説明

電気掃除機

【課題】掃除性能を落とすことなく被掃除面上の塵埃の吹き飛ばしを防止する排気循環式の電気掃除機を提供する。
【解決手段】ノズル体6の開口部30の前方にノズル体6外部の空気の流れを遮蔽する遮蔽手段32と、排気風路13からの還流をノズル体6内部に吹出する噴出口34a、34b、34cと、前記噴出口34a、34b、34cからの気流によって搬送される塵埃を吸込風路14へ吸引する吸込口35とを備え、噴出口34a、34b、34cから吹出される還流が遮蔽手段32の開口部30側に流れるように構成することによって、被掃除面29上の軽い塵埃も吹き飛ばすことなく、遮蔽手段32に塵埃が付着しにくくなるとともに、遮蔽手段32近傍に塵埃が残留することがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機より排出される排気をノズル体に還流させる排気循環式の電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている排気循環式の電気掃除機は、集塵フィルターで捕捉できなかった微細な塵や臭いを機外に出すことがないので、クリーンな掃除機としての評価は高かった。しかしながら排気循環であるがゆえに、ノズル体と床面との隙間からノズル体に還流される排気が漏れ出し、床面上の塵埃等を吹き飛ばしてしまう問題があった。この隙間はシール材で塞げば排気の漏れは無くなるが、特にノズル体前方の隙間が無いと、床面上の塵埃がノズル底面部に入らないために、吸引できない課題があった。
【0003】
この問題を解消する方法としてノズル体前方に隙間を設け、この隙間にローラーを配し、このローラーが床面の塵埃を乗越えてノズル体底面部に塵埃を導く構成の排気循環式の掃除機が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
図11は、特許文献1に記載された従来の排気循環式の電気掃除機におけるノズル体100の側方断面を示す模式図を示し、このノズル体100は、掃除機本体内の電動送風機の運転動作により、この電動送風機から排出される空気を還流させながら掃除をする排気循環式の電気掃除機に備えられることを前提としている。
【0005】
このノズル体100は、被掃除面101と対向して開口する吸気口102を通して前記被掃除面101上の塵埃の吸込みを行ない、このノズル体100の移動の方向と直交する方向に延びるとともに前記被掃除面101と接して回転可能なシールローラ103を、吸気口102の前側に配置しかつ略全幅にわたって取付けている。
【0006】
このノズル体100は使用において吸気口102には掃除機本体内の電動送風機から排出される空気が戻されるとともに、この吸気口102から電動送風機に向けて空気が吸込まれて、空気が循環される。そのため、こうした空気循環に伴って被掃除面101上の塵埃を被掃除面101と対向する吸気口102を通してノズル体100内に吸込んで掃除することができる。図11の矢印は、ノズル体100内部の循環空気の流れを示す。
【0007】
この掃除の際にノズル体100は押し引きされながら被掃除面101に沿って移動される。この場合、シールローラ103は、被掃除面101に接してノズル体100の移動方向に従い回転するから、被掃除面101上の小さな塵埃を押し動かすことがなく、この塵埃を容易に乗り越えることができ、したがって、前記塵埃を吸気口102から吸込むのにシールローラ103が邪魔となることがない。そして、既述のように被掃除面101に接触するシールローラ103は、被掃除面101とノズル体100の底壁104との隙間のうち少なくともノズル体100の移動方向前側において防風壁として作用する。それにより、吸気口102を通った循環空気の一部が、前記隙間を通ってノズル体100の移動方向前側へ漏れ出すことをシールローラ103で防止するので、ノズル体100の移動方向前側の塵埃を吹き飛ばすことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−216084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の電気掃除機であっても、被掃除面101の塵埃の除去性能の観点からは未だ改善の余地があった。
【0010】
