抵抗も増加し、電動送風機の吸引力が低下するという課題も有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電気掃除機使用時の排気に含まれる臭気を大幅に低減する電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電気掃除機は、吸引風を発生させて塵埃を吸引する電動送風機と、吸引された塵埃を貯留する集塵室と、前記集塵室内に供給される脱臭材を収納する収納室とを備え、前記収納室内に収納した脱臭材を粉体状態で前記集塵室に投入するものである。
【0008】
これによって、吸引した塵埃に対して、脱臭材を粉体状態で混合させることができ、脱臭材と直接接触した塵埃は、脱臭材による直接吸着により効率良く臭気が除去されることになり、集塵室内の臭気が低減され、運転時の排気に含まれる臭気が大幅に低減できるばかりでなく、運転停止時でも集塵室内に臭気が滞留することもないため、次回運転時に高濃度の臭気を含んだ空気が排出されることもなくなり、掃除作業時の室内環境を常に快適な状態に維持することとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気掃除機は、集塵室内へ脱臭材を粉体状態で投入し、電気掃除機運転時の排気のクリーンレベルを大幅に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、吸引風を発生させて塵埃を吸引する電動送風機と、吸引された塵埃を貯留する集塵室と、前記集塵室内に供給される脱臭材を収納する収納室とを備え、前記収納室内に収納した脱臭材を粉体状態で前記集塵室に投入することにより、吸引した塵埃に対して、脱臭材を接触率が高い粉体状態で混合させることができ、脱臭材と直接接触した塵埃は、脱臭材による直接吸着により効率良く臭気が除去されることになり、集塵室内の臭気が低減され、運転時の排気に含まれる臭気が大幅に低減できるばかりでなく、運転停止時でも集塵室内に臭気が滞留することもないため、次回運転時に高濃度の臭気を含んだ空気が排出されることもなくなり、掃除作業時の室内環境を常に快適な状態に維持することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の粉体状態の脱臭材を粒径が100ミクロン未満としたことにより、脱臭材の重量当たりの表面積が大きいため、臭気の吸着容量が大きく、さらに静電気を帯びやすいため、塵埃と混合した場合に容易に付着し、臭気を直接除去でき、さらに電動送風機が発生する吸引気流の力で、堆積塵埃の内部にも容易に拡散し、堆積塵埃内部の臭気も除去できる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の脱臭材が、活性炭、ゼオライトのいずれかを含むものとすることにより、電気掃除機の塵埃のような複合臭気を効率よく除去することができる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1から3のいずれか1つの発明の脱臭材に抗菌材料が含まれているものとすることにより、抗菌材料が塵埃に直接作用して集塵室内の菌の繁殖を抑制し、臭気に加え衛生面でも効果的なものとすることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における電気掃除機の構造断面図である。図1において、電気掃除機の本体1内には、集塵室2、および電動送風機3が配置されており、また、本体1前部には、集塵室2と連通して、吸引口4が開口しており、床面などから塵埃を吸引、導入するための吸引管5が接続されている。掃除作業は、電動送風機3の作動により吸引風を発生させて、塵埃を吸引することにより、吸引管5を経て、塵埃が集塵室2に貯留し、吸引気流のみが、除塵手段を通過して細塵が除去された状態で本体1外へ排出される。
【0016】
次に図1及び図2の脱臭材投入部の要部拡大断面図を参照しながら説明する。集塵室2以前の吸引管5の連通上部には、収納室6が設置されており、収納室6内に脱臭材7が装填されている。前記脱臭材7は、平均粒径が20ミクロンの活性炭粉末をコロイダルシリカをバインダーとして、角柱状に成形し固形化したものである。
【0017】
吸引管5内に面した収納室6の底部には、脱臭材投入手段8が組み込まれている。脱臭材投入手段8は、図3に示すように、複数の金属製の薄板が等間隔に枠状の治具により固定されているものであり、薄板の端面が脱臭材7を支持している。前記脱臭材投入手段8において、薄板の長手方向と垂直の方向に振幅動作が起きると、脱臭材7の接触面が表層から一定幅切削され、切削された時にかかる衝撃により、脱臭材7は、バインダーと活性炭粉末の結合が切れて、再び粉末状態に戻りながら、吸引管5内に落下する。
【0018】
