説明

電気掃除機

【課題】掃除機本体の横置き状態で、伸縮延長管を起立状態で掃除機本体に保持させることができる係止部材を、狭い空間の清掃における性能を損なうことなく構成する。
【解決手段】係止部材201を、吸口体105の開口部が被清掃面に対向した状態において、伸縮延長管104に接続された継手管の回動によって被清掃面と伸縮延長管の軸方向とのなす角度が1〜3.5度の範囲内の所定の角度になるまで伸縮延長管が傾斜可能な位置に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機本体の走行車輪および案内車輪を接地させた状態で吸口体、伸縮延長管やホースを電気掃除機本体に接続したまま、電気掃除機本体に取り付けることのできる電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機本体の走行車輪および案内車輪を接地させた横置き状態で、吸口体と伸縮延長管やホースを掃除機本体に取り付けることができる電気掃除機は、例えば、特開平3−77516号公報(特許文献1)や特開2010−51357号公報(特許文献2)に記載されている。
【0003】
特許文献1に示される電気掃除機は、伸縮延長管または吸口体が、互いに平行又はほぼ平行なL字型の係止部材が設けられた連結装置により、電気掃除機本体に設けられた互いに平行なL字型の保持側壁と背後から連結する。また、前記係止部材のフランジ部はウェブにより、前記フランジ部と反対側の面と固く連結される構成となっている。
【0004】
特許文献2に示される電気掃除機は、上ケースにリング状の係合部が設けられ、延長パイプにL字形状の係止子が設けられ、延長パイプが起立した状態で、係止子が係合部に係合して、延長パイプの起立が保たれる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−77516号公報
【特許文献2】特開2010−51357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明によると、吸口体と伸縮延長管に接続可能な連結装置に係止部材を形成している。しかしながら、互いに平行なL字型の前記係止部材のフランジ部は、ウェブにより前記フランジ部の反対側の面と接続しているため、前記フランジ部が伸縮延長管や吸口体の管部より大きく突出してしまい、狭い空間(例えば、ベッドの下の空間)の清掃時の障害となったり、本体係止部の構造が大きくなったりしてしまう。
【0007】
特許文献2に記載の発明でも、L字形状の係止子が延長パイプより大きく突出してしまい、狭い空間の清掃時の障害となったり、本体係止部の構造が大きくなったりしてしまう。
【0008】
本発明の目的は、伸縮延長管を起立状態で、横置き状態の掃除機本体に保持させることができる係止部材を、狭い空間の清掃における性能を損なうことなく構成した電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、係止部材を、吸口体の開口部が被清掃面に対向した状態において、伸縮延長管に接続された継手管の回動によって被清掃面と伸縮延長管の軸方向とのなす角度が1〜3.5度の範囲内の所定の角度になるまで伸縮延長管が傾斜可能な位置に形成することにある。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、吸口体の前後方向に回動可能な継手管の側面のうち、継手管の下面側でかつ継手管内に形成される流路の側面から見た投影図において流路の外郭よりも内側に、伸縮延長管を起立状態で掃除機本体に保持させるための係止部材を形成したことにある。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、本体係止部の上部に、伸縮延長管あるいは伸縮延長管と吸口体との間に接続される補助吸口に当接する支持部を配置したことにある。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の特徴とするところは、係止部材を、第2の継手管の側面のうち、第2の継手管の軸方向が鉛直方向から約80度曲げた場合にも吸口体本体および第1の継手管に接触しない位置に形成したことにある。
【0013】