すなわち、特許文献1に記載の電気掃除機では、シールローラ103により、このシールローラ103と被掃除面101との間の循環空気の漏れはなくなるが、排気循環式のノズル体100は、被掃除面101上の塵埃が、循環空気の流れる吸気口102の下部に至らなければ吸引されない。そのため被掃除面101上の塵埃はシールローラ103を経てノズル体100底部に入っても吸気口102の直下に至るまでは吸引されない。したがってシールローラ103と吸気口102の間の塵埃はそのまま残ってしまう。そして、残された塵埃はノズル体100が後方に移動すると、再びノズル体100の外に排出されてしまう問題があった。
【0011】
また、シールローラ103は塵埃の上を越える際に、塵埃がシールローラ103に付着して回り、再びノズル体100前方に排出されたり、塵埃がシールローラ103に絡み付いてしまうなどの問題もあった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、掃除性能を落とすことなく被掃除面上の塵埃の吹き飛ばしを防止する排気循環式の電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来技術の有する課題を解決するために、
電動送風機を内蔵し、前記電動送風機の負圧側に集塵室を設けた掃除機本体と、
被掃除面の塵埃を吸引するノズル体と、
前記ノズル体を前記集塵室を介して前記電動送風機の負圧側に連通する吸込風路と、
前記電動送風機の正圧側をノズル体に連通する排気風路とを備え、
前記ノズル体は、
被掃除面に対向して開口する開口部と、
前記開口部の前方でかつ前記被掃除面とノズル体表面との間に配置し、前記開口部とノズル体外部との空気の流れを遮蔽する遮蔽手段と、
前記排気風路からの還流をノズル体内部に吹出する噴出口と、
前記噴出口からの気流によって搬送される塵埃を前記吸込風路へ吸引する吸込口とを備え、
前記噴出口から吹出される還流が前記遮蔽手段の前記開口部側に流れるように構成した電気掃除機を提供する(請求項1)。
【0014】
上述のように、本発明の電気掃除機は、遮蔽手段によりノズル体からの循環空気の漏れがなくなるので被掃除面の塵埃を吹き飛ばすことがない。また、遮蔽手段に還流を流すことにより遮蔽手段近傍の塵埃を吸込口へと搬送することができるので、被掃除面に塵埃が残されることがない。さらに遮蔽手段に流す還流によって、塵埃が遮蔽手段に付着するのを防止することができる。これら作用により、より高い掃除性能を得ることができる。
【0015】
また、上述の本発明の効果をより確実にすると共に、使い勝手を向上させる観点から、本発明の電気掃除機においては、前記噴出口の噴流が前記遮蔽手段方向に噴出するように配置することが好ましい(請求項2)。
【0016】
上述のように、本発明の電気掃除機は、噴出口からの噴流が前記遮蔽手段に吹きつけられるので、遮蔽手段への塵埃の付着を確実に防止できる。また、いったん遮蔽手段に付着
した塵埃も前記噴流により引き剥がすことができるので、塵埃の吸引性能が向上する。さらに遮蔽手段へ絡みつく塵埃を使用者が取り除くといった手間も省くことができる。
【0017】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、前記遮蔽手段と前記吸込口との間に空気の流れを制限する隔壁を設け、前記噴出口を前記隔壁の前記遮蔽手段側に配置することが好ましい(請求項3)。
【0018】
前記隔壁によってノズル体内部で流動する塵埃が吸込口側から遮蔽手段側に逆流するのを防止することができる。また、噴出口からの還流を遮蔽手段と隔壁との間に噴出することにより、遮蔽手段側から吸込口側へ隔壁を介して流れが形成されるので、吸込口側の塵埃が遮蔽手段側へ逆戻りすることを確実に防止することができる。
【0019】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、前記隔壁は前記被掃除面上との間に隙間を設けることが好ましい(請求項4)。
【0020】
遮蔽手段側から吸込口側へ隔壁を介して形成され流れが被掃除面上に発生するので、塵埃が遮蔽手段側へ逆戻りするのを防止するだけでなく、被掃除面上に付着する塵埃を還流の流れによって浮き上げ吸込口に搬送することができるようになり、より高い掃除性能を得ることができる。
【0021】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、前記隔壁は前記遮蔽手段との間に隙間を設け、前記隙間は、前記噴出口から前記吸込口に至る流れ方向に対して、塵埃が前記噴出口方向に舞い戻らない流速を確保できる寸法設定とすることが好ましい(請求項5)。
【0022】
上述のように噴出口からの還流を遮蔽手段と隔壁との間に噴出する場合、隔壁を遮蔽手段に近接させることにより、この間の流路面積が小さくなるので、ここを流れる還流の流速が速まり、塵埃が噴出口方向に舞い戻れなくなる。したがって、これら塵埃によって遮蔽手段への塵埃付着防止効果を高めたり、塵埃の排出を抑えることができる。