前記脱臭材投入手段8の振幅動作は、電磁式バイブレータ等の振動手段9を用いると安定した振幅を発生させることができる。また脱臭材投入手段8を挟んだ振動手段9の対面には、バネ等の弾性手段10を設置すると、振幅がより安定する。
【0019】
また、脱臭材投入手段8に対して、脱臭材7を一定の力で押しつけることにより、切削量を安定できるため、脱臭材7と収納室6の蓋との間に弾性手段10を設けた。
【0020】
また、さらに脱臭材投入手段8の上流側には、塵埃検知手段11として、赤外線センサーが吸引管5内に向けて設置されている。前記電動送風機3、脱臭材投入手段8、塵埃検知手段11及び、電気掃除機に供給される電力を制御する電源回路12、運転停止スイッチ13は、図4の電気回路ブロック図に示すように構成されており、運転停止スイッチ13により、電動送風機3および塵埃検知手段11が起動し、塵埃検知手段11は、吸引管5内に連続的に赤外線を照射し、塵埃が吸引されて、赤外線の照射量が変化するのを信号として検出し、脱臭材投入手段8を一定時間動作させ、脱臭材7を切削し、活性炭粉末を吸引管5内に投入する。投入された活性炭粉末は、塵埃と混合しながら集塵室2内へ気流に乗って移動する。
【0021】
以上のように構成された電気掃除機を用いて、本発明の効果を調べた。
【0022】
(実験例1)
上記の電気掃除機を用いて、実部屋の掃除を15分間行った。対照実験として脱臭材7無しの条件と、上記の電気掃除機において塵埃検知手段11無しの、図5の電気回路ブロック図に示すような、電動送風機3の動作中は、脱臭投入手段8が連続的に動作する条件の、計2条件電気掃除機を用いての実部屋の掃除も15分間行った。この実部屋掃除を、30日間続けた。排気臭気に対して官能的に意識しながら、掃除作業を継続した結果、脱臭材投入無しの対象実験の電気掃除機は、7日目くらいから運転開始直後の排気の臭気が気になったが、本実施の形態の電気掃除機および、塵埃検知手段11無しの脱臭材投入の対照実験は、共に実験開始30日目の試験終了時点でも、運転開始時、運転中とも排気の臭気が気になることはなかった。
【0023】
次にこれらの電気掃除機を、1mの密閉チャンバー内にセットし、1日静置したのち30秒間運転させた。チャンバー内の空気を官能評価パネラー6名で、におい嗅ぎ官能評価を行った。結果は、本実施の形態は、平均の臭気強度が0.8であったのに対して、対照実験の脱臭材7なしの条件は、平均の臭気強度は2.8であり、塵埃検知手段11無しの条件は、平均の臭気強度は、0.5であり、脱臭材7を投入する条件は全て、定量的にも臭気強度が大幅に低減されていることを確認した。
【0024】
臭気強度1がにおいの検知閾値であることを考慮に入れると、本実施の形態および、対照実験の塵埃検知手段11無しの条件は、両方とも臭気のない排気を実現している。
【0025】
また、本実施の形態と対象実験の2条件とも、集塵室2内の塵埃は、ほぼ70g吸引しており、一方、脱臭材7の重量を測定すると、本実施の形態は0.72g、対照実験の方は2.05g、それぞれ重量が減少していた。つまり、集塵室2内の塵埃に対してそれぞれ、約1wt%および3wt%分投入されたことになる。排気臭の官能評価の結果と併せて考えると、脱臭材7の投入量は、塵埃量に対して1wt%投入されていれば十分であることがわかる。
【0026】
以上の結果より、本実施の形態のように、吸引気流中に脱臭材7を投入し、塵埃と混合させることで、塵埃の臭気を除去し、電気掃除機の使用時に加え、運転停止中も集塵室2内で臭気が発生しないため、通常高濃度の臭気が排出されやすい運転開始時の排気に含まれる臭気も大幅に低減され、快適な空質環境で掃除作業を行うことができる。さらに、脱臭材7の投入を塵埃が吸引された時を検知して行うことで、脱臭効果を犠牲にすることなく、投入量を節約できるため、固形化した脱臭材7の定期的な追加頻度も少なくて済む。
【0027】
尚、本実施の形態では、脱臭材投入手段8を動作させて脱臭材7を切削、投入する制御手段として、塵埃検知手段11を使用したが、他の制御手段として、図6の電気回路ブロック図に示すように、集塵室2以降の排気風路に臭気検知手段14を設置し、排気に含まれる臭気レベルの増加を検知して脱臭材投入手段8を動作させるものや、図7の電気回路ブロック図に示すように、使用者が任意に脱臭材投入手段8の作動停止を行える脱臭材投入スイッチ15を設置して、使用者が掃除作業の際、定期的に脱臭材7を投入する場合でも、同様の脱臭効果や、脱臭材7投入量の節約効果が得られる。前記臭気検知手段14としては、酸化物半導体式のガスセンサーを用いると、塵埃由来の複合臭気に対しても低濃度で検知が可能であり、脱臭材投入手段8を動作開始させるための臭気濃度レベルも幅広く設定できる。
【0028】
また、本実施の形態では、脱臭材7として活性炭を使用したが、活性炭以外にも、ゼオライト等でも、塵埃からの複合臭気を低減させ、同様の効果が得られる。
【0029】