そして、好ましくは、係止部材の前端部と後端部を円弧状に形成した。好ましくは、継手管または第2の継手管の係止部材よりも前部を、係止部材から継手管の上面側に向かって傾斜したことにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、係止部材を、吸口体の開口部が被清掃面に対向した状態において、伸縮延長管に接続された継手管の回動によって被清掃面と伸縮延長管の軸方向とのなす角度が1〜3.5度の範囲内の所定の角度になるまで伸縮延長管が傾斜可能な位置に形成したため、係止部材の継手管の下面側への突出量が伸縮延長管の突出量より低くなり、狭い空間の清掃における性能を損なうのを抑制できる。
【0015】
また、本発明によると、吸口体の前後方向に回動可能な継手管の側面のうち、継手管の下面側でかつ継手管内に形成される流路の側面から見た投影図において流路の外郭よりも内側に、伸縮延長管を起立状態で掃除機本体に保持させるための係止部材を形成したことにより、係止部材の継手管の下面側への突出量を減らすことができるため、係止部材を小型化することができ、狭い空間の清掃における性能を損なうのを抑制できる。さらに、本体係止部から係止部材を抜き取る時の摺動動作を妨げるのを抑制できる。
【0016】
また、本発明によると、本体係止部の上部に、伸縮延長管あるいは伸縮延長管と吸口体との間に接続される補助吸口に当接する支持部を配置したため、伸縮延長管を安定させ、係止部材を保持する掃除機本体のフック部にかかるモーメントを支えることができる。
【0017】
また、本発明によると、係止部材を、第2の継手管の側面のうち、第2の継手管の軸方向が鉛直方向から約80度曲げた場合にも吸口体本体および第1の継手管に接触しない位置に形成したため、吸口体を曲げた状態の清掃(例えば、壁際)における性能を損なうのを抑制できる。
【0018】
また、本発明によると、係止部材の前端部と後端部を円弧状に形成し、または、継手管または第2の継手管の係止部材よりも前部を、係止部材から継手管の上面側に向かって傾斜したことにより、手元操作部に過大な負荷が加わった場合に係止部材が本体係止部から外れるため、係止部材あるいは本体係止部が破損するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例の電気掃除機の全体外観図。
【図2】本発明の実施例の伸縮延長管を起立状態で電気掃除機に保持させた場合の全体外観図。
【図3】本発明の実施例の伸縮延長管を被清掃面に近くなるまで傾斜させた場合の吸口体,伸縮延長管,手元操作部の外観図。
【図4】本発明の実施例の吸口体本体に対して後側継手管に接続された伸縮延長管を左右方向へ回動させた場合の吸口体,伸縮延長管の外観図。
【図5】本発明の実施例の吸口体の正面図。
【図6】本発明の実施例の吸口体の側面図。
【図7】本発明の実施例の吸口体の背面図。
【図8】本発明の実施例の本体係止部の外観図および断面図。
【図9】本発明の他の実施例の本体係止部の外観図。
【図10】本発明の実施例の係止部材が本体係止部から外れる様子を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、係止部材を、吸口体の開口部が被清掃面に対向した状態において、伸縮延長管に接続された継手管の回動によって被清掃面と伸縮延長管の軸方向とのなす角度が1〜3.5度の範囲内の所定の角度になるまで伸縮延長管が傾斜可能な位置に形成したため、係止部材の継手管の下面側への突出量が伸縮延長管の突出量より低くなり、狭い空間の清掃における性能を損なうのを抑制できる。
【0021】
また、本発明は、吸口体の前後方向に回動可能な継手管の側面のうち、継手管の下面側でかつ継手管内に形成される流路の側面から見た投影図において流路の外郭よりも内側に、伸縮延長管を起立状態で掃除機本体に保持させるための係止部材を形成したことにより、係止部材の継手管の下面側への突出量を減らすことができるため、係止部材を小型化することができ、狭い空間の清掃における性能を損なうのを抑制できる。さらに、本体係止部から係止部材を抜き取る時の摺動動作を妨げるのを抑制できる。
【0022】
また、本発明は、本体係止部の上部に、伸縮延長管あるいは伸縮延長管と吸口体との間に接続される補助吸口に当接する支持部を配置したため、伸縮延長管を安定させ、係止部材を保持する掃除機本体のフック部にかかるモーメントを支えることができる。
【0023】