【0023】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、前記遮蔽手段の外周の一部が前記被掃除面に接触するように回転駆動させる駆動手段を備えることが好ましい(請求項6)。
【0024】
上述のように、本発明の電気掃除機は、遮蔽手段が被掃除面に接触して回転するので、循環空気の漏れがなくなり、被掃除面の塵埃を吹き飛ばすことがない。また、遮蔽手段を強制的に回転させるので被掃除面上の塵埃は、容易にノズル体の下部に引き込むことができ、且つこの遮蔽手段の回転作用により引き込む塵埃を開口部直下方向へ弾き飛ばすことができるようになる。したがって、効果的に塵埃を還流の流れに乗せることができ、吸込口へと搬送され吸引できるようになる。さらに遮蔽手段は回転する際にカーペット等の繊維状の被掃除面の塵埃をかき出す作用があり、より高い掃除性能を得ることができる。
【0025】
また、上述の本発明の効果をより確実に得る観点から、本発明の電気掃除機においては、前記遮蔽手段は、可撓性を有する複数のブレードを放射状に配列して略円筒形状とし、前記被掃除面に対して前記ブレードの少なくとも1枚が接触して回転することが好ましい(請求項7)。
【0026】
この構成とすることにより、可撓性を有するブレードにより被掃除面と接触させることにより、被掃除面を傷つけることなく確実な遮蔽ができる。また、各ブレードの間に塵埃を挟みこむように回転することができるので、大きな塵埃でも容易にノズル体の底部に掻
き入れることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、掃除性能を落とすことなく被掃除面上の塵埃の吹き飛ばしを防止する排気循環式の電気掃除機を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における電気掃除機全体の平断面を示す模式図
【図2】同、掃除機本体の側方断面を示す模式図
【図3】同、電気掃除機のノズル体の底方向からの平面図
【図4】同、電気掃除機のノズル体の側方断面図
【図5】同、電気掃除機の遮蔽手段を示す側方断面図
【図6】同、電気掃除機のノズル体の一部側方断面図
【図7】同、電気掃除機のノズル体の底方向からの駆動手段を示す模式図
【図8】本発明の実施の形態2における電気掃除機の遮蔽手段を示す側方断面図
【図9】本発明の実施の形態3における電気掃除機の遮蔽手段を示す側方断面図
【図10】本発明の実施の形態4における電気掃除機のノズル体の一部側方断面図
【図11】従来の電気掃除機のノズル体の側方断面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の電気掃除機の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における電気掃除機全体の平断面を示す模式図、図2は同、掃除機本体の側方断面を示す模式図、図3は同、電気掃除機のノズル体の底方向からの平面図、図4は同、電気掃除機のノズル体の側方断面図、図5は同、電気掃除機の遮蔽手段を示す側方断面図、図6は同、気掃除機のノズル体の一部側方断面図、図7は同、気掃除機のノズル体の底方向からの駆動手段を示す模式図である。
【0031】
図1、2に示すように、掃除機本体1の外部には、ローラー2およびキャスター3が取り付けられており、掃除機本体1は床面を自在に移動できる。掃除機本体1前方には、ホース4、延長管5が順次接続されており、延長管5の先端にノズル体6が取り付けられている。
【0032】
掃除機本体1は、前方に空気を吸引する吸気口7と排気を排出する排気口8を有した電動送風機9を内蔵する電動送風機室10と、コードリールもしくは蓄電池を内蔵する電源供給室11と、前記電動送風機9の負圧側である吸気口7に設けられた集塵室12と、この集塵室12とノズル体6とを連通し、ノズル体6より吸引した塵埃を集塵室12に導く吸込風路14と、前記電動送風機9の正圧側である排気口8より排出される排気をノズル体6に導く排気風路13を有している。
【0033】
したがって、ホース4、延長管5、ノズル体6にはそれぞれ連通する吸込風路14と排気風路13とを有している。
【0034】
排気風路13の排気口8近傍に、内部に排気を通過させる複数の管状の伝熱体15を並列に配置してなる第1の風路17と、伝熱体15の周囲を覆うケース体18と複数の管状の伝熱体15の隙間により形成された第2の風路19とを備え、冷風ファン20により第2の風路19に外気を導入し、伝熱体15の外表面に外気を触れさせて排気熱を放熱させ