また、前記収納室6に脱臭材を担持したものを用いると、更に排気に含まれる臭気レベルを低減することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、集塵室2として紙パック方式を用いて説明したが、塵埃と空気を遠心気流を発生させて分離する遠心分離型方式の集塵室2を用いてもよく、脱臭材7の投入機構は別体であるため集塵室2の形態に影響されず、同様の脱臭効果が得られる。遠心分離方式の場合は、気流が塵埃中を通過する割合が少なくなるため、排気に含まれる臭気はより低減される。
【0031】
(実験例2)
脱臭材7のかわりに、粒径が約1〜2mmの顆粒状の活性炭をバインダーで固めたものを本実施の形態の収納室6に装填し、実験例1と同様に実部屋の掃除実験を行った。終了後、同様にチャンバー試験を行ったところ、排気の臭気強度の平均は、2.5であり、顕著な脱臭効果は得られなかった。また顆粒状活性炭を固めた脱臭材の減少量は、5gであった。
【0032】
この結果と、実験例1の結果より、どのような形状、粒径の脱臭材料を投入しても脱臭効果が得られるわけではなく、粉末状の脱臭材7を投入することが、最も臭気を低減できることを確認できた。また、粒径の大きい脱臭材料7を用いると、単位投入量が多くなり、脱臭材料の追加頻度が大幅に増加し、使い勝手の悪い脱臭方式になることも確認できた。
【0033】
(実施の形態2)
本実施の形態では、脱臭材7の活性炭粉末量10部に対して、抗菌材料16として銀を5%含有するゼオライト粉末を2部加えて、バインダーとしてコロイダルシリカを用いて角柱状に成形、固形化した。
【0034】
この成形物を、実施の形態1の電気掃除機の収納室6に装填し、前記実験例1と同様に実部屋の掃除実験を30日間行った。実験終了後の集塵室内の塵埃から1g採取し、界面活性剤を含む滅菌水に分散させ、分散後の水溶液を、標準寒天培地上に0.2ml塗布し、35℃のインキュベーター内で40時間培養した。対照実験として、実施の形態1の脱臭材7無しの塵埃も同様に培養した。
【0035】
結果は、対照実験に比較し、本実施の形態は、90%以上の菌数の低減が確認された。
【0036】
以上より、脱臭材7に抗菌材料16を加えることで、抗菌材料16が直接塵埃に作用して集塵室2内の菌の繁殖を抑制し、排気の衛生レベルも向上する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる電気掃除機は、集塵室内へ脱臭材を粉体状態で投入し、電気掃除機運転時の排気のクリーンレベルを大幅に高めることができ、家庭用掃除機の他に業務用掃除機、またさらに生ゴミ処理機の脱臭用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機の構造断面図
【図2】同、電気掃除機の脱臭材投入部の要部拡大断面図
【図3】同、電気掃除機の脱臭材投入手段の動作状態を示す略斜視図
【図4】同、制御手段として塵埃検知手段を用いる場合の電気回路ブロック図
【図5】同、制御手段として電動送風機の動作と連動させる場合の電気回路ブロック図
【図6】同、制御手段として臭気検知手段を用いる場合の電気回路ブロック図
【図7】同、制御手段として投入手段動作スイッチを用いる場合の電気回路ブロック図
【符号の説明】
【0039】
2 集塵室
3 電動送風機
5 吸引管
6 収納室
7 脱臭材
8 脱臭材投入手段
11 塵埃検知手段
14 臭気検知手段
15 脱臭材投入スイッチ
16 抗菌材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引風を発生させて塵埃を吸引する電動送風機と、吸引された塵埃を貯留する集塵室と、前記集塵室内に供給される脱臭材を収納する収納室とを備え、前記収納室内に収納した脱臭材を粉体状態で前記集塵室に投入する電気掃除機。
【請求項2】
粉体状態の脱臭材は、粒径が100ミクロン未満とした請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
脱臭材は、活性炭、ゼオライトのいずれかを含む請求項1または請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
脱臭材に抗菌材料を含ませた請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−167488(P2006−167488A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40576(P2006−40576)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【分割の表示】特願2004−5244(P2004−5244)の分割
【原出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】