また、本発明は、係止部材を、第2の継手管の側面のうち、第2の継手管の軸方向が鉛直方向から約80度曲げた場合にも吸口体本体および第1の継手管に接触しない位置に形成したため、吸口体を曲げた状態の清掃(例えば、壁際)における性能を損なうのを抑制できる。
【0024】
また、本発明は、係止部材の前端部と後端部を円弧状に形成し、または、継手管または第2の継手管の係止部材よりも前部を、係止部材から継手管の上面側に向かって傾斜したことにより、手元操作部に過大な負荷が加わった場合に係止部材が本体係止部から外れるため、係止部材あるいは本体係止部が破損するのを抑制できる。
【0025】
以下、本発明の実施形態の一例を添付の図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は本発明の実施形態の一例に係る電気掃除機の全体外観図である。
【0027】
この実施例における電気掃除機は、吸気口(本体吸気口)107を有する掃除機本体101と吸気口107にその一端が接続され連通するホース102とホース102の他端にその一端が接続され連通する手元操作部103と手元操作部103の他端にその一端が接続され連通する伸縮延長管104と伸縮延長管104の他端に接続され連通する吸口体105を備え、掃除機本体101と手元操作部103をホース102で接続し、この手元操作部103に伸縮延長管104を介して吸口体105を接続して使用する。手元操作部103と伸縮延長管104、伸縮延長管104と吸口体105、さらに手元操作部103及び伸縮延長管104及び吸口体105と補助吸口はそれぞれ着脱自在に接続されている。
補助吸口は、伸縮延長管104の前端または伸縮延長管104と吸口体105との間に接続されてもよいし、手元操作部103の前端または手元操作部103と伸縮延長管104との間に接続されてもよい。
【0028】
吸口体105は、略T字形状を有する。吸口体105は、底面に開口を有する吸口体本体106と、伸縮延長管104に接続される継手管とを有する。継手管は、吸口体本体106に対して左右方向の軸によって前後回動可能に支持される前側継手管112と、前側継手管112に対して上下方向の軸によって左右回動可能に支持される後側継手管113とから構成される。よって、継手管は、前後方向に所定の角度範囲(被清掃面を基準に0〜100度)および左右方向に所定の角度範囲(鉛直方向から左右それぞれ80度)に回動可能である。後側継手管113に、伸縮延長管104が接続可能である。前側継手管112は、吸口体本体106の上側に接続され、後側継手管113の上側に接続されるため、継手管の軸方向を被清掃面に略平行にした状態では、前側継手管112の上面が吸口体105の中で最も高くなる。つまり、吸口体本体106の底面から前側継手管112の上面までの高さが、吸口体105の高さとなる。
【0029】
伸縮延長管104は、吸口体105側に位置する前側延長管と手元操作部103側に位置する後側延長管とからなり、前側延長管が後側延長管内にスライド可能に挿入される。
前側延長管と後側延長管とが相互にスライドすることによって、伸縮延長管104は伸縮可能である。後側延長管の前側延長管の挿入端部には、前側延長管が後側延長管から抜けるのを防止する抜け止め機構や後側延長管に対する前側延長管のスライドをロックするロック機構があるため、後側延長管の前側延長管の挿入端部が、伸縮延長管104のなかで最も直径が大きい。特に、後側延長管の前側延長管の挿入端部が、伸縮延長管104のなかで下側への突出量も大きい。手元操作部103は、伸縮延長管104に接続される直管と、直管から分岐したハンドルとを有する。ハンドルは、使用者が手で握ることが可能である。手元操作部103のハンドルが形成された側を、上側とする。尚、伸縮延長管104に代わりに、伸縮しない延長管であってもよい。
【0030】
掃除機本体101内の前側(ホース102が接続される側)には、吸気口107に連通する集塵室(図示せず)が配置され、さらに、その集塵室には、塵埃を捕集する集塵部109が着脱自在に配置される。集塵部109は、サイクロン式の集塵ケースであってもよいし、使い捨ての紙パックでもよい。掃除機本体101内の後側には、吸引力を発生する電動送風機108が配置される。掃除機本体101の底面の前側の左右方向略中央部には、1つの案内車輪111が形成され、掃除機本体101の側面の後側には、左右に2つの走行車輪110が形成される。掃除機本体101を横置きした状態では、走行車輪110と案内車輪111によって使用者は掃除機本体101を容易に移動できる。そして、手元操作部103に設けられた電源ボタンが使用者によってONされると、電動送風機108が作動し、吸引力を発生する。吸口体105から吸い込まれた空気および空気と共に吸い込まれた塵埃は、伸縮延長管104,手元操作部103,ホース102,掃除機本体101の順に導かれる。