る熱交換手段21を配置している。
【0035】
図1,図2において実線の矢印は電動送風機9により循環する空気の流れを示し、破線の矢印は冷風ファン20により外気を取り入れ第2の風路19を経て排出する流れを示している。
【0036】
第1の風路17内の排気の流れ方向に対して、伝熱体15周囲の第2の風路19を流れる外気は逆方向としている。すなわち、外気は排気の下流側から上流側へと流れる。いわゆる対向流にすることによって伝熱体15全体から効率よく放熱させることできる。
【0037】
また、第2の風路19内に配置したバッフル板24により第2の風路19内で外気を蛇行させて、外気の流れの偏りを防止し、放熱の効率を向上させることができる。
【0038】
集塵室12内には集塵袋25が取替え自在に配置され、ノズル体6により吸引された塵埃がこの集塵袋25によりトラップされる。
【0039】
掃除機本体1の前方で排気風路13と吸込風路14が隣接する隔壁26には、両風路を連通するバイパス風路27と、このバイパス風路27を開閉自在にする開閉手段28が設けられている。この開閉手段28は後述のバイパス制御により開閉制御される。
【0040】
ノズル体6には、中央部に円筒状の回転ブラシ31と、前方に回転ブラシ31と平行に遮蔽手段32と、この回転ブラシ31と遮蔽手段32の間には隔壁310とを配置している。なおノズル体6の詳細は後述する。
【0041】
次に図3〜7を用いてノズル体6の構成について説明する。
図3、図4、図5においてノズル体6底面は、被掃除面29の塵埃を吸引するための開口部30と、この開口部30に望む回転ブラシ31と、ノズルの前方(図の右側)に配置する遮蔽手段32と、回転ブラシ31と遮蔽手段32の間に隔壁310が設けられている。
【0042】
隔壁310は、図5のように、後方垂直面311を回転ブラシ31の外周31A接線と僅かな隙間を設けて構成し、前方垂直面312を遮蔽手段32の外周32A接線と所定の隙間を設けて構成している。また、隔壁底面313も被掃除面29と所定の隙間を設けて平行に構成している。
【0043】
遮蔽手段32は、回転扉のように放射状に取付けられた複数のゴム製のブレード33が前方に回転しながら、掃除運転操作中に排気風路13より噴出口34a、34b、34cよりノズル体6内部に噴出される還流がノズル体6前方より漏れないようにシールし、かつ被掃除面29上の塵埃を開口部30よりノズル体6内部に取り込むものである。
【0044】
噴出口34a、34b、34cよりノズル体6内部に噴出される還流は、図4の矢印に示すように開口部30を通過して塵埃を乗せて吸込口35を経て吸込風路14へと導かれる。図3の白抜きのブロック矢印は、噴出口34aと噴出口34cからのノズル体6後方への流れと、噴出口34bからのノズル体6の両側から中心方向へ流れる還流の方向を示している。これら還流による循環空気の流れによってノズル体6の底部にある塵埃は吸込風路14へと集められ、吸引される。
【0045】
遮蔽手段32は、ブレード33の下端が被掃除面29と接触し、ブレード33の上端がノズル体6の遮蔽底面36と接触しながらノズル体6の前進方向に回転することにより、循環空気を遮断しながら、塵埃をノズル体6の下部に引き込むことができる。
【0046】
噴出口34cは、遮蔽手段32と隔壁310の間に配置し、噴出する還流が遮蔽手段32のブレード33に直接吹付けられるように噴出角度を設定している。この噴流による流れは、図5の太い実線の矢印に示すように、一端、ブレード33に当り、このブレード33表面に付着する塵埃を引き剥がし、ブレード33と隔壁310の前方垂直面312との隙間を通り抜ける。
【0047】
この隙間は、広いほど通過する還流の流速が遅くなり、狭いほど速くなる。そこで、この寸法設定は、塵埃がこの隙間の流れとは逆方向に通過できない程度以上の流速になるようにすることが好ましい。具体的には、回転ブラシ31やブレード33で弾き飛ばされた塵埃の通過を防ぐには、還流の隙間の流速を10m/s以上は必要になる。したがって寸法設定は、所要流速Vを10(m/s)とした場合、噴出口34cの噴流の流量Q(m/s)と隙間の幅W(m)から所要隙間寸法X(m)は次式で求められる。
【0048】
X=Q/(V・W) (m)
この寸法設定に従えば、隔壁310と遮蔽手段32との隙間を流れる還流により、塵埃が遮蔽手段と隔壁との隙間を通過して外に吐き出されることがなくなる。
【0049】