【0031】
図2は本発明の実施形態の一例に係る電気掃除機の収納状態の全体外観図である。電気掃除機の使用状態では、掃除機本体101が走行車輪110と案内車輪111を接地させた横置きとなり、電気掃除機の収納状態では、掃除機本体101の後面を接地させた立位状態となるのが好ましい。図1に示すように、吸口体105の係止部材201を掃除機本体101後面の左右方向略中央部でかつ上下方向略中央部に設けた本体係止部301に係合させることにより、掃除機本体101が横置き状態のままホース102,伸縮延長管104,吸口体105を収納することができる。つまり、伸縮延長管104を起立状態で掃除機本体101に保持させることができる。このとき、吸口体105の底面は、被清掃面に対向(接地)しており、吸口体本体106に対して継手管(前側継手管112および後側継手管113)が起立状態に回動している。伸縮延長管104の起立状態とは、被清掃面に対して伸縮延長管104の軸方向が略90度となった状態だけではなく、略90度となった状態から前後に10度程度まで傾斜した状態も含まれる。これによって、使用者は、電気掃除機の使用を一時中断した場合に、しゃがんで、手元操作部103,伸縮延長管104,吸口体105を被清掃面に置く必要がなく、また、電気掃除機の使用を再開する場合にも、しゃがんで、手元操作部103,伸縮延長管104,吸口体105を被清掃面から持ち上げる必要がなくなるため、使用者の負担を軽減することができる。尚、本体係止部301は、掃除機本体101の後面に代えてまたは加えて、掃除機本体101の側面に形成してもよい。
【0032】
図3は被清掃面と伸縮延長管104のなす角度αを示した外観図である。図3中、斜線部が被清掃面(例えば、床面)である。係止部材201は、吸口体105の継手管の側面のうち下面側に形成される。係止部材201は、被清掃面と伸縮延長管104の軸方向のなす角度αが略100度から所定の角度(1〜3.5度の範囲内の何れかの角度)までの範囲内にて形成する。吸口体105の開口が被清掃面に対向(接地)した状態において、伸縮延長管104の軸方向が被清掃面と平行になる方向へ傾斜させていくと、伸縮延長管104のうち最も直径の大きい後側延長管の前側延長管の挿入端部が被清掃面に接地する。接地した状態が、角度αの下限値となる。係止部材201が、下側に突出していると、後側延長管の前側延長管の挿入端部が被清掃面に接地する以前に、係止部材201が被清掃面に接地し、係止部材201が接地した状態が、角度αの下限値となる。本実施例では、係止部材201の下側への突出量を、後側延長管の前側延長管の挿入端部の下側への突出量よりも小さくしているので、後側延長管の前側延長管の挿入端部が被清掃面に接地する以前には、係止部材201が被清掃面に接地しない。本実施例では、吸口体105の外郭側面に係止部材201を設けることにより、被清掃面と伸縮延長管104のなす角度αの下限値が3.5度となった。図3は、伸縮延長管104が最も縮んだ状態である。伸縮延長管104を伸ばした状態では、伸縮延長管104のうち最も直径の大きい後側延長管の前側延長管が、前後方向の回動支点から遠ざかるので、角度αの下限値が3.5度よりも小さくなる。これによって、係止部材201の下側への突出量が伸縮延長管104,吸口体105,手元操作部103の突出量より低くなり、狭い空間の清掃における性能を損なうことがない。尚、係止部材201は、伸縮延長管104の側面や補助吸口の側面に設けてもよい。
【0033】
図4は鉛直方向と後側継手管113に接続された伸縮延長管104の軸方向がなす角度βを示した外観図である。係止部材201は、軸方向では、後側継手管113のうち前側継手管112との連結部から遠い側に形成される。よって、図4に示すように、伸縮延長管104の鉛直方向と軸方向がなす角度βが左方向と右方向のそれぞれに約80度になるよう前側継手管112に対して後側継手管113を曲げた状態で、後側継手管113に設けた係止部材201は、吸口体105中央の流路側面(吸口体本体106と前側継手管112との連結部)に接触しない。さらに、本実施例では、係止部材201の高さL1を24mm以下にした。これにより、伸縮延長管104の鉛直方向と軸方向がなす角度βが約80度になるよう曲げて使用した場合にも、係止部材201が吸口体105に接触しないため、吸口体105を曲げた状態の清掃における性能を損なうことなく係止部材201を形成することができる。