そして、遮蔽手段32と隔壁310との隙間を流れた還流は、被掃除面29近くまで導かれる。さらに還流は隔壁底面313と被掃除面29との隙間を流れて吸引口36(図4)へと流れる。
【0050】
この隔壁底面313と被掃除面29との隙間の流れによって、ノズル体6内の回転ブラシ31で掻きあげられたり、噴出口34aや噴出口34bによって舞い上げられた塵埃が、遮蔽手段32の方向に逆流して外に排出されることを防止できる。
【0051】
また、隔壁310と被掃除面29との隙間を流れる還流によって、遮蔽手段32のブレード33の回転によって掻き出された塵埃を、吸込口35の方向に搬送するとともに、隔壁310と被掃除面29との隙間の気流作用によって被掃除面29に付着する塵埃を浮き上げて搬送することができる。
【0052】
図3に示すようにノズル体6底面の開口部30周囲には、循環空気がノズル体6両側方向および後方に漏れないように起毛布37が配置されている。この起毛布37により、被掃除面に多少の凹凸によりノズル体6が上下に動いても循環空気がノズル体6の外に漏れることはない。
【0053】
ノズル体6底面の開口部30の後方には、ノズル体6が持ち上げられるなどにより被掃除面29から離れたことを検知する床面検知手段38が設けられている。図6に床面検知手段の38の構成を示す。図のように床面検知手段38は、ヒンジ39を中心として回動する車輪40と、この車輪40が所定以上降下した場合に、作動するマイクロスイッチ41により構成している。
【0054】
このマイクロスイッチ41動作により、ノズル体6が床面から離れたことを検知する。車輪40はバネ42により下方に付勢し、ノズル体6が床面から離れている間は、常にマイクロスイッチ41が作動した状態を維持する。また、ノズル体6が床面に接した場合には、車輪40が上昇して、マイクロスイッチ41が非動作状態になる。この非動作状態が床面検知状態となる。
【0055】
次にバイパス制御の説明をする。バイパス制御は、マイクロスイッチ41の動作状態に応じてバイパス風路27(図1)を開閉する開閉手段28(図1)を操作する。制御の具体的な動作は、床面検知手段38がノズル体6と被掃除面29とが接していることを検知
した場合に開閉手段28を回動させてバイパス風路27を閉じる。そして、床面検知手段38がノズル体6と被掃除面29とが離れたことを検知した場合には、バイパス風路27が全開状態になるように開閉手段28を開く。したがってノズル体6を床面29から持ち上げると、開閉手段28がバイパス風路27を開くので電動送風機9からの排気は排気風路13からバイパス風路27を通り吸込風路14と流れ、集塵室を経て電動送風機9に戻される。従って、ノズル体6への排気の流れがなくなるので、床面の塵埃が吹き飛ばされることはない。
【0056】
次に回転ブラシ31と遮蔽手段32を回転させる駆動手段43について図7を用いて説明する。
【0057】
駆動手段43は、電動モータ44と、回転ブラシ31に電動モータ44の回転を伝達する第1の伝達手段45と、回転ブラシ31の回転を遮蔽手段32に伝達する第2の伝達手段46とを備え、第1の伝達手段45は、電動モータ44の回転を中間シャフト47に伝達し、中間シャフト47の回転を回転ブラシ31の一端にそれぞれ伝達するプーリーとベルトにより成っている。一方、第2の伝達手段46は、回転ブラシ31の他端に設けたプーリーと遮蔽手段32の一端に設けたプーリーをベルトで連結して構成している。
【0058】
そして、電動モータ44を回転させると第1の伝達手段45を介して回転ブラシ31が回転し、これに連動して遮蔽手段32が回転する。
【0059】
なお回転ブラシ31と遮蔽手段32とは同一方向に回転し、その方向は塵埃が吸引される方向と合わせるためにノズル体6の前進する方向に設定している。また、遮蔽手段32の回転速度は回転ブラシ31より小さく設定して、遮蔽手段32のブレードが回転による風を起こして塵埃を吹き飛ばさないように配慮することが望ましい。さらに遮蔽手段32のブレードの回転による周速度は、ノズル体6の前進速度より速いほうが望ましい。これは、周速度をノズル体6の前進速度より速くすることで、遮蔽手段32のブレードが被掃除面をノズル体6後方に掻くことができ、塵埃を開口部30方向に弾き飛ばす作用が発生するので、塵埃の吸引ロスを低減することができる。
【0060】
以上の構成により、図1に示すように電動送風機9を運転すると、集塵室12および吸込風路14が負圧ととなりノズル体6から電動送風機9に向けて吸引の流れが発生する。そしてこの流れに乗ってノズル体6の接している被掃除面である床面から塵埃が吸引され、集塵袋25にトラップされる。一方、電動送風機9からの排気は、電動送風機室10の排気口8から排気風路13を経て、ノズル体6内部に吹出される。この排気の噴出流によって床面の塵埃は吸込風路14に誘導されるので、外気を取り入ることなく塵埃の吸引が可能となる。