【0034】
図5,図6,図7のそれぞれは係止部材201の正面図と側面図と背面図である。図5,図7に示すように、係止部材201は、後側継手管113の左右2つの側面のそれぞれに形成され、後側継手管113の側面から左右外側に突出した略半月形状の板状部材で構成される。図6中に示した前後方向および上下方向は、継手管を基準とした方向である。
後側継手管113の後部は、前部よりも直径が小さく形成されており、後側継手管113の後部が伸縮延長管104内に挿入されることによって後側継手管113が伸縮延長管104に接続される。係止部材201と本体係止部301が連結状態のとき、手元操作部103の左右方向に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れるように係止部材201の前側および後側の両端面は円弧形状(R1,R2)になっている。これによって、手元操作部103の左右方向に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れるため、係止部材201あるいは本体係止部301が破損するのを防止できる。また、係止部材201の前側端面を円弧形状としたことによって、係止部材201を本体係止部301にスライドして挿入する際に、挿入しやすくなる。係止部材201の下部側R1は上部側R2の約1.7倍(例えば、R1=30,R2=18)となる寸法関係となっている。係止部材201の下部側R1は、上部側R2よりも曲率を大きい。係止部材201の両端面の円弧形状R1,R2をそれぞれ大きくしていくと、本体係止部301との間隔が広くなり、本体係止部301から外れやすくなる。さらに、R1,R2をそれぞれ小さくしていくと、本体係止部301との間隔が狭くなるため、手元操作部103の左右方向に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れなくなる。
【0035】
また、図6に示すように、係止部材201は、後側継手管113の側面のうち下側に形成される。係止部材201の形成方向に関しては、左右2つの係止部材201の側面は図5に示すように伸縮延長管104の軸方向から約1度ハの字状に傾け、係止部材201の正面(上面)と背面(下面)は図6に示すように伸縮延長管104の軸方向と略平行になるよう形成した。係止部材201は強度向上のため流路外郭側のほうが太くなる台形形状とした。つまり、係止部材201の厚さは、突出している根元から先端に向かって次第に細くなるように形成した。左右2つの係止部材201の側面をハの字状に傾けることにより、手元操作部103の左右方向に過大な負荷が加わった場合に、本体係止部301の内壁に係止部材201の円弧部分が当接するため、摺動時の抵抗を減少させることができる。さらに、係止部材201の背面は、後側継手管113の流路の外郭の外周203より1mm程度内側(上面側)に伸縮延長管104の軸方向と平行になるよう形成し、後側継手管113の流路の傾斜面202に接続した。これにより係止部材201は、手元操作部103に掃除機本体101側とは逆の方向に過大な負荷が加わった際の後側継手管113の傾斜面202と本体係止部301の内壁の摺動動作をさまたげない。つまり、後側継手管113の係止部材201よりも前側が傾斜していない場合は(傾斜面202がない場合は)、後側継手管113の係止部材201よりも前側が本体係止部301の内壁に接触して拘束されるため、係止部材201と本体係止部301に負荷がかかり、係止部材201あるいは本体係止部301が破損する。これに対して、後側継手管113の係止部材201よりも前側が傾斜している場合は(傾斜面202がある場合は)、後側継手管113の係止部材201よりも前側が本体係止部301の内壁に接触しながら滑るため、係止部材201が本体係止部301の上方へ移動しやすく、係止部材201が本体係止部301から外れやすくなる。つまり、後側継手管113の傾斜面202は、本体係止部301に対して係止部材201が移動する際のガイドの役割を果たす。