【0061】
この時、図4に示す遮蔽手段32には噴出口34cから噴出した還流が沿って流れるので、塵埃が遮蔽手段32から排出されることなく吸込口35へ搬送され、吸込風路14に吸引することができる。
【0062】
以上、本発明の電気掃除機における第1実施形態について説明したが、本発明の電気掃除機は上述したキャニスタータイプの電気掃除機に限定されるものではない。例えば、アプライトタイプの電気掃除機でもよい。
【0063】
また、本発明の電気掃除機における第1実施形態の集塵室は、集塵袋により塵埃を捕集する構造としたが、塵埃を遠心分離して捕集するサイクロン式の集塵室としてもよい。
【0064】
なお、本実施の形態1では遮蔽手段のブレードの材質はゴムを使用したが、これに限定
されるものではなく、エラストマー、軟質樹脂、不織布、などでもよく、またこれらの複合材でもよい。
【0065】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図8は同実施の形態2における遮蔽手段50を示す側面からの断面図である。なお、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0066】
図8に示すように実施の形態1と異なるのは、心材51に対して放射状に配列したゴム製のブレード52の肉厚が、中心部が厚く、外周部ほど薄い偏肉厚に構成した点にある。
【0067】
この構成とすることで、ブレード52の根元の肉厚が厚くなるのでの被掃除面29上の塵埃を後方に掻き飛ばすのに必要な剛性が確保でき、塵埃の掻きだし性能は良好に保つことができる。
【0068】
また、ブレード52の先端部の肉厚が薄くなるので被掃除面29との接触圧およびノズル体6の遮蔽底面36との接触圧が下がり、遮蔽手段50の回転時のブレード52先端の摩擦抵抗が低減することで駆動手段の回転トルクを低減することができる。さらに、ブレード52の磨耗が減少するので寿命が延びる。また、ブレード52の先端部の肉厚が薄くなることによって、被掃除面29の凹凸に対して柔軟に変形するので、より遮蔽性能が増す。
【0069】
また、噴出口34cよりブレード52に吹き付けられる噴流によって、ブレード52先端の柔軟性が高い部位を変形させる。このため還流の流れは図の太い実線の矢印に示すように、ブレード52に付着したり、乗り上げた塵埃が無理なく還流によって引き剥がされて循環流れに乗って吸引することができる。
【0070】
なお、本実施の形態2におけるブレードの材質はゴムに限定されるものではなく、エラストマーや軟質樹脂でもよく、これらの複合材でもよい。
【0071】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図9は同実施の形態3における遮蔽手段60を示す側面からの断面図である。なお、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0072】
図9に示すように実施の形態1と異なるのは、毛材61を密に並列に配置してリボン状の毛ブラシ62を形成し、この毛ブラシ62を8枚準備し、円筒形状の心材63に放射状に配列して略円筒形状に構成した点にある。
【0073】
この構成とすることで、毛ブラシ62と被掃除面29との接触部位において、毛ブラシの毛一本々が被掃除面29の凹凸に柔軟に撓んで接するので、段差や溝のような鋭角な凹凸にもほとんど隙間なく接して、循環空気の漏れをより確実に防止することができる。
【0074】
また、毛材61により被掃除面29を回転ブラシのようにカーペットのごみの掻き出し作用もあるので、この遮蔽手段60により回転ブラシを兼用することが可能となるので、構成が簡単で低コストのノズル体6が実現する。
【0075】
また、噴出口34cからの噴流により、毛ブラシ62に絡まる塵埃を引き剥がして循環流れに乗せて吸引させることができるので、使用者による毛ブラシのお手入れの手間を軽減することができる。
【0076】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る電気掃除機について、図面を用いて詳細に説明する。図10は同実施の形態4におけるノズル体70を示す側面からの一部断面図である。なお、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号を付与して説明を省略する。
【0077】
図10に示すように実施の形態1と異なるのは、遮蔽手段71が、回転体ではなくノズル体70に固定する1枚のゴム製のブレード72で構成した点にある。
【0078】
ブレード72はノズル体70の全幅の長さの板状であって、上端73はノズル体70の遮蔽底面74に隙間なく固定している。下端75は、被掃除面29に湾曲するように接している。この湾曲方向はノズル体70の進行方向によって前後が入れ替わる。この湾曲構成によって、ノズル体70が前進時にブレード72下の塵埃をノズル体70下部に引き込むことができる。
【0079】
この構成とすることで、遮蔽手段71を駆動するための駆動手段が不要となり、遮蔽手段71の構成が簡単で、小型、軽量、低コストなノズル体70が実現する。
【0080】
また、噴出口76からの噴流が図の太い実線の矢印で示すようにブレード72の内側前面に均一に流れるので、塵埃の付着や逆流を抑えることができる。
【0081】
なお、本実施の形態4におけるブレード72の材質はゴムに限定されるものではなく、エラストマーや軟質樹脂でもよい。また、不織布や毛ブラシなどの繊維でもよい。さらに、これらの複合材でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の電気掃除機は、家庭用だけでなく業務用などの各種排気循環式掃除機に使用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 掃除機本体
6、70 ノズル体
9 電動送風機
12 集塵室
13 排気風路
14 吸込風路
30 開口部
32、50、60、71 遮蔽手段
33、52、72 ブレード
34a、34b、34c 噴出口
35 吸込口
43 駆動手段
76 噴出口
310 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動送風機を内蔵し、前記電動送風機の負圧側に集塵室を設けた掃除機本体と、
被掃除面の塵埃を吸引するノズル体と、
前記ノズル体を前記集塵室を介して前記電動送風機の負圧側に連通する吸込風路と、
前記電動送風機の正圧側をノズル体に連通する排気風路とを備え、
前記ノズル体は、
被掃除面に対向して開口する開口部と、
前記開口部の前方でかつ前記被掃除面とノズル体表面との間に配置し、前記開口部とノズル体外部との空気の流れを遮蔽する遮蔽手段と、
前記排気風路からの還流をノズル体内部に吹出する噴出口と、
前記噴出口からの気流によって搬送される塵埃を前記吸込風路へ吸引する吸込口とを備え、
前記噴出口から吹出される還流が前記遮蔽手段の前記開口部側に流れるように構成した電気掃除機。
【請求項2】
前記噴出口の噴流が前記遮蔽手段方向に噴出するように配置した請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記遮蔽手段と前記吸込口との間に空気の流れを制限する隔壁を設け、前記噴出口を前記隔壁の遮蔽手段側に配置した請求項1または2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記隔壁は前記被掃除面との間に隙間を設けた請求項3に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記隔壁は前記遮蔽手段との間に隙間を設け、
前記隙間は、前記噴出口から前記吸込口に至る流れ方向に対して、塵埃が前記噴出口方向に舞い戻らない流速を確保できる寸法設定とした請求項3または4に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記遮蔽手段の外周の一部が前記被掃除面に接触するように回転駆動させる駆動手段を備えた請求項1から5のいずれか1に記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記遮蔽手段は、可撓性を有する複数のブレードを放射状に配列して略円筒形状とし、前記被掃除面に対して前記ブレードの少なくとも1枚が接触して回転するように構成した請求項1から6のいずれか1項に記載の電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−59527(P2013−59527A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200467(P2011−200467)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】