前側継手管112と後側継手管113とは上下方向に連結されているため、後側継手管113内に形成される流路は、上下方向から軸方向へ転向する際に圧力損失が少なくなるように曲線で形成されている。曲線で形成された流路の外殻形状が傾斜面202を形成することとなる。傾斜面202は、円弧状に形成されるのが好ましいが、直線状に形成されてもよい。また、左右方向では係止部材201が後側継手管113の流路の外郭の外周203より外側に突出しているが、上下方向では係止部材201が後側継手管113の流路の外郭の外周203より1mm程度内側に形成したことにより、係止部材201が後側継手管113の流路の外郭の外周203よりも半径方向外側(下側)に突出しないので、被清掃面と伸縮延長管104のなす角度αの下限値を小さくできる。ここで、後側継手管113の流路の外郭の外周203より1mm程度内側とは、後側継手管113の流路の側面から見た投影図において、流路の外殻の外周203よりも1mm程度流路の中心に近い側をいう。また、流路の外殻とは、1mm程度の厚さの円筒部材で構成され、外殻の外周とは、その円筒部材の最外周をいう。さらに、係止部材201の正面を伸縮延長管104の軸方向と平行に形成することにより、手元操作部103に掃除機本体101側とは逆の方向に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れるまでスムーズに摺動動作させることができる。ここで、係止部材201正面をハの字状に傾けた場合、係止部材201と本体係止部301との間隔が広くなり、係止部材201が本体係止部301に当接しにくくなる。さらに、逆ハの字状に傾けた場合は、吸口体105の傾斜面202の当接面から係止部材201の当接面までの距離が大きくなってしまうため、本体係止部301,フック部303が大型化する。
【0036】
図8は本体係止部301の外観図となる。図8(b)は、本体係止部301を正面から見た図(正面図)であり、図8(a)は、図8(b)のC−C断面(上下方向の断面)図であり、図8(d)は、本体係止部301を上から見た図(平面図)である。図8(c)は、図8(b)のD−D断面(左右方向の断面)図である。本体係止部301は、図8(b)に示すように、上部に支持部302、下部にフック部303を設けた。本体係止部301は掃除機本体101の後面に取付部307を介して取り付けることにより、ホース102,手元操作部103,伸縮延長管104,吸口体105、の重量を支える。支持部302は伸縮延長管104の円弧状の外周と当接するように上下方向の断面が円弧状の凹部305を有する。支持部302に凹部305を設けることにより、伸縮延長管104を起立状態で保持した場合に伸縮延長管104の左右方向のがたつきを抑制することができる。また、支持部302に2つの突起を設け、伸縮延長管104を保持し、伸縮延長管104及び吸口体105の左右方向のがたつきを抑制してもよい。支持部302は、伸縮延長管104,吸口体105が、被清掃面と伸縮延長管104の軸方向が鉛直状態から掃除機本体101側に3〜5度程度傾いた状態に保持する位置に凹部305を形成する。また、伸縮延長管104と支持部302下端までの高さは、フック部303にかかる負荷を軽減するため、フック部303高さと同寸以上とするのが好ましい。
【0037】
本体係止部301のフック部303は、図8(a)に示すように左右対称に設けたフランジ部306から構成されている。フランジ部306は、上下方向の断面が略コの字形状を有する。フランジ部306内に形成される空間に、係止部材201が挿入される。フランジ部306内に形成される空間は、係止部材201の外周形状に対応し、2つのフランジ部306間の距離は、2の係止部材201間の距離に対応する。係止部材201と本体係止部301が連結状態のとき、手元操作部103の左右方向に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れるように本体係止部301のフランジ部306の上部は円弧形状(R3)下部は面取り形状(γ)になっている。フック部303のフランジ部306の上部R3はフック部303の高さ寸法の約1/4となる。一方、フック部303のフランジ部306の下部のγは約60度となる。フック部303のフランジ部306の両端面の形状R3,γをそれぞれ大きくしていくと、がたつきが大きくなり、外れやすくなる。さらに、R3,γをそれぞれ小さくしていくと、手元操作部103の左右方向に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れなくなる。
【0038】
図8(c)に示すように、支持部302の後面とフック部303の後面との間には、段差を設けてある。つまり、フック部303の後面に対して支持部302の後面が低くなっている。この段差の上に後側継手管113に形成される半円環状の突起204が乗ることによって、伸縮延長管104および吸口体105が下側に落ちるのを防止できる。さらに、フック部303に後側継手管113の外周に当接するよう、左右方向の中心を基準として左右方向に2つの吸口係止リブ304を設けた。これにより、後側継手管113の凸部と本体係止部材301のフック部303の上面が接触しない場合も、吸口体105の脱落を防止できる。
【0039】
図9は、本体係止部301の他の実施例の外観図となる。吸口係止リブ304を、図8では2つの突起形状としたが、図9では、円弧状の1つの凹形状とした。図9に示した吸口係止リブ304でも、後側継手管113の凸部と本体係止部材301のフック部303の上面が接触しない場合も、吸口体105の脱落を防止できる。
【0040】
図10は手元操作部103に過大な負荷が加わった時に、係止部材201が本体係止部301から外れる様子を示した断面図である。掃除機本体101が横置きの状態で、係止部材201と本体係止部301を連結させた場合、本体係止部301の支持部302の凹部305と伸縮延長管104の下面が当接し、さらに、吸口体105の後側継手管113の凸部と本体係止部材301のフック部303の上面が当接することにより、吸口体105および伸縮延長管104の脱落を防止している(図10(a))。使用者が手元操作部103を持って掃除機本体101から吸口体105および伸縮延長管104を取り外そうとして手元操作部103に掃除機本体101とは逆の方向に過大な負荷が加わった時、係止部材201の上端が下端に対して、掃除機本体101の前後方向を基準とする後側へ傾き、係止部材201の上側が、フランジ部306の内側にあるA面の上端に接触し、後側継手管113の傾斜面202の上部がフック部303のB面の下端に接触する(図10(b))。伸縮延長管104の傾きが大きくなるにつれ、係止部材201はフランジ部306のA面の上部に当接し、傾斜面202はフック部303のB面の下端に当接しながら摺動し、伸縮延長管104が鉛直方向から約20度以上傾いたとき、係止部材201が本体係止部301から外れる(図10(c))。これによって、使用者は、手元操作部103を持って掃除機本体101の前後方向を基準とする後側へ倒しながら、掃除機本体101から吸口体105および伸縮延長管104を取り外すことができるので、手元操作部103を持って鉛直方向に引っ張り上げて掃除機本体101から吸口体105および伸縮延長管104を取り外す場合に比較して、小さい力で掃除機本体101から吸口体105および伸縮延長管104を取り外すことができるため、使用者の負担を軽減することができる。
【0041】
以上のように本実施例によれば、係止部材201を吸口体105の流路側面の外縁よりも内側に設けたので、狭い空間の清掃や吸口体105を曲げた状態の清掃における性能を損なうことがない。また、係止部材201を吸口体105の流路側面の外縁よりも内側に設けたので、本体係止部301から係止部材201を抜き取る時、流路の外郭が本体係止部301の内壁に当接し、摺動動作の支点となる。また、本体係止部301に支持部302を設けることにより、伸縮延長管104のぐらつきを抑制し、フック部303にかかるモーメントを支えることができる。また、係止部材201,本体係止部301それぞれに、係止部材201が本体係止部301と連結している状態で、手元操作部103に過大な負荷が加わった場合に、係止部材201が本体係止部301から外れる形状にしたため、係止部材201,本体係止部材301が破損することはない。
【符号の説明】
【0042】
101 掃除機本体
102 ホース
103 手元操作部
104 伸縮延長管
105 吸口体
106 吸口体本体
107 吸気口
108 電動送風機
109 集塵部
110 走行車輪
111 案内車輪
112 前側継手管
113 後側継手管
201 係止部材
202 傾斜面
203 流路の外郭の外周
204 突起
301 本体係止部
302 支持部
303 フック部
304 吸口係止リブ
305 凹部
306 フランジ部
307 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機及び集塵部を有する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続可能なホースと、一端が前記ホースの他端に接続可能な手元操作部と、一端が前記手元操作部の他端に接続可能な伸縮延長管と、前記伸縮延長管の他端に接続可能な吸口体とを備えた電気掃除機において、
前記吸口体は、開口部と、前後方向に回動可能で前記伸縮延長管に接続可能な継手管と、前記掃除機本体に係止されることによって前記吸口体に接続された前記伸縮延長管を起立状態に保持するための係止部材とを備え、
前記係止部材は、前記吸口体の前記開口部が被清掃面に対向した状態において、前記伸縮延長管に接続された前記継手管の回動によって被清掃面と前記伸縮延長管の軸方向とのなす角度が1〜3.5度の範囲内の所定の角度になるまで前記伸縮延長管が傾斜可能な位置に形成されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
伸縮延長管を起立状態で、横置き状態の掃除機本体に保持させる電気掃除機において、 前記吸口体の前後方向に回動可能な継手管の側面のうち、前記継手管の下面側でかつ前記継手管内に形成される流路の側面から見た投影図において前記流路の外郭よりも内側に、前記伸縮延長管を起立状態で前記掃除機本体に保持させるための係止部材を形成したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項3】
電動送風機及び集塵部を有する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続可能なホースと、一端が前記ホースの他端に接続可能な手元操作部と、一端が前記手元操作部の他端に接続可能な伸縮延長管と、前記伸縮延長管の他端に接続可能な吸口体とを備えた電気掃除機において、
前記伸縮延長管と前記吸口体が、前記吸口体に設けた係止部材が前記掃除機本体に設けた本体係止部に取り付けられることによって起立状態で前記掃除機本体に保持可能であり、
前記本体係止部の上部に、前記伸縮延長管あるいは前記伸縮延長管と前記吸口体との間に接続される補助吸口に当接する支持部を配置したことを特徴とする電気掃除機。
【請求項4】
電動送風機及び集塵部を有する掃除機本体と、一端が前記掃除機本体に接続可能なホースと、一端が前記ホースの他端に接続可能な手元操作部と、一端が前記手元操作部の他端に接続可能な伸縮延長管と、前記伸縮延長管の他端に接続可能な吸口体とを備えた電気掃除機において、
前記吸口体は、吸口体本体と、前記吸口体本体に接続され前後方向に回動可能な第1の継手管と、前記第1の継手管に接続され左右方向に回動可能な第2の継手管と、前記掃除機本体に係止されることによって前記吸口体に接続された前記伸縮延長管を起立状態に保持するための係止部材とを備え、
前記係止部材は、前記第2の継手管の側面に形成され、
前記係止部材は、前記第2の継手管の側面のうち、前記第2の継手管の軸方向が鉛直方向から約80度曲げた場合にも前記吸口体本体および前記第1の継手管に接触しない位置に形成されることを特徴とする電気掃除機。
【請求項5】
前記係止部材は、前端部と後端部が円弧状に形成されることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記継手管の前記係止部材よりも前部は、前記係止部材から前記継手管の上面側に向かって傾斜することを特徴とする請求項1,2または3記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記第2の継手管の前記係止部材よりも前部は、前記係止部材から前記第2の継手管の上面側に向かって傾斜することを特徴とする請求項4記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−255056(P2011−255056A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133507(P2010−133507)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】